(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両管理装置、車両制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/06 20060101AFI20221208BHJP
B60W 40/06 20120101ALI20221208BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20221208BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20221208BHJP
G08G 1/14 20060101ALI20221208BHJP
B60R 99/00 20090101ALI20221208BHJP
B60Q 1/24 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B60W30/06
B60W40/06
G08G1/16 C
G08G1/09 H
G08G1/14 A
B60R99/00 321
B60R99/00 330
B60Q1/24 E
(21)【出願番号】P 2019090832
(22)【出願日】2019-05-13
【審査請求日】2021-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】野口 順平
(72)【発明者】
【氏名】杉原 智衣
(72)【発明者】
【氏名】高田 雄太
(72)【発明者】
【氏名】田口 龍馬
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-228002(JP,A)
【文献】特開2009-139983(JP,A)
【文献】特開2005-153568(JP,A)
【文献】特開2004-209996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 ~ 60/00
G08G 1/00 ~ 1/16
B60R 99/00
B60Q 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車両制御装置であって、
前記車両が自動駐車する第1駐車枠に隣接する第2駐車枠に停止している他車両から、前記第2駐車枠の枠線の位置情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記第2駐車枠の枠線の位置情報に基づいて、前記第1駐車枠の枠線の位置を算出する算出部と、
を備える車両制御装置。
【請求項2】
前記第1駐車枠の枠線を認識する第1認識部と、
前記第1認識部により前記第1駐車枠の枠線が認識されない場合、前記他車両に対して、前記第2駐車枠の枠線の位置情報を要求するリクエストを送信する第1要求部と、
をさらに備える、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記リクエストに基づいて起動された前記他車両のセンサにより測定された前記第2駐車枠の枠線の位置情報を取得する、
請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記他車両の位置を認識する第2認識部をさらに備え、
前記取得部は、前記他車両から、前記他車両と前記第2駐車枠の枠線との間の距離を示す情報を取得し、
前記算出部は、前記第2認識部により認識された前記他車両の位置と、前記取得部により取得された前記他車両と前記第2駐車枠の枠線との間の距離を示す情報とに基づいて、前記第1駐車枠の枠線の位置を算出する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記算出部は、前記車両の位置と前記第2認識部により認識された前記他車両の位置との間の距離から、前記取得部により取得された前記他車両と前記第2駐車枠の枠線との間の距離を減算することにより、前記第1駐車枠の枠線の位置を算出する、
請求項4に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記他車両から、前記第2駐車枠の枠線の位置情報に基づいて算出された前記第1駐車枠の枠線の位置情報を取得する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記他車両に対して、前記他車両の下部を照らすライトの動作を要求するリクエストを送信する第2要求部をさらに備える、
請求項1から6のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記第1駐車枠と、前記第2駐車枠との間に、少なくとも1つの他の駐車枠が存在する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項9】
前記算出部により算出された前記第1駐車枠の枠線の位置に基づいて、前記車両の前記第1駐車枠への自動駐車を制御する制御部をさらに備える、
請求項1から8のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項10】
前記算出部により算出された前記第1駐車枠の枠線の位置に基づいて、前記車両の前記第1駐車枠への自動駐車を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記第1認識部により前記第1駐車枠の枠線が認識されず、且つ、前記取得部により前記他車両から前記第2駐車枠の枠線の位置情報が取得されない場合、前記車両が自動駐車する駐車枠を変更する、
請求項2または3に記載の車両制御装置。
【請求項11】
前記算出部により算出された前記第1駐車枠の枠線の位置に基づいて、前記車両の前記第1駐車枠への自動駐車を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は
、前記車両の車幅方向の中央位置が、
前記算出部により算出された前記第1駐車枠の枠線の位置に基づいて算出された前記第1駐車枠の幅方向の中央位置と重なるように自動駐車を制御する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の車両制御装置により送信された前記第2駐車枠の枠線の位置情報に基づいて、前記第1駐車枠に誘導する車両を選別する、
車両管理装置。
【請求項13】
車両に搭載される車両制御装置のコンピュータが、
前記車両が自動駐車する第1駐車枠に隣接する第2駐車枠に停止している他車両から、前記第2駐車枠の枠線の位置情報を取得し、
