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特許7190486還元剤の非存在下での水蒸気の通過による失活に対する耐性を有する予備改質触媒の調製プロセス及び予備改質触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】還元剤の非存在下での水蒸気の通過による失活に対する耐性を有する予備改質触媒の調製プロセス及び予備改質触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/02 20060101AFI20221208BHJP
   B01J 23/46 20060101ALI20221208BHJP
   B01J 23/50 20060101ALI20221208BHJP
   B01J 37/18 20060101ALI20221208BHJP
   C01B 3/40 20060101ALI20221208BHJP
   C10L 3/08 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B01J37/02 101C
B01J23/46 301M
B01J23/50 M
B01J37/18
C01B3/40
C10L3/08
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020519354
(86)(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 GB2018052781
(87)【国際公開番号】W WO2019069058
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】BR102017021428-1
(32)【優先日】2017-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BR
(73)【特許権者】
【識別番号】591005349
【氏名又は名称】ペトロレオ ブラジレイロ ソシエダ アノニマ - ペトロブラス
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120684
【弁理士】
【氏名又は名称】宮城 三次
(72)【発明者】
【氏名】ポンテス ビッテンコート,ロベルト カルロス
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-045049(JP,A)
【文献】特開2007-105583(JP,A)
【文献】特開2012-061399(JP,A)
【文献】特開2013-137865(JP,A)
【文献】特開2005-185989(JP,A)
【文献】化学工学論文集,1990年,16 巻 5 号,p. 1094-1100,DOI:10.1252/kakoronbunshu.16.1094
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C01B 3/32-3/48
C10L 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元剤の非存在下での蒸気の通過による失活に対する耐性を有する予備改質触媒の調製プロセスであって、
無機Ru塩の溶液を調製する工程と、
前記無機Ru塩の前記溶液でシータアルミナ担体を含浸して、含浸材料を提供する工程と、
1乃至24時間、30°C乃至200°C温度で、空気中で前記含浸材料を乾燥させる工程と、
を備え
前記含浸材料の前記乾燥工程の結果生成された前記材料を取り出し、前記材料を、1乃至5時間、300乃至500°Cの温度条件で、水素、ホルムアルデヒド、及びメタノールから選択される還元剤のストリームの中で還元し、還元材料を提供する工程と、
前記還元材料を冷却し、1乃至5時間、20乃至60°Cの温度で気流に曝す工程と、をさらに備える、予備改質触媒の調製プロセス。
【請求項2】
