(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】地図上の車両の位置を推定する方法
(51)【国際特許分類】
G01C 21/30 20060101AFI20221208BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20221208BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G01C21/30
G09B29/00 Z
G09B29/10 A
(21)【出願番号】P 2020537738
(86)(22)【出願日】2019-02-12
(86)【国際出願番号】 EP2019053459
(87)【国際公開番号】W WO2019166221
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2020-09-04
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リー, フランク
(72)【発明者】
【氏名】ボニフェ, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】イバニェス-グスマン, ハビエル
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0346423(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-21/36
G09B 29/00、29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図上の車両(10)の正確な位置(P
P)を推定する方法であって、
地理位置情報システムによって前記車両(10)の少なくとも1つの地理的位置(P
0)を取得するステップと、
前記地図上の車両(10)を、この地理的位置(P
0)に事前に配置するステップと、
パーティクル(P
i)と呼ばれる前記車両の可能な位置が、前記地図上の車両(10)の正確な位置(P
P)を定めるように処理されるパーティクルフィルタリングステップと、を含み、
前記パーティクルフィルタリングステップは、
前記地図上の車両(10)の前記地理的位置(P
0)に応じて前記地図上のパーティクル(P
i)を分布させる予備ステップ
であって、前記地図上のパーティクル(P
i
)を道路上のみならず、道路の外にもランダムに分布させる予備ステップ、および、その後、前記車両(10)の動態に関する情報に応じて前記地図上のパーティクル(P
i)を更新する更新ステップ、
少なくとも前記地図からのデータに基づいて、それぞれのパーティクル(P
i)の尤度(w
i)を算出する算出ステップ、
前記地図上のパーティクル(P
i)の限定された集合を選択する選択ステップ、ならびに、
選択したパーティクル(P
i)の尤度(w
i)に関連し且つ選択したパーティクル(P
i)の数に関連する指標(N
eff)が閾値を下回る場合
にのみ、前記地図上のパーティクル(P
i)をリサンプリングするリサンプリングステップを含むことを特徴とする、推定する方法。
【請求項2】
それぞれのパーティクル(P
i)の尤度(w
i)は、前記地図からのデータのみに応じて算出される、請求項1に記載の推定する方法。
【請求項3】
それぞれのパーティクル(P
i)の尤度(w
i)は、前記車両(10)が周囲環境を感知できるようにするセンサからのデータにも応じて、これらのデータが信頼できるとみなされるという条件で算出される、請求項1に記載の推定する方法。
【請求項4】
前記パーティクルフィルタリングステップでは、前記地図上の車両(10)の正確な位置(P
P)は、それぞれのパーティクル(P
i)の尤度(w
i)に応じて、選択された前記パーティクル(P
i)の限定された集合の中から選定される、請求項1から3のいずれか一項に記載の推定する方法。
【請求項5】
道路区間に関するデータを記憶する前記地図によって、それぞれのパーティクル(P
i)の尤度(w
i)は、前記パーティクル(P
i)に対して最も近い道路区間の位置に応じて算出される、請求項1から4のいずれか一項に記載の推定する方法。
【請求項6】
前記予備ステップでは、前記パーティクル(P
i)を、前記車両(10)の地理的位置(P
0)を中心とするディスク内に分布させる、請求項1から5のいずれか一項に記載の推定する方法。
【請求項7】
前記ディスクの半径は、前記車両(10)の地理的位置(P
0)に割り当てられた水平保護レベル(HPL)に応じて決定される、請求項6に記載の推定する方法。