取得された前記第2駐車枠の枠線の位置情報に基づいて、前記第1駐車枠の枠線の位置を算出する、
車両制御方法。
【請求項14】
車両に搭載される車両制御装置のコンピュータに、
前記車両が自動駐車する第1駐車枠に隣接する第2駐車枠に停止している他車両から、前記第2駐車枠の枠線の位置情報を取得させ、
取得された前記第2駐車枠の枠線の位置情報に基づいて、前記第1駐車枠の枠線の位置を算出させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置、車両管理装置、車両制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両を自動的に制御することについて研究が進められている。この技術を利用した自動バレーパーキングにおいて、自動駐車を行う車両は、駐車場管理装置から駐車枠の空き状況に関する情報を受信し、この情報に基づいて駐車枠への移動を行う。駐車枠付近に到着した車両は、車両に搭載されたセンサを用いて駐車枠の枠線(例えば、白線)を認識し、認識された枠線内に駐車する。
【0003】
また、車両の運転支援を目的として、自車両の周囲画像を撮影し、撮像された周囲画像に基づいて、自車両の周囲の交通状況および異常事象の内の少なくとも一方を含む走行関連情報を検出して、他車両に無線で送信する車車間通信システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような自動バレーパーキングにおいては、時間帯(例えば、日没後)や悪天候などの影響により駐車枠付近の明るさが十分ではない場合、車両に搭載されたセンサが駐車枠の枠線を認識できない場合があった。また、逆光などの影響によりセンサが駐車枠の枠線を認識できない場合があった。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、自動バレーパーキングの自動駐車処理において、駐車枠を認識することができない場合であっても正確な駐車制御を行うことが可能な車両制御装置、車両管理装置、車両制御方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る車両制御装置、車両管理装置、車両制御方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る車両制御装置は、車両に搭載される車両制御装置であって、前記車両が自動駐車する第1駐車枠に隣接する第2駐車枠に停止している他車両から、前記第2駐車枠の枠線の位置情報を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記第2駐車枠の枠線の位置情報に基づいて、前記第1駐車枠の枠線の位置を算出する算出部とを備えるものである。
【0008】
(2):上記(1)の態様において、前記第1駐車枠の枠線を認識する第1認識部と、前記第1認識部により前記第1駐車枠の枠線が認識されない場合、前記他車両に対して、前記第2駐車枠の枠線の位置情報を要求するリクエストを送信する第1要求部と、をさらに備えるものである。
【0009】
(3):上記(2)の態様において、前記取得部は、前記リクエストに基づいて起動された前記他車両のセンサにより測定された前記第2駐車枠の枠線の位置情報を取得するものである。
【0010】
(4):上記(1)から(3)のいずれかの態様において、前記他車両の位置を認識する第2認識部をさらに備え、前記取得部は、前記他車両から、前記他車両と前記第2駐車枠の枠線との間の距離を示す情報を取得し、前記算出部は、前記第2認識部により認識された前記他車両の位置と、前記取得部により取得された前記他車両と前記第2駐車枠の枠線との間の距離を示す情報とに基づいて、前記第1駐車枠の枠線の位置を算出するものである。
【0011】
(5):上記(4)の態様において、前記算出部は、前記車両の位置と前記第2認識部により認識された前記他車両の位置との間の距離から、前記取得部により取得された前記他車両と前記第2駐車枠の枠線との間の距離を減算することにより、前記第1駐車枠の枠線の位置を算出するものである。
【0012】
(6):上記(1)から(5)のいずれかの態様において、前記取得部は、前記他車両から、前記第2駐車枠の枠線の位置情報に基づいて算出された前記第1駐車枠の枠線の位置情報を取得するものである。
【0013】
(7):上記(1)から(6)のいずれかの態様において、前記他車両に対して、前記他車両の下部を照らすライトの動作を要求するリクエストを送信する第2要求部をさらに備えるものである。
【0014】
(8):上記(1)から(7)のいずれかの態様において、前記第1駐車枠と、前記第2駐車枠との間に、少なくとも1つの他の駐車枠が存在するものである。
【0015】
(9):上記(1)から(8)のいずれかの態様において、前記算出部により算出された前記第1駐車枠の枠線の位置に基づいて、前記車両の前記第1駐車枠への自動駐車を制御する制御部をさらに備えるものである。
【0016】
(10):上記(2)または(3)の態様において、前記算出部により算出された前記第1駐車枠の枠線の位置に基づいて、前記車両の前記第1駐車枠への自動駐車を制御する制御部をさらに備え、前記制御部は、前記第1認識部により前記第1駐車枠の枠線が認識されず、且つ、前記取得部により前記他車両から前記第2駐車枠の枠線の位置情報が取得されない場合、前記車両が自動駐車する駐車枠を変更するものである。
【0017】
(11):上記(2)または(3)の態様において、前記算出部により算出された前記第1駐車枠の枠線の位置に基づいて、前記車両の前記第1駐車枠への自動駐車を制御する制御部をさらに備え、前記制御部は、前記第1認識部により前記第1駐車枠の枠線が認識されず、且つ、前記取得部により前記他車両から前記第2駐車枠の枠線の位置情報が取得されない場合、前記車両の車幅方向の中央位置が、前記第1駐車枠の幅方向の中央位置と重なるように自動駐車を制御するものである。
【0018】
(12):この発明の他の態様に係る車両管理装置は、上記の(1)から(11)のいずれかの態様の車両制御装置により送信された前記第2駐車枠の枠線の位置情報に基づいて、前記第1駐車枠に誘導する車両を選別するものである。
【0019】
(13):この発明の他の態様に係る車両制御方法は、車両に搭載される車両制御装置のコンピュータが、前記車両が自動駐車する第1駐車枠に隣接する第2駐車枠に停止している他車両から、前記第2駐車枠の枠線の位置情報を取得し、取得された前記第2駐車枠の枠線の位置情報に基づいて、前記第1駐車枠の枠線の位置を算出するものである。
【0020】
