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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】チェッカーれんが
(51)【国際特許分類】
   C21B 9/06 20060101AFI20221208BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
C21B9/06
F27D1/00 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019048893
(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2020147836
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小出石 吉隆
(72)【発明者】
【氏名】中村 倫
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-315921(JP,A)
【文献】中国実用新案第204918641(CN,U)
【文献】中国実用新案第201746566(CN,U)
【文献】中国実用新案第2888380(CN,Y)
【文献】中国実用新案第203007296(CN,U)
【文献】特開平09-269193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 9/02
F27D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外形が正六角柱形状をしており、上面と下面を貫通する断面が正六角形の37個のガス流路を有するチェッカーれんがであって、
上面又は下面のいずれか一方に、外形の正六角形の頂点と中心とを結ぶ線分の中点に位置するガス流路の中心を中心とする筒状の凸ダボを、互いに中心間の角度が120度離れるように3個有し、
上面又は下面のいずれか他方に、外形の正六角形の頂点と中心とを結ぶ線分の中点に位置するガス流路の中心を中心とする凹ダボを、凸ダボに対して中心間の角度が60度離れるように3個有し、
ガス流路の内孔のコーナー部にはRを有し、
かつ、凸ダボの先端部最小肉厚が3mm以上であり、
しかも凸ダボの基部外径ODdが以下の式を満足する、チェッカーれんが。
Lc<ODd≦Lc+1.8Tr
Lc:ガス流路の内接円の直径(mm)
Tr:壁の厚み(mm)
【請求項2】
ガス流路の内孔のコーナー部のRはR3以上R7以下である、請求項1に記載のチェッカーれんが。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱風炉の蓄熱室内に組み込まれるチェッカーれんがに関する。
【背景技術】
【0002】
製銑用の高炉への熱風供給を行うために、熱風炉が用いられている。熱風炉の蓄熱室内には、蓄熱材として、外形が正六角柱形状をした耐火れんが製のチェッカーれんが(ギッターれんがとも称する)が多数配列され、複数層に重ねて築造されている。
【0003】
チェッカーれんがは、耐火れんが材で形成された正六角柱形状の本体を有し、本体の上面及び下面は平行とされている。本体には、断面形状が丸形又は六角形のガス流路が複数、鉛直方向に貫通形成されており、各々は本体の上下面に開口されている。また、チェッカーれんがは空目地で築炉されるため、れんがどうしのずれを防止するために上面又は下面のいずれか一方に凸ダボ(凸状のダボ)、上面又は下面のいずれか他方に凹ダボ(凹状のダボ)を有している。
【0004】
近年、熱効率の向上を狙って、チェッカーれんが単位面積当たりのガス流路数(孔数)が増加する傾向にあり、れんが1個当たりの流路数は7孔から19孔、更に最近では37孔のチェッカーれんがも使用されるようになってきている。ところが、特に37孔のチェッカーれんがでは、ガス流路を仕切る壁の厚みが例えば17mm以下と薄くなることから、製造し難くなる問題がある。更に、従来のダボの大きさや位置では、ダボがガス流路にまたがることになり、ダボの大きさ及び位置の設計が難しくなってくる問題もある。
【0005】
このような問題が指摘されるなか、特許文献1には、壁の厚みが15mmの37孔のチェッカーれんがにおいて、凸ダボと凹ダボとをガス流路の間の中実部(壁)に形成することで薄肉部が形成されず、薄肉化に起因するれんがの破損を防止することができることが開示されている。しかし、この特許文献2のチェッカーれんがでは、ABC積みはできるものの、ストレート積みができないという問題がある。
