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特許7190413領域設定システムおよびこれを搭載した作業機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】領域設定システムおよびこれを搭載した作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/24 20060101AFI20221208BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20221208BHJP
   B66C 23/88 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
E02F9/24 B
E02F9/26 B
B66C23/88 P
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019180587
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021055438
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 慎二郎
(72)【発明者】
【氏名】井村 進也
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-131432(JP,A)
【文献】特開2014-074317(JP,A)
【文献】特開2019-085769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/24
E02F 9/26
B66C 23/88-23/94
E01F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の動作が制限される作業領域を設定するために、周囲に認識可能な表示を行う複数の領域表示器と、
前記複数の領域表示器から、前記作業領域を設定するため前記領域表示器を複数指定するための入力装置と、
前記入力装置を介して指定した前記領域表示器の表示を制御する制御装置を有した領域設定機と、を備えた領域設定システムであって、
前記制御装置は、前記複数の領域表示器のうち、前記入力装置を介して少なくとも指定した前記領域表示器の位置情報と個体識別情報取得結果に応じて前記領域表示器の表示を、非点灯を含む異なる点灯パターンで制御するものであり、
前記制御装置は、前記個体識別情報および前記位置情報を取得した前記領域表示器に基づいて、前記作業領域を設定することが可能であるかを判断し、
前記作業領域が設定可能である場合には、前記作業領域を設定するとともに、前記領域表示器の表示を正常な点灯パターンに制御し、
前記作業領域の設定が不可能である場合には、前記領域表示器の表示を異常な点灯パターンまたは非点灯に制御することを特徴とする領域設定システム。
【請求項2】
前記領域表示器は、前記作業領域を含む領域に移動自在に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の領域設定システム。
【請求項3】
前記領域表示器は、表示の状態を前記領域設定機に通知する状態通知部を備えることを特徴とする請求項1に記載の領域設定システム。
【請求項4】
前記領域設定機は、前記領域表示器の位置を検出する位置検出装置を備えており、
前記位置検出装置は、電磁波を送信することにより、前記領域表示器に反射した電磁波から前記各領域表示器の位置を検出することを特徴とする請求項1に記載の領域設定システム。
【請求項5】
前記領域表示器は、前記領域表示器ごとに対応する個体識別情報を、1次元コードまたは2次元コードの識別コードとして有しており、
前記領域設定機は、前記領域表示器の識別コードを撮像する撮像装置と、前記領域表示器の位置を検出する位置検出装置とを備えており、
前記制御装置は、前記撮像装置で撮像された識別コードに基づいて、前記領域表示器の個体識別情報を特定し、前記位置検出装置で検出された位置に基づいて、前記領域表示器の位置情報を特定し、位置情報を特定した前記領域表示器の個体識別情報と前記位置情報とを対応付け、
前記領域表示器の位置情報に対応付けられた個体識別情報と、前記入力装置を介して指定した前記領域表示器の個体識別情報とを照合し、
前記個体識別情報が照合された前記領域表示器の位置情報により、前記作業領域を設定することが可能であるかを判断することを特徴とする請求項1に記載の領域設定システム。
【請求項6】
前記領域表示器は、前記領域表示器に対応する位置情報および個体識別情報を、前記領域設定機に発信する発信器を備えることを特徴とする請求項1に記載の領域設定システム。
【請求項7】
前記領域設定システムは、前記作業領域の数に応じて、前記領域設定機を複数有しており、
前記制御装置は、他の領域設定機の制御装置により指定された領域表示器の表示とは異なるパターンが表示されるように、前記領域表示器の表示を制御することを特徴とする請求項1に記載の領域設定システム。
【請求項8】
前記領域表示器は、前記領域表示器ごとに対応する個体識別情報を、1次元コードまたは2次元コードの識別コードとして有しており、
前記領域設定機は、前記入力装置として、携帯式の入力装置を有しており、
前記入力装置は、指定する前記領域表示器の識別コードを読み取る読み取り部と、前記読み取り部で読み取った前記識別コードを前記制御装置に入力する入力部と、を備え、
前記制御装置は、前記入力部で入力された前記識別コードに基づいて、前記領域表示器の個体識別情報を特定し、特定した個体識別情報に対応した前記領域表示器を、前記作業領域を設定するための領域表示器として指定することを特徴とする請求項1に記載の領域設定システム。
【請求項9】
請求項1に記載の領域設定システムを搭載した作業機械であって、
前記領域設定機は、指定した複数の前記領域表示器に応じて、前記作業機械の作業領域を設定し、
設定した前記作業領域に応じて、前記作業機械の動作を制限することを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