(14):この発明の他の態様に係るプログラムは、車両に搭載される車両制御装置のコンピュータに、前記車両が自動駐車する第1駐車枠に隣接する第2駐車枠に停止している他車両から、前記第2駐車枠の枠線の位置情報を取得させ、取得された前記第2駐車枠の枠線の位置情報に基づいて、前記第1駐車枠の枠線の位置を算出させるものである。
【発明の効果】
【0021】
(1)から(7)、(9)から(11)、(13)、(14)によれば、自動バレーパーキングの自動駐車処理において、駐車枠を認識することができない場合であっても正確な駐車制御を行うことが可能である。
【0022】
(8)によれば、駐車枠付近の明るさを高めることでき、これにより、駐車枠の認識を可能にすることができる。
【0023】
(12)によれば、車両制御装置側で駐車枠の駐車可能空間を把握し、自動駐車における車両の誘導制御を最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態に係る車両制御装置を利用した車両システム1の構成図である。
【
図2】実施形態に係る第1制御部120および第2制御部160の機能構成図である。
【
図3】実施形態に係る自走駐車イベントが実行される場面を模式的に示す図である。
【
図4】実施形態に係る駐車場管理装置400の構成の一例を示す図である。
【
図5】実施形態に係る自動運転制御装置100の自走駐車イベントの入庫時の動作フローの一例を示す図である。
【
図6】実施形態に係る自車両Mが駐車スペースPSまでの移動を完了した様子を示す図である。
【
図7】実施形態に係る枠線情報を説明する図である。
【
図8】実施形態に係る枠線情報MDの一例を示す図である。
【
図9】実施形態に係る算出部148による駐車枠Lの枠線の位置の算出処理の一例を説明する図である。
【
図10】実施形態に係る算出部148による駐車枠Lの枠線の位置の算出処理の他の例を説明する図である。
【
図11】実施形態に係る算出部148による駐車枠Lの枠線の位置の算出処理の他の例を説明する図である。
【
図12】実施形態に係る他車両の下部を照らす足元ライトが動作された様子を示す図である。
【
図13】実施形態に係る自車両Mと他車両との位置関係の他の例を説明する図である。
【
図14】実施形態の自動運転制御装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照し、本発明の車両制御装置、車両管理装置、車両制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0026】
<実施形態>
[全体構成]
図1は、実施形態に係る車両制御装置を利用した車両システム1の構成図である。車両システム1が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
【0027】
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、ファインダ14と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、ナビゲーション装置50と、MPU(Map Positioning Unit)60と、運転操作子80と、自動運転制御装置100(「車両制御装置」の一例)と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、
図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
【0028】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両システム1が搭載される車両の任意の箇所に取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
【0029】
レーダ装置12は、自車両Mの周辺にミリ波などの電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置12は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0030】
ファインダ14は、LIDAR(Light Detection and Ranging)である。ファインダ14は、自車両Mの周辺に光を照射し、散乱光を測定する。ファインダ14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。ファインダ14は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。
【0031】
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびファインダ14のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、速度などを認識する。物体認識装置16は、認識結果を自動運転制御装置100に出力する。物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびファインダ14の検出結果をそのまま自動運転制御装置100に出力してよい。車両システム1から物体認識装置16が省略されてもよい。
【0032】
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi-Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などを利用して、自車両Mの周辺に存在する他車両または駐車場管理装置、或いは各種サーバ装置と通信する。駐車場管理装置の機能の詳細については後述する。
【0033】
HMI30は、自車両Mの乗員に対して各種情報を提示すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30は、各種表示装置、スピーカ、ブザー、タッチパネル、スイッチ、キーなどを含む。
【0034】
車両センサ40は、自車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
【0035】
