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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 41/12 20060101AFI20221208BHJP
   A01D 69/06 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
A01D41/12 R
A01D69/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019054278
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020150886
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100141298
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 文典
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】阿部 大介
(72)【発明者】
【氏名】入江 信行
(72)【発明者】
【氏名】山本 桂輔
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特許第6008257(JP,B2)
【文献】特開2010-058613(JP,A)
【文献】特許第5453039(JP,B2)
【文献】特許第4241654(JP,B2)
【文献】特開2012-207561(JP,A)
【文献】特開2012-125191(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0006361(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/00 - 41/16
A01D 69/00 - 69/12
B60K 11/00 - 11/08
F01P 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレームの前部に配設された原動機と、
前記原動機の上方に配設された運転部と、
前記運転部の後方に配設されたグレンタンクと、が備えられたコンバインであって、
前記原動機の機外側には、前記原動機から動力を伝達する出力プーリと、外気導入カバーとが配置され、
前記出力プーリと前記グレンタンクとの間には、カウンター軸が配置され、
前記出力プーリからの動力伝達によりカウンター軸を介して前記グレンタンクに設けた集穀コンベアを駆動する駆動伝達機構と、
前記外気導入カバーの側面に設けたロータリスクリーンに付着した塵埃を吸引して機外側に排出する吸引除去装置と、が備えられ、
前記吸引除去装置は、前記機体フレームの側方で、且つ、前記原動機の機外側に配置され、
前記駆動伝達機構は、前記カウンター軸により前記吸引除去装置を駆動し、
前記吸引除去装置は、前記原動機の機外側で長手方向が前後方向に沿う姿勢の吸引ファンと、前記吸引ファンに接続された屈曲形状の第1排気ダクト部と、前記第1排気ダクト部から下向きに延設された第2排気ダクト部とを有しているコンバイン。
【請求項2】
機体フレームの前部に配設された原動機と、
前記原動機の上方に配設された運転部と、
前記運転部の後方に配設されたグレンタンクと、が備えられたコンバインであって、
前記原動機の機外側には、前記原動機から動力を伝達する出力プーリと、外気導入カバーとが配置され、
前記出力プーリと前記グレンタンクとの間には、カウンター軸が配置され、
前記出力プーリからの動力伝達によりカウンター軸を介して前記グレンタンクに設けた集穀コンベアを駆動する駆動伝達機構と、
前記外気導入カバーの側面に設けたロータリスクリーンに付着した塵埃を吸引して機外側に排出する吸引除去装置と、が備えられ、
前記吸引除去装置は、前記機体フレームの側方で、且つ、前記原動機の機外側に配置され、
前記駆動伝達機構は、前記カウンター軸により前記吸引除去装置を駆動し、
前記吸引除去装置は、前記原動機の機外側で長手方向が前後方向に沿う姿勢の吸引ファンを有しており、
