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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20221208BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20221208BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20221208BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20221208BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20221208BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20221208BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20221208BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20221208BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20221208BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20221208BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M10/052
H01M10/058
H01M4/40
H01M4/38 Z
H01M4/587
H01M4/58
H01M4/485
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020210084
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2021106147
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2020-12-18
(31)【優先権主張番号】62/949,934
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】108148529
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】張 志清
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 偉新
(72)【発明者】
【氏名】趙 崇翔
(72)【発明者】
【氏名】李 俊龍
(72)【発明者】
【氏名】方 家振
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-234988(JP,A)
【文献】特開2017-117792(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0183055(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05- 10/39
H01M 4/00- 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活性層を含む正極と
負極であって、負極活性層および前記負極活性層上に配置された改質層を含み、かつ前記改質層が金属フッ化物およびリチウム含有化合物を含む、負極と、
前記正極と前記負極との間に配置された固体電解質膜であって、第1の多孔質層、電解質層、および第2の多孔質層を含み、前記電解質層が前記第1の多孔質層と第2の多孔質層との間に配置されている、固体電解質膜と、
を含み、
前記金属フッ化物が、フッ化銅、フッ化亜鉛、フッ化ニッケル、フッ化チタン、フッ化アルミニウム、フッ化ケイ素またはこれらの組み合わせである電池。
【請求項2】
前記金属フッ化物と前記リチウム含有化合物との重量比が1:1から1:10である、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記リチウム含有化合物が、硝酸リチウム、リチウムトリフルオロカーボネート、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、過塩素酸リチウム、チオシアン酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、またはこれらの組み合わせである、請求項1~2のうちいずれか1項に記載の電池。
【請求項4】
前記改質層がイミド化合物をさらに含む、請求項1~3のうちいずれか1項に記載の電池。
【請求項5】
前記イミド化合物がスクシンイミド、フタルイミド、グルタルイミド、マレイミド、またはこれらの組み合わせである、請求項4に記載の電池。
【請求項6】
前記改質層の重量に対し、前記イミド化合物が10wt%から50wt%である、請求項4および5のうちいずれか1項に記載の電池。
【請求項7】
前記改質層の厚さが1μmから10μmである、請求項1~6のうちいずれか1項に記載の電池。
【請求項8】
前記第1の多孔質層の気孔率が10vol%から90vol%であり、前記第2の多孔質層が10vol%から90vol%である、請求項1~7のうちいずれか1項に記載の電池。
【請求項9】
前記固体電解質膜の厚さが1μmから200μmである、請求項1~8のうちいずれか1項に記載の電池。
【請求項10】
前記電解質層の厚さと前記固体電解質膜の厚さとの比が1:5から4:5である、請求項1~9のうちいずれか1項に記載の電池。
【請求項11】
前記第1の多孔質層がポリマーおよび複数の孔を含み、かつ前記第2の多孔質層がポリマーおよび複数の孔を含み、前記第1の多孔質層の前記ポリマーおよび前記第2の多孔質層の前記ポリマーが独立に、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリビニルクロリド(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、またはこれらの組み合わせである、請求項1~10のうちいずれか1項に記載の電池。
【請求項12】
前記電解質層が第1の組成物から形成され、前記第1の組成物が、
(A)100重量部の酸化物系固体無機電解質と
(B)20から70重量部のLi[R2(-OR1n-OR2]Y(式中、R1はC1-4アルキレン基、R2はC1-4アルキル基、nは2から100、YはPF6 -、BF4 -、AsF6 -、SbF6 -、ClO4 -、AlCl4 -、GaCl4 -、NO3 -、C(SOCF33 -、N(SO2CF32 -、SCN-、O3SCF2CF3 -、C65SO3 -、O2CCF3 -、SO3-、B(C654 -、CF3SO3 -、またはこれらの組み合わせである)と、
(C)1から10重量部のナノ酸化物と、
(D)1から20重量部のバインダーと、
を含む、請求項1~11のうちいずれか1項に記載の電池。
【請求項13】
第2の組成物が前記第1の多孔質層および前記第2の多孔質層の前記複数の孔内に配置され、前記第2の組成物は、前記第1の組成物に与えられたのと同じ定義を有する、請求項12に記載の電池。
【請求項14】
前記第1の多孔質層が第1の層および第2の層からなり、前記第2の多孔質層が第3の層および第4の層からなり、前記第2の組成物は前記第2の層および前記第3の層の孔内に配置され、前記第2の組成物は前記第1の層および前記第4の層の孔内には配置されず、前記固体電解質膜は、前記負極から前記正極の方向に、前記第1の層、前記第2の層、前記電解質層、前記第3の層、および前記第4の層をこの順で含む、請求項13に記載の電池。
【請求項15】
前記第1の層と前記第2の層の厚さの比が1:9から9:1であり、前記第3の層と前記第4の層の厚さの比が1:9から9:1である、請求項14に記載の電池。
【請求項16】
前記負極活性層が負極活物質を含み、前記負極活物質には、リチウム、リチウム合金、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン、コークス、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、炭素繊維、ガラス状炭素、リチウム含有化合物、ケイ素、ケイ素系合金、スズ、スズ系合金、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項1~15のうちいずれか1項に記載の電池。
【請求項17】
前記正極活性層が正極活物質を含み、前記正極活物質には、元素硫黄、有機硫化物、硫黄炭素(sulfur carbon)複合体、金属含有リチウム酸化物、金属含有リチウム硫化物、金属含有リチウムセレン化物、金属含有リチウムテルル化物、金属含有リチウムリン化物、金属含有リチウムリンケイ化物、金属含有リチウムホウ化物、またはこれらの組み合わせが含まれ、前記金属が、アルミニウム、バナジウム、チタン、クロム、銅、モリブデン、ニオブ、鉄、ニッケル、コバルト、およびマンガンからなる群より選ばれる、請求項1~16のうちいずれか1項に記載の電池。