ナビゲーション装置50は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機51と、ナビHMI52と、経路決定部53とを備える。ナビゲーション装置50は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に第1地図情報54を保持している。GNSS受信機51は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、自車両Mの位置を特定する。自車両Mの位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。ナビHMI52は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キーなどを含む。ナビHMI52は、前述したHMI30と一部または全部が共通化されてもよい。経路決定部53は、例えば、GNSS受信機51により特定された自車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI52を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、地図上経路)を、第1地図情報54を参照して決定する。第1地図情報54は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報54は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報などを含んでもよい。地図上経路は、MPU60に出力される。ナビゲーション装置50は、地図上経路に基づいて、ナビHMI52を用いた経路案内を行ってもよい。ナビゲーション装置50は、例えば、乗員の保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の機能によって実現されてもよい。ナビゲーション装置50は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから地図上経路と同等の経路を取得してもよい。
【0036】
MPU60は、例えば、推奨車線決定部61を含み、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に第2地図情報62を保持している。推奨車線決定部61は、ナビゲーション装置50から提供された地図上経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報62を参照してブロックごとに推奨車線を決定する。推奨車線決定部61は、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部61は、地図上経路に分岐箇所が存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
【0037】
第2地図情報62は、第1地図情報54よりも高精度な地図情報である。第2地図情報62は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、第2地図情報62には、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報などが含まれてよい。第2地図情報62は、通信装置20が他装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。
【0038】
運転操作子80は、例えば、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、ステアリングホイール、異形ステア、ジョイスティックその他の操作子を含む。運転操作子80には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、自動運転制御装置100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220のうち一部または全部に出力される。
【0039】
自動運転制御装置100は、例えば、第1制御部120と、第2制御部160とを備える。第1制御部120、および第2制御部160は、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。
【0040】
図2は、実施形態に係る第1制御部120および第2制御部160の機能構成図である。第1制御部120は、例えば、認識部130と、行動計画生成部140とを備える。第1制御部120は、例えば、AI(Artificial Intelligence;人工知能)による機能と、予め与えられたモデルによる機能とを並行して実現する。例えば、「交差点を認識する」機能は、ディープラーニング等による交差点の認識と、予め与えられた条件(パターンマッチング可能な信号、道路標示などがある)に基づく認識とが並行して実行され、双方に対してスコア付けして総合的に評価することで実現されてよい。これによって、自動運転の信頼性が担保される。
【0041】
認識部130は、カメラ10、レーダ装置12、およびファインダ14から物体認識装置16を介して入力された情報に基づいて、自車両Mの周辺にある物体の位置、および速度、加速度等の状態を認識する。物体の位置は、例えば、自車両Mの代表点(重心や駆動軸中心など)を原点とした絶対座標上の位置として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、表現された領域で表されてもよい。物体の「状態」とは、物体の加速度やジャーク、あるいは「行動状態」(例えば車線変更をしている、またはしようとしているか否か)を含んでもよい。
【0042】
また、認識部130は、例えば、自車両Mが走行している車線(走行車線)を認識する。例えば、認識部130は、第2地図情報62から得られる道路区画線のパターン(例えば実線と破線の配列)と、カメラ10によって撮像された画像から認識される自車両Mの周辺の道路区画線のパターンとを比較することで、走行車線を認識する。なお、認識部130は、道路区画線に限らず、道路区画線や路肩、縁石、中央分離帯、ガードレールなどを含む走路境界(道路境界)を認識することで、走行車線を認識してもよい。この認識において、ナビゲーション装置50から取得される自車両Mの位置やINSによる処理結果が加味されてもよい。また、認識部130は、一時停止線、障害物、赤信号、料金所、その他の道路事象を認識する。
【0043】
認識部130は、走行車線を認識する際に、走行車線に対する自車両Mの位置や姿勢を認識する。認識部130は、例えば、自車両Mの基準点の車線中央からの乖離、および自車両Mの進行方向の車線中央を連ねた線に対してなす角度を、走行車線に対する自車両Mの相対位置および姿勢として認識してもよい。これに代えて、認識部130は、走行車線のいずれかの側端部(道路区画線または道路境界)に対する自車両Mの基準点の位置などを、走行車線に対する自車両Mの相対位置として認識してもよい。
【0044】