前記溶液は水溶液である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記無機Ru塩の溶液は、RuCl.HOである、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記含浸材料を乾燥させる工程での乾燥温度が90乃至120℃である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記含浸は、初期湿潤含浸による技術又は過剰溶液法による、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記含浸は、初期湿潤含浸による、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記担体は、さらに、前記担体の重量に基づいて、0.1乃至10wt%のアルカリ金属を含んでいる、請求項1乃至のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記アルカリ金属はカリウムである、請求項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記無機Ru塩の前記溶液は、さらにAgを含んでいる、請求項1乃至のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記無機Ru塩の前記溶液は、さらにAgNOを含んでいる、請求項に記載のプロセス。
【請求項11】
炭化水素が、水素を含む生成物のストリームを生成する水蒸気と反応する工程を備える予備改質プロセスであって、
前記プロセスは、400乃至550°Cの温度で実施され、
前記生成物ストリームは、前記生成物ストリームの重量に基づいて、20wt%を上回るメタン含有量を有し、
前記予備改質は、請求項1乃至10のいずれか1項に記載のプロセスにより取得できる触媒の存在下で行われる、予備改質プロセス。
【請求項12】
前記プロセスは、430乃至490°Cの温度で行われる、請求項11に記載の予備改質プロセス。
【請求項13】
炭化水素が、水素を含む生成物ストリームを生成する水蒸気と反応する予備改質プロセスにおいて、請求項1乃至10のいずれか1項に記載のプロセスにより取得される媒の使用であって、
前記プロセスは、400乃至550°Cの温度で実施され、
前記生成物ストリームは、前記生成物ストリームの重量に基づいて、20wt%を上回るメタン含有量を有する、触媒の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元剤の非存在下での水蒸気の通過による失活に対する耐性を有する、ルテニウムを含有する予備改質触媒の調製プロセス及びこのように得られる予備改質触媒に関する。本発明は、さらに予備改質触媒の存在下で実施される予備改質プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、提供される高発熱量から期待の持てるエネルギー源であり、その上、実質的には環境への汚染を引き起こさないものである。
【0003】
合成ガスと呼ばれる、水素ガス又は水素が豊富なガスは、それらの品質が環境関連法規の現在の基準に適合するように、石油産業におけるガソリン又はディーゼル等の石油由来のストリームの水素化精製のプロセスでの使用のため大規模に生成されている。水素はまた、合成燃料(GTL)、メタノール、アンモニア、尿素、及びその他の広く利用される製品を生成するために工業的に広く利用されている。
【0004】
天然ガス及び他の炭化水素を合成ガスに変換する様々な工業的プロセスが存在するが、水蒸気改質が工業的規模で水素を生成するための主要なプロセスである。水蒸気改質プロセスで起こる主要な反応を以下に示す。
+nHO=nCO+(n+1/2)H(吸熱反応) 反応1
CH+HO=CO+3H(吸熱、206.4kJ/mol) 反応2
CO+HO=CO+H(発熱、-41.2kJ/mol) 反応3
【0005】
水蒸気改質プロセスは通常、化学量論(反応1、2、及び3)に関連して、過剰な硫黄化合物、塩化物、重金属、及び/又はオレフィン並びに水蒸気を除去して事前に精製した天然ガス、製油所ガス、液化石油ガス、プロパン、ブタン、又はナフサから選択される炭化水素フィードを、触媒を含有する典型的な寸法が7乃至15cmの外径及び10乃至13mの高さの金属チューブで構成される可変数の反応器に導入することで実施される。これらのチューブは、反応に必要な熱を供給する炉内に位置する。反応器と加熱炉とで構成されるアセンブリは、一次改質器と呼ばれる。
【0006】
しかしながら、炭化水素の改質が最も利用される、他のプロセスと比較して最も実行可能なプロセスであっても、水素を生成するには未だ高価な方法である。プロセスのエネルギー効率を上げなくてはならない必要性のため、予備改質が潜在的な代替手段である。このプロセスは、さらに長鎖の炭化水素からメタン、たとえば天然ガス内に存在するエタン、GLP内に存在するプロパン及びブタン又はナフサ内に存在するペンタン乃至ヘプタンの範囲の炭化水素を変換することから成る。
【0007】