作業機械が作業する作業領域を設定する領域設定システムおよびこれを搭載した作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械等の作業機械が稼働する作業現場においては、作業機械とその周囲で作業者が接触することを防止するため、作業領域の境界にコーン等を設置することで作業機械の操作者と作業機械の周囲の作業者とで作業領域を共有している。
【0003】
たとえば、特許文献1には、発光部を有した複数のコーンと、複数のコーンの発光部の発光を制御するリモートコントローラと、を備えたコーンシステムが開示されている。このコーンシステムでは、リモートコントローラの指令により、コーンの発光部の制御を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-131432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に記載のコーンシステムでは、作業機械が作業する作業領域の周りに領域表示器であるコーンを配置し、リモートコントローラから、領域表示器に発光の制御の指令を送信している。しかしながら、たとえば、領域表示器ごとの位置情報とその個体識別情報とをリモートコントローラが認識していないため、これらの領域表示器からいくつかの領域表示器を指定して、作業領域を設定することができないことがある。
【0006】
この結果、作業機械またはこれを操作する操作者が認識している作業領域と、作業機械の周囲で作業する作業者が認識している作業領域とが、一致しないことがある。このような場合、作業機械が、周囲で作業する作業者が認識している作業領域を超えたり、周囲で作業する作業者が、作業機械またはこれを操作する操作者が認識している作業領域内に侵入してしまったりする可能性がある。これにより、作業機械とその周囲の作業者とが接触するリスクが高まってしまう。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作業機械またはその操作者が認識する作業領域と、周囲の作業者が認識する作業領域とを一致させることができる領域設定システムおよびこれを搭載した作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を鑑みて、本発明に係る領域設定システムは、作業機械の作業領域を設定するために、周囲に認識可能な表示を行う複数の領域表示器と、前記複数の領域表示器から、前記作業領域を設定するために前記領域表示器を複数指定し、指定した前記領域表示器の表示を制御する制御装置を有した領域設定機と、を備えた領域設定システムであって、前記制御装置は、前記複数の領域表示器のうち、少なくとも指定した前記領域表示器の位置情報と個体識別情報とを取得し、取得結果に応じて前記領域表示器の表示を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、制御装置は、少なくとも指定した複数の領域表示器に対して、領域表示器ごとの位置情報とその個体識別情報を取得する。制御装置は、この取得結果に応じて領域表示器の表示を制御するので、複数の領域表示器の位置情報およびその個体識別情報の取得結果を、複数の領域表示器の表示に反映することができる。このような結果、作業領域の周囲の作業者は、領域表示器の表示内容を確認することで、領域設定機で設定された作業領域を正確に知ることができる。これにより、作業機械またはその操作者が認識する作業領域と、周辺の作業者が認識する作業領域とを一致させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る領域設定システムの模式的平面図である。
図2図1に示す領域設定システムの領域設定機が搭載される作業機械の模式的側面図である。
図3】本実施形態に係る領域設定システムとこれを搭載した作業機械とを構成する機器の関係を示したブロック図である。
図4図1に示す領域表示器の配置状態を説明するための模式斜視図である。
図5図1に示す領域設定機の制御ブロック図である。
図6図1に示す領域表示器の構成を示す模式図である。
図7図1に示す領域設定機の制御フロー図である。
図8図1に示す領域表示器の制御フロー図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る領域設定システムの模式的平面図である。
図10図9に示す領域表示器の配置状態を説明するための模式斜視図である。
図11】第2実施形態に係る領域設定機の制御ブロック図である。
図12図9に示す領域設定機の制御フロー図である。
図13図9に示す領域表示器の制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1~13を参照して、本発明の第1および第2実施形態に係る領域設定システム1を説明する。
【0012】
〔第1実施形態〕
図1に示すように、領域設定システム1は、作業機械5の作業領域Aを設定する領域設定機3と、作業領域Aを設定するために、周囲に認識可能な表示を行う複数の領域表示器2A~2Hと、を備えている。本実施形態では、領域設定機3は、作業機械5に搭載されており、作業機械5は、後述するように、設定された作業領域Aに応じて、作業機械5の動作を制限するものである。
【0013】
1.作業機械5について
まず、図2および図3を参照して、作業機械5について説明する。図2に示すように、作業機械5として、たとえば、油圧ショベルなどを挙げることができる。作業機械5は、クローラ式の下部走行体51と、下部走行体51上に旋回可能に設けられた上部旋回体52と、上部旋回体52に取り付けられた多関節式のフロント作業機53とを備えている。
【0014】
下部走行体51の前端部にアイドラ51A1が設けられ、後端部に走行用油圧モータ61(図2参照)により駆動されるスプロケット51A2が設けられる。アイドラ51A1とスプロケット51A2とには、リンクアッセンブリ51Bが架け渡されており、アイドラ51A1とのスプロケット51A2の間には、リンクアッセンブリ51Bを案内するローラ51Cが設けられている。リンクアッセンブリ51Bには、地面に設置するシュープレート51Dが取り付けられている。下部走行体51のスプロケット51A2には、減速機等(図示せず)を介して走行用油圧モータ61(図3参照)が連結されている。走行用油圧モータ61の駆動により、下部走行体51のスプロケット51A2を回転させ、作業機械5が移動可能となる。
