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特許7190463免疫刺激レーザ温熱療法を制御するための装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】免疫刺激レーザ温熱療法を制御するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/067 20060101AFI20221208BHJP
   A61B 18/20 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
A61N5/067
A61B18/20
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020089791
(22)【出願日】2020-05-22
(62)【分割の表示】P 2016511079の分割
【原出願日】2014-04-30
(65)【公開番号】P2020142111
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】13165962.5
(32)【優先日】2013-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】61/817,743
(32)【優先日】2013-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515300871
【氏名又は名称】クリニカル レーザーサーミア システムズ アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】カール・ゴラン トランバーグ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ダイムリング
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-516184(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0079852(US,A1)
【文献】特開2005-287672(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0171583(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/067
A61B 18/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織の熱処理を制御するためのコンピュータプログラムであって、
所定の処置領域の境界の内側若しくは外側から測定された温度を取得することと、
ウォームアップ期間を開始することと、
前記測定された温度が目標温度に達するように、前記所定の処置領域内に間質的に挿入されている加熱プローブに接続された光源のパワー出力を、前記ウォームアップ期間内に制御し、前記ウォームアップ期間における所定の時間範囲外に前記目標温度に達した場合には、警告を発する及び/又は前記光源を非動作にすることと、
前記ウォームアップ期間における所定の時間範囲内に前記目標温度に達した場合には、前記ウォームアップ期間を終了して処置期間を開始し、前記測定された温度を前記目標温度に維持するために、前記パワー出力を前記処置期間内に制御することと、のための複数のコードセグメントを備えるコンピュータプログラム。
【請求項2】
前記目標温度に達するまで前記パワー出力を連続的に又は離散的ステップで増加させることのためのコードセグメントを更に備える、請求項1に記載のコンピュータプログラム。
【請求項3】
前記目標温度に達するまで前記パワー出力を連続的に又は離散的ステップで高出力から減少させることのためのコードセグメントを更に備える、請求項1に記載のコンピュータプログラム。
【請求項4】
前記目標温度が、前記所定の処置領域の境界の2~7mm外側で、44~48℃の範囲内にある、請求項1~3のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
【請求項5】
前記目標温度が、前記所定の処置領域の境界で、50~55℃の範囲内にある、請求項1~4のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
【請求項6】
前記加熱プローブに隣接する位置における第2の温度をモニタリングするためのコードセグメントを更に備える、請求項1~5のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
【請求項7】
前記ウォームアップ期間内に前記目標温度に達しないかどうかをモニタリングするためのコードセグメントを更に備える、請求項1~6のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
【請求項8】
前記測定された温度の上昇が速すぎないか又は遅すぎないかをモニタリングするためのコードセグメントを更に備える、請求項1~7のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
【請求項9】
前記処置期間内に、前記測定された温度が前記目標温度を下回った場合に処置タイマを止め、前記目標温度が得られたときに前記処置タイマを再度開始するためのコードセグメントを更に備える、請求項1~8のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
【請求項10】
前記光源が連続光源又はパルス光源である、請求項1~9のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
【請求項11】
前記処置期間が所定の時間範囲を有する、請求項1~10のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
【請求項12】
組織の熱処理を制御するためのシステムであって、
温度を測定して得るために、所定の処置領域の境界の内側または外側に位置することが可能な熱センサ部材と、
前記所定の処置領域内に間質的に挿入可能な加熱プローブに接続され、パワー出力を制御することができる光源と、
ウォームアップ期間を開始し、
前記測定された温度が目標温度に達するように、前記所定の処置領域内に間質的に挿入されている加熱プローブに接続された光源のパワー出力を、前記ウォームアップ期間内に制御し、前記ウォームアップ期間における所定の時間範囲外に前記目標温度に達した場合には、警告を発する及び/又は前記光源を非動作にし、
前記ウォームアップ期間における所定の時間範囲内に前記目標温度に達した場合には、前記ウォームアップ期間を終了して処置期間を開始し、
前記測定された温度を前記目標温度に維持するために、前記パワー出力を前記処置期間内に制御するための制御ユニットと、を備えるシステム。
【請求項13】
前記熱センサ部材は互いに離間する複数のセンサーを有する、及び/又は前記熱センサ部材は前記加熱プローブのチャネル内に位置する、請求項12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して少なくとも腫瘍の領域(area of a tumour)に関連する処置領域 (treatment lesion)の間質的温熱療法(interstitial thermotherapy)の分野に関する。より特定的には、本発明は、熱源を用いた癌の制御された加熱及び破壊のためのシステムに関する。更に特定的には、本発明は、処置された癌に対する抗腫瘍免疫学的効果(anti-tumour immunologic effect)を得ること、即ち免疫刺激レーザ温熱療法(immunostimulating laser thermotherapy)に関する。
【背景技術】
【0002】
温熱療法等、腫瘍が熱によって破壊され得ることが知られている。最も一般的な温熱療法技術の1つは間質的レーザ加温療法(interstitial laser hyperthermia)であり、これは光の吸収により腫瘍を破壊する。初期の実験的及び臨床的な研究は、Nd-YAGレーザと腫瘍の中心に挿入された終端がむき出しのファイバとを用いていた。これらの研究の多くは、組織効果(tissue effect)の適切な制御を欠いていた。処置領域サイズ(lesion size)を改善する方法は、マルチファイバシステム、拡散型ファイバ及び血管流入閉塞(vascular inflow occlusion)を含んでいた。しかし、間質的レーザ加温療法の標準的な適用は、結果として、組織の蒸発及び炭化並びに予測が比較的困難な組織損傷及び処置領域サイズをもたらす。
【0003】
ラット及び人間での研究によると、癌の熱処置(heat treatment)が抗腫瘍免疫学的効果をもたらし得ることが判明している。乾燥腫瘍細胞が凝固していない腫瘍抗原(uncoagulated tumour antigens)を放出すると、これらの抗原は、ホストの免疫システムに晒されたときに免疫応答を生じ得る。従って、処置された腫瘍が破壊されるだけでなく、免疫効果もまた、局所的に又はリンパ節を含む遠位部位で、残っている腫瘍を破壊することになる。この免疫学的効果は、選択的な組織損傷及び増殖因子の比較的少ない放出に貢献する。化学療法は局所療法の前に又は局所療法に際して開始することができるので、処置による病態の低下(low treatment morbidity)は、化学療法をより効率的に使用する可能性をもたらす。
【0004】