【請求項8】
前記選択ステップでは、前記パーティクル(P
i)は、これらと前記車両(10)の地理的位置(P
0)との間の距離に応じて選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の推定する方法。
【請求項9】
前記更新ステップでは、前記パーティクル(P
i)を、前記車両の動態に関する情報のみに応じて前記地図上で移動させる、請求項1から8のいずれか一項に記載の推定する方法。
【請求項10】
前記リサンプリングステップでは、前記パーティクル(P
i)は低分散法を使用してリサンプリングされる、請求項1から9のいずれか一項に記載の推定する方法。
【請求項11】
車両(10)であって、
地図を記憶するための手段と、
地理位置情報システムと、
前記地図上に前記車両(10)を事前に配置するように設計されるコンピュータと、を含み、
前記コンピュータは、請求項1から10のいずれか一項に記載の、地図上の車両(10)の正確な位置(P
P)を推定する方法を実施するように設計されることを特徴とする、車両(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、地図作成の分野に関する。
【0002】
本発明は、より詳細には、地図上の車両の正確な位置を推定する方法であって、
地理位置情報システムによって車両の少なくとも1つの地理的位置を取得するステップと、
地図上の車両を、この地理的位置で事前に配置するステップと、
パーティクルと呼ばれる車両の可能な位置が、地図上の車両の正確な位置を決定するように処理されるパーティクルフィルタリングステップと、を含む方法に関する。
【0003】
本発明は、
地図を記憶するための手段と、
地理位置情報システムと、
地図上に車両を事前に配置するように設計されるコンピュータと、を含む車両にも関する。
【背景技術】
【0004】
自律走行車両および部分的に自動化された車両の安全性を保証するために、これらの車両が移動している周囲環境を広範囲にわたって知ることが必要である。
【0005】
実際には、車両は、この周囲環境を2つの異なるやり方、すなわち、地図および車両の地理位置情報システムを使用して、および外受容センサ(カメラ、レーダー、またはライダーセンサなど)を使用して、感知する。
【0006】
地図を開発する企業は、現在、道路網の特徴(車線幅、地表標識、道標など)についての非常に詳細な情報を得ることが可能である「高精細」地図と呼ばれるものに取り組んでいる。
【0007】
これらの地図は、地理位置情報システムを備える車両に組み込まれていることによって、これらの車両は、経度および緯度に関して推定された位置において地図上の該車両自体を位置付けることができる。
【0008】
残念ながら、この位置は常に非常に正確で信頼できるものではなく、車両が実際に通っている経路外に位置しているという結果になることに気付く。この問題は、自律走行車両がこの情報を使用してこの車両自体を案内する場合にとりわけ危険であることを実証し得る。
【0009】
この問題を克服するために、独国特許出願公開第102013217060号から既知の1つの解決策は、地図上の車両の位置を調節するために車両の外受容センサからの情報を考慮することにある。
【0010】
この解決策は、「パーティクルフィルタ」法と呼ばれるものを使用する。この方法では、車両の考えられる位置に対応するパーティクルが考慮されかつ処理されることで、車両の正確な位置を見つけることを試みる。上述した文献では、パーティクルは、恐らく、車両の実際の位置に対応するただ1つのパーティクルが見つけられるまで、車両に搭載されたカメラによって観測される車線区分線の位置に応じてこのフィルタによって段階的に選択される。
【0011】
この解決策は2つの欠点を示している。
【0012】
この第1の欠点は、この信頼性が、路面標識の可視性に非常に大きく依存していることである。具体的には、可視ではない場合または路面標識がない場合、信頼できない結果がもたらされると理解されたい。
【0013】
この第2の欠点は、結局、ただ1つのパーティクルを選択することが可能であるため、間違えた場合、自動車はこのことを確かめることができず、これは非常に危険であることを実証し得る。
【発明の概要】
【0014】
先行技術の前述の欠点を克服するために、本発明は、地図上の自動車の正確な位置を確かめることが可能か否か、可能である場合、この正確な位置は何かを判断するための新規な方法を提案する。
【0015】
より詳細には、本発明に従って提案されるのは、導入部で定められるような方法であって、パーティクルフィルタリングステップは、
