(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】シート状物貼付デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 31/00 20060101AFI20221208BHJP
A61M 35/00 20060101ALI20221208BHJP
A61B 17/00 20060101ALI20221208BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20221208BHJP
C12M 3/04 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
A61M31/00
A61M35/00
A61B17/00
C12M1/00 Z
C12M3/04 Z
(21)【出願番号】P 2020528494
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(86)【国際出願番号】 JP2019036978
(87)【国際公開番号】W WO2020059854
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2018175557
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】山本 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】盛永 明啓
(72)【発明者】
【氏名】江口 晋
(72)【発明者】
【氏名】金高 賢悟
(72)【発明者】
【氏名】丸屋 安広
(72)【発明者】
【氏名】小林 慎一朗
(72)【発明者】
【氏名】松本 亮
(72)【発明者】
【氏名】大橋 文哉
(72)【発明者】
【氏名】松村 匡記
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/069292(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0269771(US,A1)
【文献】特開2013-106530(JP,A)
【文献】特開2017-158615(JP,A)
【文献】国際公開第2004/100142(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/138261(WO,A1)
【文献】特開2008-173333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 31/00
A61M 35/00
A61B 17/00
C12M 1/00
C12M 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状物貼付デバイスであって、
シャフト部およびシャフト部の先端に設けられたシート状物を支持するための支持部を有するシート支持体を含み、
支持部は複数の孔を有し、孔から放出された流体でシート状物を剥離して体腔内の目的部位近傍に放出することができ、
流体の放出位置を選択してシート状物を段階的に支持部から剥離できるように構成されている、前記デバイス。
【請求項2】
流体の放出位置を支持部に沿って移動できるように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
シート状物の段階的な剥離において、流体の放出面積が一定に保持されるように、または増減できるように構成されている、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
放出位置の選択が、シート支持体に対して放出位置選択機構を進退させることにより行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
放出位置選択機構が、孔を覆うことができるカバー部を有する、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
カバー部が、放出位置を画定する開口部を有する、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
放出位置選択機構が、流体を送達可能な筒状体であり、先端部に放出位置を画定する放出口を有する、請求項4に記載のデバイス。
【請求項8】
シート支持部が、仕切り部で隔てられた複数の区画を有し、放出口を各区画に移動できるように構成されている、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
格納パイプをさらに有し、格納パイプは、支持体を挿通可能な筒状体であり、支持体を進退させることで、支持部を格納パイプ内に格納可能な湾曲状態と略平面状の展開状態とに変形できるように構成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
シート状物が管腔臓器の治癒を促進させるためのシート状細胞培養物である、請求項1~9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
