(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】直流送電システムとその保護制御装置並びに保護制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20221208BHJP
H02H 7/12 20060101ALI20221208BHJP
H02H 3/00 20060101ALI20221208BHJP
H02M 7/12 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H02J1/00 301D
H02H7/12 F
H02H3/00 N
H02H3/00 R
H02M7/12 H
H02M7/12 X
(21)【出願番号】P 2019060000
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2021-11-05
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 次世代洋上直流送電システム開発事業 システム開発/要素技術開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉原 徹
(72)【発明者】
【氏名】木村 守
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-521956(JP,A)
【文献】特開2014-158365(JP,A)
【文献】国際公開第2019/043993(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00
H02H 7/12
H02H 3/00
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流を直流に変換する自励式変換装置の直流端子間にコンデンサの直列回路を接続した直流送電システムであって、
前記自励式変換装置の直流端子間に直流側事故除去後に投入される第1のスイッチを含む制動回路の直列回路を接続し、コンデンサの直列回路の接続点と制動回路の直列回路の接続点を大地接続することを特徴とする直流送電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の直流送電システムであって、
前記自励式変換装置の交流端子に前記第1のスイッチの投入、開放後に投入される第2のスイッチを大地接続することを特徴とする直流送電システム。
【請求項3】
交流を直流に変換する自励式変換装置の直流端子間にコンデンサの直列回路を接続した直流送電システムの保護制御装置であって、
前記自励式変換装置の直流端子間に第1のスイッチを含む制動回路の直列回路を接続し、コンデンサの直列回路の接続点と制動回路の直列回路の接続点を大地接続するとともに、
保護制御装置は、前記直流端子における対地電圧の上昇を検知し、対地電圧が上昇した側の直流端子に接続された前記制動回路の第1のスイッチを投入することを特徴とする直流送電システムの保護制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の直流送電システムの保護制御装置であって、
前記保護制御装置は、前記直流端子における対地電圧が所定値に低下したことをもって前記制動回路の第1のスイッチを開放することを特徴とする直流送電システムの保護制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の直流送電システムの保護制御装置であって、
前記自励式変換装置の交流端子に第2のスイッチを大地接続するとともに、
前記保護制御装置は、前記第1のスイッチの投入、開放後に前記第2のスイッチを投入、開放することを特徴とする直流送電システムの保護制御装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の直流送電システムの保護制御装置であって、
前記保護制御装置は、前記自励式変換装置の直流側事故除去後に前記制動回路の第1のスイッチ
を投入し、その後開放することを特徴とする直流送電システムの保護制御装置。
【請求項7】
交流を直流に変換する自励式変換装置の直流端子間にコンデンサの直列回路を接続し、前記自励式変換装置の直流端子間に第1のスイッチを含む制動回路の直列回路を接続し、コンデンサの直列回路の接続点と制動回路の直列回路の接続点を大地接続した直流送電システムの保護制御方法であって、
前記直流端子における対地電圧の上昇を検知し、対地電圧が上昇した側の直流端子に接続された前記制動回路の第1のスイッチを投入することを特徴とする直流送電システムの保護制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の直流送電システムの保護制御方法であって、
前記直流端子における対地電圧が所定値に低下したことをもって前記制動回路の第1のスイッチを開放することを特徴とする直流送電システムの保護制御方法。
【請求項9】
前記自励式変換装置の交流端子に第2のスイッチを大地接続した請求項8に記載の直流送電システムの保護制御方法であって、
前記第1のスイッチの投入、開放後に前記第2のスイッチを投入、開放することを特徴とする直流送電システムの保護制御方法。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の直流送電システムの保護制御方法であって、
