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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】縦型洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 37/28 20060101AFI20221208BHJP
   D06F 37/18 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
D06F37/28
D06F37/18
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019184643
(22)【出願日】2019-10-07
(65)【公開番号】P2021058414
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大月 康平
(72)【発明者】
【氏名】和田 努
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真樹
(72)【発明者】
【氏名】曽我 丈
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-311091(JP,A)
【文献】特開2017-074274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 1/00-37/42
D06F 39/12-51/02
D06F 58/00
D06F 58/10-58/18
D06F 58/30-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内槽を回転可能に収容する外槽と、
前記内槽および前記外槽を収容する筐体と、
前記筐体の上面に設けられ、洗濯物投入口を開閉する外蓋と、
前記外槽の上部を塞ぐ槽カバーと、を備え、
前記槽カバーは、開閉可能な内蓋を備え、後側に位置する領域が前側および左右両側に位置する領域よりも広く覆う形状であり、
前記内蓋を閉じたときに、前記槽カバーと前記内蓋との間に隙間が形成され
前記隙間は、全周に形成され、
前記後側に位置する領域の隙間は、前記前側および前記左右両側に位置する領域の隙間よりも広く形成されていることを特徴とする縦型洗濯機。
【請求項2】
請求項1に記載の縦型洗濯機において、
前記外蓋には、前記筐体内に空気を取り込む通気孔が形成され、
脱水運転時に、前記通気孔から前記筐体内に取り込んだ空気を、前記隙間を通して前記内槽内に取り込むことを特徴とする縦型洗濯機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の縦型洗濯機において、
前記槽カバーは、前記内蓋の周囲に空気を当該内蓋の内側に案内する案内面が形成され、かつ、前記案内面の内周縁部に上方に向けて突出する突起部が周方向に沿って形成され、
前記内蓋には、外周側に向けて上昇する傾斜部が形成されるとともに、前記傾斜部の外周側に径方向外側に水平に延びる延出部が形成され、かつ、前記延出部の外周縁部に鉛直方向下方に延びる垂下部が形成され、
前記突起部と前記延出部の下面との間の距離が、前記垂下部の下端と前記案内面との距離よりも短く形成されていることを特徴とする縦型洗濯機。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の縦型洗濯機において、
前記隙間は、ラビリンス構造であることを特徴とする縦型洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦型洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
縦型洗濯機は、内蓋を備えていないため、運転時の水はねを抑制するために、パルセータの動きを調整している。また、縦型洗濯機は、洗浄力を向上するために、パルセータを制御して機械力を上げている。
【0003】
特許文献1には、内蓋がパッキンを介して槽カバーに取り付けられることで槽を密閉する縦型洗濯機が記載されている。
【0004】
特許文献2には、外蓋に設けられた吸気窓穴から空気を取り込み、衣類の水分を飛ばして、少しでも衣類を乾燥させ、干し時間(部屋干し時間)を短縮させる機能を備えた縦型洗濯機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-300195号公報
【文献】特開2008-194528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の縦型洗濯機は、運転時の水はね抑止や洗浄力向上を図ることができるが、内蓋によって槽を密閉しているため槽内に空気を取り込むことができない。このため、部屋干し時間の短縮を図ることができない。