さらにゲルおよび/またはポリマーを含む補強層を有するシート状細胞培養物である、請求項10に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状物を目的部位に貼付するためのデバイスおよび当該デバイスを用いたシート状物を貼付するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、損傷した組織等の修復のために、種々の細胞を移植する試みが行われている。例えば、狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患により損傷した心筋組織の修復のために、胎児心筋細胞、骨格筋芽細胞、間葉系幹細胞、心臓幹細胞、ES細胞、iPS細胞等の利用が試みられている(非特許文献1)。
【0003】
このような試みの一環として、スキャフォールドを利用して形成した細胞構造物や、細胞をシート状に形成したシート状細胞培養物が開発されてきた(非特許文献2)。
シート状細胞培養物の治療への応用については、火傷などによる皮膚損傷に対する培養表皮シートの利用、角膜損傷に対する角膜上皮シート状細胞培養物の利用、食道がん内視鏡的切除に対する口腔粘膜シート状細胞培養物の利用などの検討が進められており、その一部は臨床応用の段階に入っている。
【0004】
シート状細胞培養物を目的部位に投与する手術方法に関して、人体に対する低侵襲な手術方法として内視鏡下手術が広く用いられており、シート状細胞培養物を目的部位に送達して投与するための様々な器具が提案されている。
例えば、特許文献1に記載された運搬投与器具は、シート支持部材を筒状にして外筒内に格納することにより、人体に対する侵襲の度合いを低くして、移植部位までシート状の治療用物質を運搬することができる。
【0005】
特許文献2に記載されたシート貼付装置は、シート支持部の表面に沿って配置された棒状部材を、シート支持部の表面に沿って移動させることにより剥離させて、シート状の物質を目的部位に貼付することができる。
特許文献3に記載された運搬投与具は、シート支持体に、シート状治療用物質を吸着保持させる陰圧と、シート支持体からシート状治療用物質を離脱させる陽圧を付与可能なシート脱着手段で、シートを投与することができる。
特許文献4に記載された搬送器具は、シート状治療用物質を保持したヘッドの表面に設けられた複数の通気孔から流体を噴出させることで、シート状治療用物質を貼付することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-511号公報
【文献】特開2016-187601号公報
【文献】特開2008-173333号公報
【文献】国際公開第2014/069292号
【非特許文献】
【0007】
【文献】Haraguchi et al., Stem Cells Transl Med. 2012 Feb;1(2):136-41
【文献】Sawa et al., Surg Today. 2012 Jan;42(2):181-4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような中、本発明者らは、シート状物を効率よく目的部位に貼付するための手段を開発するにあたり、損傷や皺を発生させることなく、シート状物を効率よく迅速にデバイスから剥離させることは困難であるなど問題に直面した。したがって、本発明の目的は、そのような問題を解決し、単純な構成でかつ合理的なデバイスを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を進める中で、シート状物を段階的に剥離することにより、シート状物の形状を保持しながら、効率よく目的部位に貼付できることを初めて見出し、かかる知見に基づいてさらに研究を続けた結果、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明は、以下に関する。
[1]シート状物貼付デバイスであって、シャフト部およびシャフト部の先端に設けられたシート状物を支持するための支持部を有するシート支持体を含み、支持部は複数の孔を有し、孔から放出された流体でシート状物を剥離して体腔内の目的部位近傍に放出することができ、流体の放出位置を選択してシート状物を段階的に支持部から剥離できるように構成されている、前記デバイス。
[2]流体の放出位置を支持部に沿って移動できるように構成されている、[1]に記載のデバイス。
[3]シート状物の段階的な剥離において、流体の放出面積が一定に保持されるように、または増減できるように構成されている、[1]または[2]に記載のデバイス。
[4]放出位置の選択が、シート支持体に対して放出位置選択機構を進退させることにより行われる、[1]~[3]のいずれかに記載のデバイス。
[5]放出位置選択機構が、孔を覆うことができるカバー部を有する、[4]に記載のデバイス。
[6]カバー部が、放出位置を画定する開口部を有する、[5]に記載のデバイス。
[7]放出位置選択機構が、流体を送達可能な筒状体であり、先端部に放出位置を画定する放出口を有する、[4]に記載のデバイス。
【0011】
[8]シート支持部が、仕切り部で隔てられた複数の区画を有し、放出口を各区画に移動できるように構成されている、[7]に記載のデバイス。