今までのところ、この効果を完全に制御し及び/又は最適化する現実的な方法はない。従って、免疫学的効果を得ることに対する熱刺激の制御の改善が有利であろうし、また患者の安全を高めることになろう。更に、改善された制御は、熱源を取り囲んでいる組織の蒸発及び炭化並びにそれらに伴う悪影響を最小化し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本開示の例は、好ましくは、添付の特許請求の範囲に従い免疫学的抗腫瘍効果をもたらすべく腫瘍の熱処置を制御するための装置、方法、及びコンピュータ可読媒体を提供することによって、上で特定したような従来技術における1つ以上の欠陥、不利益、又は問題を個々に又は組み合わせにおいて軽減し、緩和し、又は排除することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示される装置及び方法は、腫瘍破壊を制御するために及び/又は免疫学的効果等の抗腫瘍効果を得るために用いることができる。抗腫瘍効果は、局所的な腫瘍破壊に続く遠位効果であってよい。抗腫瘍効果は抗原によって誘発され、処置された腫瘍の残された任意の部分を破壊し得るばかりでなく、患者体内の他の未処置の腫瘍を破壊することもできる。従って、この効果は、腫瘍に対する「ワクチン」であると捉えることができる。抗原は細胞死をもたらす処置の結果であるが、腫瘍抗原の凝固・変性を伴わない。これらの抗原は、処置後1~5日にわたり発現され得る。
【0007】
本開示の幾つかの側面によると、腫瘍の少なくとも一部を覆う所定の処置領域の温熱療法のための装置が開示される。この装置は、光ファイバと冷却カテーテルとを備える加熱プローブを備える。光ファイバは冷却カテーテル内に挿入され、加熱プローブは発光領域を有する。加熱プローブは所定の処置領域内へと間質的に挿入可能であり且つカテーテル内で循環している流体により内部で冷却可能である。装置は、所定の処置領域を加熱するために光ファイバに接続可能な光源と、少なくとも1つのセンサ領域を有する少なくとも第1の熱センサ部材と、を更に備える。第1の熱センサ部材は、第1の温度をモニタリング又は推定するために所定の処置領域の境界に又は所定の処置領域の境界から隔てた距離で位置することが可能である。装置はまた、測定された第1の温度に基づき、所定の処置領域と周囲組織の間の境界での第2の温度が所定の温度になるように光源のパワー出力を制御するための制御ユニットを含む。
【0008】
装置の開示の幾つかの例においては、境界での所定の温度は50~55℃の範囲内である。この温度が抗腫瘍効果を改善することが明らかになっている。
【0009】
装置の開示の幾つかの例においては、第1の熱センサ部材は、所定の処置領域の境界の外側2~7mm、例えば3~6mm、例えば4~5mm、例えば2~5mmの距離で位置することが可能に構成される。制御ユニットは、第1の温度が44~48℃の範囲内になるようパワー出力を制御するように構成される。この温度範囲は腫瘍抗原の凝固・変性を回避するために好ましく、従って抗腫瘍効果を得ることができる。
【0010】
装置の開示の幾つかの例においては、第2の熱センサ部材が加熱プローブ近傍の距離で位置することが可能であり、第2の熱センサ部材は第3の温度を測定するように構成され、第3の温度が200℃未満になるようにパワー出力を制御するために制御ユニットが用いられる。
【0011】
装置の開示の幾つかの例においては、第2の熱センサ部材は加熱プローブから5mm未満の距離で位置することが可能である。
【0012】
装置の開示の幾つかの例においては、第2の熱センサ部材は加熱プローブ内に位置する。
【0013】
装置の開示の幾つかの例においては、第1の熱センサ部材は、第1の温度を測定するために処置領域の内側2~7mmの距離で位置することが可能に構成され、制御ユニットは、第1の温度に基づき境界の外側2~7mmの距離での温度を推定するように構成される。
【0014】
装置の開示の幾つかの例においては、制御ユニットは、境界の外側での推定温度が44~48℃の範囲内になるようパワー出力を制御するように構成される。
【0015】
装置の開示の幾つかの例においては、制御ユニットは、境界の内側に位置する第1の熱センサ部材により測定された温度と温度勾配とに基づく計算によって、境界の外側の温度及び/又は第2の温度を推定するように構成される。
【0016】
装置の開示の幾つかの例においては、制御ユニットは、第3の温度の所定の最高温度の場合に警告を発するように構成される。
【0017】
装置の開示の幾つかの例においては、制御ユニットは、所定の時間範囲外に、第2の温度の所定の目標温度及び/又は第1の温度の所定の目標温度及び/又は境界の外側での推定温度の所定の目標温度に達した場合に警告を発するように構成される。
【0018】
装置の開示の幾つかの例においては、制御ユニットは、所定の時間範囲外に所定の最高温度及び/又は所定の目標温度に達した場合に光源を非動作にするように構成される。
【0019】
装置の開示の幾つかの例においては、所定の時間範囲は5~15分の間である。
【0020】
装置の開示の幾つかの例においては、危険性のある臓器に隣接して少なくとも1つの保護用熱センサ部材が位置することが可能である。
【0021】
装置の開示の幾つかの例においては、熱センサ部材と熱プローブとを位置決めし保持するためにテンプレートが用いられる。
【0022】
装置の開示の幾つかの例においては、発光領域は放射された光を拡散するように構成される。
【0023】
装置の開示の幾つかの例においては、第1及び第2の熱センサ部材のセンサ領域の少なくとも1つは熱プローブの発光領域の深さで位置することが可能である。
【0024】
本開示の幾つかの更なる側面によると、ここに開示される装置の制御ユニット等のコンピュータによって処理するためのコンピュータプログラムが具現化されたコンピュータ可読媒体が開示される。コンピュータプログラムは、加熱プローブに隣接する第2の熱センサ部材により測定された第3の温度の値及び/又は所定の処置領域の境界の内側若しくは外側に位置する第1の熱センサ部材からの第1の温度を取得することを含む複数のコードセグメントを備える。更に、コードセグメントは、所定の処置領域内に間質的に挿入されている加熱プローブに接続された光源のパワー出力をウォームアップ期間内に制御することを含む。第3の温度が最高温度を超えないように及び/又は第1の温度を目標温度に維持するために及び/又は所定の処置領域の境界での第2の温度を目標温度に維持するために、パワー出力を処置期間内に制御するための他のコードセグメントが用いられる。
【0025】
本開示の幾つかの例においては、コンピュータ可読媒体は、ウォームアップ期間外に最高温度及び/又は目標温度に達した場合に警告及び/又はパワー出力のスイッチングを提供するための更なるコードセグメントを含む。
【0026】
本開示の幾つかの側面によると、組織加熱プロセスを制御する方法が開示され、この方法は、加熱プローブに隣接する第2の熱センサ部材により測定された第3の温度の値及び/又は所定の処置領域の境界の内側若しくは外側に位置する第1の熱センサ部材による第1の温度を取得することを含む。方法は、所定の処置領域内に間質的に挿入されている加熱プローブに接続された光源のパワー出力をウォームアップ期間内に制御することを更に含む。方法はまた、第3の温度が最高温度を超えないように及び/又は第1の温度を目標温度に維持するために及び/又は所定の処置領域の境界での第2の温度を目標温度に維持するために、パワー出力を処置期間内に制御することを含む。
【0027】
本開示の幾つかの更なる側面によると、腫瘍の少なくとも一部を覆う規定された処置領域の温熱療法による坑腫瘍免疫学的応答を得るための装置が開示される。この装置は、光ファイバと冷却カテーテルとを備える加熱プローブを備える。光ファイバは冷却カテーテル内に挿入される。更に、加熱プローブは、ファイバからの光を組織に放射するための領域等の発光領域を有する。加熱プローブは処置領域内へと間質的に挿入可能である。また、加熱プローブは、使用に際して、カテーテル内で循環している流体によって内部で冷却可能である。
【0028】
「間質的に」の用語は、部材又はプローブを組織内へと、例えば処置領域、腫瘍、又は健全な組織内へと挿入することとして定義される。
【0029】
装置は、処置領域を加熱するために光ファイバに接続可能な光源を更に備える。光源は光ファイバに接続して使用する。
【0030】
更に、装置は、少なくとも1つのセンサ領域を有する少なくとも第1の熱センサ部材を備える。第1の熱センサ部材は、加熱プローブ近傍の距離で位置することが可能であり、第1の温度を測定するように構成される。
【0031】
また、装置は、測定された第1の温度に基づき、開示された装置の動作において第1の温度が200℃未満になるように且つ処置領域と周囲組織の間の境界での第2の温度が50~55℃になるように、光源のパワー出力を制御するための制御ユニットを備える。
【0032】
本開示の幾つかの例においては、装置は、少なくとも1つのセンサ領域を有する第2の熱センサ部材を備える。第2の熱センサ部材は、44~48℃の周囲組織の第3の温度をモニタリングするために、処置領域の外側2~7mm、例えば3~6mm、例えば4~5mm、例えば2~5mmの距離で位置することが可能であり、動作時にはそのような距離で位置する。モニタリングされた温度は、処置領域の境界の外側の距離での及び/又は処置領域の境界での温度を安定に維持するために、プローブのパワー出力を制御するフィードバックにおいて用いることができる。これらの温度は腫瘍抗原の凝固・変性を回避するために好ましく、従って抗腫瘍効果を得ることができる。
