(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】振動式送り装置
(51)【国際特許分類】
B65G 27/04 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
B65G27/04
(21)【出願番号】P 2019500036
(86)(22)【出願日】2017-03-13
(86)【国際出願番号】 IB2017051451
(87)【国際公開番号】W WO2017158496
(87)【国際公開日】2017-09-21
【審査請求日】2020-02-18
(32)【優先日】2016-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】518330545
【氏名又は名称】ケイ-トロン テクノロジーズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】K-TRON TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】590 Woodbury Glassboro Rd.,Sewell,NJ 08080 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】ヘルフェンシュタイン,ウルス
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-112822(JP,U)
【文献】特開2015-016965(JP,A)
【文献】特開2002-302232(JP,A)
【文献】米国特許第05285890(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給されるべき材料(12)が供給される送り要素のために動作中に振動運動を実行する支持構造体(8)と、
支持構造体(8)のための駆動構造体(5)と、
振動式送り装置(1,30,40,60,90,100)の振動を低減した方法で基部(2)に伝達する基部支持構造体(3)と
を備えている振動式送り装置において、
振動式送り装置(30,40,60,90,100)の動作中に、
送り要素の前端部(10a)の振動運動の垂直成分と、後端部(10b)の垂直成分とのずれを抑制する手段が設けら
れ、
支持構造体(8)の飛び出し角度の方向における実質的な並進運動を案内するために、前記基部支持構造体(3)が、前記ずれを抑制する手段に設けられている
ことを特徴とする振動式送り装置。
【請求項2】
ずれを抑制する手段が、作動中に、送り方向(14)の垂直面における送り要素の傾き運動を抑制するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の振動式送り装置。
【請求項3】
ずれを抑制する手段が、好ましくは送り要素(9)を備えた支持構造体(8)の重心(32)と、駆動装置(42)の重心(42)とが飛び出し角度の方向の直線上にある配置を有し、
前記直線の方向の飛び出し角度からの逸脱が、好ましくは20°以下であり、より好ましくは10°以下であり、さらに好ましくは5°以下であり、最も好ましくは、前記直線の方向が実質的に飛び出し角度に対応している
ことを特徴とする請求項1に記載の振動式送り装置。
【請求項4】
ずれを抑制する手段が、基部支持構造体(3)に設けられた平行ガイドを備え、該平行ガイドが、好ましくは、二つの剛性リンク(33a,33b)を備えた平行四辺形ガイドである
ことを特徴とする請求項1に記載の振動式送り装置。
【請求項5】
ずれを抑制する手段が、組み合わせスプリングユニット(61a,61b)を備え、
スプリングユニット(61a,61b)が、
振動運動構造体(6)及び基部支持構造体(3)に各々設けられたリンク(66a,66b,68a,68b)と、
駆動構造体(5)に設けられ、高さに亘って延び、実質的に飛び出し角度で垂直線に対して傾斜された支持部材(65a,65b)を備え、
リンク(66a,68a,66b,68b)が、支持部材(65a,65b)に沿って、その異なる側で延び、
振動運動構造体(6)のリンクが、その下側領域で支持部材(65a,65b)に固定され、かつ、上向きに延び、
基部支持構造体(3)のリンク(68a,68b)が、その上側領域で支持部材(65a,65b)に固定され、かつ、下向きに延び、
それにより、振動運動構造体(6)のリンクの上端が、支持構造体(8)に固定され、かつ、
基部支持構造体(3)のリンク(68a,68b)の下端が基部(2)に固定される
ことを特徴とする請求項1に記載の振動式送り装置。
【請求項6】
剛性リンク(33a,33b)が支持構造体(8)に係合する
ことを特徴とする請求項
4に記載の振動式送り装置。
【請求項7】
前記基部支持構造体(3)が、前記ずれを抑制する手段に設けられ、
前記基部支持構造体(3)が、送り方向(14)に相互に離間された2つのスプリング式弾性支持ユニット(93a,93b)を有し、
前記支持ユニットが、基部(2)上に支持され、かつ、支持点(96a,96b)において駆動構造体(5)に係合し、
各支持ユニット(93a,93b)が、同じバネ係数で水平及び垂直方向に作動でき、
送り要素の長手方向中間位置における飛び出し角度の方向の直線が、支持点(96a,96b)間の連結線と、実質的にその中間位置で交差する
ことを特徴とする請求項
3に記載の振動式送り装置。
【請求項8】
少なくとも一つの支持点(96a,96b)が、一方向に変位可能に構成されている
ことを特徴とする請求項
1~7の何れか一項に記載の振動式送り装置。
【請求項9】
駆動構造体が、好ましくは、駆動構造体(5)の重心(42)を予め決めた方法で変えられるように、予め決めた方法で、送り方向(14)又は垂直方向に調整可能に駆動構造体(5)に配置される質量要素(41)を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の振動式送り装置。
【請求項10】
振動支持構造体(8)の飛び出し角度が、調整可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の振動式送り装置。
【請求項11】
ずれを抑制する手段が、支持構造体(8)の振動運動に回転運動を重ねることによって、動作中に変形振動(108)によって生じる送り要素(105)の前端部(107b)の変位を少なくとも部分的に補償するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の振動式送り装置。
【請求項12】