地図上の車両の地理的位置に応じて地図上のパーティクルを分布させる予備ステップ、および、その後、地図上のパーティクルを更新するステップ、
少なくとも地図からのデータに基づいて、それぞれのパーティクルの尤度を算出するステップ、
パーティクルの限定された集合を選択するステップ、ならびに、
選択されたパーティクルの尤度に関連し且つ選択されたパーティクルの数に関連する指標が閾値を下回る場合、地図上のパーティクルをリサンプリングするステップを含む方法である。
【0016】
よって、本発明により、それぞれのパーティクルの尤度は、地図からのデータに基づいて算出される。したがって、この算出は、車両の外受容センサによって読み出されるデータと無関係であってよく、したがって、地表標識の可視性および車両の周囲環境の可視性と無関係であってよい。よって、信頼性が外的条件に依存していない結果がもたらされる。
【0017】
また、本発明により、リサンプリングするステップは、自動的に行われないことによって、潜在的に正しいパーティクルの排除をもたらし得るパーティクルの減少が回避される。
【0018】
本発明による方法の他の有利かつ非限定的な特徴は、以下のようになる。
それぞれのパーティクルの尤度は、地図からのデータのみに応じて算出される。
それぞれのパーティクルの尤度は、車両がこの周囲環境を感知できるようにするセンサからのデータにも応じて、これらのデータが信頼できるとみなされるという条件で算出される。
パーティクルフィルタリングステップでは、正確な位置は、それぞれのパーティクルの尤度に応じて、選択されたパーティクルの限定された集合の中から選定される。
道路区間に関するデータを記憶する地図によって、それぞれのパーティクルの尤度は、パーティクルに対して最も近い道路区間の位置に応じて算出される。
予備ステップでは、パーティクルを、車両の地理的位置を中心とするディスクにおいて分布させる。
ディスクの半径は、車両の地理的位置に割り当てられた水平保護レベルに応じて決定される。
選択するステップでは、パーティクルは、これらと車両の地理的位置との間の距離に応じて選択される。
更新するステップでは、パーティクルを、車両の動態に関する情報のみに応じて地図上で移動させる。
リサンプリングするステップでは、パーティクルは低分散法を使用してリサンプリングされる。
【0019】
本発明は、
地図を記憶するための手段と、
地理位置情報システムと、
上述されるように、地図上の車両の正確な位置を推定する方法を実施するように設計されるコンピュータと、を含む車両にも関する。
【0020】
非限定的な例によって示される、添付の図面を参照する以下の説明によって、本発明の内容、および本発明がどのように実施され得るかについて理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明による方法のさまざまなステップを示す図である。
【
図3】地図上に分布させたパーティクルの概略図である。
【
図4】2つの連続した道路区間に隣接している2つのパーティクルの概略図である。
【
図5】4つの道路区間に隣接している4つのパーティクルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図2は、4つの車線V1、V2、V3、V4を有する道路部分上で走行する乗用車の形式の自動車10を示す。
【0023】
これ以降の説明では、とりわけ対象となるものは、地図上のこの自動車10の場所であるが、本発明はこのような例に限定されるものではない。よって、本発明は、とりわけ、地図上の、いずれの陸、海、空中、または空間の車両の場所にも該当する。
【0024】
ここで対象としている自動車10は、従来、シャーシ、駆動列、ステアリングシステム、制動システム、ならびに、以降コンピュータと呼ばれる、電子および/またはコンピュータ処理ユニットを含む。
【0025】
コンピュータは、車両の速度、および車両のヨー角速度を正確に測定できるようにする「固有受容」センサと呼ばれるものに接続される。
【0026】
コンピュータは好ましくは、自動車10の目前の周囲環境を感知できるようにする「外受容」センサと呼ばれるもの(これらは、カメラ、レーダーセンサ、ライダーセンサなどであってよい)にも接続される。
【0027】
コンピュータはさらに、ここで、緯度および経度によって定められる、車両10の地理的位置P0を評価できるようにする地理位置情報システムに接続される。これは例えば、GPSシステムであってよい。
【0028】
