(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20221208BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20221208BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20221208BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20221208BHJP
F04D 25/16 20060101ALI20221208BHJP
F04D 25/08 20060101ALI20221208BHJP
F04D 29/28 20060101ALI20221208BHJP
F04D 29/62 20060101ALI20221208BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20221208BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/249
H01M8/04746
H01M8/0438
F04D25/16
F04D25/08 302E
F04D29/28 H
F04D29/62 C
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2020151600
(22)【出願日】2020-09-09
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】矢川 士郎
(72)【発明者】
【氏名】福間 一教
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-134907(JP,A)
【文献】特開2018-075948(JP,A)
【文献】実開昭50-138614(JP,U)
【文献】特開2006-338967(JP,A)
【文献】特許第2745776(JP,B2)
【文献】特開2004-162671(JP,A)
【文献】特開2016-225017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04 - 8/0668
F04D 1/00 - 13/16
F04D 17/00 - 19/02
F04D 21/00 - 25/16
F04D 29/00 - 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対又は複数対の燃料電池スタックと、燃料電池用コンプレッサを備え、前記燃料電池スタックの各々に加圧した流体を供給する燃料電池システムであって、
前記燃料電池用コンプレッサは、
モータ軸を有する電動機と、
前記モータ軸の第1端部に取り付けられ、前記モータ軸の前記第1端部によって駆動される第1コンプレッサと、
前記モータ軸の第2端部に取り付けられ、前記モータ軸の前記第2端部によって駆動される第2コンプレッサと、
を有し、
前記第1コンプレッサは、第1流体供給ラインを介して、対を成す一方の前記燃料電池スタックに接続され、
前記第2コンプレッサは、第2流体供給ラインを介して、対を成す他方の前記燃料電池スタックに接続され、
さらに、前記燃料電池システムは、
前記第1コンプレッサの下流側に設けられ、前記第1コンプレッサから出力された流体の流量を絞る第1圧力調整弁と、
前記第2コンプレッサの下流側に設けられ、前記第2コンプレッサから出力された流体の流量を絞る第2圧力調整弁と、を有
し、
前記燃料電池用コンプレッサは、前記燃料電池スタックに酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給配管に設けられている、
燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池システムであって、前記燃料電池用コンプレッサの前記第1コンプレッサと前記第2コンプレッサは、同一の流量の流体を同一圧力で供給する、
燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1記載の燃料電池システムであって、前記第1コンプレッサ及び前記第2コンプレッサは、インペラを内蔵した遠心ターボ式のコンプレッサであり、前記第1コンプレッサの第1インペラと、前記第2コンプレッサの第2インペラとが互いに逆方向の渦巻形状を有している、
燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の燃料電池システムであって、さらに、
