(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】保護膜形成用複合シート
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20221208BHJP
H01L 23/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L23/00 C
(21)【出願番号】P 2020508798
(86)(22)【出願日】2018-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2018013636
(87)【国際公開番号】W WO2019187014
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-01-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 尚哉
(72)【発明者】
【氏名】古野 健太
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特許第6298226(JP,B1)
【文献】国際公開第2017/163971(WO,A1)
【文献】特許第5432853(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を備え、前記基材上に粘着剤層を備えた支持シート中の前記粘着剤層上に、保護膜形成用フィルムを備えた、保護膜形成用複合シートであって、
前記基材の前記粘着剤層側の面が凹凸面であり、
JIS B 0601:2013に準拠して測定される前記凹凸面の最大高さ粗さ(Rz)が5~8μmであり、
前記支持シートの5箇所から試験片を切り出し、これら5枚の試験片において、それぞれ粘着剤層の厚さの最小値及び最大値を求めたとき、前記最小値の平均値が1.5μm以上であり、前記最大値の平均値が9μm以下であり、
前記粘着剤層に前記保護膜形成用フィルムが直接接触しており、
前記粘着剤層と前記保護膜形成用フィルムとの間に、これらが貼り合わされていない非貼り合わせ領域が存在しないか、又は前記非貼り合わせ領域が存在する場合には、前記非貼り合わせ領域の前記粘着剤層と前記保護膜形成用フィルムとの間の距離が0.5μm以下である、保護膜形成用複合シート。
【請求項2】
前記粘着剤層が、前記基材の凹凸面に直接接触している、請求項1に記載の保護膜形成用複合シート。
【請求項3】
前記基材と前記粘着剤層との間に、これらが貼り合わされていない非貼り合わせ領域が存在しないか、又は前記非貼り合わせ領域が存在する場合には、前記非貼り合わせ領域の前記基材と前記粘着剤層との間の距離が0.5μm以下である、請求項2に記載の保護膜形成用複合シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持シート及び保護膜形成用複合シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆるフェースダウン(face down)方式と呼ばれる実装法を適用した半導体装置の製造が行われている。フェースダウン方式においては、回路面上にバンプ等の電極を有する半導体チップが用いられ、前記電極が基板と接合される。このため、半導体チップの回路面とは反対側の裏面は剥き出しとなることがある。
【0003】
この剥き出しとなった半導体チップの裏面には、保護膜として、有機材料を含有する樹脂膜が形成され、保護膜付き半導体チップとして半導体装置に取り込まれることがある。保護膜は、ダイシング工程やパッケージングの後に、半導体チップにおいてクラックが発生するのを防止するために利用される。
【0004】
このような保護膜は、例えば、硬化性を有する保護膜形成用フィルムを硬化させることで、形成される。また、物性が調節された非硬化性の保護膜形成用フィルムが、そのまま保護膜として利用されることもある。そして、保護膜形成用フィルムは、半導体ウエハの裏面に貼付されて、使用される。保護膜形成用フィルムは、例えば、半導体ウエハの加工時に用いる支持シートと一体化された、保護膜形成用複合シートの状態で、半導体ウエハの裏面に貼付されることもあるし、支持シートとは一体化されていない状態で、半導体ウエハの裏面に貼付されることもある。
【0005】
保護膜形成用複合シートが、その中の保護膜形成用フィルムによって、半導体チップの裏面に貼付された後は、それぞれ適したタイミングで、保護膜形成用フィルムの硬化による保護膜の形成、保護膜形成用フィルム又は保護膜の切断、半導体ウエハの半導体チップへの分割(ダイシング)、切断後の保護膜形成用フィルム又は保護膜を裏面に備えた半導体チップ(保護膜形成用フィルム付き半導体チップ又は保護膜付き半導体チップ)の、支持シートからのピックアップ等が適宜行われる。そして、保護膜形成用フィルム付き半導体チップをピックアップした場合には、これは保護膜形成用フィルムの硬化によって、保護膜付き半導体チップとされ、最終的に保護膜付き半導体チップを用いて、半導体装置が製造される。このように、保護膜形成用複合シート中の支持シートは、ダイシングシートとして利用可能である。なお、保護膜形成用フィルムが非硬化性である場合には、これらの各工程において、保護膜形成用フィルムはそのまま保護膜として取り扱われる。
【0006】
一方、保護膜形成用フィルムが、支持シートとは一体化されていない状態で、半導体ウエハの裏面に貼付された後は、この保護膜形成用フィルムの半導体ウエハの貼付面とは反対側の露出面に、支持シートが貼付される。以降は、上述の保護膜形成用複合シートを用いた場合と同じ方法で、保護膜付き半導体チップ又は保護膜形成用フィルム付き半導体チップが得られ、半導体装置が製造される。この場合、保護膜形成用フィルムは、支持シートとは一体化されていない状態で、半導体ウエハの裏面に貼付されるが、貼付後での支持シートとの一体化によって、保護膜形成用複合シートを構成する。
【0007】
このような保護膜形成用複合シートとしては、例えば、凹凸加工面を有する基材及びこの基材の前記凹凸加工面側に積層された粘着剤層を有するダイシングテープ(支持シート)と、このダイシングテープの粘着剤層上に積層された半導体裏面保護用フィルム(保護膜形成用フィルム)と、を備えるダイシングテープ一体型半導体裏面保護用フィルム(保護膜形成用複合シート)であって、前記ダイシングテープのヘイズが45%以下であるダイシングテープ一体型半導体裏面保護用フィルムが開示されている(特許文献1参照)。
【0008】
しかし、特許文献1で開示されている保護膜形成用複合シート(ダイシングテープ一体型半導体裏面保護用フィルム)においては、基材の凹凸加工面側に粘着剤層が積層されていることで、粘着剤層や、この粘着剤層上に積層された保護膜形成用フィルム(半導体裏面保護用フィルム)に、上述の凹凸の影響が表れることがある。例えば、粘着剤層の保護膜形成用フィルム側の面が凹凸面となることにより、粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの間に、これらが貼り合わされていない領域(非貼り合わせ領域)が生じ、これらの積層性が低下することがある。また、保護膜又は保護膜形成用フィルムの粘着剤層側の面には、レーザー照射によって印字が行われることあるが、粘着剤層の厚さが不均一となり、粘着剤層が厚い部位においては、基材及び粘着剤層を介した印字の視認性が低下することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、基材の凹凸面側に粘着剤層を備えて構成された支持シートであって、その粘着剤層上に保護膜形成用フィルムを備えた保護膜形成用複合シートにおいて、粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの良好な積層性と、保護膜又は保護膜形成用フィルムの支持シートを介した良好な印字視認性と、を実現可能な支持シート、及び前記支持シートを備えた保護膜形成用複合シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、基材を備え、前記基材上に粘着剤層を備えた支持シートであって、前記基材の前記粘着剤層側の面が凹凸面であり、前記支持シートの5箇所から試験片を切り出し、これら5枚の試験片において、それぞれ粘着剤層の厚さの最小値及び最大値を求めたとき、前記最小値の平均値が1.5μm以上であり、前記最大値の平均値が9μm以下である、支持シートを提供する。
【0012】
本発明の支持シートにおいては、前記粘着剤層が、前記基材の凹凸面に直接接触していてもよい。
また、本発明は、前記支持シート中の粘着剤層上に、保護膜形成用フィルムを備えた、保護膜形成用複合シートを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の支持シートを用いて保護膜形成用複合シートを構成することにより、粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの良好な積層性と、保護膜又は保護膜形成用フィルムの支持シートを介した良好な印字視認性と、を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る支持シート及び保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートを支持シートとともに模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートを支持シートとともに模式的に示す断面図である。
【
図4】
図1に示す支持シート及び保護膜形成用複合シートの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
◇支持シート及び保護膜形成用複合シート
本発明の一実施形態に係る支持シートは、基材を備え、前記基材上に粘着剤層を備えた支持シートであって、前記基材の前記粘着剤層側の面が凹凸面であり、前記支持シートの5箇所から試験片を切り出し、これら5枚の試験片において、それぞれ粘着剤層の厚さの最小値及び最大値を求めたとき、前記最小値の平均値(本明細書においては、「S値」と称することがある)が1.5μm以上となり、前記最大値の平均値(本明細書においては、「L値」と称することがある)が9μm以下となる。
また、本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートは、前記支持シート中の粘着剤層上に、保護膜形成用フィルムを備えている。
【0016】
前記支持シートは、基材の凹凸面側に粘着剤層を備えているが、この支持シートを備えて構成された保護膜形成用複合シートにおいては、この凹凸面の影響が抑制される。
より具体的には、前記粘着剤層のS値が1.5μm以上であることで、粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの積層性が良好となる。本明細書において、「積層性」とは、特に断りのない限り、対象となる2層の積層状態の正常度を意味する。「積層性が良好である」とは、例えば、対象となる隣り合う2層の間に、非貼り合わせ領域(空隙部)が全くないか、又は非貼り合わせ領域の数が少なくかつ非貼り合わせ領域の層間距離が小さいことを意味する。
一方、前記粘着剤層のL値が9μm以下であることで、保護膜又は保護膜形成用フィルムの、支持シートを介した印字視認性が良好となる。
【0017】
前記試験片は、支持シートの5箇所から切り出したものであり、支持シートを、その厚さ方向の全域において切断して得られたものである。試験片は、支持シートを構成する全層を備えた細片である。
【0018】
試験片の大きさは、特に限定されないが、試験片を構成する各層(基材、粘着剤層等)の積層面又は露出面の1辺の長さは、2mm以上であることが好ましい。このような大きさの試験片を用いることで、より高精度に、粘着剤層のS値及びL値が求められる。
前記1辺の長さの最大値は、特に限定されない。例えば、試験片の作製がより容易である点では、前記1辺の長さは、10mm以下であることが好ましい。
【0019】
試験片の平面形状、すなわち、試験片を構成する各層(基材、粘着剤層等)の積層面又は露出面の形状は、多角形状であることが好ましく、試験片の切り出しがより容易である点では、四角形状であることがより好ましい。
【0020】
試験片で好ましいものとしては、例えば、試験片を構成する各層(基材、粘着剤層等)の積層面又は露出面が、大きさが3mm×3mmの四角形状であるものが挙げられる。ただし、これは好ましい試験片の一例である。
【0021】
支持シートにおける試験片の5箇所の切り出し位置は、特に限定されないが、粘着剤層のS値及びL値をより高精度に求められるように、後述する保護膜形成用フィルムの積層予定位置を考慮して選択できる。
例えば、支持シートにおける1枚の保護膜形成用フィルムの積層予定位置のうち、保護膜形成用フィルムの中心(重心)部が配置予定である1箇所と、保護膜形成用フィルムの周縁部寄りの部位で、かつこの中心(重心)部に対してほぼ点対象の位置が配置予定である4箇所と、の5箇所が挙げられる。
【0022】
支持シートにおいて、試験片の切り出し位置の中心(重心)間距離は、50~200mmであることが好ましい。このようにすることで、粘着剤層のS値及びL値をより高精度に求められる。
【0023】
試験片から、粘着剤層のS値及びL値を求めるためには、試験片において断面を新たに形成し、この形成した断面において、各試験片ごとに、粘着剤層の厚さの最小値及び最大値を測定する。
新たに形成する断面は、1枚の試験片につき、1面のみでもよいし、2面以上でもよいが、通常は、1面のみでも十分である。
そして、これら少なくとも5つの最小値及び最大値から、S値及びL値を算出すればよい。
【0024】
試験片においては、公知の方法で断面を形成できる。例えば、公知の断面試料作製装置(クロスセクションポリッシャー)を用いることで、ばらつきを抑制して高い再現性で、試験片において断面を形成できる。
【0025】
粘着剤層の厚さの最小値及び最大値は、例えば、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、試験片の前記断面を観察することで、測定できる。
【0026】
各試験片の前記断面において、粘着剤層の厚さの最小値及び最大値を測定する領域は、試験片を構成する各層(基材、粘着剤層等)の積層方向に対して直交する方向(概ね各層の積層面又は露出面に対して平行な方向)における、50~1500μmの領域であることが好ましい。このようにすることで、高効率かつ高精度に、粘着剤層の厚さの最小値及び最大値を測定できる。
【0027】
保護膜形成用複合シートを構成していない段階での支持シートと、保護膜形成用複合シートを構成している支持シートと、の間で、粘着剤層の厚さの最小値を比較した場合、これら最小値は互いに同じとなるか、又は、保護膜形成用複合シートを構成している支持シートでの前記最小値の方が、僅かに小さくなる程度であり、このように小さくなる場合も、その差は無視し得る程度である。
粘着剤層の厚さの最大値についても同様である。すなわち、保護膜形成用複合シートを構成していない段階での支持シートと、保護膜形成用複合シートを構成している支持シートと、の間で、粘着剤層の厚さの最大値を比較した場合、これら最大値は互いに同じとなるか、又は、保護膜形成用複合シートを構成している支持シートでの前記最大値の方が、僅かに小さくなる程度であり、このように小さくなる場合も、その差は無視し得る程度である。
したがって、支持シートではなく、保護膜形成用複合シートから切り出した試験片を用いて、支持シートから切り出した試験片を用いた場合と同じ方法で、粘着剤層のS値及びL値を求めてもよい。このように保護膜形成用複合シートから切り出した試験片を用いたときに、粘着剤層のS値が1.5μm以上となり、粘着剤層のL値が9μm以下となる場合、この保護膜形成用複合シートは、上述の本発明の効果が反映されたものとなっている。
【0028】
すなわち、本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートは、前記支持シート中の粘着剤層上に、保護膜形成用フィルムを備えた保護膜形成用複合シートであって、前記保護膜形成用複合シートの5箇所から試験片を切り出し、これら5枚の試験片において、それぞれ粘着剤層の厚さの最小値及び最大値を求めたとき、前記最小値の平均値(S値)が1.5μm以上となり、前記最大値の平均値(L値)が9μm以下となる。
【0029】
なお、保護膜形成用複合シートから切り出した試験片は、保護膜形成用複合シートを、その厚さ方向の全域において切断して得られたものであり、保護膜形成用複合シートを構成する全層を備えた細片である。
【0030】
以下、図面を参照しながら、本発明の保護膜形成用複合シートの全体の構成について説明する。なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態に係る支持シート及び保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート1Aは、基材11を備え、基材11上に粘着剤層12を備え、粘着剤層12上に保護膜形成用フィルム13を備えている。支持シート10は、基材11及び粘着剤層12の積層体であり、保護膜形成用複合シート1Aは、換言すると、支持シート10の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)10a上に保護膜形成用フィルム13が積層された構成を有する。また、保護膜形成用複合シート1Aは、さらに保護膜形成用フィルム13上に剥離フィルム15を備えている。
【0032】
保護膜形成用複合シート1Aにおいては、基材11の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)11aに粘着剤層12が積層され、粘着剤層12の基材11側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)12aの全面に保護膜形成用フィルム13が積層され、保護膜形成用フィルム13の、粘着剤層12側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)13aの一部、すなわち、周縁部近傍の領域に治具用接着剤層16が積層され、保護膜形成用フィルム13の第1面13aのうち、治具用接着剤層16が積層されていない面と、治具用接着剤層16の、保護膜形成用フィルム13と接触していない面16a(上面及び側面)に、剥離フィルム15が積層されている。
なお、
図1中、符号13bは、保護膜形成用フィルム13の粘着剤層12側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)を示している。
【0033】
治具用接着剤層16は、例えば、接着剤成分を含有する単層構造のものであってもよいし、芯材となるシートの両面に接着剤成分を含有する層が積層された複数層構造のものであってもよい。
【0034】
保護膜形成用複合シート1Aにおいて、基材11の第1面11aは凹凸面である。
また、粘着剤層12は、基材11の第1面(凹凸面)11aに直接接触して設けられている。そのため、粘着剤層12の基材11側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)12bは、凹凸面である。
【0035】
保護膜形成用複合シート1Aにおいて、基材11の、粘着剤層12側とは反対側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)11bは、凹凸面及び平滑面(非凹凸面、ツヤ面)のいずれであってもよいが、平滑面であることが好ましい。基材11の第2面11bは、支持シート10の保護膜形成用フィルム13側とは反対側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)10bであるともいえる。
「凹凸面」、「平滑面」については、後ほど詳しく説明する。
【0036】
図1に示す保護膜形成用複合シート1Aは、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム13の第1面13aに半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、治具用接着剤層16の面16aのうち上面が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0037】
図2は、本発明の他の実施形態に係る保護膜形成用複合シートを支持シートとともに模式的に示す断面図である。
なお、
図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0038】
ここに示す保護膜形成用複合シート1Bは、治具用接着剤層16を備えていない点以外は、
図1に示す保護膜形成用複合シート1Aと同じである。すなわち、保護膜形成用複合シート1Bにおいては、基材11の第1面11aに粘着剤層12が積層され、粘着剤層12の第1面12aの全面に保護膜形成用フィルム13が積層され、保護膜形成用フィルム13の第1面13aの全面に剥離フィルム15が積層されている。
【0039】
保護膜形成用複合シート1Bにおいても、基材11の第1面11aは凹凸面である。
また、粘着剤層12は、基材11の第1面(凹凸面)11aに直接接触して設けられている。そのため、粘着剤層12の基材11側の面(第2面)12bは、凹凸面である。
保護膜形成用複合シート1Bにおいても、基材11の第2面11b(換言すると、支持シート10の第2面10b)は、凹凸面及び平滑面(非凹凸面)のいずれであってもよいが、平滑面であることが好ましい。
【0040】
図2に示す保護膜形成用複合シート1Bは、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム13の第1面13aのうち、中央側の一部の領域に半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、周縁部近傍の領域が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0041】
図3は、本発明のさらに他の実施形態に係る保護膜形成用複合シートを支持シートとともに模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート1Cは、保護膜形成用フィルムの形状が異なる点以外は、
図2に示す保護膜形成用複合シート1Bと同じである。すなわち、保護膜形成用複合シート1Cは、基材11を備え、基材11上に粘着剤層12を備え、粘着剤層12上に保護膜形成用フィルム23を備えている。支持シート10は、基材11及び粘着剤層12の積層体であり、保護膜形成用複合シート1Cは、換言すると、支持シート10の第1面(保護膜形成用フィルム23側の面)10a上に保護膜形成用フィルム23が積層された構成を有する。また、保護膜形成用複合シート1Cは、さらに保護膜形成用フィルム23上に剥離フィルム15を備えている。
【0042】
保護膜形成用複合シート1Cにおいては、基材11の第1面11aに粘着剤層12が積層され、粘着剤層12の第1面12aの一部、すなわち、中央側の領域に保護膜形成用フィルム23が積層されている。そして、粘着剤層12の第1面12aのうち、保護膜形成用フィルム23が積層されていない領域と、保護膜形成用フィルム23の、粘着剤層12と接触していない面23a(上面及び側面)の上に、剥離フィルム15が積層されている。
なお、
図3中、符号23bは、保護膜形成用フィルム23の粘着剤層12側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)を示している。
【0043】
保護膜形成用複合シート1Cを上方から見下ろして平面視したときに、保護膜形成用フィルム23は粘着剤層12よりも表面積が小さく、例えば、円形状等の形状を有する。
【0044】
保護膜形成用複合シート1Cにおいても、基材11の第1面11aは凹凸面である。
また、粘着剤層12は、基材11の第1面(凹凸面)11aに直接接触して設けられている。そのため、粘着剤層12の基材11側の面(第2面)12bは、凹凸面である。
保護膜形成用複合シート1Cにおいても、基材11の第2面11b(換言すると、支持シート10の第2面10b)は、凹凸面及び平滑面(非凹凸面)のいずれであってもよいが、平滑面であることが好ましい。
【0045】