【請求項18】
前記固体電解質膜と前記正極との間に配置されたセパレータをさらに含む請求項1~17のうちいずれか1項に記載の電池。
【請求項19】
前記負極と前記正極との間に配置された電解液をさらに含む請求項1~18のうちいずれか1項に記載の電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電池に関し、特にリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液体電解質リチウムイオン電池では、その低い質量エネルギー密度および限られたサイクル寿命のために、ユニット当たりのエネルギー貯蔵コストが高い。しかし、電池のエネルギー密度の一面的な増加は、電気化学的電池において一連の安全性の問題、例えば、液漏れ、電池膨張、発熱、発煙、燃焼、爆発および類似の問題を容易に引き起こし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第20110262836号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リチウム二次電池に用いられる液体電解質は、正極の高い作動電圧の要求を満たさなければならないだけでなく、リチウム金属に対して高い還元性も示すものでなくてはならない。しかしながら、従来の液体電解質は、上述した目的を達成することができない。また、無機系固体電解質および有機系固体電解質も、高い界面抵抗、高い製造難易度、低いイオン伝導性、および不十分な機械強度といった欠点を有する。さらに、リチウム金属は、リチウム金属が固体電解質と接触するときに、固体電解質の質の変化を生じさせる可能性があり、よって電池のパフォーマンスが低下し得る。
【0005】
したがって、上述の問題を解決し、寿命を長くすると共に電池パフォーマンスを高めるために、電池の新規な設計および構造が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、電池、例えばリチウム二次電池を提供する。本開示の実施形態によれば、電池は、正極、負極、および正極と負極との間に配置された固体電解質膜を含む。正極は正極活性層を含む。負極は負極活性層と、負極活性層上に配置された改質層とを含み、改質層は金属フッ化物およびリチウム含有化合物を含んでいる。固体電解質膜は第1の多孔質層、電解質層および第2の多孔質層を含み、電解質層は第1の多孔質層と第2の多孔質層との間に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示は電池、例えばリチウム二次電池を提供する。本開示の実施形態によれば、電池は正極、負極、および正極と負極との間に配置された固体電解質膜を含む。固体電解質膜の特有の構造設計(つまり、第1の多孔質層、電解質層、および第2の多孔質層からなる積層構造)により、固体電解質膜の寸法安定性、熱安定性、イオン伝導性および機械強度を高めることができると共に、固体電解質膜の抵抗を低減させることができる。よって、固体電解質膜は、リチウム二次電池の負極(例えば還元性の高い負極)および正極(例えば作動電圧の高い正極)と共に用いるのに適している。さらに、本開示の負極は、負極の活性層表面に配置された改質層を含み、この改質層は、リチウムイオン移動度を高めると共に、固体電解質膜と負極活性層とが直接接触することにより引き起こされる電池パフォーマンスの低下を回避させることができる。したがって、固体電解質膜および改質層の組み合わせによって、電池の安定性、エネルギー密度および使用上の安全性が改善され、かつ電池の寿命サイクルが延長され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
添付の図面を参照にしながら、以下の実施形態において詳細な説明を行う。
図1】本開示の実施形態による電池を示す概略図である。
図2図1に示される電池の固体電解質膜の領域2の近接概略図である。
図3】本開示のいくつかの実施形態による電池を示す概略図である。
図4】本開示のいくつかの実施形態による固体電解質膜を示す概略図である。
図5図4に示される電池の固体電解質膜の領域5の近接概略図である。
図6図4に示される電池の固体電解質膜の領域5の近接概略図である。
図7】本開示のいくつかの実施形態による固体電解質膜を示す概略図である。
図8】複合膜(LLZOGS)および固体電解質膜(ML-LLZOGS)の動的機械測定解析(dynamic mechanical measurement analysis)の結果をプロットしたグラフである。
図9】実施例1に開示された電池の充放電曲線をプロットしたグラフである。
図10】実施例2~4および比較例1に開示された電池の抵抗曲線をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の電池が以下の記載において詳細に説明される。以下の詳細な記載では、説明の目的で、本開示が十分理解されるように多数の特定の詳細および実施形態が示される。以下の詳細な記載に記述された特定の構成要素および配置が、本開示を明確に説明するために示される。しかしながら、ここに示された例示的な実施形態は単に説明の目的で用いられているにすぎず、本発明概念は、それら例示的実施形態に限定されることなく、様々な形式で具体化できるということは、明らかであろう。さらに、本開示を明確に説明するため、異なる実施形態の図では、類似および/または対応する構成要素を示すのに、類似および/または対応する符号を用いることがある。しかし、異なる実施形態の図における類似および/または対応する符号の使用は、異なる実施形態間のいかなる相関関係をも意味しない。本明細書において用いられる場合、量に関する用語における「約」という用語は、当業者にとって一般的かつ合理的な量を増減させることを指す。
【0010】
本開示の図面における素子またはデバイスは、当業者にとって既知である任意の形式または構成で存在し得るということに留意しなければならない。加えて、「別の層を覆っている層」、「層が別の層の上側に配置されている」、「層が別の層上に配置されている」、および「層が別の層の上方に配置されている」といった表現は、他の層と直接接触する層に言及し得ると共に、他の層と直接接触しない層であって、当該層と他の層との間に1つまたはそれ以上の中間層がある場合にも言及し得る。
【0011】
描かれる図は概略にすぎず、かつ限定的なものではない。図面においては、説明のため、構成要素のうちいくつかのサイズ、形状、または厚さは誇張されており、縮尺で描かれていないことがある。寸法および相対寸法は、本開示を実施する実際の位置に対応していない。本開示は、特定の実施形態について、特定の図面を参照にしながら説明されるが、本開示はこれらに限定はされない。
【0012】
また、構成要素を修飾するための本開示における順序を示す用語、例えば「第1」、「第2」、「第3」などの使用はそれ自体、1つのクレームの構成要素の他に対する何らかの優先、先行、もしくは順序、またはそれが形成される時間的順序を示唆するものではなく、ただ単に、特定の名称を有する1つのクレームの構成要素を、同じ名称を有する構成要素と区別するための標識として用いて(ただし、順序を示す用語の使用のため)、クレームの構成要素同士を区別するものに過ぎない。
【0013】
本開示の実施形態によれば、本開示の電池は、正極、負極、および正極と負極との間に配置された固体電解質膜を含む。正極は正極活性層を含む。負極は負極活性層と、負極活性層上に配置された改質層とを含み、改質層は金属フッ化物およびリチウム含有化合物を含んでいる。固体電解質膜は第1の多孔質層、電解質層、および第2の多孔質層を含み、電解質層は第1の多孔質層と第2の多孔質層との間に配置されている。
【0014】