認識部130は、後述する自走駐車イベントにおいて起動する駐車スペース認識部132(第1認識部)および周辺車両認識部134(第2認識部)を備える。駐車スペース認識部132および周辺車両認識部134の機能の詳細については後述する。
【0045】
行動計画生成部140は、原則的には推奨車線決定部61により決定された推奨車線を走行し、更に、自車両Mの周辺状況に対応できるように、自車両Mが自動的に(運転者の操作に依らずに)将来走行する目標軌道を生成する。目標軌道は、例えば、速度要素を含んでいる。例えば、目標軌道は、自車両Mの到達すべき地点(軌道点)を順に並べたものとして表現される。軌道点は、道なり距離で所定の走行距離(例えば数[m]程度)ごとの自車両Mの到達すべき地点であり、それとは別に、所定のサンプリング時間(例えば0コンマ数[sec]程度)ごとの目標速度および目標加速度が、目標軌道の一部として生成される。また、軌道点は、所定のサンプリング時間ごとの、そのサンプリング時刻における自車両Mの到達すべき位置であってもよい。この場合、目標速度や目標加速度の情報は軌道点の間隔で表現される。
【0046】
行動計画生成部140は、目標軌道を生成するにあたり、自動運転のイベントを設定してよい。自動運転のイベントには、定速走行イベント、低速追従走行イベント、車線変更イベント、分岐イベント、合流イベント、テイクオーバーイベント、バレーパーキングなどにおいて自走して駐車する自走駐車イベント、バレーパーキングなどにおいて自走して駐車場から出庫して所定の乗車位置に自走する自走迎車イベントなどがある。行動計画生成部140は、起動させたイベントに応じた目標軌道を生成する。行動計画生成部140は、例えば、自走駐車イベントを実行する場合に起動する自走駐車制御部142と、要求部144(第1要求部)と、取得部146と、算出部148とを備える。自走駐車制御部142、要求部144、取得部146、および算出部148の機能の詳細については後述する。
【0047】
第2制御部160は、行動計画生成部140によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに自車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220を制御する。
【0048】
第2制御部160は、例えば、取得部162と、速度制御部164と、操舵制御部166とを備える。取得部162は、行動計画生成部140により生成された目標軌道(軌道点)の情報を取得し、メモリ(不図示)に記憶させる。速度制御部164は、メモリに記憶された目標軌道に付随する速度要素に基づいて、走行駆動力出力装置200またはブレーキ装置210を制御する。操舵制御部166は、メモリに記憶された目標軌道の曲がり具合に応じて、ステアリング装置220を制御する。速度制御部164および操舵制御部166の処理は、例えば、フィードフォワード制御とフィードバック制御との組み合わせにより実現される。一例として、操舵制御部166は、自車両Mの前方の道路の曲率に応じたフィードフォワード制御と、目標軌道からの乖離に基づくフィードバック制御とを組み合わせて実行する。
【0049】
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機などの組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0050】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置210は、運転操作子80に含まれるブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置210は、上記説明した構成に限らず、第2制御部160から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0051】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0052】
[自走駐車イベント-入庫時]
自走駐車制御部142は、例えば、通信装置20によって駐車場管理装置400から取得された情報に基づいて、自車両Mを駐車スペース(駐車枠)内に駐車させる。
図3は、実施形態に係る自走駐車イベントが実行される場面を模式的に示す図である。道路Rdから訪問先施設に至るまでの経路には、ゲート300-inおよび300-outが設けられている。自車両Mは、手動運転または自動運転によって、ゲート300-inを通過して停止エリア310まで進行する。停止エリア310は、訪問先施設に接続されている乗降エリア320に面している。乗降エリア320には、雨や雪を避けるための庇が設けられている。
【0053】
自車両Mは、停止エリア310で乗員を降ろした後、自動運転を行い、駐車場PA内の駐車スペースPSまで移動する自走駐車イベントを開始する。自走駐車イベントの開始トリガは、例えば、乗員による何らかの操作であってもよいし、駐車場管理装置400から無線により所定の信号を受信したことであってもよい。自走駐車制御部142は、自走駐車イベントを開始する場合、通信装置20を制御して駐車リクエストを駐車場管理装置400に向けて発信する。そして、自車両Mは、停止エリア310から駐車場PAまで、駐車場管理装置400の誘導に従って、或いは自力でセンシングしながら移動する。
【0054】
図4は、実施形態に係る駐車場管理装置400の構成の一例を示す図である。駐車場管理装置400は、例えば、通信部410と、制御部420と、記憶部430とを備える。記憶部430には、駐車場地図情報432、駐車スペース状態テーブル434などの情報が格納されている。
【0055】
通信部410は、自車両Mやその他の車両(他車両)と無線により通信する。制御部420は、通信部410により取得された情報と、記憶部430に格納された情報とに基づいて、車両を駐車スペースPSに誘導する。駐車場地図情報432は、駐車場PAの構造を幾何的に表した情報である。また、駐車場地図情報432は、駐車スペースPSごとの座標を含む。駐車スペース状態テーブル434は、例えば、駐車スペースPSの識別情報である駐車スペースIDに対して、空き状態であるか、満(駐車中)状態であるかを示す状態と、満状態である場合の駐車中の車両の識別情報である車両IDとが対応付けられたものである。
【0056】
制御部420は、通信部410が車両から駐車リクエストを受信すると、駐車スペース状態テーブル434を参照して状態が空き状態である駐車スペースPSを抽出し、抽出した駐車スペースPSの位置を駐車場地図情報432から取得し、取得した駐車スペースPSの位置までの好適な経路を通信部410を用いて車両に送信する。また、制御部420は、複数の車両の位置関係に基づいて、同時に同じ位置に車両が進行しないように、必要に応じて特定の車両に停止・徐行などを指示する。