【0015】
上部旋回体52の前方の左右一方側にはキャビン54が設けられ、上部旋回体52の前方の中央には上下方向に回動して掘削等の作業を行うべく、フロント作業機53が取り付けられている。上部旋回体52の後部には機体の重量のバランスを保つカウンタウェイト56が設けられている。下部走行体51と上部旋回体52との間には、減速機等(図示せず)を介して、旋回用油圧モータ62(図3参照)が連結されている。旋回用油圧モータ62の駆動により、下部走行体51に対して、上部旋回体52を旋回させることができる。
【0016】
フロント作業機53は、上部旋回体52に枢動自在に取り付けられたブーム53Aと、ブーム53Aの先端に枢動自在に取り付けられたアーム53Bと、アーム53Bに枢動自在に取り付けられたバケット53Cと、を備えている。
【0017】
ブーム53Aは、ブーム53Aと上部旋回体52との間に取り付けられた油圧式のブームシリンダ53aにより作動する。アーム53Bは、ブーム53Aとアーム53Bの間に取り付けられた油圧式のアームシリンダ53bにより作動する。バケット53Cは、アーム53Bとバケット53Cとの間に取り付けられた油圧式のバケットシリンダ53cにより作動する。以下、ブーム53A、アーム53B、およびバケット53Cの少なくとも1つの動作を、フロント作業機53の作業動作と称する。
【0018】
図3に示すように、本実施形態では、作業機械5は、エンジン65と、エンジン65に連結された作動ポンプ64と、作動ポンプ64に接続されたコントロールバルブ63と、をさらに備えている。作動ポンプ64は、エンジン65の出力により駆動し、オイルタンク(図示せず)から供給される作動油の圧力を昇圧する装置である。作動ポンプ64により昇圧された作動油がコントロールバルブ63に流れるように、作動ポンプ64は、コントロールバルブ63に接続されている。
【0019】
作動制御装置67は、コントロールバルブ63、作動ポンプ64、およびエンジン65に電気的に接続されている。コントロールバルブ63は、操作者による操作装置68の操作に起因した指令により、作動制御装置67を介して、下部走行体51の走行動作、上部旋回体52の旋回動作、およびフロント作業機53による作業動作に要する作動油(圧油)を分配し、これらの動作を制御する。
【0020】
具体的には、作動制御装置67からの制御信号により、コントロールバルブ63の開閉のタイミング、および弁開度が制御される。また、作動制御装置67からの制御信号により、作動ポンプ64の作動油の吐出量が制御される。さらに、作動制御装置67からエンジン65への制御信号により、エンジン65の駆動開始および駆動停止、エンジン65の回転数が制御される。このようにして、作業機械5のアクチュエータである、ブームシリンダ53a、アームシリンダ53b、バケットシリンダ53c、走行用油圧モータ61、および旋回用油圧モータ62に対して、作動油の供給開始および供給停止と、作動油の供給流量とが制御される。
【0021】
なお、本実施形態では、操作装置68は、ゲートロックレバー等を含むオペレータが操作する機器であり、操作装置68による操作量に応じて、作動制御装置67が上述した制御信号を生成し、作業機械5を動作させることができる。なお、作動制御装置67は、たとえば入力装置(図示せず)から入力さらに制御プログラムに基づいて、作業機械5を自動制御することも可能である。
【0022】
2.領域設定システム1について
本実施形態では、領域設定システム1は、作業機械5の作業領域Aを設定するために、周囲に認識可能な表示を行う複数の領域表示器2A~2Hと、複数の領域表示器2A~2Hから、たとえば特定の領域表示器2A~2Fを指定して、作業領域Aを設定する領域設定機3と、を備えている。領域設定機3は、領域表示器2A~2Hの表示を制御する制御装置34を備えている。
【0023】
2-1.領域表示器2A~2Hについて
領域表示器2A~2Hは、周囲に認識可能な表示を行う装置であり、複数個の領域表示器を用いて、作業機械5の作業領域Aを設定する機器である。領域表示器2A~2Hは、固定されていてもよいが、本実施形態では、作業領域Aを含む領域に移動自在に設置される。本実施形態では、領域表示器2A~2Hを移動自在に設置できるので、作業領域Aの周りの作業者が、領域表示器2A~2Hを移動することにより、作業領域Aの位置および範囲を変更することができる。本実施形態では、後述する領域設定機3で設定される作業領域Aも変更される。
【0024】
本実施形態では、その一例として、図1、4等には、8つの領域表示器2A~2Hを示しており、このうち6つの領域表示器2A~2Fにより作業領域Aを設定しているが、作業領域Aを設定することができるのであれば、これらの個数は限定されるものではない。
【0025】
本実施形態では、領域表示器2A~2Hは、周囲に認識可能な表示として、光源の点灯を行う。具体的には、図6に示すように、各領域表示器2A~2Hは、白熱球またはLEDなどの光源を有した状態表示部21と、これを制御する制御部22とを備えている。なお、以下の点灯の制御において、状態表示部21の光源の表示色を変更する場合には、光源はLEDであることが好ましいが、表示色の異なる複数の白熱球を組み合わせることにより、表示色を変更してもよい。
【0026】
制御部22は、状態表示部21の点灯の制御を行う点灯制御部22Aと、状態表示部21の表示の状態を通知する状態通知部22Bと、を備えている。なお、各領域表示器2A~2Hは、点灯制御部22Aを介して、状態表示部21(の光源)に電力を供給する電源(図示せず)も備えている。
【0027】
ここで、点灯制御部22Aは、後述する領域設定機3から指令(具体的には、各領域表示器2A~2Hの位置情報および個体識別情報の取得結果)に基づいて、状態表示部21による表示の制御(具体的には点灯の制御)を行う電子回路である。具体的には、点灯制御部22Aは、取得結果に応じた異なるパターンの点灯がされるように、状態表示部21の点灯のパターンを制御する。
【0028】