ここでABC積みとは、Aパターンの第1層、Bパターンの第2層、及びCパターンの第3層を繰り返し積層する積み方であり、ストレート積みとは、下層のチェッカーれんがの真上に上層のチェッカーれんがを重ねて行く積み方である。
【0006】
熱風炉の築炉作業は、炉内で人がチェッカーれんがを1個ずつ積み上げて行うが、チェッカーれんがを100段以上積み上げなければならず、今後、熱風炉の築炉作業時間短縮をしようとする際のネックとなっている。
そこで、あらかじめ数十個単位でチェッカーれんがを接合し一体化ブロックとしておき、炉内に一体化ブロックを搬入し施工することで築炉作業時間を短縮することが考えられる。このとき、特許文献1に開示されたチェッカーれんがを使用して、例えば直径が1m程度で高さが5段のれんがブロックを製作しようとした場合、ABC積みしかできないため、一体化ブロックの側面が凹凸となり、一体化ブロックどうしの接合が困難になる。
このように一体化ブロックを事前に製作する場合には、ストレート積みとABC積みとを組み合わせて積むことができれば炉内での築炉作業が容易になる。
【0007】
一方、ABC積みとストレート積みの両方を可能とするため、特許文献2には、れんがの上面又は下面のいずれか一方に、れんが外形の正六角形の頂点と中心とを結ぶ線分の中点を中心とする凸ダボを互いに中心間の角度を120度離して3個設け、れんがの上面又は下面のいずれか他方に、れんが外形の正六角形の頂点と中心とを結ぶ線分の中点を中心とする凹ダボを凸ダボに対して中心間の角度を60度離して設けた19孔のチェッカーれんがが開示されている。しかし、この19孔のチェッカーれんがにおけるダボ部の配置構造を、特許文献1のような壁の厚みが15mmと薄くしかもガス流路の断面が六角形をした37孔のチェッカーれんがにそのまま適用すると、ダボ部の強度が不十分になる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5993297号公報
【文献】中国実用新案公告第201809372号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、十分な強度を有ししかもストレート積みとABC積みの両方が可能な37孔のチェッカーれんがを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、37孔のチェッカーにおいて、れんがの上面又は下面のいずれか一方に、れんが外形の正六角形の頂点と中心とを結ぶ線分の中点を中心とする凸ダボを互いに中心間の角度を120度離して3個設け、れんがの上面又は下面のいずれか他方に、れんが外形の正六角形の頂点と中心とを結ぶ線分の中点を中心とする凹ダボを凸ダボに対して中心間の角度を60度離して設けることでストレート積みとABC積みの両方が可能となることに着目して試験を行った。その結果、37孔のチェッカーでは凸ダボがガス流路を包含する筒状となり、この筒状の凸ダボの肉厚が薄い部分に、成形時や積層時に欠けや亀裂が発生しやすい問題があることがわかった。そして、凸ダボに包含されるガス流路のコーナー部にRを設け、更に筒状の凸ダボの先端部最小肉厚を3mm以上とすることで、筒状の凸ダボに十分な強度を有するチェッカーれんがが得られることを知見した。
【0011】
すなわち、本発明によれば次のチェッカーれんがが提供される。
外形が正六角柱形状をしており、上面と下面を貫通する断面が正六角形の37個のガス流路を有するチェッカーれんがであって、
上面又は下面のいずれか一方に、外形の正六角形の頂点と中心とを結ぶ線分の中点に位置するガス流路の中心を中心とする筒状の凸ダボを、互いに中心間の角度が120度離れるように3個有し、
上面又は下面のいずれか他方に、外形の正六角形の頂点と中心とを結ぶ線分の中点に位置するガス流路の中心を中心とする凹ダボを、凸ダボに対して中心間の角度が60度離れるように3個有し、
ガス流路の内孔のコーナー部にはRを有し、
かつ、凸ダボの先端部最小肉厚が3mm以上であり、
しかも凸ダボの基部外径ODdが以下の式を満足する、チェッカーれんが。
Lc<ODd≦Lc+1.8Tr
Lc:ガス流路の内接円の直径(mm)
Tr:壁の厚み(mm)
K:凸ダボ係数(ただし、0<K≦0.9)
【発明の効果】
【0012】
本発明のチェッカーれんがは、凸ダボ及び凹ダボを3個ずつ所定の位置に有することから、ストレート積みとABC積みの両方が可能となる。しかも、筒状となる凸ダボに十分な強度を確保できる形状としていることから、れんがの強度も十分となる。これにより、一体化ブロックをストレート積みで問題なく製作することができるようになり、一体化ブロックを使用して築炉作業を行うときに隣接する一体化ブロックどうしの接合を容易に行うことができる。そして、上下方向の一体化ブロックの接合は、一体化ブロックの層毎でABC積みが可能となるので、一体化ブロックの六角形の頂点が一致しないように積み重ね、より均一な荷重分散を図ることができるとともに、全てのガス流路が、いずれかの階層で一体化ブロックの中心位置を通るため、一体化ブロック間の開きの発生を防止することができる。
