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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/04 20060101AFI20221208BHJP
   B60K 1/02 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B60K17/04 N
B60K1/02 ZHV
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020535410
(86)(22)【出願日】2018-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2018029851
(87)【国際公開番号】W WO2020031313
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000154347
【氏名又は名称】株式会社ユニバンス
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】原 智之
(72)【発明者】
【氏名】多田 昌史
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-196413(JP,A)
【文献】特開2003-335143(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0200016(US,A1)
【文献】特開2009-227028(JP,A)
【文献】国際公開第2015/145879(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/04
B60K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車長方向に沿って配置される第1入力軸および第2入力軸に駆動力をそれぞれ出力するモータからなる2つの駆動装置であって、少なくとも片方が、フロアトンネルの内側に配置される2つの駆動装置と、
前記第1入力軸および前記第2入力軸の動力を出力軸に出力する減速機と、
前記出力軸の動力が伝達される差動装置と、
前記差動装置と前輪差動装置および後輪差動装置とにそれぞれ接続され車長方向に沿って延びる第1推進軸および第2推進軸と、を備え、
前記出力軸は、前記第1入力軸および前記第2入力軸と異軸に配置される動力伝達装置。
【請求項2】
前記出力軸は、車体の中心を通り車長方向に延びる車体中心線に対して傾斜している請求項1記載の動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動力伝達装置に関し、特にフロアトンネルの内側にモータが配置される動力伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンの出力を駆動力とする自動車の下部構造と、モータの出力を駆動力とする自動車の下部構造と、を共通化する要求がある。特許文献1には、エンジンルームに配置されたエンジンに代えて、フロアトンネルにモータ及び減速機を配置する駆動装置が開示されている。この駆動装置を用いて4輪駆動の電気自動車を得るには、フロアトンネルに配置された減速機の後ろにセンターデフを隣接し、センターデフを介して前輪側および後輪側へ出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-172189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示される技術では、減速機の出力軸とモータの軸とが同軸上に配置されているので、センターデフを介して減速機から前輪側へ出力する軸を、モータを避けて配置する構造が複雑化する。そのため自動車の下部構造に対する駆動装置の配置の自在性が低く、共通化の要求を十分に満足できないという問題点がある。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、自動車の下部構造を幅広く共通化できる動力伝達装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の動力伝達装置は、車長方向に沿って配置される第1入力軸および第2入力軸に駆動力を出力する2つの駆動装置であって、少なくとも片方が、フロアトンネルの内側に配置されるモータである2つの駆動装置と、第1入力軸および第2入力軸の動力を出力軸に出力する減速機と、出力軸の動力が伝達される差動装置と、差動装置と前輪差動装置および後輪差動装置とにそれぞれ接続され車長方向に沿って延びる第1推進軸および第2推進軸と、を備え、出力軸は、第1入力軸および第2入力軸と異軸に配置される。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の動力伝達装置によれば、出力軸の動力が伝達される差動装置と前輪差動装置とに第1推進軸が接続され、差動装置と後輪差動装置とに第2推進軸が接続される。出力軸は、2つの駆動装置の第1入力軸および第2入力軸と異軸に配置されるので、駆動装置を避けて第1推進軸および第2推進軸を配置する構造を簡素化できる。その結果、下部構造に対する動力伝達装置の配置の自在性を高くできるので、下部構造を幅広く共通化できる。