前記第1コンプレッサの下流側に設けられた第1圧力センサと、
前記第2コンプレッサの下流側に設けられた第2圧力センサと、
前記第2圧力調整弁を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記第1圧力センサの検出値と前記第2圧力センサの検出値を比較し、前記第2圧力センサの検出値が前記第1圧力センサの検出値と等しくなるように前記第2圧力調整弁の開度を調節する制御信号を出力する、
燃料電池システム。
【請求項5】
請求項
1~4のいずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記第1コンプレッサは、前記モータ軸に向けて開口し、空気を取り込む第1吸入口を有し、
前記第2コンプレッサは、前記モータ軸に向けて開口し、空気を取り込む第2吸入口を有する、燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に酸化剤ガス、燃料ガス又は冷媒等の流体を供給するための燃料電池用コンプレッサを備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、例えば、高分子イオン交換膜等の電解質膜の両面にアノード電極及びカソード電極を設けた電解質膜・電極構造体(MEA)を備えている。電解質膜・電極構造体は、セパレータ(バイポーラ板ともいう)で挟持されることで発電セルを構成し、さらに、発電セルを所望の数だけ積層して燃料電池スタックを構成する。このような燃料電池スタックは、例えば燃料電池電気自動車に搭載されて用いられる。
【0003】
燃料電池において、アノード電極には燃料ガス(例えば、水素ガス)が供給され、カソード電極には酸化剤ガス(例えば、空気)が供給される。燃料電池の出力を増加させるべく、燃料電池への燃料ガス及び酸化剤ガスの供給には、これらの流体を圧縮して供給する電動機駆動式のコンプレッサが用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、燃料電池にエアを供給するエアコンプレッサと、燃料電池から排出される排気エアで駆動されるタービンとを共通の軸の一端と他端とにそれぞれ設け、その軸を電動機で駆動する燃料電池用コンプレッサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、バスやトラック等の大出力が求められる大型車両では、より大出力の燃料電池システムが求められる。大出力の燃料電池システムを構成する場合には、出力に合わせたサイズの燃料電池スタックを開発するよりも、一定サイズの燃料電池スタックを複数台直列又は並列に接続して構成する方が量産効果に優れ、より低コストで実現できる。この場合には、各々の燃料電池スタックに対して、それぞれ燃料電池用コンプレッサが必要となる。
【0007】
しかし、燃料電池用コンプレッサは、比較的高価な部材であり、燃料電池システムのコストの中で大きな割合を占める。そのため、燃料電池システムのコストを抑制する観点から、複数の燃料電池用コンプレッサを統合することも考えられる。
【0008】
しかし、複数の燃料電池用コンプレッサを統合するためには、大型で大流量の燃料電池用コンプレッサを新規に開発する必要があり、コストが増大すると共に、大型化するという問題がある。
【0009】
そこで本発明は、コストを抑制し、且つ小型化できる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下の開示の一観点は、一対又は複数対の燃料電池スタックと、燃料電池用コンプレッサを備え、前記燃料電池スタックの各々に加圧した流体を供給する燃料電池システムであって、前記燃料電池用コンプレッサは、モータ軸を有する電動機と、前記モータ軸の第1端部に取り付けられ、前記モータ軸の前記第1端部によって駆動される第1コンプレッサと、前記モータ軸の第2端部に取り付けられ、前記モータ軸の前記第2端部によって駆動される第2コンプレッサと、を有し、前記第1コンプレッサは、第1流体供給ラインを介して、対を成す一方の前記燃料電池スタックに接続され、前記第2コンプレッサは、第2流体供給ラインを介して、対を成す他方の前記燃料電池スタックに接続され、さらに、前記燃料電池システムは、前記第1コンプレッサの下流側に設けられ、前記第1コンプレッサから出力された流体の流量を絞る第1圧力調整弁と、前記第2コンプレッサの下流側に設けられ、前記第2コンプレッサから出力された流体の流量を絞る第2圧力調整弁と、を有し、前記燃料電池用コンプレッサは、前記燃料電池スタックに酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給配管に設けられている、燃料電池システムにある。