【0033】
本開示の幾つかの例においては、第2の熱センサ部材は、処置領域の内側2~7mm、例えば3~6mm、例えば4~5mm、例えば2~5mmの距離で位置してよい。処置領域の内側の温度を測定することによって、処置領域と周囲組織の間の境界での第2の温度を計算で推定することができる。
【0034】
幾つかの例においては、処置領域の内側2~7mmでこの温度を測定することによって、処置領域の外側2~7mm、例えば3~6mm、例えば4~5mm、例えば2~5mmの距離での第3の温度を計算することもできる。
【0035】
第2の温度及び/又は第3の温度の推定は、シミュレーション(例えばモンテカルロ法、有限要素法、又は光学特性に基づく光線追跡)、温度勾配の推定、又は当業者に容易に利用可能な他の方法のいずれによって行われてもよい。
【0036】
追加的に及び/又は代替的に、幾つかの例では、第2の熱センサ部材は、互いに離間する複数のセンサを有していてよい。センサ間の距離を知ることによって、測定された複数の温度を用いて温度勾配を計算することができる。
【0037】
複数のセンサを有する第2の熱センサ部材を用いるこの方法は、第1の温度のみを用いて第3の温度を推定するのに十分なほどには光学特性が確立されていない何らかの固形腫瘍に対して有望であろうが、固形腫瘍では、処置を行った後に生存癌細胞が多く存在している危険性のある処置領域の外側に第2の熱センサ部材を置くことが不都合である。第2の熱センサ部材を取り去るときに、生存癌細胞が多少なりとも処置後に温度センサと一緒に引き出されてしまうことがあり、これはいわゆる癌細胞の軌跡播種(track seeding)である。軌跡播種の危険性は、第2の熱センサ部材を処置領域の内側に置くことによって大幅に低下し得る。
【0038】
推定された温度は、処置領域の境界の外側の距離での及び/又は処置領域の境界での温度を安定に維持するために、プローブのパワー出力を制御するフィードバックにおいて用いることができる。これらの温度は腫瘍抗原の凝固・変性を回避するために好ましく、従って抗腫瘍効果を有利に得ることができる。
【0039】
本開示の幾つかの例においては、第1の熱センサ部材は、加熱プローブから5mm未満、例えば2mm、例えば3mmの距離で位置することが可能である。この距離で最も高い温度(highest temperature)に達するであろう。従って、この温度が最高温度(maximal temperature)を超えないようにこの温度を測定し制御することが重要である。
【0040】
本開示の幾つかの例においては、第1の熱センサ部材は、加熱プローブ内に位置する。これを行うことで、第1の熱センサ部材を位置決めする際に腫瘍の過剰な穿刺(punctuation)を回避することができる。
【0041】
本開示の幾つかの例においては、第2の温度及び/又は第3の温度は、推定された温度勾配と第1の温度とに基づく計算によって推定されてよい。これは、乳癌等の光学的特性が十分に確立された固形腫瘍に対して有望であろう。代替案は、第2の温度を計算する際に用いられる勾配を測定するために、2つ以上のセンサ要素を有する第1のセンサを用いることである。これらの計算は、装置の制御ユニットによって行われてよい。
【0042】
代替的に及び/又は追加的に、シミュレーション(例えばモンテカルロ法、有限要素法、又は光学特性に基づく光線追跡)及び第1の温度を用いて温度が推定されてよい。
【0043】
当業者であれば、本開示を読んだ後にそれに従って制御ユニットを組み立て又はプログラムするための一般知識を有しているはずである。
【0044】
本開示の幾つかの例においては、制御ユニットは、第1の温度の所定の最高温度に達した場合に警告を発するように構成される。これにより、患者の安全及び/又は処置効率を有利に最適化することができる。追加的に及び/又は代替的に、本開示の幾つかの例においては、制御ユニットは、第2の温度が所定の目標温度を超えた場合に警告を発するように構成される。これにより、施術者は、処置を制御するためのパラメータを調節することができる。
【0045】
追加的に及び/又は代替的に、本開示の幾つかの例においては、制御ユニットは、第3の温度が所定の目標温度を超えた場合に警告を発するように構成される。これにより、施術者は、処置を制御するためのパラメータを調節することができる。
【0046】
ウォームアップ期間内において、制御ユニットは、所定の規定された時間範囲外に最高温度又は任意の目標温度に達した場合にも警告を発してよい。この警告は、プローブの近くに高すぎる吸収がある可能性がありこれを調節し又は処置を中断する必要があることを示すためのものである。ウォームアップ期間内に第2の温度が得られない場合には、出力パワーが低すぎる可能性があり、あるいは加熱プローブを腫瘍の境界の近くに移動させる必要があろう。
【0047】
本開示の幾つかの例においては、制御ユニットは、ウォームアップ期間の所定の規定された時間範囲外に所定の最高温度及び/又は所定の目標温度に達した場合に光源を非動作にするように構成される。従って、これらの例は、炭化、又は熱プローブの破損に起因する危険性から患者を自動的に保護する。追加的に、所定の最高温度及び/又は所定の目標温度に達した場合に光源を非動作にすることによって、腫瘍抗原の凝固・変性を回避することができる。所定の時間範囲は、好ましくは5~15分の間であってよい。
【0048】
また、処置の間、温度が高すぎる場合には、レーザを自動的にスイッチオフ又は遮断してよい。温度が適切なレベルまで下がったら、レーザを自動的に再びスイッチオンしてよい。
【0049】
本開示の幾つかの例においては、危険性のある臓器に隣接して少なくとも1つの保護用熱センサ部材が位置することが可能である。保護用熱センサ部材により測定した温度を用いて、敏感な領域又は危険性のある臓器への損傷を回避することができる。
【0050】
本開示の幾つかの例においては、装置は、熱センサ部材と熱プローブとを位置決めし保持するためのテンプレートを備える。
【0051】
本開示の幾つかの例においては、発光領域は放射された光を拡散するように構成される。
【0052】
本開示の幾つかの例においては、第1及び第2の熱センサ部材のセンサ領域の少なくとも1つは発光領域の深さで位置することが可能である。
【0053】
本発明の他の側面によると、ここに開示される装置の制御ユニット等のコンピュータによって処理するためのコンピュータプログラムが具現化されたコンピュータ可読媒体が開示される。コンピュータプログラムは複数のコードセグメントを備える。
【0054】
加熱プローブに隣接する第1の熱センサ部材により測定された第1の温度の値及び/又は処置領域の境界の内側若しくは外側の第2の熱センサ部材からの温度を取得するためのコードセグメントが設けられる。
【0055】
処置領域内に間質的に挿入されている加熱プローブに接続された光源のパワー出力をウォームアップ期間内に制御するためのコードセグメントが設けられる。
【0056】
第1の温度が最高温度を超えないように及び/又は第2の温度を目標温度に維持するために及び/又は第3の温度を目標温度に維持するために、パワー出力を処置期間内に制御するためのコードセグメントが設けられる。
【0057】
開示されたコンピュータ可読媒体の幾つかの例においては、ウォームアップ期間の前又は後に最高温度及び/又は目標温度に達した場合に警告を発するための及び/又はパワー出力をスイッチオフするための更なるコードセグメントが記憶される。
【0058】
本開示の更なる側面によると、腫瘍の少なくとも一部を覆う処置領域の温熱療法による坑腫瘍免疫学的応答を得るための方法が開示される。この方法は、動作中においては第1の温度が200℃未満になり、処置領域と周囲組織の間の境界での第2の温度が50~55℃になるように、測定された第1の温度に基づき光源のパワー出力を制御することを備える。
【0059】
本開示の幾つかの例においては、方法は、処置領域内に間質的に挿入された熱プローブによって腫瘍の一部を加熱することを備える。
【0060】
本開示の幾つかの例においては、方法は、加熱プローブ近傍の第1の温度を測定することを備える。
【0061】
開示された方法の1つの例においては、方法は、境界の外側2~7mmの距離での第3の温度を測定することを備える。第3の温度は好ましくは44~48℃である。
【0062】
開示された方法の1つの例においては、方法は、境界の内側2~7mmの距離での温度を測定することと、測定された温度に基づき、境界の外側2~7mmの距離で44~48℃に維持される周囲組織の第3の温度及び/又は境界での第2の温度を推定することと、を備える。
【0063】
本発明の更なる実施形態は特許請求の範囲の種々の従属項において定義され、本発明の第2の側面以降の特徴は、第1の側面に関して変更すべきところは変更するものとする。
【0064】
尚、本明細書で用いられる「備える(comprises/comprising)」の用語は、記載された特徴、完全体、ステップ、又は要素(stated features, integers, steps or components)の存在を特定するために採用されているが、1つ以上の他の特徴、完全体、ステップ、要素又はそれらの組み合わせの存在を除外するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
本開示の種々の例が可能なこれらの及び他の側面、特徴、及び利点は、添付の図面を参照して本発明の種々の例の以下の説明から明らかであり、明らかになるはずである。
【0066】
図1図1は腫瘍の温熱療法による免疫応答を得るための例示的な装置の概略図である。
図2図2は装置の例示的な配置の概略図である。