図3に示す保護膜形成用複合シート1Cは、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム23の面23aに半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、粘着剤層12の第1面12aのうち、保護膜形成用フィルム23が積層されていない領域が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0046】
なお、
図3に示す保護膜形成用複合シート1Cにおいては、粘着剤層12の第1面12aのうち、保護膜形成用フィルム23が積層されていない領域に、
図1に示すものと同様に治具用接着剤層が積層されていてもよい(図示略)。このような治具用接着剤層を備えた保護膜形成用複合シート1Cは、
図1に示す保護膜形成用複合シートと同様に、治具用接着剤層の上面が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0047】
このように、保護膜形成用複合シートは、支持シート及び保護膜形成用フィルムがどのような形態であっても、治具用接着剤層を備えたものであってもよい。ただし、通常は、
図1に示すように、治具用接着剤層を備えた保護膜形成用複合シートとしては、保護膜形成用フィルム上に治具用接着剤層を備えたものが好ましい。
【0048】
本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートは、
図1~
図3に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、
図1~
図3に示すものの一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。
【0049】
例えば、
図1~
図3に示す保護膜形成用複合シートにおいては、基材11と粘着剤層12との間に中間層が設けられていてもよい。すなわち、本発明の保護膜形成用複合シートにおいて、支持シートは、基材、中間層及び粘着剤層がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されていてもよい。中間層としては、目的に応じて任意のものを選択できる。
また、
図1~
図3に示す保護膜形成用複合シートは、前記中間層以外の層が、任意の箇所に設けられていてもよい。
また、保護膜形成用複合シートにおいては、剥離フィルムと、この剥離フィルムと直接接触している層との間に、一部隙間が生じていてもよい。
また、保護膜形成用複合シートにおいては、各層の大きさや形状は、目的に応じて任意に調節できる。
【0050】
ただし、
図1~
図3に示すように、保護膜形成用複合シートにおいては、粘着剤層が基材の凹凸面(第1面)に直接接触していること、換言すると、基材と粘着剤層との間に中間層を備えておらず、基材上に粘着剤層が直接接触して積層されていることが好ましい。
また、保護膜形成用複合シートにおいては、保護膜形成用フィルムが粘着剤層の第1面に直接接触していること、換言すると、粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの間に他の層を備えておらず、粘着剤層上に保護膜形成用フィルムが直接接触して積層されていることが好ましい。
そして、保護膜形成用複合シートは、これらの条件をともに満たすもの、すなわち、基材、粘着剤層及び保護膜形成用フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において、互いに直接接触して積層されて、構成されているものが、より好ましい。
【0051】
前記支持シートは、透明であることが好ましい。
支持シートは、目的に応じて着色されていてもよいし、他の層が蒸着されていてもよい。
例えば、保護膜形成用フィルムがエネルギー線硬化性である場合には、支持シートはエネルギー線を透過させることが好ましい。
【0052】
本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、放射線、電子線等が挙げられる。紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンランプ、キセノンランプ、ブラックライト又はLEDランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
本明細書において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味し、「非エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射しても硬化しない性質を意味する。
【0053】
支持シートにおいて、波長375nmの光の透過率は、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることが特に好ましい。前記光の透過率がこのような範囲であることで、支持シートを介して保護膜形成用フィルムにエネルギー線(紫外線)を照射しときに、保護膜形成用フィルムの硬化度がより向上する。
支持シートにおいて、波長375nmの光の透過率の上限値は、特に限定されない。例えば、前記光の透過率は95%以下であってもよい。
【0054】
支持シートにおいて、波長532nmの光の透過率は、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることが特に好ましい。前記光の透過率がこのような範囲であることで、支持シートを介して保護膜形成用フィルム又は保護膜にレーザー光を照射して、これらに印字したときに、より明りょうに印字できる。
支持シートにおいて、波長532nmの光の透過率の上限値は、特に限定されない。例えば、前記光の透過率は95%以下であってもよい。
【0055】
支持シートにおいて、波長1064nmの光の透過率は、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることが特に好ましい。前記光の透過率がこのような範囲であることで、支持シートを介して保護膜形成用フィルム又は保護膜にレーザー光を照射して、これらに印字したときに、より明りょうに印字できる。
支持シートにおいて、波長1064nmの光の透過率の上限値は、特に限定されない。例えば、前記光の透過率は95%以下であってもよい。
【0056】
支持シートの透過鮮明度は、30以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましく、200以上であることが特に好ましい。前記透過鮮明度がこのような範囲であることで、支持シートを介して、保護膜形成用フィルムの浮き剥がれ、印字の不具合、及び欠け等の確認がより容易になる。
支持シートの透過鮮明度は、特に限定されない。例えば、前記透過鮮明度は430以下であってもよい。
支持シートの透過鮮明度は、JIS K 7374-2007に準拠して測定できる。
【0057】
次に、支持シート及び保護膜形成用複合シートを構成する各層について、詳細に説明する。
【0058】
○基材
前記基材は、シート状又はフィルム状であり、凹凸面を有する。
【0059】
本明細書において、「凹凸面」とは、JIS B 0601:2013で規定される最大高さ粗さRzが、0.01μm以上である面を意味する。
また、「平滑面」とは、凹凸面ではなく、平滑度が高い面を意味し、「非凹凸面」又は「ツヤ面」と称することもある。例えば、平滑面には、前記凹凸面に該当しない程度の、ごく小さい凹凸度の面が包含される。
【0060】
基材においては、一方の面のみが凹凸面であってもよいし、両面がともに凹凸面であってもよいが、一方の面のみが凹凸面であることが好ましい。換言すると、前記基材においては、一方の面のみが平滑面であることが好ましい。支持シートにおいては、基材の凹凸面が、粘着剤層を備える側の面となる。
【0061】
基材は1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
基材が複数層からなる場合には、これら複数層のうちの最外層の面(粘着剤層に最も近い面、又は、粘着剤層に最も近い面及び最も遠い面の両面)が、前記凹凸面となる。
【0062】
本明細書においては、基材の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0063】
基材の粘着剤層を備える側の凹凸面(第1面)において、JIS B 0601:2013に準拠して測定された最大高さ粗さ(Rz)は、0.01~8μmであることが好ましく、0.1~7μmであることがより好ましく、0.5~6μmであることが特に好ましい。基材の前記Rzが前記下限値以上であることで、基材を単独でロール状に巻き取り、繰り出すときの不具合の発生が抑制される。さらに、支持シート又は保護膜形成用複合シートの製造過程において、基材を含む積層物についても、同様に、巻き取り、繰り出すときの不具合の発生が抑制される。一方、基材の前記Rzが前記上限値以下であることで、粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの積層性、並びに、保護膜又は保護膜形成用フィルムの、支持シートを介した印字視認性が、ともに良好となる。
【0064】
基材の両面がともに凹凸面である場合には、これら両面の凹凸度は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0065】
前記基材の構成材料としては、例えば、各種樹脂が挙げられる。
前記樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン;ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ノルボルネン樹脂等のポリエチレン以外のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ノルボルネン共重合体等のエチレン系共重合体(モノマーとしてエチレンを用いて得られた共重合体);ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂(モノマーとして塩化ビニルを用いて得られた樹脂);ポリスチレン;ポリシクロオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、すべての構成単位が芳香族環式基を有する全芳香族ポリエステル等のポリエステル;2種以上の前記ポリエステルの共重合体;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリウレタン;ポリウレタンアクリレート;ポリイミド;ポリアミド;ポリカーボネート;フッ素樹脂;ポリアセタール;変性ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリスルホン;ポリエーテルケトン等が挙げられる。
また、前記樹脂としては、例えば、前記ポリエステルとそれ以外の樹脂との混合物等のポリマーアロイも挙げられる。前記ポリエステルとそれ以外の樹脂とのポリマーアロイは、ポリエステル以外の樹脂の量が比較的少量であるものが好ましい。
また、前記樹脂としては、例えば、ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上が架橋した架橋樹脂;ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上を用いたアイオノマー等の変性樹脂も挙げられる。
【0066】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。(メタ)アクリル酸と類似の用語についても同様であり、例えば、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する概念である。
【0067】
基材を構成する樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0068】
基材の厚さは、50~300μmの範囲内であることが好ましく、60~150μmの範囲内であることがより好ましい。基材の厚さがこのような範囲内であることで、前記保護膜形成用複合シートの可撓性と、半導体ウエハ又は半導体チップへの貼付性がより向上する。
基材は、上述のとおり、凹凸面を有しているため、その厚さは基材の部位によって変動している。したがって、基材の厚さの最小値が前記下限値以上であってもよく、基材の厚さの最大値が前記上限値以下であってもよい。
なお、「基材の厚さ」とは、基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材の厚さとは、基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0069】
基材の厚さは、例えば、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、基材の側面又は断面を観察することで、測定できる。
基材の断面は、例えば、上述の支持シート及び保護膜形成用複合シートの試験片における断面の場合と同様の方法で形成できる。
【0070】
例えば、先に説明した方法により、支持シート又は保護膜形成用複合シートの複数個所(例えば5箇所)から試験片を切り出し、この試験片において、基材の厚さの最小値及び最大値を求め、これらの値からさらに、これら最小値の平均値及び最大値の平均値を求めたとき、前記最小値の平均値が上述の基材の厚さの下限値以上であってもよく、前記最大値の平均値が上述の基材の厚さの上限値以下であってもよい。
【0071】
基材は、前記樹脂等の主たる構成材料以外に、充填材、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
【0072】
基材は、透明であることが好ましい。
基材は、目的に応じて着色されていてもよいし、他の層が蒸着されていてもよい。
例えば、保護膜形成用フィルムがエネルギー線硬化性である場合には、基材はエネルギー線を透過させることが好ましい。
【0073】
基材は、その上に設けられる粘着剤層等の、直接接触する層との密着性を向上させるために、コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理等が表面に施されたものであってもよい。
また、基材は、表面がプライマー処理を施されたものであってもよい。
また、基材は、帯電防止コート層;保護膜形成用複合シートを重ね合わせて保存する際に、基材が他のシートに接着することや、基材が吸着テーブルに接着することを防止する層等を有するものであってもよい。
【0074】
基材は、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する基材は、前記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。
【0075】
凹凸面を有しない基材(換言すると、両面が平滑面である基材)を用いる場合には、基材の平滑面を凹凸化処理すればよい。
凹凸化処理は、公知の方法で行うことができる。例えば、凹凸面を有する金属ロール又は金属板を用い、その前記凹凸面を、基材の平滑面に押圧することで、基材の平滑面を凹凸化処理できる。このとき、加熱された状態の金属ロール又は金属板を、基材の平滑面に押圧することが好ましい。また、基材の平滑面は、サンドブラスト処理、又は溶剤処理等によっても、凹凸化処理できる。
【0076】
○粘着剤層
前記粘着剤層は、シート状又はフィルム状である。
粘着剤層においては、通常は、基材と粘着剤層との間の中間層の有無によらず、基材の前記凹凸面の影響を受けて、少なくとも基材側の面が凹凸面となっている。
【0077】
粘着剤層は1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
粘着剤層が複数層からなる場合には、これら複数層のうちの最外層の面(基材に最も近い面)が、前記凹凸面となる。
【0078】
ここで、図面を参照しながら、基材及び粘着剤層について、さらに詳細に説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す拡大断面図である。ここでは、
図1に示す保護膜形成用複合シート1Aを例に挙げて、説明する。なお、
図4においては、剥離フィルムの図示を省略している。
【0079】
先の説明のとおり、基材11の第1面11aは凹凸面である。そして、粘着剤層12は、基材11の第1面(凹凸面)11aに直接接触して設けられており、粘着剤層12の第2面12bは、基材11の第1面11aに追従し易くなっている。したがって、粘着剤層12の第2面12bも凹凸面となる。
【0080】
粘着剤層12の厚さTaは、一定ではなく、粘着剤層12の部位によって変動する。ここでは、粘着剤層12の厚さの最小値を符号Ta1で示し、粘着剤層12の厚さの最大値を符号Ta2で示している。
【0081】
保護膜形成用複合シート1Aにおいては、その5箇所から試験片を切り出し、これら5枚の試験片において、断面を形成して、この新たに形成された断面において、それぞれ粘着剤層の厚さの最小値Ta1及び最大値Ta2が求められる。そして、少なくとも5つのTa1の値から、その平均値(前記S値)を求めると、1.5μm以上となり、少なくとも5つのTa2の値から、その平均値(前記L値)求めると、9μm以下となる。
【0082】
保護膜形成用複合シート1Aからの試験片の切り出しと、試験片における断面の形成と、前記断面における、粘着剤層の厚さの最小値Ta1及び最大値Ta2の測定とは、先の説明のように、保護膜形成用複合シートを構成していない支持シートから試験片を切り出した場合と、同様に行うことができる。
【0083】
なお、保護膜形成用複合シートを構成していない支持シートの拡大断面図は、
図4において、保護膜形成用フィルム13の図示を省略したものと、同じである。
【0084】
保護膜形成用複合シート1Aとして、ここでは、基材11と粘着剤層12との間に、これらが貼り合わされていない領域(本明細書においては、「非貼り合わせ領域」と称することがある)91が存在するものを示している。ただし、保護膜形成用複合シート1Aが、このような非貼り合わせ領域91を有していても、保護膜形成用複合シート1Aの厚さ方向における、非貼り合わせ領域91の大きさが、例えば、0.5μm以下である保護膜形成用複合シート1Aは、基材11と粘着剤層12との積層性が良好であり、良好な特性を有しているといえる。
【0085】
なお、本明細書において、「保護膜形成用複合シートの厚さ方向における、非貼り合わせ領域の大きさ」とは、「保護膜形成用複合シートにおいて隣り合う2層の、前記シートの厚さ方向における層間距離」を意味し、単に「層間距離」と称することがある。例えば、上述の「保護膜形成用複合シート1Aの厚さ方向における、非貼り合わせ領域91の大きさ」とは、「前記シート1Aの厚さ方向における、基材11と粘着剤層12との間の層間距離」を意味する。
1箇所の非貼り合わせ領域の大きさ(層間距離)が変動している場合には、その最大値を非貼り合わせ領域の大きさ(層間距離)として採用する。
【0086】
非貼り合わせ領域の大きさ(層間距離)は、例えば、上述の粘着剤層の厚さの場合と同じ方法で測定できる。すなわち、粘着剤層の厚さを求めるときと同じ方法で、保護膜形成用複合シートの試験片において断面を形成し、この断面において、非貼り合わせ領域の大きさを求めることができる。あるいは、試験片を作製せずに、保護膜形成用複合シート自体で断面を形成し、この断面において、非貼り合わせ領域の大きさを求めてもよい。
【0087】
非貼り合わせ領域91の大きさ(前記層間距離)は、例えば、0.4μm以下、0.3μm以下、0.2μm以下及び0.1μm以下のいずれかであってもよい。
【0088】
保護膜形成用複合シート1Aにおいては、非貼り合わせ領域91が全く存在しないこともある。
【0089】
ここでは、保護膜形成用複合シート1Aを例に挙げて、基材及び粘着剤層について説明したが、保護膜形成用複合シート1B、保護膜形成用複合シート1C等の、他の実施形態の保護膜形成用複合シートの場合も、基材及び粘着剤層は同様である。
【0090】
粘着剤層のS値は、1.5μm以上であり、かつ9μm未満であれば、特に限定されないが、1.7μm以上であることが好ましく、1.9μm以上であることがより好ましく、例えば、2.3μm以上、2.7μm以上、3.1μm以上、及び3.5μm以上のいずれかであってもよい。前記S値が前記下限値以上であることで、粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの積層性がより良好となる。
【0091】
一方、粘着剤層のS値は、例えば、8μm以下であってもよい。このような粘着剤層は、より容易に形成できる。
【0092】
粘着剤層のS値は、上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、粘着剤層のS値は、好ましくは1.5~8μm、より好ましくは1.7~8μm、さらに好ましくは1.9~8μmであり、例えば、2.3~8μm、2.7~8μm、3.1~8μm、及び3.5~8μmのいずれかであってもよい。ただし、これらは、粘着剤層のS値の一例である。
【0093】
粘着剤層のL値は、9μm以下であり、かつ1.5μmよりも大きければ、特に限定されないが、8.6μm以下であることが好ましく、8.3μm以下であることがより好ましく、例えば、7.7μm以下、7.3μm以下、6.9μm以下、及び6.5μm以下のいずれかであってもよい。前記L値が前記上限値以下であることで、保護膜又は保護膜形成用フィルムの、支持シートを介した印字視認性がより良好となる。
【0094】
一方、粘着剤層のL値は、例えば、2.5μm以上であってもよい。このような粘着剤層は、より容易に形成できる。
【0095】
粘着剤層のL値は、上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、粘着剤層のL値は、好ましくは2.5~9μm、より好ましくは2.5~8.6μm、さらに好ましくは2.5~8.3μmであり、例えば、2.5~7.7μm、2.5~7.3μm、2.5~6.9μm、及び2.5~6.5μmのいずれかであってもよい。
【0096】
粘着剤層の厚さ(例えば、Ta)は、上述のS値及びL値の条件を満たす限り、特に限定されない。
例えば、粘着剤層の厚さは、1.5~9μmであってもよい。
【0097】
なお、「粘着剤層の厚さ」とは、粘着剤層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる粘着剤層の厚さとは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。このような観点から、上述の粘着剤層の厚さの最小値及び最大値を規定する。
【0098】
粘着剤層は、粘着剤を含有する。
前記粘着剤としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、エステル系樹脂等の粘着性樹脂が挙げられ、アクリル系樹脂が好ましい。
【0099】
本明細書において、「粘着性樹脂」とは、粘着性を有する樹脂と、接着性を有する樹脂と、の両方を含む概念であり、例えば、樹脂自体が粘着性を有するものだけでなく、添加剤等の他の成分との併用により粘着性を示す樹脂や、熱又は水等のトリガーの存在によって接着性を示す樹脂等も含む。
【0100】
粘着剤層は、透明であることが好ましい。
粘着剤層は、目的に応じて着色されていてもよい。
例えば、保護膜形成用フィルムがエネルギー線硬化性である場合には、粘着剤層はエネルギー線を透過させることが好ましい。
【0101】
粘着剤層は、エネルギー線硬化性粘着剤を用いて形成されたものであってもよいし、非エネルギー線硬化性粘着剤を用いて形成されたものであってもよい。エネルギー線硬化性の粘着剤を用いて形成された粘着剤層は、硬化前及び硬化後での物性を、容易に調節できる。
【0102】
<<粘着剤組成物>>
粘着剤層は、粘着剤を含有する粘着剤組成物を用いて形成できる。例えば、粘着剤層の形成対象面に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に粘着剤層を形成できる。粘着剤層のより具体的な形成方法は、それ以外の層の形成方法とともに、後ほど詳細に説明する。粘着剤組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、粘着剤層の前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0103】
本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0104】
粘着剤組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0105】