前記吸引除去装置は、前記吸引ファンよりも機外側に配置された前記ロータリスクリーンと前記吸引ファンとを接続する塵埃吸引ダクトと、前記吸引ファンから機外側に延設された塵埃排気ダクトとを有しているコンバイン。
【請求項3】
前記吸引ファンのファン駆動軸は、前記カウンター軸と平行又は略平行に配置され、前記塵埃吸引ダクトは、前記吸引ファンのファンケースに対して前記ファン駆動軸に向けて接続されている請求項2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記駆動伝達機構における前記カウンター軸と前記ファン駆動軸との間の駆動伝達部は、前記カウンター軸の駆動プーリと、前記ファン駆動軸の受動プーリと、前記ファンケースに取り付けたテンションプーリと、3つの前記プーリに亘って巻回される駆動ベルトとを有する請求項3記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体フレームの前部に配置された原動機と、前記原動機の上方に配設された運転部と、前記運転部の後方に配設されたグレンタンクと、が備えられたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上述のコンバインには、例えば、特許文献1に示すように、原動機であるエンジンの機外側に、エンジンから機体右側に突出する出力軸に設けられた出力プーリと、外気を冷却用空気として導入する外気導入カバーとが配置され、外気導入カバーの右外側面に設けられたロータリスクリーンに付着した塵埃を吸引して外部に排出する吸引除去装置が設けられている。
吸引除去装置は、エンジンとグレンタンクとの間に配設される吸引ファンと、エンジンの機外側に配置されているロータリスクリーンと吸引ファンとを接続する塵埃吸引ダクトと、吸引ファンで吸引した塵埃を左右一対の走行クローラ間に排出する塵埃排気ダクトとを有する。吸引ファンは、エンジンの出力プーリからグレンタンクに設けた集穀コンベアに動力を伝達する駆動伝達機構から動力を受けて駆動される。
【0003】
駆動伝達機構は、エンジンとグレンタンクとの間において、エンジンルームの奥側(機体左右方向の内側)に延伸する状態でエンジンの出力軸と平行に配設した受動べベルギヤ軸と、エンジンの出力軸の出力プーリと受動べベルギヤ軸の一端部(機体右側端部)のプーリとの間に巻回したエンジンベルトと、受動べベルギヤ軸の他端部(機体左側端部)に減速用のべベルギヤを介して連動される機体前後方向に沿う駆動べベルギヤ軸と、駆動べベルギヤ軸と平行に配設した吸引ファン軸と、駆動べベルギヤ軸と吸引ファン軸とをプーリを介して連動するファン駆動ベルトと、駆動べベルギヤ軸と集穀コンベアの入力軸とをプーリを介して連動するグレン駆動ベルトとを備える。吸引ファンの吸引ファン軸は、駆動べベルギヤ軸の上部位置に配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5453039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エンジンの出力プーリから集穀コンベアの入力軸に至る駆動伝達機構のうち、エンジンとグレンタンクとの間で、且つ、エンジンルームの奥側に配設されている駆動べベルギヤ軸から吸引ファンの動力を取り出すため、それに合わせて吸引ファンを含む吸引除去装置の駆動レイアウトを決める必要があり、駆動レイアウトに自由度がなかった。しかも、吸引ファンは、それの前後の側面が機体左右方向に沿う姿勢でエンジンの後方部に配設されるため、エンジン廻りのメンテナンスが困難になることがあった。さらに、吸引除去装置の塵埃吸引ダクトは、ロータリスクリーンからエンジンルームの奥側に配設される吸引ファンまでの長尺なダクト長さが必要となり、塵埃吸引ダクトのレイアウトが周辺部品に影響を与えるとともに、ダクト部品の大型化や取り付けステー等を含むダクト部品点数の増加を招く不都合があった。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、吸引除去装置への動力伝達構造の簡素化と原動機廻りのメンテナンスの容易化を図ることのできるコンバインを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、機体フレームの前部に配設された原動機と、
