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特許7190433ブロック共重合体及びブロック共重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】ブロック共重合体及びブロック共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 293/00 20060101AFI20221208BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20221208BHJP
   F16F 1/36 20060101ALI20221208BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
C08F293/00
C08L53/00
F16F1/36 C
F16F15/08 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019534536
(86)(22)【出願日】2018-07-31
(86)【国際出願番号】 JP2018028692
(87)【国際公開番号】W WO2019026914
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2017148286
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100189452
【弁理士】
【氏名又は名称】吉住 和之
(72)【発明者】
【氏名】石垣 雄平
(72)【発明者】
【氏名】大貫 俊
(72)【発明者】
【氏名】萩原 尚吾
(72)【発明者】
【氏名】山岸 宇一郎
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/007681(WO,A1)
【文献】特開2006-143899(JP,A)
【文献】ISHIGAKI Yuhei et al.,Synthesis of poly(chloroprene)-based block copolymers by RAFT-mediated emulsion polymerization,Polymer,2018年02月21日,Vol.140,p.198-207
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 293/00
C08L 53/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸エステル重合体のブロックと、クロロプレン重合体のブロックと、をそれぞれ1つ以上含む、数平均分子量が110,000以上のブロック共重合体であり、かつ前記クロロプレン重合体のブロックの数平均分子量が合計80,000以上であり、さらに下記化学式(1)又は(2)で表される構造の官能基を有し、
アクリル酸エステルが、炭素数5以上のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルであり、該アクリル酸アルキルエステルが、n-ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-メチルペンチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-デシルアクリレート、n-ドデシルアクリレート、及びn-オクタデシルアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種である、ブロック共重合体。
【化1】

【化2】

(化学式(1)中、R、置換もしくは無置換のヘテロシクリル基を示す。)
【請求項2】
化学式(1)で示される構造の官能基を末端に有する、請求項1記載のブロック共重合体。
【化3】

(化学式(1)中、R、置換もしくは無置換のヘテロシクリル基を示す。)
【請求項3】
RAFT剤の存在下で、アクリル酸エステル単独、又はアクリル酸エステルと他の単量体とをラジカル乳化重合し、アクリル酸エステル重合体のブロックを合成した後、クロロプレン単独、又はクロロプレンと他の単量体とを混合してラジカル乳化重合し、クロロプレン重合体のブロックを合成する、数平均分子量が110,000以上であり、かつ前記クロロプレン重合体のブロックの数平均分子量が合計80,000以上であり、
アクリル酸エステルが、炭素数5以上のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルであり、該アクリル酸アルキルエステルが、n-ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-メチルペンチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-デシルアクリレート、n-ドデシルアクリレート、及びn-オクタデシルアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記RAFT剤が下記化学式(3)又は(4)で表されるRAFT剤である、ブロック共重合体の製造方法。
【化4】

【化5】

(化学式(3)中、R は、置換もしくは無置換のヘテロシクリル基を示す。化学式(3)及び(4)中、R 3~5 はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の飽和、不飽和もしくは芳香族の炭素環、置換もしくは無置換の飽和、不飽和もしくは芳香族の複素環、有機金属種、又は任意の重合体鎖を示す。)
【請求項4】
RAFT剤の存在下で、クロロプレン単独、又はクロロプレンと他の単量体とを分添してラジカル乳化重合し、クロロプレン重合体のブロックを合成した後、アクリル酸エステル単独、又はアクリル酸エステルと他の単量体とを混合してラジカル乳化重合し、アクリル酸エステル重合体のブロックを合成する、数平均分子量が110,000以上であり、かつ前記クロロプレン重合体のブロックの数平均分子量が合計80,000以上であり、
アクリル酸エステルが、炭素数5以上のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルであり、該アクリル酸アルキルエステルが、n-ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-メチルペンチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-デシルアクリレート、n-ドデシルアクリレート、及びn-オクタデシルアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記RAFT剤が下記化学式(3)又は(4)で表されるRAFT剤である、ブロック共重合体の製造方法。
【化6】

【化7】

(化学式(3)中、R は、置換もしくは無置換のヘテロシクリル基を示す。化学式(3)及び(4)中、R 3~5 はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の飽和、不飽和もしくは芳香族の炭素環、置換もしくは無置換の飽和、不飽和もしくは芳香族の複素環、有機金属種、又は任意の重合体鎖を示す。)
【請求項5】
請求項1又は2に記載のブロック共重合体を含む、組成物。
【請求項6】
ゴム組成物である、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項6に記載のゴム組成物の加硫物。
【請求項8】
請求項6に記載のゴム組成物の加硫成形物。
【請求項9】
請求項に記載の加硫成形物を用いた、ゴムロール、免震・防振用部品、ワイパーブレード、または自動車用部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、ブロック共重合体及びブロック共重合体の製造方法に関する。より詳細には、アクリル酸エステル重合体のブロックと、クロロプレン重合体のブロックと、をそれぞれ1つ以上含む、ブロック共重合体及びブロック共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル酸エステル重合体のブロック及びクロロプレン重合体のブロックを含むブロック共重合体が研究、開発されている。例えば、特許文献1の実施例4には、数平均分子量が83,100のアクリル酸ブチル共重合体-CRジブロック体が開示されている。また、特許文献2には、光重合により両末端ジチオカルバメート化クロロプレンを得た後、アクリル酸メチル/クロロプレン重合体を得る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2007/007681号
【文献】特開平2-300217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のブロック共重合体は、数平均分子量が小さく、工業的な応用に耐えうる十分な分子量を有してない。工業的な応用に耐えうるには、数平均分子量が110,000以上であることが好ましい。また、特許文献2に記載のスチレン/クロロプレン重合体は、活性な官能基を有しないため物理的特性が劣る。さらに特許文献1、2ともに、有機溶剤としてベンゼンを使用する必要があるという問題があった。
【0005】
ところで、クロロプレン系重合体は、ゴム組成物又はその加硫物として利用可能である事が知られている。例えば、ゴムロール、免震・防振用部品、ワイパーブレード、自動車用部品などのゴム組成物又はその加硫物には、柔軟性と機械強度を同時に得ることが求められている。しかしながら、特許文献2に記載のアクリル酸メチル/クロロプレン重合体は活性な官能基を有していないため、柔軟性と機械強度を同時に得るゴム組成物又はその加硫物を得ることは困難であり、これら組成物の原料には適さない。
【0006】
