(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】加湿装置
(51)【国際特許分類】
F24F 6/00 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
F24F6/00 A
(21)【出願番号】P 2019120714
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阿部 利浩
(72)【発明者】
【氏名】入倉 義也
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-151362(JP,A)
【文献】特表2004-511744(JP,A)
【文献】特開2004-108599(JP,A)
【文献】特開平08-233314(JP,A)
【文献】特開2002-061901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加湿空気を発生させる加湿手段と、
一定量の水が貯えられ、前記加湿手段に水を供給する水槽部と、
前記水槽部に着脱自在に装着されて前記水槽部に水を供給する水タンクと、
前記水槽部の水位を検知するフロートを備え前記水槽部に着脱自在な水位検知部と、を備え、
前記水位検知部は、
前記水タンクと当接する当接受部を有し、
前記水タンクは、上部に設けられた上部取手と、底部に設けられた底部取手を有し、
前記底部取手が前記当接受部に当接して、前記水位検知部が前記水槽部および前記水タンクにより挟み込まれることで位置決めされることを特徴とする加湿装置。
【請求項2】
前記当接受部は弾性を有している請求項1に記載の加湿装置。
【請求項3】
前記水位検知部は、前記当接受部以外が前記水タンクと当接しない請求項2に記載の加湿装置。
【請求項4】
前記当接受部は弾性によって変位した後の高さが定水面よりも高い請求項
2または
3に記載の加湿装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内空気の加湿を行う加湿装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、加湿装置においては、水を貯留する水槽を内部に備え、水槽に貯えられた水を加湿手段等によって気化させるなどして加湿空気を発生させるようになっている。そのため、水を貯える水槽の底部は常に水に浸かった状態であり、水に浸かった部分には水垢などの汚れが付着する。この汚れを放置すると雑菌が繁殖して臭いが発生する原因になるため、水槽には定期的なメンテナンスが必要とされる。
【0003】
一般的に、水槽は本体に着脱自在となっていて、水槽のメンテナンスに際しては本体から取り外して水洗いをするようになっている。また、特許文献1が示すように、水洗いの際に水槽の汚れを落としやすくするために、水槽の水位を検知するフロートを水槽から着脱可能とした加湿装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、フロートは水槽内の水位によって上下動することにより水位を検知するものであり、水槽内の水位を正確に検知するために、取り付け位置には精度が要求される。
【0006】
ところで、特許文献1では、フロートは水槽との接続部を指で押さえることで水槽から着脱可能な構造になっているが、着脱操作は水槽内の限られた空間で行う必要がある。そのため、操作性および視認性が悪く、ひいてはフロートの誤った取り付けが発生する恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、加湿空気を発生させる加湿手段と、
一定量の水が貯えられ、前記加湿手段に水を供給する水槽部と、
前記水槽部に着脱自在に装着されて前記水槽部に水を供給する水タンクと、
前記水槽部の水位を検知するフロートを備え前記水槽部に着脱自在な水位検知部と、
を備え、
前記水位検知部は、前記水タンクと当接する当接受部を有し、
前記水タンクは、上部に設けられた上部取手と、底部に設けられた底部取手を有し、
前記底部取手が前記当接受部に当接して、前記水位検知部が前記水槽部および前記水タンクにより挟み込まれることで位置決めされる加湿装置である。
【発明の効果】
【0008】