点灯制御部22Aでは、各領域表示器2A~2Hの位置情報および個体識別情報が正常に取得された場合の正常点灯パターンと、各領域表示器2A~2Hの位置情報または個体識別情報が正常に取得されなかった場合の異常点灯パターンが設定されている。
【0029】
点灯制御部22Aは、領域設定機3から指令に基づいて、この設定されたいずれかの点灯パターンで領域表示器2A~2Hが点灯されるように、状態表示部21の点灯のパターンを制御する。本実施形態では、正常点灯パターンと異常点灯パターンとは、点灯周期または点灯時の表示色などにより、異なるものに設定されている。
【0030】
なお、本実施形態では、点灯制御部22Aには、正常点灯パターンと異常点灯パターンの異なるパターンが設定さているが、たとえば、各領域表示器2A~2Hの位置情報または個体識別情報が正常に取得されなかった場合、異常点灯パターンを設定せず、状態表示部21を点灯させなくてもよい。
【0031】
また、本実施形態では、各領域表示器2A~2Hの位置情報または個体識別情報が正常に取得されなかった場合に同じ異常点灯パターンが設定されている。しかしながら、たとえば、位置情報が正常に取得されなかった場合(たとえば図8のステップS81でNoの場合)、個体識別情報が正常に認識されなかった場合(たとえば図8のステップS82でNoの場合)、および領域設定が正常でないと判定した場合(たとえば図8のステップS83でNoの場合)に分けて、異なる異常点灯パターンを設定してもよい。これにより、操作者がどのよう異常であるかを認識し、異常点灯パターンが表示された領域表示器を特定し、これを点検することができる。
【0032】
状態通知部22Bは、状態表示部21の表示(点灯)の状態を通知する電子回路である。具体的には、状態通知部22Bは、状態表示部21の光源に入力される電圧または電流を取得し、状態表示部21の点灯の状態が、正常点灯パターンか、異常点灯パターンか、それ以外のパターン(具体的には点灯していない状態)であるかを判定する。状態通知部22Bは、この判定した結果を、領域設定機3の制御装置34に通知する。このような通知により、領域設定機3の制御装置34は、点灯制御部22Aによる表示制御が正常に行われたかを確認し、点灯制御部22Aを含む領域表示器2A~2Hの誤作動または故障を検知することができる。
【0033】
さらに、領域表示器2A~2Hは、その外側面に、領域表示器2A~2Hごとに対応する個体識別情報が設定されており、この個体識別情報として、1次元コード(バーコード)の識別コード2a~2hを有している。本実施形態では、1次元コードとしてバーコードを例示したが、たとえば、QRコード、SPコードなどの2次元コードであってもよい。なお、本明細書でいう「個体識別情報」とは、領域表示器2A~2Hを個別に特定する(識別する)ことができる情報である。したがって、各領域表示器2A~2Hに付されている識別コード2a~2hは、異なる識別コードである。
【0034】
2-2.領域設定機3について
領域設定機3は、各領域表示器2A~2Hの位置を検出する位置検出装置31と、各領域表示器2A~2Hの識別コードを撮像する撮像装置32と、領域表示器2A~2Hから作業領域Aを設定する領域表示器2A~2Hを指定するための入力装置33と、を備えている。領域設定機3は、領域表示器2A~2Hのうち、指定された領域表示器の表示(点灯)の制御を行う制御装置34をさらに備えている。
【0035】
位置検出装置31は、電磁波を送信することにより、各領域表示器2A~2Hに反射した電磁波から各領域表示器2A~2Hの位置を検出するものである。具体的には、位置検出装置31は、位置検出装置31から電磁波を発信してから、この電磁波が領域表示器2A~2Hを反射して位置検出装置31で受信するまでの時間に基づいて、位置検出装置31から領域表示器2A~2Hまでの距離を検出する。さらに、位置検出装置31は、反射した電磁波を受信した方向から、位置検出装置31に対する領域表示器2A~2Hの方向(方位)を検出する。このようにして、領域設定機3に対する領域表示器2A~2Hの相対位置をより正確に特定することができる。
【0036】
本実施形態では、図1に示すように、領域設定機3は、4つの位置検出装置31を備えている。これらの位置検出装置31は、作業機械5の四方に所定の範囲(扇形状の範囲)R1~R4で電磁波が発信されるように、配置されている。なお、位置検出装置31では、所定の範囲R1~R4に存在する領域表示器2A~2Hばかりでなく、それ以外の障害物等も検出することがある。そこで、本実施形態では、各領域表示器2A~2Hに、たとえば、電磁波に対して所定の反射率を有する検出補助部材(図示せず)がさらに配置してもよい。これにより、検出補助部材に入射された電磁波は、特定の反射率で反射するため、他の物体に反射した電磁波と区別することができる。この結果、位置検出装置31は、領域表示器2A~2Hの位置をより正確に特定することができる。
【0037】
本実施形態では、位置検出装置31は、電磁波を利用して領域表示器2A~2Hの位置を検出したが、たとえば、領域表示器2A~2Hの位置を検出することができるのであれば、赤外線を利用して領域表示器2A~2Hの位置を検出してもよい。なお、位置検出装置31は、たとえば、作業機械5に予め搭載され、作業機械5の周りの物体を検出する物体検出装置であってもよい。
【0038】
本実施形態では、撮像装置32は、領域表示器2A~2Hの画像(デジタル画像)を撮像する装置である。本実施形態では、領域設定機3は、4つの撮像装置32を備えており、これらの撮像装置32は、作業機械5の四方に所定の範囲(扇形状の範囲)R1~R4で像が写り込むように、配置されている。
【0039】
本実施形態では、上述したように、複数の領域表示器2A~2Hの表面には、領域表示器2A~2Hごとに識別コード(1次元コード)2a~2hが付されており、撮像装置32は、領域表示器2A~2Hの1次元コードを撮像する。これにより、後述する制御装置34は、撮像装置32で撮像された画像から、画像処理により1次元コードを抽出し、1次元コードに基づいて、領域表示器2A~2Hの個体識別情報を特定することができる。なお、この撮像装置32は、たとえば、作業機械5に搭載され、作業機械5の周りを撮像する車載カメラを利用してもよい。
【0040】