具体的には、水蒸気予備改質とは、典型的に一般式Cであって、最高沸点が約240°Cであって、その組成中に酸素原子を含有していてもよい炭化水素の水素を生成するための水蒸気との反応のことを指す。予備改質プロセスは、使用される温度域及び生成されるガス中のメタン含有量において水蒸気改質プロセスと異なる。予備改質が、400乃至550°Cの温度で実施され、典型的にメタン含有量が20%よりも多いガスを生成する一方、水蒸気改質は、550°C乃至950°Cの温度で実施され、典型的にメタン含有量が5%未満のガスを生成する。
【0008】
しかしながら、水素又は合成ガスの生成における主な問題は、用いられる触媒に関係する。要件の中でもとりわけ、触媒は効率的で、長期間にわたって妥当な安定性を持ち、炭素堆積及び温度に対して耐性を持たなくてはならない。
【0009】
工業的用途に適した触媒は、特定の反応及び特定の一連のプロセス条件に合わせて設計されなくてはならないため、水蒸気改質の反応を実施するために適した触媒は、予備改質反応を実施するには一般的に良い性能は持っておらず、その逆もまた同様である。
【0010】
そのため、触媒を適正に選択することは、プロセスのコストに直接的な影響を持つ。従って、従来のプロセスにおいて、より効率的な触媒系を使用及び/又はその性能を最適化することが根本的に重要となってきている。
【0011】
予備改質触媒は、酸化ニッケルの形態で工業的に生成されている。予備改質反応において、それらが活性化するためには、典型的にH又はHが豊富なガスが、徐々に400から800°Cに上げられていく温度にて触媒を通過する還元過程を行う必要がある。工業的予備改質反応器でこれらの条件に到達しないため、外部にてこの過程を受けたいわゆる予備還元触媒が一般に販売されている。これらの触媒は、空気に曝されると自然発火性である特性により取り扱いが困難である。
【0012】
これは、触媒が再度還元されるために工業的装置で到達できる温度よりも高い温度を必要とするため、一旦作業が開始されると、触媒の酸化(還元の逆過程)を回避するために注意を払わなくてはならない。これは、作業中の予備改質触媒に水蒸気の通過があり、還元剤が存在しない場合に起こる。
【0013】
このように、ニッケルを基とした予備改質触媒の現在の技術の限界は、水素、メタノール、天然ガス、又は他の炭化水素であってもよい還元剤が存在しない中での水蒸気の通過に対する耐性である。この限界は、水蒸気予備改質プロセスの典型的な条件におけるニッケル系予備改質触媒下での水蒸気の通過が、その活性の永久的な損失をもたらすという既知の事実による。予備改質触媒のこの限界は、下記の水蒸気予備改質による水素生成プロセスの観点からのさまざまなマイナスの結果を有する。
- 炭化水素フィードが失敗した場合の、装置の即時停止。典型的に、反応器のバイパスに繋がり、自動操作機能を持つ高価なバルブを必要とするインターロック論理回路を使用、又は触媒と装置に対する危険性がある装置の急速減圧の使用を伴う。
- 還元雰囲気を保証するために、反応器の入口への再循環水素のフィードが失敗した場合、装置を即座に停止するため、全体としてのプロセスの信頼性が低下する。選択的に、緊急事態に供給するための保存された水素又はメタノールを維持及び使用する高価な戦略を必要とし得る。
- 装置の起動手順中に、一次改質等の予備改質反応器及び下流反応器の蒸気加熱が不可能となり、熱衝撃による機器、特に一次改質器、の完全性に対するより大きなリスクを有するより複雑な論理回路の原因となる。
【0014】
先行技術のいくつかの文献は、以下に説明されるもの等の水素生成用の触媒を教示している。
【0015】
国際公開第2016/083020号(特許文献1)は、アルミナ担体にルテニウムを含浸させ、この製品を60乃至200°Cで乾燥させる触媒の調製方法を教示する。
【0016】
文献は、2乃至50vol%の水蒸気の含有量を有する空気と水蒸気の混合体の存在下で、30分乃至4時間、110乃至195°Cでの水蒸気処理の工程を含むことを特徴とする調製方法を主張している。
【0017】
この文献は、フィッシャー・トロプシュ合成、すなわちCOとHを炭化水素に変換させること、に適用することに留意すべきである。
【0018】
米国特許第6,429,167号明細書(特許文献2)は、多孔質アルミナ材料によって担持される少なくとも1つのルテニウム成分を含む触媒を開示している。アルミナにRuタイプの触媒は、炭化水素の水蒸気改質の反応で使用される7乃至50m/gの比表面積を有するαアルミナタイプの多孔質担体を含む。この触媒を調製するプロセスは、1時間以上、50乃至150°Cで変化する温度で典型的に実施される乾燥工程と、400°C乃至800°Cで1乃至24時間、空気又は気流中における「か焼」の次工程とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】国際公開第2016/083020号