上述の構成にすることにより、フロートの着脱において、精度を求められる操作が発生しないため、正確かつ容易にフロートを装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本実施形態の加湿装置の構成を示す分解図である。
【
図3】本実施形態の加湿装置の鉛直方向断面図である。
【
図4】本実施形態の加湿装置における水槽部の構成を示す分解図である。
【
図5】本実施形態の加湿装置における水位検知部の斜視図である。
【
図6】本実施形態の加湿装置における水位検知部の鉛直方向断面図である。
【
図7】本実施形態の加湿装置における水タンクの正面図である。
【
図8】本実施形態の加湿装置における水位検知部と水タンクの位置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
好適と考える本発明の実施形態を、本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0011】
本発明は、加湿空気を発生させる加湿手段と、加湿手段に水を供給する水槽部と、水槽部に水を供給する水タンクと、水槽部の水位を検知するフロートを備えて水槽部に着脱自在な水位検知部を備え、水位検知部は水槽部および水タンクにより挟み込まれることで位置決めされる構造である。つまり、水位検知部は水タンクを水槽部に装着するだけで所定位置に位置決めされる。これにより、使用者は複雑な操作を必要とせずフロートを所定位置に正確に設置することができる。
【0012】
また、水位検知部には水タンクと当接する当接受部が設けられており、当接受部は弾性を有している。これにより、水タンク装着時の衝撃や水タンクの荷重を当接受部が吸収するので、水位検知部の変形や破損を防止することができる。
【0013】
また、水位検知部は当接受部以外で水タンクと当接しない構造であるため、水位検知部の変形や破損がより確実に防止されるとともに、水タンクと当接しない部分は、シンプルで自由度のある構造とすることができる。
【0014】
また、水タンクには上部取手と底部取手が設けられており、底部取手が当接受部に当接する構造である。底部取手に当接受部と当接する機能を備えることにより、水タンクには当接受部と当接する機構を別途設ける必要がないため、水タンクの構造を簡素化できる。また、水タンクの上部と底部に取手があるため、水タンクの着脱や持ち運びを両手で行うことができ利便性が向上する。
【0015】
また、水タンクの荷重を受けた当接受部は定水面より高い位置で変位する。これにより、当接受部に当接する水タンクは水に浸漬しないため、水タンク着脱時に使用者の手が濡れてしまうことがない。
【実施例】
【0016】
以下、本発明の一実施例を図面により説明する。
【0017】
図1は、本実施形態の加湿装置の斜視図である。また、
図2は、本実施形態の加湿装置の構成を示す分解図である。加湿装置100の本体1の上面には、加湿装置100の動作を指示するためのスイッチや運転状態を表示するランプ等が複数設けられた表示操作部2と、加湿空気を吹き出す吹出口3が設けられている。
【0018】
本体1の底部には、水タンク4から供給された一定量の水を貯える水槽部5を備えている。この水槽部5内には、加湿手段として吸水性を有する気化フィルタ6が配置されていて、気化フィルタ6は一部が水槽部5内の水に浸漬されており、この水を吸い上げることにより湿潤している。また、水槽部5に着脱自在である仕切板7により、水槽部5は水タンク4を収容する水タンク収容部8と、気化フィルタ6を収容する気化フィルタ収容部9に区画されている。水タンク4は水槽部5に着脱自在に設けられており、水槽部5は本体1に挿入口1aから引き出せるように摺動可能に設けられている。
【0019】
仕切板7には、水タンク収容部8と気化フィルタ収容部9を連通する連通孔(図示省略)が設けられており、水タンク4から水槽部5に供給された水は、水タンク収容部8から連通孔を介して気化フィルタ収容部9に流入し、水槽部5には一定量の水が蓄えられて定水面が形成される。
【0020】
図3は、本実施形態の加湿装置の鉛直方向断面図である。気化フィルタ6の上部には、モータ10とシロッコファン11からなる送風機12が設けられており、送風機12の駆動により本体1背面の吸込口13から気化フィルタ6を通過して吹出口3に至る通風路に送風が行われる。この送風により、吸込口13から取り込まれた室内の空気は、気化フィルタ6を通過する際に加湿空気となり、吹出口3より室内に放出されることで室内が加湿される。また、気化フィルタ6上流の通風路には、気化フィルタ6に送風される空気を加熱する温風用ヒータ14が配置されている。また、仕切板7の気化フィルタ収容部9側の面には、気化フィルタ6を保持するリブ15が設けられている。