【0008】
請求項2記載の動力伝達装置によれば、出力軸は、車体の中心を通り車長方向に延びる車体中心線に対して傾斜している。その結果、前輪差動装置と第1推進軸との間の屈折角、後輪差動装置と第2推進軸との間の屈折角の両方とも過大にならないようにできる。ここで、第1推進軸と前輪差動装置との間、及び、第2推進軸と後輪差動装置との間がユニバーサルジョイントで接続されると、ユニバーサルジョイントの屈折角が大きくなる程、軸やジョイントのねじり現象が増大し伝導効率が低下する。しかし、動力伝達装置によって屈折角を小さくできるので、請求項1の効果に加え、共通化できる下部構造をさらに拡大できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施の形態における動力伝達装置が配置された自動車の側面図である。
図2】自動車の底面図である。
図3】動力伝達装置のスケルトン図である。
図4】第2実施の形態における動力伝達装置が配置された自動車の側面図である。
図5】自動車の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1から図3を参照して第1実施の形態における動力伝達装置10について説明する。図1は第1実施の形態における動力伝達装置10が配置された自動車30の側面図であり、図2は自動車30の底面図である。図1から図3の矢印F-B方向は自動車30の車長方向を示し、矢印L-R方向は自動車30の車幅方向を示している(図4及び図5においても同じ)。
【0011】
図1に示すように自動車30の車体31には、前室32と車室33とを車長方向(矢印F-B方向)に仕切るダッシュパネル34と、ダッシュパネル34の下部に接続され後方(矢印B方向)へ延びるフロアパネル35と、が配置されている。フロアパネル35は、自動車30の下部構造を構成する部材の一つである。本実施形態では、フロアパネル35は、フロントパネル36、フロントパネル36の後部に接続されたセンターパネル37、及び、センターパネル37の後部に接続されたリアパネル38からなる。フロントパネル36の上に前部座席40が配置され、センターパネル37の上に後部座席41が配置されている。
【0012】
図2に示すようにフロアパネル35は、車幅方向(矢印L-R方向)の中央に、車室33(図1参照)側へ向かって突出するフロアトンネル39が形成されている。フロアトンネル39の内側(車室33の外)に動力伝達装置10が配置されている。車体31には、車体31の前側であってフロアトンネル39の前方に前輪差動装置42が配置されている。前輪差動装置42の左右に前車軸43が配置されている。前車軸43のそれぞれに前輪44が取り付けられている。前輪差動装置42は左右の前輪44に駆動力を配分する。
【0013】
車体31の後側には後輪差動装置45が配置されている。後輪差動装置45の左右に後車軸46が配置されている。後車軸46のそれぞれに後輪47が取り付けられている。後輪差動装置45は左右の後輪47に駆動力を配分する。
【0014】
本実施形態では、車体31は、前室32にエンジンが搭載される自動車の車体と共用される。エンジンが搭載される自動車は、推進軸(プロペラシャフト)を用いてエンジンの駆動力を後輪差動装置45に伝達する。前輪差動装置42は、車体31の中心を通り車長方向(矢印F-B方向)に延びる車体中心線48に対して車幅方向にずれて配置されている。底面視において、後輪差動装置45は車体中心線48の上に配置されている。
【0015】
図3は動力伝達装置10のスケルトン図である。動力伝達装置10は、第1駆動装置11、第2駆動装置12、第1入力軸13、第2入力軸14、出力軸15及び差動装置25を備えている。第1駆動装置11は第1入力軸13に駆動力を出力し、第2駆動装置12は第2入力軸14に駆動力を出力する。第1駆動装置11及び第2駆動装置12はケース28に取り付けられている。第1入力軸13及び第2入力軸14は、車長方向(矢印F-B方向)に沿って配置されている。
【0016】
本実施形態では、第1駆動装置11及び第2駆動装置12は電動モータからなり、同一のトルク特性を有している。第1入力軸13及び第2入力軸14は、それぞれ第1駆動装置11及び第2駆動装置12の駆動力を直接受ける主軸であり、同軸上に配置されている。第1入力軸13及び第2入力軸14と出力軸15とは平行に配置されている。第1入力軸13及び第2入力軸14は、パイロットベアリング(図示せず)を介して互いに相対回転可能に連結されている。
【0017】
第1減速機16は、第1入力軸13の回転を出力軸15に伝達する機構である。第1減速機16は、第1入力軸13に結合する第1ギヤ17と、出力軸15に配置され第1ギヤ17にかみ合う第2ギヤ18と、を備えている。出力軸15に第1クラッチ19が配置されている。