図3図3A、3B、3C、及び3Dは例示的な処置領域並びに熱プローブ及び熱センサ部材の位置決めの概略図である。
図4図4A及び4Bは熱プローブの例及び熱プローブに関連する熱センサ部材の位置決めの概略図である。
図5図5は熱プローブに関連する複数センサ熱センサ部材の例の概略図である。
図6図6は熱プローブの周囲の組織内の熱分布の例の概略図である。
図7図7は腫瘍の温熱療法による免疫応答を制御するための方法を示すフローチャートである。
図8図8は腫瘍の温熱療法による免疫応答を得るための方法を示すフローチャートである。
図9図9はレーザ出力と熱プローブに隣接した位置及び処置領域の外側での熱との関係の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0067】
添付図面を参照して本開示の具体例を説明する。しかし、本開示は多くの異なる形態において具現化することができ、ここに記載された例に限定されるものと解釈されるべきではなく、むしろ、これらの例は、本開示が詳細且つ完全になるように、また本開示の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。添付図面に記載された種々の例の詳細な説明において用いられる用語は、本開示の限定になるものとは意図されていない。図面において同様の番号は同様の要素を参照する。
【0068】
以下の説明は、腫瘍の少なくとも一部を覆う処置領域の温熱療法を制御するための、装置、方法、及びコンピュータ上で具現化されるコンピュータソフトウェアに適用可能な種々の例に焦点を合わせている。特に、本開示は、腫瘍の少なくとも一部の温熱療法による抗腫瘍免疫学的応答を得るための、装置、方法、及びコンピュータ上で具現化されるコンピュータソフトウェアに関する。しかし、本発明はこの応用に限定されることなく、腫瘍の温熱療法処置の他の領域にも適用され得ることが理解されるはずである。
【0069】
一例において、図1を参照すると、腫瘍の温熱療法による免疫応答を得るための例示的な装置1、即ち免疫刺激レーザ温熱療法のための装置の概略が示されている。
【0070】
図示された装置1は、ディスプレイ等の出力ユニットとキーボード、マウス及び/又はタッチスクリーン等の入力ユニット(図1には図示せず)とを有する主ユニット50を備える。主ユニット50は、レーザ発生器等の熱源のパワー出力を制御及び調節するための制御ユニット51を更に有する。制御ユニットは、ポンプユニット52とレーザ光源等の少なくとも1つのレーザ発生器53とに接続される。代替的に又は追加的に、RF源及びマイクロ波源等の他の熱源が用いられてもよい。
【0071】
ポンプユニット52及びレーザ発生器53は、間質的に挿入可能な加熱プローブ10に接続可能である。加熱プローブ10は、例えば、冷却カテーテル内へと挿入される光ファイバを備える(図1には図示せず)。冷却カテーテルは、ポンプユニット52内のポンプに流体的に接続され、冷却液等の流体が冷却カテーテルのチャネル内外で循環するのを可能にすることで、加熱プローブ10を冷却する。
【0072】
この内部冷却システムの目的は、加熱プローブを冷却して加熱プローブの表面での多大な熱を避けることである。内部冷却システムにより、プローブに損傷を与えプローブを破損させる可能性のあるプローブ上での炭化物生成の危険性を有利に低減し又は回避することができる。
【0073】
加熱プローブ10の先端近傍は、処置領域を加熱するために光ファイバからの光を放射するための発光領域である。加熱プローブ10の動作に際して、処置領域を加熱するために、エネルギ、例えば所定パワーの光が加熱プローブ10の発光領域から放射される。プローブは、好ましくは処置領域に並置され、あるいは少なくとも処置領域に位置する。処置領域は、処置すべき腫瘍の少なくとも一部を覆っていてよい。覆われた腫瘍の一部は、腫瘍を取り囲んでいる健全な組織に隣接する境界を有する。追加的に、加熱プローブは発光領域からの拡散光を放射してよい。拡散光は、光ファイバの遠位端に光拡散器を取り付けることによって得ることができる。
【0074】
図示された例では加熱プローブ10が1つだけ示されているが、処置すべき腫瘍のサイズ及び形状によっては2つ以上の加熱プローブが用いられてもよい。
【0075】
装置1は、加熱プローブ10に加えて、加熱プローブ10の発光領域に近接して温度を測定するための高温プローブ等の第1の熱センサ部材20を含んでいてよい。第1の熱センサ部材20は制御ユニット51に接続される。
【0076】
第1の熱センサ部材20を加熱プローブ10の外側に位置させることに代えて、第1の熱センサ部材20を加熱プローブ10のチャネル内に位置させることもできる。これにより、熱センサ部材20のための別の穿刺箇所を有利に回避することができる。
【0077】
第1の熱センサ部材20の目的は、加熱プローブ10の周囲での腫瘍組織の炭化の危険性を防止し又は最小化することである。用語の「の周囲で(around)」は、「に隣接して(adjacent to)」及び/又は「に並置して(in apposition with)」を意味する。炭化は腫瘍の処置に悪影響を与えあるいは加熱プローブに損傷を与えるので、回避されるべきである。また、組織の炭化は、細菌感染又は膿瘍等の悪影響の危険性を高めることがある。更に、高温は加熱プローブ10の材料にも損傷を与えて加熱プローブ10が破損することがあり、それにより冷却システムの漏れが生じる可能性がある。加熱プローブの破損は、潜在的な毒性効果を伴う処置部位への異物の堆積を招くこともある。これらから引き起こされるであろう影響は、少なくとも第1の熱センサ部材20を設けることにより効果的に回避される。
【0078】
追加的に及び/又は代替的に、幾つかの条件下では、第1の熱センサ部材20によって測定された温度を用いて、処置領域から規定された距離での組織の温度、又は腫瘍の少なくとも一部と周囲の健全な組織の間の境界での温度を推定することができる。これは、温度勾配、例えば温度が1ミリメートルあたりどれだけ変化するかを取得し、コンピュータシミュレーション(即ちモンテカルロ法、有限要素法、又は光学特性に基づく光線追跡)を実行することによって可能である。代替的及び/又は追加的には、幾つかの例では、既知の距離で離間した複数の測定点を有する第1の熱センサ部材を用いて熱勾配を推定することができる。
【0079】
第1の熱センサ部材20に対して追加的に及び/又は代替的に、幾つかの例では、マスタプローブ等の第2の熱センサ部材30が、規定された処置領域の境界の外側数ミリメートルで周囲組織内に位置していてよい。従って、処置領域によって覆われた腫瘍の一部の外側の周囲組織内の温度を制御することで、処置された癌に対する効率的な抗腫瘍免疫学的効果を得ることができる。
【0080】
第1の熱センサ部材及び/又は第2の熱センサ部材に対して追加的に、幾つかの例では、保護用熱センサ部材40として単一の更なる熱センサ部材又は複数のそのような熱センサ部材が用いられてよい。保護用熱センサ部材40は、熱による損傷を回避するための予防措置として、臓器の敏感な領域にごく近接して位置してよい。敏感な領域は、処置領域の内側又は処置領域の外側のいずれであってもよい。
【0081】
第1の熱センサ部材20、第2の熱センサ部材30、及び保護用熱センサ部材40において温度を測定するためのセンサは、例えば、サーミスタ、熱電対、又はファイバブラッググレーティング(fiber bragg gratings)(FBG)であってよい。
【0082】
代替的には、温度を間質的に測定するための穿刺プローブを用いる代わりに、磁気共鳴撮像(MRI)を用いて、間質的に位置させた加熱プローブで腫瘍を加熱しながら温度を測定してもよく、そのような加熱プローブの例としては、レーザ源ベースの光ファイバ等が挙げられる。
【0083】
追加的に及び/又は代替的に、幾つかの例では、熱センサ部材20,30,40は、単一の測定点を有していてよく、あるいは複数点で測定するための複数のセンサを有していてよい。
【0084】
図示された熱センサ部材20,30,40等の与えられたセンサ部材からの測定温度は、例えばフィードバックシステムによりレーザ発生器53のレーザ源のパワーを調節することによってレーザ発生器53のパワー出力を調節するために、制御ユニット51への入力として用いられる。
【0085】
複数の測定点のいずれかでの温度が所定の温度値を超えた場合には、制御ユニット51はレーザ発生器53のパワー出力を低下させてよい。代替的には、制御ユニット51はレーザ発生器53を非動作にしてよい。
【0086】
複数の測定点のいずれかでの温度が所定の温度値未満になった場合には、制御ユニット51はレーザ発生器53のパワー出力を増大させてよい。代替的には、制御ユニット51は、レーザ発生器53が非動作にされていた場合にレーザ発生器53を動作させてよい。
【0087】
所定の温度は単一の最高値又は目標値であってよい。代替的には、所定の温度は上限閾値温度及び下限閾値温度を有する1つの範囲であってよい。
【0088】
出力パワーの調節は、制御ユニット51によって自動的に行われてよい。例えば、制御ユニット51のソフトウェアに実装された制御アルゴリズムによって行われてよい。代替的に及び/又は追加的に、制御ユニット51は、レーザ発生器53のパワー出力を手動で設定し及び/又は調節するよう医療施術者に注意を促す等のための警告を発してよい。
【0089】