粘着剤組成物の乾燥条件は、特に限定されないが、粘着剤組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。溶媒を含有する粘着剤組成物は、例えば、70~130℃で10秒~5分の条件で乾燥させることが好ましい。
【0106】
粘着剤層がエネルギー線硬化性である場合、エネルギー線硬化性粘着剤を含有する粘着剤組成物、すなわち、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)(以下、「粘着性樹脂(I-1a)」と略記することがある)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-1);非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)の側鎖に不飽和基が導入されたエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)(以下、「粘着性樹脂(I-2a)」と略記することがある)を含有する粘着剤組成物(I-2);前記粘着性樹脂(I-2a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-3)等が挙げられる。
【0107】
<粘着剤組成物(I-1)>
前記粘着剤組成物(I-1)は、上述の様に、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する。
【0108】
[粘着性樹脂(I-1a)]
前記粘着性樹脂(I-1a)は、アクリル系樹脂であることが好ましい。
前記アクリル系樹脂としては、例えば、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有するアクリル系重合体が挙げられる。
前記アクリル系樹脂が有する構成単位は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0109】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキルエステルを構成するアルキル基の炭素数が1~20であるのものが挙げられ、前記アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、より具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸イコシル等が挙げられる。
【0110】
粘着剤層の粘着力が向上する点から、前記アクリル系重合体は、前記アルキル基の炭素数が4以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有することが好ましい。そして、粘着剤層の粘着力がより向上する点から、前記アルキル基の炭素数は、4~12であることが好ましく、4~8であることがより好ましい。また、前記アルキル基の炭素数が4以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。
【0111】
前記アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有することが好ましい。
前記官能基含有モノマーとしては、例えば、前記官能基が後述する架橋剤と反応することで架橋の起点となったり、前記官能基が後述する不飽和基含有化合物中の不飽和基と反応することで、アクリル系重合体の側鎖に不飽和基の導入を可能とするものが挙げられる。
【0112】
官能基含有モノマー中の前記官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。
すなわち、官能基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
【0113】
前記水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ビニルアルコール、アリルアルコール等の非(メタ)アクリル系不飽和アルコール((メタ)アクリロイル骨格を有しない不飽和アルコール)等が挙げられる。
【0114】
前記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するモノカルボン酸);フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するジカルボン酸);前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物;2-カルボキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸カルボキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0115】
官能基含有モノマーは、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマーが好ましく、水酸基含有モノマーがより好ましい。
【0116】
前記アクリル系重合体を構成する官能基含有モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0117】
前記アクリル系重合体において、官能基含有モノマー由来の構成単位の含有量は、構成単位の全量に対して、1~35質量%であることが好ましく、2~30質量%であることがより好ましく、3~27質量%であることが特に好ましい。
【0118】
前記アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位、及び官能基含有モノマー由来の構成単位以外に、さらに、他のモノマー由来の構成単位を有していてもよい。
前記他のモノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等と共重合可能なものであれば特に限定されない。
前記他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド等が挙げられる。
【0119】
前記アクリル系重合体を構成する前記他のモノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0120】
前記アクリル系重合体は、上述の非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)として使用できる。
一方、前記アクリル系重合体中の官能基に、エネルギー線重合性不飽和基(エネルギー線重合性基)を有する不飽和基含有化合物を反応させたものは、上述のエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)として使用できる。
【0121】
粘着剤組成物(I-1)が含有する粘着性樹脂(I-1a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0122】
粘着剤組成物(I-1)において、粘着性樹脂(I-1a)の含有量は、粘着剤組成物(I-1)の総質量に対し、5~99質量%であることが好ましく、10~95質量%であることがより好ましく、15~90質量%であることが特に好ましい。
【0123】
[エネルギー線硬化性化合物]
粘着剤組成物(I-1)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物としては、エネルギー線重合性不飽和基を有し、エネルギー線の照射により硬化可能なモノマー又はオリゴマーが挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物のうち、モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオール(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレート;ポリエーテル(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物のうち、オリゴマーとしては、例えば、上記で例示したモノマーが重合してなるオリゴマー等が挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物は、分子量が比較的大きく、粘着剤層の貯蔵弾性率を低下させにくいという点では、ウレタン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
【0124】
粘着剤組成物(I-1)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0125】
前記粘着剤組成物(I-1)において、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量は、粘着剤組成物(I-1)の総質量に対し、1~95質量%であることが好ましく、5~90質量%であることがより好ましく、10~85質量%であることが特に好ましい。
【0126】
[架橋剤]
粘着性樹脂(I-1a)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-1)は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
【0127】
前記架橋剤は、例えば、前記官能基と反応して、粘着性樹脂(I-1a)同士を架橋するものである。
架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのアダクト体等のイソシアネート系架橋剤(イソシアネート基を有する架橋剤);エチレングリコールグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤(グリシジル基を有する架橋剤);ヘキサ[1-(2-メチル)-アジリジニル]トリフオスファトリアジン等のアジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤);アルミニウムキレート等の金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤);イソシアヌレート系架橋剤(イソシアヌル酸骨格を有する架橋剤)等が挙げられる。
粘着剤の凝集力を向上させて粘着剤層の粘着力を向上させる点、及び入手が容易である等の点から、架橋剤はイソシアネート系架橋剤であることが好ましい。
【0128】
粘着剤組成物(I-1)が含有する架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0129】
前記粘着剤組成物(I-1)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-1a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、0.1~20質量部であることがより好ましく、0.3~15質量部であることが特に好ましい。
【0130】
[光重合開始剤]
粘着剤組成物(I-1)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(I-1)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
【0131】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;ベンゾフェノン;2,4-ジエチルチオキサントン;1,2-ジフェニルメタン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン;2-クロロアントラキノン等が挙げられる。
また、前記光重合開始剤としては、例えば、1-クロロアントラキノン等のキノン化合物;アミン等の光増感剤等を用いることもできる。
【0132】
粘着剤組成物(I-1)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0133】
粘着剤組成物(I-1)において、光重合開始剤の含有量は、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.03~10質量部であることがより好ましく、0.05~5質量部であることが特に好ましい。
【0134】
[その他の添加剤]
粘着剤組成物(I-1)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
前記その他の添加剤としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填材(フィラー)、防錆剤、着色剤(顔料、染料)、増感剤、粘着付与剤、反応遅延剤、架橋促進剤(触媒)等の公知の添加剤が挙げられる。
なお、反応遅延剤とは、例えば、粘着剤組成物(I-1)中に混入している触媒の作用によって、保存中の粘着剤組成物(I-1)において、目的としない架橋反応が進行するのを抑制するものである。反応遅延剤としては、例えば、触媒に対するキレートによってキレート錯体を形成するものが挙げられ、より具体的には、1分子中にカルボニル基(-C(=O)-)を2個以上有するものが挙げられる。
【0135】
粘着剤組成物(I-1)が含有するその他の添加剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0136】
粘着剤組成物(I-1)において、その他の添加剤の含有量は特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0137】
[溶媒]
粘着剤組成物(I-1)は、溶媒を含有していてもよい。粘着剤組成物(I-1)は、溶媒を含有していることで、塗工対象面への塗工適性が向上する。
【0138】
前記溶媒は有機溶媒であることが好ましく、前記有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン;酢酸エチル等のエステル(カルボン酸エステル);テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;シクロヘキサン、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;1-プロパノール、2-プロパノール等のアルコール等が挙げられる。
【0139】
前記溶媒としては、例えば、粘着性樹脂(I-1a)の製造時に用いたものを粘着性樹脂(I-1a)から取り除かずに、そのまま粘着剤組成物(I-1)において用いてもよいし、粘着性樹脂(I-1a)の製造時に用いたものと同一又は異なる種類の溶媒を、粘着剤組成物(I-1)の製造時に別途添加してもよい。
【0140】
粘着剤組成物(I-1)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0141】
粘着剤組成物(I-1)において、溶媒の含有量は特に限定されず、適宜調節すればよい。
【0142】
<粘着剤組成物(I-2)>
前記粘着剤組成物(I-2)は、上述の様に、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)の側鎖に不飽和基が導入されたエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)を含有する。
【0143】
[粘着性樹脂(I-2a)]
前記粘着性樹脂(I-2a)は、例えば、粘着性樹脂(I-1a)中の官能基に、エネルギー線重合性不飽和基を有する不飽和基含有化合物を反応させることで得られる。
【0144】
前記不飽和基含有化合物は、前記エネルギー線重合性不飽和基以外に、さらに粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と反応することで、粘着性樹脂(I-1a)と結合可能な基を有する化合物である。
前記エネルギー線重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基(エテニル基)、アリル基(2-プロペニル基)等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と結合可能な基としては、例えば、水酸基又はアミノ基と結合可能なイソシアネート基及びグリシジル基、並びにカルボキシ基又はエポキシ基と結合可能な水酸基及びアミノ基等が挙げられる。
【0145】
前記不飽和基含有化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0146】
粘着剤組成物(I-2)が含有する粘着性樹脂(I-2a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0147】
粘着剤組成物(I-2)において、粘着性樹脂(I-2a)の含有量は、粘着剤組成物(I-2)の総質量に対し、5~99質量%であることが好ましく、10~95質量%であることがより好ましく、10~90質量%であることが特に好ましい。
【0148】
[架橋剤]
粘着性樹脂(I-2a)として、例えば、粘着性樹脂(I-1a)におけるものと同様の、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-2)は、さらに架橋剤を含有していてもよい。
【0149】
粘着剤組成物(I-2)における前記架橋剤としては、粘着剤組成物(I-1)における架橋剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-2)が含有する架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0150】
前記粘着剤組成物(I-2)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、0.1~20質量部であることがより好ましく、0.3~15質量部であることが特に好ましい。
【0151】
[光重合開始剤]
粘着剤組成物(I-2)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(I-2)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
【0152】
粘着剤組成物(I-2)における前記光重合開始剤としては、粘着剤組成物(I-1)における光重合開始剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-2)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0153】
粘着剤組成物(I-2)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.03~10質量部であることがより好ましく、0.05~5質量部であることが特に好ましい。
【0154】
[その他の添加剤]
粘着剤組成物(I-2)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
粘着剤組成物(I-2)における前記その他の添加剤としては、粘着剤組成物(I-1)におけるその他の添加剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-2)が含有するその他の添加剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0155】
粘着剤組成物(I-2)において、その他の添加剤の含有量は特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0156】
[溶媒]
粘着剤組成物(I-2)は、粘着剤組成物(I-1)の場合と同様の目的で、溶媒を含有していてもよい。
粘着剤組成物(I-2)における前記溶媒としては、粘着剤組成物(I-1)における溶媒と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-2)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I-2)において、溶媒の含有量は特に限定されず、適宜調節すればよい。
【0157】
<粘着剤組成物(I-3)>
前記粘着剤組成物(I-3)は、上述の様に、前記粘着性樹脂(I-2a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する。
【0158】
粘着剤組成物(I-3)において、粘着性樹脂(I-2a)の含有量は、粘着剤組成物(I-3)の総質量に対し、5~99質量%であることが好ましく、10~95質量%であることがより好ましく、15~90質量%であることが特に好ましい。
【0159】
[エネルギー線硬化性化合物]
粘着剤組成物(I-3)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物としては、エネルギー線重合性不飽和基を有し、エネルギー線の照射により硬化可能なモノマー及びオリゴマーが挙げられ、粘着剤組成物(I-1)が含有するエネルギー線硬化性化合物と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-3)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0160】
前記粘着剤組成物(I-3)において、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~300質量部であることが好ましく、0.03~200質量部であることがより好ましく、0.05~100質量部であることが特に好ましい。
【0161】
[光重合開始剤]
粘着剤組成物(I-3)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(I-3)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
【0162】
粘着剤組成物(I-3)における前記光重合開始剤としては、粘着剤組成物(I-1)における光重合開始剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-3)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0163】
粘着剤組成物(I-3)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)及び前記エネルギー線硬化性化合物の総含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.03~10質量部であることがより好ましく、0.05~5質量部であることが特に好ましい。
【0164】
[その他の添加剤]
粘着剤組成物(I-3)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
前記その他の添加剤としては、粘着剤組成物(I-1)におけるその他の添加剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-3)が含有するその他の添加剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0165】
粘着剤組成物(I-3)において、その他の添加剤の含有量は特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0166】
[溶媒]
粘着剤組成物(I-3)は、粘着剤組成物(I-1)の場合と同様の目的で、溶媒を含有していてもよい。
粘着剤組成物(I-3)における前記溶媒としては、粘着剤組成物(I-1)における溶媒と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-3)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I-3)において、溶媒の含有量は特に限定されず、適宜調節すればよい。
【0167】
<粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物>
ここまでは、粘着剤組成物(I-1)、粘着剤組成物(I-2)及び粘着剤組成物(I-3)について主に説明したが、これらの含有成分として説明したものは、これら3種の粘着剤組成物以外の全般的な粘着剤組成物(本明細書においては、「粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物」と称する)でも、同様に用いることができる。
【0168】