そこで、本発明は、工業的製造に適しており、ゴム組成物又はその加硫物に好適な、数平均分子量が110,000以上のアクリル酸エステル重合体とクロロプレン重合体のブロック共重合体を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、
アクリル酸エステル重合体のブロックと、クロロプレン重合体のブロックと、をそれぞれ1つ以上含む、数平均分子量が110,000以上のブロック共重合体であり、かつ前記クロロプレン重合体のブロックの数平均分子量が合計80,000以上であり、さらに下記化学式(1)又は(2)で表される構造の官能基を有するブロック共重合体を提供する。
【化1】

【化2】

(化学式(1)中、Rは、水素、塩素、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロシクリル基を示す。)
上記ブロック共重合体は、下記化学式(1)で示される構造の官能基を末端に有する、ブロック共重合体であってもよい。
【化3】
(化学式(1)中、Rは、水素、塩素、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロシクリル基を示す。)
前記ブロック共重合体において、アクリル酸エステルが、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-メチルペンチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-デシルアクリレート、n-ドデシルアクリレート、n-オクタデシルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-(n-プロポキシ)エチルアクリレート、2-(n-ブトキシ)エチルアクリレート、3-メトキシプロピルアクリレート、3-エトキシプロピルアクリレート、2-(n-プロポキシ)プロピルアクリレート、2-(n-ブトキシ)プロピルアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。
前記ブロック共重合体において、アクリル酸エステルが、炭素数5以上のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルであってもよい。
本発明は、
RAFT剤の存在下で、アクリル酸エステル単独、又はアクリル酸エステルと他の単量体とをラジカル乳化重合し、アクリル酸エステル重合体のブロックを合成した後、クロロプレン単独、又はクロロプレンと他の単量体とを混合してラジカル乳化重合し、クロロプレン重合体のブロックを合成する、数平均分子量が110,000以上であり、かつ前記クロロプレン重合体のブロックの数平均分子量が合計80,000以上であるブロック共重合体の製造方法を提供する。
本発明は、
RAFT剤の存在下で、クロロプレン単独、又はクロロプレンと他の単量体とを分添してラジカル乳化重合し、クロロプレン重合体のブロックを合成した後、アクリル酸エステル単独、又はアクリル酸エステルと他の単量体とを混合してラジカル乳化重合し、アクリル酸エステル重合体のブロックを合成する、数平均分子量が110,000以上であり、かつ前記クロロプレン重合体のブロックの数平均分子量が合計80,000以上であるブロック共重合体の製造方法を提供する。
前記RAFT剤が下記化学式(3)又は(4)で表されるRAFT剤であってもよい。
【化4】
【化5】
(化学式(3)中、Rは、水素、塩素、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロシクリル基を示す。化学式(3)及び(4)中、R3~5はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の飽和、不飽和もしくは芳香族の炭素環、置換もしくは無置換の飽和、不飽和もしくは芳香族の複素環、有機金属種、又は任意の重合体鎖を示す。)
本発明は、前記ブロック共重合体を含む、組成物を提供する。
前記組成物は、ゴム組成物であってもよい。
本発明は、前記ゴム組成物を用いた加硫物を提供する。
本発明は、前記ゴム組成物を用いた加硫成形物を提供する。
本発明は、前記加硫成形物を用いた、ゴムロール、免震・防振用部品、ワイパーブレード又は自動車用部品を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、工業的製造に適しており、ゴム組成物に好適な、数平均分子量が110,000以上であり、クロロプレン重合体のブロックの数平均分子量が合計80,000以上であるアクリル酸エステル重合体とクロロプレン重合体のブロック共重合体が提供されうる。特には、本発明により、柔軟性と機械強度に優れたゴム組成物又はその加硫物が提供されうる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
<ブロック共重合体>
本実施形態のブロック共重合体は、アクリル酸エステル重合体のブロックと、クロロプレン重合体のブロックと、をそれぞれ1つ以上含み、数平均分子量が110,000以上であり、かつ前記クロロプレン重合体のブロックの数平均分子量が合計80,000以上であり、さらに下記化学式(1)又は(2)で表される構造の官能基を有するブロック共重合体である。
【0010】
【化6】
【0011】
【化7】
化学式(1)中、Rは、水素、塩素、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロシクリル基を示す。Rの好ましい例としては、ピロール基、ピラゾール基、ピリジル基、p-メトキシフェニル基、p-N,N-ジメチルアミノフェニル基があげられる。
【0012】
化学式(1)又は(2)で表される構造の官能基は、化学式(3)、又は(4)で表されるRAFT剤の存在下、ラジカル重合を行うことで重合体に導入される。本現象は一般的なRAFT重合に関する文献(Aust. J. Chem. 2009, 62, 1402-1472)により明らかである。また、重合体中、本官能基の存在は、任意の方法で確認できるが、一般的には13C-NMR法が用いられる(J.Polym.Sci.,Part A:Polym.Chem.,2009,47,3118-3130等)。つまり、十分な積算回数で13C-NMR法によって官能基を観測することができ、官能基の存在を確認可能である。炭素13をエンリッチした化学式(3)又は(4)で表される化合物を用いてリビングラジカル乳化重合反応を行って得られた重合体について、同様の測定を行うことで、当業者は上記化学式で表される官能基の存在を確認できる。
【0013】
活性官能基である上記官能基は、本実施形態のブロック共重合体同士を架橋する際に架橋点となり、当該ブロック共重合体を配合した組成物の物理的特性に変化を及ぼす。このため、当該ブロック共重合体は、加硫(架橋)ゴム組成物の機械強度を向上させる効果を奏すると考えられる。
【0014】
アクリル酸エステル重合体のブロックのアクリル酸エステル重合体は、1種のアクリル酸エステルからなる単独重合体、2種以上のアクリル酸エステルからなる共重合体、又はアクリル酸エステルと他の単量体からなる共重合体でありうる。アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-メチルペンチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-デシルアクリレート、n-ドデシルアクリレート、n-オクタデシルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-(n-プロポキシ)エチルアクリレート、2-(n-ブトキシ)エチルアクリレート、3-メトキシプロピルアクリレート、3-エトキシプロピルアクリレート、2-(n-プロポキシ)プロピルアクリレート及び2-(n-ブトキシ)プロピルアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0015】
本実施形態ではアクリル酸エステルの中でもアクリル酸アルキルエステルがさらに好ましく、本ブロック共重合体から得られる架橋ゴムが、より柔軟性を得るためには炭素数5以上のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルがよりさらに好ましい。炭素数5以上のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルの例としては、アクリル酸2-エチルヘキシル、n-ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-メチルペンチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-デシルアクリレート、n-ドデシルアクリレート、n-オクタデシルアクリレートが挙げられる。これらの中でも、特にアクリル酸2-エチルヘキシルがより好ましい。
アクリル酸エステルと共重合体を形成する他の単量体としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、その他の共役ジエン類、スチレンなどの芳香族ビニル化合物、メタクリル酸及びそのエステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど挙げられる。
【0016】
クロロプレン重合体のブロックは、クロロプレン(2-クロロ-1,3-ブタジエン)の単独重合体、又は、クロロプレンと、クロロプレンと共重合体を形性可能な他の単量体との共重合体でありうる。クロロプレンと共重合体を形成する他の単量体としては、例えば、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン、スチレン、メタクリル酸及びそのエステル類などが挙げられる。クロロプレン重合体は、好ましくはクロロプレンの単独重合体(ポリクロロプレン)である。