【0021】
図4は、本実施形態の加湿装置における水槽部の構成を示す分解図である。仕切板7は、左右両端に形成され、仕切板7の外側に延伸された取付片16を、水槽部5に設けられた保持部17に嵌挿することで水槽部5に取り付けられる。水位検知部18は、水槽部5内の水位に応じて上下に回動するフロート19と、フロート19が装着される枠体20を備えており、枠体20の側面に形成された係止部21を介して仕切板7に係止される。仕切板7は水槽部5に着脱自在であり、水位検知部18は仕切板7を介して水槽部5に着脱自在である。
【0022】
なお、本実施形態では、水位検知部18と仕切板7は、係止部21を介して係止することにより水槽部5に着脱自在に取り付けられるが、水位検知部18と仕切板7は分解できない一体成型であってもよく、水位検知部18と仕切板7は夫々で水槽部5に着脱自在に取り付けられる構造であってもよい。
【0023】
図5は、本実施形態の加湿装置における水位検知部の斜視図である。また、
図6は、本実施形態の加湿装置における水位検知部の鉛直方向断面図である。なお、水位検知部18の内部構造が良くわかるように、
図5ではフロート19を除いている。枠体20は、底面201と、この底面201から立設した4つの側面202(前側面202a、右側面202b、左側面202c、後側面202d)とを備える有底箱形状であり、底面201と側面202とに囲まれた空間である空間部22内にフロート19が収容されている。なお、枠体20は、底面201と側面202の他に上面を備えた形状であってもよい。
【0024】
また、枠体20には、前側面202aの周上から鉛直方向に延びた当接受部23が設けられており、水タンク4を水槽部5に装着すると、この当接受部23に水タンク4が当接するようになっている。当接受部23はシャフト231と、シャフト231に弾性力を付与するスプリング232と、シャフト231の可動範囲を制限する留め具233で構成されており、前側面202aの周上に設けられたケーシング24に収容されている。水タンク4を水槽部5に装着した際の水タンク4と当接受部23の位置関係については、後述にて詳細を説明する。
【0025】
なお、本実施形態では、当接受部23は前側面202aの周上にのみ設けられているが、当接受部23は枠体20の側面202上であれば設置位置が制限されるものではない。さらには、側面202の複数箇所に設置する構成であってもよい。
【0026】
枠体20の左側面202cの内側には、フロート19の回動軸25を受ける軸受部26と、フロート19の上方向への回動を規制するストッパー27が設けられている。このストッパー27により、水位検知部18の上下を逆にしたとしても、フロート19は枠体20の外に出ないようになっている。
【0027】
枠体20の底面201と、右側面202bには通水孔28が形成されており、この通水孔28を介して空間部22の内と外を水が流通するようになっている。さらに枠体20の底面201には、下方(水槽部5側)に向けて凸となる当接部29が形成されている。これにより、水位検知部18を水槽部5に装着すると、この当接部29が水槽部5の底面と当接するため、枠体20の底面201と水槽部5の底面との間には水が流通する隙間が形成される。水槽部5内の水は、この隙間を通って空間部22の内と外とを効率よく流通するので、空間部22内に設けられたフロート19は水槽部5内の水位を正確に検知することができる。なお、本実施形態においては、通水孔28は底面201だけでなく右側面202bにも設けられているが、通水孔28は少なくとも底面201に設けられていればよい。
【0028】
図7は、本実施形態の加湿装置における水タンクの正面図である。水タンク4は、内部の水量が可視できるように透明もしくは半透明の合成樹脂から形成されている。また、水タンク4の上部と底部には、それぞれ水タンク4を持ち運ぶ際に手を掛けるための取手である、上部取手4aと底部取手4bが形成されている。さらに、底部には水タンク4内に水を補給するための給水口4cが開口されており、給水口4cにはタンクキャップ4dが着脱自在に取り付けられる構成となっている。
【0029】