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物としては、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物以外に、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物も挙げられる。
非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、エステル系樹脂等の、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)を含有する粘着剤組成物(I-4)が挙げられ、アクリル系樹脂を含有するものが好ましい。
【0169】
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物は、1種又は2種以上の架橋剤を含有することが好ましく、その含有量は、上述の粘着剤組成物(I-1)等の場合と同様とすることができる。
【0170】
<粘着剤組成物(I-4)>
粘着剤組成物(I-4)で好ましいものとしては、例えば、前記粘着性樹脂(I-1a)と、架橋剤と、を含有するものが挙げられる。
【0171】
[粘着性樹脂(I-1a)]
粘着剤組成物(I-4)における粘着性樹脂(I-1a)としては、粘着剤組成物(I-1)における粘着性樹脂(I-1a)と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-4)が含有する粘着性樹脂(I-1a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0172】
粘着剤組成物(I-4)において、粘着性樹脂(I-1a)の含有量は、粘着剤組成物(I-4)の総質量に対し、5~99質量%であることが好ましく、10~95質量%であることがより好ましく、15~90質量%であることが特に好ましい。
【0173】
粘着剤組成物(I-4)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する粘着性樹脂(I-1a)の含有量の割合(すなわち、粘着剤層の粘着性樹脂(I-1a)の含有量)は、30~90質量%であることが好ましく、40~85質量%であることがより好ましく、50~80質量%であることが特に好ましい。
【0174】
[架橋剤]
粘着性樹脂(I-1a)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-4)は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
【0175】
粘着剤組成物(I-4)における架橋剤としては、粘着剤組成物(I-1)における架橋剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-4)が含有する架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0176】
前記粘着剤組成物(I-4)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-1a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、0.3~50質量部であることがより好ましく、1~50質量部であることがさらに好ましく、例えば、10~50質量部、15~50質量部、及び20~50質量部等のいずれかであってもよい。
【0177】
[その他の添加剤]
粘着剤組成物(I-4)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
前記その他の添加剤としては、粘着剤組成物(I-1)におけるその他の添加剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-4)が含有するその他の添加剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0178】
粘着剤組成物(I-4)において、その他の添加剤の含有量は特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0179】
[溶媒]
粘着剤組成物(I-4)は、粘着剤組成物(I-1)の場合と同様の目的で、溶媒を含有していてもよい。
粘着剤組成物(I-4)における前記溶媒としては、粘着剤組成物(I-1)における溶媒と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-4)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I-4)において、溶媒の含有量は特に限定されず、適宜調節すればよい。
【0180】
前記保護膜形成用複合シートにおいて、粘着剤層は非エネルギー線硬化性であることが好ましい。これは、粘着剤層がエネルギー線硬化性であると、エネルギー線の照射によって保護膜形成用フィルムを硬化させるときに、粘着剤層も同時に硬化するのを抑制できないことがあるためである。粘着剤層が保護膜形成用フィルムと同時に硬化してしまうと、硬化後の保護膜形成用フィルム(すなわち、保護膜)及び粘着剤層がこれらの界面において剥離不能な程度に貼り付いてしまうことがある。その場合、硬化後の保護膜形成用フィルム、すなわち保護膜を裏面に備えた半導体チップ(保護膜付き半導体チップ)を、硬化後の粘着剤層を備えた支持シートから剥離させることが困難となり、保護膜付き半導体チップを正常にピックアップできなくなってしまう。前記支持シートにおいて、粘着剤層を非エネルギー線硬化性のものとすることで、このような不具合を確実に回避でき、保護膜付き半導体チップをより容易にピックアップできる。
【0181】
ここでは、粘着剤層が非エネルギー線硬化性である場合の効果について説明したが、支持シートの保護膜形成用フィルムと直接接触している層が粘着剤層以外の層であっても、この層が非エネルギー線硬化性であれば、同様の効果を奏する。
【0182】
<<粘着剤組成物の製造方法>>
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)や、粘着剤組成物(I-4)等の粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物は、前記粘着剤と、必要に応じて前記粘着剤以外の成分等の、粘着剤組成物を構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
溶媒を用いる場合には、溶媒を溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0183】
◎保護膜形成用フィルム
前記保護膜形成用フィルムは、硬化によって、又は硬化せずにそのままの状態で、保護膜となる。この保護膜は、半導体ウエハ又は半導体チップの裏面(電極形成面とは反対側の面)を保護するためのものである。保護膜形成用フィルムは、軟質であり、貼付対象物に容易に貼付できる。
【0184】
前記保護膜形成用フィルムは、硬化性であってもよいし、非硬化性であってもよい。
硬化性の保護膜形成用フィルムは、熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれであってもよく、熱硬化性及びエネルギー線硬化性の両方の特性を有していてもよい。
保護膜形成用フィルムは、その構成材料を含有する保護膜形成用組成物を用いて形成できる。
【0185】
本明細書において、「非硬化性」とは、加熱やエネルギー線の照射等、如何なる手段によっても、硬化しない性質を意味する。
本発明においては、保護膜形成用フィルムが硬化した後であっても、支持シート及び保護膜形成用フィルムの硬化物(換言すると、支持シート及び保護膜)の積層構造が維持されている限り、この積層体を「保護膜形成用複合シート」と称する。
【0186】
保護膜形成用フィルムは、その種類によらず、1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。保護膜形成用フィルムが複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0187】
ここで再度、
図4を参照しながら、粘着剤層及び保護膜形成用フィルムについて、さらに詳細に説明する。
先の説明のとおり、基材11の第1面11aは凹凸面である。ただし、粘着剤層12においては、そのS値が1.5μm以上であることで、この凹凸面の影響が抑制されており、粘着剤層12の第1面12aにおける凹凸度は小さくなっている。そのため、粘着剤層12と保護膜形成用フィルム13との積層性が良好となる。例えば、粘着剤層12と保護膜形成用フィルム13との間に、これらが貼り合わされていない領域(非貼り合わせ領域)92が存在していても、その数は、保護膜形成用複合シート1A中の保護膜形成用フィルム13の形成領域全域に渡って、3か所以下となるなど、極めて少なくなる。前記非貼り合わせ領域92は、例えば、保護膜形成用複合シート1Aを、基材11側から観察することで、容易に確認できる。
【0188】
さらに、保護膜形成用複合シート1Aが、このような非貼り合わせ領域92を有していても、保護膜形成用複合シート1Aの厚さ方向における、非貼り合わせ領域92の大きさ(層間距離)が、例えば、0.5μm以下である保護膜形成用複合シート1Aは、粘着剤層12と保護膜形成用フィルム13との積層性がより良好である。ここで、「非貼り合わせ領域92の大きさ(層間距離)」とは、「保護膜形成用複合シート1Aの厚さ方向における、粘着剤層12と保護膜形成用フィルム13との間の層間距離」を意味する。
【0189】
非貼り合わせ領域92の大きさ(前記層間距離)は、上述の非貼り合わせ領域91の前記層間距離(大きさ)と同様に、0.5μm以下であることが好ましく、例えば、0.4μm以下、0.3μm以下、0.2μm以下及び0.1μm以下のいずれかであってもよい。
【0190】
非貼り合わせ領域92の大きさ(層間距離)は、例えば、対象となる2層の組み合わせが異なる点以外は、上述の非貼り合わせ領域91の大きさ(層間距離)の場合と同じ方法で求められる。
【0191】
保護膜形成用複合シート1Aにおいては、非貼り合わせ領域92が全く存在しないこともある。
【0192】
一方、上述のとおり、粘着剤層12の第1面12aにおける凹凸度が小さくなっている。そのため、保護膜形成用フィルム13の厚さTpは、一定ではなく、保護膜形成用フィルム13(粘着剤層12)の部位によって変動するものの、その変動幅は極めて小さい。
【0193】
さらに、上述のとおり、粘着剤層12の第1面12aにおける凹凸度が小さくなっているため、保護膜形成用フィルム13の粘着剤層12側の面(第2面)13bは、平滑であるか、又は凹凸度が小さくなっている。したがって、保護膜形成用フィルム13の外観が損なわれていない。
そして、保護膜形成用フィルム13から形成された保護膜においても、その粘着剤層12側の面(第2面)は、平滑であるか、又は凹凸度が小さくなり、保護膜の外観は損なわれないままとなる。
このように、保護膜形成用複合シート1Aにおいて、保護膜形成用フィルム13及び保護膜は、いずれも意匠性に優れるものとすることが可能である。
【0194】
保護膜形成用フィルム13の第2面13bにおいては、凸部の最高部位と、凹部の最深部位と、の間の最大高低差が、2μm以下であることが好ましく、例えば、1.5μm以下、及び1μm以下のいずれかであってもよい。このような保護膜形成用フィルム13及び保護膜は、意匠性に特に優れる。
【0195】
保護膜形成用フィルム13の第2面13bにおける前記最大高低差は、例えば、先に説明した方法により、保護膜形成用複合シートの試験片又は保護膜形成用複合シート自体において断面を形成し、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、この断面を観察することで、求められる。
【0196】
ここでは、保護膜形成用複合シート1Aを例に挙げて、粘着剤層及び保護膜形成用フィルムについて説明したが、保護膜形成用複合シート1B、保護膜形成用複合シート1C等の、他の実施形態の保護膜形成用複合シートの場合も、粘着剤層及び保護膜形成用フィルムは同様である。
【0197】
本発明の保護膜形成用複合シートにおいて、保護膜形成用フィルムの厚さ(例えば、Tp)は、1~100μmであることが好ましく、3~75μmであることがより好ましく、5~50μmであることが特に好ましい。保護膜形成用フィルムの厚さが前記下限値以上であることで、保護能がより高い保護膜を形成できる。保護膜形成用フィルムの厚さが前記上限値以下であることで、過剰な厚さとなることが抑制される。
【0198】
保護膜形成用フィルムの厚さが、保護膜形成用フィルムの部位によって変動している場合には、保護膜形成用フィルムの厚さの最小値が前記下限値以上であってもよく、保護膜形成用フィルムの厚さの最大値が前記上限値以下であってもよい。
【0199】
なお、「保護膜形成用フィルムの厚さ」とは、保護膜形成用フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる保護膜形成用フィルムの厚さとは、保護膜形成用フィルムを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0200】
保護膜形成用フィルムの厚さは、例えば、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、保護膜形成用フィルムの側面又は断面を観察することで、測定できる。
保護膜形成用フィルムの断面は、例えば、上述の支持シート及び保護膜形成用複合シートの試験片における断面の場合と同様の方法で形成できる。
【0201】
例えば、先に説明した方法により、保護膜形成用複合シートの複数個所(例えば5箇所)から試験片を切り出し、この試験片において、保護膜形成用フィルムの厚さの最小値及び最大値を求め、これらの値からさらに、これら最小値の平均値及び最大値の平均値を求めたとき、前記最小値の平均値が上述の保護膜形成用フィルムの厚さの下限値以上であってもよく、前記最大値の平均値が上述の保護膜形成用フィルムの厚さの上限値以下であってもよい。
【0202】
保護膜形成用フィルムは、その構成材料を含有する保護膜形成用組成物を用いて形成できる。例えば、保護膜形成用フィルムの形成対象面に保護膜形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に保護膜形成用フィルムを形成できる。保護膜形成用組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、保護膜形成用フィルムの前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0203】
保護形成用組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0204】
保護膜形成用組成物の乾燥条件は、特に限定されないが、保護膜形成用組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。そして、溶媒を含有する保護膜形成用組成物は、例えば、70~130℃で10秒~5分の条件で乾燥させることが好ましい。ただし、保護膜形成用組成物が熱硬化性である場合には、形成される保護膜形成用フィルムが熱硬化しないように、保護膜形成用組成物を乾燥させることが好ましい。
【0205】
以下、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用組成物について、その種類ごとに、詳細に説明する。
【0206】
○熱硬化性保護膜形成用フィルム
好ましい熱硬化性保護膜形成用フィルムとしては、例えば、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有するものが挙げられる。
重合体成分(A)は、重合性化合物が重合反応して形成されたとみなせる成分である。
熱硬化性成分(B)は、熱を反応のトリガーとして、硬化(重合)反応し得る成分である。なお、本発明において重合反応には、重縮合反応も含まれる。
【0207】
熱硬化性保護膜形成用フィルムを半導体ウエハの裏面に貼付した後に、熱硬化させるときの硬化条件は、硬化物が十分にその機能を発揮する程度の硬化度となる限り特に限定されず、熱硬化性保護膜形成用フィルムの種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、熱硬化性保護膜形成用フィルムの熱硬化時の加熱温度は、100~200℃であることが好ましく、110~180℃であることがより好ましく、120~170℃であることが特に好ましい。そして、前記硬化時の加熱時間は、0.5~5時間であることが好ましく、0.5~3時間であることがより好ましく、1~2時間であることが特に好ましい。
【0208】
<熱硬化性保護膜形成用組成物(III-1)>
好ましい熱硬化性保護膜形成用組成物としては、例えば、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有する熱硬化性保護膜形成用組成物(III-1)(本明細書においては、単に「組成物(III-1)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0209】
[重合体成分(A)]
重合体成分(A)は、熱硬化性保護膜形成用フィルムに造膜性や可撓性等を付与するための成分である。
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する重合体成分(A)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0210】
重合体成分(A)としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル、ウレタン系樹脂、アクリルウレタン樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂、フェノキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド等が挙げられ、アクリル系樹脂が好ましい。
【0211】
重合体成分(A)における前記アクリル系樹脂としては、公知のアクリル重合体が挙げられる。
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000~2000000であることが好ましく、100000~1500000であることがより好ましい。アクリル系樹脂の重量平均分子量が前記下限値以上であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの形状安定性(保管時の経時安定性)が向上する。また、アクリル系樹脂の重量平均分子量が前記上限値以下であることで、被着体の凹凸面へ熱硬化性保護膜形成用フィルムが追従し易くなり、被着体と熱硬化性保護膜形成用フィルムとの間でボイド等の発生がより抑制される。
【0212】
本明細書において、重量平均分子量とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0213】
アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-60~70℃であることが好ましく、-30~50℃であることがより好ましい。アクリル系樹脂のTgが前記下限値以上であることで、例えば、保護膜形成用フィルムの硬化物(すなわち保護膜)と支持シートとの接着力が抑制されて、支持シートの剥離性が適度に向上する。また、アクリル系樹脂のTgが前記上限値以下であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルム及び保護膜の被着体との接着力が向上する。
なお、アクリル系樹に限定されず、本明細書中の樹脂のTgは、例えば、示差走査熱量計(DSC)を用いて、昇温速度又は降温速度を10℃/minとして、-70℃から150℃の間で測定対象物の温度を変化させ、変曲点を確認することで求められる。
【0214】
アクリル系樹脂としては、例えば、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの重合体;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される2種以上のモノマーの共重合体等が挙げられる。
【0215】
アクリル系樹脂を構成する前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イミド;
(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等の置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基を意味する。
【0216】
アクリル系樹脂は、例えば、前記(メタ)アクリル酸エステル以外に、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される1種又は2種以上のモノマーが共重合してなるものでもよい。
【0217】
アクリル系樹脂を構成するモノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0218】
アクリル系樹脂は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の他の化合物と結合可能な官能基を有していてもよい。アクリル系樹脂の前記官能基は、後述する架橋剤(F)を介して他の化合物と結合してもよいし、架橋剤(F)を介さずに他の化合物と直接結合していてもよい。アクリル系樹脂が前記官能基により他の化合物と結合することで、保護膜形成用複合シートを用いて得られたパッケージの信頼性が向上する傾向がある。
【0219】
本発明においては、重合体成分(A)として、アクリル系樹脂以外の熱可塑性樹脂(以下、単に「熱可塑性樹脂」と略記することがある)を、アクリル系樹脂を用いずに単独で用いてもよいし、アクリル系樹脂と併用してもよい。前記熱可塑性樹脂を用いることで、保護膜の支持シートからの剥離性が向上したり、被着体の凹凸面へ熱硬化性保護膜形成用フィルムが追従し易くなり、被着体と熱硬化性保護膜形成用フィルムとの間でボイド等の発生がより抑制されることがある。
【0220】
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は1000~100000であることが好ましく、3000~80000であることがより好ましい。
【0221】
前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-30~150℃であることが好ましく、-20~120℃であることがより好ましい。
【0222】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等が挙げられる。
【0223】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する前記熱可塑性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0224】
組成物(III-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する重合体成分(A)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性保護膜形成用フィルムの重合体成分(A)の含有量)は、重合体成分(A)の種類によらず、5~85質量%であることが好ましく、5~75質量%であることがより好ましく、例えば、5~65質量%、5~50質量%、及び10~35質量%等のいずれかであってもよい。
【0225】
重合体成分(A)は、熱硬化性成分(B)にも該当する場合がある。本発明においては、組成物(III-1)が、このような重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の両方に該当する成分を含有する場合、組成物(III-1)は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有するとみなす。
【0226】
[熱硬化性成分(B)]
熱硬化性成分(B)は、熱硬化性保護膜形成用フィルムを硬化させるための成分である。
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する熱硬化性成分(B)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0227】