ずれを抑制する手段が、動作中に、駆動構造体(5)に対する支持構造体(8)の並進及び回転相対運動を生じさせる振動運動構造体(111)による、駆動構造体における支持構造体の操作可能なガイドを備えている
ことを特徴とする請求項
11に記載の振動式送り装置。
【請求項13】
振動運動構造体(116)がリンク(114a,114b)を備え
前記リンクが、ヒンジ点(112a,112b,113a,113b)を介して、一端で支持構造体(8)にヒンジ結合され、他端で駆動構造体(5)にヒンジ結合され、
これらヒンジ点(112a,112b,113a,113b)の少なくとも一つが、送り方向(14)又は異なる方向に調整可能に支持構造体(8)又は支持構造体(5)に配置されている
ことを特徴とする請求項
12に記載の振動式送り装置。
【請求項14】
振動運動構造体(111)が、可撓性又は剛性リンクを備え、
これらリンクが、一端で支持構造体(8)にヒンジ結合され、他端で駆動構造体(5)にヒンジ結合され、
これらリンクの少なくとも一つが、その有効長で調整可能に形成されている
ことを特徴とする請求項
12に記載の振動式送り装置。
【請求項15】
ずれを抑制する手段が、動作中に、基部(2)に対する駆動構造体(5)の並進及び回転相対運動を生じさせる支持構造体による基部(2)における基部支持構造体(3)の操作可能なガイドを備えている
ことを特徴とする請求項
11に記載の振動式送り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の振動式送り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような振動式送り装置は、振動式送り装置によって供給され得るあらゆる種類の材料に対して、多くの産業分野で使用されている。これに関して、供給可能な材料は、送り要素上、通常は、送りトラフ上に排出される。送りトラフは、対応する戻り動作を有する周期的な前進/上昇動作、即ち、振動を実行し、それにより、材料の個々の粒子が飛び出し角度で前方に、同時に僅かに上方に飛ばされる。
送り要素は、粒子が再びその上に載る前に戻り動作を実行し、それにより粒子は、次の前進/上昇動作でさらに一歩進められ得る。
【0003】
従って、振動式送り装置は、その上に搭載される交換可能な送り要素用の振動支持装置を有する。前記送り要素は、例えば、材料又は他の基準に応じて設計され得る。振動支持装置は、駆動装置によって所望の振動に設定される。振動動作により、振動式送り装置の駆動装置も(反作用力で)振動する。そのため、振動式送り装置の支持構造は、地面に伝達する駆動装置の振動を低減するために、弾性支持部材、即ち、弾性支持脚によって形成されていなければならない。このようにしなければ、相当な雑音が発生して、近くにある装置やシステムの妨害になり得るからである。
【0004】
振動式送り装置、特に、送りトラフを有する振動式送り装置は設計が困難であり、経験的見地に従って大部分が製造され、試験を通して、周波数及び飛び出し角度が、送られる材料に合わせられる。幾つかのコンセプトは要求通りに動作するが、他のコンセプトは、特別な場合に明確な理由なく低い送り量を示す。
既知の振動式送り装置の欠点は、とめどなく多かれ少なかれ絶えずドリフトする送り要素、即ち、送りトラフの端部での質量流量出力の時間遅れ制御可能性であり、これは、送り要素の不規則な充填又はその他の影響による。これは、(振動送り装置がスケール上に配置されている場合)重量計量で特に問題があるが、容積計量にも問題がある。
【発明の概要】
【0005】
従って、本発明の目的は、制御時間が短い振動送り装置を提供することにある。
【0006】
この目的は、請求項1の特徴部分を有する振動送り装置によって達成される。
【0007】
送り要素の前端部の(少なくとも)振動運動の垂直成分と、送り要素の後端部の(少なくとも)振動運動の垂直成分とのずれを抑制することにより、たとえ送り量に対するパラメータが変更されなくても、送り要素の全長に亘る材料分布が実質的に同一に保たれる。
【0008】
好ましい実施例の特徴は、従属項で特定される。
【0009】
以下に、添付図面を参照して本発明が説明される。図面では、同一の要素は、同一の符号によって示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】従来技術による振動送り装置の概略図である。
【
図2】
図1による振動送り装置におけるバルク材料の流れに関する二つのグラフを示しており、各々送り量を変更する前と後を示している。
【
図3a】本発明による振動式送り装置の第一実施例を示す概略図である。
【
図3b】
図3aの第一実施例の好ましい変形例を示す概略図である。
【
図4a】シミュレーション計算のために振動式送り装置の送りトラフを異なる区分に細分化して概略的に示す図である。
【
図4b】本発明による振動式送り装置におけるバルク材料の流れに関する二つのグラフを示しており、送り量を変更する前後を示している。
【
図5a】
図3bに示した第一実施例の好ましい変形例による振動式送り装置を示している。
【
図5b】
図5aの振動式送り装置の機能ユニットの詳細な側面図を示している。
【
図5c】
図5bの機能ユニットの下方から見た斜視図を示している。
【
図6】本発明による振動式送り装置の第二実施例を概略的に示す図である。
【
図7a】二つの質量モデルを使用して、
図6に示した第二実施例の本発明による幾何学的条件を概略的に示す図である。
【
図7b】二つの質量モデルを使用して、好ましい変形例における
図6に示した第二実施例の本発明による幾何学的条件を概略的に示す図である。
【
図8a】動作中に変角振動を受ける振動式送り装置の送りトラフを示す図である。
【
図8b】
図3bの第一の好ましい実施例の振動式送り装置において、
図8aに示した送りトラフの変角振動の補償を適用するための変形を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、従来技術による振動式送り装置1を示しており、この装置1は、弾性脚部、即ち、弾性支持部材4a及び4bを備えた支持構造体3を介して基部2の上に設けられている。また、この装置1は、駆動構造体5を備え、該駆動構造体5は、直進振動運動構造体6を介して、振動支持構造体8を駆動する。この振動支持構造体8の上には、ここでは、後端部10a及び前端部10bを備えた送りトラフ9として形成されている送り要素が配置されている。振動運動構造体6は、概して、平行ガイドとして形成されており、ここでは、板バネ7a及び7bを備え、これら板バネ7a及び7bは、平行ガイドのリンクとして動作している間は、常に等しく変形し、かつ同期して動く。
【0012】