また、一体化ブロックを使用しない従来の築炉作業においても、部分的にストレート積みを使用しており、ストレート積みとABC積みの両方が可能であることで作業能率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態であるチェッカーれんがの上面側を示す斜視図。
図2】前記チェッカーれんがの下面側を示す斜視図。
図3】前記チェッカーれんがの上面を示す平面図。
図4】前記チェッカーれんがの縦断面を示す断面図。
図5】前記チェッカーれんがの下面を示す底面図。
図6A】前記チェッカーれんがの凸ダボ部分の拡大縦断面図。
図6B】前記チェッカーれんがの凸ダボ部分の拡大平面図。
図6C】前記チェッカーれんがの凹ダボ部分の拡大縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1ないし図5に、本発明の一実施形態であるチェッカーれんが20を示している。図1はチェッカーれんが20の上面側を斜めに見た状態、図2はチェッカーれんが20の下面側を斜めに見た状態である。図3はチェッカーれんが20の上面を示し、図4はチェッカーれんが20の縦断面を示し、図5はチェッカーれんが20の下面を示す。
【0015】
各図に示すように、チェッカーれんが20は、上面25、下面26、6つの側面27及び側面27が互いに交わる6つの角部30を有する正六角柱状のれんが本体21を有する。
れんが本体21は、その上面25から下面26へと上下方向に貫通する複数のガス流路22と、れんが本体21の上面25にその六角形の中心から見て120度間隔で設けられる3個の凸ダボ23と、れんが本体21の下面26にその六角形の中心から見て120度間隔で設けられる3個の凹ダボ31と、れんが本体21の6つの側面27それぞれに形成される4つの側面平部271及び上下方向に形成された3本の第1流路溝28と、6つの角部30それぞれに形成される1本の第2流路溝29とを備えている。
【0016】
れんが本体21は、耐火れんが材を型枠成型により正六角柱状に形成したものであり、熱風炉の蓄熱領域に設置される際に、多数のチェッカーれんが20を上下に積み重ねた場合でも破壊されない十分な圧縮強度を有する。
【0017】
ガス流路22は、れんが本体21を上下方向(正六角柱状の軸心方向)に貫通する貫通孔とされている。
ガス流路22は、れんが本体21の6つの側面27のうち、平行に相対する2つの側面27間に、それぞれ4個、5個、6個、7個、6個、5個、4個となるように7列に配置され、合計で37個形成されている。
ガス流路22は、れんが本体21の上面25に形成された開口221と、れんが本体21の下面26に形成された開口222とを有する。ガス流路22は、好ましくは上向きに拡径したテーパ状の貫通孔とされ、下面26の開口222に対して上面25の開口221がやや大きく形成されている。
ガス流路22の断面形状は正六角形とされ、したがって開口221,222も正六角形である。ただし、これらの六角形は頂点が丸められている。
ガス流路22は、六角形の互いの辺が対向するように配置され、ガス流路22間に形成される壁210は略一定厚みでリブ状に連続するように形成されている。
このような形状により、ガス流路22に臨む表面からの壁210の厚さが一定となり、壁210を構成する耐火れんが材を蓄熱材として無駄なく機能させることができる。したがって、このような正六角形のガス流路22を用いることで、チェッカーれんが20としての蓄熱効率を最大にすることができる。
【0018】
第1流路溝28は、れんが本体21の6つの側面27の中間部分(上面25及び下面26の六角形の辺にあたる部分の中間)において、それぞれ上面25から下面26まで連続して形成されている。
第1流路溝28の断面形状は、ガス流路22の断面形状である正六角形を、対向する辺の中点を結ぶ線(内接円の直径となる線分)で半分つまり1/2に切断した形状とされている。したがって、チェッカーれんが20を隣り合わせに配置した際には、他のチェッカーれんが20の第1流路溝28と互いに向かい合わせに配置され、これら2本の向かい合う第1流路溝28によりガス流路22に相当する空間が形成されるようになっている。
第1流路溝28は、1つの側面27あたり3個、れんが本体21では合計18個形成されている。
【0019】
第2流路溝29は、れんが本体21の6つの側面27が互いに交わる角部30(上面25及び下面26の六角形の頂点にあたる部分)において、それぞれ上面25から下面26まで連続して形成されている。