【文献】米国特許第6429167号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述のように、触媒は、特定の反応及び作業条件に対して固有である。このように、炭化水素の予備改質の条件において、温度は約400乃至550°C、好適には430乃至490°Cである。これらの条件において、Niに基づく触媒が水蒸気に曝された場合、これらは酸化し、作業条件においては再度還元できない。このプロセスの高温度(反応器の入口で550°C乃至反応器の出口で850°C)のおかげで、Ni種は、水蒸気に曝されると形成され得る酸化物、水酸化物、又はアルミニウム化合物であるかどうかにかかわらず、触媒の活性相である金属Niに再度還元できるため、今度は、水蒸気改質の反応で使用されるNiに基づく同じ触媒が長期間、水蒸気の通過に曝されることができる。さらに、予備改質反応の低温度により、αアルミナタイプの担体を使用することは、表面積が低いため、賢明ではないかもしれない。
【0021】
このように、装置が加熱及び加圧された状態で維持されることを可能にし、可能な限り早く作業に戻れるようにし、装置内での急な温度及び圧力の変化に伴う危険性を最小限に抑える、高い活性を有し、還元剤の非存在下での水蒸気の通過に耐性を有する、水蒸気予備改質のための触媒を開発することは、非常に望ましい。
【0022】
以下にさらに詳細に説明するように、本発明は、実用的で効率的な方法で、前述の先行技術の課題に対する解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、ルテニウムを備え、還元剤の非存在下で水蒸気の通過による失活に対する耐性を有する予備改質触媒を調製するプロセスに関する。これに加えて、本発明は、水蒸気予備改質プロセス中の前述の触媒に関する。
【0024】
さらに、本発明によるルテニウムを含む触媒は、特定の銀含有量の添加により、コークスの堆積に対するさらに高い耐性を示す。
【0025】
本発明は、還元剤の非存在下での蒸気の通過による失活に対する耐性を有する予備改質触媒の調製プロセスであって、
- 無機Ru塩の溶液、好適には水溶液を調製する工程と、
- 前記無機Ru塩の前記溶液でシータアルミナ担体を含浸して、含浸材料を提供する工程と、
- 1乃至24時間、30°C乃至200°Cで変化する温度で、空気中で前記含浸材料を乾燥させる工程と、を備える予備改質触媒の調製プロセスに関する。
【0026】
本発明は、前記触媒の重量に基づいて、前記シータアルミナタイプの担体に担持されている0.1乃至1.0wt%のRuを含む、本発明のプロセスによって調製される予備改質触媒をさらに提供する。
【0027】
本発明は、炭化水素が、水素を含む生成物のストリームを生成する水蒸気と反応する工程を備える予備改質プロセスであって、前記プロセスは、400乃至550°Cの温度で実施され、前記生成物ストリームは、前記生成物ストリームの重量に基づいて、20wt%を上回るメタン含有量を有し、前記予備改質は、本発明のプロセスによって取得可能な触媒の存在下で行われる、予備改質プロセスをさらに提供する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、水蒸気予備改質プロセスで使用されるための、還元剤の非存在下での水蒸気の通過による失活に対する耐性を与えられたルテニウムを含む触媒を調製するプロセスに関する。
【0029】
通常、市販のニッケル系予備改質触媒では、水蒸気の存在及び還元剤の非存在に曝されると、ニッケル相が酸化して再度還元できなくなり、そして、予備改質反応の温度条件下で活性化する。
【0030】
権利が主張される触媒の担体はアルミナである。アルミナは、Al及びOの原子を含有する固体である。しかしながら、結晶構造によっては、とりわけ、ガンマ、アルファ、シータ等の様々なタイプのアルミナであってもよい。アルファタイプのアルミナは、低い表面積と、より高い温度耐性を有し、水蒸気改質触媒のための担体として使用される。本発明は、予備改質の条件において使用され、より高い活性能力と十分な熱耐性を与え、より大きな表面積を有するシータアルミナを使用する。シータアルミナ担体は、さらに高い機械的強度のために、10%までのアルミン酸カルシウム、アルミン酸マグネシウム、又は他の耐火セメントを含有していてもよい。担体の粒子は、水蒸気予備改質プロセスでの工業的用途に適した様々な形状であってもよく、例えば、球状、円筒状、又は中心孔のある円筒状(ラシヒ(Raschig)リング)であってもよい。
【0031】