送りトラフ9には、充填チャネル11を介して、その後端部10aにバルク材料12(穀類、医薬品、プラスチック顆粒、あらゆる種類の粉末またはあらゆる種類の金属材料)が載せられ、バルク材料12は、送りトラフ9の前端部10bで振動送り装置1から排出される。
【0013】
駆動構造体5は、公知の方法で、板バネ7a及び7bを介してガイドされた支持構造体8の振動運動を生成し、その結果、支持構造体8は、駆動装置5に対して、矢印13a及び13bで示す方向に、直線的な周期的運動(振動運動)を行う。板バネ7a及び7bは、図面では、偏向位置で示されており、また、点線で示した位置が、(二つの偏向位置の間の)静止位置に対応している。
【0014】
両矢印13a及び13bから分かるように、振動運動は、送り方向14に対して僅かに上方に傾けられており、この傾きが、振動式送りトラフ9がバルク材料を前方に飛び出させる飛び出し角度に対応している。
【0015】
動作中、駆動構造体5は、支持構造体8の反力に晒され、その結果、それ自身が、支持構造体8の質量及びそれ自身の質量の逆比の振動運動に晒される。この駆動構造体5の振動は、弾性支持体4a及び4bを介して低減され、基部2に伝わる。その結果、妨害ノイズ及び周囲の機器を妨害する振動は、低減された方法でのみ発生するか、又はもはや妨げにならない。
【0016】
上記した構成は、当業者には一般的に知られている。
【0017】
要するに、
図1は、送るべき材料12が供給される送り要素、即ち、送りトラフ9のために動作中に振動する支持構造体8と、支持構造体8用の駆動構造体5と、振動送り装置1の振動を低減された方法で基部に伝える支持構造体3とを備えた振動式送り装置1を示している。
【0018】
最初に述べたように、このタイプの振動式送り装置は、動作パラメータを変更した時に、バルク材料12の質量流量がゆっくり変わり、かつ、新しい値に、数秒後に到達するので(
図2参照)、制御が難しいという問題がある。このことは、製薬産業の場合のように高度に一定の操作が実行される場合だけでなく、送り操作を傾斜に沿って正確に実行するべき場合にも、制御を困難にする。
【0019】
図2は、出願人のシミュレーションに従った、振動式送り装置(
図1)の送りトラフ9にあるバルク材料の流れに関する二つのグラフ20及び25を示しており、ここでは、送りトラフの前端部10b(
図1)におけるバルク材料12の流れが示されている。詳細には、
図2のグラフは、質量流量が約0.012kg/sから0.031kg/sまで増加に伴う送り量の増加の状態を示している。このグラフは、測定によって確認された出願人のシミュレーション計算に基づくものであり、本発明による振動式送り装置との直接的な比較に有利に使用され得るものである(
図4b参照)。
【0020】
グラフ20において、曲線21は、(上述したように送りトラフ9の前端部10bでの)バルク材料12の送り方向14(
図1)における時間(秒)経過に伴う速度vxを示している。期間22では、振動式送り装置は、少ない送り量で作動している。時間が1秒の時、送り量が増加され、バルク材料速度vxは、事実上遅れなく、前の速度(期間22)から、期間24における新しい安定した速度まで上がる。期間23において、新しい値への速度vxの変化が生じている。
【0021】
グラフ25は、送りトラフ9の前端部10bでのバルク材料15の送り方向14(
図1)における質量流量kg/sを示している。送り量が増加する前(期間22)の質量流量は事実上一定である。しかし、時間1sの時点で送り量が増加した後は、質量流量は、徐々にしか上昇せず、徐々に安定するため、質量流量の変化が起こる期間27は、約3.5秒まで持続する。期間28では、質量容量は、新しい値で安定する。
【0022】
出願人の知見では、この送りトラフ9の前端部10bにおける質量流量の挙動は、
図1の振動式送り装置の制御可能性が低いことが原因である。
【0023】
図3aは、振動式送り装置30の本発明による第一実施例を概略的に示しており、この振動式送り装置30は、事実上時間遅れなしに調整することが可能であり、即ち、送りトラフ9の前端部10bでの質量容量は、送り量を変化させた後に、事実上時間遅れなしに直ちに安定値に達する(
図4bのグラフ参照)。
【0024】
この図面では、駆動構造体5と、ここでは静止位置にある二つの板バネ7a及び7bを備えた直進振動運動構造体6と、ここでは送りトラフ9として形成された送り要素を備えた支持構造体8が示されている。例えば、板バネ7a及び7bの代わりに、相互に平行にのびるリンクを備えた剛性平行四辺形ガイドを設けることも可能であり、この場合、板バネ7a及び7bの復元力が失われるので、振動運動のための駆動は、それに応じて形成されなければならない。
【0025】
さらにまた、駆動構造体の重心31、支持構造体8及び(好ましくは送るべき材料12の含有量を含む)送りトラフ9の共通重心32、並びに、それを介して駆動構造体5が基部2に設けられる本発明に従って改良された支持構造体3が示されている。本発明によれば、支持構造体3は、二つの剛性リンク33a及び33bを備え、それらは、ヒンジ点34a及び34bを介して基部2にヒンジ結合され、かつ、ヒンジ点35a及び35bを介して駆動構造体5にヒンジ結合されており、それらは、動作中、常に平行に整列され、従って、ここでは、基部2に対して駆動構造体5を連結する平行四辺形ガイドとして形成される平行ガイドを形成する。
【0026】
その結果、支持構造体3に設けられた平行ガイド、好ましくは、二つの剛性リンク33a及び33bを備えた平行四辺形ガイドが設けられた手段が提供される。
【0027】
リンク33a及び33bは剛性を有するように形成され、従って、基部2に振動を伝達するのに適しているが、本発明による振動式送り装置30の幾何学形状によれば、基部が振動から事実上切り離される結果になる。
【0028】
動作中、ヒンジ点35a及び35bは、図面に両矢印で示した弧36a及び36b上で前後に移動する。リンク33a及び33bの幾何学的形状は、板バネ7a及び7bの(図面に示した)静止位置において、ヒンジ点35a及び35bにおける弧36a及び36bに対する接線が、実質的に、飛び出し角度に対応する勾配を有し、従って、矢印37及び38で示した振動運動の方向と平行になるように設計されている。矢印37及び38は、振動運動の方向を示すだけでなく、駆動装置5を介した支持構造体8に作用する力(矢印38)に加えて、駆動装置5に作用する反作用力(矢印37)も示している。
【0029】