【0017】
ブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、架橋ゴムとしての工業的な応用に十分耐えうるよう、110,000以上であり、好ましくは120,000以上、好ましくは300,000以下である。300,000以下とすることで、組成物への加工が容易なブロック共重合体が得られる。また、本実施形態のブロック共重合体は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)が、好ましくは1.3以上であり、より好ましくは1.6以上である。当該分子量分布は、一般的には6.0以下であり、好ましくは3.0以下である。ブロック共重合体の分子量分布がこのような範囲であると、当該ブロック共重合体を含有するゴム組成物又はその加硫物の物理的特性がより良好となる。
【0018】
ブロック共重合体に含まれるクロロプレン重合体のブロックの数平均分子量は、合計80,000以上であり、好ましくは100,000以上である。ブロック共重合体一分子中に含まれるクロロプレン重合体のブロックが複数である場合、ここでいうクロロプレン重合体のブロックの数平均分子量とは、各クロロプレンブロックの数平均分子量の合計を示す。数平均分子量が80,000以上であることで、架橋ゴムとした場合、破断強度が15MPa以上、かつ破断伸びが300%以上のより好ましい力学物性を得ることが出来る。クロロプレン重合体のブロックの数平均分子量が合計80,000未満のブロック共重合体を含有するゴム組成物又はその加硫物は、機械強度が劣るおそれがある。
【0019】
本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。
【0020】
本発明のアクリル酸エステル重合体のブロックと、クロロプレン重合体のブロックと、をそれぞれ1つ以上含み、化学式(1)又は(2)で表される構造の官能基を有するブロック共重合体は、下記構造式(a)、(b)、(e)又は(f)により表される構造を有するジブロック共重合体を包含する。また、上記ブロック共重合体は、下記構造式(c)又は(d)により表される構造を有するトリブロック共重合体を包含する。
A-B-X ・・・(a)
B-A-X ・・・(b)
A-B-A-X ・・・(c)
B-A-B-X ・・・(d)
A-B-X-B-A ・・・(e)
B-A-X-A-B ・・・(f)
上記構造式(a)~(f)中、Aはアクリル酸エステル重合体のブロック、Bはクロロプレン重合体のブロック、Xは上記化学式(1)又は(2)で表される官能基を示す。
【0021】
本実施形態のブロック共重合体は、好ましくは前記化学式(1)で示される構造の官能基を末端に有するブロック共重合体であり、例えば前記構造式(a)、(b)、(c)、及び(d)で表される構造を有する。本ブロック共重合体は、化学式(3)のRAFT剤を用いることで合成できる。官能基を末端に有することで、本ブロック共重合体を含む組成物の加硫(架橋)物性を向上することが出来る。
【0022】
本明細書において、ジブロック共重合体の第二ブロック部分のみの数平均分子量は、以下の式により算出する。
(第二ブロックの数平均分子量)=(第一ブロック+第二ブロックの数平均分子量)―(第一ブロックの数平均分子量)。
同様に、トリブロック共重合体の第三ブロック部分のみの数平均分子量は以下の式により算出する。
(第三ブロックの数平均分子量)=(第一ブロック+第二ブロック+第三ブロックの数平均分子量)―(第一ブロック+第二ブロックの数平均分子量)
ここで、第一ブロックの数平均分子量や第一ブロック+第二ブロックの数平均分子量、第一ブロック+第二ブロック+第三ブロックの数平均分子量は、それぞれ第一ブロック、第二ブロック、第三ブロックの重合が終了した段階で少量サンプリングしたポリマーのGPC分析により求めることが出来る。
【0023】
<2.ブロック共重合体の製造方法>
次に、本発明の一実施形態に係るブロック共重合体の製造方法について説明する。上述したブロック共重合体は、当該製造方法により得ることができる。
【0024】
より詳しくは、上記ブロック共重合体は、RAFT剤の存在下で、ラジカル重合を行うことで得られる。
【0025】
RAFT剤としては、公知のRAFT剤が使用できる。このようなRAFT剤として、特表2000-515181号公報や特表2002-508409号公報に記載のRAFT剤を用いることが可能である。本実施形態のブロック共重合体の製造方法において、上記RAFT剤は、好ましくは下記化学式(3)又は(4)で表されるRAFT剤である。
【0026】
【化8】
【0027】
【化9】
【0028】
化学式(3)中、Rは、水素、塩素、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロシクリル基を示す。Rの好ましい例としては、ピロール基、ピラゾール基、ピリジル基、p-メトキシフェニル基、p-N,N-ジメチルアミノフェニル基が挙げられる。化学式(3)及び(4)中、R3~5はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の飽和、不飽和もしくは芳香族の炭素環、置換もしくは無置換の飽和、不飽和もしくは芳香族の複素環、有機金属種、又は任意の重合体鎖を示す。化学式(3)及び(4)中、R3~5は、好ましくは、それぞれ独立に、ベンジル基、ブチル基、ドデシル基、2-シアノ-2-プロピル基、又はシアノメチル基である。
【0029】
上記化学式(3)で表される化合物は、特に限定されるものではなく一般的な化合物を使用することができ、例えばジチオカルバメート類、ジチオエステル類が挙げられる。具体的にはベンジル1-ピロールカルボジチオエート(慣用名:ベンジル1-ピロールジチオカルバメート)、ベンジルフェニルカルボジチオエート、1-ベンジル-N,Nジメチル-4-アミノジチオベンゾエート、1-ベンジル-4-メトキシジチオベンゾエート、1-フェニルエチルイミダゾールカルボジチオエート(慣用名:1-フェニルエチルイミダゾールジチオカルバメート)、ベンジル-1-(2-ピロリジノン)カルボジチオエート)(慣用名:ベンジル-1-(2-ピロリジノン)ジチオカルバメート)、ベンジルフタルイミジルカルボジチオエート、(慣用名:ベンジルフタルイミジルジチオカルバメート)、2-シアノプロプ-2-イル-1-ピロールカルボジチオエート、(慣用名:2-シアノプロプ-2-イル-1-ピロールジチオカルバメート)、2-シアノブト-2-イル-1-ピロールカルボジチオエート、(慣用名:2-シアノブト-2-イル-1-ピロールジチオカルバメート)、ベンジル-1-イミダゾールカルボジチオエート、(慣用名ベンジル-1-イミダゾールジチオカルバメート)、2-シアノプロプ-2-イル-N,N-ジメチルジチオカルバメート、ベンジル-N,N-ジエチルジチオカルバメート、シアノメチル-1-(2-ピロリドン)ジチオカルバメート、2-(エトキシカルボニルベンジル)プロプ-2-イル-N,N-ジエチルジチオカルバメート、1-フェニルエチルジチオベンゾエート、2-フェニルプロプ-2-イルジチオベンゾエート、1-酢酸-1-イル-エチルジチオベンゾエート、1-(4-メトキシフェニル)エチルジチオベンゾエート、ベンジルジチオアセテート、エトキシカルボニルメチルジチオアセタート、2-(エトキシカルボニル)プロプ-2-イルジチオベンゾエート、2-シアノプロプ-2-イルジチオベンゾエート、tert-ブチルジチオベンゾエート、2,4,4-トリメチルペンタ-2-イルジチオベンゾエート、2-(4-クロロフェニル)-プロプ-2-イルジチオベンゾエート、3-ビニルベンジルジチオベンゾエート、4-ビニルベンジルジチオベンゾエート、ベンジルジエトキシホスフィニルジチオフォルマート、tert-ブチルトリチオペルベンゾエート、2-フェニルプロプ-2-イル-4-クロロジチオベンゾエート、ナフタレン-1-カルボン酸-1-メチル-1-フェニル-エチルエステル、4-シアノ-4-メチル-4-チオベンジルスルファニル酪酸、ジベンジルテトラチオテレフタラート、カルボキシメチルジチオベンゾエート、ジチオベンゾエート末端基を持つポリ(酸化エチレン)、4-シアノ-4-メチル-4-チオベンジルスルファニル酪酸末端基を持つポリ(酸化エチレン)、2-[(2-フェニルエタンチオイル)スルファニル]プロパン酸、2-[(2-フェニルエタンチオイル)スルファニル]コハク酸、3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-カルボジチオエートカリウム、シアノメチル-3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-カルボジチオエート、シアノメチルメチル-(フェニル)ジチオカルバメート、ベンジル-4-クロロジチオベンゾエート、フェニルメチル-4-クロロジチオベンゾエート、4-ニトロベンジル-4-クロロジチオベンゾエート、フェニルプロプ-2-イル-4-クロロジチオベンゾエート、1-シアノ-1-メチルエチル-4-クロロジチオベンゾエート、3-クロロ-2-ブテニル-4-クロロジチオベンゾエート、2-クロロ-2-ブテニルジチオベンゾエート、ベンジルジチオアセテート、3-クロロ-2-ブテニル-1H-ピロール-1-ジチオカルボン酸、2-シアノブタン-2-イル4-クロロ-3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-カルボジチオエート、シアノメチルメチル(フェニル)カルバモジチオエートが挙げられる。
【0030】
これらの中でも、乳化重合におけるクロロプレン制御重合性に優れることから、ベンジル1-ピロールジチオカルバメート、1-ベンジル-N,Nジメチル-4-アミノジチオベンゾエート及び1-ベンジル-4-メトキシジチオベンゾエートがより好ましい。
【0031】