前記自励式変換装置の直流側事故除去後に前記制動回路の第1のスイッチを開放することを特徴とする直流送電システムの保護制御方法。
【請求項11】
請求項1または請求項2に記載の直流送電システムであって、
前記自励式変換装置は、複数の単位変換器をカスケード状に接続して構成されるアームを複数備え、
前記単位変換器は、第1の端子と第2の端子の間に第1のスイッチング素子を接続し、第1のスイッチング素子に並列に第2のスイッチング素子とコンデンサの直列回路を接続して構成され、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子の導通/遮断によって、前記第1の端子と前記第2の端子の間に前記コンデンサの電圧を出力可能にされており、
前記複数のアーム各々は少なくとも2つの単位変換器を直列に接続して構成され、前記複数のアームは互いに所定の端子で接続されており、前記複数のアーム各々は前記所定の端子とは異なる端子で各々に対応する相の接続線で外部と接続されることを特徴とする直流送電システム。
【請求項12】
請求項1、請求項2、請求項11のいずれか1項に記載の直流送電システムであって、
前記制動回路は、抵抗と第1のスイッチの直列回路であることを特徴とする直流送電システム。
【請求項13】
請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の直流送電システムの保護制御装置であって、
前記保護制御装置は、直列接続された前記コンデンサの電圧をそれぞれ計測し、コンデンサの電圧値を基に、前記第1のスイッチの投入および開放指令を与えることを特徴とする直流送電システムの保護制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生可能エネルギー電源などの発電システムを、電力変換器および直流送電線を介して連系する、直流送電システムとその保護制御装置並びに保護制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長距離送電や、海底送電の高効率化のために、直流送電システムが用いられる。一般の電力系統は交流系統であるのに対し、直流送電システムでは、交流系統の電力を交直変換器で直流に変換して送電する。
【0003】
直流送電システムに用いられる交直変換器は、古くはサイリスタを用いた他励式交直変換器が主流であったが、近年は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いた自励式交直変換器の導入が増加している。
【0004】
自励式直流送電システムに用いる交直変換器は、高調波が少なく、大容量化や高電圧化に適した方式として、モジュラーマルチレベル変換器(MMC:Modular Multilevel Converter)を適用する事例が増加している。
【0005】
また、直流送電システムの回路方式は、負側直流線路を接地し、正側直流線路のみ対地直流電圧が印可される非対称単極方式や、直流送電システムの中性点を設け、正側直流線路と負側直流線路の両方に対地直流電圧が印可される対称単極方式や、直流送電システムを2組用いて、中性線を共用する双極構成などがある。
【0006】
既存の他励式直流送電システムでは、数ギガワットを交直変換するものもあり、大容量送電や高調波低減に適した方式として、双極構成が採用されている事例が多い。一方、既存の自励式直流送電システムの多くは、その容量が数百メガワットから数ギガワットであり、対称単極方式が採用されている事例が多い。
【0007】
直流送電システムの地絡事故時の保護制御については、例えば特許文献1にて説明されているが、特許文献1は、他励式直流送電システムであり、自励式直流送電システムの場合については、特に言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明においては、対称単極方式、かつ自励式の直流送電システムを構成することを意図しており、さらにその場合の保護制御装置及び保護制御方法の在り方について検討したものである。
【0010】
係る対称単極方式、かつ自励式の直流送電システムの課題の一つとして、直流送電線の地絡事故や送電線故障などによる、直流線路の正負不平衡がある。
【0011】
対称単極方式の自励式直流送電システムでは、交直変換器によって、定常状態においては、正側直流線路と負側直流線路の線間の直流電圧が、直流電圧基準値Vdcになるように制御する。このとき、中性点の電圧は大略0であり、正側直流線路の対地直流電圧が+Vdc/2、負側直流線路の対地直流電圧が-Vdc/2となる。なお本明細書では、正側直流線路の対地直流電圧の大きさと帰線の対地直流電圧の大きさが等しい状態を「正負平衡」状態と呼ぶことにする。
【0012】
このような正負平衡状態で、例えば、正側直流線路で地絡事故が発生した場合、正側直流線路の対地直流電圧は0近傍まで低下する。これに対し、地絡事故発生時も、交直変換器によって、正側直流線路と負側直流線路の線間の直流電圧が、直流電圧基準値Vdcになるように制御されるため、その結果、負側直流線路の対地直流電圧が-Vdcとなり、負側直流線路の対地直流電圧の大きさは、定常状態の約2倍まで上昇する。本明細書では、正側直流線路の対地直流電圧の大きさと帰線の対地直流電圧の大きさが等しくない状態を「正負不平衡」状態と呼ぶことにする。