[9]格納パイプをさらに有し、格納パイプは、支持体を挿通可能な筒状体であり、支持体を進退させることで、支持部を格納パイプ内に格納可能な湾曲状態と略平面状の展開状態とに変形できるように構成されている、[1]~[8]のいずれかに記載のデバイス。
[10]シート状物が管腔臓器の治癒を促進させるためのシート状細胞培養物である、[1]~[9]のいずれかに記載のデバイス。
[11]さらにゲルおよび/またはポリマーを含む補強層を有するシート状細胞培養物である、[10]に記載のデバイス。
[12]シート状物を目的部位に貼付するための方法であって、シャフト部およびシャフト部の先端に設けられたシート状物を支持する支持部を有するシート支持体を含むシート状物貼付デバイスを目的部位に対して空間的に離間した状態で配置するステップ、シート状物貼付デバイスの支持部は複数の孔を有し、支持部の孔から流体を放出するステップ、それによりシート状物の一部を支持部より剥離し、支持部の孔からの流体の放出位置を選択して変えるステップ、それによりシート状物を支持部から段階的に剥離し、選択した放出位置から流体をさらに放出してシート状物を目的部位に貼付するステップ、を含む前記方法。
[13]体腔内に経腹腔的に挿入して、シート状物を目的部位に貼付するための[12]に記載の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のデバイスによれば、簡便な機構と、簡単な作業で効率よくシート状物を目的部位に貼付することができるため、作業性や製造コストの点において大きなメリットがある。
そして、シート状物を段階的に剥離できるため、シート状物の一部を剥離して目的部位へ位置決めして貼付した後に、その他の部分を段階的に剥離することで、皺などの発生を防止することができる。特に、シート状物を流体で剥離することにより、欠損などの発生を防止することができ、シート状物の形状を保持しながら、効率よく貼付することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るデバイス1の概念図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るデバイス1の断面図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態に係るデバイス1Aの概念図である。
【
図4】
図4は、第3実施形態に係るデバイス1Bの概念図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係るデバイス1を使用した実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明における「シート状物」とは、物理的強度が低く、デバイスからの剥離などによって、破れ、破損、変形などが生じ得るシート状の物体をいう。かかるシート状物としては、とくに限定されないが、シート状構造物、例えば、シート状細胞培養物などの、生体由来材料からなる平膜状の膜組織や、プラスチック、紙、織布、不織布、金属、高分子、脂質といった種々の材質のフィルム等が含まれる。シート状構造物は、多角形や円形などであってもよく、幅、厚み、直径などは一様であってもなくてもよい。本発明におけるシート状構造物は、1枚のみを単層の状態で使用してもよいし、2枚以上を重ねた積層体の状態で使用してもよい。後者の場合、積層体の各層は互いに連結していても、連結していなくてもよく、連結している場合は、重なり合っている部分が全て連結していても、部分的に連結していてもよい。
【0015】
本発明において「シート状細胞培養物」とは、細胞が互いに連結してシート状になったものをいう。細胞同士は、直接(接着分子などの細胞要素を介するものを含む)および/または介在物質を介して、互いに連結していてもよい。介在物質としては、細胞同士を少なくとも物理的(機械的)に連結し得る物質であれば特に限定されないが、例えば、細胞外マトリックスなどが挙げられる。介在物質は、好ましくは細胞由来のもの、特に、細胞培養物を構成する細胞に由来するものである。細胞は少なくとも物理的(機械的)に連結されるが、さらに機能的、例えば、化学的、電気的に連結されてもよい。シート状細胞培養物は、1の細胞層から構成されるもの(単層)であっても、2以上の細胞層から構成されるもの(積層(多層)体、例えば、2層、3層、4層、5層、6層など)であってもよい。また、シート状細胞培養物は、細胞が明確な層構造を示すことなく、細胞1個分の厚みを超える厚みを有する3次元構造を有してもよい。例えば、シート状細胞培養物の垂直断面において、細胞が水平方向に均一に整列することなく、不均一に(例えば、モザイク状に)配置された状態で存在していてもよい。
【0016】
シート状細胞培養物は、好ましくはスキャフォールド(支持体)を含まない。スキャフォールドは、その表面上および/またはその内部に細胞を付着させ、シート状細胞培養物の物理的一体性を維持するために当該技術分野において用いられることがあり、例えば、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)製の膜等が知られているが、本発明のシート状細胞培養物は、かかるスキャフォールドがなくともその物理的一体性を維持することができる。また、本発明のシート状細胞培養物は、好ましくは、シート状細胞培養物を構成する細胞由来の物質のみからなり、それら以外の物質を含まない。