【0057】
経路を受信した車両(以下、自車両Mであるものとする)では、自走駐車制御部142が、経路に基づく目標軌道を生成する。また、目標となる駐車スペースPSが近づくと、駐車スペース認識部132が、駐車スペースPSを区画する駐車枠線などを認識し、駐車スペースPSの詳細な位置を認識して自走駐車制御部142に提供する。自走駐車制御部142は、これを受けて目標軌道を補正し、自車両Mを駐車スペースPSに駐車させる。
【0058】
[自走迎車イベント-出庫時]
自走駐車制御部142および通信装置20は、自車両Mが駐車中も動作状態を維持している。自走駐車制御部142は、例えば、通信装置20が乗員の保有する端末装置から迎車リクエストを受信した場合、自車両Mのシステムを起動させ、自車両Mを停止エリア310まで移動させる。この際に、自走駐車制御部142は、通信装置20を制御して駐車場管理装置400に発進リクエストを送信する。駐車場管理装置400の制御部420は、入庫時と同様に、複数の車両の位置関係に基づいて、同時に同じ位置に車両が進行しないように、必要に応じて特定の車両に停止・徐行などを指示する。停止エリア310まで自車両Mを移動させて乗員を乗せると自走駐車制御部142は動作を停止し、以降は手動運転、或いは別の機能部による自動運転が開始される。
【0059】
なお、上記の説明に限らず、自走駐車制御部142は、通信に依らず、カメラ10、レーダ装置12、ファインダ14、または物体認識装置16による検出結果に基づいて空き状態の駐車スペースを自ら発見し、発見した駐車スペース内に自車両Mを駐車させてもよい。
【0060】
[自走駐車イベント-入庫時の動作フロー]
上記のような自走駐車イベントの入庫時の動作について説明する。
図5は、実施形態に係る自動運転制御装置100の自走駐車イベントの入庫時の動作フローの一例を示す図である。
図5に示す動作フローは、例えば、自車両Mにより送信された駐車リクエストを駐車場管理装置400が受信し、記憶部430に格納された駐車スペース状態テーブル434の情報に基づいて駐車スペースPSを決定し、決定した駐車スペースPSの位置までの好適な経路に関する情報を自車両Mに送信し、自車両Mがこの経路に関する情報を受信したときに開始される。
【0061】
まず、自動運転制御装置100の自走駐車制御部142は、駐車場管理装置400から受信した経路情報に基づき、自車両Mの駐車スペースPSへの移動制御を開始する(ステップS101)。
【0062】
次に、自走駐車制御部142は、駐車場管理装置400から受信した経路情報と、駐車スペース付近に設けられた駐車スペースの識別情報(例えば、駐車スペースの駐車枠の周囲の通路上に設けられた識別コード)とに基づいて、自車両Mが駐車スペースPS(駐車スペースPSの駐車枠内への駐車動作を開始可能な位置)までの移動を完了したか否かを判定する(ステップS103)。なお、自走駐車制御部142は、駐車場管理装置400から受信した経路情報と、ナビゲーション装置50から入力された自車両Mの位置情報とに基づいて、自車両Mが駐車スペースPSまでの移動を完了したか否かを判定してもよい。
【0063】
自走駐車制御部142は、自車両Mの駐車スペースPSまでの移動が完了していないと判定した場合、同判定を継続する。一方、自走駐車制御部142により自車両Mの駐車スペースPSまでの移動が完了したと判定された場合、駐車スペース認識部132が、駐車スペースPSを区画する駐車枠の枠線の認識処理を開始するとともに、周辺車両認識部134が、自車両Mが自動駐車する駐車スペースPSに隣接する駐車スペースに停止している周辺車両(他車両)の認識処理を開始する(ステップS105)。なお、これらの駐車スペース認識部132および周辺車両認識部134による認識処理は、自車両Mの駐車枠内に停止し、駐車動作が完了するまで継続されてよい。
【0064】
駐車スペース認識部132は、カメラ10、レーダ装置12、およびファインダ14から物体認識装置16を介して入力された情報に基づいて、駐車スペースPSを区画する駐車枠の枠線の認識処理を行う。また、周辺車両認識部134は、カメラ10、レーダ装置12、およびファインダ14から物体認識装置16を介して入力された情報に基づいて、駐車スペースPSに隣接する駐車スペースに停止している車両の認識処理を行う。
【0065】
図6は、実施形態に係る自車両Mが駐車スペースPSまでの移動を完了した様子を示す図である。
図6に示すように、自走駐車制御部142は、自車両Mが駐車スペースPSまでの移動を完了したと判定した場合、駐車スペースPSを区画する駐車枠L内への自動駐車を開始する。ここで、駐車スペース認識部132は、駐車スペースPSを区画する駐車枠Lの枠線の認識処理を行う。また、周辺車両認識部134は、駐車スペースPSに隣接する駐車スペース(例えば、駐車スペースPS1)に停止している他車両(例えば、他車両m1)の認識処理を行う。
【0066】
次に、駐車スペース認識部132は、駐車スペースPSを区画する駐車枠Lの枠線を認識できたか否かを判定する(ステップS107)。駐車スペース付近における環境が枠線の認識に適している場合(例えば、日中、天気が良い場合など明るさが十分であり、雨、雪など降っておらず枠線とその他の部分との識別が可能である場合など)、駐車スペース認識部132は、カメラ10により撮像された画像などの情報に基づいて、駐車枠Lの枠線を認識することができる。駐車スペース認識部132により駐車枠Lの枠線が認識されたと判定された場合、自走駐車制御部142は、この認識された駐車枠Lの枠線の位置情報に基づいて、自車両Mを駐車枠L内に移動させる自動駐車制御を行う(ステップS119)。これにより、自車両Mの駐車枠L内への自動駐車が完了し、本フローチャートの処理が終了する。
【0067】
一方、駐車スペース付近における環境が枠線の認識に適していない場合(例えば、日没後、悪天候時、屋内駐車場への駐車時など明るさが不十分であり、枠線とその他の部分との識別が不可能である場合など)、カメラ10により撮像された画像において駐車枠Lとその他の部分との境界(輝度差)が明確にならず、駐車スペース認識部132が、駐車枠Lの枠線を認識することができない場合がある。また、駐車スペース付近の明るさが十分であっても、逆光などの影響により、カメラ10により撮像された画像において駐車枠Lとその他の部分との境界が明確にならず、駐車スペース認識部132が、駐車枠Lの枠線を認識することができない場合がある。このように、駐車スペース認識部132により駐車枠Lが認識されないと判定された場合、要求部144は、周辺車両認識部134により認識された駐車スペースPSに隣接する駐車スペースに停止している他車両に対して、枠線情報を要求する枠線情報リクエストを送信する(ステップS109)。