なお、本実施形態では、位置検出装置31から、電磁波の反射を利用して、領域表示器2A~2Hの位置情報を検出し、撮像装置32から、領域表示器2A~2Hの個体識別情報を取得した。しかしながら、領域表示器2A~2HにGPS発信器等の発信器を設け、領域表示器2A~2Hの位置情報と個体識別情報とを特定してもよい。さらに、2つのカメラ(ステレオカメラ)を利用して、これらのカメラから、領域表示器2A~2Hの位置情報と個体識別情報を特定してもよい。
【0041】
入力装置33は、領域表示器2A~2Hから作業領域Aを設定する領域表示器2A~2Fを指定するため装置であり、具体的には、操作者が領域表示器2A~2Hから使用する領域表示器を制御装置34に登録するものである。本実施形態では、操作者は、8つの領域表示器2A~2Hのうち、作業領域Aを設定するために6つの領域表示器2A~2Fを登録している。
【0042】
ここで、図3に示すように、領域設定機3は、必要に応じて表示装置35をさらに備えていてもよい。表示装置35は、領域表示器2A~2Hの予め登録されたコード、これらの配置状態および点灯状態などが表示される。入力装置33は、表示装置35に表示された領域表示器2A~2Hのコードから、領域表示器2A~2Fを指定してもよい。
【0043】
しかしながら、本実施形態では、より好ましい態様として、入力装置33は、携帯式の入力装置であり、操作者により持ち運び可能な装置である。入力装置33は、指定する領域表示器2A~2Hの1次元コード(識別コード)を読み取る読み取り部33aと、読み取り部33aで読み取った1次元コード(識別コード)を制御装置34に入力する入力部33bと、を備えている。
【0044】
本実施形態では、読み取り部33aは、いわゆるバーコードリーダであり、領域表示器2A~2Hに設けられた1次元コードを読み取る。ここで、読み取り部33aで読み取る識別コードは、撮像装置32が撮像する上述した1次元コードであってもよいが、領域表示器2A~2Hごとの個体識別情報を特定できるのであれば、別の1次元コードまたは2次元コードが、領域表示器2A~2Hに設けられていてもよい。
【0045】
読み取り部33aで読み取られた識別コードは、入力部33bにより、領域設定機3の制御装置34に入力される。この際、入力部33bによる制御装置34への入力を、入力装置33を制御装置34に直接的に接続することにより行ってもよく、通信により行ってもよい。
【0046】
本実施形態では、たとえば、オペレータが、図に示す作業領域Aを設定しようとした場合には、入力装置33の読み取り部33aで作業領域Aの周りに配置される領域表示器2A~2Fの個体識別情報を読み取り、領域表示器2G、2Hの個体識別情報を読み取らない。これにより、入力装置33の入力部33bは、読み取った領域表示器2A~2Fを制御装置34に登録し、制御装置34では、登録された領域表示器2A~2Fの個体識別情報が指定される。
【0047】
制御装置34は、ハードウエアとして、ROM、RAMからなる記憶装置(図示せず)と、CPUからなる演算装置(図示せず)とを備えている。記憶装置には、たとえば、領域表示器の個体識別情報、演算装置が実行するプログラム(後述する制御フローを実行するプログラム(ソフトウエア))等が記憶されている。演算装置は、記憶装置で記憶されたプログラムを実行する。
【0048】
図5に示すように、制御装置34は、ソフトウエアとして、識別情報認識部34a、位置特定部34b、位置照合部34c、表示器指定部34d、表示器照合部34e、領域設定部34f、および表示制御設定部34gを備えている。
【0049】
識別情報認識部34aは、撮像装置32で撮像された画像から、画像処理により、領域表示器2A~2Hの識別コードの画像を抽出し、抽出した画像から、各領域表示器の個体識別情報を認識する(特定する)。ここでは、撮像装置32の撮像範囲(領域R1~R4)内に配置された領域表示器2A~2Hの個体識別情報が認識される。
【0050】
位置特定部34bは、位置検出装置31で検出された領域表示器2A~2Hの位置情報に基づいて、作業機械5(具体的には領域設定機3)に対する各領域表示器2A~2Hの相対的な座標を特定する。ここでは、位置検出装置31の検出範囲(領域R1~R4)内に配置された領域表示器2A~2Hの位置情報を特定するが、特定した位置情報が、いずれの領域表示器2A~2Hの位置情報に対応するか、わからない。また、領域表示器2A~2H以外の位置情報も検出されることがある。
【0051】
そこで、位置照合部34cでは、位置特定部34bが特定した位置情報が、識別情報認識部34aで認識された領域表示器2A~2Hのうち、いずれの領域表示器に対応する位置情報であるか、位置情報の照合を行う。たとえば、位置特定部34bで特定した作業機械5の周りの相対的な位置座標と、複数の撮像装置32で撮像した領域表示器2A~2Hの方位との関係から、これらの位置情報の照合を行ってもよい。
【0052】
このような位置情報の照合により、位置照合部34cは、これらの個体識別情報に対して、特定した位置情報を対応付ける。これにより、各領域表示器2A~2Hのうち、個体識別情報と位置情報が対応している領域表示器2A~2Hが存在することを確認することができる。
【0053】
そして、位置照合部34cは、対応関係を満たす領域表示器2A~2Hに対して、その個体識別情報に位置情報を紐付けて、これを表示器照合部34eに入力する。一方、識別情報認識部34aで個体識別情報を認識しているが、この個体識別情報に対して、位置特定部34bで対応する位置情報が存在しない場合、位置照合部34cは、その個体識別情報を表示制御設定部34gに入力する。
【0054】
表示器指定部34dは、入力装置33により登録された領域表示器2A~2Fを、作業領域Aを設定する領域表示器2A~2Fとして指定する。表示器指定部34dは、指定した領域表示器2A~2Fの個体識別情報を、表示器照合部34eに入力する。
【0055】
表示器照合部34eは、位置照合部34cで、位置情報が紐付けられた個体識別情報に対して、指定した領域表示器2A~2Fの個体識別情報が存在するかを照合する。この結果、表示器照合部34eにより、表示器指定部34dで指定した領域表示器2A~2Fが、個体識別情報および位置情報が取得された領域表示器2A~2Hの中に存在するかを確認することができる。
【0056】