従って、駆動装置5は、実質的に振動方向への移動は許容するが、他の方向への移動を許容しない平行ガイドを構成する本発明による支持構造体8によって積極的に案内されることになる。これにより、駆動装置5は、ここでは、同じ方向(振動方向)に、それに対してプッシュプルで、支持構造体8を駆動する時に生じる反作用力によって引き起こされる振動を自由に行うことができるようになる。支持構造体3の設計のおかげで、駆動構造体5が拘束されずに基部に対して、振動方向に動くことができるので、基部2は、この振動から切り離される。
【0030】
しかし、この積極的な案内は、動作中に生じるモーメントに起因して基部2に対して駆動構造体5が傾くことを防ぐ。これらのモーメントは、(矢印37及び38で示す)振動方向に垂直な重心31及び32の間隔に起因し、剛性リンク33a及び33bを介して基部2に伝達されるが、周囲環境を乱す騒音や振動を殆ど生じさせない。
【0031】
そうしなければ、駆動構造体5の傾動が、必然的に、それに平行に案内された支持構造体8の傾動をもたらすことになり、即ち、支持構造体8及び支持構造体8上に配置された送りトラフ9もまた、直進に加えて回転を行い、その前端部10の振動運動の垂直成分が、その後端部10aの振動運動の垂直成分からずれるので、振動運動の結果としての傾動を積極的な案内によって防止することが、ここでは本質的なことである。基部2は水平方向にのびているので、振動運動は、グラフ20及び24に従う水平成分vxと垂直成分とを有する。このようなずれは、送り運動を妨害し、従って、送りトラフ9の前端部10bでの質量流量を妨害することになる。
【0032】
本発明による振動式送り装置30の構成では、振動式送り装置30,40,60,90,100及び110(
図3b~
図8bも参照)の動作中に、送り要素(ここでは送りトラフ9)の前端部10bの振動運動の垂直成分が、後端部10aの垂直成分からずれることを概ね抑制する手段が設けられている。
【0033】
さらにまた、ずれを抑制する手段は、好ましくは、動作中に送り方向14における垂直面において、(図示実施例では、送りトラフ9として設計されている)送り要素の傾動を抑制するように設計される。
【0034】
この点において、当業者であれば、送り要求に関して特定の場合に、振動要素を、例えば、プレート又はチューブのように所望のように設計し得ることに留意するべきである。
【0035】
図示されていない実施例では、支持構造体3のリンクの上側ヒンジ点は、駆動構造体5ではなく、支持構造体8に配置される。この場合、送りトラフ9の振動運動の大きさが、より小さな質量のために、駆動構造体5の振動運動の大きさよりも大きいため、リンクの変位は、より大きくなる。しかし、振動は、
図3aに示した実施例の場合と同様に、効果的に基部2から切り離され、同じモーメントが基部2に伝達される。
【0036】
従って、ずれを抑制する手段は、支持構造体8の飛び出し角度の方向(矢印38)で実質的に直線運動で積極的に案内するための振動式送り装置40,60,90及び100(以下の図面も参照)の支持構造体3を有することになる。この場合、好ましくは、支持構造体8は、駆動構造体5に係合される。
【0037】
図3bは、
図3aに示した本発明の第一実施例の好ましい変形例としての振動式送り装置40を示している。駆動構造体5は、例えば、追加質量体41を配置することで、その質量分布によって、その重心42が、(好ましくは操作に従って充填された)送りトラフ9を備えた支持構造体8の共通重心32を通り、振動方向と平行にのびる直線、即ち、飛び出し角度と同じ勾配を有する直線上に位置するように改良されている。従って、振動方向に対して垂直な重心32及び42間の距離は実質的にゼロであり、即ち、それ以上の傾斜モーメントは生じない。従って、基部2は、振動式送り装置40の振動から分離されるだけでなく、そこに傾斜モーメントが伝達されない。
【0038】
勿論、振動式送り装置の良好な制御性を有する
図3aの実施例は、基部に傾斜モーメントを伝達するだけなので、駆動装置5の重心を、それが、(送りトラフ9を含み、かつ、好ましくは、それに充填されたバルク材料を含む)支持構造体8の重心に対して振動方向の傾斜角を有する直線上に位置するように正確に配置することは絶対に必須というわけではない。
【0039】
加えて、振動式送り装置40は、標準的な送りトラフ9用に設計されることが好ましいが、これは、様々な理由で他の通路によって置き換えられ得る。また、バルク材料12は、異なる重量を有する(
図1)。 全体として、当業者は、具体的な場合に、そこに重心32及び42が位置する直線の勾配を、可能な限り飛び出し角度に近づけるように調整することによって、必要に応じて、傾斜モーメントを有利に減少させることができる。
【0040】
飛び出し角度の直線の勾配のずれが、好ましくは20°以下、特に好ましくは繊細な環境では10°以下、より好ましくは、干渉がない状態が維持される環境では5°以下である場合、そして、最も好ましくは、駆動構造体5の振動及び全ての振動モーメントが基部2から分離されている時には、飛び出し角度に実質的に対応している場合には、傾斜モーメントは、既に実質的に減少されている。勿論、当業者であれば、短い送り要素よりも送り方向に長い送り要素14に対する飛び出し角度からのずれをより小さく維持することができる。
【0041】
好ましくは、当業者であれば、その上に重心32及び42が位置する直線の、送りトラフ9の質量を含む支持構造体8の重心に対するずれに対して、これらの値を使用することができる。
【0042】
従って、これにより、ずれを抑制する手段は、その上に載る送り要素を備えた支持構造体の重心と、駆動構造体の重心とが、飛び出し角度の方向の直線上にある配置を有し、ここで、直線の方向が、飛び出し角度から、好ましくは20°以下、特に好ましくは、10°以下、さらに好ましくは、5°以下ずれており、最も好ましくは、飛び出し角度に実質的に対応する結果になる。
【0043】
ここで、短い振動軌道を考慮すると、弧36a及び36bの湾曲は実用的な役割を果たすものではないので、(飛び出し角度の勾配を有する直線の代わりに)弧36a及び36bによって生じる理論的に残る垂直振動は、実際には無視できることが留意されるべきである。
【0044】
弧36a及び36bに対する接線が、振動方向と幾何学的に正確に一致していない場合には、基部からの振動の実質的な分離は、既に達成されていることに言及するべきである。この点に関して、特定の場合、当業者は、5°以下の飛び出し角度からの接線のずれのために努力することになるが、重心32及び42が位置する直線の方向に適用するずれを提供することもできる。
【0045】
図4aは、振動式送り装置の充填通路11及び送りトラフ9の長手方向断面図を示しており、振動運動によって送りトラフ9で送られるバルク材料15は、その前端部10bから出る。送りトラフ9は、概念的に、4つのセクションi、ii、iii及びivに分割されている。バルク材料15は、充填通路10から、各セクションi、ii、iii及びivを通って、それが送りトラフ9から排出されるまで流れる。