本発明の還元剤の非存在下における水蒸気の通過による、及びコークスの堆積による失活に対する高い耐性を有する予備改質触媒は、シータアルミナタイプの担体上に担持される0.1乃至1.0wt%のRuを有する。好適には、Ruの含有量は、0.1乃至0.5wt%で変化する。
【0032】
さらに、触媒の総表面積は、60m/g乃至500m/gである。好適には、総表面積は60m/g乃至120m/gで変化する。
【0033】
さらに、触媒は、銀で含浸されて、炭素の堆積に対する耐性を上げてもよい。この場合、0.1乃至1wt%、好適には、0.1乃至0.5wt%のAg含有量がRu/アルミナ触媒に添加される。
【0034】
権利が主張される触媒は、予備改質活性の損失のない400乃至550°Cの温度で、最短時間24時間、還元剤の非存在下における水蒸気の通過に曝されてもよい。
【0035】
本発明の予備改質触媒の調製プロセスは、以下の工程を含む。
- 無機Ru塩の水溶液を調製する工程
- 100乃至200メッシュ(0.075mm乃至0.150mmに相当)、好適には、100乃至150メッシュ(0.105mm乃至0.150mmに相当)の粒度分析範囲のシータアルミナ担体を含浸する工程
- Ruを含有する含浸された材料を、1乃至24時間、30乃至200°C、好適には、50°C乃至150°Cで変化する温度で、空気中で乾燥させる工程
【0036】
無機Ru塩は、好適には、塩化ルテニウム水和物[RuCl.xHO]、ニトロシル硝酸ルテニウム[Ru(NO)(NO]の水溶液等の水溶性である。ルテニウム(III)アセチルアセトナート[Ru(C]等の有機溶剤内で可溶なルテニウム塩を使用することも可能である。
【0037】
さらに、担体の含浸は、細孔容積の技術(湿潤点)によって、又は過剰溶液法によって達成されてもよい。
【0038】
触媒がAgで含浸されて、炭素の堆積に対する耐性を上げる場合、触媒調製の際に使用される水溶液はAg、好適には、AgNOを含有する溶液をさらに含む。
【0039】
本プロセスを基に調製される触媒は活性で、安定し、すぐに使用でき、空気中での「か焼」を経る必要がなく、そうでなければ、400°C乃至550°Cである、予備改質反応器での典型的な温度で、その還元及び活性の性質を失う。「か焼」工程のないことは、生成コストの低減という明確な利益をもたらす。
【0040】
このように調製された触媒は、1乃至5時間、300乃至500°Cの温度条件で、水素、ホルムアルデヒド、及びメタノールから選択される還元剤のストリームの中で事前に還元されて、その後、冷却され、1乃至5時間、20乃至60°Cの温度で気流を受けて、材料が取り扱い中に自然発火する特徴を持たないようにしてもよい。
【0041】
好適には、本発明の触媒は、好適には、初期湿潤含浸により、無機酸化物担体から調製される。この方法では、担体が、担体の細孔を完全に埋めるのに十分なニッケル、ランタン、及びセリウム塩の溶液、好適には水溶液の容積と接触させられる。好適には、含浸溶液の溶剤は水、メタノール若しくはエタノール等のアルコール、又はそれらの組み合わせである。
【0042】
代替的に、担体は、アルカリ金属の含有量が0.1乃至10wt%、好適には1乃至5wt%であってもよい。アルカリ金属、好適にはカリウムは、ニッケル塩の溶液で含浸する工程の前に、又はその工程の間に担体に導入されてもよい。
【0043】
以下、本発明の様々な実施形態を説明しているが、その内容は限定しない例を示す。
【0044】
比較例
この例は、先行技術で既知の市販の触媒の調製を説明する。
【0045】
市販の予備改質触媒は、40乃至60%(w/w)のNi含有量を有し、予め還元された状態で供給される。
【0046】
実施例
以下の実施例1乃至5は、本発明のプロセスによる水蒸気予備改質触媒の調製を説明する。
【0047】
実施例1
この実施例は、本発明による予備改質触媒の調製を説明する。100乃至150メッシュの粒度分析範囲で事前に粉砕された、40グラムのシータアルミナ(アクセンス(Axens)社 SPH 508F)を、0.9gのRuCl.xHOを含有する水溶液28mlで細孔容積の技術により含浸した。材料は、12時間、90乃至120°Cの温度で乾燥させられ、1wt%のRuを含有し、N吸着法によって決定される比表面積が62m/gのRu/シータアルミナタイプの予備改質触媒を得た。
【0048】
実施例2
この実施例は、本発明による予備改質触媒の調製を説明する。100乃至150メッシュの粒度分析範囲で事前に粉砕された、30グラムのシータアルミナ(アクセンス(Axens)社 SPH 508F)を、0.68gのRuCl.xHO及び0.15gのAgNOを含有する水溶液21mlで細孔容積の技術により含浸した。材料は、12時間、90乃至120°Cの温度で乾燥させられ、1wt%のRu及び0.30wt%のAgを含有し、N吸着法によって決定される比表面積が58m/gのAgRu/シータアルミナタイプの予備改質触媒を得た。