第1の熱センサ部材20、即ち高温プローブによって測定された、加熱プローブ10の隣接位置で設定されるべき最高温度は、2つの主要特性に依存する。第1に、加熱プローブ10の材料特性である。所定の最高温度は、熱プローブの破損を回避する値に設定されるべきである。主たる問題は、冷却プローブの材料によっては、プローブが熱により融解し又は弱まることで、加熱プローブ10の破損の原因となることである。別の問題は、加熱プローブ内で循環している流体が気化して膨張する可能性があることである。その結果、内部圧力によりプローブが破損することがある。例えば、冷却カテーテルにおいて何らかのプラスチックが使用されている場合には、温度は170℃、例えば160℃を超えるべきではない一方で、ガラス材料は、より高い温度に晒されることを許容し得る。冷却カテーテル内の流体に関しては、最高温度は、チャネルのサイズ、ポンプ速度、冷却液の熱定数、最大パワー出力、及びレーザで使用される波長での吸収係数等の因子に依存する。最大出力は、レーザ発生器に依存するだけでなく、発光領域のサイズによっても制限される。熱プローブの発光領域の長さは、好ましくは5~30mmである。
【0090】
波長は、照射された組織に適切な吸収が生じて熱を発生する限りにおいて、任意の波長であってよい。好ましくは、その波長は、加熱プローブの近くで高い透過率、即ち低い吸収率を有するべきである。エネルギの吸収率が高すぎると、届けられた熱や温度が加熱プローブの周囲で急速に高まり、処置領域によって覆われた腫瘍の少なくとも一部の境界に十分なエネルギが届かない場合がある。十分なエネルギが届かないと、発生した熱は免疫応答をもたらすことができない。例えば、適切な吸収を伴う波長は、可視領域又は近赤外波長領域、例えば700~1300nmの領域、例えば900~1100nmの領域、例えば1064nmにおいて見出すことができる。また、当業者に知られているように、光の散乱が、どのようにエネルギが組織内で受け渡されるのかに関与することになる。
【0091】
第2に、熱プローブ10の隣接位置での最高温度は、患者に対する危険性を下げる一方で同時に最適な抗腫瘍免疫学的応答等の最適な処置をもたらす値に設定すべきである。最高温度は、温熱療法に際してプローブの周囲の組織を炭化させない値に設定すべきである。また、処置の総時間に応じて、炭化の危険性を最小化するために異なる温度が必要になることがある。熱プローブ10の隣接位置での最高温度に影響する可能性のある他の事項は、腫瘍の形状、腫瘍若しくは規定された処置領域のサイズ、及び/又は組織の光学特性である。
【0092】
医学的観点からは、組織における最高温度を制限することが有利である。冷却された加熱プローブ10の発光領域から約2~5mm離れた位置で最高温度に達するであろう。従って、第1の熱センサ部材20の少なくとも1つのセンサは、好ましくは、この距離の範囲内に位置すべきであり、加熱プローブの発光領域の中ほどの横に位置すべきであり、あるいは発光領域に近い他の位置、例えば先端316に近い位置に位置すべきである。
【0093】
好ましくは、第1の熱センサ部材20によって測定された、加熱プローブ10の隣接位置での最高温度は、例えば組織内で細菌性炎症又は膿瘍を引き起こす可能性のある炭化の危険性を最小化するために、200℃未満に維持されるべきである。同時に、最高温度は、腫瘍の一部の境界での目標温度が達成され得るように、熱プローブ10の隣接位置で十分に高くなければならない。追加的に及び/又は代替的に、最高温度は、処置領域の確立された境界から規定された距離で目標温度を得ることができるように、十分に高くなければならない。この目標温度は、第2の熱センサ部材30によって測定されてよい。
【0094】
好ましくは、目標温度は50~55℃であり、抗腫瘍免疫学的応答を得るために、処置領域により覆われた腫瘍の少なくとも一部の境界で目標温度がもたらされるべきである。温度が低すぎると、処置時間が長くなる。処置時間が長くなると、患者は、危険性及び合併症(complications)に向かう処置に晒されることになろう。多くのタイプの腫瘍に対して、最高温度は、好ましい温度を境界でもたらすことができるように、好ましくは60℃より高い温度であるべきである。好ましくは、熱プローブ10の隣接位置での最高温度は、炭化を最低限に抑え、それにより処置後の患者の回復を改善し、組織の炎症や膿瘍の危険性等の悪影響の危険性を低減するために、200℃未満、例えば170℃未満、例えば160℃未満、例えば150℃未満であるべきである。また、150℃を超えない温度であれば、材料の弱化や冷却液の気化による破損の危険に晒すことなく、加熱プローブ10において多くの材料の使用が可能になる。加熱プローブの破損は、処置部位への異物の堆積を招く可能性もある。また、材料によっては、高温で潜在的な毒性効果がある場合がある。
【0095】
代替的に及び/又は追加的に、加熱プローブの隣接位置での最高温度は、根治処置又は非根治処置(radical or non-radical treatment)のいずれが望まれているのかに応じて、より高い温度又はより低い温度に設定されてよい。根治処置は腫瘍を破壊するためにより高い温度を必要とするであろう一方、非根治処置は腫瘍又はその近くの敏感な領域を破壊することを避けるためにより低い温度を必要とするであろう。
【0096】
腫瘍の少なくとも一部の境界での温度、又は処置領域の境界から一定の距離での温度のモニタリングは、第2の熱センサ部材30によって行われてよい。第2の熱センサ部材30、例えばマスタプローブは、処置領域の確立された境界の外側2~7mm、例えば2~5mmに位置させることができる。距離の選択は、腫瘍及び周囲組織の特性に依存している。第2の熱センサ部材30での目標温度は、局所的根治性(local radicality)及び抗腫瘍免疫学的応答を得るために、44~48℃の範囲内にあってよい。この位置での好ましい温度は、抗腫瘍免疫学的応答を得るためには約46℃である。
【0097】
抗腫瘍免疫学的応答を得ると共に患者に対する危険性を最小限に抑えるためには、目標温度は、20~60分の処置時間の間、安定に維持されるべきである。好ましくは、処置時間は約30分であるべきである。処置時間を開始する前に、目標温度に達している必要がある。このウォームアップ段階の間、腫瘍の少なくとも一部の境界又は第2の熱センサプローブ30で正しい温度が得られるまで、レーザ出力が調節される。目標までの時間は、前述したのと同じパラメータ、例えば最大パワー出力並びに種々の組織及び種々の患者の光学係数に応じて、5~15分、例えば5~10分かかるであろう。
【0098】
第1の熱センサ部材20での所定の最高温度に達しそれを超えるのが早すぎる場合、それは加熱プローブ10の近くでの出血の兆候であり得る。加熱プローブ10の近くでの出血は、最高温度の調節を必要とするであろうし、あるいは処置を中断する必要があるかもしれない。ウォームアップ期間内に第2の熱センサ部材30での目標温度に達しない場合には、第1の熱センサ部材20での最高温度を高める必要があるであろう。代替的には、例えば処置された領域のサイズの設定が大きすぎた場合、処置を中断する必要があるであろう。
【0099】
幾つかの例では、加熱プローブ10の隣接位置での第1の温度の上昇が早すぎることに起因して処置が中断されてしまった場合、あるいは周囲組織において第2の温度に達しない場合、加熱プローブ10及び第1の熱センサ部材20を再度位置決めしてウォームアップを繰り返してよい。
【0100】
追加的に、幾つかの例では、処置領域の内側又は外側の少なくとも1つの敏感な領域を保護するために少なくとも1つの保護用熱センサ部材40が用いられている場合、測定された温度を制御ユニット51へのフィードバックで用いることもできる。従って、出力パワーは、敏感な領域に損傷を与え得る温度を超えないように調節される必要があろう。皮膚表面に近い腫瘍を処置する場合には、皮膚を熱損傷から保護するために、皮膚表面上に保護用熱センサを置いてよい。
【0101】
図2は、温熱療法による抗腫瘍免疫学的応答を得るための装置100の配置の例を示している。主ユニット150は、ディスプレイ160とキーボード又はマウス等の入力ユニット165とを備える。代替的に及び/又は追加的には、ディスプレイ160は、タッチスクリーン等の入力ユニットであってもよい。主ユニット150は、図示しない制御ユニットと、ポンプユニット152と、図示しない光発生器と、を更に備える。主ユニット150には、加熱プローブ110が光ファイバ111を介して接続される。光ファイバ111は、主ユニット150内の光発生器に接続されてよい。更に、加熱プローブ110は、加熱プローブ110内の冷却液をポンピングし循環させるために、2本のチューブ112でポンプユニット152に接続されてよい。加熱プローブ110は、例えば人体器官170内に位置する腫瘍180内へと間質的に挿入可能である。図示された例では、処置領域は腫瘍と同じサイズを有する。
【0102】
加熱プローブ110に隣接して第1の熱センサ部材120が位置している。測定された第1の温度を制御ユニット51へのフィードバックで用いることで、組織の炭化を防止し且つ加熱プローブ110の破損を防止するためにレーザのパワーを調節することができる。追加的に及び/又は代替的に、測定された第1の温度は、加熱プローブ110内で循環している冷却液の冷却を調節するために、制御ユニット51へのフィードバックで用いることができる。
【0103】
追加的に及び/又は代替的に、幾つかの例では、処置領域の境界の外側の周囲組織における第2の温度を測定するために、第2の熱センサ部材130が用いられてよい。測定された第2の温度は、レーザのパワーを調節するために、制御ユニット51へのフィードバックで用いることができる。追加的に及び/又は代替的に、測定された第2の温度は、加熱プローブ110内で循環している冷却液の冷却を調節するために、制御ユニットへのフィードバックで用いることができる。測定された第2の温度は、レーザのパワーを調節して処置の間に正しい温度を維持し、それにより、処置された腫瘍に対する免疫応答を得るために、制御ユニット51へのフィードバックで用いることができる。