【0013】
正負不平衡状態は、正側直流線路ないし負側直流線路で地絡事故が発生した場合に起こる。正負不平衡状態では、正側直流線路と負側直流線路のいずれかに、定常状態よりも高い電圧が印可されることになるため、機器の絶縁破壊による故障や直流送電システム自体の緊急停止などを引き起こす可能性がある。
【0014】
以上のことから本発明においては、対称単極方式の自励式直流送電システムにおいて、直流線路の正負不平衡が発生した場合に、速やかに正負不平衡を解消し、直流送電システムの信頼性を高めることができる直流送電システムとその保護制御装置並びに保護制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そこで本発明では、交流を直流に変換する自励式変換装置の直流端子間にコンデンサの直列回路を接続した直流送電システムであって、自励式変換装置の直流端子間に直流側事故除去後に投入される第1のスイッチを含む制動回路の直列回路を接続し、コンデンサの直列回路の接続点と制動回路の直列回路の接続点を大地接続することを特徴とする。
【0016】
また本発明は、交流を直流に変換する自励式変換装置の直流端子間にコンデンサの直列回路を接続した直流送電システムの保護制御装置であって、自励式変換装置の直流端子間に第1のスイッチを含む制動回路の直列回路を接続し、コンデンサの直列回路の接続点と制動回路の直列回路の接続点を大地接続するとともに、保護制御装置は、直流端子における対地電圧の上昇を検知し、対地電圧が上昇した側の直流端子に接続された制動回路の第1のスイッチを投入することを特徴とする。
【0017】
さらに本発明は、交流を直流に変換する自励式変換装置の直流端子間にコンデンサの直列回路を接続し、自励式変換装置の直流端子間に第1のスイッチを含む制動回路の直列回路を接続し、コンデンサの直列回路の接続点と制動回路の直列回路の接続点を大地接続した直流送電システムの保護制御方法であって、直流端子における対地電圧の上昇を検知し、対地電圧が上昇した側の直流端子に接続された前記制動回路の第1のスイッチを投入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、対称単極方式の自励式直流送電システムにおいて、直流線路の正負不平衡が発生した場合に、速やかに正負不平衡を解消し、直流送電システムの信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明が適用される対称単極構成の交直変換所の構成例を示す図。
【
図4】モジュラーマルチレベル変換器の電気的な等価回路を示す図。
【
図5】交直変換所の直流回路部の電気的な等価回路を示す図。
【
図6】直流電圧の正負平衡状態から正負不平衡状態に移行し、さらに正負不平衡解消時にいたる直流電圧の変化、および、制動回路と交流接地極のスイッチ開閉を、時系列で表わした図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面ともに説明する。なお、以下の実施例は本発明の一形態を示すものであり、本発明は要旨を逸脱しない限り、他の形態を含むものである。
【0021】
以下の説明で、特に断りがない限り、「交流」は三相交流を指す。
【0022】
また、以降の説明で、説明を簡単にするために、電圧の値について、数値を用いて説明する。
【0023】
電圧の値は、全て任意単位(arbitrary unit)にて表記し、単位は[a.u.]である。
【0024】
なお、数値については、本発明の実施形態の一例を示すために使用するものであり、本発明の実施形態について、その数値を限定するものではない。
【実施例】
【0025】
本発明の実施例を
図1から
図7を用いて説明する。本発明の実施例では、直流地絡事故で地絡事故が発生した場合における、直流電圧の正負不平衡を解消する原理および各機器の動作と、交直変換所の制御フローチャートについて説明する。
【0026】
最初に、本発明が適用される対称単極構成の交直変換所の構成例を
図1に示し、明らかにする。
図1は、直流送電システムを構成したものである。
【0027】
図1に示す対称単極構成の交直変換所は、交流連系点101に一方端が接続された変圧器102、変圧器102の他方端に交流側端子がされ正側直流送電線104と負側直流送電線105に直流側端子が接続された交直変換器103、変圧器102と交直変換器103の交流側端子間に接続された交流接地極110、正側直流送電線104と負側直流送電線105の間に接続された正側直流コンデンサ106と負側直流コンデンサ107の直列回路、並びに正側直流送電線104と負側直流送電線105の間に接続された正側制動回路108と負側制動回路109の直列回路を備え、2組の直列回路の中間点C1,C2を対地接続している。また正側制動回路108と負側制動回路109はそれぞれ、スイッチ回路と抵抗の直列回路で構成される。
【0028】
図1の構成において、正側直流コンデンサ106と負側直流コンデンサ107の直列回路と、正側制動回路108と負側制動回路109の直列回路とを備えて2組の直列回路の中間点を対地接続することにより直流送電システムの保護装置120を構成している。なお本発明において保護装置120は、交流接地極110を含めて回路構成することにより正負不平衡状態を解消可能となるので、広義には交流接地極110を含めて保護装置120ということができる。