そして、表示器照合部34eは、個体識別情報および位置情報が取得された領域表示器であり、かつ、指定された領域表示器に該当するものの個体識別情報を、領域設定部34fに入力する。一方、指定した領域表示器2A~2Fのうち、個体識別情報および位置情報が取得されていない(すなわち、これらが検出できない)ものがある場合には、表示器照合部34eは、該当する領域表示器の識別情報を、表示制御設定部34gに入力する。
【0057】
領域設定部34fでは、指定した領域表示器2A~2Fであって、個体識別情報および位置情報が検出された領域表示器2A~2Fに基づいて、作業領域Aを設定することが可能であるかを判断し、作業領域Aが設定可能である場合には作業領域Aを設定する。領域設定部34fは、この設定された作業領域Aの位置および範囲の情報を、作動制御装置67に入力する。
【0058】
作動制御装置67は、設定した作業領域Aに応じて、作業機械5の動作を制限する。具体的には、作動制御装置67は、位置検出装置31により検出された、作業領域Aに対する作業機械5の位置情報を特定する。次に、操作装置68の操作指令または自動運転時の作動制御装置67の制御指令と、作業機械5の位置情報とに基づいて、作業機械5の動作範囲を推定し、作業機械5が作業領域Aを超えようとした場合には、作業機械5の動作を制限する。
【0059】
ここで、作業機械5の動作の制限として、たとえば、作動制御装置67が、エンジン65の駆動を停止する制御を行うことにより、作動ポンプ64を停止してもよい。これにより、各アクチュエータ(ブームシリンダ53a、アームシリンダ53b、バケットシリンダ53c、走行用油圧モータ61、および旋回用油圧モータ62)への作動油の供給を遮断し、作業機械5の動作を停止させることができる。
【0060】
また、作業機械5の動作の制限として、作動制御装置67が、エンジン65の回転数を下げる制御を行うことにより、作動ポンプ64による作動油の圧力を下げ、各アクチュエータに供給される作動油の圧力を下げ、作業機械5の動作速度を低減してもよい。
【0061】
さらに、作業機械5の動作の制限として、作動制御装置67が、コントロールバルブ63の弁開度を調整することにより、各アクチュエータに流れる作動油に流量を制限し、作業機械5の動作を停止する、または、作業機械5の動作速度を低減してもよい。上述した作業機械5の動作の制限の制御は、その一例であり、作業機械5が作業する作業領域Aを超えようとする際に、作業機械5の動作を制限することができるのであれば、その制御はこれらに限定されるものではない。
【0062】
ここで、領域設定部34fは、たとえば、指定した領域表示器2A~2Fのうち、個体識別情報および位置情報が検出されない領域表示器が存在する場合には、作業領域Aの設定が不可能であると判断し、この結果を、表示制御設定部34gに入力する。
【0063】
なお、領域設定部34fが指定した個体識別情報が無い領域表示器があっても、指定した残りの領域表示器により、作業機械5の動作範囲内で、作業領域としての領域を設定することが可能であれば、作業領域Aを設定してもよい。たとえば、図1では、作業領域Aの隅部に該当する領域表示器2A、2B、2D、2Eの個体識別情報と位置情報が特定されていれば、これらの位置を直線で繋ぐことにより作業領域Aを設定することが可能である。したがって、この場合には、領域表示器2C、2Fの個体識別情報および位置情報が特定されていなくても、領域設定部34fは、作業領域Aの設定が可能であると判断し、作業領域Aを設定してもよい。
【0064】
表示制御設定部34gは、個体識別情報が認識された領域表示器2A~2Hに対して、表示(点灯)の制御を設定する。なお、この制御には、点灯しない制御が含まれていてもよい。具体的には、表示制御設定部34gは、指定した領域表示器2A~2Fであって、個体識別情報および位置情報が正常に検出された領域表示器2A~2F、すなわち、作業領域Aの設定に用いられる領域表示器2A~2Fに、正常点灯パターンを設定する。表示制御設定部34gは、この正常点灯パターンを点灯すべき指令(制御信号)を、各領域表示器2A~2Fに入力する。
【0065】
一方、表示制御設定部34gは、異常点灯パターンを点灯すべき指令(制御信号)を、該当する領域表示器に入力する。具体的には、位置特定部34bで対応する位置情報が検出できない領域表示器が存在する場合には、表示制御設定部34gは、この領域表示器に異常点灯パターンを点灯すべき指令を出力する。また、表示器照合部34eで個体識別情報および位置情報が検出されていない領域表示器が存在する場合、表示制御設定部34gは、この領域表示器に異常点灯パターンを点灯すべき指令を出力する。さらに、領域設定部34fで作業機械5による作業領域Aが設定できない場合、たとえ、個体識別情報および位置情報が検出されている領域表示器が存在していたとしても、この領域表示器に異常点灯パターンを点灯すべき指令を出力する。
【0066】
なお、たとえば、本実施形態では、領域表示器2G、2Hは、作業領域Aの設定に使用する領域表示器として指定されていない。したがって、領域表示器2G、2Hの個体識別情報および位置情報が検出できている場合であっても、表示制御設定部34gは、領域表示器2G、2Hには点灯すべき指令を出力しない。
【0067】
以下に、図7を参照しながら、領域設定機3の制御フローを説明する。まず、ステップS71では、識別情報認識部34aにより、撮像装置32で撮像された画像から、領域表示器2A~2Fの個体識別情報を認識する。本実施形態では、図1に示すように、8つの領域表示器2A~2Hが存在するので、識別情報認識部34aでは、これらの個体識別情報を認識する。次に、ステップS72では、位置特定部34bにより、位置検出装置31により検出された位置情報に基づいて、作業機械5に対する領域表示器2A~2H等の相対的な位置情報を特定する。この時点で、特定された位置情報は、領域表示器2A~2Hのいずれの位置であるか特定できておらず、これら以外の障害物等の位置情報も検出される。
【0068】