【0017】
シート状細胞培養物を構成する細胞は、シート状細胞培養物を形成し得るものであれば特に限定されず、例えば、接着細胞(付着性細胞)を含む。接着細胞は、例えば、接着性の体細胞(例えば、心筋細胞、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、肝細胞、膵細胞、腎細胞、副腎細胞、歯根膜細胞、歯肉細胞、骨膜細胞、皮膚細胞、滑膜細胞、軟骨細胞など)および幹細胞(例えば、筋芽細胞、心臓幹細胞などの組織幹細胞、胚性幹細胞、iPS(induced pluripotent stem)細胞などの多能性幹細胞、間葉系幹細胞等)などを含む。体細胞は、幹細胞、特にiPS細胞から分化させたもの(iPS細胞由来接着細胞)であってもよい。シート状細胞培養物を構成する細胞の非限定例としては、例えば、筋芽細胞(例えば、骨格筋芽細胞など)、間葉系幹細胞(例えば、骨髄、脂肪組織、末梢血、皮膚、毛根、筋組織、子宮内膜、胎盤、臍帯血由来のものなど)、心筋細胞、線維芽細胞、心臓幹細胞、胚性幹細胞、iPS細胞、滑膜細胞、軟骨細胞、上皮細胞(例えば、口腔粘膜上皮細胞、網膜色素上皮細胞、鼻粘膜上皮細胞など)、内皮細胞(例えば、血管内皮細胞など)、肝細胞(例えば、肝実質細胞など)、膵細胞(例えば、膵島細胞など)、腎細胞、副腎細胞、歯根膜細胞、歯肉細胞、骨膜細胞、皮膚細胞等が挙げられる。iPS細胞由来接着細胞の非限定例としては、iPS細胞由来の心筋細胞、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、肝細胞、膵細胞、腎細胞、副腎細胞、歯根膜細胞、歯肉細胞、骨膜細胞、皮膚細胞、滑膜細胞、軟骨細胞などが挙げられる。
【0018】
本発明において、「シャフト部」とは、腹腔鏡下手術や胸腔鏡下手術などに際して、その先端部に設けられた支持部を体腔内に挿入して目的部位に近接させることができる長尺物をいう。シャフト部の材料は、硬質のものでもよいし、可撓性を有するものでもよく、可撓性を有する材料により構成した場合には、体内に挿入する通路が湾曲していても、その形態に合わせて湾曲させたり、支持部と目的部位との相対的な角度を調節するために屈曲させたりすることができる。シャフト部は、中実であっても中空であってもよく、中空構造の場合は、中空部分を介して流体を送達したり、中空部内に、放出位置選択機構、シート支持体などを挿入して、相対的に進退させることにより位置決めを行うことができる。シャフト部の外径は、特に限定されないが、例えば、2.2~25mm、好ましくは、5~15mmとすることができる。中空構造の場合、シャフト部の内径は、特に限定されないが、例えば、2~20mm、好ましくは、3~15mmとすることができる。
【0019】
本発明において、「支持部」とは、シート状物をその形状を維持した状態で支持することができる平面を有する板状体をいう。支持部は可撓性と適度な柔軟性を有し、シート状物を支持した状態で湾曲させて、筒状体の内側などに沿って格納することができ、筒状体から露出させるとその復元性で平面状に展開させることができる。支持部の材料としては、特に限定されず、各種公知の材料を単独でまたは複数組み合わせて用いることができる。このような材料としては、例えば、金属、軟質塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーンゴム、天然ゴム、合成ゴム、スチレンーエチレンーブチレンースチレン共重合体(SEBS)、スチレンーエチレンープロピレンースチレン共重合体(SEPS)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ナイロンなどのポリアミド樹脂及びポリアミドエラストマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル樹脂及びポリエステルエラストマー、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂、フッ素ゴム、フッ素樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
本発明において、「複数の孔」とは、支持部に設けられた2以上の貫通孔をいい、支持部のシート状物を支持している面と反対の面から流体を送り込み、孔を通して流体を吐出することで、シート状物を支持面から剥離させて貼付することができる。支持部は、一枚の板状体でも、二枚の板状体を張り合わせたものでもよい。支持部が二枚の板状体で構成されている場合は、複数の孔は、二枚の板状体の一方(支持面)だけに設けられ、板状体間に送達された流体が、一方の板状体の複数の孔から吐出されるように、縁部同士が張り合わされる。
【0021】
複数の孔は、シート状物の剥離位置を調節できるように、支持部のシート支持面に離散的に配置されることが好ましい。例えば、複数の孔の少なくとも1つを支持部の縁部付近に設けることで、シート状物の剥離をその縁部付近から行えるように構成することもできる。複数の孔の配置は、例えば、2×2~40×40、5×5~20×20など、行×列のマトリックス配置とすることができ、孔同士の間隔は、例えば、0.1mm~10mm、0.5mm~2mmとすることができ、孔の直径は、例えば、0.1mm~10mm、0.3~0.6mmとすることができるが、これらに限定されず、当業者であればシート状物のサイズ、シート状物と支持部との接着度合いなどに合わせて自由に選択することができる。