【0018】
本実施形態では、第1クラッチ19は第2ギヤ18から出力軸15へ正転方向の動力を伝達するワンウェイクラッチである。第1クラッチ19は出力軸15と第2ギヤ18との間に介在する。第1クラッチ19がつながると第2ギヤ18は出力軸15に結合し、第1クラッチ19が切れると第2ギヤ18は出力軸15を空転する。第1クラッチ19は、第2ギヤ18の回転を出力軸15に遮断可能に伝達する一方、出力軸15から第2ギヤ18への回転の伝達を遮断する。
【0019】
第2減速機20は、第2入力軸14の回転を出力軸15に伝達する機構である。第2減速機20は、第2入力軸14に結合する第3ギヤ21と、出力軸15に結合し第3ギヤ21にかみ合う第4ギヤ22と、を備えている。第2駆動装置12は、第2減速機20を介して常に出力軸15に動力を伝達できる。第2減速機20は第1減速機16とは異なる減速比に設定されている。本実施形態では、第2減速機20の減速比は第1減速機16の減速比よりも小さい。
【0020】
出力軸15には第5ギヤ23が結合している。第5ギヤ23は、差動装置25に結合する第6ギヤ24とかみ合う。出力軸15の動力は第5ギヤ23及び第6ギヤ24を介して差動装置25に伝達され、差動装置25は第1推進軸26及び第2推進軸27に動力を配分する。第1推進軸26及び第2推進軸27は、動力伝達装置10のケース28に回転自在に支持されている。
【0021】
本実施形態では差動装置25は傘歯車式である。但し、これに限られるものではなく、差動装置25はプラネタリギヤ式、差動制限付き摩擦式、差動制限付きビスカス式、油圧多板クラッチ式、トルセン式、油圧式カップリング等、適宜採用できる。差動制限付きの差動装置25を採用することにより、前輪44や後輪47のどれかが空転しても、前輪44及び後輪47に動力を伝達できる。
【0022】
図2に戻って説明する。第1推進軸26は、ユニバーサルジョイント49を介して前輪差動装置42に接続されている。第2推進軸27は、ユニバーサルジョイント50を介して後輪差動装置45に接続されている。動力伝達装置10のケース28は、車体31のクロスメンバ(図示せず)に取り付けられている。
【0023】
本実施形態では、底面視(図2参照)において、動力伝達装置10の出力軸15(図3参照)、第1推進軸26及び第2推進軸27が前輪差動装置42及び後輪差動装置45を向くように、車体中心線48に対して車幅方向(矢印L-R方向)に出力軸15、第1推進軸26及び第2推進軸27が傾斜している。側面視(図1参照)において、前輪差動装置42と後輪差動装置45とを通る直線上に、第1推進軸26及び第2推進軸27が位置する。第1推進軸26及び第2推進軸27は水平に配置されている。
【0024】
第1駆動装置11及び第2駆動装置12に電力を供給するバッテリ(図示せず)は、燃料タンクや排気管、触媒などの空きスペースに配置されている。モータの出力を駆動力とする自動車30では、これらは不要だからである。バッテリは、外部電力が供給されて充電される他、第2駆動装置12からの回生電力が供給される。バッテリは、インバータ(図示せず)を介して第1駆動装置11及び第2駆動装置12にそれぞれ接続されている。
【0025】
動力伝達装置10は、発進時や低速走行時には、少なくとも第1駆動装置11を駆動する。第1駆動装置11の出力は、第2減速機20よりも減速比の大きい第1減速機16を介して出力軸15に伝達され、第1推進軸26及び第2推進軸27を駆動する。これにより、低速から大きな駆動トルクを得て力強い発進および低速走行が可能な4輪駆動の電気自動車が得られる。低速走行から高速走行へ移行したら、少なくとも第2駆動装置12を駆動する。
【0026】
このときに第1駆動装置11を駆動していれば、第1駆動装置11は高回転域になるので、一般的に第1駆動装置11のトルクは減少する。しかし、第2駆動装置12の出力は、第1減速機16の減速比よりも小さい第2減速機20の減速比で出力軸15に伝達されるので、高速でも十分な駆動トルクを得て安定した加速が可能となる。
【0027】
また、第2減速機20は第1減速機16の減速比とは異なる減速比で第2入力軸14の回転を出力軸15に伝達するので、第2入力軸14に結合する第2駆動装置12が出力軸15に出力するトルクを大きくできる。よって、低速から高速まで十分な駆動トルクを得ることができる。
【0028】
動力伝達装置10は、第1駆動装置11を駆動して、第2ギヤ18の回転数が出力軸15の回転数より相対的に高くなると、第1クラッチ19がつながり、第1減速機16を介して第1駆動装置11が出力軸15へトルクを出力する。一方、第2ギヤ18の回転数が出力軸15の回転数より相対的に低くなると、第1クラッチ19が切れるので、第1駆動装置11の回転数が過大になることを防止できる。さらに、第2駆動装置12及び第2減速機20で駆動するときの第1駆動装置11及び第1減速機16による引き摺り損失を抑制できる。
【0029】