図1は、本開示の実施形態による電池100を示す概略図である。図1に示されるように、電池100は、負極10、正極40、および固体電解質膜20を含み、負極10と正極40とは固体電解質膜20により隔てられている。負極10は負極活性層12および改質層14を含んでいてよく、改質層14は負極活性層12上に配置される。負極活性層12は負極活物質を含み、負極活物質には、リチウム、リチウム合金(例えばLiAl、LiMg、LiZn、Li4.4Pb、Li4.4Sn)、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン、コークス、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、炭素繊維、ガラス状炭素、リチウム含有化合物(例えば、LiTi12、LiBi、LiCd、LiSb、LiSi、LiC、LiFeN、Li2.6Co0.4N、もしくはLi2.6Cu0.4N)、ケイ素系合金、スズ、スズ系合金、またはこれらの組み合わせが含まれる。本開示の実施形態によれば、負極活性層12は負極集電層(図示せず)をさらに含んでいてよく、負極活物質は負極集電層上に配置されるか、または負極集電層内に配置される。本開示の実施形態によれば、負極集電層には金属箔、例えばアルミニウム箔または銅箔が含まれ得る。正極40は正極活性層であってよく、正極活性層は正極活物質を含む。本開示の実施形態によれば、正極活物質には、元素硫黄(elementary sulfur)、有機硫化物、硫黄炭素(sulfur carbon)複合体、金属含有リチウム酸化物、金属含有リチウム硫化物、金属含有リチウムセレン化物、金属含有リチウムテルル化物、金属含有リチウムリン化物、金属含有リチウムリンケイ化物、金属含有リチウムホウ化物、またはこれらの組み合わせが含まれる。具体的には、金属は、アルミニウム、バナジウム、チタン、クロム、銅、モリブデン、ニオブ、鉄、ニッケル、コバルト、およびマンガンの群から選択されるものである。本開示の実施形態によれば、正極活物質は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)、リチウムマンガン酸化物(LiMn)、リチウムマンガンコバルト酸化物(LiMnCoO)、リチウムコバルトニッケルマンガン酸化物(LiCo0.3Ni0.3Mn0.3O)、リチウムコバルトホスフェート(LiCoPO)、リチウムンマンガンクロム酸化物(LiMnCrO)、リチウムニッケルバナジウム酸化物(LiNiVO)、リチウムマンガンニッケル酸化物(LiMn1.5Ni0.5)、リチウムコバルトバナジウム酸化物(LiCoVO)、またはこれらの組み合わせであり得る。本開示の実施形態によれば、正極活性層は正極集電層(図示せず)をさらに含んでいてよく、正極活物質は正極集電層上に配置されるか、または正極集電層内に配置される。本開示の実施形態によれば、正極集電層には金属箔、例えばアルミニウム箔または銅箔が含まれ得る。
【0015】
本開示の実施形態によれば、負極は負極活性層および改質層からなるものであってよい。本開示の実施形態によれば、負極活性層は負極活物質からなるものであってよい。本開示のいくつかの実施形態によれば、負極活性層は負極活物質および負極集電層からなるものであってよい。
【0016】
図1に示されるように、本開示の実施形態によれば、改質層14は固体電解質膜20と負極活性層12との間に配置され、これにより、固体電解質膜20と負極活性層12とが直接接触することにより引き起こされる電池パフォーマンスの低下が回避される。加えて、改質層14は、固体電解質膜20と負極10との間の界面適合性(interfacial compatibility)、およびイオン伝導性を高めることができると共に、電池の安定性、使用上の安全性、および寿命サイクルを向上させることができる。
【0017】
本開示の実施形態によれば、改質層の厚さは約1μmから10μm、例えば3μmであってよい。改質層の厚さが大きすぎると、高い界面インピーダンスにより充放電パフォーマンスが低下してしまう。改質層の厚さが小さすぎると、固体電解質膜20と負極10との間の界面適合性および負極10の表面安定性が改善され得ない。本開示の実施形態によれば、改質層は金属フッ化物およびリチウム含有化合物を含んでいてよく、金属フッ化物とリチウム含有化合物との重量比は約1:1から1:10、例えば1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、または1:9である。本開示の実施形態によれば、金属フッ化物は、フッ化銅、フッ化亜鉛、フッ化ニッケル、フッ化チタン、フッ化アルミニウム、フッ化ケイ素またはこれらの組み合わせであってよい。本開示の実施形態によれば、改質層に用いられるリチウム含有化合物は、硝酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、過塩素酸リチウム、チオシアン酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(lithium hexafluoroarsenate)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0018】
本開示の実施形態によれば、改質層は、改質層の抵抗をより低減すると共に、固体電解質界面(solid electrolyte interphase)の安定性を高めるために、イミド化合物をさらに含んでいてよく、これにより電池の寿命サイクルが延長される。本開示の実施形態によれば、イミド化合物はスクシンイミド化合物、フタルイミド化合物、グルタルイミド化合物、マレイミド化合物、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0019】
本開示の実施形態によれば、マレイミド化合物には、マレイミド、ビスマレイミド、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。マレイミドは、式(I)または式(II)で表される構造を有していてよい:
【0020】
【化1】
【0021】
式中、RはC1-8アルキル基、-RNH、-C(O)CH、-CHOCH、-CHS(O)CH、-C、-CH(C)CH、フェニレン、ジフェニレン、脂環族類(cycloaliphatics)、またはシラン置換芳香族類であり;YはH、C1-8アルキル基、-S(O)-R、-CONH、または-C(CFであり;Rは独立にH、F、Cl、Br、HSO、SO、またはC1-8アルキル基であり;RはC1-8アルキレン基であり;かつ、RはC1-8アルキル基である。本開示の実施形態によれば、マレイミドは、マレイミドフェニルメタン(maleimide-phenylmethane)、フェニルマレイミド(phenyl-maleimide)、メチルフェニルマレイミド(methylphenyl maleimide)、ジメチルフェニルマレイミド(dimethylphenyl-maleimide)、エチレンマレイミド(ethylenemaleimide)、チオマレイミド(thio-maleimid)、ケトンマレイミド(ketone-maleimid)、メチレンマレインミド(methylene-maleinimid)、マレインイミドメチルエーテル(maleinimidomethylether)、マレイミドエタンジオール(maleimido-ethandiol)、4-フェニルエーテルマレイミド(4-phenylether-maleimid)、4-マレイミドフェニルスルホン(4-maleimido-phenylsulfone)またはこれらの組み合わせであってよい。
【0022】
本開示の実施形態によれば、ビスマレイミドは式(III)または式(IV)で表される構造を有していてよい:
【0023】
【化2】
【0024】
式中、RはC1-8アルキレン基、-RNHR-、-C(O)CH-、-CHOCH-、-C(O)-、-O-、-O-O-、-S-、-S-S-、-S(O)-、-CHS(O)CH-、-(O)S(O)-、-C-、-CH(C)CH-、-CH(C)(O)-、フェニレン、ジフェニレン、置換フェニレン、または置換ジフェニレンであり;RはC1-8アルキレン基、-C(O)-、-C(CH-、-O-、-O-O-、-S-、-S-S-、-(O)S(O)-、または-S(O)-であり;かつ、RはC1-8アルキレン基である。本開示の実施形態によれば、ビスマレイミドは、N,N’-ビスマレイミド-4,4’-ジフェニルメタン(N,N’-bismaleimide-4,4’-diphenylmethane)、[1,1’-(メチレンジ-4,1-フェニレン)ビスマレイミド]([1,1’-(methylenedi-4,1-phenylene)bismaleimide])、[N,N’-(1,1’-ビフェニル-4,4’-ジイル)ビスマレイミド]([N,N’-(1,1’-biphenyl-4,4’-diyl) bismaleimide])、[N,N’-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビスマレイミド]([N,N’-(4-methyl-1,3-phenylene)bismaleimide])、[1,1’-(3,3’ジメチル-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジイル)ビスマレイミド]([1,1’-(3,3’dimethyl-1,1’-biphenyl-4,4’-diyl)bismaleimide])、N,N’-エチレンジマレイミド(N,N’-ethylenedimaleimide)、[N,N’-(1,2-フェニレン)ジマレイミド]([N,N’-(1,2-phenylene)dimaleimide])、[N,N’-(1,3-フェニレン)ジマレイミド]([N,N’-(1,3-phenylene)dimaleimide])、N,N’-チオジマレイミド(N,N’-thiodimaleimide)、N,N’-ジチオジマレイミド(N,N’-dithiodimaleimide)、N,N’-ケトンジマレイミド(N,N’-ketonedimaleimide)、N,N’-メチレン-ビス-マレインイミド(N,N’-methylene-bis-maleinimide)、ビス-マレインイミドメチル-エーテル(bis-maleinimidomethyl-ether)、[1,2-ビス-(マレイミド)-1,2-エタンジオール]([1,2-bis-(maleimido)-1,2-ethandiol])、N,N’-4,4’-ジフェニルエーテル-ビス-マレイミド(N,N’-4,4’-diphenylether-bis-maleimid)、[4,4’-ビス(マレイミド)-ジフェニルスルホン]([4, 4’-bis(maleimido)-diphenylsulfone])、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0025】