【0029】
なお
図1では直流送電線の相手端における交直変換所の構成を図示していないが、基本的には正負の直流送電線104、105に相手端交直変換器を接続して、いわゆる直流送電システムを構成する。先述した直流送電システムの保護装置120は、直流送電線両端の交直変換所のいずれか一方端に設置されればよく、必ずしも両端の交直変換所に設置されている必要はない。
【0030】
図1において直流送電システムの保護装置120は以下のように構成され、運用されている。
【0031】
まず直流コンデンサ106,107について、正側直流コンデンサ106は一端が正側直流送電線104と電気的に接続され、もう一端が中性点C1と電気的に接続される。また負側直流コンデンサ107は、一端が負側直流送電線105と電気的に接続され、もう一端が中性点C1と電気的に接続される。
【0032】
次に制動回路108,109について、正側制動回路108は、一端が正側直流送電線104と電気的に接続され、もう一端が中性点C2と電気的に接続される。負側制動回路109は、一端が負側直流送電線105と電気的に接続され、もう一端が中性点C2と電気的に接続される。
【0033】
さらに、中性点C1と中性点C2は電気的に接続され、接地される。また交流接地極110は、抵抗Rgとスイッチ回路SWacの直列回路を三相分構成し、スイッチ側の中性点を接地する。
【0034】
最後に正側制動回路108と負側制動回路109は、それぞれスイッチ回路108a、109aと、抵抗108b,109bを直列に接続しており、スイッチ回路108a、109aの投入と開放を切り替えることで、自回路に電流が通流するか否かを制御することが可能である。なおスイッチ回路は機械的なスイッチに限定されるものではなく、例えば自己消弧素子とダイオードの並列回路で構成される半導体スイッチ回路であってもよい。
【0035】
図1の直流送電システムの保護装置120の上記構成によれば、
図1内の記号として、正側直流コンデンサ106の電圧をVp、負側直流コンデンサ107の電圧をVn、交直変換所103の直流側の線間電圧をVdcとするとき、電気的に、VpとVnの和は、Vdcと等しい。また線間電圧Vdc=1であるとき、中間点C1,C2が対地設置されていることからその電位が0であり、正側直流送電線104の電位が1/2、負側直流送電線105の電位が-1/2になっている。
【0036】
図1は、本発明に係る直流送電システムの構成を示しており、要するに「交流を直流に変換する自励式変換装置の直流端子間にコンデンサの直列回路を接続した直流送電システムであって、自励式変換装置の直流端子間に直流側事故除去後に投入される第1のスイッチを含む制動回路の直列回路を接続し、コンデンサの直列回路の接続点と制動回路の直列回路の接続点を大地接続した直流送電システム」である。
【0037】
また
図1の本発明に係る直流送電システムは、自励式変換装置の交流端子に前記第1のスイッチの投入、開放後に投入される第2のスイッチを大地接続する。
【0038】
次に、本発明の実施例に係る交直変換器103の構成例を、
図2を用いて説明する。
図2の実施例に係る交直変換器の構成例は、一般にモジュラーマルチレベル変換器(MMC変換器)と呼ばれる構成である。これにより自励式変換器を構成している。
【0039】
図2の自励式変換器103は、単位変換器201を複数直列接続してアーム202を構成し、かつ正側アーム202Pと負側アーム202Nを直列接続してレグを構成し、3組のレグについてその正負アームの接続点をA相交流接続端204a、B相交流接続端204b、C相交流接続端204cにそれぞれ接続し、3組のレグについてその両端をそれぞれ直流正側接続端205a、直流負側接続端205bに接続する。なお正負の各アームには、正負のリアクトル203P、203Nが直列接続されている。
【0040】
なお交直変換器103には、
図2の電力変換器の他に、遮断器や変圧器など、本発明の実施形態を逸脱しない範囲で、他の電気設備や保護装置を備えていてもよい。
【0041】
図2に例示するように、アーム202は単位変換器201の直列接続回路であり、
図2では、単位変換器201をN個直列接続した場合を例にあげている。ここではアーム202を6組構成し、そのうち正側の3組のアーム202Pの一端をそれぞれ異なるリアクトル203Pに電気的に接続し、もう一端を直流正側接続端205aに電気的に接続する。この3つのリアクトル203Pをリアクトル第1組と呼称する。
【0042】
また残りの3組のアーム202Nの一端をそれぞれ異なるリアクトル203Nに電気的に接続し、もう一端を直流負側接続端205bに電気的に接続する。この3つのリアクトル203Nをリアクトル第2組と呼称する。
【0043】
リアクトル第1組203Pとリアクトル第2組203Nを、電気的に1対1接続し、3つの接続点とA相交流接続端204a、B相交流接続端204b、C相交流接続端204cをそれぞれ電気的に接続する。
【0044】
図2内の記号として、Vdcは交直変換所103の直流側の線間電圧であり、
図1内のVdcと同じである。
【0045】
次に本発明の実施例に係る単位変換器の構成例と動作を、
図3を用いて説明する。