【0104】
追加的に及び/又は代替的に、幾つかの臓器内には、熱に晒されるべきではない敏感な領域190が、加熱されている組織内に又はそれに近接して存在することがある。この敏感な領域190を保護するために、敏感な領域190の近くに保護用センサ部材140が位置していてよい。保護用センサ部材140で測定された温度は、レーザのパワーを調節して敏感な領域190での温度を下げるために、制御ユニットへのフィードバックで用いることができる。
【0105】
施術者が加熱プローブ110並びに第1及び/又は第2の熱センサ部材120,130を位置決めするのを支援するために、テンプレートが用いられてよい。テンプレートは、画像ガイダンス、例えば超音波検査を用いて腫瘍が検査されてから提供されてよい。
【0106】
図3A~3Cは、処置領域を確立することによる線量分析計画(dosimetry planning)の種々の例を示している。線量分析計画は、腫瘍サイズ、形状、又は近くの敏感な臓器に応じて変えられてよい。例えば、抗腫瘍免疫学的応答が得られるのと同時に腫瘍全体を破壊する根治処置のために線量分析が計画されてよい。代替的には、処置は非根治であってよく、この場合、腫瘍の一部の組織破壊に加えて抗腫瘍免疫学的応答を得ることができる。代替的には、非根治処置は、最小の組織破壊を伴い又は伴わずに抗腫瘍免疫学的応答のみをもたらしてよい。
【0107】
図3Aは、腫瘍全体が所定の処置領域によって覆われて処置されることを可能にするサイズを有する腫瘍280の断面図を示している。腫瘍全体の処置を可能にするために、腫瘍の直径は、好ましくは6cm未満であり、例えば3cm未満である。従って、処置領域285は、図3Aに示すように、腫瘍のサイズで近似されてよい。処置領域285の腫瘍280の境界への近似は、図3Aに示されるように行われてよく、ここでは腫瘍280の画像の断面のサイズに対して円形又は楕円形のいずれかが合わせられている。この図示においては、この合わせられた形状は腫瘍の境界全体を近似し得るので、腫瘍全体が処置領域によって覆われる。代替的には、腫瘍280は、球体又は3軸楕円体等の3D体積に近似されてよい。更なる代替案では、例えば多項式又はスプライン(splines)を用いて腫瘍の境界に合わせられてよい。
【0108】
近似された処置領域285の内側で熱プローブ210が間質的に挿入される。追加的に、熱プローブに隣接して第1の熱センサ部材220が間質的に挿入されてよい。幾つかの例では、追加的な複数の熱プローブが腫瘍の異なる位置に位置させられてよく、この場合、各プローブは、関連して隣接して位置させられた熱センサ部材を有していてよい。代替的には、より大きな腫瘍を熱処置するために、2つ以上の熱プローブが用いられてよい。
【0109】
第1の熱センサ部材220に対して追加的に及び/又は代替的に、処置領域285の境界の外側2~7mmの距離で、第2の熱センサ部材230が組織内に挿入されてよい。
【0110】
代替的に、幾つかの例では、規定された処置領域285が腫瘍280の確立された境界に一致する境界を有している場合、腫瘍280と周囲組織の境界の外側2~7mmの距離で、第2の熱センサ部材230が組織内に挿入されてよい。
【0111】
図3Bは、腫瘍が大きすぎる、あるいは敏感な領域290が腫瘍280に近すぎるという理由で、腫瘍全体の処置が適切ではないであろう場合の腫瘍280を示す断面図である。このような場合、所定の処置領域は、腫瘍280の一部283のみを覆っていてよい。この場合、境界284は、免疫学的応答が得られる可能性のある場所で確立される必要がある。このことは、図3Bに示されるように行われてよく、ここでは腫瘍の画像の断面に対する適切なサイズに円形又は楕円形のいずれかが合わせられる。図示されるように、処置領域の境界284の一部が腫瘍の境界282の一部に重なっている。免疫学的応答効果をもたらすための条件を最適化するために、処置領域の境界284で近似された腫瘍の境界282は、可能な限り大きくあるべきである。処置領域によって覆われた腫瘍の一部283と抗原の誘発により抗腫瘍免疫学的応答効果が得られる周囲組織との間の腫瘍の境界282の界面内にあることがその理由である。
【0112】
代替的には、処置領域は、球体又は3軸楕円体等の3D体積に近似されてよい。更なる代替案では、例えば多項式又はスプラインを用いて処置領域の境界284を腫瘍の境界282に近似してもよい。
【0113】
敏感な領域290が腫瘍280に近すぎることにより腫瘍全体の処置が適切でない可能性がある場合には、図3Bに示すように、処置領域は、敏感な領域290から十分離れたところで選択することができる。
【0114】
近似された処置領域の内側で熱プローブ210が間質的に挿入される。追加的に、熱プローブに隣接して第1の熱センサ部材220が間質的に挿入されてよい。代替的には、幾つかの例では、追加的な複数の熱プローブが用いられてよく、各プローブは、関連して隣接して位置させられた第1の熱センサ部材を有していてよい。
【0115】
第1の熱センサ部材220に対して追加的に及び/又は代替的に、処置領域の境界284の外側2~7mmの距離で、第2の熱センサ部材230が挿入されてよい。
【0116】
代替的に、幾つかの例では、規定された処置領域が腫瘍部分283の確立された境界282に一致する境界を有している場合、腫瘍部分283の境界282の外側2~7mmの距離で、第2の熱センサ部材230が組織内に挿入されてよい。
【0117】
更なる代替案では、腫瘍のより大きな部分を覆うために、2つ以上の処置領域が規定されてよい。各規定された処置領域は、関連する第1の熱センサ部材及び第2の熱センサ部材に隣接して自身の熱プローブを有する。
【0118】
図3Cは不規則な形状を有する腫瘍280を示している。この例における所定の処置領域287は、根治処置等のために、腫瘍全体を覆うように規定される。免疫学的応答をもたらすための条件を最適化するために、腫瘍の確立された境界は、可能な限り腫瘍の境界が処置領域の境界に重なり又は隣接するように、処置領域の境界で近似される。
【0119】
近似された処置領域の内側で熱プローブ210が間質的に挿入される。追加的に、熱プローブに隣接して第1の熱センサ部材220が間質的に挿入されてよい。代替的には、幾つかの例では、追加的な複数の熱プローブが用いられてよく、各プローブは、関連して隣接して位置させられた第1の熱センサ部材を有していてよい。
【0120】
第1の熱センサ部材220に対して追加的に及び/又は代替的に、処置領域287の境界の外側2~7mmの距離で、第2の熱センサ部材230が挿入されてよい。
【0121】
代替的に、幾つかの例では、規定された処置領域287が腫瘍280の一部の確立された境界に一致する境界を有している場合、腫瘍280の境界の外側2~7mmの距離で、第2の熱センサ部材230が組織内に挿入されてよい。
【0122】
更なる代替案では、腫瘍のより大きな部分を覆うために、2つ以上の処置領域が規定されてよい。各規定された処置領域は、関連する第1の熱センサ部材及び第2の熱センサ部材に隣接して自身の熱プローブを有する。
【0123】
図3A~3Cに示される配置に対して追加的に、処置領域の境界及び/又は腫瘍の境界の外側2~7mmの距離で、2つ以上の第2の熱センサ部材230が異なる位置に挿入されてよい。
【0124】
追加的に、腫瘍又は処置領域の近くにある敏感な領域290の例においては、敏感な領域290の近くに保護用熱センサ部材240が位置してよい。
【0125】
図3Dにおいては、処置体積(treatment volume)286の例は、図示された所定の処置領域に関連している。処置体積286は、第2の熱センサ部材230、即ちマスタプローブのセンサの位置231から加熱プローブ210の発光領域213までの距離と発光領域の長さとによって決定されてよい。
【0126】
幾つかの例では、加熱プローブ210に隣接する第1の熱センサ部材、即ち高温プローブのみが用いられ、処置体積286は、温度が44~48℃の範囲内、好ましくは温度が46℃である処置領域の外側の位置を計算することによって推定されてよい。このことは、第1の熱センサ部材での測定温度との組み合わせにおいて、組織の既知の光学特性を用いるシミュレーション又は計算を用いて行われてよい。このシミュレーション又は計算は、例えばモンテカルロ法、有限要素法、又は光線追跡に基づいていてよい。第1の熱センサ部材が互いに離間した複数のセンサを備えている場合には、これらの測定温度を用いて温度勾配を計算し、温度が44~48℃の範囲内、好ましくは温度が46℃である処置領域の外側の位置を推定することができる。
【0127】
図3A~3Dに示された例に対して代替的に及び/又は追加的に、処置領域の内側2~7mmの距離で第2の熱センサ部材230が位置していてよい。処置領域の内側の温度を測定することによって、処置領域と周囲組織の間の境界での第2の温度を計算により推定することができる。代替的に及び/又は追加的に、幾つかの例では、処置領域の内側2~7mmでの温度を測定することによって、処置領域の外側2~7mmでの第3の温度が計算されてもよい。
【0128】
第2及び/又は第3の温度の推定は、シミュレーション(例えばモンテカルロ法、光線追跡、又は有限要素法)、温度勾配の推定、又は当業者にとって容易に利用可能な他の方法のいずれによって行われてもよい。
【0129】
追加的に及び/又は代替的に、幾つかの例では、第2の熱センサ部材は、互いに離間した複数のセンサを有していてよく、これらの測定温度を用いて温度勾配を計算することができる。