【0007】
特許文献2に記載の縦型洗濯機は、内蓋を備えないため、水はね抑止および洗浄力向上を図ることができない。
【0008】
本発明は、前記した従来の課題を解決するものであり、水はね抑止および洗浄力向上を実現しつつ干し時間を短縮することが可能な縦型洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、内槽を回転可能に収容する外槽と、前記内槽および前記外槽を収容する筐体と、前記筐体の上面に設けられ、洗濯物投入口を開閉する外蓋と、前記外槽の上部を塞ぐ槽カバーと、を備え、前記槽カバーは、開閉可能な内蓋を備え、後側に位置する領域が前側および左右両側に位置する領域よりも広く覆う形状であり、前記内蓋を閉じたときに、前記槽カバーと前記内蓋との間に隙間が形成され、前記隙間は、全周に形成され、前記後側に位置する領域の隙間は、前記前側および前記左右両側に位置する領域の隙間よりも広く形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水はね抑制および洗浄力向上を実現しつつ干し時間を短縮することが可能な縦型洗濯機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の縦型洗濯機を示す斜視図である。
図2】本実施形態の縦型洗濯機の内部構成を示す概略図である。
図3】外蓋を示す斜視図である。
図4】槽カバーを示す平面図である。
図5図4のV-V線断面図である。
図6図4のVI-VI線断面図である。
図7図5の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る縦型洗濯機について、適宜図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態の縦型洗濯機1は、洗濯(洗い)、すすぎ、脱水機能を有する縦型の全自動洗濯機に適用されるものである。つまり、本実施形態の縦型洗濯機1は、乾燥機能を備えていないものである。また、以下の説明において、前後上下左右の方向は図1に示す前後上下左右の方向を基準とする。
【0013】
図1は、本実施形態の縦型洗濯機を示す斜視図である。なお、図1は、縦型洗濯機1の外蓋5および内蓋7の双方を開けた状態を示している。
図1に示すように、縦型洗濯機1は、洗濯兼脱水槽3(内槽)を回転可能に支持する外槽2(図2参照)と、外槽2および洗濯兼脱水槽3を収容する筐体4と、筐体4の上部に形成された衣類投入口4a(洗濯物投入口)を開閉する外蓋5と、外槽2の上部開口2s(図2参照)を覆う槽カバー6と、を備えて構成されている。また、槽カバー6は、開閉可能な内蓋7を備えている。
【0014】
洗濯兼脱水槽3は、回転軸が略鉛直方向のものであって有底円筒形状を呈し、ステンレス鋼板などで形成された胴板3aと、合成樹脂製の底板3b(図2参照)と、バランスリング3dを有している。また、洗濯兼脱水槽3の側壁(胴板3a)には、通水および通風のための多数の貫通孔3c(図2参照)が形成されている。貫通孔3cは、洗濯物W(図2参照)に含まれている洗濯水を遠心力によって洗濯物Wと分離し排出するための脱水孔としても機能している。
【0015】
バランスリング3dは、合成樹脂などでリング状に形成され、胴板3aの上端部に固定されている。また、バランスリング3dは、胴板3aの内壁面よりも径方向の内側に突出するように配置され、バランスリング3dの内径が、胴板3aの内径よりも小さくなるように構成されている。また、バランスリング3dは、内部に比重の大きな流体(塩水など)を封入して構成され、洗濯兼脱水槽3の回転時に洗濯物の偏りなどによって偏心が生じたときに、流体の移動によって偏心を打ち消し、回転のバランスを維持する機能を有している。
【0016】
筐体4は、鋼板製の枠体4bと、枠体4bの下部に設けられる合成樹脂製のベース4cと、枠体4bの上部に設けられる合成樹脂製のトップカバー4d(上板)と、を備えて構成されている。なお、図示していないが、筐体4の内部は、図示しない補強部材を用いて筐体4の補強が施されている。また、ベース4cは、内部に格子状のリブなどが形成されて補強が施されている。
【0017】
また、筐体4の衣類投入口4aは、奥側(後方)が左右方向に直線状、かつ、奥側から手前(前方)に向けて円弧状に形成されるとともに、全体として略半円筒状に形成されている。
【0018】
また、筐体4の内側には、衣類投入口4aの手前に、左右方向に細長い形状の蓋4eが設けられている。蓋4eの内側には、洗剤類を自動的に投入するため(洗剤用と柔軟剤用)のタンク(不図示)が収納されるようになっている。また、衣類投入口4aの左手前側には、洗剤類を手動で投入するための洗剤類手動投入部4fが設けられている。