前記原動機の上方に配設された運転部と、
前記運転部の後方に配設されたグレンタンクと、が備えられたコンバインであって、
前記原動機の機外側には、前記原動機から動力を伝達する出力プーリと、外気導入カバーとが配置され、
前記出力プーリと前記グレンタンクとの間には、カウンター軸が配置され、
前記出力プーリからの動力伝達によりカウンター軸を介して前記グレンタンクに設けた集穀コンベアを駆動する駆動伝達機構と、
前記外気導入カバーの側面に設けたロータリスクリーンに付着した塵埃を吸引して機外側に排出する吸引除去装置と、が備えられ、
前記吸引除去装置は、前記機体フレームの側方で、且つ、前記原動機の機外側に配置され、
前記駆動伝達機構は、前記カウンター軸により前記吸引除去装置を駆動している点にある。
【0008】
上記構成によれば、原動機の機外側に配置した出力プーリからグレンタンクの集穀コンベアに動力を伝達する駆動伝達機構のカウンター軸を、出力プーリとグレンタンクとの間に配置することにより、カウンター軸は、出力プーリと同じ機外側に配置される。ロータリスクリーンに付着した塵埃を吸引して機外側に排出する吸引除去装置も、機体フレームの側方で、且つ、原動機の機外側に配置されているので、カウンター軸と吸引除去装置との間での駆動レイアウトの自由度、及び、ロータリスクリーンと吸引除去装置との間でのダクトレイアウトの自由度が向上する。しかも、ロータリスクリーンから吸引除去装置までの吸引ダクト長さも短くなるので、ダクト部品の小型化と取り付けステー等を含むダクト部品点数の低減化を図ることができる。
【0009】
したがって、カウンター軸と吸引除去装置との間での動力伝達構造の簡素化と、ロータリスクリーンと吸引除去装置との間での吸引ダクト構造の簡素化を図ることができ、しかも、原動機廻りのメンテナンスの容易化も達成することができる。
【0010】
本発明の第2特徴構成は、前記吸引除去装置は、前記原動機の機外側で長手方向が前後方向に沿う姿勢の吸引ファンと、前記吸引ファンよりも機外側に配置された前記ロータリスクリーンと前記吸引ファンとを接続する塵埃吸引ダクトと、前記吸引ファンから機外側に延設された塵埃排気ダクトとを有している点にある。
【0011】
上記構成によれば、吸引除去装置の吸引ファンは、原動機の機外側で長手方向が前後方向に沿う姿勢で配置されているので、原動機の後部側を大きく開放して、原動機廻りのメンテナンスの容易化を促進することができる。しかも、吸引ファンから機外側に延設された塵埃排気ダクトにより、吸引された塵埃を機外側に排出するので、コンバインの他の部位に塵埃が飛散することを抑制することができる。
【0012】
本発明の第3特徴構成は、前記吸引ファンのファン駆動軸は、前記カウンター軸と平行又は略平行に配置され、前記塵埃吸引ダクトは、前記吸引ファンのファンケースに対して前記ファン駆動軸に向けて接続されている点にある。
【0013】
上記構成によれば、カウンター軸とファン駆動軸とが互いに平行又は略平行に配置されているので、カウンター軸からファン駆動軸への動力伝達構造をより簡素化できる。しかも、原動機の機外側で長手方向が前後方向に沿う姿勢で配置されているファンケースに対して、塵埃吸引ダクトをファン駆動軸に向けて接続することにより、塵埃吸引ダクトのダクト長さをより短くすることができ、吸引ファンの圧損を極力抑えることができる。
【0014】
本発明の第4特徴構成は、前記駆動伝達機構における前記カウンター軸と前記ファン駆動軸との間の駆動伝達部は、前記カウンター軸の駆動プーリと、前記ファン駆動軸の受動プーリと、前記ファンケースに取り付けたテンションプーリと、3つの前記プーリに亘って巻回される駆動ベルトとを有する点にある。
【0015】
上記構成によれば、ファンケースに、テンションプーリを取付けるので、テンションプーリを機体フレームに取付けるための他の取付け部材を設ける必要がなく、吸引除去装置の駆動構造の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】普通型コンバインの右側面図