【0049】
実施例3
この実施例は、還元剤の非存在下での水蒸気の通過(スチーミング)によって、予備改質触媒が影響を受ける加速された失活の方法を説明する。
【0050】
比較例及び実施例1及び2で説明された材料が2グラム、触媒検査装置のスチール反応器内に入れられた。触媒は、Hの600ml/分のストリーム及び室温から450°まで10°/分の速度で加熱され、これは2時間維持された。その後、HはNに置き換えられ、装置は1時間パージされ、水蒸気が供給された。450°Cでのスチーミングのこれらの条件は、20atmの圧力で、2乃至40時間の期間維持された。
【0051】
実施例4
この実施例は、還元剤の非存在下での水蒸気の通過による失活に対する本発明による触媒の優れた耐性を説明する。
【0052】
初期の水蒸気改質活性は、AutoChemII市販機器(マイクロメリティックス(Micrometrics)社)で決定された。検査は、100乃至150メッシュの範囲で粉砕された触媒を500mg使用して行われた。実験は、大気圧において、450°C、500°C、及び550°Cの温度で、90°Cの水蒸気で飽和された50%v/vのメタン、5%のH及び45%のアルゴンを含有するストリーム50mlの通過によって、行われた。反応器からの排ガスは、ガスクロマトグラフィーにより分析され、活性は、メタンの変換度により測定された。
【0053】
表1は、実施例3に説明された還元剤の非存在(スチーミング)に起因した加速された失活のプロセスを経る前及び後の比較例及び実施例1及び2に説明された材料のメタンの変換で表される触媒活性の結果を示す。
表1:比較例及び実施例1及び2によって調製された触媒の触媒活性の結果
【0054】
結果は、本発明による触媒は、24時間の露出後であっても、還元剤の非存在下でのスチーミングによって失活しないことを示している。次に、市販の触媒は、同条件において完全に失活した。
【0055】
実施例5
この例は、コークスの堆積による失活に対する本発明による触媒の優れた耐性を説明する。
【0056】
触媒は、熱重量分析用の機器(TGA、メトラー・トレド(Mettler Toledo)社)TGA/SDTA851Eで比較検査された。検査は、170メッシュを下回る範囲で粉砕された触媒を25mg使用して行われた。初めに、予備処理工程は、15°Cで、水蒸気で飽和されたアルゴンに10%(v/v)の水素を含有する混合体を40ml/分で、温度が10°C/分の速度で100°Cから650°Cに変化するようにプログラムされ、1時間維持させた窒素(シールドガス)40ml/分と共に、通過させることで行われた。次に、温度は、350°Cまで下げられ、H/アルゴンのストリームを、温度が5°C/分の速度で350°Cから700°Cにプログラムされた状態で、15°Cにおいて水蒸気で飽和された水素が21.9%、COが13.2%、COが15.9%、CHが43.62%、窒素が1.77%及びエチレンが0.20%で構成される合成ストリームと交換することにより、コークス形成の速度の測定が行われた。炭素堆積の結果は、実験の最後のコークスの堆積に起因する重量増加として、表2に示されている。
表2:比較例及び実施例1及び2により調製された触媒に堆積したコークスの含有量
【0057】
表2からわかるように、先行技術の触媒の重量は、コークス堆積により、200%増加している。これとは逆に、Ru/シータアルミナ触媒のコークスによる重量はわずかな増加であり、RuAg/シータアルミナ触媒はコークス堆積がない。
【0058】
本願の保護範囲に収まる様々なバリエーションが可能である。このことは、本発明が前述の特定の構成/実施形態に限定されない事実を強調する。
【0059】
そのため、驚くべきことに、Ru含有量が1%w/wを下回る本発明の触媒が、予備改質工程で使用される温度及び圧力の条件下でスチーミング期間及び還元剤の非存在に曝された場合に、活性の損失に対し、高い耐性を表し、工業装置が加熱及び加圧された状態で維持されることを可能にし、装置内での急な温度及び圧力の変化に伴う危険性を最小限に抑えることを結論付けることができる。
【0060】
さらに、本発明によるRu/アルミナ触媒は、0.1乃至0.5%w/wの好適な含有量のAgを添加することで、参考として取り上げられた市販の触媒よりも、コークスの堆積に対するさらに高い耐性を有し、これによって予備改質プロセスをより頑強にし、作業的問題による影響をより受けにくくする。