【0068】
「枠線情報」とは、駐車枠Lの枠線の位置を示す情報である。例えば、枠線情報は、車両の停止位置と駐車枠Lの枠線の位置との間の距離を示す。枠線情報は、車両に搭載された記憶装置(図示しない)に記憶されている。
図7は、実施形態に係る枠線情報を説明する図である。
図7に示すように、枠線情報は、車両の停止位置(例えば、停止中の車両の前端部)と、車両の前方に位置する駐車枠Lの枠線の位置との距離(前方マージン距離Df)、車両の停止位置(例えば、停止中の車両の右端部)と、車両の右方に位置する駐車枠Lの枠線の位置との距離(右方マージン距離Dr)、車両の停止位置(例えば、停止中の車両の左端部)と、車両の左方に位置する駐車枠Lの枠線の位置との距離(左方マージン距離Dl)、および車両の停止位置(例えば、停止中の車両の後端部)と、車両の後方に位置する駐車枠線の位置との距離(後方マージン距離Db)を示す情報を含んでいる。
【0069】
図8は、実施形態に係る枠線情報MDの一例を示す図である。
図8に示すように、枠線情報MDは、停止中の駐車スペースを識別する情報と、前方マージン距離Df、右方マージン距離Dr、左方マージン距離Dl、および後方マージン距離Dbと、が対応付けられて記憶装置に記憶されている。自車両Mの要求部144は、駐車スペースPSに隣接する駐車スペースPS1に停止している他車両m1に対して、枠線情報MDを要求する枠線情報リクエストを送信する。この枠線情報リクエストに応じて、他車両m1は、該他車両に搭載された記憶装置に記憶されている枠線情報MDを自車両Mに送信する。枠線情報MDは、他車両m1が自動駐車を行ったときに他車両m1に搭載されたカメラ(センサ)により撮像された画像に基づいて算出され、記憶装置に記憶されたものであってもよいし、或いは、自車両Mから枠線情報リクエストを受信したときに起動された他車両m1のカメラにより撮像された画像に基づいて算出されたものであってもよい。
【0070】
次に、自車両Mの取得部146は、他車両m1から枠線情報MDが取得されたか否かを判定する(ステップS111)。取得部146により枠線情報MDが取得されたと判定された場合、算出部148は、枠線情報MDと、周辺車両認識部134により認識された他車両m1の位置情報とに基づいて、駐車枠Lの枠線の位置を算出する(ステップS113)。
【0071】
図9は、実施形態に係る算出部148による駐車枠Lの枠線の位置の算出処理の一例を説明する図である。
図9に示す例は、他車両m1の左方マージン距離Dlが30cmであり、周辺車両認識部134により認識された他車両m1の位置情報に基づいて算出された自車両Mの右端部と他車両m1の左端部との間の距離DD1が70cmである場合を示している。この場合、算出部148は、枠線Lr(駐車枠Lの長さ方向の2つの枠線のうち、駐車スペースPSと駐車スペースPS1との間を区画する枠線)の位置を、距離DD1(70cm)から、他車両m1の左方マージン距離Dl(30cm)を減算した位置(すなわち、自車両Mの右端部から40cm離れた位置)と算出する。なお、この例では、枠線Lrは、駐車スペースPSの駐車枠Lの枠線の一部を構成しているとともに、駐車スペースPS1の駐車枠の枠線の一部も構成している。
【0072】
図10は、実施形態に係る算出部148による駐車枠Lの枠線の位置の算出処理の他の例を説明する図である。
図10に示す例は、他車両m1の後方マージン距離Dbが40cmであり、周辺車両認識部134により認識された他車両m1の位置情報に基づいて算出された自車両Mの後端部と他車両m1の後端部との間の距離DD2が30cmである場合を示している。この場合、算出部148は、枠線Lb(駐車枠Lの幅方向の2つの枠線のうち、駐車スペースPSの終端を区画する線)の位置を、距離DD2(30cm)と、他車両m1の後方マージン距離Db(40cm)とを加算した位置(すなわち、自車両Mの後端部から70cm離れた位置)と算出する。
【0073】
図11は、実施形態に係る算出部148による駐車枠Lの枠線の位置の算出処理の他の例を説明する図である。
図11に示す例は、自車両Mが自動駐車する駐車スペースPSの両隣の駐車スペースPS1および駐車スペースPS2の両方に、他車両(他車両m1、他車両m2)が停止している場合を示している。この場合、算出部148は、駐車スペースPS1に停止している他車両m1から取得された枠線情報MDと、周辺車両認識部134により認識された他車両m1の位置情報とに基づいて、枠線Lrの位置を算出する。また、算出部148は、駐車スペースPS2に停止している他車両m2から取得された枠線情報MDと、周辺車両認識部134により認識された他車両m2の位置情報とに基づいて、枠線Ll(駐車枠Lの長さ方向の2つの枠線のうち、駐車スペースPSと駐車スペースPS2との間を区画する枠線)の位置を算出する。なお、算出部148は、駐車スペースPSの幅方向の長さに関する情報を予め取得している場合、この駐車スペースPSの幅方向の長さと、算出された枠線Lrの位置とに基づいて、枠線Llの位置を算出してもよい。また、算出部148は、この駐車スペースPSの幅方向の長さと、算出された枠線Llの位置とに基づいて、枠線Lrの位置を算出してもよい。
【0074】
図5に戻り、次に、自走駐車制御部142は、算出部148により算出された駐車枠Lの枠線の位置に基づいて、自動駐車の制御を行う(ステップS115)。例えば、
図9に示す例では、枠線Lrが自車両Mの右端部から40cmの位置にあると算出され、自車両Mの車幅方向の中央位置が、駐車スペースPSの幅方向の中央位置よりも、やや左方向にずれていることが推定される。この場合、自走駐車制御部142は、自車両Mの車幅方向の中央位置が、駐車スペースPSの幅方向の中央位置に近付くように、自動駐車の制御を行う。これにより、自車両Mを、駐車枠L内の適当な位置に停止させることができる。
【0075】