【0046】
図4bは、出願人のシミュレーションに従って、
図3aに示した送りトラフ9におけるバルク材料12の流れに関する二つのグラフ45及び55を示している。バルク材料12の運動状態は、四つのセクションi~ivに示されている。詳細には、
図4bのグラフは、約0.008 kg/s から 0.025 kg/sまでの質量流量の増加に伴い送り量が増加した場合の条件を示している。
【0047】
グラフ45は、4つのセクションi~iv(
図4a)の各々におけるバルク材料15の送り方向(
図1)における速度vxを示しており、即ち、セクションiは曲線46で、セクションiiは曲線47で、セクションiiiは曲線48で、そして、セクションivは曲線49で示されている。
【0048】
時間t=2sの時点で、送り量が増加され、ここで、全てのセクションi~ivにおけるバルク材料速度は、以前(期間50)の速度から新たな安定した速度(期間51)まで、同時に、実質的に遅れなく増加する。期間42の曲線46~49における跳躍不連続性を参照されたい。
【0049】
従来技術による送り装置1(
図1)の場合(
図1及び
図2のグラフ20)と同様に、送り方向14(
図3a)におけるバルク材料12の速度vxの変化は自然に生じる。
【0050】
グラフ55は、4つのセクションi~iv(
図3a)の各々における送り方向14(
図3a)のバルク材料12の質量流量kg/sを示しており、即ち、セクションiは曲線56で、セクションiiは曲線57で、セクションiiiは曲線58で、そして、セクションivは曲線59で示されている。
【0051】
時間t=2sにおいて流量が増加する以前(期間50)は、質量流量は、全てのセクションi~ivにおいて事実上同じ値を示している。送り量が増加した後は、質量流量は、全てのセクションi~ivにおいて遅れなしに同時に増加し、従来技術(
図2のグラフ25)とは対照的に、セクションiv、即ち、送りトラフ9の前端部10b(
図4a)においても、同時に送れなく増加している。従来技術(グラフ25)とは対照的に、セクションivにおいて質量流量の変化が生じる期間51は、約3.5秒から1/10秒未満にはいる。
【0052】
出願人の知見によれば、本明細書による全ての例示的な実施例における、供給量の変化中のセクションiv(
図4a)における質量流量の大幅に改善された挙動は、振動式送り装置の動作中に、送り要素の前端部10bの振動運動の垂直成分と、その後端部10aの垂直成分とのずれが抑えられ、即ち、従来技術と比較して、部分的に又は実質的に完全に低減され、良好な制御性が得られていることによるものである。
【0053】
これにより、送り量又は送り速度に依存して、動作中に、送り要素、即ち、送りトラフ9の長さ方向に沿って静止材料堆積が形成されることが防止され、送り速度が変化した時に、材料堆積が移動して別に形成されることを防止する。(本発明によれば実質的に回避される)この移動は、数秒の範囲ではゆっくりであり、
図2に示す従来技術の振動式送り装置の質量流量もゆっくり変化するという結果をもたらす。
【0054】
送りトラフ9(
図4a)からの質量流量出力の非常に改善された挙動は、測定によって確認される。異なる材料が異なる反応を示すことは事実である。この改良は、殆どの材料に関係するが、幾つかの材料には関係しない。当業者であれば、適切な試験によって、これら幾つかの材料を容易に特定することができる。
【0055】
図5aは、
図3bに概略的に示した本発明の好ましい第一実施例に従って本発明による振動式送り装置60の具体的な構成を示す図である。
【0056】
振動式送り装置60は、2つのスプリングユニット61a及び61bを備え、その各々において、駆動構造体5(支持部材65a及び65b)、並進振動運動構造体6(
図3bの板バネ7a及び7b)及び支持構造体3(
図3bのリンク33a及び33b)が1つの機能ユニットに組み込まれている。スプリングユニット61a及び61bは、
図5b及び
図5cに詳細に示されている。
【0057】
駆動構造体5は、4つの平行な補強部材を備えている。その中の送り方向14に見て上右側の平行補強部材63及び下右側の平行補強部材64が図示されている(残りの二つの平行補強部材は、右側の平行補強部材で隠れている。)。追加質量体41は、平行補強部材63及び64の高端部に水平方向及び/又は垂直方向に調整可能に配置され、もちろん、同様に、隠れている平行補強部材にも配置される。簡単化のために、図面で見えている平行補強部材63及び64と一緒には以下に明示的に言及しないが、これらは常に暗示的に含まれている。
【0058】
駆動構造体5は、さらに、2つの支持部材65a及び65bを備え、これらの支持部材は、この実施例では、ネジ63'a、64'a及び63''a、64''aを介して、左側及び右側の平行補強部材63、64間で、(構造をコンパクトにするために)好ましくは、垂直に対して傾斜した飛び出し角度で傾斜して固定される。
【0059】
各支持部材65a及び65bには、板バネ66a及び66bが配置され、これら板バネは、板バネホルダ67a及び67bを介して、支持構造体8に連結される。支持構造体8は、この実施例では、プレートとして形成され、従って、これらを並進移動可能に支持する。さらにまた、各支持部材65a及び65bには、リンク68a及び68bが配置され、各リンクは、下方に向けてのび、リンクホルダ69a及び69bを介して基部プレート70に連結されている。基部プレート70は、基部2の上に載置されており、その結果、駆動構造体5は、基部2に対して並進移動可能に、リンク68a及び68bを介して支持される。勿論、当業者であれば、リンクホルダ69a及び69bを基部に直接配置することもできる。
【0060】
この構成により、板バネ66a及び66bは、並進振動構造体6の一部になり、リンク68a及び68bは、支持構造体3(
図3a及び
図3b参照)の一部になる。
【0061】
駆動構造体5は、さらに、平行補強部材63及び64に設けられた二つの駆動支持部材を備えている。その中の右側取付けブラケット71が図示されており、左側取付けブラケットは、右側取付けブラケット71に隠れている。駆動構造体5は、さらに、振動装置72を備え、振動装置72は、前記取付けブラケットに支持され、伝達要素73を備えている。伝達要素73は、振動装置72によって、その長手方向軸線74に沿って振動する。長手方向軸線74は、好ましくは、飛び出し角度に対応するように傾斜されている。
【0062】
図5b及び
図5cは、機能ユニット61bの詳細を示している。
図5bは側面図であり、