熱硬化性成分(B)としては、例えば、エポキシ系熱硬化性樹脂、熱硬化性ポリイミド、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂等が挙げられ、エポキシ系熱硬化性樹脂が好ましい。
【0228】
(エポキシ系熱硬化性樹脂)
エポキシ系熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)からなる。
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有するエポキシ系熱硬化性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0229】
・エポキシ樹脂(B1)
エポキシ樹脂(B1)としては、公知のものが挙げられ、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
【0230】
エポキシ樹脂(B1)としては、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂は、不飽和炭化水素基を有しないエポキシ樹脂よりもアクリル系樹脂との相溶性が高い。そのため、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いることで、保護膜形成用複合シートを用いて得られた保護膜付き半導体チップの信頼性が向上する。
【0231】
不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、多官能系エポキシ樹脂のエポキシ基の一部が不飽和炭化水素基を有する基に変換されてなる化合物が挙げられる。このような化合物は、例えば、エポキシ基へ(メタ)アクリル酸又はその誘導体を付加反応させることにより得られる。
また、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を構成する芳香環等に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合した化合物等が挙げられる。
不飽和炭化水素基は、重合性を有する不飽和基であり、その具体的な例としては、エテニル基(ビニル基)、2-プロペニル基(アリル基)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基等が挙げられ、アクリロイル基が好ましい。
【0232】
エポキシ樹脂(B1)の数平均分子量は、特に限定されないが、熱硬化性保護膜形成用フィルムの硬化性、並びに硬化後の保護膜の強度及び耐熱性の点から、300~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましく、300~3000であることが特に好ましい。
【0233】
本明細書において、数平均分子量とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0234】
エポキシ樹脂(B1)のエポキシ当量は、100~1000g/eqであることが好ましく、150~950g/eqであることがより好ましい。
【0235】
エポキシ樹脂(B1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0236】
・熱硬化剤(B2)
熱硬化剤(B2)は、エポキシ樹脂(B1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤(B2)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。前記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
【0237】
熱硬化剤(B2)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤(B2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0238】
熱硬化剤(B2)は、不飽和炭化水素基を有していてもよい。
不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(B2)としては、例えば、フェノール樹脂の水酸基の一部が、不飽和炭化水素基を有する基で置換されてなる化合物、フェノール樹脂の芳香環に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合してなる化合物等が挙げられる。
熱硬化剤(B2)における前記不飽和炭化水素基は、上述の不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂における不飽和炭化水素基と同様のものである。
【0239】
熱硬化剤(B2)としてフェノール系硬化剤を用いる場合には、保護膜の支持シートからの剥離性が向上する点から、熱硬化剤(B2)は軟化点又はガラス転移温度が高いものが好ましい。
【0240】
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、多官能フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等の樹脂成分の数平均分子量は、300~30000であることが好ましく、400~10000であることがより好ましく、500~3000であることが特に好ましい。
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、ビフェノール、ジシアンジアミド等の非樹脂成分の分子量は、特に限定されないが、例えば、60~500であることが好ましい。
【0241】
熱硬化剤(B2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0242】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、熱硬化剤(B2)の含有量は、エポキシ樹脂(B1)の含有量100質量部に対して、0.1~500質量部であることが好ましく、1~200質量部であることがより好ましく、例えば、1~100質量部、1~50質量部、1~25質量部、及び1~10質量部等のいずれかであってもよい。熱硬化剤(B2)の前記含有量が前記下限値以上であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの硬化がより進行し易くなる。また、熱硬化剤(B2)の前記含有量が前記上限値以下であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの吸湿率が低減されて、保護膜形成用複合シートを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0243】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、熱硬化性成分(B)の含有量(例えば、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)の総含有量)は、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、20~500質量部であることが好ましく、30~300質量部であることがより好ましく、40~150質量部であることがさらに好ましく、例えば、45~100質量部、及び50~80質量部等のいずれかであってもよい。熱硬化性成分(B)の前記含有量がこのような範囲であることで、例えば、保護膜形成用フィルムの硬化物と支持シートとの接着力が抑制されて、支持シートの剥離性が向上する。
【0244】
[硬化促進剤(C)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、硬化促進剤(C)を含有していてもよい。硬化促進剤(C)は、組成物(III-1)の硬化速度を調整するための成分である。
好ましい硬化促進剤(C)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類(1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されたイミダゾール);トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類(1個以上の水素原子が有機基で置換されたホスフィン);テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
【0245】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する硬化促進剤(C)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0246】
硬化促進剤(C)を用いる場合、組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、硬化促進剤(C)の含有量は、熱硬化性成分(B)の含有量100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~7質量部であることがより好ましい。硬化促進剤(C)の前記含有量が前記下限値以上であることで、硬化促進剤(C)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、硬化促進剤(C)の含有量が前記上限値以下であることで、例えば、高極性の硬化促進剤(C)が、高温・高湿度条件下で熱硬化性保護膜形成用フィルム中において被着体との接着界面側に移動して偏析することを抑制する効果が高くなり、保護膜形成用複合シートを用いて得られた保護膜付き半導体チップの信頼性がより向上する。
【0247】
[充填材(D)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、充填材(D)を含有していてもよい。熱硬化性保護膜形成用フィルムは、充填材(D)を含有することにより、前記吸水率及び粘着力変化率を目的とする範囲内に調節することが、より容易となる。また、熱硬化性保護膜形成用フィルム及び保護膜は、充填材(D)を含有することにより、熱膨張係数の調節がより容易となり、この熱膨張係数を、熱硬化性保護膜形成用フィルム又は保護膜の形成対象物に対して最適化することで、保護膜形成用複合シートを用いて得られた保護膜付き半導体チップの信頼性がより向上する。また、熱硬化性保護膜形成用フィルムは、充填材(D)を含有することにより、保護膜の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
【0248】
充填材(D)は、有機充填材及び無機充填材のいずれでもよいが、無機充填材であることが好ましい。
好ましい無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。
これらの中でも、無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましく、シリカであることがより好ましい。
【0249】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する充填材(D)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0250】
充填材(D)を用いる場合、組成物(III-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する充填材(D)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性保護膜形成用フィルムの充填材(D)の含有量)は、5~80質量%であることが好ましく、10~70質量%であることがより好ましく、例えば、20~65質量%、30~65質量%、及び40~65質量%等のいずれかであってもよい。充填材(D)の含有量がこのような範囲であることで、上記の熱膨張係数の調整がより容易となり、また、保護膜形成用フィルム及び保護膜の強度が、より向上する。
【0251】
[カップリング剤(E)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、カップリング剤(E)を含有していてもよい。カップリング剤(E)として、無機化合物又は有機化合物と反応可能な官能基を有するものを用いることにより、熱硬化性保護膜形成用フィルムの被着体に対する接着性及び密着性を向上させることができる。また、カップリング剤(E)を用いることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの硬化物(保護膜)は、耐熱性を損なうことなく、耐水性が向上する。
【0252】
カップリング剤(E)は、重合体成分(A)、熱硬化性成分(B)等が有する官能基と反応可能な官能基を有する化合物であることが好ましく、シランカップリング剤であることがより好ましい。
好ましい前記シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
【0253】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有するカップリング剤(E)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0254】
カップリング剤(E)を用いる場合、組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、カップリング剤(E)の含有量は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の総含有量100質量部に対して、0.03~20質量部であることが好ましく、0.05~10質量部であることがより好ましく、0.1~5質量部であることが特に好ましい。カップリング剤(E)の前記含有量が前記下限値以上であることで、充填材(D)の樹脂への分散性の向上や、熱硬化性保護膜形成用フィルムの被着体との接着性の向上など、カップリング剤(E)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、カップリング剤(E)の前記含有量が前記上限値以下であることで、アウトガスの発生がより抑制される。
【0255】
[架橋剤(F)]
重合体成分(A)として、上述のアクリル系樹脂等の、他の化合物と結合可能なビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の官能基を有するものを用いる場合、組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、架橋剤(F)を含有していてもよい。架橋剤(F)は、重合体成分(A)中の前記官能基を他の化合物と結合させて架橋するための成分であり、このように架橋することにより、熱硬化性保護膜形成用フィルムの初期接着力及び凝集力を調節できる。
【0256】
架橋剤(F)としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤)、アジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0257】
前記有機多価イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物及び脂環族多価イソシアネート化合物(以下、これら化合物をまとめて「芳香族多価イソシアネート化合物等」と略記することがある);前記芳香族多価イソシアネート化合物等の三量体、イソシアヌレート体及びアダクト体;前記芳香族多価イソシアネート化合物等とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。前記「アダクト体」は、前記芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物又は脂環族多価イソシアネート化合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン又はヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物を意味する。前記アダクト体の例としては、後述するようなトリメチロールプロパンのキシリレンジイソシアネート付加物等が挙げられる。また、「末端イソシアネートウレタンプレポリマー」とは、先に説明したとおりである。
【0258】
前記有機多価イソシアネート化合物として、より具体的には、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート;2,6-トリレンジイソシアネート;1,3-キシリレンジイソシアネート;1,4-キシレンジイソシアネート;ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート;3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート;トリメチロールプロパン等のポリオールのすべて又は一部の水酸基に、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートのいずれか1種又は2種以上が付加した化合物;リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0259】
前記有機多価イミン化合物としては、例えば、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等が挙げられる。
【0260】
架橋剤(F)として有機多価イソシアネート化合物を用いる場合、重合体成分(A)としては、水酸基含有重合体を用いることが好ましい。架橋剤(F)がイソシアネート基を有し、重合体成分(A)が水酸基を有する場合、架橋剤(F)と重合体成分(A)との反応によって、熱硬化性保護膜形成用フィルムに架橋構造を簡便に導入できる。
【0261】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する架橋剤(F)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0262】
架橋剤(F)を用いる場合、組成物(III-1)の架橋剤(F)の含有量は、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることが特に好ましい。架橋剤(F)の前記含有量が前記下限値以上であることで、架橋剤(F)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、架橋剤(F)の前記含有量が前記上限値以下であることで、架橋剤(F)の過剰使用が抑制される。
【0263】
[エネルギー線硬化性樹脂(G)]
組成物(III-1)は、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有していてもよい。熱硬化性保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有していることにより、エネルギー線の照射によって特性を変化させることができる。
【0264】
エネルギー線硬化性樹脂(G)は、エネルギー線硬化性化合物を重合(硬化)して得られたものである。
前記エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、分子内に少なくとも1個の重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
【0265】
前記アクリレート系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の鎖状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等の環状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;オリゴエステル(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;エポキシ変性(メタ)アクリレート;前記ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート以外のポリエーテル(メタ)アクリレート;イタコン酸オリゴマー等が挙げられる。
【0266】
前記エネルギー線硬化性化合物の重量平均分子量は、100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
【0267】
重合に用いる前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0268】
組成物(III-1)が含有するエネルギー線硬化性樹脂(G)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0269】
エネルギー線硬化性樹脂(G)を用いる場合、組成物(III-1)のエネルギー線硬化性樹脂(G)の含有量は、1~95質量%であることが好ましく、5~90質量%であることがより好ましく、10~85質量%であることが特に好ましい。
【0270】
[光重合開始剤(H)]
組成物(III-1)は、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有する場合、エネルギー線硬化性樹脂(G)の重合反応を効率よく進めるために、光重合開始剤(H)を含有していてもよい。
【0271】
組成物(III-1)における光重合開始剤(H)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;ベンゾフェノン;2,4-ジエチルチオキサントン;1,2-ジフェニルメタン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン;2-クロロアントラキノン等が挙げられる。
また、前記光重合開始剤としては、例えば、1-クロロアントラキノン等のキノン化合物;アミン等の光増感剤等も挙げられる。
【0272】
組成物(III-1)が含有する光重合開始剤(H)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0273】
光重合開始剤(H)を用いる場合、組成物(III-1)において、光重合開始剤(H)の含有量は、エネルギー線硬化性樹脂(G)の含有量100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましく、2~5質量部であることが特に好ましい。
【0274】
[着色剤(I)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、着色剤(I)を含有していてもよい。
着色剤(I)としては、例えば、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料等、公知のものが挙げられる。
【0275】
前記有機系顔料及び有機系染料としては、例えば、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ピロール系色素、チオインジゴ系色素、金属錯体系色素(金属錯塩染料)、ジチオール金属錯体系色素、インドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、アントラキノン系色素、ジオキサジン系色素、ナフトール系色素、アゾメチン系色素、ベンズイミダゾロン系色素、ピランスロン系色素及びスレン系色等が挙げられる。
【0276】
前記無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、コバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、白金系色素、ITO(インジウムスズオキサイド)系色素、ATO(アンチモンスズオキサイド)系色素等が挙げられる。
【0277】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する着色剤(I)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0278】