【発明の効果】
【0011】
上記観点の燃料電池システムによれば、既存の燃料電池用コンプレッサに対して僅かな改修を施すことで、複数の燃料電池用コンプレッサを統合でき、コストを抑制し、小型化しつつ、大出力の燃料電池システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る燃料電池システムの説明図である。
【
図2】
図1の燃料電池用コンプレッサの断面図である。
【
図3】
図3Aは、
図2の軸の一端に設けられたロータの平面図であり、
図3Bは
図2の軸の他端に設けられたロータの平面図である。
【
図4】
図1の燃料電池システムの圧力調整弁の制御装置の構成図である。
【
図5】第2実施形態に係る燃料電池システムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態に係る燃料電池システム10は、燃料電池スタック14を一対(2つ)備えている。各々の燃料電池スタック14には、複数の発電セル12(燃料電池)が積層されている。燃料電池システム10は、さらに、燃料電池スタック14に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給装置16と、燃料電池スタック14に燃料ガスを供給する燃料ガス供給装置18と、燃料電池スタック14に冷却媒体を供給する冷却媒体供給装置20を備える。
【0015】
燃料電池システム10において、一対の燃料電池スタック14は、同一の構成であり、互いに電気的に直列又は並列に接続されている。なお、燃料電池システム10を構成する燃料電池スタック14は、一対(2つ)に限定されるものではなく、二対(4つ)又はそれ以上の数の対であってもよい。以下、燃料電池スタック14について、さらに説明する。
【0016】
燃料電池スタック14の発電セル12は、電解質膜・電極構造体22を第1セパレータ24及び第2セパレータ26で挟持して構成される。第1セパレータ24及び第2セパレータ26は、金属セパレータ又はカーボンセパレータにより構成される。電解質膜・電極構造体22は、例えば、水分を含んだパーフルオロスルホン酸の薄膜である固体高分子電解質膜28を有する。固体高分子電解質膜28は、上記のフッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質を使用することもできる。電解質膜・電極構造体22は、固体高分子電解質膜28のアノード電極30及びカソード電極32とで挟持して構成される。
【0017】
第1セパレータ24は、電解質膜・電極構造体22との間に、アノード電極30に燃料ガスを供給するための燃料ガス流路34を形成する。第2セパレータ26は、電解質膜・電極構造体22との間に、カソード電極32に酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス流路36を設ける。互いに隣接する第1セパレータ24と第2セパレータ26との間には、冷却媒体を流通させるための冷却媒体流路38が設けられる。
【0018】
燃料電池スタック14を構成する一方のエンドプレート40aには、発電セル12の積層方向に連通して形成された、酸化剤ガス入口連通孔42a、酸化剤ガス出口連通孔42b及び冷却媒体入口連通孔44aが開口している。また、燃料電池スタック14を構成する他方のエンドプレート40bには、発電セル12の積層方向に連通して形成された燃料ガス入口連通孔46a、燃料ガス出口連通孔46b及び冷却媒体出口連通孔44bが開口している。
【0019】
酸化剤ガス入口連通孔42a及び酸化剤ガス出口連通孔42bは、酸化剤ガス流路36に連通し、酸素を含む酸化剤ガス(例えば、空気)を流通させる。冷却媒体入口連通孔44a及び冷却媒体出口連通孔44bは、冷却媒体流路38に連通し、冷却媒体を流通させる。燃料ガス入口連通孔46a及び燃料ガス出口連通孔46bは、燃料ガス流路34に連通し、燃料ガス(例えば、水素又は水素含有ガス)を流通させる。
【0020】
次に、燃料電池システム10の酸化剤ガス供給装置16について説明する。酸化剤ガス供給装置16は、一対の燃料電池スタック14の酸化剤ガス入口連通孔42aにそれぞれ連通する第1酸化剤ガス供給配管48a(第1流体供給ライン)及び第2酸化剤ガス供給配管49a(第2流体供給ライン)と、一対の燃料電池スタック14の酸化剤ガス出口連通孔42bにそれぞれ連通する第1酸化剤ガス排出配管48b及び第2酸化剤ガス排出配管49bと、を有する。第1酸化剤ガス供給配管48aの上流側には、第1コンプレッサ50が設けられ、第2酸化剤ガス供給配管49aの上流側には、第2コンプレッサ52が設けられている。