【0022】
本発明において、「流体」とは、シート状物を傷つけることなく押し出して剥離することができる、気体と液体の総称をいう。液体は、少なくとも1種の成分から構成され、その成分としてはとくに限定されないが、例えば、水、水溶液、非水溶液、懸濁液、乳液などの液体から構成される。液体を構成する成分は、シート状物に与える影響が少ないものであればとくに限定されない。シート状物が生体由来材料からなる膜である場合、液体を構成する成分は、生体適合性のもの、すなわち、生体組織や細胞に対して炎症反応、免疫反応、中毒反応などの望まない作用を起こさないか、少なくともかかる作用が小さいものが好ましい。
【0023】
本発明において、「目的部位」とは、シート状物を適用(貼付)する部分をいう。目的部位としては、例えば、管腔臓器における、損傷が存在する部位や、損傷が存在する部位に対応する管腔壁の反対側などが挙げられる。「管腔臓器」は、体腔に収納されている内腔を有する臓器、すなわち管状または袋状の構造を有する臓器を意味し、例えば消化管系、循環器系、尿路系、呼吸器系、女性生殖器系の臓器などが挙げられる。典型的には消化管系の臓器である。また、「管腔壁」とは、管腔臓器の管または袋を構成する臓器壁を意味する。管腔壁には内腔に面した内側部と臓器の外表面を形成する外側部とがあり、「管腔壁の片側」という場合、管腔壁の内側または外側のいずれかを意味し、内側に対する外側または外側に対する内側を「反対側」という。また、片側のある領域に対して、管腔壁のちょうど反対側に位置する領域を「対応する反対側」という。
ある態様においては、管腔壁の少なくとも片側に損傷を有する管腔組織において、損傷が存在する部位に対応する反対側にシート状細胞培養物を移植することにより、組織の治癒を促進することができる。特にESDなどの施術によって形成された損傷であっても効果があるため、これらの施術後の合併症を予防し、予後を向上させることが可能となる。
【0024】
本発明において、「放出位置を選択」するとは、複数の孔の内のどの位置にある孔から流体を放出するかを選択することをいう。かかる選択は、例えば、複数の孔の開閉を制御し、選択された特定の位置の孔は開け、それ以外の孔は閉じた状態で流体を放出したり、流体を送達する場所と、複数の孔との位置関係を変えながら流体を放出したりすることで、行うことができる。
本発明において、「段階的に剥離」するとは、シート状物の剥離を部分段階的に行うことをいう。例えば、シート状物の一部(縁部など)を部分的に剥離させ、かかる一部を目的部位に貼付した後にデバイスを引くことで、シート状物に生じ得る皺などを伸展させながらシート状物を剥離することができる。また、剥離した一部に加えて、残りの部分も段階的に剥離することで、シート状物に生じ得る皺などの有無を確認しながら、シート状物を慎重かつ確実に剥離することもできる。
シート状物を支持している面をシート状物を適用する目的部位に対して空間的に離間させた状態で放出位置を選択し、段階的に支持部からシート状物を剥離することにより、シート状物を目的部位(シート状物適用部位)にシート状物の一部(縁部など)を部分的に接触させて配置することができる。そして、シート状物の残りの部分も段階的に剥離することで、デバイスを目的部位に接触させることなく、シート状物を慎重かつ確実に目的部位に配置することができるため、目的部位を不用意に傷つけるなどの問題を防止することができる。
【0025】
本発明において、「筒状体」とは、内部に空間を有するパイプ状の長尺物をいう。筒状体は、その一端、両端または側面に開口部を有し、かかる開口部および内部空間を通して、流体、放出位置選択機構、シート支持体などをデバイスの先端側に送達することができる。筒状体としては、流体が漏出しないものであればとくに限定されず、市販の筒状体を含む任意のものを用いることができる。筒状体の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ナイロン6,6、ポリビニルアルコール、セルロース、シリコン、ポリスチレン、ガラス、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、金属(例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、真鍮)等が挙げられるがこれに限定されない。
【0026】
ある態様においては、本発明のシート状細胞培養物は、非常に脆弱であり、取り扱いが困難である場合がある。したがって本発明のシート状細胞培養物は、取り扱いを簡便にし、破損のリスクを低減する目的で、さらに補強層を有していてよい。補強層としては、本開示のシート状細胞培養物の機能を損なわず、構造を補強できるものであればいかなるものであってもよく、例えばゲルおよび/またはポリマーを含む補強層であってよいが、生体内に移植するものであるため、好ましくは、例えば生体適合性ゲルやポリマーなどを含む、生体適合性の補強層である。
本開示の補強層に用い得るゲル、好ましくは生体適合性ゲルとしては、生体内に導入した際に生体に悪影響を及ぼさないゲルであればいかなるものであってもよく、これに限定するものではないが、例えばフィブリンゲル、フィブリノーゲンゲル、ゼラチンゲル、コラーゲンゲルなどが挙げられる。