本開示の実施形態によれば、改質層の重量に対し、イミド化合物の含有量は、約10wt%から50wt%、例えば15wt%、20wt%、25wt%、30wt%、35wt%、40wt%、または45wt%とすることができる。イミド化合物の量が少なすぎると、改質層の抵抗および固体電解質界面の安定性をより一層改善させることができなくなる。イミド化合物の量が多すぎると、固体電解質膜20と負極10との間の界面適合性およびイオン伝導性が改善され得ない。
【0026】
本開示の実施形態によれば、改質層14は金属フッ化物、リチウム含有化合物、およびイミド化合物からなるものであってよい。本開示の実施形態によれば、改質層14と負極活性層12との間の接着強度を高めるため、改質層14はバインダーをさらに含んでいてよく、バインダーは金属フッ化物、リチウム含有化合物、およびイミド化合物と均一に混合される。バインダーの量は限定されず、改質層14が負極活性層12が剥離しないように改質層14と負極活性層12との間に十分な接着強度があるという前提で、当業者が任意に変更することができる。例えば、バインダーの含有量は、金属フッ化物、リチウム含有化合物,およびイミド化合物の重量の合計に対し、1wt%から20wt%とすることができる。本開示の実施形態によれば、バインダーには、フッ化ポリビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル(PAN)、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。加えて、本開示の実施形態によれば、改質層14は負極活性層12上に直接形成されてよい(つまり改質層14と負極活性層12との間に他の層がない)。さらに、改質層14は、バインダーにより負極活性層12上に固定されてよい。
【0027】
本開示の実施形態によれば、負極を製造する方法は次のステップを含み得る。先ず、負極活性層を準備する。次いで、金属フッ化物、リチウム含有化合物、およびイミド化合物を溶媒(例えば1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド(DMAC)、またはこれらの組み合わせ)中に分散し、溶液を得る。その溶液の固形分は1wt%から10wt%である。次いで、その溶液をコーティングプロセスにより負極活性層の表面に塗布してコーティングを形成する。負極活性層の表面に配置される溶液の平均量は約1μL/cmから20μL/cmである。コーティングプロセスは、スクリーン印刷、スピンコーティング、バーコーティング、ブレードコーティング、ローラーコーティング、溶媒キャスト法またはディップコーティングであってよい。次に、そのコーティングに対して乾燥プロセスを行い(プロセス温度25℃から80℃)、改質層を得る。
【0028】
図1に示されるように、固体電解質膜20は負極10と正極40との間に配置され、かつ固体電解質膜20は第1の多孔質層22、電解質層24、および第2の多孔質層26を含む。図1に示されるように、固体電解質膜20は、負極から正極への方向に、第1の多孔質層22、電解質層24、および第2の多孔質層26を順次含んでいる。つまり、電解質層24は第1の多孔質層22と第2の多孔質層26との間に配置される。図2は、図1に示された電池100の固体電解質膜20の領域2の近接概略図である。図2に示されるように、第1の多孔質層22はポリマー21および複数の孔23を含んでいてよく、複数の孔23は第1の多孔質層22中に分布している。本開示の実施形態によれば、第1の多孔質層22の気孔率は約10vol%から90vol%、例えば約15vol%、20vol%、30vol%、40vol%、50vol%、60vol%、70vol%、80vol%、または85vol%であってよい。本開示の実施形態によれば、本開示の電池は、様々な気孔率の第1の多孔質層22を任意で用いることができる。本開示の実施形態によれば、固体電解質膜20の寸法安定性および機械強度を高めるために、第1の多孔質層22は緻密層であってよい。つまり、第1の多孔質層22の気孔率は約10vol%から40vol%であり得る。本開示のいくつかの実施形態によれば、固体電解質膜20のイオン伝導性を高める、または有機無機複合体構造の形成を容易にするため、第1の多孔質層22は粗(loose)層であってよい。つまり、第1の多孔質層22の気孔率は約40vol%から90vol%であり得る。気孔率は次の式により測ることができる:P=V1/V2×100%。このうち、Pは気孔率であり、V1は第1の多孔質層22の孔23の体積であり、V2は第1の多孔質層22の全体積である。気孔率を測定するのにポロシメータを用いることができる。本開示の実施形態によれば、複数の孔23の平均孔径は10nmから5μm、例えば20nmから3μm、または50nmから3μmであってよい。平均孔径は、ISO15901-2に基づく方法により測定可能である。本開示の実施形態によれば、第1の多孔質層22の厚さは約1μmから30μm、例えば2μmまたは20μmであってよい。第1の多孔質層22の厚さが大きすぎると、高い界面インピーダンスのために、イオン移動度が低下してしまう。第1の多孔質層22の厚さが小さすぎると、電池のサイクル安定性が低下してしまう。本開示の実施形態によれば、ポリマーは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリビニルクロリド(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、またはこれらの組み合わせであってよい。本開示の実施形態によれば、ポリマーの数平均分子量は、約5,000から5,000,000、例えば約100,000、200,000、500,000、800,000、1,000,000、2,000,000、3,000,000、または4,000,000であってよい。本開示の実施形態によれば、ポリマーは含フッ素ポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)、またはこれらの組み合わせであり得る。含フッ素ポリマーの疎水性のために、含フッ素ポリマーを通過する水分フラックス(moisture flux)が減少し、よって電池パフォーマンスの低下が回避される。
【0029】
第2の多孔質層26はポリマーおよび複数の孔を含んでいてよく、複数の孔は第2の多孔質層26中に分布している。本開示の実施形態によれば、第2の多孔質層26の気孔率は約10vol%から90vol%、例えば約15vol%、20vol%、30vol%、40vol%、50vol%、60vol%、70vol%、80vol%、または85vol%であってよい。本開示の実施形態によれば、本開示の電池の第2の多孔質層26の気孔率は任意に調整することができる。
【0030】
本開示の実施形態によれば、固体電解質膜20の寸法安定性および機械強度を高めるために、第2の多孔質層26は緻密層であってよい。つまり、第2の多孔質層26の気孔率は約10vol%から40vol%であってよい。本開示のいくつかの実施形態によれば、固体電解質膜20のイオン伝導性を高める、または有機無機複合体構造の形成を容易にするため、第2の多孔質層26は粗層であってよい。つまり、第2の多孔質層26の気孔率は約40vol%から90vol%であってよい。気孔率は次の式により測ることができる:P=V1/V2×100%。このうち、Pは気孔率であり、V1は第2の多孔質層26の孔の体積であり、V2は第2の多孔質層26の全体積である。気孔率を測定するのにポロシメータを用いることができる。本開示の実施形態によれば、複数の孔の平均孔径は10nmから5μm、例えば20nmから3μm、または50nmから3μmであってよい。本開示の実施形態によれば、第2の多孔質層26の厚さは約1μmから30μm、例えば2μmまたは20μmであってよい。第2の多孔質層26の厚さが大きすぎると、高い界面インピーダンスのために、イオン移動能力が低下してしまう。第2の多孔質層26の厚さが小さすぎると、電池のサイクル安定性が低下してしまう。
【0031】
本開示の実施形態によれば、ポリマーは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリビニルクロリド(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ニトリル-ブタジエンゴム(NBR),またはこれらの組み合わせであってよい。本開示の実施形態によれば、ポリマーの数平均分子量は、約5,000から5,000,000、例えば約100,000、200,000、500,000、800,000、1,000,000、2,000,000、3,000,000、または4,000,000であってよい。本開示の実施形態によれば、ポリマーは含フッ素ポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)、またはこれらの組み合わせであり得る。含フッ素ポリマーの疎水性のために、含フッ素ポリマーを通過する水分フラックスが減少し、よって電池パフォーマンスの低下が回避される。本開示の実施形態によれば、第2の多孔質層26および第1の多孔質層22の厚さ、気孔率、成分および比率は、同じであっても、または異なっていてもよい。