【0021】
第1コンプレッサ50と第2コンプレッサ52とは、部品点数を削減するべく、一体のモジュール部品である燃料電池用コンプレッサ90に含まれている。燃料電池用コンプレッサ90は、
図2に示すように、電動機92を有しており、電動機92の一端と他端とにそれぞれ第1コンプレッサ50及び第2コンプレッサ52が設けられている。
【0022】
図2に示すように、電動機92は、円筒状のモータハウジング94を有している。モータハウジング94の内部には、モータ室95が形成されており、モータ室95の内部には、モータ軸96と、ステータ98と、ロータ99と、複数の軸受100と、が収容されている。このうち、モータ軸96は、モータハウジング94の中心軸に沿って設けられている。モータ軸96は、モータハウジング94を貫通するように延在している。モータ軸96は、軸方向の一方の端部である第1端部96aと、軸方向の他方の端部である第2端部96bとを有する。第1端部96aはモータハウジング94の軸方向の一端から突出している。第2端部96bはモータハウジング94の軸方向の他端から突出している。第1端部96a及び第2端部96bの末端には、ネジ構造96cがそれぞれ形成されている。
【0023】
モータ軸96は、複数の軸受100によって、モータハウジング94に対して回転可能に保持されている。軸受100は、例えば、ボールベアリングで構成されるが、高速回転に対応可能とするべく、例えばエアベアリングによって構成することもできる。モータ軸96は、複数の永久磁石が外周部に配置されたロータ99を有している。モータ軸96は、ステータ98の回転磁界により回転する。
【0024】
モータハウジング94の一端及び他端には、それぞれ仕切板102a、102bが設けられている。仕切板102a、102bにより、モータ室95が仕切られる。モータハウジング94の一端側には第1コンプレッサ50が設けられ、モータハウジング94の他端側には、第2コンプレッサ52が設けられている。
【0025】
第1コンプレッサ50は、コンプレッサハウジング104と、コンプレッサハウジング104内に収容された第1インペラ106とを備えている。コンプレッサハウジング104は、吸入ポート108と、スクロール部116と、出口ポート112とを有している。吸入ポート108は、モータ軸96と同軸に形成されて軸方向の一端側に延び出た漏斗状の部分である。吸入ポート108の奥側に第1インペラ106が配置されている。
【0026】
第1インペラ106を覆う部分のコンプレッサハウジング104には、ディフューザ部114が設けられている。そのディフューザ部114の外周側に、スクロール部116が設けられている。ディフューザ部114は、第1インペラ106から送り出された空気をスクロール部116に導く流路を構成する。スクロール部116は、出口ポート112に連通している。
【0027】
第1インペラ106は、モータ軸96の第1端部96aに固定されており、モータ軸96と一体的に回転する。第1インペラ106は、吸入ポート108から取り込まれたエアを圧縮しつつスクロール部116に送り込むために、複数の羽根107を有している。
図3Aに示すように、第1インペラ106の羽根107は、軸方向から見て渦巻形状に捩じれて形成されている。
【0028】
一方、第2コンプレッサ52は、モータハウジング94の他端側に設けられている。第2コンプレッサ52は、第1コンプレッサ50と同様に構成されており、同一の構成については同一の符号を付して重複する説明は省略する。第2コンプレッサ52には、コンプレッサハウジング104の内部に、第2インペラ106Aが収容されている。
【0029】
図3Bに示すように、第2インペラ106Aの羽根107は軸方向からみて、
図3Aに示す第1インペラ106と逆向きの渦巻形状に捩じれて形成されている。第2インペラ106Aは、渦巻形状の捩じれる方向が逆向きである以外は、第1インペラ106と同一に構成されており、略同一の質量を有している。第1インペラ106及び第2インペラ106Aは、ボルト96dによってモータ軸96に連結されている。
【0030】
図1に示すように、第1コンプレッサ50の下流側には、第1コンプレッサ50の出口ポート112の圧力を検出する第1圧力センサ53が設けられている。また、第2コンプレッサ52の下流側には、第2コンプレッサ52の出口ポート112Aの圧力を検出する第2圧力センサ54が設けられている。
【0031】
また、第1コンプレッサ50の下流側の第1酸化剤ガス供給配管48a、及び第2コンプレッサ52の下流側の第2酸化剤ガス供給配管49aには、それぞれ加湿器58が設けられている。加湿器58は、燃料電池スタック14から排出された空気から水分(水蒸気)を回収し、燃料電池スタック14に供給する空気に水分(水蒸気)を付加する加湿機能を有している。