動力伝達装置10の出力軸15は、第1入力軸13及び第2入力軸14と異軸(異なる軸上)に配置されるので、第1駆動装置11及び第2駆動装置12をフロアトンネル39のスペースに配置し、第1駆動装置11及び第2駆動装置12を避けて第1推進軸26及び第2推進軸27を配置する構造を簡素化できる。その結果、車体31の下部構造に動力伝達装置10を配置する自在性を高くできるので、エンジンの出力を駆動力とする自動車の下部構造と、モータの出力を駆動力とする自動車の下部構造と、を幅広く共通化できる。さらに、第1駆動装置11及び第2駆動装置12がフロアトンネル39に配置されるので、フロアトンネル39のスペースを有効活用できると共にヨー慣性モーメントを低減できる。
【0030】
動力伝達装置10の出力軸15は車体中心線48に対して傾斜しているので、前輪差動装置42と第1推進軸26とを接続するユニバーサルジョイント49の屈折角、及び、後輪差動装置45と第2推進軸27とを接続するユニバーサルジョイント50の屈折角のどちらも過大にならないようにできる。ユニバーサルジョイント49,50は屈折角が大きくなる程、軸やジョイントのねじり現象が増大し伝導効率が低下する。しかし、本実施形態では、車体中心線48に対して動力伝達装置10を傾けて配置することにより、ユニバーサルジョイント49,50の屈折角を小さくできるので、伝導効率の低下を抑制しつつ、共通化できる自動車30の下部構造をさらに拡大できる。
【0031】
図4及び図5を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施形態では、動力伝達装置10の第1駆動装置11及び第2駆動装置12が両方とも電動モータである場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、動力伝達装置70の第1駆動装置11は電動モータであり、第2駆動装置61がエンジンである場合について説明する。
【0032】
動力伝達装置70は、第2駆動装置61を代えた以外は、動力伝達装置10と同一である。その他、第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図4は第2実施の形態における動力伝達装置70が配置された自動車60(ハイブリッド車両)の側面図であり、図5は自動車60の底面図である。
【0033】
図4に示すように自動車60の車体31の前室32には、エンジンからなる第2駆動装置61が配置されている。フロアトンネル39の内側(車室33の外)に動力伝達装置70が配置されている。動力伝達装置70は、車体31の車長方向(矢印F-B方向)のほぼ中央に配置されている。第2駆動装置61のクランクシャフト(図示せず)に接続された駆動軸62は、動力伝達装置70の第2入力軸14(図3参照)に接続されている。
【0034】
図5に示すように駆動軸62、及び、動力伝達装置70の第1推進軸26は、底面視において車体中心線48上に配置されている。第1推進軸26は、ユニバーサルジョイント50を介して後輪差動装置45に接続されている。
【0035】
動力伝達装置70の第2推進軸63は、第1軸64、ユニバーサルジョイント65及び第2軸66を備えている。第1軸64はユニバーサルジョイント65を介して第2軸66に接続されている。第2軸66は第1軸64よりも長い。第1軸64は車体中心線48に平行に配置され、第2軸66は車体中心線48に対して傾斜している。第2軸66はユニバーサルジョイント49を介して前輪差動装置42に接続されている。これにより4輪駆動のハイブリッド車両が得られる。第1推進軸26及び第2推進軸63は水平に配置されている(図4参照)。
【0036】
第2実施形態では、車体31の車長方向のほぼ中央にケース28が配置された動力伝達装置70は、第2推進軸63のうち第1軸64よりも長い第2軸66が車体中心線48に対して傾斜している。その結果、前輪差動装置42と第2軸66第1推進軸26とを接続するユニバーサルジョイント49の屈折角、及び、第2軸66と第1軸64とを接続するユニバーサルジョイント65の屈折角のどちらも過大にならないようにできる。よって、ユニバーサルジョイント49,65の伝導効率の低下を抑制しつつ、共通化できる自動車60の下部構造を拡大できる。
【0037】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0038】
第1実施形態では、第1駆動装置11及び第2駆動装置12にトルク特性が同一の電動モータを用いる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。トルク特性が異なる電動モータを用いることは当然可能である。例えば、低速用のトルク特性を有するモータを第1駆動装置11とし、高速用のトルク特性を有するモータを第2駆動装置12とする。低速用のトルク特性を有する第1駆動装置11は、トルクピーク値が低回転側にあるモータである。高速用のトルク特性を有する第2駆動装置12は、第1駆動装置11のトルクがピークとなる回転数よりも高回転側にトルクピーク値があるモータである。
【0039】