上記化学式(4)で表される化合物は、特に限定されるものではなく一般的な化合物を使用することができ、例えば、2-シアノ-2-プロピルドデシルトリチオカルボナート、ジベンジルトリチオカルボナート、ブチルベンジルトリチオカルボナート、2-[[(ブチルチオ)チオキソメチル]チオ]プロピオン酸、2-[[(ドデシルチオ)チオキソメチル]チオ]プロピオン酸、2-[[(ブチルチオ)チオキソメチル]チオ]コハク酸、2-[[(ドデシルチオ)チオキソメチル]チオ]コハク酸、2-[[(ドデシルチオ)チオキソメチル]チオ]-2-メチルプロピオン酸、2,2′-[カルボノチオイルビス(チオ)]ビス[2-メチルプロピオン酸]、2-アミノ-1-メチル-2-オキソエチルブチルトリチオカルボナート、ベンジル2-[(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-1-メチル-2-オキソエチルトリチオカルボナート、3-[[[(tert-ブチル)チオ]チオキソメチル]チオ]プロピオン酸、シアノメチルドデシルトリチオカルボナート、ジエチルアミノベンジルトリチオカルボナート、ジブチルアミノベンジルトリチオカルボナートなどのトリチオカルボナート類が挙げられる。この中でも、重合制御性に優れることから、ブチルベンジルトリチオカルボナート及びジベンジルトリチオカルボナートが好ましく、ジベンジルトリチオカルボナートがより好ましい。
【0032】
本実施形態の製造方法は、始めにアクリル酸エステル重合体のブロックを合成し、後にクロロプレン重合体のブロックを合成する方法(製造方法I)と、始めにクロロプレン重合体のブロックを合成し、後にアクリル酸エステルの重合体のブロックを合成する方法(製造方法II)と、に大別される。以下、それぞれについて詳細に説明する。
【0033】
<2-1.製造方法I>
製造方法Iでは、前記RAFT剤の存在下で、アクリル酸エステル単独、又はアクリル酸エステルと他の単量体とをラジカル乳化重合し、アクリル酸エステル重合体のブロックを合成した(第一ブロックの重合)後、クロロプレン単独、又はクロロプレンと他の単量体とを混合してラジカル乳化重合し、クロロプレン重合体のブロックを合成する(第二ブロックの重合)。
【0034】
上記化学式(3)又は(4)で表される化合物は、リビングラジカル乳化重合において連鎖移動剤として機能する。当該化合物の残基が、製造されるブロック共重合体中に官能基として残存する。このため、本製造方法により得られるブロック共重合体は、上記化学式(1)又は(2)で表される構造の官能基を有する。
【0035】
上記化学式(3)又は(4)で表される化合物の量は、本実施形態で目的とするブロック共重合体を得るためには、重合で消費される全単量体100モルに対して2モル以下が好ましい。
【0036】
上記製造方法では、アクリル酸エステル重合体のブロックを合成するにあたり、上記アクリル酸エステルを用いる。
【0037】
本製造方法では、アクリル酸エステル及び必要なその他の単量体と、上記化学式(3)又は(4)で表される化合物とを、乳化/分散剤を用いて水に乳化させた後にラジカル重合開始剤を添加して、乳化/分散剤のミセル内で重合反応を進行させることが好ましい。アクリル酸エステル及び必要なその他の単量体は初期一括仕込みでもよいし、一部を初期に仕込み、残りを分添してもよい。
【0038】
また、アクリル酸エステル及び必要なその他の単量体のブロックの重合率は特に限定するものではないが、減圧蒸留により残留単量体を除去する効率が上がるため、80%以上が好ましく、90%以上が特に好ましい。
【0039】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイドなどの有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、4-メトキシ-アゾビスバレロニトリルなどのアゾ化合物が挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。ラジカル重合開始剤の量は、例えば、アクリル酸エステル単量体100質量部に対して0.001~5質量部とすればよい。
【0040】
乳化重合で使用する、乳化/分散剤は、特に限定されるものではないが、乳化安定性の観点からアニオン又はノニオン系の乳化/分散剤が好ましい。特に重合終了後の凍結凝固乾燥時のフィルム状の上記ブロック共重合体に、適当な強度を持たせて過度の収縮および破損を防ぐことができるという理由から、ロジン酸アルカリ金属塩を使用することが好ましい。ロジン酸は、樹脂酸、脂肪酸などの混合物である。樹脂酸としては、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロピマル酸、ジヒドロイソピマル酸、セコデヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸などが含まれ、脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸などが含まれている。これらの成分組成は、ガムロジン、ウッドロジン、トールロジンに分類されるロジン採取方法の違い、松の産地及び樹種、蒸留精製、不均化(不均斉化)反応によって変化するものであり、本発明では限定されない。乳化安定性や取り扱いやすさを考慮するとナトリウム塩又はカリウム塩の使用が好ましい。乳化/分散剤の濃度については、0.1~10質量%が好ましく、より好ましくは1~5質量%である。0.1質量%以上とすることで、単量体を十分に乳化することができ、10質量%以下とすることで、上記ブロック共重合体を固形にする際に、より析出しやすくなる。
【0041】
アクリル酸エステル重合体のブロックを合成する際の重合温度は、単量体の種類などに応じて適宜決定されればよいが、10~100℃が好ましく、70~100℃が更に好ましい。
【0042】
アクリル酸エステル重合体のブロックを合成した後は、クロロプレン単独、又はクロロプレンと他の単量体とを混合してラジカル乳化重合し、クロロプレン重合体のブロックを合成する(第二ブロックの重合)。当該他の単量体は、クロロプレンと共重合可能であればよく、例えば、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン、スチレン、メタクリル酸及びそのエステル類などが挙げられる。これらの中でも、クロロプレンを単独で用いることが好ましい。
【0043】
クロロプレン重合体のブロックの合成は、アクリル酸エステル重合体のブロックを取り出さずに連続してこれを含むラテックスに対してシード重合すればよいが、これに限定はされない。アクリル酸エステル重合体のブロックを重合系内から一旦取り出した後に、当該アクリル酸エステル重合体のブロックとクロロプレンなどの単量体とを溶媒に溶解して、クロロプレン重合体のブロックを合成してもよい。
【0044】
クロロプレン及び必要な他の単量体は、一括添加でも分添でも構わないが、重合系内に一括で添加することが好ましい。分添すると、ミセル中のアクリル酸エステル重合体のブロックの活性末端に対して、クロロプレン単量体が相対的に少ない状態となり、副反応の生じる可能性がある。一方、一括で添加すると、クロロプレン単量体が相対的に多い状態となるため制御重合性が向上する。
【0045】
クロロプレン重合体のブロックを合成する際の重合温度は、クロロプレン重合体のブロックの安定性を確保するため、10~50℃が好ましい。重合温度を10℃以上とすることで、乳化液の増粘や開始剤の効率をより向上させることができる。また、クロロプレンの沸点は約59℃であることから、重合温度を50℃以下とすることで、異常重合などにより発熱した場合であっても除熱が追いつかずに反応液が突沸する事態を回避することができる。
【0046】
また、クロロプレン重合体のブロックの重合率は、ブロック共重合体がゲル化することを防止するため、95%以下が好ましく、85%以下が特に好ましい。また、バッチ式重合における生産性の観点から、重合率は40%以上が好ましく、50%以上が特に好ましい。重合率の調整は、重合禁止剤を添加して重合反応を停止させることで行いうる。重合禁止剤としては、特に限定するものではないが、例えば、油溶性の重合禁止剤であるチオジフェニルアミン、4-ターシャリーブチルカテコール、2,2-メチレンビス-4-メチル-6-ターシャリーブチルフェノールや、水溶性の重合禁止剤であるジエチルヒドロキシルアミンなどがある。
【0047】
未反応単量体の除去は、減圧加熱などの公知の方法により行えばよい。その後、pHを調製し、凍結凝固、水洗、熱風乾燥などの工程を経て、固形状のブロック共重合体を回収すればよい。
【0048】
得られるブロック共重合体は、数平均分子量が110,000以上であり、クロロプレン重合体のブロックの数平均分子量が合計80,000以上である。数平均分子量は、単量体とラジカル重合開始剤の仕込み比や、重合率を任意で設定することで調整すればよい。
【0049】
また、得られるブロック共重合体は、上記化学式(a)~(f)で表される構造のうち、一般式(a)「A-B-X」又は一般式(e)「A-B-X-B-A」で表される構造を有する。
【0050】
本製造方法によりアクリル酸エステル重合体のブロックを合成し、未反応単量体を除去した後、更にクロロプレン単独、又はクロロプレンと他の単量体とを混合してラジカル乳化重合し、アクリル酸エステル重合体のブロックを更に合成してもよい(第三ブロックの重合)。これにより、上記一般式(c)「A-B-A-X」で表される構造を有するブロック共重合体を製造することができる。
【0051】
<2-2.製造方法II>
製造方法IIでは、上記化学式(3)又は(4)で表されるRAFT剤の存在下で、クロロプレン単独、又はクロロプレンと他の単量体とを分添してラジカル乳化重合し、クロロプレン重合体のブロックを合成した(第一ブロックの重合)後、アクリル酸エステル単独、又はアクリル酸エステルと他の単量体とを混合してラジカル乳化重合し、アクリル酸エステル重合体のブロックを合成する(第二ブロックの重合)。