【0032】
第1酸化剤ガス排出配管48b及び第2酸化剤ガス排出配管49bには、それぞれ圧力調整弁60、62が設けられている。圧力調整弁60、62は、可変絞り弁よりなり、制御装置56の制御下に、その開度を調節することにより、第1酸化剤ガス排出配管48b及び第2酸化剤ガス排出配管49bを通過する酸化剤ガスの流量を絞ることで、燃料電池(発電セル12)の反応面に供給される酸化剤ガスの圧力を調整する。
【0033】
図4に示すように、制御装置56は、例えば、演算増幅器120を備えたフィードバック回路として構成することができる。演算増幅器120の反転入力端子122には、第1圧力センサ53の検出信号が入力され、演算増幅器120の非反転入力端子124には第2圧力センサ54の検出信号が入力される。演算増幅器120の出力端子126は、フィードバックループ128を通じて非反転入力端子124に接続されると共に、駆動回路130に接続される。駆動回路130は、出力端子126の出力電圧に応じた駆動信号を圧力調整弁62に出力する回路である。制御装置56の演算増幅器120は、第1圧力センサ53の検出信号と、第2圧力センサ54の検出信号とが等しくなるように、駆動回路130を制御する。これにより、制御装置56は、第1コンプレッサ50の出口ポート112の圧力と、第2コンプレッサ52の出口ポート112Aの圧力とが等しくなるように、制御動作を行う。
【0034】
燃料電池システム10の出力制御は、第1圧力センサ53が設けられた側の燃料電池スタック14の運転条件の変更で行うことができる。第1圧力センサ53の検出圧力が増減すると、それに応じて制御装置56による圧力調整弁62の開閉制御が行われ、第2圧力センサ54の検出圧力が第1圧力センサ53の検出圧力に追従するように動作する。
【0035】
なお、制御装置56は、上記の構成例に限定されるものではなく、電子計算機を用いて第1圧力センサ53の検出信号と、第2圧力センサ54の検出信号を比較し、これらの差分を打ち消すように圧力調整弁60、62に制御信号を出力するように構成してもよい。
【0036】
次に、燃料電池システム10の燃料ガス供給装置18について説明する。燃料ガス供給装置18は、2つの燃料電池スタック14に対応して2系統設けられている。いずれの燃料ガス供給装置18も同様の構成であるため、共通する構成については同一の符号を付して、重複する部分の説明は省略する。
【0037】
燃料電池スタック14の燃料ガス入口連通孔46aには、燃料ガス供給配管66aが接続され、燃料ガス出口連通孔46bには、燃料ガス排出配管66bが接続されている。2つの燃料電池スタック14に向かう2本の燃料ガス供給配管66aは、上流側は分岐部66cを介して、高圧水素を貯留する水素タンク68に接続されている。分岐部66cの下流側の燃料ガス供給配管66aには、封止弁70及びエゼクタ72が配置されている。
【0038】
エゼクタ72には、水素循環路74が接続されている。水素循環路74は、燃料ガス排出配管66bの途中に接続されており、水素ガスの循環路を形成する。水素循環路74には、水素循環用の水素ポンプ76が配設される。また、燃料ガス排出配管66bの下流には、排出される水素を空気により希釈する希釈器78が設けられている。
【0039】
次に、燃料電池システム10の冷却媒体供給装置20について説明する。冷却媒体供給装置20は、2つの燃料電池スタック14に対応して2系統設けられている。いずれの冷却媒体供給装置20も同様の構成であるため、共通する構成については同一の符号を付して、重複する部分の説明は省略する。
【0040】
冷却媒体供給装置20は、燃料電池スタック14の冷却媒体入口連通孔44aと、冷却媒体出口連通孔44bとに連通し、冷却媒体を循環冷却する冷却媒体循環路80を備える。冷却媒体循環路80には、冷却媒体入口連通孔44aに近接して冷却ポンプ82が設けられると共に、冷却媒体出口連通孔44bに近接してラジエータ84が設けられる。
【0041】
以上のように構成される燃料電池システム10の動作について、以下に説明する。
【0042】
図1に示すように、酸化剤ガス供給装置16の燃料電池用コンプレッサ90を構成する電動機92の回転作用下に、
図2に示すモータ軸96が回転し、第1インペラ106及び第2インペラ106Aが回転する。吸入ポート108から取り込まれた大気中の空気は、第1インペラ106及び第2インペラ106Aの羽根107により圧縮されて、出口ポート112、112Aから送り出される。
図3A及び