図2】グレンタンクの集穀コンベアへの動力伝達系統図
図3】エンジンルームの右側面図
図4】エンジンルームの上方視での水平断面図
図5】エンジンルームの前方視での横断面図
図6】吸引除去装置の取付け構造及び駆動構造を示す前方視での斜視図
図7】吸引除去装置の取付け構造及び駆動構造を示す後方視での斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明を、普通型コンバインに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
尚、本実施形態で例示する普通型コンバインは、稲、麦、そば、大豆、とうもろこし、などの穀類を収穫対象とする汎用性の高いものである。
図1に示すように、普通型コンバインは、乗用型の走行機体1、機体前方の未刈り穀稈を刈り取る刈取部2、刈り取られた穀稈を刈取部2から受け取って後上方に搬送する穀稈搬送部3、穀稈搬送部3から搬送されてきた穀稈に脱穀処理を施すとともに脱穀処理で得られた選別対象物に選別処理を施す脱穀選別部(図示省略)、脱穀処理後の穀稈(排わら)を細断して機外に排出する排わら処理部(図示省略)、脱穀選別部での脱穀・選別処理で得られた脱穀処理物である単粒化した穀粒を貯留するグレンタンク4、及び、グレンタンク4に貯留された穀粒を機外に排出するスクリュー搬送式の集穀コンベア5、などを備えている。
【0018】
図1に示すように、刈取部2及び穀稈搬送部3は、走行機体1の機体フレーム11の前端部に昇降可能に設けられる。刈取部2は、収穫対象の未刈り穀稈を刈取部2の作業幅内に案内する左右のデバイダ6、作業幅内に位置する未刈り穀稈の穂先側を後方に掻き込む掻込リール7、作業幅内に位置する未刈り穀稈を刈り取る刈取装置8、刈り取られた穀稈を受け止めるプラットホーム9、及び、プラットホーム9上の穀稈を左右中央側の所定位置に搬送して後方に送り出すオーガ(図示省略)、などを有している。
【0019】
穀稈搬送部3は、刈取部2の後端から脱穀選別部の前上部にわたるフィーダハウス10、及び、フィーダハウス10で覆われたスラットコンベヤ(図示省略)、などを有している。そして、スラットコンベヤが、オーガにて送り出された穀稈を、フィーダハウス10の底板に沿って後上方に掻き上げ搬送した後、脱穀選別部の扱室に投入するように構成されている。
【0020】
脱穀選別部は、機体フレーム11の左側に設けられ、穀稈搬送部3の後方に配置されている。脱穀選別部は、扱室に投入された穀稈に脱穀処理を施しながら穀稈を後方に搬送する扱胴、脱穀処理で得られた穀粒やわら屑などが混在した選別対象物を漏下させる受網、漏下した選別対象物に篩い選別処理を施す揺動選別装置、選別対象物に選別風を供給してわら屑などを風力選別する風力選別装置、選別された単粒化穀粒を一番物として脱穀選別部の右端部に搬送するスクリュー搬送式一番コンベヤ、スクリュー搬送式一番コンベヤで右端部に搬送された穀粒を上方に搬送してグレンタンク4に供給する穀粒揚送装置、選別された枝梗付着粒や二又粒などを二番物として扱室に還元するスクリュー搬送式の二番還元コンベヤ、などを有している。
【0021】
グレンタンク4は、機体フレーム11の右側後部に設けられ、脱穀選別部の右側方に配置されている。グレンタンク4の内底部は、機体の前後方向に沿って延伸する樋状に構成されている。集穀コンベア5は、図2に示すように、グレンタンク4の樋状内底部に沿って前後方向に軸線を向けた状態で配置される横送りスクリューコンベヤ20と、この横送りスクリューコンベヤ20の搬送終端部である後端部において、横送りスクリューコンベヤ20から送り出されてくる穀粒を上方に搬送する縦送りスクリューコンベヤ21と、この縦送りスクリューコンベヤ21の搬送終端部である上端部において、縦送りスクリューコンベヤ21から搬送されてくる穀粒を排出する穀粒排出スクリューコンベヤ22と、を有する。穀粒排出スクリューコンベヤ22は、グレンタンク4に対して旋回及び上下揺動自在に構成されている。
【0022】
グレンタンク4は、図2に示すように、機体フレーム11に対して縦送りスクリューコンベヤ21の軸芯P周りで機外側に向けて回動可能に構成されている。このグレンタンク4の機外側への回動操作により、脱穀選別部の右側面と後述するエンジンルーム37の後面側を開放可能としている。