【0032】
本開示の実施形態によれば、第1の多孔質層22の厚さおよび第2の多孔質層26の厚さの合計と固体電解質膜20の厚さとの比は1:5から4:5、例えば1:4、1:3、1:2、1:1、2:3、または3:4であってよい。
【0033】
本開示の実施形態によれば、電解質層24は第1の組成物を含み得る。本開示の実施形態によれば、電解質層24は第1の組成物からなっていてよい。第1の組成物は:(A)100重量部の酸化物系固体無機電解質;(B)20から70重量部(例えば30重量部、40重量部、50重量部、または60重量部)のLi[R(-OR-OR]Y(式中、RはC1-4アルキレン基、RはC1-4アルキル基、nは2から100、YはPF 、BF 、AsF 、SbF 、ClO 、AlCl 、GaCl 、NO 、C(SOCF 、N(SOCF 、SCN、OSCFCF 、CSO 、OCCF 、SO、B(C 、CFSO 、またはこれらの組み合わせである);(C)1から10重量部のナノ酸化物;および(D)1から20重量部のバインダーを含む。本開示の実施形態によれば、第1の組成物の成分(A)~(D)を均一に混合して複合体を形成する。
【0034】
本開示の実施形態によれば、酸化物系固体無機電解質は、リチウム含有酸化物系固体無機電解質、例えば、リチウムランタンジルコニウム酸化物、リチウムランタンチタン酸化物、リチウムアルミニウムチタンホスフェート、および類似のもの、またはこれらの組み合わせであってよい。
【0035】
本開示の実施形態によれば、Li[R(-OR-OR]Yの量が少なすぎると、電解質層は低いイオン伝導性を示す。Li[R(-OR-OR]Yの量が多すぎると、電解質層は不十分な機械強度を示す。nの値が低すぎると、電解質層は不十分な機械強度を示す。nの値が高すぎると、室温で電解質層は低いイオン伝導性を示す。一実施形態では、Li[R(-OR-OR]Yにおいて、Rはエチレン基、Rはメチル基、nは4、YはN(SOCF -である。ナノ酸化物の量が少なすぎると、電解質層の成膜性が低くなってしまう。ナノ酸化物の量が多すぎると、電解質層のイオン伝導性が不十分になってしまう。一実施形態において、ナノ酸化物にはケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、セリウム酸化物、チタン酸化物、またはこれらの組み合わせが含まれる。一実施形態において、ナノ酸化物のサイズは5nmから100nmである。小さすぎるナノ酸化物は、電解質中に分散し難くなり得る。大きすぎるナノ酸化物は、電解質を不十分なイオン伝導性を持つものとしてしまう可能性がある。バインダーの量が少なすぎると、電解質層が形成され得ない。バインダーの量が多すぎると、電解質層が硬質で脆弱となり得る。一実施形態において、バインダーには、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル(PAN)、またはこれらの組み合わせが含まれる。
【0036】
或いは、電解質は、(E)1から20重量部のハイパーブランチポリマーをさらに含んでいてもよく、酸化物系固体無機電解質の表面はハイパーブランチポリマーで改質される。ハイパーブランチポリマーは有機-無機相溶性を改善することができ、複合体電解質層のイオン伝導性が向上する。ハイパーブランチポリマーの量が多すぎると、電解質層のイオン伝導性が不十分となってしまう。一実施形態において、ハイパーブランチポリマーと酸化物系固体無機電解質の表面との間には結合性がある。ハイパーブランチポリマーはプレポリマーと塩基性助触媒(basic promoter)との架橋反応により形成され、かつ、プレポリマーはマレイミド官能基を含有する前駆体とルイス塩基の前駆体との反応により形成される。例えば、マレイミド官能基を含有する前駆体は、次の構造
またはこれらの組み合わせを有していてよく、このうち、Rは-CHNCH-、-CNHC-、-C(O)CH-、-CHOCH-、-C(O)-、-O-、-S-、-S-S-、-S(O)-、-CHS(O)CH-、-(O)S(O)-、-CH(C)CH-、-CH(C)O-、-(CHCH(CH)O)-、フェニレン基、ビフェニレン基、C2-8アルキレン基、
である。各Rは独立に-(CHCH)O-、フェニレン基、またはC2-8アルキレン基である。RはC2-8アルキレン基、-C(O)-、-C(CH-、-O-、-S-、-S-S-、-S(O)-、-(O)S(O)-、または-O(C)C(CF(C)O-である。
【0037】
m=3のとき、R
であり、このうち、各Rは独立に-(CHCH)O-、フェニレン基、またはC2-8アルキレン基である。a+b+c=5または6であり、かつa、b、およびcの各々は1以上である。m=4のとき、R
であり、このうち、各Rは独立に-(CHCH)O-、フェニレン基、またはC2-8アルキレン基である。m=8のとき、R
である。さらに、m’は2から5である。
【0038】
ルイス塩基の前駆体は、次の構造

を有していてよく、このうち、Zは-SHまたは-NHであり、R

であり、
このうち、a’+b’=45である。
【0039】
塩基性助触媒は、次の構造

を有していてよく。このうち、各Rは独立にH、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、ジメチルアミノ基、ハロゲン、または-NHであり、各Rは独立にアルキル基、アルケニル基、フェニル基、またはハロゲンである。
【0040】
本開示の実施形態によれば、アルキレン基は直鎖または分岐のアルキレン基であり得る。例えば、C1-8アルキレン基は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、またはその異性体であってよい。本開示の実施形態によれば、アルキル基は直鎖または分岐のアルキル基であり得る。例えば、C1-8アルキル基はメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、またはその異性体であってよい。
【0041】
固体電解質膜20を製造する方法は次のステップを含んでいてよい。先ず、第1の多孔質膜(厚さT1)、電解質膜(厚さT2)、および第2の多孔質膜(厚さT3)を準備する。本開示の実施形態によれば、電解質膜を製造する方法は次のステップを含み得る。R(-OR-ORをLiYと混合して[Li(-OR-OR]Yを形成し、次いでこれにナノ酸化物を加えて擬固体電解質を形成する。次いで、酸化物系固体無機電解質をその擬固体電解質に加えて混合してから、バインダーを加える。これにより、有機無機複合体電解質が形成され、これは圧縮してフィルム(複合体電解質膜)にすることのできるものである。電解質膜は、台湾特許番号TWI634689号に開示された方法に基づいて製造することもできる。次いで、電解質膜および第2の多孔質膜を第1の多孔質膜上に順次配置し、積層構造(つまり、第1の多孔質膜/電解質膜/第2の多孔質膜で表される積層構造)を得る。次いで、その積層構造に対し圧縮プロセスを行って、本開示の固体電解質膜20を得る。固体電解質膜20は、第1の多孔質層22/電解質層24/第2の多孔質層26で表される構造を含む。ここで、第1の多孔質層22は厚さT1’を有し、厚さT1’は厚さT1より小さい。例として、T1’/T1は約0.05から0.95、例えば0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、または0.9である。電解質層24は厚さT2’を有し、厚さT2’は厚さT2より小さい。例として、T2’/T2は約0.05から0.95、例えば0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、または0.9である。第2の多孔質層26は厚さT3’を有し、厚さT3’は厚さT3より小さく、例としてT3’/T3は約0.05から0.95、例えば0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、または0.9である。なお、より薄い厚さ(例えば30μm未満)の電解質層は、台湾特許番号TWI634689号に開示された方法では直接製造することができないという点に留意されたい。本開示の固体電解質膜を製造する方法によれば、固体電解質膜の電解質層の厚さをより小さくすることができる。つまり、T2’/T2が0.05から0.3となり得る。結果として、薄型パッケージ電池の目的が達成され、かつ電池のエネルギー密度を増加させることができる。本開示の実施形態によれば、第1の多孔質膜の材質は第1の多孔質層の材質と同じ定義を有し;第2の多孔質膜の材質は第2の多孔質層の材質と同じ定義を有し;電解質膜の材質は電解質層の材質と同じ定義を有する。