着色剤(I)を用いる場合、熱硬化性保護膜形成用フィルムの着色剤(I)の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよい。例えば、熱硬化性保護膜形成用フィルムの着色剤(I)の含有量を調節し、保護膜の光透過性を調節することにより、保護膜に対してレーザー印字を行った場合の印字視認性を調節できる。また、熱硬化性保護膜形成用フィルムの着色剤(I)の含有量を調節することで、保護膜の意匠性を向上させたり、半導体ウエハの裏面の研削痕を見え難くすることもできる。これらの点を考慮すると、組成物(III-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する着色剤(I)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性保護膜形成用フィルムの着色剤(I)の含有量)は、0.1~10質量%であることが好ましく、0.1~7.5質量%であることがより好ましく、0.1~5質量%であることが特に好ましい。着色剤(I)の前記含有量が前記下限値以上であることで、着色剤(I)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、着色剤(I)の前記含有量が前記上限値以下であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの光透過性の過度な低下が抑制される。
【0279】
[汎用添加剤(J)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲内において、汎用添加剤(J)を含有していてもよい。
汎用添加剤(J)は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ゲッタリング剤等が挙げられる。
【0280】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する汎用添加剤(J)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムの汎用添加剤(J)の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0281】
[溶媒]
組成物(III-1)は、さらに溶媒を含有することが好ましい。溶媒を含有する組成物(III-1)は、取り扱い性が良好となる。
前記溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(2-メチルプロパン-1-オール)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
組成物(III-1)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0282】
組成物(III-1)が含有する溶媒は、組成物(III-1)中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン等であることが好ましい。
【0283】
<<熱硬化性保護膜形成用組成物の製造方法>>
組成物(III-1)等の熱硬化性保護膜形成用組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
溶媒を用いる場合には、溶媒を溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0284】
○エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルム
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムとしては、エネルギー線硬化性成分(a)を含有するものが挙げられ、エネルギー線硬化性成分(a)及び充填材を含有するものが好ましい。
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、エネルギー線硬化性成分(a)は、未硬化であることが好ましく、粘着性を有することが好ましく、未硬化でかつ粘着性を有することがより好ましい。ここで、「エネルギー線」及び「エネルギー線硬化性」とは、先に説明したとおりである。
【0285】
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムを半導体ウエハの裏面に貼付した後に、硬化させるときの硬化条件は、硬化物が十分にその機能を発揮する程度の硬化度となる限り特に限定されず、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムの種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムの硬化時における、エネルギー線の照度は、120~280mW/cm2であることが好ましい。そして、前記硬化時における、エネルギー線の光量は、100~1000mJ/cm2であることが好ましい。
【0286】
<エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物(IV-1)>
好ましいエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物としては、例えば、前記エネルギー線硬化性成分(a)を含有するエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物(IV-1)(本明細書においては、単に「組成物(IV-1)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0287】
[エネルギー線硬化性成分(a)]
エネルギー線硬化性成分(a)は、エネルギー線の照射によって硬化する成分であり、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムに造膜性や、可撓性等を付与するとともに、硬化後に硬質の保護膜を形成するための成分でもある。
エネルギー線硬化性成分(a)としては、例えば、エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1)、及びエネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2)が挙げられる。前記重合体(a1)は、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものであってもよいし、架橋されていないものであってもよい。
【0288】
(エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1))
エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1)としては、例えば、他の化合物が有する基と反応可能な官能基を有するアクリル系重合体(a11)と、前記官能基と反応する基、及びエネルギー線硬化性二重結合等のエネルギー線硬化性基を有するエネルギー線硬化性化合物(a12)と、が反応してなるアクリル系樹脂(a1-1)が挙げられる。
【0289】
他の化合物が有する基と反応可能な前記官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基(アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基)、エポキシ基等が挙げられる。ただし、半導体ウエハや半導体チップ等の回路の腐食を防止するという点では、前記官能基はカルボキシ基以外の基であることが好ましい。
これらの中でも、前記官能基は、水酸基であることが好ましい。
【0290】
・官能基を有するアクリル系重合体(a11)
前記官能基を有するアクリル系重合体(a11)としては、例えば、前記官能基を有するアクリル系モノマーと、前記官能基を有しないアクリル系モノマーと、が共重合してなるものが挙げられ、これらモノマー以外に、さらにアクリル系モノマー以外のモノマー(非アクリル系モノマー)が共重合したものであってもよい。
また、前記アクリル系重合体(a11)は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよく、重合方法についても公知の方法を採用できる。
【0291】
前記官能基を有するアクリル系モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、置換アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
【0292】
前記水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ビニルアルコール、アリルアルコール等の非(メタ)アクリル系不飽和アルコール((メタ)アクリロイル骨格を有しない不飽和アルコール)等が挙げられる。
【0293】
前記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するモノカルボン酸);フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するジカルボン酸);前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物;2-カルボキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸カルボキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0294】
前記官能基を有するアクリル系モノマーは、水酸基含有モノマーが好ましい。
【0295】
前記アクリル系重合体(a11)を構成する、前記官能基を有するアクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0296】
前記官能基を有しないアクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0297】
また、前記官能基を有しないアクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等のアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル等を含む、芳香族基を有する(メタ)アクリル酸エステル;非架橋性の(メタ)アクリルアミド及びその誘導体;(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等も挙げられる。
【0298】
前記アクリル系重合体(a11)を構成する、前記官能基を有しないアクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0299】
前記非アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
前記アクリル系重合体(a11)を構成する前記非アクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0300】
前記アクリル系重合体(a11)において、これを構成する構成単位の全量に対する、前記官能基を有するアクリル系モノマーから誘導された構成単位の量の割合(含有量)は、0.1~50質量%であることが好ましく、1~40質量%であることがより好ましく、3~30質量%であることが特に好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、前記アクリル系重合体(a11)と前記エネルギー線硬化性化合物(a12)との共重合によって得られた前記アクリル系樹脂(a1-1)において、エネルギー線硬化性基の含有量は、保護膜の硬化の程度を好ましい範囲に容易に調節可能となる。
【0301】
前記アクリル系樹脂(a1-1)を構成する前記アクリル系重合体(a11)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0302】
組成物(IV-1)において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、アクリル系樹脂(a1-1)の含有量の割合(すなわち、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムのアクリル系樹脂(a1-1)の含有量)は、1~70質量%であることが好ましく、5~60質量%であることがより好ましく、10~50質量%であることが特に好ましい。
【0303】
・エネルギー線硬化性化合物(a12)
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、前記アクリル系重合体(a11)が有する官能基と反応可能な基として、イソシアネート基、エポキシ基及びカルボキシ基からなる群より選択される1種又は2種以上を有するものが好ましく、前記基としてイソシアネート基を有するものがより好ましい。前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、例えば、前記基としてイソシアネート基を有する場合、このイソシアネート基が、前記官能基として水酸基を有するアクリル系重合体(a11)のこの水酸基と容易に反応する。
【0304】
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、1分子中に前記エネルギー線硬化性基を1~5個有することが好ましく、1~3個有することがより好ましい。
【0305】
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;
ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;
ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物等が挙げられる。
これらの中でも、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートであることが好ましい。
【0306】
前記アクリル系樹脂(a1-1)を構成する前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0307】
前記アクリル系樹脂(a1-1)において、前記アクリル系重合体(a11)に由来する前記官能基の含有量に対する、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)に由来するエネルギー線硬化性基の含有量の割合は、20~120モル%であることが好ましく、35~100モル%であることがより好ましく、50~100モル%であることが特に好ましい。前記含有量の割合がこのような範囲であることで、硬化後の保護膜の接着力がより大きくなる。なお、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が一官能(前記基を1分子中に1個有する)化合物である場合には、前記含有量の割合の上限値は100モル%となるが、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が多官能(前記基を1分子中に2個以上有する)化合物である場合には、前記含有量の割合の上限値は100モル%を超えることがある。
【0308】
前記重合体(a1)の重量平均分子量(Mw)は、100000~2000000であることが好ましく、300000~1500000であることがより好ましい。
【0309】
前記重合体(a1)が、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものである場合、前記重合体(a1)は、前記アクリル系重合体(a11)を構成するものとして説明した、上述のモノマーのいずれにも該当せず、かつ架橋剤と反応する基を有するモノマーが重合して、前記架橋剤と反応する基において架橋されたものであってもよいし、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)に由来する、前記官能基と反応する基において、架橋されたものであってもよい。
【0310】
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムが含有する前記重合体(a1)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0311】
(エネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2))
エネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2)中の前記エネルギー線硬化性基としては、エネルギー線硬化性二重結合を含む基が挙げられ、好ましいものとしては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
【0312】
前記化合物(a2)は、上記の条件を満たすものであれば、特に限定されないが、エネルギー線硬化性基を有する低分子量化合物、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂等が挙げられる。
【0313】
前記化合物(a2)のうち、エネルギー線硬化性基を有する低分子量化合物としては、例えば、多官能のモノマー又はオリゴマー等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
前記アクリレート系化合物としては、例えば、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル]プロパン、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル]プロパン、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリロキシプロパン等の2官能(メタ)アクリレート;
トリス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー等の多官能(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
【0314】
前記化合物(a2)のうち、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂としては、例えば、「特開2013-194102号公報」の段落0043等に記載されているものを用いることができる。このような樹脂は、後述する熱硬化性成分を構成する樹脂にも該当するが、本発明においては前記化合物(a2)として取り扱う。
【0315】
前記化合物(a2)の重量平均分子量は、100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
【0316】
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムが含有する前記化合物(a2)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0317】
[エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)]
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、前記エネルギー線硬化性成分(a)として前記化合物(a2)を含有する場合、さらにエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)も含有することが好ましい。
前記重合体(b)は、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものであってもよいし、架橋されていないものであってもよい。
【0318】
エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、アクリル系重合体、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル、ゴム系樹脂、アクリルウレタン樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、前記重合体(b)は、アクリル系重合体(以下、「アクリル系重合体(b-1)」と略記することがある)であることが好ましい。
【0319】
アクリル系重合体(b-1)は、公知のものでよく、例えば、1種のアクリル系モノマーの単独重合体であってもよいし、2種以上のアクリル系モノマーの共重合体であってもよいし、1種又は2種以上のアクリル系モノマーと、1種又は2種以上のアクリル系モノマー以外のモノマー(非アクリル系モノマー)と、の共重合体であってもよい。
【0320】
アクリル系重合体(b-1)を構成する前記アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル、グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、先に説明したとおりである。
【0321】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0322】
前記環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0323】
前記グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。
前記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。
前記置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等が挙げられる。
【0324】
アクリル系重合体(b-1)を構成する前記非アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
【0325】
少なくとも一部が架橋剤によって架橋された、前記エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、前記重合体(b)中の反応性官能基が架橋剤と反応したものが挙げられる。
前記反応性官能基は、架橋剤の種類等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、架橋剤がポリイソシアネート化合物である場合には、前記反応性官能基としては、水酸基、カルボキシ基、アミノ基等が挙げられ、これらの中でも、イソシアネート基との反応性が高い水酸基が好ましい。また、架橋剤がエポキシ系化合物である場合には、前記反応性官能基としては、カルボキシ基、アミノ基、アミド基等が挙げられ、これらの中でもエポキシ基との反応性が高いカルボキシ基が好ましい。ただし、半導体ウエハや半導体チップの回路の腐食を防止するという点では、前記反応性官能基はカルボキシ基以外の基であることが好ましい。
【0326】
前記反応性官能基を有する、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、少なくとも前記反応性官能基を有するモノマーを重合させて得られたものが挙げられる。アクリル系重合体(b-1)の場合であれば、これを構成するモノマーとして挙げた、前記アクリル系モノマー及び非アクリル系モノマーのいずれか一方又は両方として、前記反応性官能基を有するものを用いればよい。反応性官能基として水酸基を有する前記重合体(b)としては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを重合して得られたものが挙げられ、これ以外にも、先に挙げた前記アクリル系モノマー又は非アクリル系モノマーにおいて、1個又は2個以上の水素原子が前記反応性官能基で置換されてなるモノマーを重合して得られたものが挙げられる。
【0327】
反応性官能基を有する前記重合体(b)において、これを構成する構成単位の全量に対する、反応性官能基を有するモノマーから誘導された構成単位の量の割合(含有量)は、1~20質量%であることが好ましく、2~10質量%であることがより好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、前記重合体(b)において、架橋の程度がより好ましい範囲となる。
【0328】
エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の重量平均分子量(Mw)は、組成物(IV-1)の造膜性がより良好となる点から、10000~2000000であることが好ましく、100000~1500000であることがより好ましい。ここで、「重量平均分子量」とは、先に説明したとおりである。