図8は、本実施形態の加湿装置における水位検知部と水タンクの位置を説明する図である。水槽部5に水タンク4を取り付けると、底部取手4bが当接受部23に当接する。これにより、水位検知部18は水タンク4と水槽部5に挟みこまれる構成となり、水タンク4の荷重を受けて所定位置に位置決めされる。
【0030】
なお、本実施形態では、水タンク4に上部取手4aと底部取手4bが設けられているため、水タンク4の着脱や持ち運びを両手でおこなうことができ利便性が向上するとともに、底部取手4bに当接受部23と当接する機能を備えたため、水タンク4には当接受部23と当接する機構を別途設ける必要がなく、水タンク4の構造を簡素化できる。
【0031】
また、水位検知部18は当接受部23以外で水タンク4と当接しない構造であるため、水位検知部18の変形や破損がより確実に防止されるとともに、水タンク4と当接しない部分は、シンプルで自由度のある構造とすることができる。また、当接受部23は定水面Hより高い位置で変位するため、底部取手4bは水に浸漬せず、水タンク4着脱時に使用者の手が濡れないため利便性も向上する。
【0032】
本発明の加湿装置においては、水槽部5および気化フィルタ6は長期間の使用による汚れや雑菌の繁殖に対して、定期的なメンテナンスが必要である。そこで、たとえば、加湿装置100に通電開始されてから所定時間経過すると、表示操作部2を点滅させて清掃時期になったことを使用者に報知する。使用者はこの報知に基づき、加湿装置100のメンテナンスを行う。
【0033】
次に上述の報知を受けてメンテナンスを行う手順について説明する。なお、水位検知部18は仕切板7を介して水槽部5に着脱される構成を例として挙げる。
【0034】
使用者は加湿装置100を停止させた後に、水タンク4を水槽部5から引き上げる。続いて、本体1から水槽部5を引き抜き、水槽部5から気化フィルタ6、仕切板7、および水位検知部18を取り外す。水位検知部18は水タンク4と水槽部5に挟みこまれることで位置決めされているため、水タンク4が取り外された状態では、仕切板7を水槽部5から引き上げることにより容易に取り外すことができる。
【0035】
水槽部5、気化フィルタ6、仕切板7、および水位検知部18は、適宜水洗い等を行って水垢などの汚れを落とす。仕切板7と水位検知部18は、水槽部5から取り外し可能であるため、容易に水槽部5の汚れを落とすことができ、清掃の手間が軽減される。清掃後、取り外した水槽部5、気化フィルタ6、仕切板7、および水位検知部18を元の位置に戻す。
【0036】
水位検知部18および仕切板7を水槽部5に取り付けるには、仕切板7の左右両端に形成された取付片16を水槽部5に設けられた保持部17に上方から挿入するように載置する。取付片16と保持部17を嵌め合わせることにより、水位検知部18、および仕切板7は水槽部5に対して水平方向が位置決めされる。
【0037】
続いて、気化フィルタ6を仕切板7に設けられたリブ15に沿って挿入するように水槽部5に載置し、水槽部5を挿入口1aから本体1に挿入する。
【0038】
続いて、水タンク4を水槽部5に取り付ける。水タンク4を水槽部5に取り付けると、底部取手4bが水位検知部18に設けられた弾性を有する当接受部23に当接する。底部取手4bが当接受部23に当接すると、当接受部23には水タンク4の荷重がかかる。これにより、シャフト231が押し下げられ、それに伴いスプリング232が圧縮される。なお、スプリング232の弾性力により、シャフト231は定水面Hよりも高い位置で水タンク4の荷重と釣り合うよう構成されている。
【0039】
このように、水位検知部18は水タンク4から鉛直方向の力を受けることで水槽部5と水タンク4に挟み込まれ、鉛直方向が位置決めされる。つまり、水位検知部18は水タンク4を取り付けるだけで水槽部5に対して所定位置に位置決めされるため、複雑な操作を行わずとも、水位検知部18を水槽部5に正確に取り付けることができる。
【0040】
また、水タンク4を水槽部5に挿入する際に、水タンク4を落下させてしまった場合でも、当接受部23のスプリング232が落下の衝撃を吸収するため、水位検知部18の変形・破損を抑制することができる。さらには、水タンク4と水位検知部18は、当接受部23でのみ当接するので、当接受部23以外の水位検知部18を構成する箇所に水タンク4の鉛直方向の力はかからないため、シンプルで自由度のある構造とすることができる。
【符号の説明】
【0041】
4 水タンク
4a 上部取手
4b 底部取手
5 水槽部
6 気化フィルタ(加湿手段)
18 水位検知部
19 フロート
23 当接受部
H 定水面