【0130】
第2の熱センサ部材を位置決めするこの方法は、第1の温度のみを用いて第3の温度を推定するのに十分なほどには光学特性が確立されていない何らかの固形腫瘍に対して有望であろうが、固形腫瘍では、処置を行った後に生存癌細胞が多く存在している危険性のある処置領域の外側に第2の熱センサ部材を置く不都合がある。第2の熱センサ部材を取り去るときに、生存癌細胞が多少なりとも処置後に温度センサと一緒に引き出されてしまうことがあり、これはいわゆる癌細胞の軌跡播種(track seeding)である。軌跡播種の危険性は、第2の熱センサ部材を処置領域の内側に置くことによって大幅に低くすることができる。
【0131】
図4Aは加熱プローブ310の遠位端を示している。加熱プローブ310の遠位端は、内管314と外管315とを備えた冷却カテーテル内の中心に位置する光ファイバ312を含み、外管315内では冷却液が外部ポンプによって循環させられている。ファイバ先端は少なくとも1つの発光領域313を有する。発光領域の長さは5~30mmであってよい。追加的に、放射された光のより均一な分布をもたらすために、光ファイバ312は拡散器317を備えていてよい。
【0132】
また、加熱プローブ310の遠位端は、カテーテル先端316を更に備えていてよい。
【0133】
図4Bは、処置領域の腫瘍380内における加熱プローブ310、第1の熱センサ部材320、及び第2の熱センサ部材330のそれぞれの遠位端の位置決めの一例を示している。第1の熱センサ部材320は、加熱プローブ310から距離321だけ離れて位置する。距離321は2~5mmの範囲内にある。追加的に、幾つかの例では、第1の熱センサ部材320のセンサ322の少なくとも1つは、加熱プローブ310の発光領域313の中ほどに位置する。
【0134】
追加的に及び/又は代替的に、第2の熱センサ部材330が用いられる幾つかの例では、第2の熱センサ部材330は、ここでは腫瘍380の境界として図示される処置領域の推定された境界の外側約2~7mm、好ましくは2~5mmの距離331で位置すべきである。
【0135】
図5においては、複数センサプローブである第1の熱センサ部材720の一例が示されている。この例では、第1の熱センサ部材は、センサ部材の間質的に挿入された部分の長さに沿う異なる位置に4つのセンサ722a~722dを有するものとして図示されている。第1の熱センサ720は、腫瘍780内の熱プローブ710に隣接して位置する。この例では、局所出血及び/又は血液貯留790がプローブ先端716の近くに図示されている。多くの場合に、血液は腫瘍よりも高い吸収率を有する。このため、温度は、プローブに損傷を与えあるいは悪影響を及ぼし得る温度まで急速に高まる可能性がある。最も遠位端にあるセンサ要素722dを用いて先端716の近くの温度をモニタリングすることによって、例えばもし血液が存在するのであれば、レーザへのパワーを調節して過剰な加熱を回避することができる。センサ要素は、この位置で、例えば200℃未満、例えば170℃未満、例えば150℃未満の関連する最高温度を有していてよい。幾つかの例では、加熱プローブ710の発光領域713の中ほどの横にあるセンサ要素722bは、例えば140℃未満、例えば130℃未満、例えば120℃未満の異なる関連する最高温度を有していてよい。
【0136】
出血又は血液貯留の存在を示す可能性のある熱の異常な上昇を検出した場合にセンサ要素722bの最高温度を新たな値に調節することによって、加熱プローブ及び組織を過剰な加熱に晒す危険性を低減することができる。これは、2つ以上の熱センサ要素からのフィードバックを用いてレーザのパワー出力を制御することによって可能である。
【0137】
第1の熱センサ720等の複数センサプローブを利用することによって、それを利用しなければ中断せざるを得なかった条件で処置を行うことができる。
【0138】
図6においては、発光領域413を有し内部冷却された加熱プローブ410の周囲の熱プロファイル500が示されている。最高温度506は、加熱プローブ410の外側2~5mmの距離505で近似的に測定される。従って、隣接する第1の熱センサ部材の最適な位置決めは、最高温度ピーク506に近接した位置の周囲である。加熱プローブの特性や腫瘍の光学特性によっては、熱プロファイル500の他の形状が得られることもある。
【0139】
図7は、腫瘍の少なくとも領域部分を覆う処置領域の温熱療法による抗腫瘍免疫学的応答を制御する方法1000のフローチャートである。方法1000におけるそれぞれのステップは、手動で行われてよく、あるいはコンピュータプログラムにおけるコードセグメントとして実装され、これまでに開示された装置の制御ユニット等のコンピュータ又はプロセッサ上で実行されてよい。
【0140】
この例示的な方法のステップは、加熱プローブに隣接する第1の熱センサ部材により測定された第1の温度値及び/又は処置領域の境界の内側若しくは外側の第2の熱センサ部材からの温度を取得すること1001を含む。
【0141】
また、方法1000は、ウォームアップ期間内に、処置領域に間質的に挿入されている加熱プローブに接続された光源のパワー出力を制御すること1002を含む。光源は、これまでに説明した例のいずれであってもよい。
【0142】
組織はウォームアップ期間内にウォームアップされてよい。この期間内に、熱源のパワー出力、例えば加熱プローブに接続されたレーザ発生器のパワー出力が、目標温度に達するまで手動で又は自動的に制御されてよい。目標温度は、処置領域の境界での温度、又は処置領域の境界の外側一定距離での温度、即ち周囲組織内の温度のいずれかであってよい。この目標温度は、加熱プローブに隣接する位置での温度測定値に基づく、組織にもたらされた累積エネルギに基づき計算された値であってよい。
【0143】
処置領域のウォームアップ期間内に、加熱プローブに隣接する位置で測定された温度が所定の最高温度を超えることのないように注意すべきである。この最高温度は、炭化の危険性を低減してプローブを熱による破損から保護することができる値に設定されてよい。
【0144】
ウォームアップを行う1つの方法は、処置領域の境界の外側の位置で又は境界で目標温度に達するまで、出力パワーを連続的に又は離散的ステップで増加させることである。加えて、加熱プローブに隣接する位置での温度は、その最高温度を超えるべきではない。このフィードバックは自動的に又は手動で行われてよい。
【0145】
代替的に、ウォームアップを行う他の方法は、処置領域の境界の外側の位置で又は境界で目標温度に達するまで、出力パワーを連続的に又は離散的ステップで高出力から減少させることである。加えて、加熱プローブに隣接する位置での温度は、その最高温度を超えるべきではない。このフィードバックは自動的に又は手動で行われてよい。
【0146】
ウォームアップ期間に続き、あるいは処置領域が存在するときに、方法は、第1の温度が最高温度を超えないように及び/又は第2の温度を目標温度に維持するために及び/又は第3の温度を目標温度に維持するために、パワー出力を処置期間内に制御すること1003を含む。
【0147】
加熱プローブに隣接する位置での温度をモニタリングすることによって、その温度が、プローブに損傷を与え又はプローブを破損する可能性のある最高温度を超えるのを防止することができる。また、それによって、治癒を長引かせると共に処置中の患者への悪影響を有することのある組織の炭化を防止することができる。
【0148】
追加的に及び/又は代替的に、処置領域の境界での温度又は腫瘍若しくは処置領域の境界の一定距離外側位置での温度をモニタリングすることによって、免疫応答を得る上での成功率を高めることができる。このモニタリングされた温度は装置へのフィードバックの一部になるというのがその理由である。また、これにより、免疫応答を得るために腫瘍の境界で必要な温度の安定性に対する効果もある。
【0149】
追加的に及び/又は代替的に、境界での温度及び/又は境界の一定距離外側位置での温度は、処置領域の内側で測定された温度に基づいて推定されてよい。処置領域の内側で測定されたこの温度は、熱プローブに隣接して位置する熱センサ部材からの温度であってよいが、処置領域の内側に位置する第2の熱センサ部材からの温度であってもよい。
【0150】
加熱プローブに隣接する位置での温度が最高値を超えないように、測定された温度の任意の変化を処置期間内にモニタリングすることが重要である。これは、炭化開始又は光学特性の異常変化の表示であってよい。従って、これに応じてレーザへの出力パワーが調節される必要があろう。追加的に及び/又は代替的に、場合によっては第1の熱センサの最高温度が処置の間に調節される必要があるかもしれない。
【0151】
追加的に、処置領域の境界での温度及び/又は処置領域の境界の外側での温度は、腫瘍に対して最適化された免疫応答の可能性を高める正しいレベルで維持される。追加的に、幾つかの例では、処置領域の境界は、処置領域に覆われた腫瘍部分の推定された境界として規定される。
【0152】
追加的に、幾つかの例では、方法は、ウォームアップ期間外に最高温度及び/又は目標温度に達した場合に警告及び/又はパワー出力のスイッチングを提供することを含む。
【0153】
加熱プローブに隣接した位置での温度が、設定された最高温度を超える等、急速に高まった場合、これは加熱プローブ及び/又は第1の熱センサ部材の周囲での局所出血又は血液貯留の兆しであろう。出血は高い吸収率に起因する問題を引き起こす可能性があり、処置は、加熱プローブを損傷する危険性又は患者への悪影響の危険性により中断される必要があろう。
【0154】