【0027】
本開示の補強層に用い得るポリマー、好ましくは生体適合性ポリマーとしては、生体内に導入した際に生体に悪影響を及ぼさないポリマーであればいかなるものであってもよく、これに限定するものではないが、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノ、ポリグリカプロ、コラーゲンなどが挙げられる。
生体適合性ゲルを含む補強層の形成方法は、当該技術分野において公知の方法を用いることができる。かかる方法としては、これに限定するものではないが、例えばシート状細胞培養物上に生体適合性ゲルやポリマーまたはその材料となる成分を噴霧する方法、シート状細胞培養物上にゾル状の生体適合性物質を積層してゲル化する方法、液状のゲルに浸漬したのちゲルを固形化させる方法などのほか、特開2016-52271号公報等に記載の方法などが挙げられる。
【0028】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るデバイス1の概念図、
図2は、
図1に示されるデバイス1の断面図である。なお、本願における各図において、説明を容易とするため、各部材の大きさは、適宜強調されており、図示の各部材は、実際の大きさを示すものではない。
【0029】
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係るデバイス1は、シャフト部21およびシャフト部21の先端に設けられたシート状物を支持するための支持部22を有するシート支持体2を含む。支持部22には、複数の孔23がマトリックス状に設けられている。支持部22は可撓性と適度な柔軟性を有し、シート状物を支持した状態で湾曲させて、筒状の格納パイプ4などに格納することができる。支持部22の基端側はテーパー状になっており、シャフト部21を基端側に引いて、テーパー部分を格納パイプ4に押し付けた際に、支持部22が湾曲しやすいように構成されている。
【0030】
また、逆にシャフト部21を先端側に押し出して、支持部22を格納パイプ4から露出させると、支持部22はその復元性で平面状に展開できるように構成されている。したがって、シート状物を目的部位に送達する際は、まずシャフト部21を格納パイプ4から押し出して、平面状に展開した支持部22上にシート状物を設置し、次に、シャフト部21を引いて支持部22を湾曲させることで、シート状物を設置した状態の支持部22を格納パイプ4の内面に沿って格納し、シート状物を保護した状態で体内に挿入することができる。
【0031】
図2Aに示すように、本実施形態において、支持部22は、シート状物を支持するための板状体221とそれに対向する板状体222とを張り合わせて構成されており、複数の孔23は、板状体221側に設けられている。シャフト部21は、筒状体であり、板状体221と板状体222との間に形成された空間に流体を送達できるように構成されている。また、デバイス1は、支持部22上を移動させることができる放出位置選択機構3をさらに含み、放出位置選択機構3の先端側は、複数の孔23を覆うことができる板状のカバー部31として構成されている。
【0032】
また、放出位置選択機構3のカバー部31より基端側は、シャフト部21内を進退できるように長尺状に構成されており、シャフト部21とシャフト部21の基端側から露出した放出位置選択機構3の基端部(図示せず)とを把持して相対的に進退させることができる。すなわち、放出位置選択機構3をシート支持体2に対して進退させるという簡単な操作で、カバー部31と支持部22との位置関係を調節し、複数の孔23における流体の放出位置を選択できるように構成されている。
【0033】
図2A~2Dに示すように、デバイス1を使用する際は、シート状物Sと支持部22との間に水などの粘着性のある液体を介在させ、シート状物Sを支持部22上に設置し、体腔内に経腹腔的に挿入する。そして、シート状物Sを設置した支持部22を目的部位Aに近接させて位置決めを行う(
図2A)。この際に、デバイス1と目的部位Aとの間に、ある程度の距離を持たせることで、デバイス1が目的部位Aを傷つけるなどの問題を防止することができる。次に、カバー部31を支持部22上で移動させ、支持部22の先端側の孔を開放して流体を放出し、シート状物Sの一部(縁部)を段階的に剥離させて目的部位Aに貼付する(
図2B)。この際に、粘着性の高い液体(フィブリンなど)を放出してシート状物Sの縁部を目的部位Aに強固に接着するようにしてもよい。そして、縁部が接着された状態でデバイス1を引くことで、シート状物に生じ得る皺などを伸展させながら、シート状物Sの他の部分をデバイス1から剥離することもできる。
【0034】
また、シート状物Sをより確実に剥離するために、カバー部31をさらに移動させて、シート状物Sの中央部(
図2C)、そして基端側の縁部(
図2D)に流体を放出することで、シート状物S全体をデバイス1から剥離することもできる。
図2A~2Dから分かるように、デバイス1は、流体の放出面積を増減させることができるため、放出圧力や放出面積を調節でき、有利である。例えば、目的部位Aに貼付されたシート状物Sに気泡が入り込んだ場合には、放出面積を小さくした状態で、気泡部分に強い圧力で流体を噴射することで押し出すことができる。また、目的部位Aに貼付されたシート状物S上に補強層を形成したい場合は、放出面積を大きくした状態でゲルおよび/またはポリマーを噴射することで、シート状物S全体に効率よく補強層を形成することもできる。