【0042】
本開示の実施形態によれば、固体電解質膜の厚さは1μmから200μm、例えば5μm、10μm、20μm、50μm、100μm、150μm、または180μmであってよい。固体電解質膜の厚さが大きすぎると、電池のエネルギー密度が低下してしまう。固体電解質膜の厚さが小さすぎると、電池のサイクル安定性が低下してしまう。さらに、電解質層の厚さと固体電解質膜の厚さとの比は1:5から4:5、例えば1:4、1:3、1:2、2:3、または3:4とすることができる。
【0043】
本開示の実施形態によれば、本開示の電池はセパレータをさらに含んでいてよい。図3は、開示のいくつかの実施形態による電池100を示す概略図である。図3に示されるように、負極10、固体電解質膜20、および正極40の他、電池100は、固体電解質膜20と正極40との間に配置されるセパレータ30をさらに含む。本開示の実施形態によれば、セパレータの材質には、絶縁材、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリビニルクロリドフィルム、ポリ(フッ化ビニリデン)フィルム、ポリアニリンフィルム、ポリイミドフィルム、不織布、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン(PS)、セルロース、またはこれらの組み合わせが含まれる。例えば、セパレータはPE/PP/PE多層複合体構造であり得る。
【0044】
本開示の実施形態によれば、電池は電解液をさらに含み、電解液は正極と負極との間に配置される。正極、セパレータ、固体電解質膜、および負極が積層されてなる構造が電解液中に浸漬される。つまり、電池は電解液で充填される。本開示のいくつかの実施形態によれば、電解液は溶媒およびリチウム含有化合物を含み得る。本開示の実施形態によれば、溶媒は有機溶媒、例えばエステル溶媒、ケトン溶媒、カーボネート溶媒、エーテル溶媒、アルカン溶媒、アミド溶媒、またはこれらの組み合わせであってよい。本開示の実施形態によれば、溶媒は、1、2-ジエトキシエタン、1、2-ジメトキシエタン、1、2-ジブトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸プロピル(PA)、γ-ブチロラクトン(GBL)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジプロピルカーボネート、またはこれらの組み合わせであり得る。本開示の実施形態によれば、リチウム含有化合物は、LiPF、LiClO、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムオキサリルジフルオロボラート(lithium oxalyldifluoro borate, LiDFOB)、LiBF、LiSOCF、LiN(SOCF、LiN(SOCFCF、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、LiGaCl、LiNO、LiC(SOCF、LiSCN、LiOSCFCF、LiCSO、LiOCCF、LiSOF、LiB(C、LiB(C(LiBOB)、LiFePO、LiLaZr12、LiLaTi、Li2.9PO3.30.46、LiPO、Li1.3Al0.3Ti0.7(PO、Li3.6Si0.60.4、LiLaTa12、またはこれらの組み合わせであり得る。加えて、本開示のいくつかの実施形態によれば、電解質組成物には固体電解質が含まれ得る。固体電解質は、LiFePO、LiLaZr12、Li2.9PO3.30.46、LiPO、Li1.3Al0.3Ti0.7(PO、Li3.6Si0.60.4、LiLaTa12、またはこれらの組み合わせであり得る。本開示の実施形態によれば、電解液のリチウム含有化合物の濃度は0.5Mから5Mとすることができる。
【0045】
本開示の実施形態によれば、第1の多孔質層が、複数の孔内に配置された第2の組成物をさらに含んでいてよい、および/または第2の多孔質層が、複数の孔内に配置された第2の組成物をさらに含んでいてよい。第2の組成物がさらに第1の多孔質層および/または第2の多孔質層内に配置されると、固体電解質膜の機械強度およびイオン移動能力が向上し得る。第2の組成物は、上述した第1の組成物に与えられたのと同じ定義を有しており、ここでは詳細な説明を繰り返さない。本開示の実施形態によれば、第2の組成物および第1の組成物は同じであっても、または異なっていてもよい。
【0046】
図4は、本開示のいくつかの実施形態による固体電解質膜20を示す概略図である。図4に示されるように、固体電解質膜20は、第1の多孔質層22、電解質層24、および第2の多孔質層26を含む。図5は、図4に示された電池の固体電解質膜20の領域5の近接概略図である。図5に示されるように、ポリマー21および複数の孔23の他、第1の多孔質層22は、複数の孔23内に配置された第2の組成物25をさらに含む。図4に示される固体電解質膜20において、第2の多孔質層26は、第1の多孔質層22に与えられたのと同じ定義を有する。つまり、ポリマーおよび複数の孔の他、第2の多孔質層26は、複数の孔内に配置された第2の組成物をさらに含む。図4に示される固体電解質膜20において、第2の組成物25は、第1の多孔質層22全体および第2の多孔質層26全体にわたり分布している。本開示の実施形態によれば、図5に示されるように、第2の組成物25は孔23の一部に充填されてもよい。加えて、いくつかの本開示の実施形態によれば、図6に示されるように、孔23全体が完全に第2の組成物25で充填されてもよい。
【0047】
図7は、本開示のいくつかの実施形態による固体電解質膜20を示す概略図である。図7に示されるように、第1の多孔質層22は第1の層22Aおよび第2の層22Bからなり、第2の多孔質層26は第3の層26Aおよび第4の層26Bからなる。固体電解質膜20は第1の層22A、第2の層22B、電解質層24、第3の層26A、および第4の層26Bをこの順で含む。図7に示される固体電解質膜において、第2の組成物は第2の層22Bおよび第3の層26Aの孔内に配置され、かつ第2の組成物25は第2の層22B全体および第3の層26A全体にわたり分布する。さらに、第2の組成物は第1の層22Aおよび第4の層26Bの孔内には配置されない。つまり、第1の層22Aおよび第4の層26Bは第2の組成物を含まない。つまり、第1の層22A(または第4の層26B)はポリマーおよび孔からなる。第1の多孔質層22(または第2の多孔質層26)が、第2の組成物を有する部分(つまり、第1の多孔質層22の第2の層22Bまたは第2の多孔質層26の第3の層26A)と、第2の組成物の無い部分(つまり、第1の多孔質層22の第1の層22Aまたは第2の多孔質層26の第4の層26B)とを同時に含むとき、固体電解質膜は、電解液の高い吸収性だけでなく、高いイオン移動度をも示す。本開示の実施形態によれば、第1の多孔質層22において、第1の層22Aと第2の層22Bの厚さの比は約1:9から9:1(例えば1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、または8:1)であってよい。第2の多孔質層26において、第3の層26Aと第4の層26Bの厚さの比は約1:9から9:1(例えば1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、または8:1)であってよい。
【0048】
以下に、当該分野において通常の知識を有する者が容易に理解できるよう、添付の図面を参照にしながら、例示的な実施形態を詳細に説明する。本発明概念は、ここに示された例示的な実施形態に限定されることなく、様々な形式で具体化され得る。明確とするために周知の部分についての説明は省き、また、全体を通して類似する参照番号は類似する構成要素を指すものとする。
【実施例
【0049】
作製例1
テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)およびリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI)を混合して、混合物を得た。TEGDMEとLiTFSIのモル比は1:1とした。次いで、その混合物を二酸化ケイ素粉末(DegussaよりAerosil 812の取引番号で市販されている)と混合し、擬固体電解質(混合物と二酸化ケイ素粉末との体積比は1:1)を得た。次いで、60重量部のLiLaZr12を40重量部の擬固体電解質と混合してから、7重量部のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末を加えた。圧縮成形した後、複合膜(LLZOGS)(厚さ200μm)を得た。次いで、2枚の多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜(EF-Materials Industries Inc.よりEFMaflonの取引番号で市販されている)(平均孔径0.45μm、厚さ30μm)を準備した。次いで、複合膜(LLZOGS)を2枚の多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜の間に配置した(つまり、PTFE/LLZOGS/PTFEで表される積層構造を形成)。次いで、積層構造に対して150℃で圧縮プロセスを行って固体電解質膜(ML-LLZOGS)を得た(厚さ約50μm以下)。次いで、複合膜(LLZOGS)および固体電解質膜(ML-LLZOGS)の特性を動的機械分析(DMA)により測定した。その結果が図8に示されている。図8に示されるように、複合膜(LLZOGS)と比較して、固体電解質膜(ML-LLZOGS)の機械強度は、その積層された構造のために大幅に高まっている。