【0052】
製造方法IIの説明では、上記製造方法Iと異なる点について述べ、製造方法Iと同様の点はその説明を省略する。
【0053】
本製造方法では、クロロプレン重合体のブロックを合成する際に、クロロプレン、又はクロロプレンと他の単量体の一部に連鎖移動剤を混合したものを初期に仕込み、残りのクロロプレン、又はクロロプレンと他の単量体とを分添する。クロロプレン単量体と連鎖移動剤を一括で添加して重合させると制御重合性の低下する可能性がある。
【0054】
本製造方法では、まず、クロロプレン及び必要なその他の単量体のうち、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~50質量%、最も好ましくは20~40質量%の単量体を、上記化学式(3)又は(4)で表される化合物と共に乳化/分散剤を用いて水に乳化させることが好ましい。その後、クロロプレン及び必要なその他の単量体を分添してラジカル乳化重合を行い、クロロプレン重合体のブロックを合成する。
【0055】
クロロプレン重合体のブロックを合成した後、未反応単量体を除去することが好ましい。その後、アクリル酸エステル単独、又はアクリル酸エステルと他の単量体とを混合してラジカル乳化重合し、アクリル酸エステル重合体のブロックを合成する。アクリル酸エステル及びアクリル酸エステルと共重合可能な単量体は、一括添加してもよい。
【0056】
得られるブロック共重合体は、上記一般式(a)~(f)で表される構造のうち、一般式(b)「B-A-X」又は一般式(f)「B-A-X-A-B」で表される構造を有する。
【0057】
本製造方法によりアクリル酸エステル重合体のブロックを合成し、未反応単量体を除去した後、クロロプレン単独、又はクロロプレンと他の単量体とを混合してラジカル乳化重合し、クロロプレン重合体のブロックを更に合成してもよい(第三ブロックの重合)。これにより、上記一般式(d)「B-A-B-X」で表される構造を有するブロック共重合体を製造することができる。
【0058】
クロロプレン重合体のブロックを更に合成する際には、クロロプレン及び必要な他の単量体を一括で添加することが好ましい。これにより、アクリル酸エステル重合体のブロックに対してクロロプレン単量体が十分量存在する条件下で重合反応を行うことができ、クロロプレン重合体のブロックの合成がスムーズに進行する。
【0059】
上述したように、本実施形態の製造方法は、アクリル酸エステル重合体のブロックとクロロプレン重合体のブロックとを含むブロック共重合体を、ラジカル乳化重合により製造する。従前より、光重合を用いてスチレン/クロロプレン重合体を得る技術は知られているが(上記特許文献2)、当該光重合は、有機溶剤を使用して反応を行う必要があることから、工業的製造には適していない。しかしながら、本実施形態の製造方法は、光重合を用いずにブロック共重合体を製造可能であるため、工業的製造に好適である。
【0060】
<3.組成物>
本発明の一実施形態に係る組成物は、上記ブロック共重合体を含み、好ましくはゴム組成物である。上記ブロック共重合体を含むゴム組成物は、柔軟性と機械強度を同時に得る事ができる。
【0061】
本実施形態の組成物において、ブロック共重合体以外の原料は特に限定されず、目的や用途に応じて適宜選択することができる。ゴム組成物に含有されうる原料としては、例えば、加硫剤、加硫促進剤、充填剤又は補強剤、可塑剤、加工助剤や滑剤、老化防止剤、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0062】
添加可能な加硫剤としては、クロロプレンゴムの加硫に一般に用いられる硫黄、チオウレア系、グアニジン系、チウラム系、チアゾール系の有機加硫剤が使用できるが、チオウレア系のものが好ましい。チオウレア系の加硫剤としては、エチレンチオウレア、ジエチルチオウレア、トリメチルチオウレア、トリエチルチオウレア、N,N’-ジフェニルチオウレア等が挙げられ、特にトリメチルチオウレア、エチレンチオウレアが好ましい。また、3-メチルチアゾリジンチオン-2-チアゾールとフェニレンジマレイミドとの混合物、ジメチルアンモニウムハイドロジエンイソフタレートあるいは1,2-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール誘導体、N-シクロヘキシルチオフタルイミド等の加硫剤も使用することができる。これらの加硫剤は、上記に挙げたものを2種以上併用してもよい。また、ベリリウム、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、バリウム、ゲルマニウム、チタニウム、錫、ジルコニウム、アンチモン、バナジウム、ビスマス、モリブデン、タングステン、テルル、セレン、鉄、ニッケル、コバルト、オスミウムなどの金属単体、及びこれら金属の酸化物や水酸化物を加硫剤として使用することができる。これら添加可能な加硫剤のなかでも、特に、酸化カルシウムや酸化亜鉛、二酸化アンチモン、三酸化アンチモン、酸化マグネシウムは、加硫効果が高いため好ましい。また、これらの加硫剤は2種以上を併用してもよい。なお、加硫剤は、ゴム成分100質量部に対して合計で0.1質量部以上10質量部以下の範囲で添加することが好ましい。
【0063】
充填剤又は補強剤は、ゴムの硬さを調整したり機械強度を向上させるために添加するものであり特に限定はないが、例えばカーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウムが挙げられる。その他の無機充填剤として特に限定するものではないが、γ-アルミナ及びα-アルミナなどのアルミナ(Al)、ベーマイト及びダイアスポアなどのアルミナ一水和物(Al・HO)、ギブサイト及びバイヤライトなどの水酸化アルミニウム[Al(OH)]、炭酸アルミニウム[Al(CO]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)]、炭酸マグネシウム(MgCO)、タルク(3MgO・4SiO・HO)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO・9HO)、チタン白(TiO)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al)、クレー(Al・2SiO)、カオリン(Al・2SiO・2HO)、パイロフィライト(Al・4SiO・HO)、ベントナイト(Al・4SiO・2HO)、ケイ酸アルミニウム(AlSiO、Al・3SiO・5HOなど)、ケイ酸マグネシウム(MgSiO、MgSiOなど)、ケイ酸カルシウム(CaSiOなど)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al・CaO・2SiOなど)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO)、炭酸カルシウム(CaCO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)・nHO]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO3)]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、及びアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩などを使用してもよい。充填剤及び補強剤は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。これら充填剤及び補強剤の配合量は、要求される本実施形態のゴム組成物やその加硫成形物の物性に応じて調整すればよく、特に限定するものではないが、本実施形態のゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して通常は合計で15質量部以上200質量部以下の範囲で添加することができる。
【0064】
可塑剤は、ゴムと相溶性のある可塑剤であれば特に制限はないが、例えば菜種油、アマニ油、ヒマシ油、ヤシ油などの植物油、フタレート系可塑剤、DUP(フタル酸ジウンデシル)、DOS(セバシン酸ジオクチル)、DOA(アジピン酸ジオクチル)、TOP(トリオクチルフォスフェート)、エステル系可塑剤、エーテルエステル系可塑剤、チオエーテル系可塑剤、アロマ系オイル、ナフテン系オイル、潤滑油、プロセスオイル、パラフィン、流動パラフィン、ワセリン、石油アスファルトなどの石油系可塑剤などがあり、本実施形態のゴム組成物や該組成物の加硫成物に要求される特性に合わせて1種もしくは複数を使用することができる。可塑剤の配合量には特に限定はないが、本実施形態のゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して通常は合計で5質量部以上50質量部以下の範囲で配合することができる。
【0065】
ゴム組成物を混練したり加硫成形したりする際に、ロールや成形金型、押出機のスクリューなどから剥離しやすくなるようにするなど、加工特性や表面滑性を向上させるために添加する加工助剤や滑剤としては、ステアリン酸などの脂肪酸あるいはポリエチレンなどのパラフィン系加工助剤、脂肪酸アミドなどを挙げることができる。加工助剤及び滑剤は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。その添加量には特に限定はないが、通常は本実施形態のゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して合計で0.5質量部以上5質量部以下である。
【0066】