【0019】
外蓋5は、2つに折れ曲がるように構成され、前側蓋5aと後側蓋5bとが、ヒンジ5cを介して回動自在に連結されている。
【0020】
槽カバー6には、衣類投入口4aの形状に沿った形の略半円形状の投入孔6aが形成されている。
【0021】
内蓋7は、投入孔6aに沿って且つ投入孔6aよりも若干大きく形成され、投入孔6aの全体を覆うことができる形状を有している。また、内蓋7の後端の左右両側は、ヒンジ7a,7aを介して槽カバー6に回動自在に連結されている。また、内蓋7には、この内蓋7を閉じたときに、内蓋7を槽カバー6にロックするロック部材7bが設けられている。
【0022】
また、内蓋7の裏面には、外周縁部に、ゴムなどの弾性材で形成された緩衝部材7sが設けられている。この緩衝部材7sは、外周縁部に複数設けられている。
【0023】
図2は、本実施形態の縦型洗濯機の内部構成を示す概略図である。
図2に示すように、外槽2は、合成樹脂製であり、有底略円筒状を呈し、防振装置8によって支持されている。防振装置8は、バネや弾性ゴムからなり、筐体4内の上部から外槽2を吊り下げ支持している。
【0024】
外槽2の底部には外槽排水口2aが設けられている。この外槽排水口2aには、排水装置である排水弁13および排水ホース11が接続されている。脱水工程等を行う際、コントロールユニット19の指令により排水弁13が開かれる。外槽2内の洗濯水は、排水ホース11の他端から縦型洗濯機1の外部へ排出される。
【0025】
洗濯兼脱水槽3の底部には、攪拌翼(パルセータ)3eが設けられている。この攪拌翼3eには、上下に貫通する貫通孔(不図示)が多数設けられている。また、攪拌翼3eの裏面(下面)には羽根部材3fが設けられ、攪拌翼3eが回転することにより、洗濯水が洗濯兼脱水槽3の径方向外側に押し出されるようになっている。
【0026】
また、洗濯兼脱水槽3は、対向して配置された循環流路部材24,24を備えている。循環流路部材24は、合成樹脂材料で形成され、洗濯兼脱水槽3の内周面(側壁内面)に取り付けられている。
【0027】
循環流路部材24と洗濯兼脱水槽3との間には、鉛直方向に向けて循環流路Rが設けられている。洗濯時などに攪拌翼3eが回転すると、洗濯水が循環流路Rに導かれる。そして、洗濯水は、循環流路R内を上昇し、循環流路部材24の上端(バランスリング3dの下端)に形成された吐出口32から洗濯兼脱水槽3内に吐出されることで洗濯水が循環する。
【0028】
また、外槽2の底部外側には、鋼板製の取付けベース14を介して、モータ15aとクラッチ機構15bとを備えた駆動装置15が取り付けられている。この駆動装置15は、モータ15aの回転軸が外槽2を貫通し、洗濯兼脱水槽3および攪拌翼3eと結合している。クラッチ機構15bは、脱水モードにおいてモータ15aの回転動力を洗濯兼脱水槽3および攪拌翼3eに伝達する。また、クラッチ機構15bは、攪拌モードにおいて洗濯兼脱水槽3を固定あるいは回転自由の状態としてモータ15aの回転動力を攪拌翼3eに伝達する。モータ15aは、その回転を検出するホール素子あるいはフォトインタラプタなどで構成される回転センサ(不図示)と、モータ15aに流れる電流を検出するモータ電流センサ(不図示)を備える。
【0029】
槽カバー6は、円形板状を呈し、外槽2の上端に設けられている。また、槽カバー6に形成された投入孔6aは、内蓋7を開閉動作できるように、衣類投入口4aよりも径方向内側に位置している。
【0030】
図3は、外蓋を示す斜視図である。なお、図3は、外蓋5を下側から見上げた状態である。
図3に示すように、外蓋5は、前側に位置する前側蓋5aと、前側蓋5aの後側に位置する後側蓋5bと、を備えて構成されている。
【0031】
前側蓋5aには、手を掛ける取っ手5a1が設けられている(図1参照)。この取っ手5a1は、手を挿入することが可能な挿入部5a2が形成されている(図1参照)。この挿入部5a2の先端には、空気が通流することが可能な通気孔5a3が形成されている。
【0032】
後側蓋5bには、操作スイッチを備えた回路基板(不図示)を収容する回路基板ケース5b1が設けられている。また、後側蓋5bには、外蓋5を筐体4に回動自在に連結するヒンジ部5b2が設けられている。
【0033】
図4は、槽カバーを示す平面図である。なお、図4は、槽カバー6を表側(上面側)から見た状態である。
図4に示すように、槽カバー6には、内蓋7の後方に、洗濯兼脱水槽3内に給水するホース(不図示)が接続される給水接続口6sが形成されている。この給水接続口6sは、ホース17を介して給水電磁弁16と接続されている。ホース17の一部は、外槽2の振動を吸収するために蛇腹状に形成されている。給水電磁弁16は、トップカバー4dに形成された、水道栓からのホース18が接続される接続部16aと連通している。