図3は本発明の実施例に係る単位変換器の構成例であり、H側接続端304とL側接続端305の間にL側スイッチング回路302を直列接続し、L側スイッチング回路302に並列にH側スイッチング回路301とコンデンサ303の直列回路を接続した構成とされている。
【0046】
図3内の記号について、iはアーム202内における単位変換器201の番号であり、1からNまでの整数である。VCiは、i番目の単位変換器201のコンデンサ印加電圧であり、VOiは、i番目の単位変換器201の出力電圧であり、SWHi、SWLiはi番目の単位変換器201における、H側スイッチング回路301およびL側スイッチング回路302のオンオフ信号である。
【0047】
H側スイッチング回路301およびL側スイッチング回路302は、オンオフ信号SWHi、SWLiに合わせて、スイッチング回路の両端を短絡もしくは開放状態に切り替える機能を有する。スイッチング回路301,302は、自己消弧素子やダイオードなどを用いて実現可能である。
【0048】
モジュラーマルチレベル変換器は、単位変換器の出力電圧を個別制御することで、機器構成および運用の許す範囲で、任意の交流電圧および直流電圧を出力可能である。
【0049】
次に、モジュラーマルチレベル変換器201の簡易等価回路について、
図4を用いて説明する。
【0050】
モジュラーマルチレベル変換器201の等価回路401としては、交流電圧源を3つ用いて構成される交流回路模擬部402と、直流電圧源を2つ用いて構成される直流回路模擬部403を用いて、モデル化する方法が知られている。
図4はモジュラーマルチレベル変換器の電気的な等価回路であり、モジュラーマルチレベル変換器401から構成される。なお、モジュラーマルチレベル変換器401では、リアクトルは省略して図示している。
【0051】
交流回路模擬部402は、A相交流電圧源404a、B相交流電圧源404b、C相交流電圧源404cから構成される。直流回路模擬部403は、正側直流電圧源405a、負側直流電圧源405bから構成される。
【0052】
実際の運用では、モジュラーマルチレベル変換器401が交流接続端から授受する有効電力と、直流接続端から授受する有効電力が大略等しくなるよう、モジュラーマルチレベル変換器内の単位変換器の出力電圧を制御する。
【0053】
このことは、
図4の等価回路においては、交流回路模擬部402がA相交流接続端204a、B相交流接続端204b、C相交流接続端204cの3つの交流接続端子で授受する有効電力の和と、直流回路模擬部403が直流正側接続端205a、直流負側接続端205bの2つの直流接続端子から授受する有効電力の和が大略等しくなるよう、A相交流電圧源404a、B相交流電圧源404b、C相交流電圧源404cおよび正側直流電圧源405a、負側直流電圧源405bの電圧を出力することと等価である。
【0054】
次に、正側直流電圧源405aの出力電圧Vdcpと負側直流電圧源405bの出力電圧VdcnおよびVdcの関係について述べる。
【0055】
モジュラーマルチレベル変換器401について、正側直流電圧源出力電圧Vdcp、負側直流電圧源出力電圧Vdcnの和は直流側線間電圧Vdcと等しく、正側直流電圧源出力電圧Vdcp、負側直流電圧源出力電圧Vdcnが大略等しくなるよう、モジュラーマルチレベル変換器401が制御される。
【0056】
次に、
図1の直流送電システムにおける直流電圧の正負不平衡を解消する原理および各機器の動作について
図5と
図6を用いて説明する。
【0057】
本発明の実施例に係る直流電圧の正負不平衡を解消する原理は、制動回路の投入による第1の正負不平衡解消と、交流接地極の投入による第2の正負不平衡解消の組み合わせによって実現する。
【0058】
図5は、本発明の実施例に係る交直変換所103を、モジュラーマルチレベル変換器201の簡易等価回路401を用いて、直流側の回路のみを表記した簡易等価回路図である。
【0059】
図5は
図1と比較して、交直変換器103を、モジュラーマルチレベル変換器201の直流回路模擬部403で表わし、直流地絡事故Fを追加し、モジュラーマルチレベル変換器201の交流回路模擬部402、交流連系点101、変圧器102の図を省略した点以外は、
図1と同様である。
【0060】
モジュラーマルチレベル変換器201の直流回路模擬部403は、正側直流電圧源405aおよび、負側直流電圧源405bから構成される。なお、以降の説明では、正側制動回路108のスイッチ108aをBCpで表記し、負側制動回路109のスイッチ109aをBcnと表記し、交流接地極110のスイッチをSWacと表記する。
【0061】
図6は、直流電圧の正負平衡状態から正負不平衡状態に移行し、さらに正負不平衡解消時にいたる直流電圧の変化、および、制動回路と交流接地極のスイッチ開閉を、時系列で表わした図である。
【0062】
図6の上から一番目は、
図5内の直流側線間電圧Vdc、正側直流電圧源出力電圧Vdcp、負側直流電圧源出力電圧Vdcnについて図示しており、上から二番目は
図5内の正側直流コンデンサ電圧Vpと負側直流コンデンサ電圧Vnについて図示しており、上から三番目は
図5内の正側制動回路スイッチBCp、負側制動回路スイッチBCn、交流接地極スイッチSWacについて図示している。
【0063】
以降の説明では、
図6の時系列に沿って、直流電圧の正負不平衡解消に至るまでの、直流電圧の変化、および、制動回路と交流接地極のスイッチ開閉について説明する。