図3Bに示すように、第1インペラ106の羽根107と第2インペラ106Aの羽根107とは逆向きの渦巻形状に捩じれて形成されている。これにより、モータ軸96の軸方向に互いに反対方向に作用するスラスト荷重を打ち消すことができるため、モータ軸96の荷重バランスが保たれる。
【0043】
図1に示すように、第1コンプレッサ50及び第2コンプレッサ52から送り出された空気は、それぞれ、第1酸化剤ガス供給配管48a及び第2酸化剤ガス供給配管49aを流れる。この空気は、加湿器58を通って加湿された後、2つの燃料電池スタック14のそれぞれの酸化剤ガス入口連通孔42aに供給される。
【0044】
各々の燃料電池スタック14に導入された空気は、酸化剤ガス入口連通孔42aから第2セパレータ26の酸化剤ガス流路36に導入される。空気は、酸化剤ガス流路36に沿って移動し、電解質膜・電極構造体22のカソード電極32に供給される。一方、水素ガスは、燃料ガス入口連通孔46aから第1セパレータ24の燃料ガス流路34に導入される。水素ガスは、燃料ガス流路34に沿って移動し、電解質膜・電極構造体22のアノード電極30に供給される。
【0045】
したがって、各電解質膜・電極構造体22では、カソード電極32に供給される空気中の酸素と、アノード電極30に供給される水素ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費されて発電が行われる。
【0046】
また、冷却媒体供給装置20では、冷却ポンプ82の作用下に、冷却媒体循環路80から燃料電池スタック14の冷却媒体入口連通孔44aに純水やエチレングリコール、又はオイル等の冷却媒体が供給される。冷却媒体は、冷却媒体流路38に沿って流動し、発電セル12を冷却した後、冷却媒体出口連通孔44bから冷却媒体循環路80に排出される。
【0047】
カソード電極32に供給されて酸素の一部が消費された空気は、酸化剤ガス出口連通孔42bから第1酸化剤ガス排出配管48b及び第2酸化剤ガス排出配管49bに排出される。空気は、加湿器58を通って第1酸化剤ガス供給配管48a及び第2酸化剤ガス供給配管49aから供給される新たな未反応の空気を加湿した後、圧力調整弁60、62を経て排出される。
【0048】
圧力調整弁60、62は、制御装置56の制御の下に、第1コンプレッサ50及び第2コンプレッサ52の吐出圧が同じ圧力となるように調整される。これにより、第1コンプレッサ50及び第2コンプレッサ52の負荷が略同一に保たれ、モータ軸96のスラスト荷重を相殺することができる。
【0049】
アノード電極30で水素の一部が消費された水素ガス(燃料ガス)は、燃料ガス出口連通孔46bから燃料ガス排出配管66bに排出される。燃料ガスは、燃料ガス排出配管66bから水素循環路74に導入され、水素ポンプ76の作用と、エゼクタ72の吸引作用とにより、燃料ガス供給配管66aに戻される。燃料ガス供給配管66aに排出された水素ガスは、必要に応じて、希釈器78の作用下に外部に排出される。
【0050】
以上に説明した本実施形態の燃料電池システム10は、以下の効果を奏する。
【0051】
本実施形態の燃料電池システム10は、一対又は複数対の燃料電池スタック14と、燃料電池用コンプレッサ90を備え、燃料電池スタック14の各々に加圧した流体を供給する燃料電池システム10であって、燃料電池用コンプレッサ90は、モータ軸96を有する電動機92と、モータ軸96の第1端部96aに取り付けられ、モータ軸96の第1端部96aによって駆動される第1コンプレッサ50と、モータ軸96の第2端部96bに取り付けられ、モータ軸96の第2端部96bによって駆動される第2コンプレッサ52と、を有し、第1コンプレッサ50は、第1流体供給ラインを介して、対を成す一方の燃料電池スタック14に接続され、第2コンプレッサ52は、第2流体供給ラインを介して、対を成す他方の燃料電池スタック14に接続されている。
【0052】
上記の構成によれば、1台の燃料電池スタック14を搭載する燃料電池用コンプレッサ90の電動機92の部分を、そのまま転用しつつ、第1コンプレッサ50、第2コンプレッサ52を設けることで、2台の燃料電池スタック14に空気を供給することができる。一般に、燃料電池用コンプレッサ90において、電動機92の部分が最も開発及び製造にコストが掛かる部分となっている。これに対し、上記の構成によれば、電動機92を転用できるため、コストの増加を抑制しつつ、大出力の燃料電池システム10を実現できる。
【0053】
上記の燃料電池システム10において、燃料電池用コンプレッサ90の第1コンプレッサ50と第2コンプレッサ52は、同一流量の流体を同一圧力で供給するように構成されてもよい。この構成によれば、モータ軸96に作用するスラスト荷重をバランスさせることができるため、軸受100の構造を簡素化でき、電動機92を小型化できる。