図5cは、下方から見た斜視図である。ここで、機能ユニット61aが同じ構造を有すること、即ち、詳細に説明する必要がないことに留意するべきである。
【0063】
支持部材65bには、ネジ63'b及び64'b(
図5参照)用のネジ孔63''b及び64''bが設けられている。
【0064】
リンク68bは、上側クロスバー75bを備えたm字状の形態を有し、上側クロスバー75bを介して、二つのネジ76b及び76b'によって、支持部材65bの上端にねじ止めされている。
【0065】
クロスバー75bから、リンク68bの2つの外側脚部77b及び77b'が、支持部材65bの外面に沿って、リンクホルダ69bまで下方に延びている。リンクホルダ69bに、これら2つの外側脚部が、ネジ78b及び78b'を介して固定されている(
図5bにおいてネジ78bは隠れている)。脚部77b及び77b'は、上側弾性連結部材79b及び79b'及び下側弾性連結部材80b及び80b'を備えている(連結部材79b及び80bは、
図5bにおいて隠れている)。
【0066】
図5cから明らかなように、中央停止要素81bが、クロスバー75bから下方に向けて延びており、この停止要素は、外側脚部77b及び77b'の間に配置され、そこに磁石82bが配置されている。この磁石82bは、カウンター磁石82b'と協働する。カウンター磁石82b'は、足部材83bを介して、リンクホルダ69bに堅固に連結され、従って、基部プレート70(
図5a)に堅固に連結される。磁石82bは及びカウンター磁石82b'は、互いに反発する。
【0067】
板バネ66bは、上側ネジによって板バネホルダ67bに固定されており、下側ネジによって支持部材65bの下端に固定されている。上側ネジ85b'及び下側ネジ86b'は図面に示されている。
【0068】
板バネホルダ67b及びリンクホルダ69bは、面取りされた連結面87b及び88bを各々備え、それにより、駆動構造体5に設けられたスプリングユニット61bが、垂直に対して飛び出し角度で傾斜される。
【0069】
その結果、ずれを抑制する手段は、振動運動構造体6及び支持構造体3の各々に設けられたリンク66a,66b,68a及び68bと、駆動構造体5に設けられ、高さに亘って延び、垂直に対して飛び出し角度で実質的に傾斜された支持部材65a及び65bを備えた組み合わせスプリングユニット61a及び61bを有する。前記リンク66a,66b,68a及び68bは、支持部材64a及び65bの異なる側面に沿って延びている。振動運動構造体6のリンクは、支持部材65a及び65bの下側領域で固定され、上向きに延びている。支持構造体5のリンク68a及び68bは、支持部材65a及び65bに、その上側位置で固定され、下向きに延びている。これにより、振動運動構造体6のリンクの上端が、支持構造体8に固定され、支持構造体3のリンク68a及び68bの下端が基部2に固定される。
【0070】
図5a~
図5cによるずれを抑制する手段は、好ましくは、2つの組み合わせスプリングユニット61a及び61bを備え、その支持部材65a及び65bが、連結要素によって相互に連結され、好ましくは、一方で、一方のスプリングユニット61a及び61bの支持部材65a及び65bに作用し、他方で、他方のスプリングユニット61b及び61aの振動運動構造体6のリンクの上端に作用する振動装置72が設けられる。
【0071】
図5a~
図5cは、振動式送り装置60の静止位置を示しており、従って、スプリングユニット61a及び61bの静止位置を示している。
【0072】
静止位置は、スプリングユニット61a及び61bに配置された磁石(磁石82b及び磁石82b':
図5b及び
図5c参照)によって画定され、これらの磁石は、(送りトラフ9を備えた)支持構造体8及び(追加質量体41を備えた)駆動構造体の重量が原因で支持部材65a及び65bがさらに傾斜することを防止し、従って、駆動構造体5及び支持構造体8の両方の安定した静止位置を確立する。板バネ66a及び66bは、直線状に整列しており、即ち、負荷がかけられていないので曲げられていない。
【0073】
動作中、即ち、振動装置72の駆動中、伝達要素73は、板バネホルダ67bを、静止位置の周りで、振動装置72から離れる方向及び振動装置72に戻す方向に動かす。従って、上端及び下端に固定されたクランプを備え、長さが同じで傾きが同じ板バネ66a及び66bが、支持構造体8の並行ガイドを形成するので、支持構造体8は、駆動構造体5に対して並進する振動運動を行う。
【0074】
板バネホルダ67bは、ネジ86b'によって固定された板バネ6bの下端を中心とした円弧上に延びている。しかし、スプリングユニット61bの設計のために、その長さは長く、その結果、前記円弧は、支持構造体8の並進運動が直線であると仮定するのに十分に平坦である。
【0075】
従って、駆動構造体5に対する支持構造体8の変位は、送り方向及び垂直方向の全振動運動に亘って実質的に一定である。
【0076】
図3bの説明で上述したように、一方で、駆動構造体5に追加質量体41を適切に配置することで、駆動構造体5の重心と、(送り通路9を備えた)支持構造体8の重心とが、飛び出し角度に等しい勾配を有する直線上に載る。また、振動に設定された支持構造体8の反作用力が 駆動構造体5に作用する。
【0077】
リンク68a及び68bが基部プレート70に対して、弾性連結部材80b及び80b'(
図5c)の周りで旋回可能であり、同時に、上側弾性連結部材79b及び79b'が旋回中に変化しないまま残る支持部材65a及び65bの傾斜を可能にするので、前記反作用力により、駆動構造体5が、基部プレート70に対して飛び出し角度の方向で並進振動を行う。従って、リンク68a及び68bは、駆動構造体5の並行ガイドを形成する。ここでもまた、リンク68a及び68b'の外側脚部77b及び77b'が比較的長いので、基部プレート70に対する駆動構造体5の並進運動が飛び出し角度に傾斜した直線上で行われると仮定するのに十分に平坦な円弧上で支持部材65a及び65bが動く。
【0078】
図3aに関して説明したように、板バネ66a及び66bに変えて剛性リンクを使用することができる。
【0079】
その結果、ずれを抑制する手段は、組み合わせスプリングユニット61a及び61bを有し、各スプリングユニットが、振動運動構造体6に設けられたリンク68a及び68bと、支持構造体3と、支持部材65a及び65bを備え、前記支持部材65a及び65bが駆動構造体5に設けられ、かつ、その高さに亘って延び、垂直方向に対して飛び出し角度で実質的に傾斜されている。ここで、前記リンクは、支持部材に沿ってその異なる側に延びている。また、垂直運動構造体6のリンクは、その下側領域で支持部材65a及び65bに固定され、かつ、上側に向けて延び、支持構造体3のリンク68a及び68bは、その上側領域で支持部材65a及び65bに固定され、かつ、下側に向けて延び、それにより、垂直運動構造体6のリンクの上端が、支持構造体8に固定され、支持構造体3のリンク68a及び68bが基部2に固定されることになる。