追加的に、予想時間内に処置領域の境界での温度又は処置領域の境界から一定距離外側での目標温度に達しない場合、これは、出力が低すぎること及び/又は加熱プローブに隣接する位置での目標温度の設定が低すぎることを表すであろう。これは患者間での光学的特性のばらつきに起因しているであろう。この場合、加熱プローブに隣接する位置での目標温度を高め及び/又はレーザへの出力パワーを調節する必要があろう。
【0155】
代替案においては、加熱プローブが処置領域の境界により近くなるように再位置決めされる。
【0156】
また、腫瘍の境界での温度又は腫瘍の境界の外側での温度がそれらの目標温度を下回った場合にも、制御ユニットは、警告を発し及び/又は自動的に処置タイマを一時的に止めてよい。タイマは、正しい温度が得られたときに、手動で及び/又は自動的に再度開始してよい。従って、処置期間は実効時間の間続くことになろう。
【0157】
図8は、腫瘍の少なくとも領域部分を覆っている処置領域の温熱療法による抗腫瘍免疫学的応答を得る方法2000のフローチャートである。先ず、腫瘍のサイズ及び形状を確立するために、腫瘍及び周囲組織が検査される必要がある。検査は、超音波、MRI、又は他の適切な画像診断法を用いて行われてよい。
【0158】
方法は、動作において光源に隣接する位置での第1の温度が200℃未満になり且つ処置領域と周囲組織の間の境界での第2の温度が50~55℃になるように、測定された温度値に基づき光源のパワー出力を制御すること2001を含む。
【0159】
追加的に及び/又は代替的に、方法は、処置領域によって覆われた腫瘍の一部を加熱するために、熱プローブを処置領域内に間質的に位置させること2002を含んでいてよい。
【0160】
追加的に及び/又は代替的に、方法は、第1の温度を測定するために、加熱プローブに隣接して第1の熱センサ部材を位置させること2003を含んでいてよい。追加的に及び/又は代替的に、ステップ2002は、44~48℃の周囲組織の第3の温度をモニタリングするために、境界の外側2~7mmの距離で第2の熱センサ部材を位置させることを含んでいてよい。追加的に及び/又は代替的に、ステップ2002は、温度を測定するために、境界の内側2~7mmの距離で第2の熱センサ部材を位置させることを含んでいてよい。第2のプローブが、処置領域により覆われた腫瘍の一部の内側等、処置領域の内側に位置している場合には、境界の外側2~7mmの距離での44~48℃の周囲組織の第3の温度及び/又は境界での50~55℃の第2の温度を推定するために、第3の温度が用いられてよい。
【0161】
追加的に及び/又は代替的に、方法は、加熱プローブに接続された光源のパワー出力をウォームアップ期間内に制御するステップ2003を含んでいてよい。追加的に、制御ステップは、第1の温度が最高温度を超えないように及び/又は第2の温度を目標温度で維持するために、パワー出力を処置期間内に制御することを含んでいてよい。
【0162】
追加的に、少なくとも第2の熱センサ部材が用いられている場合には、制御ステップは、加熱プローブに接続された光源のパワー出力をウォームアップ期間内に制御すること2003を含んでいてよい。また、このステップは、第1の温度が最高温度を超えないように及び/又は第2の温度を目標温度で維持するために及び/又は第3の温度を目標温度で維持するために、パワー出力を処置期間内に制御することを含む。
【0163】
追加的に及び/又は代替的に、方法は、ウォームアップ期間の前又は後に最高温度及び/又は目標温度に達した場合に警告及び/又はパワー出力のスイッチングを提供すること2004を含んでいてよい。
【0164】
ウォームアップ期間内及び処置期間内に、連続光源又はパルス光源を用いて加熱が行われてよい。代替的には、ウォームアップの間の連続光及び処置期間におけるパルス光等、連続光及びパルス光の両方が用いられてもよい。
【0165】
追加的に、幾つかの例では、腫瘍の境界で又は境界の外側でモニタリングされ又は推定された温度が処置期間内に目標値を下回った場合には、制御ユニットは、警告を発し及び/又は自動的に処置タイマを一時的に止めてよい。タイマは、正しい温度が得られたときに、手動で及び/又は自動的に再度開始してよい。従って、処置期間は実効時間の間続くことになろう。
【0166】
追加的に、方法は、装置に関連して既にここに開示された臓器の敏感な領域に隣接して位置する保護用熱センサ部材を用いて温度を測定することを更に含んでいてよい。
【0167】
〔実施例〕
熱プローブの冷却カテーテルが全処置区間(full treatment interval)で損傷なしに必要なレーザレベルに対処可能であることを実証する実験例がインビトロ(in vitro)で行われた。また、カテーテルの近くの温度を検出しこの温度に従ってパワーを調節するためのフィードバックシステムを用いて、カテーテルの破損又は処置された患者への悪影響をもたらす可能性のある炭化を防止し得ることが実証された。
【0168】
テストは、細かく刻まれたウシの筋肉を水浴内で37℃に加熱して行われた。加熱プローブ、加熱プローブから2mmで位置する第1の熱センサ部材、及び加熱プローブから20mmで位置する第2の熱センサ部材が、細かく刻まれた筋肉内に挿入された。加熱プローブの冷却カテーテルは、室温の水で満たされ、20ml/分の流量でポンピングされた。それを実際に押し込むために、パワー効果(power effect)を開始時に最大に設定しそこから低下させた。テストの条件は極端だとみなされ、システムにストレスを与えるために適用された。
【0169】
フィードバック制御は、第2の熱センサ部材で目標温度の46℃に達した場合にレーザ温熱療法が30分間もたらされるように実装された。第2の熱センサ部材での温度が46℃を超えた場合、レーザはオフにされ、温度が46℃未満に戻ったときにレーザはオンにされた(オン・オフ調整)。また、第1の熱センサ部材で温度が150℃を超えた場合、レーザ放射パワーは、モニタリングされた温度が150℃未満になるまで1Wステップで低下させられた。この調整は、必要に応じて、ウォームアップ期間内及び処置の間の両方で行われた。
【0170】
処置セッションは5分間の冷却期間をもって完結した。
【0171】
図9は、実施された1テストの結果のグラフ600を示している。実線601はパワー出力を示し、上側の破線602は第1の熱センサ部材の測定温度を示し、下側の破線603は第2の熱センサ部材の測定温度を示す。第2の熱センサ部材の測定温度が時刻t1で目標温度の46℃に達すると、ウォームアップ期間は終了し、処置期間が開始された。t0とt1の間、第1の熱センサ部材の温度が150℃を超えるたびに出力が下方に調節された。グラフ600を見て明らかなように、パワー出力が下方に調節されると、温度は初めは下がり、次いで上がり始めた。t1の後に処置期間が始まると、レーザのパワー出力は、第2の熱センサ部材、即ちマスタプローブで46℃の安定温度を維持するように調整された。処置期間内においても、出力を調節する必要があろう。例えば、パワー出力における増分であるピーク604は、即座に加熱プローブに隣接する位置での温度の増分、即ちピーク605をもたらした。
【0172】
肉サンプル及びカテーテル先端の検査は、第1の熱センサ部材の部分で最高温度が得られるようにパワーを調節することによって、加熱プローブの損傷を回避し得ることを示している。
【0173】
同様のテスト結果を見ても、150℃の最高温度に達するのに必要な時間は、主として組織の血液含有量に起因して組織の光学特性に顕著に依存して変化し得る結果である。事実、より暗いサンプルが用いられた場合には、ウォームアップの間にたった数秒の後に150℃の温度に達していた。より明るいサンプルを処置して得られたものに関しては、熱拡散は異なる挙動を有していたようであり、第2の熱センサ部材、即ちマスタプローブによって検出された温度の応答は、よりゆっくりになる傾向である。従って、この温度は、処置時間の開始に際して、46℃を越えて数℃上昇する傾向である。1つの解釈では、拡散型加熱プローブの近くでのより強い吸収が、ウォームアップ時間の後に処置された腫瘍の境界に拡散するエネルギのオーバーシュートを生じさせている可能性がある。この現象には血液かん流が大きく影響しているであろうから、この側面はインビボ(in vivo)で調査する必要がある。
【0174】
処置領域の色あいから、冷却システムにより、拡散型ファイバ先端の中心軸から約2mmの距離で最高温度に達していることを観察可能である。このことは、加熱プローブの中心軸から2mmの距離での第1の熱センサ部材、即ち高温プローブの位置決めが、組織が概ね均一であることを条件として、組織内で到達する最も高い温度を検出するのに妥当であることを示している。
【0175】
以上、具体的な実施形態を参照して本発明が説明されてきた。しかし、上述した以外の実施形態もまた、本発明の範囲内で同様に可能である。ハードウェア又はソフトウェアによって方法を行う上述以外の種々の方法ステップが、本発明の範囲内で提供されてよい。本発明の種々の特徴及びステップが、説明された組み合わせ以外の組み合わせにおいて結合されてよい。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0176】
明細書及び特許請求の範囲で用いられる不定冠詞"a"及び"an"は、特段の定めがない限り「少なくとも1つの」を意味するものとして理解されるべきである。明細書及び特許請求の範囲で用いられる語句「及び/又は」は、等位結合する要素、即ちある場合には接続的に存在し他の場合には離接的に存在する要素の「いずれか又は両方」を意味するものとして理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9