横送りスクリューコンベヤ20の横送りスクリュー軸20Aの前端部は、後述する駆動伝達機構40の第1べベルギヤ54を介して左右方向に沿うべベルギヤ軸53に連動されている。この第1べベルギヤ54とべベルギヤ軸53及びべベルギヤ軸53に設けられる従動プーリ52は、図5に示すように、グレンタンク4の前壁部4A(図3参照)に設けられたべベルギヤケース55に支持されている。
【0023】
横送りスクリュー軸20Aの後端部は、図2に示すように、第2べベルギヤ23を介して縦送りスクリューコンベヤ21の縦送りスクリュー軸21Aの下端部に連動されている。縦送りスクリュー軸21Aの上端部は、第1中間ベルト伝動部24、第3べベルギヤ25、第2中間ベルト伝動部26、第4べベルギヤ27を介して穀粒排出スクリューコンベヤ22の穀粒排出スクリュー軸22Aの搬送始端部が連動されている。
【0024】
走行機体1は、図1図3図4に示すように、機体フレーム11の下部に取り付けられた左右一対の走行クローラ12、機体フレーム11の右側前部に配置された原動機13、原動機13の上方で、且つ、グレンタンク4の前方に配置された運転部14、などを有している。
運転部14は、図1図3に示すように、操縦席30、ステアリングハンドル31を含む操作具類、ステップ32などを有し、ステップ32上に搭乗した操縦者を操縦席30に着座させ、操作具類により操縦者が各部の装置を操作することができるように構成されている。
【0025】
原動機13は、図3図4に示すように、運転部14の下方に配置したディーゼルエンジン35やラジエータ36などを有する。ディーゼルエンジン35は機体フレーム11の右側前部に配置され、その周囲にエンジンルーム37が形成される。
ディーゼルエンジン35は、図2図3に示すように、機体左右方向に沿って機体外方側に突出する第1出力軸38と、機体左右方向に沿って機体内方側に突出する第2出力軸39と、を有する。第1出力軸38と第2出力軸39はクランク軸の両端に連続し、同じ回転数で出力を取り出せる。第1出力軸38に設けた第1出力プーリ41の回転動力は、駆動伝達機構40を介してグレンタンク4の集穀コンベア5に伝達される。第2出力軸39に設けた第2出力プーリ42の回転動力は、走行クローラ12、刈取部2、穀稈搬送部3、脱穀選別部、排わら処理部に伝達される。
【0026】
次に、駆動伝達機構40について説明する。
図2図3に示すように、機体フレーム11上の右側部で、且つ、ディーゼルエンジン35の第1出力プーリ41とグレンタンク4の前壁部4Aとの間の前後中間位置には、上部に軸受け部43A(図6図7参照)を備えた取付け基台43が設けられている。この取付け基台43の軸受け部43Aには、図2に示すように、ディーゼルエンジン35の第1出力軸38、及び、横送りスクリューコンベヤ20に第1べベルギヤ54を介して連動するべベルギヤ軸53と平行なカウンター軸44が回転自在に支承されている。カウンター軸44には、図2図3に示すように、第1出力プーリ41と機体前後方向で対向する第1中間プーリ45と、べベルギヤ軸53に設けた従動プーリ52に機体前後方向で対向する第2中間プーリ46とが設けられている。
【0027】
図2図3に示すように、第1出力プーリ41と第1中間プーリ45とに亘って第1伝動ベルト48が巻回されている。第1出力プーリ41の回転動力は、第1伝動ベルト48及び第1中間プーリ45を介してカウンター軸44に伝達される。
第1伝動ベルト48に張力を付与する第1テンションプーリ47を備えた第1テンションアーム56は、取付け基台43に左右方向の水平軸芯周りで上下揺動自在に枢着されている。第1テンションアーム56は、図3に示すように、第1コイルバネ57及び第1操作ワイヤ58を介して運転部14に設けたクラッチ操作レバー(図示省略)に連係されている。クラッチ操作レバーの操作によって第1操作ワイヤ58の張力を調節することにより、第1テンションアーム56の第1テンションプーリ47が第1伝動ベルト48に対して遠近方向に移動する。これにより、第1テンションプーリ47は、第1伝動ベルト48に張力を付与する伝動状態と張力を付与しない非伝動状態とに切り換えられ、駆動伝達機構40による集穀コンベア5への動力伝達を入り切りすることができる。