【0050】
実施例1
正極を準備した。この正極は正極活物質および正極集電層を含む。リチウムコバルト酸化物(LCO)(Hunan Reshine New Material Co., Ltd.より市販されている)を正極活物質とし、アルミニウム箔(C.S. Aluminium Corporationより市販されている)を正極集電層とした。次いで、負極を準備した。この負極は負極活物質を含む。リチウム箔(Honjo Metal Co., Ltd.から市販されている)(厚さ50μm)を負極活物質とした。次いで、セパレータ(Celgard 2320の取引番号で入手可能)を準備した。次いで、負極、固体電解質膜(ML-LLZOGS)、セパレータ、および正極を順次配置し、コイン型セル内に封入した。次いで、電解液(LiPFおよび溶媒を含む。溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)を含み(ECとDECとの体積比は1:1)、LiPFの濃度は1.1Mとした)をコイン型セル中に注入して、コイン型電池(CR2032)を得た。次いで、電池の充電/放電試験を行った。その結果は図9に示されている。充電/放電試験は室温下、次の条件で行った:初期化成(initial formation)の3サイクルを0.1C充電/0.1C放電とし、後のサイクルは0.2Cで充電、0.5Cで放電し、かつ1C=3mA/cmとした。図9に示されるように、金属電池は、150充電/放電サイクル後も約84%の容量維持率を示した。
【0051】
実施例2
リチウム箔および銅箔からなる積層構造(Honjo Metal Co., Ltd. より市販されている)(厚さ60μm)を準備した。次いで、1重量部のフッ化銅、5重量部の硝酸リチウム、および94重量部の1,2-ジメトキシエタンを混合して溶液を得た。次いで、その溶液をリチウム箔の表面に塗布した。リチウム箔の表面に配される溶液の平均ローディング量は5μL/cmとした。室温で乾燥した後、改質層を備えた電極を得た。次いで、セパレータ(Celgard2320の取引番号で入手可能)を準備した。次いで、電極、セパレータ、および電極を順次配置し、コイン型セル内に封入した。ここで、電極のリチウム箔をセパレータの方へ向けて置いた。次いで、電解液(LiPFおよび溶媒を含む。溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)を含み(ECとDECとの体積比は1:1)、LiPFの濃度は1.1Mとした)をコイン型セル中に注入して、コイン型電池(CR2032)を得た。次いで、得られた電池の特性を電気化学インピーダンス分光法(EIS)により測定した。その結果は図10に示されている。次いで、電池の充放電サイクルテストを、電池テスター(Maccor4000)により、定電流密度0.5mA/cm、容量0.5mAh/cm、各充電および放電ステップ間に休み5分で5サイクル行った。結果として、充放電の間に電池に固体電解質界面(SEI)が形成され得ることがわかった。
【0052】
実施例3
リチウム箔および銅箔からなる積層構造(Honjo Metal Co., Ltd.より市販されている)(厚さ60μm)を準備した。次いで、2重量部のマレイミド(DAIWAKASEI Industry Co. LTDより取引番号BMI1100で市販されている)、1重量部のフッ化銅、5重量部の硝酸リチウム、および92重量部の1,2-ジメトキシエタンを混合して溶液を得た。次いで、その溶液をリチウム箔の表面に塗布した。リチウム箔の表面に配される溶液の平均ローディング量は5μL/cmとした。室温で乾燥した後、改質層を備えた電極を得た。次いで、セパレータ(Celgard 2320の取引番号で入手可能)を準備した。次いで、電極、セパレータ、および電極を順次配置し、コイン型セル内に封入した。ここで、電極のリチウム箔をセパレータの方へ向けて置いた。次いで、電解液(LiPFおよび溶媒を含む。溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)を含み(ECとDECとの体積比は1:1)、かつLiPFの濃度は1.1Mとした)をコイン型セル中に注入して、コイン型電池(CR2032)を得た。次いで、得られた電池の特性を電気化学インピーダンス分光法(EIS)により測定した。その結果は図10に示されている。次いで、電池の充放電サイクルテストを、電池テスター(Maccor4000)により、定電流密度0.5mA/cm、容量0.5mAh/cm、各充電および放電ステップ間に休み5分で5サイクル行った。結果として、充放電の間に電池に固体電解質界面(SEI)が形成され得ることがわかった。
【0053】
実施例4
リチウム箔および銅箔からなる積層構造(Honjo Metal Co., Ltd. より市販されている)(厚さ60μm)を準備した。次いで、1重量部のマレイミド(DAIWAKASEI Industry Co. LTDより取引番号BMI1100で市販されている)、0.5重量部のフッ化銅、2.5重量部の硝酸リチウム、および96重量部の1,2-ジメトキシエタンを混合して溶液を得た。次いで、その溶液をリチウム箔の表面に塗布した。リチウム箔の表面に配される溶液の平均ローディング量は5μL/cmとした。室温で乾燥した後、改質層を備えた電極を得た。次いで、セパレータ(Celgard 2320の取引番号で入手可能)を準備した。次いで、電極、セパレータ、および電極を順次配置し、コイン型セル内に封入した。ここで、電極のリチウム箔をセパレータの方へ向けて置いた。次いで、電解液(LiPFおよび溶媒を含む。溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)を含み(ECとDECとの体積比は1:1)、LiPFの濃度は1.1Mとした)をコイン型セル中に注入して、コイン型電池(CR2032)を得た。次いで、得られた電池の特性を電気化学インピーダンス分光法(EIS)により測定した。その結果は図10に示されている。次いで、電池の充放電サイクルテストを、電池テスター(Maccor4000)により、定電流密度0.5mA/cm、容量0.5mAh/cm、各充電および放電ステップ間に休み5分で5サイクル行った。結果として、充放電の間に電池に固体電解質界面(SEI)が形成され得ることがわかった。
【0054】
比較例1
リチウム箔および銅箔からなる積層構造(Honjo Metal Co., Ltd. より市販されている)(厚さ60μm)を準備した。次いで、2重量部のマレイミド(DAIWAKASEI Industry Co. LTDより取引番号BMI1100で市販されている)および98重量部の1,2-ジメトキシエタンを混合して溶液を得た。次いで、その溶液をリチウム箔の表面に塗布した。リチウム箔の表面に配される溶液の平均ローディング量は5μL/cmとした。室温で乾燥した後、改質層を備えた電極を得た。次いで、セパレータ (Celgard 2320の取引番号で入手可能)を準備した。次いで、電極、セパレータ、および電極を順次配置し、コイン型セル内に封入した。ここで、電極のリチウム箔をセパレータの方へ向けて置いた。次いで、電解液(LiPFおよび溶媒を含む。溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)を含み(ECとDECとの体積比は1:1)、LiPFの濃度は1.1Mとした)をコイン型セル中に注入して、コイン型電池(CR2032)を得た。次いで、得られた電池の特性を電気化学インピーダンス分光法(EIS)により測定した。その結果は図10に示されている。次いで、電池の充放電サイクルテストを、電池テスター(Maccor4000)により、定電流密度0.5mA/cm、容量0.5mAh/cm、各充電および放電ステップ間に休み5分で5サイクル行った。結果として、充放電の間に電池に安定な固体電解質界面(SEI)が形成されないことがわかった。
【0055】
図10に示されるように、実施例3および4の電池(つまり、改質層がマレイミド、フッ化銅および硝酸リチウムを含むもの)は比較的低いインピーダンスを示している。加えて、比較例1の電池(つまり、改質層がマレイミドのみを含むもの)と比べると、実施例2の電池(つまり、改質層がフッ化銅および硝酸リチウムを含むもの)も比較的低いインピーダンスを示した。
【0056】
実施例5