【0080】
図示実施例では、ずれを抑制する手段は、二つの組み合わせ支持ユニット61a及び61bを備え、その支持部材65a及び65bが、連結要素によって一緒に連結され、一方で、一方のスプリングユニット61a及び61bの支持部材65a及び65bに作用し、他方で、他方のスプリングユニット61b及び61aの振動運動構造体6のリンクの上端に作用する振動装置72が設けられる。
【0081】
図6は、本発明による振動式送り装置90の第二実施例を概略的に示しており、この第二実施例は、支持構造体3を除いて、
図3bに示した実施例と同様に形成されている。送りトラフ9、支持構造体8並びに支持構造体8及び送りトラフ9の共通重心32が示されている。また、駆動構造体5、その重心42及び板バネ7a,7bが示されており、支持構造体8に板バネ7a及び7bが連結されている。
【0082】
重心32及び42は、(矢印91及び92によって示された)直線上に位置し、前記直線の勾配は、飛び出し角度に対応し、その結果、振動式送り装置90の動作中に傾斜モーメントが生じない。尚、図面を簡単化するために実施可能な追加質量体41(
図3b)は省略されている。
【0083】
支持構造体3は、概略的に示された弾性変形可能な支持部材93a及び93bを備え、この支持部材93a及び93bは、それらの弾性変形により、基部2を駆動構造体5の振動から切り離す。本発明によれば、支持部材93a及び93bは、送りトラフ9として形成された送り要素の前端部10bの振動運動の垂直要素と、後端部10aの垂直要素とのずれを抑制する。
【0084】
図7aは、
図6の振動式送り装置90の支持部材93a及び93bの幾何学的形状及び設計を概略的に示している。
【0085】
重心32及び42を備えた駆動構造体5及び支持構造体3が破線で示されている。支持構造体8の重心32は、好ましくは、さらに、簡単化のために図示されていない送り要素の質量を含み、前記送り要素は、特に好ましくは、動作のために充填されている。重心32及び42は、より好ましくは、5°以下の精度で飛び出し角度の方向の直線上に配置され、最も好ましくは、実質的に飛び出し角度の方向の直線上に配置される。両矢印94は、この直線を示し、かつ、動作中のプッシュプル動作において相互に近づいたり離れたりする重心32及び42の動きを示している。これにより、基部2に対して自由に移動可能に設けられていても、振動運動に起因する振動式送り装置90の傾動は排除される。
【0086】
そこでスプリングユニット93a及び93bが係合する支持点96a及び96bは、駆動構造体5に設けられる。
【0087】
スプリングユニット93a及び93bは、各々、水平に整列された弾性スプリング97a及び97bを備え、それらは、それらの作用線が一致し、かつ、重心42を通るように相互に対向している。さらにまた、何れの場合においても、垂直な作用線を有する1つの垂直弾性スプリング98a及び98bが設けられる。
【0088】
全てのスプリング97a、97b、98a及び98bは、基部2と、それらに関連する支持点96a及び96bとの間に配置され、同じバネ定数を有する。加えて、重心42は、支持点96a及び96bの中間に配置される。
【0089】
この構成により、駆動構造体5の振動動作中の重心42の各変位が生じた時に、スプリングユニット93a及び93bの復元力によって、重心42が静止位置に常に戻されることが保証される。結果として、駆動構造体5は、直線上の任意の変異から、その静止位置に戻され、従って、直線に従って飛び出し角度の方向に、並進的に往復振動する。支持構造体8(
図6)が、平行ガイドを介して駆動構造体8に連結されているので、その上に配置された送り要素もまた、飛び出し角度で並進的に振動し、その結果、駆動構造体5のスプリング式弾性支持が、あらゆる方向に変形可能であるにも拘わらず、振動式送り装置の動作中、送り要素の前端部の振動運動の垂直要素と、その後端部の垂直要素とのずれが抑制される。
【0090】
その結果、振動式送り装置の動作中に、送り要素の前端部の振動運動の垂直成分と、その後端部の垂直成分とのずれを抑制する手段が、振動式送り装置90に設けられる。
【0091】
振動送り装置40(
図3b)とは対照的に、飛び出し角度に対して垂直上にある重心32の距離によって生じる
図7a及び
図7bに示した第二実施例における傾斜モーメントは、本発明による振動式送り装置90及び100の改善された制御性に悪影響を与える。従って、特定の場合、当業者であれば、好ましくは、重心32及び42が位置する直線の飛び出し角度からのずれが10°未満になるように、かつ、前記直線が、可能な限り飛び出し角度に近づくように設計することになる。
【0092】
これらの手段は、好ましくは、送り要素を備えた支持構造体8の重心32と、駆動構造体5の重心42とが飛び出し角度の直線上に載る構造を有し、ここで、直線の勾配の飛び出し角度からのずれは、好ましくは10°以下であり、より好ましくは、5°以下であり、最も好ましくは前記直線の勾配は実質的に飛び出し角度に対応している。
【0093】
より好ましくは、これらの手段は、二つのスプリング式弾性支持ユニット93a及び93bを備えた改良された支持構造体3を備え、前記二つの支持ユニット93a及び93bは送り方向14に相互に離間され、かつ、基部2上で支持され、支持点96a及び96bで駆動構造体5に係合する。ここで、各支持ユニット93a及び93bは、同じバネ係数で水平方向及び垂直方向で作動し、かつ、重心32及び42が載る直線は、支持点93a及び93b間の連結線と実質的にその中間で交差する。
【0094】
図7bは、駆動構造体5を備えた振動式送り装置100を示しており、その重心42は、支持部材上にはないが、支持部材5と中間位置で交差する両矢印94によって画定される直線の上にある。スプリングユニット93a及び93b、
図7aの振動式送り装置90のスプリングユニットと同じ方法で形成されている。この実施例もまた、本発明によるものであり、送り要素の振動運動に関して、
図7aの振動式送り装置90と同じ特性を有する。
【0095】
振動式送り装置100の利点は、重心42が、支持構造体8(好ましくは、送り要素9を備えた支持構造体8)の重心を通る飛び出し角度の方向の直線上になければならないだけであるので、駆動構造体5の設計時に、「重心42が支持点96a及び96bの連結線間の中間にある」という制限を省略することができることにある。これにより、駆動構造体5の設計を簡単化することができる。