【0329】
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムが含有する、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0330】
組成物(IV-1)としては、前記重合体(a1)及び前記化合物(a2)のいずれか一方又は両方を含有するものが挙げられる。そして、組成物(IV-1)は、前記化合物(a2)を含有する場合、さらにエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)も含有することが好ましく、この場合、さらに前記(a1)を含有することも好ましい。また、組成物(IV-1)は、前記化合物(a2)を含有せず、前記重合体(a1)、及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)をともに含有していてもよい。
【0331】
組成物(IV-1)が、前記重合体(a1)、前記化合物(a2)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)を含有する場合、組成物(IV-1)において、前記化合物(a2)の含有量は、前記重合体(a1)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の総含有量100質量部に対して、10~400質量部であることが好ましく、30~350質量部であることがより好ましい。
【0332】
組成物(IV-1)において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、前記エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の合計含有量の割合(すなわち、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムの前記エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の合計含有量)は、5~90質量%であることが好ましく、10~80質量%であることがより好ましく、20~70質量%であることが特に好ましい。エネルギー線硬化性成分の含有量の前記割合がこのような範囲であることで、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムのエネルギー線硬化性がより良好となる。
【0333】
組成物(IV-1)は、前記エネルギー線硬化性成分以外に、目的に応じて、熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤からなる群より選択される1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0334】
例えば、前記エネルギー線硬化性成分及び熱硬化性成分を含有する組成物(IV-1)を用いることにより、形成されるエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、加熱によって被着体に対する接着力が向上し、このエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムから形成された保護膜の強度も向上する。
また、前記エネルギー線硬化性成分及び着色剤を含有する組成物(IV-1)を用いることにより、形成されるエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、先に説明した熱硬化性保護膜形成用フィルムが着色剤(I)を含有する場合と同様の効果を発現する。
【0335】
組成物(IV-1)における前記熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤としては、それぞれ、組成物(III-1)における熱硬化性成分(B)、充填材(D)、カップリング剤(E)、架橋剤(F)、光重合開始剤(H)、着色剤(I)及び汎用添加剤(J)と同じものが挙げられる。
【0336】
組成物(IV-1)において、前記熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤は、それぞれ、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0337】
組成物(IV-1)における前記熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。
【0338】
組成物(IV-1)は、希釈によってその取り扱い性が向上することから、さらに溶媒を含有するものが好ましい。
組成物(IV-1)が含有する溶媒としては、例えば、上述の組成物(III-1)における溶媒と同じものが挙げられる。
組成物(IV-1)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0339】
<<エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物の製造方法>>
組成物(IV-1)等のエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
溶媒を用いる場合には、溶媒を溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0340】
○非硬化性保護膜形成用フィルム
前記非硬化性保護膜形成用フィルムは、硬化による特性の変化を示さないが、本発明においては、半導体ウエハの前記裏面等、目的とする箇所に貼付された段階で、保護膜を形成したとみなす。
【0341】
好ましい非硬化性保護膜形成用フィルムとしては、例えば、熱可塑性樹脂を含有するものが挙げられる。
【0342】
<非硬化性保護膜形成用組成物(V-1)>
非硬化性保護膜形成用組成物としては、例えば、前記熱可塑性樹脂を含有する非硬化性保護膜形成用組成物(V-1)(本明細書においては、単に「組成物(V-1)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0343】
[熱可塑性樹脂]
前記熱可塑性樹脂は、特に限定されない。
前記熱可塑性樹脂として、より具体的には、例えば、上述の組成物(III-1)の含有成分として挙げた、アクリル系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等の硬化性ではない樹脂と同様のものが挙げられる。
【0344】
組成物(V-1)及び非硬化性保護膜形成用フィルムが含有する前記熱可塑性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0345】
組成物(V-1)において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量の割合(すなわち、非硬化性保護膜形成用フィルムの前記熱可塑性樹脂の含有量)は、5~90質量%であることが好ましく、例えば、10~80質量%、及び20~70質量%等のいずれかであってもよい。
【0346】
組成物(V-1)は、前記熱可塑性樹脂以外に、目的に応じて、充填材、カップリング剤、架橋剤、着色剤及び汎用添加剤からなる群より選択される1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0347】
例えば、前記熱可塑性樹脂及び着色剤を含有する組成物(V-1)を用いることにより、形成される非硬化性保護膜形成用フィルムは、先に説明した熱硬化性保護膜形成用フィルムが着色剤(I)を含有する場合と同様の効果を発現する。
【0348】
組成物(V-1)における前記充填材、カップリング剤、架橋剤、着色剤及び汎用添加剤としては、それぞれ、組成物(III-1)における充填材(D)、カップリング剤(E)、架橋剤(F)、着色剤(I)及び汎用添加剤(J)と同じものが挙げられる。
【0349】
組成物(V-1)において、前記充填材、カップリング剤、架橋剤、着色剤及び汎用添加剤は、それぞれ、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0350】
組成物(V-1)における前記充填材、カップリング剤、架橋剤、着色剤及び汎用添加剤の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。
【0351】
組成物(V-1)は、希釈によってその取り扱い性が向上することから、さらに溶媒を含有するものが好ましい。
組成物(V-1)が含有する溶媒としては、例えば、上述の組成物(III-1)における溶媒と同じものが挙げられる。
組成物(V-1)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0352】
<<非硬化性保護膜形成用組成物の製造方法>>
組成物(V-1)等の非硬化性保護膜形成用組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
溶媒を用いる場合には、溶媒を溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0353】
◎他の層
前記支持シートは、本発明の効果を損なわない範囲内において、基材及び粘着剤層以外に、前記中間層等の他の層を備えていてもよい。
また、前記保護膜形成用複合シートは、本発明の効果を損なわない範囲内において、基材、粘着剤層及び保護膜形成用フィルム以外に、他の層を備えていてもよく、この場合の前記他の層は、支持シートが備えている前記他の層であってもよいし、支持シートとは直接接触せずに配置されていてもよい。
前記他の層は、目的に応じて任意に選択でき、その種類は特に限定されない。
【0354】
前記支持シート及び保護膜形成用複合シートの一実施形態としては、例えば、粘着剤層が非エネルギー線硬化性で、粘着剤層が少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体と、架橋剤と、を含有し、粘着剤層において、前記アクリル系重合体の含有量100質量部に対する架橋剤の含有量が、0.3~50質量部であり、かつ、基材の第1面の前記最大高さ粗さ(Rz)が0.01~8μmであるものが挙げられる。
【0355】
前記支持シート及び保護膜形成用複合シートの一実施形態としては、例えば、粘着剤層が非エネルギー線硬化性で、粘着剤層が少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体と、架橋剤と、を含有し、粘着剤層において、前記アクリル系重合体の含有量100質量部に対する架橋剤の含有量が、0.3~50質量部であり、前記アクリル系重合体が、アルキル基の炭素数が4以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位と、水酸基含有モノマー由来の構成単位と、を有し、かつ、基材の第1面の前記最大高さ粗さ(Rz)が0.01~8μmであるものが挙げられる。
【0356】
前記支持シート及び保護膜形成用複合シートの一実施形態としては、例えば、粘着剤層が非エネルギー線硬化性で、粘着剤層が少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体と、架橋剤と、を含有し、粘着剤層において、前記アクリル系重合体の含有量100質量部に対する架橋剤の含有量が、0.3~50質量部であり、前記アクリル系重合体が、アルキル基の炭素数が4以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位と、水酸基含有モノマー由来の構成単位と、を有し、前記アクリル系重合体において、水酸基含有モノマー由来の構成単位の含有量が、構成単位の全量に対して、1~35質量%であり、かつ、基材の第1面の前記最大高さ粗さ(Rz)が0.01~8μmであるものが挙げられる。
【0357】
前記支持シート及び保護膜形成用複合シートの一実施形態としては、例えば、粘着剤層が非エネルギー線硬化性で、粘着剤層が少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体と、架橋剤と、を含有し、粘着剤層において、前記アクリル系重合体の含有量100質量部に対する架橋剤の含有量が、0.3~50質量部であり、前記アクリル系重合体が、アルキル基の炭素数が4以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位と、水酸基含有モノマー由来の構成単位と、を有し、前記アクリル系重合体において、水酸基含有モノマー由来の構成単位の含有量が、構成単位の全量に対して、1~35質量%であり、前記架橋剤がイソシアネート系架橋剤であり、かつ、基材の第1面の前記最大高さ粗さ(Rz)が0.01~8μmであるものが挙げられる。
【0358】
◇保護膜形成用複合シートの製造方法
前記保護膜形成用複合シートは、例えば、基材、粘着剤層及び保護膜形成用フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された積層シートを作製する工程(本明細書においては、「積層シート作製工程(1)」と称することがある)と、前記積層シートをその厚さ方向において加圧しながら保存する工程(本明細書においては、「積層シート保存工程」と称することがある)と、を有する製造方法(本明細書においては、「製造方法(S1)」と称することがある)によって、製造できる。
各層(基材、粘着剤層及び保護膜形成用フィルム)の形成方法は、先に説明したとおりである。
以下、前記製造方法(S1)について、各工程ごとに、さらに詳細に説明する。
【0359】
◎製造方法(S1)
<<積層シート作製工程(1)>>
前記積層シート作製工程(1)においては、基材、粘着剤層及び保護膜形成用フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された積層シートを作製する。
本工程においては、例えば、上述の各層(基材、粘着剤層、保護膜形成用フィルム等)を対応する位置関係となるように積層することによって、目的とする保護膜形成用複合シートと同じ積層構造を有する積層シートを作製する。
なお、本明細書において、「積層シート」とは、特に断りのない限り、上記のような、目的とする保護膜形成用複合シートと同じ積層構造を有し、かつ、前記積層シート保存工程を行っていないものを意味する。
【0360】
例えば、支持シートを製造するときに、基材上に粘着剤層を積層する場合には、基材上に上述の粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させればよい。
【0361】
一方、例えば、基材上に積層済みの粘着剤層の上に、さらに保護膜形成用フィルムを積層する場合には、粘着剤層上に保護膜形成用組成物を塗工して、保護膜形成用フィルムを直接形成することが可能である。保護膜形成用フィルム以外の層も、この層を形成するための組成物を用いて、同様の方法で、粘着剤層の上にこの層を積層できる。このように、いずれかの組成物を用いて、連続する2層の積層構造を形成する場合には、前記組成物から形成された層の上に、さらに組成物を塗工して新たに層を形成することが可能である。ただし、これら2層のうちの後から積層する層は、別の剥離フィルム上に前記組成物を用いてあらかじめ形成しておき、この形成済みの層の前記剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面を、既に形成済みの残りの層の露出面と貼り合わせることで、連続する2層の積層構造を形成することが好ましい。このとき、前記組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。剥離フィルムは、積層構造の形成後、必要に応じて取り除けばよい。
【0362】
例えば、基材上に粘着剤層が積層され、前記粘着剤層上に保護膜形成用フィルムが積層されてなる保護膜形成用複合シート(支持シートが基材及び粘着剤層の積層物である保護膜形成用複合シート)を製造する場合には、基材上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、基材上に粘着剤層を積層しておき、別途、剥離フィルム上に保護膜形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に保護膜形成用フィルムを形成しておく。そして、この保護膜形成用フィルムの露出面を、基材上に積層済みの粘着剤層の露出面と貼り合わせて、保護膜形成用フィルムを粘着剤層上に積層することで、前記積層シートが得られる。
【0363】
なお、基材上に粘着剤層を積層する場合には、上述の様に、基材上に粘着剤組成物を塗工する方法に代えて、剥離フィルム上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に粘着剤層を形成しておき、この層の露出面を、基材の一方の表面と貼り合わせることで、粘着剤層を基材上に積層してもよい。
いずれの方法においても、剥離フィルムは目的とする積層構造を形成後の任意のタイミングで取り除けばよい。
【0364】
このように、保護膜形成用複合シートを構成する基材以外の層はいずれも、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、目的とする層の表面に貼り合わせる方法で積層できるため、必要に応じてこのような工程を採用する層を適宜選択して、前記積層シートを製造すればよい。
【0365】
例えば、保護膜形成用複合シートは、通常、その支持シートとは反対側の最表層(例えば、保護膜形成用フィルム)の表面に剥離フィルムが貼り合わされた状態で保管される。したがって、この剥離フィルム(好ましくはその剥離処理面)上に、保護膜形成用組成物等の、最表層を構成する層を形成するための組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に最表層を構成する層を形成しておき、この層の剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面上に残りの各層を上述のいずれかの方法で積層し、剥離フィルムを取り除かずに貼り合わせた状態のままとすることでも、前記積層シートが得られる。
【0366】
保護膜形成用複合シートが、前記他の層を備えている場合、上述の積層シート作製工程(1)の適したタイミングで、適した配置位置となるように、前記他の層を設ける工程を適宜追加して行えばよい。
【0367】
積層シート作製工程(1)において作製する前記積層シートの形状は、特に限定されない。例えば、ロール状として巻き取るのに好適な長尺の積層シートを作製してもよいが、長尺ではない他の形状の積層シートを作製してもよい。
【0368】
<<積層シート保存工程>>
前記積層シート保存工程においては、前記積層シートをその厚さ方向において加圧しながら保存する。
本工程において、前記積層シートを加圧しながら保存する方法としては、例えば、長尺の前記積層シートをロール状に巻き取り、この巻き取った積層シートをそのままの状態として、巻き取りによって生じた圧力を積層シートの片面又は両面に加えながら保存する方法;長尺の前記積層シートをロール状に巻き取ることなく、展開した状態の積層シート、又は、長尺ではない前記積層シート、の片面若しくは両面に、圧力を加えながら保管する方法等が挙げられる。
【0369】
長尺の積層シートをロール状に巻き取る場合、積層シートは、その長手方向に巻き取ることが好ましい。
積層シートを巻き取るとき、例えば、巻取り張力は150~170N/mであることが好ましく、巻取り速度は45~55m/minであることが好ましく、巻取り張力のテーパー率(低減率)は85~95%であることが好ましい。このような巻き取り条件を採用することで、より適した圧力で積層シートを加圧保存できる。このような巻き取り条件は、例えば、厚さが100~300μm、幅が300~500mmで、長さが40~60mの積層シートに対して適用するのに特に好適であるが、積層シートの大きさはこれに限定されない。
【0370】
積層シートは、例えば、常温下又は室温下で巻き取ってもよいし、後述するように、巻き取った積層シートを加熱加圧保存するときと同様の温度条件下で巻き取ってもよい。
【0371】
ロール状に巻き取った積層シートは、常温下又は室温下で保存してもよいが、加熱しながら保存することが好ましい。このように加熱加圧保存することで、粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの積層性と、保護膜又は保護膜形成用フィルムの支持シートを介した印字視認性とに、より優れた保護膜形成用複合シートが得られる。
【0372】
積層シートをロール状に巻き取った場合の、保存時の加熱温度は、特に限定されないが、53~75℃であることが好ましく、55~70℃であることがより好ましく、57~65℃であることが特に好ましい。
【0373】
積層シートをロール状に巻き取った場合の保存時間は、特に限定されないが、24~720時間(1~30日)であることが好ましく、48~480時間(2~20日)であることがより好ましく、72~240時間(3~10日)であることが特に好ましい。
【0374】
ロール状に巻き取る積層シートは、例えば、保護膜形成用フィルム及び支持シートが特定の形状に加工され、このように加工された支持シート及び保護膜形成用フィルムの複数枚の積層物が、これらの保護膜形成用フィルム側において、長尺の剥離フィルムに貼り合わされるとともに、この剥離フィルムの長手方向において整列して配置されているものであってもよい。この場合の保護膜形成用フィルムは、半導体ウエハと同一又はほぼ同一の平面形状(通常は円形状)を有することが好ましい。また、この場合の支持シートは、ダイシング装置中の支持シートを固定するための治具と、同一又はほぼ同一の外周の形状を有することが好ましい。また、この場合、剥離フィルムの、前記積層物の貼り合わせ面のうち、短手方向の周縁部近傍には、前記積層物に重ならないように、帯状のシートが設けられていることが好ましい。このシートは、積層シートをロール状に巻き取ったときに、前記積層物の表面における段差(本明細書においては、「積層痕」と称することがある)の発生を抑制するためのものである。前記積層痕は、積層シートのロール中で、前記積層物(加工された支持シート及び保護膜形成用フィルムの積層物)の積層位置がロールの径方向において一致しないことにより、前記積層物の表面に高い圧力がかかることによって生じる。前記シートが前記周縁部近傍に設けられていれば、前記積層物の表面に、このような高い圧力がかかることがなく、前記積層痕の発生が抑制される。
【0375】
長尺の積層シートをロール状に巻き取ることなく、展開した状態とする場合、及び、積層シートが長尺ではない場合には、複数枚のこれら積層シートを、さらに積層して保存することが好ましい。そして、このように積層シートを積層するときには、複数枚のこれら積層シートの向きと周縁部の位置とを、互いに合わせた状態とすることが好ましい。
【0376】
長尺ではない積層シート(換言すると枚葉の積層シート)の形状及び大きさは、特に限定されない。例えば、ダイシング装置を用いて、1枚の半導体ウエハを加工するのに適するように、半導体ウエハの形状及び大きさと、ダイシング装置中の支持シートを固定するための治具の形状及び大きさと、にあわせて、積層シートの形状及び大きさが調節されていることが好ましい。
【0377】
積層した状態の前記積層シートは、常温下又は室温下で保存してもよいが、加熱しながら保存することが好ましい。このように加熱加圧保存することで、粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの積層性と、保護膜又は保護膜形成用フィルムの支持シートを介した印字視認性とに、より優れた保護膜形成用複合シートが得られる。
さらに積層した状態の前記積層シートを加圧保存する場合の、加熱温度及び保存時間は、いずれも、上述の積層シートをロール状に巻き取った場合と、同様とすることができる。
【0378】
製造方法(S1)においては、積層シート保存工程の終了後、積層シートの加圧と、必要に応じて加熱を解除することにより、目的とする保護膜形成用複合シートが得られる。
【0379】
製造方法(S1)の積層シート作製工程(1)においては、基材、粘着剤層及び保護膜形成用フィルムの積層(貼り合わせ)の順番を特に限定していないが、支持シートを予め作製(基材上に予め粘着剤層を積層)し、保護膜形成用フィルムを予め作製しておき、支持シート上に保護膜形成用フィルムを積層する場合には、支持シート及び保護膜形成用フィルムのいずれか一方又は両方を、単独で、これらを積層する前に、上述の積層シートの場合と同じ方法で加圧保存してもよい。積層する前の支持シートを単独で加圧保存することにより、基材と粘着剤層との間の前記非貼り合わせ領域の発生を、より効果的に抑制できる。また、積層する前の保護膜形成用フィルムを単独で加圧保存することにより、保護膜形成用フィルム及び保護膜の粘着剤層側の面(第2面)の凹凸度が小さく(平滑度が大きく)なり、保護膜形成用フィルム及び保護膜の意匠性が向上する。