【0028】
図2図3に示すように、第2中間プーリ46と従動プーリ52と第2テンションプーリ50とに亘って第2伝動ベルト51が巻回されている。カウンター軸44の回転動力は、第2中間プーリ46→第2伝動ベルト51→従動プーリ52→べベルギヤ軸53→第1べベルギヤ54を経て集穀コンベア5の横送りスクリューコンベヤ20に伝達される。
【0029】
第2テンションプーリ50は、図3に示すように、カウンター軸44の右側端部に回動自在に支承された第2テンションアーム60の先端部に軸支されている。第2テンションアーム60に軸支された第2テンションプーリ50は、第2伝動ベルト51に対して下方から当接可能に構成されている。第2テンションアーム60は、第2コイルバネ61及び第2操作ワイヤ62を介して運転部14に設けたテンション操作レバー(図示省略)に連係されている。
テンション操作レバーの操作によって第2操作ワイヤ62の張力を調節することにより、第2テンションアーム60の第2テンションプーリ50が第2伝動ベルト51に対して遠近方向に移動する。これにより、第2テンションプーリ50は、第2伝動ベルト51に張力を付与する伝動状態と張力を付与しない非伝動状態とに切り換えられる。
【0030】
図2図3に示すように、カウンター軸44に設けられている第1中間プーリ45と第2中間プーリ46との配置関係は、第2伝動ベルト51が掛かっている第2中間プーリ46の方が、第1中間プーリ45よりも機外側に位置する。そのため、グレンタンク4を機外側へ回動操作するとき、それに先立って、非伝動状態にある第2伝動ベルト51を取り外す必要がある。この第2伝動ベルト51の取り外し操作を、上述の配置関係によって容易に行うことができる。
【0031】
エンジンルーム37においては、図4に示すように、ディーゼルエンジン35の右外側方にラジエータ36が右向きに配置され、ディーゼルエンジン35とラジエータ36との間に冷却ファン65(図3参照)が配置されている。冷却ファン65は、図3に示すように、第1出力軸38に設けたファン駆動プーリ(図示省略)の回転動力がファンベルト66を介して伝達される。更に、ファンベルト66は、発電用のオルタネータ67に対しても第1出力軸38の回転動力を伝達する形態で設けられている。
【0032】
図4に示すように、ラジエータ36の右側方には、エンジンルーム37の右側開口を覆うエンジンカバーとしての外気導入カバー70が開閉可能に設けられている。外気導入カバー70は、図6図7に示すように、中空状の筐体に構成されている。外気導入カバー70の外周縁部の前半部は、図1に示すように、運転部14の下部形状を構成する操縦席30の右側方の手摺り33や階段状の乗降ステップ34に合わせて屈曲形成されている。外気導入カバー70の外周縁部の後半部は、グレンタンク4の右側のタンク側板4Bの前端縁4b及びタンク側板4Bの下方に脱着自在に配置される点検用の化粧カバー15の前端縁15aに沿って略隙間が無くなる近接状態で屈曲形成されている。
尚、図6図7においては、第1出力プーリ41を省略した形態で表示している。
【0033】
外気導入カバー70は、図5図7に示すように、それの外周縁部の後部側において、機体フレーム11から立設された複数の運転部支持用の支柱のうち、機体後方側の右外側に位置する後部支柱72にヒンジ部73を介して水平方向に開閉自在に支持されている。外気導入カバー70が閉止位置にある状態では、図4に示すように、外気導入カバー70によってディーゼルエンジン35及びラジエータ36の機外側が覆われ、エンジンルーム37の右外側から閉じられる。また、外気導入カバー70が開放位置にある状態では、この外気導入カバー70によってディーゼルエンジン35及びラジエータ36が覆われず、エンジンルーム37が開放される。
【0034】
外気導入カバー70の右外側面の略中央部には、図1に示すように、外気をエンジン冷却風としてエンジンルーム37内に取り入れる円形状の外気取入口74が形成されている。この外気取入口74には、塵埃がエンジン冷却用の外気と共にエンジンルーム37内に浸入することを防ぐロータリスクリーン80が設けられている。