内蓋7の外周縁部7cは、槽カバー6の外周縁部6gよりも内側に位置している。また、槽カバー6は、内蓋7の周囲に、空気を内蓋7の内側に案内する案内面6bが形成されている。
【0034】
図5は、図4のV-V線断面図である。
図5に示すように、内蓋7は、上面側(表面側)に位置する蓋本体7dと、下面側(裏面側)に位置する裏蓋7eと、が組み合わされて構成されている。また、蓋本体7dと裏蓋7eとは、複数のねじ7f(図1参照)を介して互いに固定されている。
【0035】
裏蓋7eは、中央部において凹面が鉛直方向下方を向く凹部7e1が形成されている。また、裏蓋7eは、凹部7e1の外周側に平坦部7e2が形成されている。また、裏蓋7eは、平坦部7e2の外周側に、蓋本体7dに向けて且つ外周側に向けて上昇する傾斜部7e3が形成されている。また、裏蓋7eは、傾斜部7e3の外周側に、さらに径方向外側に水平に延びる延出部7e4が形成されている。
【0036】
蓋本体7dは、外周縁部が鉛直方向下方に延びる垂下部7d1が形成されている。この垂下部7d1の先端(下端)は、延出部7e4の下面7e5(図7参照)よりも鉛直方向下方に位置している。
【0037】
槽カバー6の内周縁部6cには、鉛直方向上方に向けて突出する突起部6dが形成されている。この突起部6dは、内周縁部6cに周方向に部分的ではなく、内周縁部6cの全周に渡って形成されている。これにより、槽内(外槽2、洗濯兼脱水槽3)内から水漏れや泡漏れが生じるのを抑えることができる。
【0038】
また、内蓋7の図示左端においては、槽カバー6と内蓋7との間に、隙間S1が形成されている。また、内蓋7の図示右端においては、槽カバー6と内蓋7との間に、隙間S2が形成されている。このように、本実施形態では、内蓋7を備えてはいるものの、槽カバー6と内蓋7との間に、パッキン(シール部材)が設けられていないものである。したがって、内蓋7を全閉したときに、槽カバー6と内蓋7との間に隙間S1,S2が形成されるようになっている。
【0039】
図6は、図4のVI-VI線断面図である。
図6に示すように、裏蓋7eは、図5の説明と同様に、凹部7e1、平坦部7e2、傾斜部7e3および延出部7e4を備えている。
【0040】
また、内蓋7の図示前端においては、槽カバー6と内蓋7との間に、隙間S3が形成されている。また、内蓋7の図示後端においては、槽カバー6と内蓋7との間に、隙間S4が形成されている。
【0041】
なお、図5および図6では、左端、右端、後端および前端の部分的な断面を示して説明したが、槽カバー6と内蓋7との間には、全周に渡って隙間(隙間S1~S4と同様なもの)が形成されている。
【0042】
図7は、図5の一部拡大断面図である。なお、以下では、一部の拡大図を例に挙げて説明するが、その他の部分についても同様に構成されているものとして、その他の部分の説明を省略する。
図7に示すように、槽カバー6に形成された突起部6dは、案内面6b(槽カバー6の上面)からの高さ寸法Hが、3.0mm以上に設定されることが好ましい。これにより、槽内(外槽2内および洗濯兼脱水槽3内)からの水漏れおよび泡漏れをさらに抑制できる。
【0043】
また、槽カバー6と内蓋7との間に形成された隙間S1は、ラビリンス構造となるように構成されている。すなわち、垂下部7d1の下端(先端)7d2と、突起部6dの上端(先端)6d1との間の鉛直方向(上下方向)の距離Sは、0.5mm以下に設定することが好ましく、より好ましくは0mm以下に設定することが好ましい。なお、距離Sは、マイナスの値を含んでもよい。本実施形態は、距離Sがマイナスに設定された状態であり、突起部6dの上端6d1が、垂下部7d1の下端7d2よりも鉛直方向上方に位置している。このように、隙間S1をラビリンス構造にすることによって、水漏れおよび泡漏れをより確実に抑制できる。
【0044】
また、隙間S1は、入口である垂下部7d1の下端7d2と案内面6bとの寸法(距離)Lは、3.5mm以上に設定することが好ましい。これにより、後記する脱水時において槽内に空気を取り込むことができる。これにより、脱水効率を向上させることができ、干し時間(部屋干し時間)の短縮を図ることができる。
【0045】
また、隙間S1は、空気の入口の寸法Lが3.5mm以上であれば、外槽2の内側に通じる隙間(例えば、突起部6dと延出部7e4の下面7e5との間)が寸法Lよりも短く(狭く)形成されていてもよい。
【0046】