【0054】
上記の燃料電池システム10において、第1コンプレッサ50及び第2コンプレッサ52は、インペラ106、106Aを内蔵した遠心ターボ式のコンプレッサであり、第1コンプレッサ50の第1インペラ106と、第2コンプレッサ52の第2インペラ106Aとが互いに逆方向の渦巻形状を有してもよい。これにより、第1インペラ106と第2インペラ106Aとのスラスト荷重をバランスさせることが容易となる。
【0055】
上記の燃料電池システム10において、さらに、第1コンプレッサ50の下流側に設けられた第1圧力センサ53と、第2コンプレッサ52の下流側に設けられた第2圧力センサ54と、第2圧力センサ54の下流側に設けられ、第2コンプレッサ52から出力された流体の流量を絞る圧力調整弁62と、圧力調整弁62を制御する制御装置56と、を備え、制御装置56は、第1圧力センサ53の検出値と第2圧力センサ54の検出値とを比較し、第2圧力センサ54の検出値が第1圧力センサ53の検出値と等しくなるように圧力調整弁62の開度を調節する制御信号を出力するように構成してもよい。
【0056】
上記の構成によれば、第1コンプレッサ50の負荷と、第2コンプレッサ52の負荷とを略同じ条件とすることができ、モータ軸96に作用するスラストをバランスした状態に保つことができる。
【0057】
上記の燃料電池システム10において、燃料電池用コンプレッサ90は、燃料電池スタック14に酸化剤ガス(空気)を供給する第1酸化剤ガス供給配管48a及び第2酸化剤ガス供給配管49aに設けられていてもよい。
【0058】
(第2実施形態)
図5に示すように、本実施形態の燃料電池システム10Aは、冷却媒体供給装置20の冷却ポンプ82A及び燃料ガス供給装置18の水素ポンプ76Aにおいて、
図1の燃料電池システム10(第1実施形態)と異なる。なお、本実施形態の燃料電池システム10Aにおいて、
図1の燃料電池システム10と同様の構成については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0059】
図1の燃料電池システム10では、対を成す一方の燃料電池スタック14の水素循環路74と、他方の燃料電池スタック14の水素循環路74とにそれぞれ独立した水素ポンプ76が設けられていた。これに対し、
図5に示すように、本実施形態の燃料電池システム10Aにおいては、2つの水素ポンプ76が1つの水素ポンプ76Aに統合されている。水素ポンプ76Aは、電動機138と、第1水素コンプレッサ142と、第2水素コンプレッサ144とを備えている。水素ポンプ76Aは、
図2に示す燃料電池用コンプレッサ90と同様の構造を有する遠心ターボ式のコンプレッサよりなる。第1水素コンプレッサ142と第2水素コンプレッサ144とは、共通の軸である、電動機138のモータ軸の一端と他端とに取り付けられており、電動機138の回転作用下に駆動する。
【0060】
また、本実施形態の燃料電池システム10Aにおいて、一対の燃料電池スタック14に対して、共通の冷却ポンプ82Aが設けられている。冷却ポンプ82Aは、電動機132と、第1冷却ポンプ134と第2冷却ポンプ136とを備えている。第1冷却ポンプ134及び第2冷却ポンプ136は、電動機132のモータ軸の一端と他端とにそれぞれ接続されており、電動機132の回転作用下に動作するように構成されている。
【0061】
以上のように、本実施形態の燃料電池システム10Aでは、燃料電池用コンプレッサ90を、水素循環路74に設けられた水素循環用の水素ポンプ76Aに用いている。これにより、水素ポンプ76の数を減らすことができ、低コストに複数の燃料電池スタック14を備えた燃料電池システム10Aを構成できる。
【0062】
また、上記の燃料電池システム10Aは、燃料電池用コンプレッサ90は、冷却媒体循環路80の冷却ポンプ82Aに用いている。これにより、冷却ポンプ82の数を減らすことができ、低コストに燃料電池スタック14を備えた燃料電池システム10Aを構成できる。
【0063】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0064】
10、10A…燃料電池システム 14…燃料電池スタック
50、52…コンプレッサ 53、54…圧力センサ
56…制御装置 60、62…圧力調整弁
74…水素循環路 76、76A…水素ポンプ
80…冷却媒体循環路 82、82A…冷却ポンプ
90…燃料電池用コンプレッサ 92、132、138…電動機
94…モータハウジング 96…モータ軸
106、106A…インペラ 107…羽根