【0035】
本発明に係るデバイス1を実施態様1に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、さらに種々の変形例を有することができ、例えば、カバー部31は、放出面積(放出位置)を画定する開口部32(図示せず)を有していてもよい。すなわち、上記では、カバー部31は、複数の孔23を覆う板状に構成されているが、これに一定の面積の開口部32を設けることで、孔23を覆わない部分(開口部32)を有するように構成することもできる。これにより、放出面積を一定にした状態で、放出位置を移動させることができるため、流体の放出圧力を一定に保つことができる。この場合、カバー部31の先端部に流体の進行を防止する隔壁を設け、流体が開口部32に流れ込むように構成することもできる。また、支持部22を一枚の板状体(板状体221)のみで構成し、装置などを使用して支持部22に流体を放出し、カバー部31で流体を選択的に遮断することで、流体の放出位置を選択できるように構成してもよい。
【0036】
以上、本願発明の第1実施形態に係るデバイス1によれば、簡便な機構と、簡単な作業で効率よくシート状物を目的部位に貼付することができるため、作業性や製造コストの点において大きなメリットがある。
そして、シート状物を段階的に剥離できるため、シート状物の一部を剥離して目的部位へ位置決めして貼付した後に、その他の部分を段階的に剥離することで、皺などの発生を防止することができる。特に、シート状物を流体で剥離することにより、欠損などの発生を防止することができ、シート状物の形状を保持しながら、効率よく貼付することができる。
【0037】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下、第1実施形態との相違点について詳細に説明し、同様の事項については、説明を省略する。なお、本願における各図において、説明を容易とするため、各部材の大きさは、適宜強調されており、図示の各部材は、実際の大きさを示すものではない。
【0038】
図3Aに示すように、本発明の第2実施形態に係るデバイス1Aは、シャフト部21と支持部22Aを有するシート支持体2Aを含む。本実施形態において、支持部22Aは、板状体221と板状体222との間に、放出面積を画定する複数の空間(区画)223を有する。複数の空間223は、支持部22Aの長軸に交差する複数の仕切り部224で、支持部22Aの内部空間を長軸方向に区切ることで形成されている。また、本実施形態において、放出位置選択機構3Aは、筒状体として構成されており、シャフト部21内に挿通して支持部22A内に流体を送達することができる。仕切り部224は、可撓性と適度な柔軟性を有する2つの部材(
図3B)を接続することで構成されており、放出位置選択機構3Aの先端部で、接続された部分を押すことにより、仕切り部224を貫く(
図3B)ことができるようになっている。放出位置選択機構3Aは、断面が楕円形(きし麺形)になるように構成することで、内部空間への挿入を容易にすることもできる。
【0039】
図3Bに示すように、デバイス1Aを使用する際は、放出位置選択機構3Aの先端部で複数の仕切り部224を貫き、放出位置選択機構3Aの先端部を支持部22Aの先端側の空間223に位置決めする。そして、流体を放出してシート状物Sの縁部を段階的に剥離させて目的部位に貼付する。次に、放出位置選択機構3Aの先端部を隣の空間223に移動して流体を放出し、剥離された縁部に隣接した部分を剥離する。仕切り部224の接続部分を押していた放出位置選択機構3Aが離脱すると、仕切り部224はその復元性で2つの部材が接続された状態、すなわち、先端側の空間223が閉じられた状態に戻る。これにより、放出面積を一定にした状態で、放出位置を移動できるため、流体の放出圧力を一定に保つことができる。そして、この移動を繰り返すことで、シート状物S全体を段階的に剥離させることができる。支持部22Aは、板状体222を省略して板状体221のみで構成し、流体の進行方向を仕切り部224で制限することで、所期の効果を達成できるようにしてもよい。
【0040】
以上、本願発明の第2実施形態に係るデバイス1Aによれば、簡便な機構と、簡単な作業で効率よくシート状物を目的部位に貼付することができるため、作業性や製造コストの点において大きなメリットがある。
そして、シート状物を段階的に剥離できるため、シート状物の一部を剥離して目的部位へ位置決めして貼付した後に、その他の部分を段階的に剥離することで、皺などの発生を防止することができる。特に、シート状物を流体で剥離することにより、欠損などの発生を防止することができ、シート状物の形状を保持しながら、効率よく貼付することができる。
【0041】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下、第1実施形態および第2実施形態との相違点について詳細に説明し、同様の事項については、説明を省略する。なお、本願における各図において、説明を容易とするため、各部材の大きさは、適宜強調されており、図示の各部材は、実際の大きさを示すものではない。