耐熱性を向上させる老化防止剤として、通常のゴム用途に使用されている、ラジカルを捕捉して自動酸化を防止する一次老化防止剤と、ハイドロパーオキサイドを無害化する二次老化防止剤を添加することができる。それらの老化防止剤はゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、それぞれ0.1質量部以上10質量部以下の割合で添加することができ、好ましくは2質量部以上5質量部以下の範囲である。これらの老化防止剤は単独使用のみならず2種以上を併用することも可能である。なお、一次老化防止剤の例としては、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、アクリレート系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、カルバミン酸金属塩、ワックスを挙げることができる。また、二次老化防止剤の例として、リン系老化防止剤、硫黄系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤などを挙げることができる。老化防止剤の例として特に限定するものではないが、N-フェニル-1-ナフチルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4´-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N´-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N,N´-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N´-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N´-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N´-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-p-フェニレンジアミン、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、4,4´-ブチリデンビス-(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、7-オクタデシル-3-(4´-ヒドロキシ-3´,5´-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス-[メチレン-3-(3´,5´-ジ-tert-ブチル-4´-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N´-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)-ヒドロシンナアミド、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル-ホスホネート-ジエチルエステル、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメイト)]メタン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸エステル及び3,9-ビス[2-{3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリス(ノニル・フェニル)フォスファイト、トリス(混合モノ-及びジ-ノニルフェニル)フォスファイト、ジフェニル・モノ(2-エチルヘキシル)フォスファイト、ジフェニル・モノトリデシル・フォスファイト、ジフェニル・イソデシル・フォスファイト、ジフェニル・イソオクチル・フォスファイト、ジフェニル・ノニルフェニル・フォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリス(トリデシル)フォスファイト、トリイソデシルフォスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)フォスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコール・ジフォスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラフォスファイト、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ジ-トリデシルフォスファイト-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、4,4´-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチル-ジ-トリデシルフォスファイト)、2,2´-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)フルオロフォスファイト、4,4´-イソプロピリデン-ジフェノールアルキル(C12~C15)フォスファイト、環状ネオペンタンテトライルビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニルフォスファイト)、環状ネオペンタンテトライルビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-フェニルフォスファイト)、環状ネオペンタンテトライルビス(ノニルフェニルフォスファイト)、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ジブチルハイドロゲンフォスファイト、ジステアリル・ペンタエリスリトール・ジフォスファイト及び水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールフォスファイト・ポリマー、2-メルカプトベンゾイミダゾールなどが挙げられる。
【0067】
上記ブロック共重合体や天然ゴム等のゴム成分と充填剤や補強剤との接着性を高め、機械強度を向上させるために、さらにシランカップリング剤を添加することもできる。シランカップリング剤はゴム組成物を混練する際に加えても、充填剤又は補強剤を予め表面処理する形で加えてもどちらでも構わない。シランカップリング剤は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。特に限定するものではないが、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス-(3-トリメトキシンリルプロピル)テトラスルフィド、ビス-(3-メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス-(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス-(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3-ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリンドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリロイルモノスルフィド、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジクロロシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン、トリエチルクロロシランなどが例として挙げられる。
【0068】
上記ゴム組成物は、公知の機械や装置を用いて常法に従って製造することができる。
上記組成物を含む製品の製造方法は、上記組成物を配合しさえすれば特に限定されない。上記組成物は、そのまま使用してもよく加硫又は加硫成形してから使用してもよい。ここで、加硫成形とは、組成物を成形後に加硫、又は成型と同時に加硫することを意味する。本発明の一実施形態は、上記組成物の加硫又は加硫成形物でもある。
【0069】
<4.組成物を含む製品>
本発明の一実施形態に係る製品は、上記組成物やその加硫物、又は加硫成形物を含む。本実施形態の製品は、好ましくは、ゴムロール、免震・防振用部品、ワイパーブレード、自動車用部品であり、これらの製品は上記ゴム組成物やその加硫物、又は加硫成形物を含む。上記ゴム組成物やその加硫物、又は加硫成形物を含む製品は、柔軟性と機械強度を同時に得ることができる。
【実施例
【0070】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0071】
<数平均分子量Mn、分子量分布Mw/Mn>
重合体の数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、及び分子量分布(Mw/Mn)は、THFを溶媒とし、THFでサンプル調整濃度0.1質量%とした後、TOSOH HLC-8320GPCにより測定した(標準ポリスチレン換算)。その際、プレカラムとして:TSKガードカラムHHR-H、分析カラムとしてHSKgelGMHHR-H3本を使用し、サンプルポンプ圧:8.0~9.5MPa、流量1ml/min、40℃で流出させ、示差屈折計で検出した。流出時間と分子量は、以下にあげる分子量既知の標準ポリスチレンサンプル計9点を測定して作成した校正曲線を用いた。
Mw=8.42×10、1.09×10、7.06×10、4.27×10、1.90×10、9.64×10、3.79×10、1.74×10、2.63×10
【0072】
<重合率>
重合開始からある時刻までの重合率は、サンプリングしたラテックス(乳化重合液)を加熱風乾することで乾燥重量(固形分濃度)から算出した。具体的には、以下の式より計算した。
重合率[%]={(総仕込み量[g]×固形分濃度[質量%]/100)-(蒸発残分[g])}/単量体仕込み量[g]×100