ところで、本実施形態の縦型洗濯機1は、脱水運転時に、槽内に空気を取り込んで、通常の一般的な脱水よりも、衣類の水分を飛ばして、干し時間(部屋干し時間)を短くできる機能を備えている。すなわち、図2に示すように、脱水運転時に洗濯兼脱水槽3が高速で回転すると、遠心力によって衣類に含まれる水分が貫通孔3cを通って外槽2と洗濯兼脱水槽3との間に排出され、その後、排水ホース11を通って機外に排出される。また、脱水運転における洗濯兼脱水槽3内の空気は、貫通孔3cやパルセータの貫通孔(不図示)などを通って外槽2と洗濯兼脱水槽3との間の空間に排出される。外槽2内に排出された空気は、排水ホース11を通って機外に排出される。また、外槽2に排出された空気は、槽カバー6と内蓋7との間の隙間S1~S4(図5および図6参照)を通って、外槽2の外側に排出され、筐体4と外槽2との間の空間を通って機外に排出される。槽内の空気が機外に排出されると、外蓋5の取っ手5a1に形成された通気孔5a3(図3参照)から筐体4内に空気が取り込まれる。筐体4内に取り込まれた空気は、槽カバー6と内蓋7との隙間S1~S4を通って洗濯兼脱水槽3内に取り込まれる。洗濯兼脱水槽3内に取り込まれた空気は、衣類と接触することで、衣類に含まれる水分を取り除いた後に貫通孔3cなどを介して洗濯兼脱水槽3と外槽2との間に排出される。このようにして衣類の脱水を行うことによって、その後に部屋干しする場合の部屋干し時間を短縮することが可能になる。なお、部屋干しに限定されるものではなく、屋外での干し時間も短縮することができる。このように、隙間S1~S4は、空気を槽内に取り込む機能と、空気を槽外に排出する機能と、を備えている。
【0047】
なお、隙間S1~S4は、干し時間短縮といった課題を解決するには、寸法L(図7参照)を3.5mm以上にする構成に限定されるものではなく、少しでも隙間が形成されていればよい。また、寸法Lを3.5mm以上に設定することで、槽カバー6と内蓋7との接触を抑えることができ、接触することによって発生する騒音を防止できる。
【0048】
また、内蓋7の裏面には、緩衝部材7sが設けられている。このように、緩衝部材7sを設けることで、水漏れや泡漏れを考慮して、隙間S1~S4を狭く形成したとしても、運転時に騒音(異音)が発生するのを防止できる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の縦型洗濯機1は、洗濯兼脱水槽3を回転可能に収容する外槽2と、洗濯兼脱水槽3および外槽2を収容する筐体4と、筐体4の上面に設けられ、衣類投入口4aを開閉する外蓋5と、外槽2の上部を塞ぐ槽カバー6と、を備える。槽カバー6は、開閉可能な内蓋7を備え、内蓋7を閉じたときに(全閉したときに)、槽カバー6と内蓋7との間に隙間S1~S4が形成されている(図4ないし図6参照)。これによれば、内蓋7を設けることで、水はねを抑制できるので、機械力(攪拌翼3eの動作力)を上げて、洗浄力を向上できる。また、隙間S1~S4を設けることで、洗濯兼脱水槽3内に空気を取り込むことができるので、衣類に乾燥風を吹き付けることができ、部屋干し時間の短縮を図ることができる。
【0050】
また、本実施形態は、槽カバー6の内周縁部6cには、上方に向けて突出する突起部6dが周方向に沿って形成されている。これによれば、外槽2の外側への水漏れおよび泡漏れを抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態は、隙間S1~S4は、全周に形成されている。これによれば、空気を取り込み易くなるので、脱水時に衣類に風を吹き付け易くなり、隙間S1~S4が部分的に形成されている場合よりも、部屋干し時間の短縮を図ることができる。
【0052】
また、本実施形態は、隙間S1~S4は、ラビリンス構造である。これによれば、槽外(外槽2の外側)への水漏れおよび泡漏れをさらに抑制できる。
【0053】
また、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれるものとする。例えば、隙間S1~S4は、全周にわたって形成される構成に限定されるものではなく、隙間が部分的に形成されていてもよい。
【0054】
また、本実施形態では、槽カバー6が後側に位置する領域が槽上部を前側および左右両側よりも広く覆っている、つまり洗濯兼脱水槽3の内周壁面から径方向内側に大きく突出している。このため、水漏れや泡漏れが発生し難くなっている。そこで、後側の隙間S4を他の隙間S1~S3よりも広く形成することができるので、脱水運転時に空気を槽内に取り込み易くなる。
【符号の説明】
【0055】
1 縦型洗濯機
2 外槽
3 洗濯兼脱水槽(内槽)
4 筐体
4a 衣類投入口(洗濯物投入口)
5 外蓋
6 槽カバー
6d 突起部
7 内蓋
7s 緩衝部材
S1~S4 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7