第2流路溝29の断面形状は、ガス流路22の断面形状である正六角形を、一つの辺を挟む一対の辺の中点と六角形の中心とを結ぶ線で1/3に切断した形状とされている。したがって、3個のチェッカーれんが20を隣り合わせに配置した際には、他の2個のチェッカーれんが20の第2流路溝29と互いに向かい合わせに配置され、これら計3本の向かい合う第2流路溝29によりガス流路22に相当する空間が形成されるようになっている。
第2流路溝29は、れんが本体21の各角部分に1個、れんが本体21全体では合計6個形成されている。
【0020】
一般に、チェッカーれんが20に類するチェッカーれんがとしては、幅が180~320mm、高さが120~180mmのものが使用されているが、蓄熱室3内におけるチェッカーれんが20の積み上げ高さは、約30~40mにも達するため、チェッカーれんが20にかかる荷重と熱膨張時の応力を考慮すると、経験的に圧縮強さは40MPa以上であることが好ましい。
【0021】
本実施形態のチェッカーれんが20では、前述したとおり、れんが本体21にガス流路22が37個形成されているほか、1/2断面の第1流路溝28が18個、1/3断面の第2流路溝29が6個設けられている。
【0022】
凸ダボ23は、図1及び図3に示すように、れんが本体21の上面25から凸状に隆起して形成されており、全体として円錐台状(テーパ状)とされ、その上面は上面25と同様に水平であるが、側面は上面25に対して所定角度の円錐面とされている。
【0023】
凸ダボ23は、図3に示すように、その中心C1が、上面25の六角形の頂点P1(2つの側面27が交差する位置)から上面25の中心C2に至る線分S上に配置されている。線分S上には、中心C2と同心のものを除いて3個のガス流路22がある。この3個のガス流路のうち中央のガス流路22Aの中心C1は、線分Sの中点に位置する。凸ダボ23は、線分S上でしかも中央のガス流路22Aの中心と同じ中心C1を有し、しかもガス流路22Aを包含する筒状をしている。すなわち、凸ダボ23は、その外形は円錐台形状で断面が正六角形のガス流路22Aを有している。
【0024】
図6Aは凸ダボ23部分の拡大縦断面図、図6Bは凸ダボ23部分の拡大平面図である。図6Bに示すように凸ダボ23に包含されているガス流路22の6か所のコーナー部223は、全てR5としている。また、凸ダボ23の先端部312の外径ODtは39mm、基部311の外径ODdは46mm、高さHは5mm、ガス流路22の最大内径Lmは29mm、ガス流路22の内接円の直径Lcは25mmである。そして、凸ダボ23の先端部最小肉厚Tpは(ODt(39mm)-Lm(29mm))/2=5mmである。なお、れんが本体の壁210の厚みTrは15mmである。
【0025】
このように凸ダボ23は、平面視において正六角形のガス流路22を包含する筒状になっているため、この正六角形のコーナー部223をRとすることで、れんがの成形時に亀裂や欠けの起点となることを防止している。このRは亀裂や欠けの防止効果をより高めたい場合にはR3以上することができる。また、伝熱効率の面からガス流路の面積を確保したい場合にはR7以下とすることもできる。なお、本発明においては、このように平面視において正六角形のコーナー部223をRとしたガス流路22も正六角形とみなしている。
【0026】
また、凸ダボ23は円錐台形となっているため先端部312の肉厚が薄くなっており、しかも正六角形のガス流路のコーナー部223の肉厚(先端部最小肉厚Tp)が最も薄くなっている。この先端部最小肉厚Tpが薄くなりすぎると、れんがの成形時に凸ダボの先端部が欠けやすくなるため、欠けを防止するために、凸ダボ23の先端部最小肉厚Tpは3mm以上とする。
【0027】
更に、凸ダボ23は、外径が大きすぎるとその側面に壁210の一部が突起状に形成されるため、この突起がれんがの成形時に欠けやすくなりダボ部の強度低下を招く。そこで、本発明では、凸ダボ23の基部外径ODdが以下の式を満足するようにしている。
ODd=Lc+2Tr×K
Lc:ガス流路の内接円の直径(mm)
Tr:壁の厚み(mm)
K:凸ダボ係数(ただし、0<K≦0.9)
また、施工作業時や使用中の凸ダボの強度を確保するためには、凸ダボ係数Kは0.5以上とすることが好ましい。
なお、本実施形態のようにガス流路22がテーパ状である場合、ガス流路22の内接円の直径Lc及び壁210の厚みTrは上下方向で異なるが、この場合、ガス流路22の内接円の直径Lc及び壁210の厚みTrは、いずれも凸ダボが形成されている面(本実施形態では上面)において特定するものとする。
【0028】
また、凸ダボ23には、基部と先端部にそれぞれRを設けることで、施工作業時や使用中の破損を抑制する効果が得られ、具体的にはR2以上R5以下のRを設けることができる。