ロータリスクリーン80は、図3図6図7に示すように、車輪形状の回転フレーム81の外側面に防塵網82を張設して構成されている。回転フレーム81は、外気取入口74を形成する外気導入カバー70の開口縁70aの内周面に沿って回動可能な円環状のリム81Aと、回動中心部に配置されるハブ81Bと、リム81Aとハブ81Bとに亘って放射状に設けられる複数のスポーク81Cと、を備える。
回転フレーム81のハブ81Bは、図6に示すように、外気取入口74を上下方向に縦断する状態で外気導入カバー70の内面側に設けられている縦支持部材83に左右方向の水平軸芯周りで回転自在に支持されている。回転フレーム81のハブ81Bには、これの回転軸芯と同芯の従動歯車84が設けられ、縦支持部材83に設けたブラケット85には、従動歯車84と噛合される駆動歯車(図示省略)を備えたモータ86が取付けられている。このモータ86の駆動によりロータリスクリーン80が回転される。
【0035】
次に、ロータリスクリーン80の防塵網82に付着した塵埃を吸引して機外側に排出する吸引除去装置90について説明する。
吸引除去装置90は、図4図6に示すように、ディーゼルエンジン35の機外側で、且つ、左右側面91a,91bの長手方向が前後方向に沿う姿勢の吸引ファン91と、吸引ファン91よりも機外側に配置されたロータリスクリーン80と吸引ファン91とを接続する塵埃吸引ダクト92と、吸引ファン91から機外側に延設された塵埃排気ダクト93とを有している。
吸引除去装置90の吸引ファン91を、ディーゼルエンジン35の機外側で、且つ、左右側面91a,91bの長手方向が前後方向に沿う姿勢で配置することにより、グレンタンク4を機外側へ回動操作したとき、ディーゼルエンジン35の後部側を大きく開放することができる。これにより、ディーゼルエンジン35廻りのメンテナンス、例えば、図5に示すように、オイル給油口77から潤滑油を補給する作業やエンジンフィルタ78の交換作業、オイルパンに貯溜する潤滑油の量を検油棒で計測する作業等の各種のメンテナンス作業の容易化を図ることができる。
【0036】
塵埃吸引ダクト92は、図1図3図4に示すように、ロータリスクリーン80の中心部からロータリスクリーン80の外周縁よりも後方側に向かって緩やかな登り傾斜で延伸される前面吸引ダクト部92Aと、前面吸引ダクト部92Aの後端部から機体内方のやや後方に向かって斜めに配設される円筒状の中継ダクト92Bと、この中継ダクト92Bの左端部と吸引ファン91のファンケース91Aとを左右方向に沿った水平姿勢で連通接続する円筒状の横向き吸引ダクト部92Cとを備える。
前面吸引ダクト部92Aは、横断面形状が略横U字状の半筒状に構成され、ロータリスクリーン80の防塵網82に向かって開口する。この前面吸引ダクト部92Aの開口端縁とロータリスクリーン80の防塵網82との間には、防塵網82に付着した塵埃が通過可能な所定幅の隙間が形成されている。
ロータリスクリーン80から外れた前面吸引ダクト部92Aの後部は、外気導入カバー70の右外側面70bとで筒状に構成されている。この筒状ダクト形成領域の外気導入カバー70の右外側面70bには、円形の塵埃排出孔(図示省略)が形成されている。この塵埃排出孔には、中継ダクト92Bの右端部が連通接続されている。中継ダクト92Bは外気導入カバー70に取り付けられている。
【0037】
図6図7に示すように、機体後方に位置する左右の運転部支持用の後部支柱71,72は、カウンター軸44よりも若干後方に位置する。この左右の後部支柱71,72の中間位置に亘って横桟部材75が架設されている。この横桟部材75における第2中間プーリ46の後方上方に相当する部位には、吸引ファン91のファンケース91Aが、それの左右側面91a,91bが前後方向に沿う姿勢で、且つ、後方ほど下方に位置する傾斜姿勢で取付けられている。この取付け状態では、図3に示すように、ファンケース91Aにおけるファン駆動軸91Dを含む中央部は、カウンター軸44の略直上方に位置する。
ファンケース91Aは、図6図7に示すように、機体内方に向かって開口するファンケース本体91Aaと、これの開口を閉止するファンカバー91Abとを有する。横桟部材75には、ファンケース本体91Aaを取付ける第1取付け部材91Bと、ファンカバー91Abを取付ける第2取付け部材91Cとが設けられている。