【0064】
まず、直流地絡事故Fが発生する時刻T0前の初期状態について、説明する。このとき直流側線間電圧Vdcは、交直変換器103の制御によって、Vdc=1.0[a.u.]に制御されている。またこのとき、回路の対称性より、正側直流電圧源出力電圧Vpおよび負側直流電圧源出力電圧Vnは、正側直流電圧源出力電圧Vdcの大略半分の値となるため、Vp=Vn=0.5[a.u.]である。
【0065】
また正側直流電圧源出力電圧Vdcpと負側直流電圧源出力電圧Vdcnの和は直流側線間電圧Vdcと等しく、かつ、正側直流電圧源出力電圧Vdcpと負側直流電圧源出力電圧Vdcnが大略等しくなるよう、モジュラーマルチレベル変換器401にて制御されるため、Vdcp=Vdcn=0.5[a.u.]である。
【0066】
なお、直流地絡事故Fが発生する時刻T0前の初期状態において、正側制動回路スイッチBCp、負側制動回路スイッチBCn、交流接地極スイッチSWacは全て開放状態である。この時、Vp=Vn=0.5[a.u.]に保たれているため、直流送電線路は正負平衡状態である。
【0067】
次に、時刻T0で直流地絡事故Fが発生した後について説明する。直流線路地絡Fが発生すると、正側直流送電線104の対地電位は大略0.0[a.u.]まで低下する。このとき、正側直流コンデンサ106の電圧Vpは、電気的に正側直流送電線104の対地電位と等しいため、Vpも0.0[a.u.]まで低下する。
【0068】
また交直変換所103の制御によって、直流側線間電圧Vdcは1.0[a.u.]に保たれているため、その結果、負側直流電圧源出力電圧Vnは1.0[a.u.]まで上昇し、正負不平衡状態となる。
【0069】
一方、本発明の実施例では、正側直流電圧源出力電圧Vdcpと負側直流電圧源出力電圧Vdcnの和は直流側線間電圧Vdcと等しく、かつ、正側直流電圧源出力電圧Vdcpと負側直流電圧源出力電圧Vdcnが大略等しくなるよう、モジュラーマルチレベル変換器201が制御されるため、正側直流電圧源出力電圧Vdcpと負側直流電圧源出力電圧Vdcnは0.5[a.u.]のままである。
【0070】
次に、
図6の時刻T1に着目する。時刻T1では、図示せぬ直流送電線保護システムの保護制御装置が作動して正側直流送電線104の直流遮断器を開放し、直流地絡事故Fが除去されたものとする。
【0071】
通常の他励式の直流送電システムであれば、直流地絡事故Fが除去されれば電圧関係は事故発生前に復旧するが、自励式の直流送電システムでは事故時電圧分布がそのまま残っていることについて説明する。
【0072】
このとき、交直変換所103の制御によって、直流側線間電圧Vdc=1.0[a.u.]であり、本発明の実施例では、正側直流電圧源出力電圧Vdcp、負側直流電圧源出力電圧Vdcnの和は直流側線間電圧Vdcと等しく、かつ、正側直流電圧源出力電圧Vdcp、負側直流電圧源出力電圧Vdcnが大略等しくなるよう、モジュラーマルチレベル変換器201が制御されるため、Vdcp=Vdcn=0.5[a.u.]である。
【0073】
一方、直流線路地絡401が除去された後、正側直流電圧源出力電圧Vpおよび負側直流電圧源出力電圧Vnについては、Vp=0.0[a.u.]、Vn=1.0[a.u.]のままであり、正負不平衡状態が継続する。
【0074】
この時刻T1以後の状態では、直流地絡事故F自体は除去されたにも関わらず、直流地絡事故Fが発生した正側直流送電線104ではなく、他方の負側直流送電線105に印可されていた電圧が直前の1/2から1.0に増加し続いており、負側直流送電線105における電力耐量を超過していることから早急に電圧関係を復旧させる必要がある。
【0075】
本発明では、事故除去後の電圧関係復旧作業を2段階に実行する。最初の第1段階では、電圧急増を検知した側の直流コンデンサに接続されている制動回路のスイッチBCを投入する。
図1では、時刻T2で、負側制動回路109のスイッチBCnを閉じた後について説明する。本発明の実施例では負側制動回路109のスイッチBCnを閉じることで第1段階の正負不平衡解消を実施する。
【0076】
本発明の実施例では、正側直流コンデンサ106と負側直流コンデンサ107のうち、電圧が高いほうのコンデンサに、電気的に並列に挿入されている制動回路108,109のいずれかのスイッチを閉じる。ここでは、正側直流電圧源出力電圧Vp=0.0[a.u.]、負側直流電圧源出力電圧Vn=1.0[a.u.]であるため、負側制動回路109のスイッチBCnを閉じる。
【0077】
負側制動回路109のスイッチBCnを閉じることで、負側直流コンデンサ107が放電され、負側直流電圧源出力電圧Vnが1.0[a.u.]から低下する。一方、直流側線間電圧Vdcは1.0[a.u.]に保たれているため、正側直流電圧源出力電圧Vpは0.0[a.u.]から上昇する。
【0078】
その結果、
図6のように、時刻T2から負側直流電圧源出力電圧Vnが低下し、正側直流電圧源出力電圧Vpが上昇するため、正負不平衡状態を解消するように、電圧が変化する。
【0079】
本発明の実施例では、正側直流電圧源出力電圧Vp=0.45[a.u.]、正側直流電圧源出力電圧Vn=0.55[a.u.]になる時刻まで、負側制動回路109のスイッチBCnを閉じるとする。