次に、ステップS73では、ステップS71で位置照合部34cにより認識された領域表示器2A~2Hの個体識別情報と、ステップS72で位置特定部34bが特定された位置情報が、領域表示器2A~2Hのいずれの位置情報に対応するか、位置情報の照合を行う。そして、認識された領域表示器2A~2Hに対して、対応する位置情報がある場合には、ステップS74に進み、対応する位置情報がない場合には、ステップS791に進む。ステップS791では、表示制御設定部34gは、対応する位置情報が存在しない領域表示器(たとえば領域表示器2H)に、異常信号(制御信号)を通知する。ここで、上述した異常点灯パターンが複数設定されている場合には、表示制御設定部34gは、位置情報が無いエラーに応じた異常信号を、該当する領域表示器(たとえば領域表示器2H)に通知する。
【0069】
ステップS74では、入力装置33により、登録した領域表示器2A~2Fが、作業領域Aに使用する領域表示器であるので、表示器指定部34dでは、領域表示器2A~2Fの個体識別情報を指定し、ステップS75に進む。
【0070】
ステップS75では、表示器照合部34eは、指定された領域表示器2A~2Fの個体識別情報が、ステップS71で認識した個体識別情報に存在するか、領域表示器の個体識別情報の照合を行う。これにより、表示器照合部34eにより、認識した個体識別情報に、指定した個体識別情報が存在する場合、ステップS76に進む。一方、認識した個体識別情報に、指定した個体識別情報がない場合には、ステップS792に進む。
【0071】
ここで、ステップS792では、表示制御設定部34gは、指定した領域表示器2A~2Fのうち、個体識別情報がない領域表示器(たとえば、領域表示器2F)に、異常信号を通知する。すなわち、このステップS792において、異常信号を通知する領域表示器は、個体識別情報が検出できていない(取得できていない)領域表示器である。ここで、異常点灯パターンが複数設定されている場合には、表示制御設定部34gは、個体識別情報が無いエラーに応じた異常信号を、該当する領域表示器(たとえば領域表示器2F)に通知する。
【0072】
ステップS76では、領域設定部34fが、指定された領域表示器2A~2Fのうち、個体識別情報が認識されている領域表示器の位置情報により、作業領域Aが設定可能であるかを判定する。ここで、作業領域Aの設定が可能であると判断した場合には、ステップS77に進む。一方、作業領域Aの設定が不可能であると判断した場合には、ステップS793に進む。
【0073】
ステップS793では、指定した残りの領域表示器の位置情報および個体識別情報は検出できている(取得できている)が、作業領域Aの設定が不可能であるので、表示制御設定部34gは、この残りの領域表示器に、異常信号を通知する。ここで、異常点灯パターンが複数設定されている場合には、表示制御設定部34gは、領域設定ができないエラーに応じた異常信号を、残りの領域表示器に通知する。
【0074】
ステップS77では、位置情報および個体識別情報が検出され(取得され)、かつ、指定された領域表示器により、作業領域Aを設定する。さらに、ステップS77では、設定された作業領域Aの位置および範囲の情報を、作業機械5の作動制御装置67に入力する。これにより、上述した如く、作動制御装置67により、設定した作業領域Aに応じて、作業機械5の動作が制限される。最後に、ステップS78では、表示制御設定部34gは、作業領域Aの設定に使用される領域表示器に対して、正常信号(制御信号)を通知する。
【0075】
図8を参照し、本実施形態に係る領域表示器2A~2Fの制御フローを説明する。まず、ステップS81では、上述したステップS73により、表示制御設定部34gから、位置情報が無いエラーに応じた異常信号を受信したか否かを判定する。ここで、ステップS81で、この異常信号を受信していない場合には、位置情報特定のエラー無しであると判定できるので、ステップS82に進む。
【0076】
ステップS82では、上述したステップS75により、表示制御設定部34gから、個体識別情報が無いエラーに応じた異常信号を受信したか否かを判定する。ここで、ステップS82で、この異常信号を受信していない場合には、個体識別情報認識のエラー無しであるので、ステップS83に進む。
【0077】
次に、ステップS83では、上述したステップS76により、表示制御設定部34gから、領域設定が不可能であるエラーに応じた異常信号を受信したか否かを判定する。ここで、ステップS83で、この異常信号を受信していない場合には、領域設定状況は正常であるので、ステップS84に進む。
【0078】
ステップS84では、点灯制御部22Aは、表示制御設定部34gから作業領域Aを正常に設定するための正常信号(制御信号)を受信したかを判断し、受信した場合には、ステップS85進む。ステップS85では、点灯制御部22Aは正常点灯パターンの制御信号を状態表示部21に入力し、状態表示部21は正常点灯パターンで点灯される。一方、ステップS81~ステップS83で異常信号を受信した場合、ステップS84で正常信号を受信しなかった場合には、ステップS87において、点灯制御部22Aは、この異常信号に応じた異常点灯パターンの制御信号を状態表示部21に入力し、状態表示部21では異常点灯パターンで点灯される。なお、この異常点灯パターンが、エラーの種類に応じて異なる点灯パターンに設定されている場合には、このエラーの種類に応じた異常点灯パターンで点灯される。
【0079】
さらに、ステップS86では、状態通知部22Bは、領域表示器の状態表示部21の点灯状態(表示の状態)を、領域設定機3に通知する。これにより、状態表示部21の表示の状態が、表示制御設定部34gで設定された表示に合致しているかを確認することができる。このような結果を、たとえば表示装置35に入力してもよい。
【0080】
本実施形態によれば、領域設定機3の制御装置34は、指定した複数の領域表示器2A~2Fに対して、領域表示器2A~2Fごとの位置情報とその個体識別情報を検出することができる。制御装置34は、この検出した結果に応じた表示がされるように、領域表示器2A~2Fの表示(点灯)に制御信号を、通信を介して入力する。
【0081】
したがって、複数の領域表示器2A~2Fの位置情報およびその個体識別情報の検出結果を、複数の領域表示器2A~2Fの表示に反映することができる。このような結果、作業領域Aの周囲の作業者は、領域表示器2A~2Fの表示内容を確認することで、領域設定機3で設定された作業領域Aを正確に知ることができる。これにより、作業機械5または作業機械5の操作者が認識する作業領域と、周囲の作業者が認識する作業領域とを一致させることができる。また、作業機械5が自動運転で制御されているときであっても、周囲の作業者は、安心して作業を行うことができる。