実施形態では、第1入力軸13及び第2入力軸14と出力軸15との間に中間軸が配置されていない場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。中間軸を1本以上設け、中間軸にそれぞれギヤを配置し、第1減速機16及び第2減速機20の一部を構成する歯車列を中間軸に設けることは当然可能である。
【0040】
実施形態では、第1入力軸13及び第2入力軸14が同軸上に配置される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1入力軸13と第2入力軸14とを異軸に配置することは当然可能である。
【0041】
実施形態では、第1入力軸13及び第2入力軸14が第1駆動装置11及び第2駆動装置12,61の駆動力を直接受ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1駆動装置11及び第2駆動装置12,61と第1入力軸13及び第2入力軸14との間に歯車列やベルト等を介在することは当然可能である。
【0042】
実施形態では、第1クラッチ19がワンウェイクラッチである場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1クラッチ19を他のクラッチにすることは当然可能である。他のクラッチとしては、例えばドッグクラッチ等のかみあいクラッチ;ディスククラッチ、ドラムクラッチ、円すいクラッチ等の摩擦クラッチが挙げられる。
【0043】
実施形態では、第1入力軸13及び第2入力軸14がパイロットベアリング(図示せず)を介して互いに相対回転可能に連結される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1入力軸13と第2入力軸14との間に、かみ合いクラッチや摩擦クラッチ等の第2クラッチを配置することは当然可能である。第2クラッチをつなぐことにより第1入力軸13及び第2入力軸14を一体に回転させ、第2クラッチを切ることにより第1入力軸13及び第2入力軸14を相対回転させることができる。
【0044】
実施形態では、歯車列を用いて第1減速機16及び第2減速機20を構成し、第1入力軸13及び第2入力軸14と出力軸15とを異軸に配置する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。ベルトや無段変速機(CVT)等を用いた他の減速機を使い、第1入力軸13及び第2入力軸14と出力軸15とを異軸に配置することは当然可能である。
【0045】
実施形態では、第1推進軸26及び第2推進軸27,63が水平に配置される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。フロアトンネル39やケース28の高さと前輪差動装置42及び後輪差動装置45の高さとの関係で、第1推進軸26や第2推進軸27,63を車高方向に傾けて配置することは当然可能である。
【0046】
実施形態では、フロアトンネル39に対して前輪差動装置42の位置が車幅方向(矢印L-R方向)にずれている自動車30,60について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。底面視において前輪差動装置42が車体中心線48上にある自動車に動力伝達装置10,70を配置することは当然可能である。同様に、底面視において車体中心線48に対して後輪差動装置45の位置が車幅方向にずれている自動車に動力伝達装置10,70を配置することは当然可能である。
【0047】
また、フロアトンネル39に対して後輪差動装置45の位置が車高方向にずれている自動車においても、動力伝達装置10,70は出力軸15が第1入力軸13及び第2入力軸14と異軸に配置されるので、第1推進軸26や第2推進軸27(以下「推進軸」と称す)と車体中心線48とを平行に近づけ易くできる。これにより後輪差動装置45と推進軸とを接続するユニバーサルジョイントの屈折角を小さくできるので、伝導効率の低下を抑制できる。その結果、下部構造に対するモータの配置の自在性を高くできるので、下部構造を幅広く共通化できる。
【0048】
実施形態では、動力伝達装置10の第1入力軸13及び第2入力軸14の位置と第1推進軸26及び第2推進軸27の位置とが車高方向にずれている場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1入力軸13及び第2入力軸14と第1推進軸26及び第2推進軸27とが同じ高さに位置するように、動力伝達装置10を配置することは当然可能である。
【符号の説明】
【0049】
10,70 動力伝達装置
11 第1駆動装置(モータ)
12 第2駆動装置(モータ)
13 第1入力軸
14 第2入力軸
15 出力軸
16 第1減速機(減速機)
20 第2減速機(減速機)
25 差動装置
26 第1推進軸
27 第2推進軸
39 フロアトンネル
42 前輪差動装置
45 後輪差動装置
48 車体中心線
61 第2駆動装置(エンジン)
63 第2推進軸
図1
図2
図3
図4
図5