図6では、正側制動回路109のスイッチVp=0.45[a.u.]、負側制動回路109のスイッチVn=0.55[a.u.]になった時刻T3で、負側制動回路109のスイッチBCnを開放する。以上が本発明の実施例に係る第1の正負不平衡解消段階である。
【0080】
なお、本発明の実施例では、第1の正負不平衡解消段階では、まだ完全に正負不平衡が解消されていないため、第1の正負不平衡解消後、交流接地極を投入することで第2の正負不平衡解消段階を実施する。
【0081】
本発明の実施例では、時刻T4で、交流接地極110のスイッチSWacを閉じる。交流接地極110のスイッチSWacを閉じることで、
図5のモジュラーマルチレベル変換器201の直流回路模擬部403に示すように、正側直流電圧源405aと正側直流コンデンサ106の並列回路が形成される。
【0082】
このとき正側直流電圧源405aの電圧Vdcpは、交直変換器103の制御により0.5[a.u.]一定であるため、正側直流コンデンサ電圧Vpも0.5[a.u.]に近づく。また直流側線間電圧Vdcは1.0[a.u.]一定であるため、正側直流コンデンサ電圧Vpの変化に合わせて、負側直流コンデンサ電圧Vnも0.5[a.u.]に近づく。最終的に、Vp=Vn=0.5[a.u.]になった時点で、正負不平衡が解消され、交流接地極110のスイッチSWacを開放する。以上が本発明の実施例に係る第2の正負不平衡解消段階である。
【0083】
以上が、本発明の実施例に係る、直流電圧の正負不平衡解消時の、直流電圧の変化、および、制動回路と交流接地極110のスイッチ開閉の説明である。なお、本発明の実施例の説明では、正側線路で地絡事故が起きた場合について説明したが、負側線路で地絡事故が起きた場合についても、同様のシーケンスによって、正負不平衡を解消することができる。
【0084】
また、本発明の実施例では、正負不平衡を解消する方法として、制動回路の投入による第1の不平衡解消段階と、交流接地極110の投入による第2の不平衡解消段階の組み合わせによる方法を示したが、第1の不平衡解消段階のみで正負不平衡を解消できる場合には、交流接地極110の投入による第2の不平衡解消段階は不要である。
【0085】
例えば、本発明の実施例に係る、直流電圧の正負不平衡解消段階時の、直流電圧の変化、および、制動回路と交流接地極110のスイッチ開閉の説明の中で、時刻T3で正側直流コンデンサ電圧Vp=0.45[a.u.]、負側直流コンデンサ電圧Vn=0.55[a.u.]になったとし、負側制動回路スイッチBCnを開放したが、負側制動回路スイッチBCnを、Vp=Vn=0.5[a.u.]の時刻で開放することで、第1の不平衡解消段階のみで、電圧不平衡を解消することができる。
【0086】
また、第1の不平衡解消段階では、制動回路を投入し続けている間は、正側直流コンデンサ電圧Vpおよび負側直流コンデンサ電圧Vnが上昇ないし下降し続ける。このため、制動回路の開放が遅れると、第1の不平衡解消段階が効きすぎてしまい、かえって正負不平衡を増大させる懸念がある。
【0087】
しかし、この場合には、交流接地極110の投入による第2の不平衡解消段階によって、正側直流コンデンサ電圧Vpおよび負側直流コンデンサ電圧Vnを0.5[a.u.]に近づけることで、最終的に正負不平衡を解消可能である。
【0088】
以上が、本発明の実施例に係る、直流電圧の正負不平衡を解消する原理および各機器の動作についての説明である。
【0089】
以上説明の直流送電システムは、システムを保護するための保護制御装置を備えている。この保護制御装置は、「交流を直流に変換する自励式変換装置の直流端子間にコンデンサの直列回路を接続した直流送電システムの保護制御装置であって、自励式変換装置の直流端子間に第1のスイッチを含む制動回路の直列回路を接続し、コンデンサの直列回路の接続点と制動回路の直列回路の接続点を大地接続するとともに、保護制御装置は、直流端子における対地電圧の上昇を検知し、対地電圧が上昇した側の直流端子に接続された制動回路の第1のスイッチを投入する」ことにより、直流電圧の正負不平衡を解消する。さらに保護制御装置は、「直流端子における対地電圧が所定値に低下したことをもって制動回路の第1のスイッチを開放し、さらに自励式変換装置の交流端子に第2のスイッチを大地接続するとともに、第1のスイッチの投入、開放後に第2のスイッチを投入、開放する。
【0090】
次に、本発明の実施例に係る、交直変換所の制御フローチャートについて、
図7を用いて説明する。
【0091】
図7は本発明の実施例に係る、交直変換所の制御フローチャートであり、線路地絡判定部701、制動回路動作部702、制動回路動作完了判定部703、交流接地極動作判定部704、交流接地極動作部705、交流接地極動作完了判定部706、終了707から構成されている。以降、
図7の制御フローチャートの各要素について説明する。
【0092】
線路地絡判定部701では、正側直流コンデンサ電圧Vp、負側直流コンデンサ電圧Vn、直流側線間電圧Vdcの情報を基に、正側線路ないし負側線路で地絡事故が発生したかを判定する。
【0093】
判定方法としては、例えば、正側直流コンデンサ電圧Vpが、あらかじめ定められたしきい値Vthよりも小さく、かつ、直流側線間電圧Vdcが予め定められたしきい値Vdcthよりも小さい場合に、正側線路で地絡事故が発生したと判定し、負側直流コンデンサ電圧Vnが、あらかじめ定められたしきい値Vthよりも小さく、かつ、直流側線間電圧Vdcが予め定められたしきい値Vdcthよりも小さい場合に、負側線路で地絡事故が発生したと判定する方法が考えられる。