【0082】
また、制御装置34は、検出した結果に応じた異なるパターン(すなわち、正常点灯パターンと異常点灯パターン)が表示されるように、各領域表示器の点灯を制御するので、異常点灯パターンが点灯された領域表示器を点検することができる。
【0083】
〔第2実施形態〕
以下に第2実施形態に係る領域設定システム1を説明する。第2実施形態に係る領域設定システム1が第1実施形態のものと相違する点は、領域設定システム1が、複数の領域設定機3A、3Bを備え、各領域設定機3A、3Bが、複数の作業領域A1、A2からその1つを設定する点である。したがって、第1実施形態と同じ構成は、同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0084】
図9および図10に示すように、本実施形態に係る領域設定システム1は、複数の作業領域A1、A2の数に応じた数の領域設定機3A、3Bを有している。本実施形態では、その一例として、作業機械5A、5Bは2つであり、作業領域A1、A2が2つであり、領域設定機3A、3Bも2つであるが、これらの個数は、複数であれば特に限定されるものではない。
【0085】
各領域設定機3A、3Bの制御装置34は、他の領域設定機の制御装置により指定した領域表示器の表示とは異なるパターンが表示されるように、各領域設定機3A、3Bで指定した領域表示器2A~2Lの表示を制御する。
【0086】
具体的には、図11に示すように、各領域設定機3A、3Bの制御装置34は、領域指定部34hをさらに備えている。本実施形態では、その一例として、領域設定機3Aの領域指定部34hは、作業領域A1として領域表示器2A~2Fを指定し、領域設定機3Bの領域指定部34hは、作業領域A2として領域表示器2G~2Lを指定する。具体的には、図9に示すように、本実施形態では、領域設定機3Aの入力装置33からの入力により、作業領域A1(すなわち領域表示器2A~2F)が指定され、領域設定機3Bの入力装置33からの入力により、作業領域A2(すなわち領域表示器2G~2L)が指定される。各領域設定機3A、3Bの各領域指定部34hは、指定された作業領域の結果(具体的には、その作業領域に応じたコード)を、表示制御設定部34gに入力する。これにより、領域設定機3Aの表示制御設定部34gは、その設定領域A1に応じたパターンを表示するように、通信を介して領域表示器2A~2Fに制御信号を入力する。一方、領域設定機3Bの表示制御設定部34gは、その設定領域A2に応じたパターン(設定領域A1とは異なるパターン)を表示するように、通信を介して領域表示器2G~2Lに制御信号を入力する。
【0087】
本実施形態では、その一例として、領域設定機3A、3Bの各表示制御設定部34gは、作業領域A1を設定する領域表示器2A~2Fが点灯する表示色と、作業領域A2を設定する領域表示器2G~2Lが点灯する表示色と、を異なる表示色に設定している。さらに、領域設定機3A、3Bの各表示制御設定部34gは、各正常点灯パターンと異常点灯パターンを、異なる点灯周期となるように設定している。なお、ここで、2つの領域設定機3A、3Bを通信可能な状態とし、1つの領域設定機の領域指定部34hが、1つの作業領域を指定すると、他の領域設定機の領域指定部34hに、指定された作業領域の指定を禁止するようにしてもよい。
【0088】
第2実施形態に係る各領域設定機3A、3Bでは、図12に示すように、第1実施形態に対応する図7に示す制御フロー図のステップS73とステップS74との間に、さらに、ステップS101が追加されている。このステップS101では、上述したように、入力装置33からの入力により、作業領域A1、A2のいずれかの作業領域が指定される。これにより、正常点灯パターンと異常点灯パターンとにより設定された点灯周期と、作業領域A1、A2に応じた設定された点灯する色とで点灯するための制御信号を、各領域表示器に送信することができる。
【0089】
第2実施形態に係る各領域表示器2A~2Hでは、図13に示すように、第1実施形態に対応する図8に示す制御フロー図のステップS85が相違する。このステップS85では、指定された作業領域A1、A2に応じた表示色となる正常点灯パターンで状態表示部21に表示される。なお、本実施形態では、ステップS87では、異常点灯パターンの表示は、第1実施形態と同じであってもよいが、たとえば、この異常点灯パターンの表示色も、異なる色に設定してもよい。このように、本実施形態によれば、複数の作業領域A1、A2が存在する場合であっても正確に領域を示すことができる。
【0090】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【0091】
第1実施形態および第2実施形態では、領域設定機の制御装置、入力装置、および表示装置は、作業機械5に搭載したが、たとえば、位置検出装置、撮像装置が作業機械に搭載されていれば、領域設定機の制御装置、入力装置、および表示装置は、作業領域外に配置されていてもよく、これらがすべて持ち運び可能であってもよい。
【0092】
さらに、第2実施形態では、作業領域同士が重ならないように配置されているが、たとえば、各領域設定機で指定した領域表示器により設定された作業領域の情報を相互に通信で送信し、作業領域同士が重なる状態になる場合には、各領域設定部により領域設定が不可能であると判定してもよい。
【0093】
さらに、第1および第2実施形態では、作業機械を直接的に制御する作動制御装置と、領域設定機の制御装置とを個別に設けたが、例えば、これらの装置を1つの制御装置としてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1:領域設定システム、2A~2L:領域表示器、3,3A,3B:領域設定機、31:位置検出装置、32:撮像装置、33:入力装置、34:制御装置、5,5A,5B:作業機械、A,A1,A2:作業領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13