式中、固形分濃度は、サンプリングしたラテックス2gを130℃中で加熱し溶媒(水)、揮発性薬品、及び原料を除いた後、加熱前後の質量変化から揮発分を除いて求めた固形分の濃度(質量%)である。重合途中の乾燥重量は、ラテックスに対して乾燥重量に影響を与えない程度の少量の重合禁止剤を添加して求めた。総仕込み量及び蒸発残分は重合処方より計算した。総仕込み量とは、重合開始からある時刻までに仕込んだ原料、試薬、及び溶媒(水)の総量である。蒸発残分とは、重合開始からある時刻までに仕込んだ薬品及び原料のうち、130℃の条件下で揮発せずに重合体と共に固形分として残留する薬品及び原料の質量を表す。単量体仕込み量は、初期に仕込んだ単量体及び重合開始からある時刻までに分添した単量体の量の合計である。共重合体の各ブロックの重合率も上記と同様に、サンプリングしたラテックス(乳化重合液)を加熱風乾することで乾燥重量から算出した。前ブロックまでに重合した重合体の質量も、蒸発残分に含む。単量体仕込み量は、初期に仕込んだ単量体及び重合開始からある時刻までに分添した単量体の量の合計である。
【0073】
<ジブロック共重合体の製造>
[実施例1]
(アクリル酸2-エチルヘキシルブロックの合成)
500ml三口セパラブルフラスコ中に、水384gに水酸化ナトリウム0.47g、ナフタリンスルホン酸・ホルマリン縮合物ソーダ0.5g、不均化トールロジンカリウム塩2.22gを溶解させ、窒素フローによる脱気をオイルバスで30℃に保ち30分間行なった。次に、活性アルミナカラムで安定剤を取り除いたアクリル酸2-エチルヘキシル単量体5.00gとそれに溶解したベンジル1-ピロールカルボジチオエート(慣用名:ベンジル1-ピロールジチオカルバメート)(シグマアルドリッチジャパン製)0.12gを上記セパラブルフラスコに添加し、30℃のオイルバスで10分間乳化させた。得られた乳化液を70℃まで昇温し、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(和光純薬工業株式会社製)の2.00重量%水溶液3.84gを添加し、重合を開始した。8時間後、25℃以下まで降温させて重合を停止させ、ポリアクリル酸2-エチルヘキシルマクロ重合体ラテックスを得たアクリル酸2-エチルヘキシル単量体の重合転化率は、アクリル酸2-エチルヘキシルマクロ重合体ラテックスを風乾することで乾燥重量から算出した。また、この乾燥サンプルをGPC分析に用いた。
【0074】
(ポリクロロプレンブロックの合成)
次に、35℃に加熱した上記ポリアクリル酸2-エチルヘキシルマクロ重合体ラテックス中に不均化トールロジンカリウム塩2.22gを添加した後、水11.5gとクロロプレン単量体95gとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.15gを混合したものを3時間分添した。クロロプレン単量体の重合転化率が70%になるまで重合を行った後、N,N-ジエチルヒドロキシルアミンの10.00重量%水溶液を添加して重合反応を停止させた。クロロプレン-アクリル酸2-エチルヘキシルジブロック共重合体ラテックスを風乾することにより、乾燥重量からクロロプレン単量体の重合転化率を算出した。また、この乾燥サンプルをGPC分析に用いた。
【0075】
(クロロプレン-アクリル酸2-エチルヘキシルジブロック共重合体のドライアップ)
得られたクロロプレン-アクリル酸2-エチルヘキシルジブロック共重合体ラテックスをpH7.0に調整し、-20℃に冷やした金属板上に凍結凝固させることで乳化破壊した。得られたシートを水洗し、130℃で15分間乾燥させることにより、実施例1の固形状のクロロプレン-アクリル酸2-エチルヘキシルジブロック共重合体を得た。当該クロロプレン-アクリル酸2-エチルヘキシルジブロック共重合体をGPC分析に用いて、ジブロック共重合体全体(第一ブロック+第二ブロック)の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0076】
[1H-NMR測定による、RAFT剤由来の官能基の分析]
得られたブロック共重合体のRAFT剤由来の官能基の分析は以下のように行った。得られたブロック共重合体をベンゼンとメタノールで精製し、再度凍結乾燥して測定用試料を得た。ブロック共重合体30mgを重クロロホルム1mlに溶解し、JEOL製ECX400(400MHz)を使用し、30℃で1H-NMRを測定した。用いたRAFT剤(ベンジル1-ピロールカルボジチオエート)由来の官能基ピークが明瞭に観察された。同定された官能基の構造は、下記表中に示した。以下の実施例、比較例も同様である。
【0077】
[実施例2]
実施例1のアクリル酸2-エチルヘキシル単量体の仕込み量を10gに、クロロプレン単量体仕込み量を90gに変更した以外は、実施例1と同様の手順により実施例2のクロロプレン-アクリル酸2-エチルヘキシルジブロック共重合体を得た。
【0078】
[実施例3]
実施例1のアクリル酸2-エチルヘキシル単量体の仕込み量を15gに、クロロプレン単量体の仕込み量を85gに変更した以外は、実施例1と同様の手順により実施例3のクロロプレン-アクリル酸2-エチルヘキシルジブロック共重合体を得た。
【0079】
[実施例4]
実施例1のベンジル1-ピロールカルボジチオエート0.12gをジベンジルトリチオカルボナート0.150gに変更した以外は、実施例1と同様の手順により実施例4のクロロプレン-アクリル酸2-エチルヘキシルジブロック共重合体を得た。
【0080】
[比較例1]
実施例3のベンジル1-ピロールジチオカルバメートの添加量0.12gを0.189gに、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩の2.00重量%水溶液を6.62gに変更した以外は、実施例3と同様の手順により、数平均分子が110,000未満である比較例1のクロロプレン-アクリル酸2-エチルヘキシルジブロック共重合体を得た。
【0081】
[比較例2]
実施例1のアクリル酸2-エチルヘキシル単量体の仕込み量を50gに、クロロプレン単量体の仕込み量を50gに変更した以外は、実施例1と同様の手順により、クロロプレン重合体のブロックの数平均分子が合計80,000未満である比較例2のクロロプレン-アクリル酸2-エチルヘキシルジブロック共重合体を得た。
【0082】
実施例1~3及び比較例1、2は、上記一般式(a)「A-B-X」で表される構造を有するジブロック共重合体である。また、実施例4は、上記一般式(e)「A-B-X-B-A」で表される構造を有するジブロック共重合体である。
【0083】
[比較例3]
(クロロプレン重合体の合成)
500ml三口セパラブルフラスコ中で、水100gに水酸化ナトリウム50mg、ナフタリンスルホン酸・ホルマリン縮合物ソーダ1.0g、不均化トールロジンカリウム塩4.43gを溶解させ、窒素フローによる脱気をオイルバスで30℃に保ち10分間行なった。
次に、減圧蒸留により安定剤を取り除いたクロロプレン単量体100gとジエチルザントゲンスルフィド1.00gを上記セパラブルフラスコに添加し、30℃のオイルバスで10分間乳化させた。得られた乳化液を35℃まで昇温し、過硫酸カリウムの2.00重量%水溶液を添加し、重合率が60%に到達するまで重合を行った。N,N-ジエチルヒドロキシルアミンの10.00重量%水溶液を添加することで反応を停止させ、減圧蒸留により残留クロロプレン単量体を除去する事でクロロプレン重合体ラテックスを得た。
【0084】
(クロロプレン重合体のドライアップ)
得られたクロロプレン重合体ラテックスをpH7.0に調整し、-20℃に冷やした金属板上に凍結凝固させることで乳化破壊した。得られたシートを水洗し、130℃で15分間乾燥させることにより、比較例3の固形状のクロロプレン重合体を得た。当該クロロプレン重合体をGPC分析に用いて、クロロプレン重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0085】
[比較例4]
(クロロプレン重合体の合成)
500ml三口セパラブルフラスコ中で、水100gに水酸化ナトリウム50mg、ナフタリンスルホン酸・ホルマリン縮合物ソーダ1.0g、不均化トールロジンカリウム塩4.43gを溶解させ、窒素フローによる脱気をオイルバスで30℃に保ち10分間行なった。
次に、減圧蒸留により安定剤を取り除いたクロロプレン単量体100gと1-ドデカンチオール1.00gを上記セパラブルフラスコに添加し、30℃のオイルバスで10分間乳化させた。得られた乳化液を35℃まで昇温し、過硫酸カリウムの2.00重量%水溶液を添加し、重合率が65%に到達するまで重合を行った。N,N-ジエチルヒドロキシルアミンの10.00重量%水溶液を添加することで反応を停止させ、減圧蒸留により残留クロロプレン単量体を除去する事でクロロプレン重合体ラテックスを得た。また、この乾燥サンプルをGPC分析に用いて、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定した。結果、数平均分子量(Mn)は22.3×10g/mol、重量平均分子量(Mw)は63.4×10g/mol、分子量分布(Mw/Mn)は2.84であった。
【0086】
(アクリル酸2-エチルヘキシル重合体の合成)
500ml三口セパラブルフラスコ中で、水100gに水酸化ナトリウム50mg、ナフタリンスルホン酸・ホルマリン縮合物ソーダ1.0g、不均化トールロジンカリウム塩4.43gを溶解させ、窒素フローによる脱気をオイルバスで30℃に保ち30分間行なった。
次に、活性アルミナカラムで安定剤を取り除いたアクリル酸2-エチルヘキシル単量体10gとベンジル1-ピロールカルボジチオエート(シグマアルドリッチジャパン製)0.12gを上記セパラブルフラスコに添加し、30℃のオイルバスで10分間乳化させた。