一方、自車両Mと、他車両との間の通信が適正に行われない場合や、他車両が枠線情報MDを記憶していない場合など、取得部146が、他車両から枠線情報MDを取得できない場合がある。他車両が枠線情報MDを記憶していない場合には、当該他車両が自動駐車を行ったときに、駐車枠の枠線を認識することができなかったケースなどが含まれる。このように、取得部146により枠線情報MDが取得されないと判定された場合(ステップS111)、自走駐車制御部142は、駐車スペースを変更し、変更後の駐車スペースに対して自動駐車の制御を行う。この場合、自走駐車制御部142は、駐車場管理装置400に対して駐車スペースの変更を要求するリクエストを送信し、駐車場管理装置400から変更後の駐車スペースに関する情報を取得し、変更後の駐車スペースに対して自動駐車の制御を行う。或いは、取得部146により枠線情報MDが取得されないと判定された場合(ステップS111)、自走駐車制御部142は、自車両Mの車幅方向の中央位置が、駐車スペースPSの幅方向の中央位置と重なるように自動駐車の制御(簡易自動駐車制御)を行う(ステップS117)。この場合、自車両Mの車幅方向の中央位置と、駐車スペースPSの幅方向の中央位置とが完全に一致する必要は無く、両者の位置の差が所定の閾値以内となればよい。以上により、本フローチャートの処理が終了する。
【0076】
なお、上記の実施形態においては、自車両Mに搭載された算出部148が、他車両から取得した枠線情報MDと、自車両Mに搭載された周辺車両認識部134により認識された他車両の位置情報とに基づいて、駐車枠Lの枠線の位置を算出する例を説明したがこれに限られない。例えば、他車両側で自車両Mの位置を認識し、この認識された自車両Mの位置と、他車両内に記憶されている枠線情報MDとに基づいて、自車両Mが自動駐車する駐車枠Lの枠線の位置(例えば、自車両Mと駐車枠Lの枠線との相対距離など)を算出してもよい。自車両Mは、この他車両により算出された駐車枠Lの位置を取得し、自動駐車の制御を行うようにしてもよい。
【0077】
また、自車両Mの自動運転制御装置100が、駐車スペースPSに隣接する駐車スペースに停止している他車両に対して、他車両の下部を照らすライト(例えば、駐車スペースPS側の足元を照らす足元ライト)を動作させる(ONする)ことを要求するリクエストを送信する要求部(第2要求部)をさらに備えるようにしてもよい。
図12は、実施形態に係る他車両の下部を照らす足元ライトが動作された様子を示す図である。これにより、自車両Mの駐車スペース認識部132による駐車枠Lの枠線の認識が可能になる。
【0078】
また、自車両Mは、他車両から取得した枠線情報MDを、駐車場管理装置400に送信するようにしてもよい。駐車場管理装置400は、受信した枠線情報MDに基づいて、駐車枠に誘導する車両を選別するようにしてもよい。例えば、駐車場管理装置400は、枠線情報MDに基づいて駐車可能空間が狭いことが判明した駐車スペースに対しては、小型の車両を誘導し、駐車可能空間が広いことが判明した駐車スペースに対しては、大型の車両を誘導するように制御してよい。
【0079】
また、上記の実施形態においては、自車両Mが、自動駐車する駐車スペースPSと隣り合う駐車スペースに停止している他車両から枠線情報MDを取得する例をしたがこれに限られない。例えば、
図13に示すように、駐車スペースPSに隣接する駐車スペースPS1に停止している他車両ではなく、駐車スペースPS1に隣接する駐車スペースPS3に停止している他車両m3から枠線情報MDを取得するようにしてもよい。すなわち、本願明細書において、駐車スペースPSに隣接する駐車スペースとは、駐車スペースPSと隣り合う(すぐ隣の)駐車スペースだけでなく、両者の間に1以上の駐車スペースを含んでいる場合も含む。
【0080】
この場合、算出部148は、駐車スペースPS3に停止している他車両m3から取得した枠線情報MD(
図13の例では、左方マージン距離Dl)と、予め取得された駐車スペースPS1の幅方向の長さDwとを加算し、この加算値と、周辺車両認識部134により認識された他車両m3の位置情報(自車両Mの右端部と、他車両m3の左端部との間の距離DD4)とに基づいて、枠線Lrの位置を算出するようにしてよい。例えば、算出部148は、DD4から、上記の加算値を減算することにより、枠線Lrの位置を算出してよい。
【0081】
以上説明した実施形態によれば、自動バレーパーキングの自動駐車処理において、駐車枠を認識することができない場合であっても正確な駐車制御を行うことができる。
【0082】
[ハードウェア構成]
図14は、実施形態の自動運転制御装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。図示するように、自動運転制御装置100(コンピュータ)は、通信コントローラ100-1、CPU100-2、ワーキングメモリとして使用されるRAM(Random Access Memory)100-3、ブートプログラムなどを格納するROM(Read Only Memory)100-4、フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置100-5、ドライブ装置100-6などが、内部バスあるいは専用通信線によって相互に接続された構成となっている。通信コントローラ100-1は、自動運転制御装置100以外の構成要素との通信を行う。記憶装置100-5には、CPU100-2が実行するプログラム100-5aが格納されている。このプログラムは、DMA(Direct Memory Access)コントローラ(不図示)などによってRAM100-3に展開されて、CPU100-2によって実行される。これによって、第1制御部120および第2制御部160のうち一部または全部が実現される。
【0083】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
プログラムを記憶した記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備える車両に搭載される車両制御装置であって、
前記ハードウェアプロセッサが前記記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、
前記車両が自動駐車する第1駐車枠に隣接する第2駐車枠に停止している他車両から、前記第2駐車枠の枠線の位置情報を取得し、
取得された前記第2駐車枠の枠線の位置情報に基づいて、前記第1駐車枠の枠線の位置を算出する、
ように構成されている、車両制御装置。
【0084】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0085】
1‥車両システム、100‥自動運転制御装置、120‥第1制御部、130‥認識部、132‥駐車スペース認識部、134‥周辺車両認識部、140‥行動計画生成部、142‥自走駐車制御部、144‥要求部、146‥取得部、148‥算出部、160‥第2制御部、400‥駐車場管理装置、410‥通信部、420‥制御部、430‥記憶部