【0096】
有利には、支持構造体5における支持点96a及び96bの少なくとも一方が、(水平方向及び/又は垂直方向に)移動可能に形成され得る。支持構造体5の所定の重心42を有する特定の場合、当業者であれば、支持点96a及び96bを、
図7a又は
図7bの幾何学的条件を維持するように、即ち、その上に重心32及び42が載る飛び出し角度方向の直線が、支持点96a及び96b間の連結線に中間位置で交差するように、簡単に動かすことができる。
【0097】
選択的に、又は、累積的に、駆動構造体5の重心42の位置が所定の方法で可変になるように、駆動構造体は、好ましくは、駆動構造体5に、予め設定可能で調節可能な方法で、送り方向14に配置される質量要素を有し得る。従って、重心42は、(支持点96a及び96b間の連結線と中間位置で交差する)飛び出し角度の方向で支持構造体の重心32を通過する直線上にもたらされ得る。
【0098】
また、選択的に、又は累積的に、調整可能な支持点96a及び96b又は調整可能な質量要素に関して、支持構造体8の飛び出し角度は、例えば、支持構造体8に係合する板バネホルダ67a及び67b(
図5a)によって調整可能に構成され得る。これにより、重心42を通る飛び出し角度方向の直線が、再び、支持構造体の重心32を通り、かつ、支持点96a及び96b間の連結線と中間位置で交差するように、例えば、駆動構造体5の重心42の変化しない位置に基づいて飛び出し角度を調整することによって、送り要素又はバルク材料の他の重量の変化を補償することが可能になる。
【0099】
特に、調整可能な飛び出し角度に加えて、調整可能な質量要素は、
図3a~
図5cの実施例に有利である。
【0100】
図8aは、本明細書による振動式送り装置30,40,60,90及び100(
図3a~7b)用に細長いトラフ型送り装置105として形成された送り要素を示している。振動条件(振動周波数、振動振幅、長さ、断面の形成等)に関連する送りトラフ105の形成に応じて、即ち、最終的には、結果として送りトラフ105の周期的な撓みを生じさせる送り要素の共振周波数における励振に応じて、図示した送りトラフ105の領域106に変形振動が生じ得、その結果、支持構造体8の純粋な平行移動を伴う操作であっても、その前端部107bが、両矢印108に従って、後端部107aに対して上下に揺動する。
【0101】
従って、振動式送り装置30,40,60,90及び100(
図3a~
図7c)が本発明に従って設計されていたとしても、送りトラフ105の前端部107bの振動運動の垂直成分と、後端部107aの垂直成分との間のずれが残ることがある。結果として、本発明による振動式送り装置の迅速な制御性の利点は、この残留したずれのために部分的にしか実現できないことになる。
【0102】
図8bは、送り要素105のこのような変形振動に関する改良がされた振動式送り装置110を示している。この振動式送り装置110は、基本的には、
図3bの振動式送り装置40と同じ方法で構成されているが、改良された振動運動構造体111を備えている。(例えば、
図3bに示す板バネ7a及び7bの形態である)振動運動構造体111のリンク114a及び114bは、上側ヒンジ点112a及び112b及び下側ヒンジ点113a及び113bの位置で、支持構造体8及び駆動構造体5に各々係合する。
【0103】
これらのヒンジ点の少なくとも一つ、図面においてはヒンジ点112aは、この実施例では、支持構造体8に調整可能に配置され、かつ、この実施例では、送り方向14に僅かに変位して固定されている。従って、静止位置において、リンク114a及び114bは平行ではなく、互いに斜めに配置されている。これにより、平行ガイドとして形成された並進振動運動構造体6(
図1~
図7c)が、振動運動構造体111となり、飛び出し角度の方向の振動運動に加えて、支持構造体8を両矢印116に従って回転させる。
【0104】
特定の場合、当業者であれば、変形振動108が、回転116によって少なくとも部分的に補償されるように、ヒンジ点112a(又は、振動式送り装置110の運動状態に応じて、ヒンジ点112a、112b、113a及び113bの一つ又は複数)を、(シミュレーション又は試験によって)任意の方向に、適当に調整することができる。
【0105】
同様に、リンク33a及び33bのヒンジ点34a、34b、35a及び35b(又は、リンクの長さ)を、送りトラフ105の変形振動108を補償するように、調整することもできる。しかし、振動中に、送りトラフ105を含む支持構造体8のより小さな質量を回転させなければならないので、振動運動構造体111を使用することが好ましい。
【0106】
結果として、ずれを抑制する手段は、支持構造体8の振動運動に重ねられた回転運動によって、変形振動によって生じる送り要素105の前端部107bのずれを動作中に少なくとも部分的に補償するように設計される。
【0107】
好ましくは、ずれを抑制する手段は、駆動構造体5に対する支持構造体8の並進及び回転の相対移動に影響する、振動運動構造体111による駆動構造体5における支持構造体8の動作可能な案内手段を含む。 ここで、振動運動構造体111は、好ましくは板ばね構造体114a及び114bとして形成される。
【0108】
さらに、
図8bの実施例によれば、振動運動構造体116は、ヒンジ点112a、112b、113a及び113bを介して一端が支持構造体8にヒンジ止めされ、タタンが駆動構造体5にヒンジ止めされるリンク114a及び114bを備えている。ここで、これらのヒンジ点112a、112b、113a及び113bの少なくとも一つが、支持構造体8上に、支持構造体5上に、送り方向14又は他の方向に調整可能に配置される。
【0109】
図示されていない別の実施例では、振動運動構造体は、(板バネ114a及び114bのように)可撓性の又は剛性のリンクを備え、これらのリンクは、一端が支持構造体にヒンジ止めされ、他端が駆動構造体5にヒンジ止めされている。ここで、これらのリンクの少なくとも一つは、その有効長において調整可能に形成されている。これは、
図8bによる調整可能なヒンジ点112a、112b、113a及び113bの場合と同様に、支持構造体8の並進振動運動に、送りトラフ105の変形振動116を少なくとも部分的に補償する回転を重ねる同じ可能性をもたらす。
【0110】
最後に、上述したように、本発明によれば、ずれを抑制する手段は、動作中に、基部2に対する駆動構造体5の並進及び回転相対運動に影響を及ぼす支持構造体を用いて基部2において支持構造体5を案内する手段を有すし、その結果、送り要素105の変形振動108によって生じる前端部107bの変位は、支持構造体8の振動運動に回転運動を重ねることによって少なくとも部分的に補償される。