負極活性層を準備した。この負極活性層はリチウム箔および銅箔からなる積層構造(Honjo Metal Co., Ltd.から市販されている)(厚さ60μm)である。リチウム箔を負極活物質とし、銅箔を負極集電層とした。次いで、1重量部のフッ化銅、5重量部の硝酸リチウム、および94重量部の1,2-ジメトキシエタンを混合して溶液を得た。次いで、その溶液をリチウム箔に塗布した。リチウム箔(つまり、負極活性層)の表面に配される溶液の平均ローディング量は5μL/cmとした。室温で乾燥した後、改質層を備えた負極を得た。正極を準備した。この正極は正極活物質および正極集電層を含む。NMC622(Hunan Reshine New Material Co., Ltd. より市販されている)を正極活物質とし、アルミニウム箔 (C.S. Aluminium Corporationより市販されている)を正極集電層とした。次いで、セパレータ (Celgard 2320の取引番号で入手可能)および作製例1の固体電解質膜(ML-LLZOGS)を準備した。次いで、負極、固体電解質膜、セパレータ、および正極を順次配置し、コイン型セル内に封入した。ここで、負極のリチウム箔を固体電解質膜の方へ向けて置いた。次いで、電解液(LiPFおよび溶媒を含む。溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)を含み(ECとDECとの体積比は1:1)、LiPFの濃度は1.1Mとした)をコイン型セル中に注入して、コイン型電池(CR2032)を得た。次いで、得られた電池のサイクルテストを電池テスター(Maccor4000)により充電電流0.2Cおよび放電電流0.5Cで測定してから、容量維持率を測定した。結果は表1に示されている。
【0057】
実施例6
負極活性層(Honjo Metal Co., Ltd.より市販されている)(厚さ60μm)を準備した。この負極活性層は負極活物質および負極集電層を含む。リチウム箔を負極活物質とし、銅箔を負極集電層とした。次いで、2重量部のマレイミド(DAIWAKASEI Industry Co. LTDよりBMI1100の取引番号で市販されている)、1重量部のフッ化銅、5重量部の硝酸リチウム、および92重量部の1,2-ジメトキシエタンを混合して溶液を得た。次いで、その溶液をリチウム箔に塗布した。リチウム箔(つまり負極活物質)の表面に配される溶液の平均ローディング量は5μL/cmとした。室温で乾燥した後、改質層を備えた負極を得た。正極を準備した。この正極は正極活物質および正極集電層を含む。NMC622(Hunan Reshine New Material Co., Ltd. より市販されている)を正極活物質とし、アルミニウム箔(C.S. Aluminium Corporationより市販されている)を正極集電層とした。次いで、セパレータ (Celgard 2320の取引番号で入手可能)および作製例1の固体電解質膜(ML-LLZOGS)を準備した。次いで、負極、固体電解質膜、セパレータ、および正極を順次配置し、コイン型セル内に封入した。ここで、負極のリチウム箔を固体電解質膜の方へ向けて置いた。次いで、電解液(LiPFおよび溶媒を含む。溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)を含み(ECとDECとの体積比は1:1)、LiPFの濃度は1.1Mとした)をコイン型セル中に注入して、コイン型電池(CR2032)を得た。次いで、得られた電池のサイクルテストを電池テスター(Maccor4000)により充電電流0.2Cおよび放電電流0.5Cで測定してから、容量維持率を測定した。結果は表1に示されている。
【0058】
比較例2
負極を準備した。その負極活性層はリチウム箔および銅箔からなる積層構造(Honjo Metal Co., Ltd.から市販されている)(厚さ60μm)である。リチウム箔を負極活物質とし、銅箔を負極集電層とした。正極を準備した。この正極は正極活物質および正極集電層を含む。NMC622(Hunan Reshine New Material Co., Ltd.より市販されている)を正極活物質とし、アルミニウム箔(C.S. Aluminium Corporationより市販されている)を正極集電層とした。次いで、セパレータ(Celgard 2320の取引番号で入手可能)を準備した。次いで、負極、セパレータ、および正極を順次配置し、コイン型セル内に封入した。次いで、電解液(LiPFおよび溶媒を含む。溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)を含み(ECとDECとの体積比は1:1)、LiPFの濃度は1.1Mとした)をコイン型セル中に注入して、コイン型電池(CR2032)を得た。次いで、得られた電池のサイクルテストを電池テスター(Maccor4000)により充電電流0.2Cおよび放電電流0.5Cで測定してから、容量維持率を測定した。結果は表1に示されている。
【0059】
比較例3
負極(Honjo Metal Co., Ltd.から市販されている)(厚さ60μm)を準備した。この負極は、リチウム箔および銅箔からなる積層構造である。リチウム箔を負極活物質とし、銅箔を負極集電層とした。正極を準備した。この正極は正極活物質および正極集電層を含む。NMC622(Hunan Reshine New Material Co., Ltd. より市販されている)を正極活物質とし、アルミニウム箔(C.S. Aluminium Corporationより市販されている)を正極集電層とした。次いで、セパレータ(Celgard 2320の取引番号で入手可能)および作製例1の固体電解質膜(ML-LLZOGS)を準備した。次いで、負極、固体電解質膜、セパレータ、および正極を順次配置し、コイン型セル内に封入した。次いで、電解液(LiPFおよび溶媒を含む。溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)を含み(ECとDECとの体積比は1:1)、LiPFの濃度は1.1Mとした)をコイン型セル中に注入して、コイン型電池(CR2032)を得た。次いで、得られた電池のサイクルテストを電池テスター(Maccor4000)により充電電流0.2Cおよび放電電流0.5Cで測定してから、容量維持率を測定した。結果は表1に示されている。
【0060】
比較例4
負極活性層を準備した。この負極活性層は、リチウム箔および銅箔からなる積層構造(Honjo Metal Co., Ltd.より市販されている)(厚さ60μm)である。リチウム箔を負極活物質とし、銅箔を負極集電層とした。次いで、1重量部のフッ化銅、5重量部の硝酸リチウム、および94重量部の1,2-ジメトキシエタンを混合して溶液を得た。次いで、その溶液をリチウム箔に塗布した。リチウム箔(つまり負極活性層)の表面に配される溶液の平均ローディング量は5μL/cmとした。室温で乾燥した後、改質層を備えた負極を得た。正極を準備した。この正極は正極活物質および正極集電層を含む。NMC622(Hunan Reshine New Material Co., Ltd. より市販されている)を正極活物質とし、アルミニウム箔(C.S. Aluminium Corporationより市販されている)を正極集電層とした。次いで、負極、セパレータ、および正極を順次配置し、コイン型セル内に封入した。次いで、電解液(LiPFおよび溶媒を含む。溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)を含み(ECとDECとの体積比は1:1)、LiPFの濃度は1.1Mとした)をコイン型セル中に注入して、コイン型電池(CR2032)を得た。次いで、得られた電池のサイクルテストを電池テスター(Maccor4000)により充電電流0.2Cおよび放電電流0.5Cで測定してから、容量維持率を測定した。結果は表1に示されている。
【0061】
【表1】
【0062】
表1に示されるように、比較例3の電池の容量維持率は、固体電解質膜を用いていない電池(つまり、比較例2の電池)の容量維持率と類似している。これは、電池の寿命が、固体電解質膜のみの使用によっては改善され得ないということを意味する。さらに、比較例4の電池の容量維持率は、固体電解質膜を用いていない電池(つまり、比較例2の電池)よりも低い。これは、単に改質層を備えた負極を用いるだけの電池は、寿命が短くなる可能性があることを意味する。また、本開示の改質層を備えた負極と固体電解質膜とを同時に用いる電池(つまり、実施例5および6の電池)は寿命が改善される。
【0063】
開示された方法および物質に様々な修飾および変更を加え得ることは、明らかであろう。明細書および実施例は単なる例示と見なされることが意図されており、本開示の真の範囲は、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物により示される。
【符号の説明】
【0064】
2…領域
5…領域
10…負極
12…負極活性層
14…改質層
20…固体電解質膜
21…第1の組成物
22…第1の多孔質層
22A…第1の層
22B…第2の層
23…孔
24…電解質層
25…第2の組成物
26…第2の多孔質層
26A…第3の層
26B…第4の層
40…正極
100…電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10