【0038】
ファンケース91Aのファンカバー91Abには、図6図7に示すように、カウンター軸44と平行又は略平行なファン駆動軸91Dが貫通状態で回転自在に支承され、このファン駆動軸91Dの内側軸部には、塵埃吸引ダクト92内に負圧を発生させる吸引用の羽根91Eが取付けられている。ファン駆動軸91Dの軸芯と横向き吸引ダクト部92Cのダクト中心線とが合致し、横向き吸引ダクト部92Cは、ファンケース91Aのファンケース本体91Aaに対してファン駆動軸91Dに向けて接続されている。
上述のように、ディーゼルエンジン35の機外側で、且つ、左右側面91a,91bの長手方向が前後方向に沿う姿勢で配置されているファンケース91Aに対して、塵埃吸引ダクト92をファン駆動軸91Dに向けて接続することにより、塵埃吸引ダクト92のダクト長さを短くすることができる。これにより、ダクト部品の小型化と取り付けステー等を含むダクト部品点数の低減化を図ることができるとともに、吸引ファン91の圧損を極力抑えることができる。
【0039】
吸引ファン91のファン駆動軸91Dは、図2図6図7に示すように、カウンター軸44から動力を受けて駆動される。つまり、駆動伝達機構40におけるカウンター軸44とファン駆動軸91Dとの間の駆動伝達部40Aは、カウンター軸44における第1中間プーリ45よりも機体内方側の軸部に設けられた駆動プーリ95と、ファン駆動軸91Dの外側軸部に設けられた受動プーリ96と、ファンケース91Aのファンカバー91Abに取り付けた第3テンションプーリ97と、これらの3つのプーリ95,96,97に亘って巻回される駆動ベルト98とを有する。
ファンカバー91Abの外側面には、図7に示すように、横断面「コ」の字のプーリ取付け台99が固着されている。このプーリ取付け台99には、第3テンションプーリ97を回転自在に支持するプーリ支軸100が、駆動ベルト98に対する遠近方向に取付け位置変更可能な状態で固定されている。このプーリ支軸100の取付け位置調整により駆動ベルト98に適正な張力を付与することができる。
【0040】
上述のように、カウンター軸44とファン駆動軸91Dとが互いに平行又は略平行に配置されているので、カウンター軸44からファン駆動軸91Dへの駆動伝達部40Aの簡素化を図ることができる。さらに、ファンケース91Aのファンカバー91Abに、第3テンションプーリ97を取付けるので、第3テンションプーリ97を機体フレーム11に取付けるための他の取り付け部材を設ける必要がなく、吸引除去装置90の駆動構造の簡素化を図ることができる。
【0041】
塵埃排気ダクト93は、図3図5図7に示すように、ファンケース91Aのファンケース本体91Aaの下端部に接続されたエルボ状の第1排気ダクト部93Aと、この第1排気ダクト部93Aの下向き排気口部に接続された直管状の第2排気ダクト部93Bとを有する。第2排気ダクト部93Bは、化粧カバー15の下側フランジ部15Aに貫通形成されたダクト挿入孔15Bに挿通されている。化粧カバー15の下側フランジ部15Aから下方に突出する第2排気ダクト部93Bの下端部は図5に示すように、、機体フレーム11の右外側端の外方近傍に位置し、右側の走行クローラ12の機外側の上方位置において塵埃を地面に向かって排出する。
なお、化粧カバー15を点検のために取り外すときには、この化粧カバー15を第2排気ダクト部93Bに沿って下方に抜き出す。
【符号の説明】
【0042】
4 グレンタンク
5 集穀コンベア
11 機体フレーム
13 原動機
14 運転部
40 駆動伝達機構
40A 駆動伝達部
41 出力プーリ(第1出力プーリ)
44 カウンター軸
70 外気導入カバー
80 ロータリスクリーン
90 吸引除去装置
91 吸引ファン
91A ファンケース
91D ファン駆動軸
92 塵埃吸引ダクト
93 塵埃排気ダクト
95 駆動プーリ
96 受動プーリ
97 テンションプーリ(第3テンションプーリ)
98 駆動ベルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7