【0380】
すなわち、前記保護膜形成用複合シートは、例えば、基材及び粘着剤層が積層された支持シートの前記粘着剤層上に、保護膜形成用フィルムを積層することで、基材、粘着剤層及び保護膜形成用フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された積層シートを作製する工程(本明細書においては、「積層シート作製工程(2)」と称することがある)と、前記積層シートをその厚さ方向において加圧しながら保存する工程(保存工程)と、を有し、前記積層シート作製工程(2)の前に、前記支持シート及び保護膜形成用フィルムのいずれか一方又は両方を、その厚さ方向において加圧しながら保存する工程(本明細書においては、支持シートを保存する工程を「支持シート保存工程」と称し、保護膜形成用フィルムを保存する工程を「保護膜形成用フィルム保存工程」と称することがある)をさらに有する製造方法(本明細書においては、「製造方法(S2)」と称することがある)によっても、製造できる。
【0381】
◎製造方法(S2)
前記製造方法(S2)は、上述の積層シート作製工程(1)として積層シート作製工程(2)を行い、さらに、前記支持シート保存工程及び保護膜形成用フィルム保存工程のいずれか一方又は両方を追加して行う点以外は、上述の製造方法(S1)と同じである。
【0382】
<<積層シート作製工程(2)>>
前記積層シート作製工程(2)は、上述のとおり、支持シートを予め作製し、保護膜形成用フィルムを予め作製しておき、支持シート上に保護膜形成用フィルムを積層するというように、各層の積層順が限定されている点以外は、製造方法(S1)における積層シート作製工程(1)と同じである。
【0383】
<<支持シート保存工程、保護膜形成用フィルム保存工程>>
前記支持シート保存工程及び保護膜形成用フィルム保存工程は、それぞれ、保存対象物が積層シートではなく、支持シート又は保護膜形成用フィルムである点以外は、製造方法(S1)における積層シート保存工程と同様に行うことができる。
この場合、例えば、支持シート及び保護膜形成用フィルムの保存時間は、積層シートの場合と同様に、24~720時間(1~30日)、48~480時間(2~20日)、及び72~240時間(3~10日)のいずれかであってもよい。
【0384】
一方、前記支持シート保存工程及び保護膜形成用フィルム保存工程は、それぞれ、上記の様に保存対象物を変更するのに加え、さらに、保存対象物(支持シート又は保護膜形成用フィルム)の保存時間を変更して、これら変更点以外は、製造方法(S1)における積層シート保存工程と同様に行ってもよい。
この場合、例えば、支持シート及び保護膜形成用フィルムの保存時間は、12~720時間(0.5~30日)、12~480時間(0.5~20日)、及び12~240時間(0.5~10日)のいずれかであってもよい。ただし、これは前記保存時間の一例である。
【実施例】
【0385】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0386】
<保護膜形成用組成物の製造原料>
保護膜形成用組成物の製造に用いた原料を以下に示す。
・重合体成分(A)
(A)-1:アクリル酸メチル(85質量部)及びアクリル酸2-ヒドロキシエチル(15質量部)を共重合してなるアクリル系重合体(重量平均分子量370000、ガラス転移温度6℃)
・熱硬化性成分(B1)
(B1)-1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER828」、エポキシ当量184~194g/eq)
(B1)-2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER1055」、エポキシ当量800~900g/eq)
(B1)-3:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC社製「エピクロンHP-7200HH」、エポキシ当量255~260g/eq)
・熱硬化剤(B2)
(B2)-1:ジシアンジアミド(ADEKA社製「アデカハードナーEH-3636AS」、熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤、活性水素量21g/eq)
・硬化促進剤(C)
(C)-1:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製「キュアゾール2PHZ-PW」)
・充填剤(D)
(D)-1:シリカフィラー(アドマテックス社製「SC2050MA」、エポキシ系化合物で表面修飾されたシリカフィラー、平均粒子径0.5μm)
・カップリング剤(E)
(E)-1:3-アミノプロピルトリメトキシシラン(NUC社製「A-1110」)
・着色剤(I)
(I)-1:黒色顔料(大日精化社製)
【0387】
[実施例1]
<支持シートの製造>
(粘着剤組成物(I-4)の製造)
アクリル系重合体(100質量部、固形分)、及び3官能キシリレンジイソシアネート系架橋剤(三井武田ケミカル社製「タケネートD110N」)(40質量部(固形分))を含有し、さらに溶媒としてメチルエチルケトン、トルエン及び酢酸エチルの混合溶媒を含有する、固形分濃度が30質量%の非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-4)を製造した。前記アクリル系重合体は、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)(80質量部)、及びアクリル酸2-ヒドロキシルエチル(HEA)(20質量部)を共重合してなる、重量平均分子量が800000のプレ共重合体である。
【0388】
(支持シートの製造)
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理された剥離フィルム(リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)を用い、その前記剥離処理面に、上記で得られた粘着剤組成物(I-4)を塗工し、120℃で2分加熱乾燥させることにより、非エネルギー線硬化性の粘着剤層を形成した。このとき、粘着剤層の厚さが4μmとなるように条件を設定して、粘着剤組成物(I-4)を塗工した。
【0389】
ポリプロピレン製フィルム(三菱樹脂社製、厚さ80μm)の一方の表面に、金属ロールの凹凸面を加熱しながら転回させて押圧することにより、一方の面が凹凸面であり、他方の面が平滑面(ツヤ面)である基材を作製した。この基材の凹凸面について、JIS B 0601:2013に準拠して、最大高さ粗さ(Rz)を測定したところ、5μmであった。
【0390】
次いで、上記で得られた粘着剤層の露出面に、前記基材の凹凸面を貼り合わせることにより、基材、粘着剤層及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された支持シートを得た。得られた支持シートの幅(換言すると、基材及び粘着剤層の幅)は400mmであった。
以上により、本発明の支持シートを得た。
【0391】
次いで、この支持シートについて、直ちに、後述する基材と粘着剤層との間の非貼り合わせ領域に関する評価を行った。また、この支持シートを、その状態のまま、後述する保護膜形成用複合シートの製造に用いた。
【0392】
<保護膜形成用複合シートの製造>
(保護膜形成用組成物(III-1)の製造)
重合体成分(A)-1(150質量部)、熱硬化性成分(B1)-1(60質量部)、(B1)-2(10質量部)、(B1)-3(30質量部)、(B2)-1(2質量部)、硬化促進剤(C)-1(2質量部)、充填剤(D)-1(320質量部)、カップリング剤(E)-1(2質量部)、及び着色剤(I)-1(18質量部)を、メチルエチルケトン、トルエン及び酢酸エチルの混合溶媒に溶解又は分散させて、23℃で撹拌することで、固形分濃度が51質量%である熱硬化性の保護膜形成用組成物(III-1)を得た。なお、ここに示す配合量は、すべて固形分量である。
【0393】
(保護膜形成用フィルムの製造)
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理された剥離フィルム(第2剥離フィルム、リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)を用い、その前記剥離処理面に、ナイフコーターを用いて、上記で得られた保護膜形成用組成物(III-1)を塗工し、100℃で2分乾燥させることにより、厚さ25μmの熱硬化性の保護膜形成用フィルムを製造した。
【0394】
さらに、得られた保護膜形成用フィルムの、第2剥離フィルムを備えていない側の露出面に、剥離フィルム(第1剥離フィルム、リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)の剥離処理面を貼り合わせることにより、保護膜形成用フィルムの一方の面に第1剥離フィルムを備え、他方の面に第2剥離フィルムを備えた積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの幅(換言すると、保護膜形成用フィルム、第1剥離フィルム及び第2剥離フィルムの幅)は400mmであった。
【0395】
(保護膜形成用複合シートの製造)
直径が5cmで、そのうち表面から3mmまでの深さの領域が、硬度50度の耐熱性シリコーンゴムで構成されている1組(2本)のロールを用意した。
上記で得られた支持シートの粘着剤層から剥離フィルムを取り除いた。また、上記で得られた積層フィルムから第1剥離フィルムを取り除いた。
そして、上記の剥離フィルムを取り除いて生じた粘着剤層の露出面と、上記の第1剥離フィルムを取り除いて生じた保護膜形成用フィルムの露出面と、を向かい合わせて、これら支持シートと保護膜形成用フィルムとを重ね合わせて積層物とするとともに、この積層物を、0.3m/minの速度で、60℃に温度設定されているこれらロール間の隙間を通すことにより、0.5MPaの圧力で加熱押圧(加熱ラミネート)した。これにより、基材、粘着剤層、保護膜形成用フィルム及び第2剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された、目的とする保護膜形成用複合シートと同じ積層構造を有する積層シート(保存前の保護膜形成用複合シート)を作製した。
得られた前記積層シートにおいて、その幅(換言すると支持シートの幅)は400mmであり、保護膜形成用フィルムの外径は330mmであった。
【0396】
次いで、上記で得られた、全体の大きさが400mm×50mの積層シートを、その長手方向を巻き取り方向として、巻取り張力160N/m、巻取り速度50m/min、巻取り張力のテーパー率90%の条件で、ABS樹脂のコアに巻きつけて、ロール状に巻き取った。このとき、基材がロールの径方向において外側へ向くようにして(換言すると、第2剥離フィルムをコアに接触させて)、積層シートを巻き取った。
次いで、このロール状の積層シートを、空気雰囲気下、60℃の温度条件下で、7日(168時間)静置保存した。
以上により、
図2に示す構造を有する、本発明の保護膜形成用複合シートを得た。
【0397】
次いで、このような加熱加圧条件下での保存を終了した後の、本発明の保護膜形成用複合シートについて、以下に示す項目を評価した。
【0398】
<支持シート及び保護膜形成用複合シートの評価>
(粘着剤層の厚さの測定)
上記で得られた保護膜形成用複合シートの5箇所から、大きさが3mm×3mmの試験片を切り出した。この5箇所の切り出し位置は、円形状の保護膜形成用フィルムのうち、中心部に相当する1箇所と、周縁部寄りの部位で、かつこの中心部に対してほぼ点対象の位置に相当する4箇所、とした。これら5箇所の切り出し位置のうち、中心部に相当する1箇所と、それ以外の周縁部寄りの部位の4箇所と、の中心間距離は、100mmであった。
【0399】
断面試料作製装置(JEOL社製「クロスセクションポリッシャーSM-09010」)を用いて、間欠シャッターの条件を「in」10秒、「out」5秒とし、イオンソースの電圧を3kVとし、総ポリッシュ時間を24時間として、前記試験片からその断面を形成した。新たに形成する断面は、1枚の試験片につき、1面のみとした。
【0400】
走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、これら5つの試験片の新たに形成された断面を観察し、各試験片ごとに、粘着剤層の厚さの最小値及び最大値を求めた。このときの試験片の断面の観察領域は、前記断面の幅方向における、1mmの領域とした。
そして、これら最小値の平均値を粘着剤層のS値として採用し、これら最大値の平均値を粘着剤層のL値として採用した。結果を表1に示す。
【0401】
(粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの積層性の評価)
上記で得られた保護膜形成用複合シートに対して、その基材側の外部から光を照射して、粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの間における、非貼り合わせ領域の有無を、基材側の外部から支持シートを介して目視で確認した。このとき、目視確認は、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムの形成領域全域に渡って行った。
そして、下記基準にしたがって、粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの積層性の程度を評価した。結果を表1に示す。
A:非貼り合わせ領域が全くない。
B:非貼り合わせ領域があるが、その数は3か所以下である。
C:非貼り合わせ領域が4か所以上ある。
【0402】
(保護膜の印字視認性の評価)
上記で得られた保護膜形成用複合シートから、第2剥離フィルムを取り除き、これにより生じた保護膜形成用フィルムの露出面(粘着剤層側とは反対側の面)を、8インチの半導体ウエハの裏面に貼付した。このときの貼付は、テープマウンタ(リンテック社製「RAD2700」)を用いて行った。これにより、基材、粘着剤層、保護膜形成用フィルム及び半導体ウエハがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された第1積層構造体を作製した。
【0403】
次いで、レーザー印字装置(EOテクニクス社製「CSM300M」)を用いて、第1積層構造体中の保護膜形成用フィルムのうち、粘着剤層側の面(第2面)に、支持シートを介してレーザー光を照射することにより、印字を行った。このとき、0.3mm×0.2mmの大きさの文字を印字した。
【0404】
次いで、この保護膜形成用フィルムの印字(レーザー印字)を、支持シートを介して目視で観察し、下記基準にしたがって、印字(文字)の視認性を評価した。結果を表1に示す。ここで評価している保護膜形成用フィルムの印字視認性は、保護膜の印字視認性に等しいと見做せる。
A:印字は、鮮明であり、容易に視認可能である。
B:印字は、若干ぼけており、容易には視認できない。
C:印字は、不鮮明であり、視認不可能である。
【0405】
次いで、この保護膜形成用フィルムから支持シート(基材及び粘着剤層)を引き剥がした。そして、光学顕微鏡(キーエンス社製)を用いて、保護膜形成用フィルムに形成されている印字(文字)の線の太さを測定した。その結果、線の太さは40μm以上であり、鮮明に印字されていた。
【0406】
(基材と粘着剤層との間の非貼り合わせ領域の有無、及びその層間距離の評価)
走査型電子顕微鏡(SEM、キーエンス社製「VE-9700」)を用いて、上記で得られた保護膜形成用複合シートについて、基材と粘着剤層との間の非貼り合わせ領域の有無を確認した。そして、非貼り合わせ領域がある場合には、その層間距離を測定した。このときの確認及び測定は、基材と粘着剤層の全域に渡って行った。
なお、この層間距離を測定するときには、上述の試験片の場合と同じ方法で、保護膜形成用複合シートにおいて断面を形成し、この断面において、基材と粘着剤層との間の層間距離を測定した。
そして、下記基準にしたがって、基材と粘着剤層との間の非貼り合わせ領域に関する評価を行った。結果を表1に示す。
A:非貼り合わせ領域が全くない。
B:非貼り合わせ領域があるが、その層間距離が0.5μm以下である。
C:非貼り合わせ領域があり、その層間距離が0.5μmより大きい。
【0407】
(粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの間の非貼り合わせ領域の有無、及びその層間距離の評価)
上述の基材と粘着剤層との間の非貼り合わせ領域に関する評価時に、同時に、粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの間の非貼り合わせ領域の有無を確認した。そして、非貼り合わせ領域がある場合には、その層間距離を測定した。このときの確認及び測定は、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムの形成領域全域に渡って行った。
なお、この層間距離を測定するときには、上述の試験片の場合と同じ方法で、保護膜形成用複合シートにおいて断面を形成し、この断面において、粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの間の層間距離を測定した。
そして、下記基準にしたがって、粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの間の非貼り合わせ領域に関する評価を行った。結果を表1に示す。
A:非貼り合わせ領域が全くない。
B:非貼り合わせ領域があるが、その層間距離が0.5μm以下である。
C:非貼り合わせ領域があり、その層間距離が0.5μmより大きい。
【0408】
(保護膜形成用フィルムの第2面の凹凸度の評価)
上記で得られた保護膜形成用複合シートから、第2剥離フィルムを取り除き、これにより生じた保護膜形成用フィルムの露出面(粘着剤層側とは反対側の面、第1面)を、8インチの半導体ウエハ(厚さ200μm)の裏面に貼付した。このときの貼付は、テープマウンタ(リンテック社製「RAD2700」)を用いて行った。これにより、基材、粘着剤層、保護膜形成用フィルム及び半導体ウエハがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された第1積層構造体を作製した。
次いで、この半導体ウエハへ貼付後の保護膜形成用フィルムのうち、粘着剤層側の面(第2面)の状態を、支持シートを介して目視により確認し、下記基準にしたがって評価した。結果を表1に示す。
ここで評価している、保護膜形成用フィルムの第2面における凹凸度は、保護膜の半導体ウエハ側とは反対側の面(第2面)における凹凸度に等しいと見做せる。
A:平滑であるか、又は凹凸度が極めて小さく、保護膜形成用フィルムの外観が損なわれていない。
B:一部にむらがあり、平滑ではないが、凹凸度が極めて小さく、保護膜形成用フィルムの外観が損なわれていない。
C:凹凸度が大きく、保護膜形成用フィルムの外観が損なわれている。
【0409】
<支持シート及び保護膜形成用複合シートの製造、並びに支持シート及び保護膜形成用複合シートの評価>
[実施例2]
粘着剤層の厚さが、4μmではなく5μmとなるように条件を設定して、粘着剤組成物(I-4)を塗工した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、支持シートを製造し、評価した。
そして、このような支持シートを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。
結果を表1に示す。
【0410】
[実施例3]
粘着剤層の厚さが、4μmではなく6μmとなるように条件を設定して、粘着剤組成物(I-4)を塗工した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、支持シートを製造し、評価した。
そして、このような支持シートを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。
結果を表1に示す。
【0411】
[比較例1]
粘着剤層の厚さが、4μmではなく3μmとなるように条件を設定して、粘着剤組成物(I-4)を塗工した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、支持シートを製造し、評価した。
そして、このような支持シートを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。
結果を表1に示す。
【0412】
[比較例2]
ポリプロピレン製フィルム(三菱樹脂社製、厚さ80μm)の一方の表面に、金属ロールの凹凸面を加熱しながら転回させて押圧することにより、一方の面が凹凸面であり、他方の面が平滑面(ツヤ面)である基材を作製した。このとき用いた金属ロールの凹凸面は、実施例1で用いた金属ロールの凹凸面よりも、凹凸度が大きかった。得られた基材の凹凸面について、JIS B 0601:2013に準拠して、最大高さ粗さ(Rz)を測定したところ、8μmであった。
【0413】
上記で得られた基材を用いた点と、粘着剤層の厚さが、4μmではなく7μmとなるように条件を設定して、粘着剤組成物(I-4)を塗工した点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、支持シートを製造し、評価した。
そして、このような支持シートを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。
結果を表1に示す。
【0414】
【0415】
上記結果から明らかなように、実施例1~3においては、粘着剤層のS値が2μm以上(2~4μm)であり、粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの積層性に特に優れていた。また、これら実施例においては、粘着剤層のL値が8μm以下(6~8μm)であり、保護膜(保護膜形成用フィルム)の印字視認性に特に優れていた。
【0416】
これに対して、比較例1においては、粘着剤層のS値が1μmであり、粘着剤層には極めて薄い領域があった。そのため、粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの間には、多数の非貼り合わせ領域が存在しており、粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの積層性に劣っていた。さらに、このように非貼り合わせ領域が存在することにより、支持シートを介した保護膜(保護膜形成用フィルム)の印字視認性にも劣っていた。
【0417】
また、比較例2においては、粘着剤層のL値が10μmであり、粘着剤層には極めて厚い領域があった。そのため、支持シートを介した保護膜(保護膜形成用フィルム)の印字視認性に劣っていた。
【0418】
なお、実施例1~3においては、基材と粘着剤層との間、粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの間、のいずれにおいても、非貼り合わせ領域が全くないか、又はあってもその層間距離が小さく、保護膜形成用複合シートは良好な特性を有していた。
また、実施例1~3においては、保護膜形成用フィルムの第2面における凹凸度が小さく、保護膜形成用フィルムは外観に優れており、意匠性が高い保護膜を形成可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0419】
本発明は、半導体装置の製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0420】
1A,1B,1C・・・保護膜形成用複合シート、10・・・支持シート、10a・・・支持シートの保護膜形成用フィルム側の面(第1面)、11・・・基材、11a・・・基材の粘着剤層側の面(第1面、凹凸面)、12・・・粘着剤層、12a・・・粘着剤層の基材側とは反対側の面(第1面)、12b・・・粘着剤層の基材側の面(第2面)、13,23・・・保護膜形成用フィルム、13b・・・保護膜形成用フィルムの粘着剤層側の面(第2面)、Ta・・・粘着剤層の厚さ、Ta1・・・粘着剤層の厚さの最小値、Ta2・・・粘着剤層の厚さの最大値