更に、凸ダボ23は筒状になっているため、凸ダボ23の高さが高すぎると取扱い中にダボ部が欠けやすくなるが、高さが低すぎるとれんがのダボ部どうしの嵌め合いが難くなるため、凸ダボ23の高さは3mm以上8mm以下とすることができる。
また、れんが本体の壁210の厚みTrは凸ダボ23に十分な強度を持たせるためには13mm以上とすることが好ましい。
【0029】
凹ダボ31は、図2及び図5に示すように、れんが本体21の下面26から凹状に窪んだ形状とされている。凹ダボ31の内側形状は、円錐台状(テーパ状)とされ、その底面は下面26と同様に水平であるが、側面は下面26に対して所定角度の円錐面とされている。
【0030】
凹ダボ31は、図5に示すように、その中心C1が、下面26の六角形の頂点P1(2つの側面27が交差する位置)から下面26の中心C2に至る線分S上に配置されている。線分S上には、中心C2と同心のものを除いて3個のガス流路22がある。この3個のガス流路のうち中央のガス流路22Aの中心は、線分Sの中点に位置する。凹ダボ31は、線分S上でしかも中央のガス流路22Aの中心と同じ中心C1を有しており、ガス流路22Aを形成する周囲の壁210に形成されている。
また、凹ダボ31は、チェッカーれんが20を上下に積み重ねる際、凸ダボ23に嵌め込む操作が円滑に行えるように、上下方向(高さ方向)にテーパが形成され、具体的には上面側(凹状の底面側)が小径で下面26に開口する部分では大径とされている。
【0031】
凹ダボ31は凸ダボ23に対して通常、作業性と使用時のれんがの熱膨張による破損を防止する目的から、凸ダボ23と凹ダボ31の嵌合時に側面は片側2~5mm、底面は2~5mmの隙間を有するように形成されており、本発明においても凸ダボ23の大きさに合わせてこれらの公知技術を適用して凹ダボ31の大きさを設計することができる。なお、凹ダボ31を形成することでガス流路22Aを囲む壁210の厚みの一部が削られたりあるいは薄くなるが、このガス流路22Aを囲む壁210は周囲の6個の壁210と繋がって補強されているため、凸ダボ23のように欠けや亀裂が発生する可能性は小さい。また、たとえ欠けが発生しても周囲の6個の壁210で補強されているため、欠けの広がりが抑制されるため問題にはならない。本実施形態では具体的には凹ダボ31は、図6Cに示すように開口部側の内径IDtが54mm、底面の内径IDdが45mm、深さFが8mmである。
【0032】
ここで、凸ダボ23はれんが本体21の上面25にその六角形の中心から見て120度間隔で3個配置され、凹ダボ31はれんが本体21の下面26に凸ダボ23に対して、六角形の中心から見て60度間隔で3個配置されている。すなわち、凸ダボ23及び凹ダボ31は互いに60度ずつずれた位置に配置されている。そして、凸ダボ23及び凹ダボ31は頂点P1からの距離が線分Sの1/2とされている。凸ダボ23及び凹ダボ31をこのように配置することで、前述の特許文献2と同様にABC積みとストレート積みの両方の積み方が可能となる。
【実施例
【0033】
37孔のチェッカーれんがの製造試験を行った結果を表1に示す。
表1に示す実施例及び比較例では、れんが本体の対向する側面間の距離が280mm、高さが130mmで、ガス流路の配列パターンが図1図5と同じチェッカーれんがを各10個製造した。れんが本体の材質は、特開2018-52776号公報に開示されているアルミナシリカ系とした。なお、それぞれの凹ダボはそれぞれの凸ダボに対して嵌合時の側面は片側で4mm、底面は3mmの隙間となる大きさとした。
【0034】
【表1】
【0035】
実施例1から実施例3は、凸ダボ係数と凸ダボの先端部最小肉厚が異なるものであるが、成形後及び焼成後も凸ダボの状態は良好であった。
比較例1は、凸ダボの先端部最小肉厚が2mmと本発明の下限値よりも小さいため、10個中8個に成形後に凸ダボの先端部に欠けが発生した。
比較例2はガス流路の内孔のコーナー部にRを設けていないものであるが、10個中5個に成形後の凸ダボの先端部に欠けが発生した。
比較例3は、凸ダボ係数が1.2と本発明の上限値よりも大きいため、10個中4個に成形後に凸ダボの側面に欠けが発生した。
実施例4は、壁の厚みが13mmのものであるが良好な結果であった。
【符号の説明】
【0036】
20 チェッカーれんが
21 れんが本体
210 中実部
22 ガス流路
221 開口
222 開口
23 凸ダボ
25 上面
26 下面
27 側面
271 側面平部
28 第1流路溝
29 第2流路溝
30 角部
31 凹ダボ
C1 中心
C2 中心
P1 頂点
P2 頂点
S 線分
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C