得られた乳化液を70℃まで昇温し、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(和光純薬工業株式会社製)の2.00重量%水溶液3.84gを添加し、重合を開始した。4時間後、25℃まで降温させて重合を停止させ、ポリアクリル酸2-エチルヘキシルマクロ単量体ラテックスを得た。
アクリル酸2-エチルヘキシル単量体の重合転化率は、ポリアクリル酸2-エチルヘキシルマクロポリマーラテックスを風乾することで乾燥重量から算出した。また、この乾燥サンプルをGPC分析に用いて、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定した。結果、数平均分子量(Mn)は1.6×10g/mol、重量平均分子量(Mw)は1.8×10g/mol、分子量分布(Mw/Mn)は1.15であった。
【0087】
(クロロプレン重合体とアクリル酸2-エチルヘキシル重合体のブレンド物の作製)
得られたラテックス状のクロロプレン重合体中の固形分90質量部に対し、固形分が10質量部になるようにラテックス状のアクリル酸2-エチルヘキシル重合体を添加し、60分間撹拌混合し、クロロプレン重合体とアクリル酸2-エチルヘキシル重合体のブレンド物のラテックスを得た。
【0088】
(クロロプレン重合体とアクリル酸2-エチルヘキシル重合体のブレンド物のドライアップ)
得られたクロロプレン重合体とアクリル酸2-エチルヘキシル重合体のブレンド物のラテックスをpH7.0に調整し、-20℃に冷やした金属板上に凍結凝固させることで乳化破壊した。得られたシートを水洗し、130℃で15分間乾燥させることにより、比較例4の固形状のクロロプレン重合体とアクリル酸2-エチルヘキシル重合体のブレンド物を得た。
【0089】
<加硫ゴムの製造>
実施例1~4又は比較例1~4の重合体100質量部と、N-フェニル-1-ナフチルアミン1質量部、カーボンブラック(SRF;旭カーボーン社製旭#50)30質量部、酸化マグネシウム(協和化学工業社製キョーワマグ#150)4質量部、酸化亜鉛(堺化学社製)5質量部、エチレンチオウレア(川口化学社製アクセル22S)0.5質量部とを、8インチロールを用いて混練りし、ゴム組成物を得た。
得られたゴム組成物を、電熱プレスを用いて、160℃、20分間の熱処理を行って加硫ゴムを作製した。
【0090】
<加硫ゴム物性の評価>
上記加硫ゴムの柔軟性はJIS K6253に準拠して測定し65以下を合格とした。また、破断強度及び破断伸びは、JIS K6251に準拠して測定した。破断強度は15MPa以上を合格とし、破断伸びは300%以上を合格とした。
【0091】
実施例1~4及び比較例1~4の結果を下記表1に示す。表1中、「EHA」はポリアクリル酸2-エチルヘキシル、「PCP」はポリクロロプレンを意味し、「CP/EHA」はホモポリクロロプレンラテックスとホモポリアクリル酸2-エチルヘキシルラテックスのブレンド物であることを意味する。
【0092】
【表1】
【0093】
表1に示すように、実施例1~4のジブロック共重合体を含む加硫ゴムは、破断強度、破断伸び、柔軟性に優れていた。
【0094】
一方、比較例1は実施例と同等の柔軟性を有していたが、破断強度と破断伸びが劣っていた。また、比較例3、4の重合体を含むゴムは、実施例と同等の破断強度と破断伸びを有していたが、柔軟性が劣っていた。比較例2のジブロック共重合体を含むゴムは、粘着がひどく8インチロールで混練することができなかった。
【0095】
[実施例5]
<トリブロック共重合体の製造>
(ポリアクリル酸2-エチルヘキシルブロックの合成)
実施例1と同様の手順により、クロロプレン-アクリル酸2-エチルヘキシルジブロック共重合体ラテックスを合成し、そのラテックス中に、活性アルミナカラムで安定剤を取り除いたアクリル酸2-エチルヘキシル単量体5.00gを添加し、30℃のオイルバスで10分間乳化させた。得られた乳化液を70℃まで昇温し、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(和光純薬工業株式会社製)の2.00重量%水溶液を3.84g添加し、アクリル酸2-エチルヘキシル単量体の重合転化率が100%になるまで重合を行った後、25℃まで冷却し重合を停止させた。以上の手順により、ポリアクリル酸2-エチルヘキシルのブロック(第三ブロック)を合成した。
アクリル酸2-エチルヘキシル-クロロプレン-アクリル酸2-エチルヘキシルトリブロック共重合体ラテックスを風乾することにより、乾燥重量からアクリル酸2-エチルヘキシル単量体の重合転化率を算出した。また、この乾燥サンプルをGPC分析に用いて、アクリル酸2-エチルヘキシル-クロロプレン-アクリル酸2-エチルヘキシルトリブロック共重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0096】
(アクリル酸2-エチルヘキシル-クロロプレン-アクリル酸2-エチルヘキシルトリブロック共重合体のドライアップ)
得られたアクリル酸2-エチルヘキシル-クロロプレン-アクリル酸2-エチルヘキシルトリブロック共重合体ラテックスをpH7.0に調整し、-20℃に冷やした金属板上に凍結凝固させることで乳化破壊した。得られたシートを水洗し、130℃で15分間乾燥させることにより、実施例5の固形状のアクリル酸2-エチルヘキシル-クロロプレン-アクリル酸2-エチルヘキシルトリブロック共重合体を得た。
【0097】
実施例5は、上記一般式(c)「A-B-A-X」で表される構造を有するトリブロック共重合体である。
【0098】
得られた実施例5のトリブロック共重合体を用いて、上記と同様の手順により、加硫ゴムを製造し、評価した。実施例5の結果を下記表2に示す。
【0099】
【表2】
【0100】
表2に示すように、実施例5のトリブロック共重合体を含むゴムは、柔軟性、破断強度、破断伸びが優れていた。
【0101】
本発明は、以下のような形態もとることができる。
〔1〕アクリル酸エステル重合体のブロックと、クロロプレン重合体のブロックと、をそれぞれ1つ以上含む、数平均分子量が110,000以上のブロック共重合体であり、かつ前記クロロプレン重合体のブロックの数平均分子量が合計80,000以上であり、さらに下記化学式(1)又は(2)で表される構造の官能基を有するブロック共重合体。
【化10】
【化11】
(化学式(1)中、Rは、水素、塩素、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロシクリル基を示す。)
〔2〕下記化学式(1)で示される構造の官能基を末端に有する、〔1〕に記載のブロック共重合体。
【化12】
(化学式(1)中、Rは、水素、塩素、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロシクリル基を示す。)
〔3〕アクリル酸エステルが、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-メチルペンチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-デシルアクリレート、n-ドデシルアクリレート、n-オクタデシルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-(n-プロポキシ)エチルアクリレート、2-(n-ブトキシ)エチルアクリレート、3-メトキシプロピルアクリレート、3-エトキシプロピルアクリレート、2-(n-プロポキシ)プロピルアクリレート及び2-(n-ブトキシ)プロピルアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種である、〔1〕又は〔2〕に記載のブロック共重合体。
〔4〕アクリル酸エステルが、炭素数5以上のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルである、〔1〕又は〔2〕に記載のブロック共重合体。
〔5〕RAFT剤の存在下で、アクリル酸エステル単独、又はアクリル酸エステルと他の単量体とをラジカル乳化重合し、アクリル酸エステル重合体のブロックを合成した後、クロロプレン単独、又はクロロプレンと他の単量体とを混合してラジカル乳化重合し、クロロプレン重合体のブロックを合成する、数平均分子量が110,000以上であり、かつ前記クロロプレン重合体のブロックの数平均分子量が合計80,000以上であるブロック共重合体の製造方法。
〔6〕RAFT剤の存在下で、クロロプレン単独、又はクロロプレンと他の単量体とを分添してラジカル乳化重合し、クロロプレン重合体のブロックを合成した後、アクリル酸エステル単独、又はアクリル酸エステルと他の単量体とを混合してラジカル乳化重合し、アクリル酸エステル重合体のブロックを合成する、数平均分子量が110,000以上であり、かつ前記クロロプレン重合体のブロックの数平均分子量が合計80,000以上であるブロック共重合体の製造方法。
〔7〕前記RAFT剤が下記化学式(3)又は(4)で表されるRAFT剤である、〔5〕又は〔6〕に記載のブロック共重合体の製造方法。
【化13】
【化14】
(化学式(3)中、Rは、水素、塩素、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロシクリル基を示す。化学式(3)及び(4)中、R3~5はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の飽和、不飽和もしくは芳香族の炭素環、置換もしくは無置換の飽和、不飽和もしくは芳香族の複素環、有機金属種、又は任意の重合体鎖を示す。)
〔8〕〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載のブロック共重合体を含む、組成物。
〔9〕ゴム組成物である、〔8〕に記載の組成物。
〔10〕〔9〕に記載のゴム組成物を用いた加硫物。
〔11〕〔9〕に記載のゴム組成物を用いた加硫成形物。
〔12〕〔11〕に記載の加硫成形物を用いた、ゴムロール、免震・防振用部品、ワイパーブレード又は自動車用部品。