図6の場合、例えば、Vth=0.3[a.u.]、Vdcth=1.3[a.u.]としきい値を設定することで、正側線路で地絡事故が起きたと判定できる。
【0094】
線路地絡判定部701で線路地絡が発生したと判定された場合には、制動回路動作部702へ進む。なお、線路地絡判定部701で線路地絡が発生したと判定したことなどを受けて、図示せぬ直流送電線路保護制御装置が作動して直流遮断器を開放するなどして、直流地絡事故Fを事故除去する。
【0095】
制動回路動作部702では、線路地絡判定部701で地絡事故が発生したと判定された場合に、制動回路のスイッチを投入する。具体的には、正側線路で地絡事故が発生したと判定された場合には、負側制動回路スイッチBCnを投入し、負側線路で地絡事故が発生したと判定された場合には、正側制動回路スイッチBCpを投入する。
図6の場合、正側線路で地絡事故が起きたと判定されたため、負側制動回路109のスイッチBCnを投入している。なおこの操作は、直流地絡事故Fを事故除去の確認後とするのがよい。
【0096】
制動回路動作完了判定部703では、制動回路動作部702によって正負不平衡が解消されたかどうかを判定する。判定方法としては、例えば、正側直流コンデンサ電圧Vpと負側直流コンデンサ電圧Vnの差分の絶対値が、あらかじめ定められたしきい値Vth2よりも小さい場合に、制動回路の動作によって、正負不平衡が解消されたと判定する。例えばVth2=0.1[a.u.]と設定すると、
図6の時刻T3時点で、正負不平衡が解消されたと判定できる。
【0097】
交流接地極動作判定部704では、制動回路の投入による第一の不平衡解消段階を実施後に、まだ正負不平衡が残っているかを判定する。判定方法としては、例えば、正側直流コンデンサ電圧Vpと負側直流コンデンサ電圧Vnの差分の絶対値が、あらかじめ定められたしきい値Vth3よりも大きい場合に、正負不平衡が残っていると判定する。
図6の場合、例えばVth3=0.0[a.u.]と設定すると、
図6の時刻T3後も、正負不平衡が残っていると判定できる。
【0098】
交流接地極動作部705では、交流接地極動作判定部704で正負不平衡が残っていると判定された場合に、交流接地極110を投入する。交流接地極動作完了判定部706では、交流接地極動作部705を経て、正負不平衡が解消されたかを判定する。判定方法としては、例えば、正側直流コンデンサ電圧Vpと負側直流コンデンサ電圧Vnの差分の絶対値が、あらかじめ定められたしきい値Vth3以下の場合に、正負不平衡が解消されたと判定する。
図6の場合、時刻T5で正側直流コンデンサ電圧Vpと負側直流コンデンサ電圧Vnの差分の絶対値が0.0[a.u.]となっているため、正負不平衡が解消されたと判定できる。
【0099】
交流接地極動作完了判定部706で、正負不平衡が解消されたと判定された場合には、交流接地極のスイッチを開放し、終了707へ進む。そうでない場合は、交流接地極の投入を継続する。最終的に終了707にて、一連の制御フローチャートが完了する。
【0100】
なお、制動回路動作完了判定部703にてVth2=0.0[a.u.]と設定し、第一の不平衡解消のみで、正負不平衡を解消できた場合には、交流接地極動作判定部704、交流接地極動作部705、交流接地極動作完了判定部706は不要である。
【0101】
以上が、本発明の実施例に係る上記の一連のシーケンスを実現するための交直変換所の制御フローチャートである。
【0102】
上記した保護制御方法は、「交流を直流に変換する自励式変換装置の直流端子間にコンデンサの直列回路を接続し、自励式変換装置の直流端子間に第1のスイッチを含む制動回路の直列回路を接続し、コンデンサの直列回路の接続点と制動回路の直列回路の接続点を大地接続した直流送電システムの保護制御方法であって、直流端子における対地電圧の上昇を検知し、対地電圧が上昇した側の直流端子に接続された制動回路の第1のスイッチを投入する」ものである。
【0103】
なお、本発明の実施例の説明においては、制動回路は、抵抗とスイッチの直列回路の場合を例に説明したが、制動回路は、コンデンサの電圧を下げる機能を有していればよく、回路構成は、抵抗とスイッチの直列回路に限定されない。
【符号の説明】
【0104】
101:交流連系点
102:変圧器
103:交直変換器
104:正側直流送電線
105:負側直流送電線
106:正側直流コンデンサ
107:負側直流コンデンサ
108:正側制動回路
109:負側制動回路
110:交流接地極
201:単位変換器
202:アーム
203:リアクトル
204a:A相交流接続端
204b:B相交流接続端
204c:C相交流接続端
205a:直流正側接続端
205b:直流負側接続端
301:H側スイッチング回路
302:L側スイッチング回路
303:コンデンサ
304:H側接続端
305:L側接続端
401:モジュラーマルチレベル変換器
402:交流回路模擬部
403:直流回路模擬部
404a:A相交流電圧源
404b:B相交流電圧源
404c:C相交流電圧源
405a:正側直流電圧源
405b:負側直流電圧源
F:直流地絡事故
701:線路地絡判定部
702:制動回路動作部
703:制動回路動作完了判定部
704:交流接地極動作判定部
705:交流接地極動作部
706:交流接地極動作完了判定部