【0042】
図4に示すように、本発明の第3実施形態に係るデバイス1Bは、シャフト部21と支持部22Bとを有するシート支持体2Bを含む。本実施形態において、支持部22Bは、一枚の板状体221で構成されており、板状体221には複数の孔23が設けられている。また、本実施形態において、放出位置選択機構3Bは、筒状体として構成されており、その先端部には流動体の放出面積を画定する放出口33が設けられている。放出口33は、支持部22Bを長軸方向に複数の区画に区切った場合に、その一区画を横断するように長尺に構成されており、放出位置選択機構3Bを進退させることで、放出口33が支持部22Bの複数の区画を移動できるように構成されている。
【0043】
図4Aに示すように、デバイス1Bを使用する際は、放出位置選択機構3Bの放出口33を支持部22Bの先端側の区画に位置決めする。そして、流体を放出してシート状物Sの縁部を段階的に剥離させて目的部位に貼付する。次に、放出位置選択機構3Bの放出口33を隣の区画に移動して流体を放出し、剥離された縁部に隣接した部分を剥離する。これにより、放出面積を一定にした状態で、放出位置を移動できるため、流体の放出圧力を一定に保つことができる。そして、この移動を繰り返すことで、シート状物Sを段階的に剥離させることができる。本実施形態において、シャフト部21は、中実でも中空でもよく、中空体の場合は、放出位置選択機構3Bの基端側をシャフト部21内で摺動させて、位置決めが容易になるように構成してもよい。
【0044】
以上、本願発明の第3実施形態に係るデバイス1Bによれば、簡便な機構と、簡単な作業で効率よくシート状物を目的部位に貼付することができるため、作業性や製造コストの点において大きなメリットがある。
そして、シート状物を段階的に剥離できるため、シート状物の一部を剥離して目的部位へ位置決めして貼付した後に、その他の部分を段階的に剥離することで、皺などの発生を防止することができる。特に、シート状物を流体で剥離することにより、欠損などの発生を防止することができ、シート状物の形状を保持しながら、効率よく貼付することができる。
【0045】
本発明においては、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成を付加することもできる。
【0046】
本発明のデバイスの使用は、例えば以下の工程によって順次行うことができる。
(1)シート状物を設置したデバイスを目的部位に近接させる。
(2)複数の孔の一部の孔から流体を放出する。
(3)剥離した部分を目的部位に貼付する。
(4)放出位置を移動して、別の孔から流体を放出する。
(5)剥離した部分を目的部位に貼付する。
シート状物をシート支持体に設置したシート状物貼付デバイスを目的部位に対して空間的に離間した状態で配置するには、シート状物を設置したデバイスを目的部位に近接させればよい。このときシート状物は目的部位と接触しないように配置することができる。シート状物をシート支持体から剥離した後もシート状物を目的部位に貼付するまでシート状物が目的部位と接触しない状態を保持することができる。シート状物の剥離と貼付とは別々でも、同時でもよい。また、シート状物の貼付を行った後に、(6)貼付したシート状物の上から流体を噴射する工程を加えてもよい。これにより、シート状物をより確実に目的部位に接着させることができる。このときもシート支持体は目的部位と接触しない状態でシート状物を目的部位に接着させることができる。また、流体として、ゲルおよび/またはポリマーを噴射することで、シート状物を補強する補強層を形成するようにしてもよい。
【実施例】
【0047】
以下に、第1実施態様にかかるデバイスの使用を実施例を参照してより詳細に説明するが、これは本発明の特定の具体例を示すものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0048】
図1に示されるシート支持体2の支持部22にシート状細胞培養物を支持した状態で湾曲させて、シート状細胞培養物を丸めた状態で体腔内に挿入されている腹腔鏡用ポートに近接させた。そして、丸めた状態で支持部22に保護されたシート状細胞培養物を腹腔鏡用ポートの開口部(口径12mm)から挿入して腹腔内に到達させた。次に、支持部22を腹腔鏡用ポートの先端部から露出させてシート状細胞培養物を目的臓器に近接させ(
図5A)、エアーを支持部22から放出し、シート状細胞培養物を剥離して目的臓器上に貼付した(
図5B)。そして、支持部22を再び腹腔鏡用ポート内に格納して、シート状細胞培養物を目的臓器に貼付できたことを確認した(
図5C)。その結果、本発明のデバイスでのシート状細胞培養物の送達、剥離、貼付の成功率は100%(n=2)であった。また、移植後3日目に標本摘出を行い、シート状細胞培養物を貼付した部位の肉眼的・組織学的評価を行ってシート状細胞培養物の残存を確認できた。
【符号の説明】
【0049】
A 目的部位
S シート状物
1、1A、1B デバイス
2、2A、2B シート支持体
21 シャフト部
22、22A、22B 支持部
221 板状体(支持面)
222 板状体
223 空間
224 仕切り部
23 孔
3、3A、3B 放出位置選択機構
31 カバー部
32 開口部(図示せず)
33 放出口