ここで、この地理位置情報システムはさらに、「水平保護レベルHPL」と呼ばれるデータ項目をコンピュータに送信するように設計されることが検討されることになる。当業者には周知であるこのデータ項目は、地理的位置P0の測定における不確定性に対応する。この値は例えば、地理位置情報システムがデータを受信する人工衛星の数、信号の受信の品質、使用される地理位置情報システムの品質などに応じて変化する。
【0029】
同じ考え方を受けて、ここで、この地理位置情報システムは、この同じ不確定性に関する共分散行列をコンピュータに送信するように設計されることも検討されることになる。
【0030】
対象としている自動車10は、このコンピュータが、例えば、運転手が危険に気付かず、かつ自身で適切な行動を起こさなかった時、非常ブレーキをトリガすることができるように、半自動化である可能性がある。
【0031】
しかしながら、本開示のこれ以降では、自動車10は自律的であり、かつ、コンピュータは、車両の、駆動列、ステアリングシステム、および制動システムを制御するように設計されることが検討されることになる。
【0032】
コンピュータはさらにまた、車両の自律制御の文脈で、とりわけ、後述される方法の文脈で使用されるデータを記録するコンピュータメモリを含む。
【0033】
該コンピュータは、とりわけ、プロセッサによる実行によってコンピュータが後述される方法を実施できる命令を含むコンピュータプログラムから成るコンピュータアプリケーションを記憶する。
【0034】
コンピュータはまた、「高精細」地形図と呼ばれるものを記憶する。
【0035】
この地図は、大量のデータを記憶する。
【0036】
まず最初に、該地図は、道路の地形に関する情報を含む。この地形は、この場合、道路区間(または「連絡路」)の形式で記憶される。それぞれの道路区間は、この場合、道路のただ1つの車線の一部分として定められ、この特徴はこの全長にわたって一定である(道路区間に沿って同一の地表標識の形状、この道路区間の一定の幅など)。
【0037】
地図はまた、車線の幅、車線の両側に位置する地表標識の形状、道路区間における道路に隣接するそれぞれの標識の位置および形状、先のおよび後の道路区間の識別子などを含む、それぞれの道路区間を特徴付ける他のデータを記憶する。
【0038】
地図上の自動車10の正確な位置P
Pを推定するためにコンピュータによって実施される方法は、2つの主な動作、すなわち、パーティクルフィルタリング動作100およびシナリオ選択動作200を含む(
図1を参照)。
【0039】
シナリオ選択動作200は、パーティクルフィルタリング動作100の結果を使用するが、これはこのシナリオ選択動作200がその後実施されることを意味する。
【0040】
さらにまた、第1のパーティクルフィルタリング動作100を説明することから始めることができる。
【0041】
この動作は、再帰的に、すなわち、ループでおよび規則的な時間増分で実施される。
【0042】
この動作は、3つの主なステップを含む。
【0043】
第1のステップ101は、コンピュータが、接続されるセンサを介してさまざまなデータを取得することにある。
【0044】
コンピュータはよって、自動車10の地理的位置P0、およびこれと関連付けられる水平保護レベルHPLを取得する。これらのデータは、緯度、経度、および水平保護レベルHPLを提供する地理位置情報システムにより取得される。
【0045】
コンピュータはまた、自動車10の動態に関するデータを取得する。よって、該コンピュータは、車両の速度V、およびこのヨー角速度Ψを取得する。
【0046】
第2のステップ102は、取得した地理的位置P0において地図上の車両10を事前に配置するステップである。
【0047】
第3のステップ103は、パーティクルPiと呼ばれる車両の可能な位置(またはより正確には、車両の可能な様子)が、地図上の車両10の正確な位置PP(またはより正確には、地図上の車両の正確な様子)を決定するために処理されるパーティクルフィルタリングステップである。
【0048】
それぞれのパーティクルPiは、
デカルト基準系においてパーティクルの位置を定めるための2つの座標xi、yi(これらの座標を取得した経度および緯度にリンクさせる)、
北など、一定方向に対してパーティクルによって形成される角度を定めるためのヨー角、および
パーティクルPiが関連付けられる地図の識別子によって定められてよい。
【0049】
図3~
図5は、二等辺三角形の形式のパーティクルP
iを示し、それぞれの三角形は、地図上のパーティクルの位置に対応する中心M
i、および、地図上のパーティクルのヨー角に対応する配向を有する。
【0050】
図1に示されるように、第3のパーティクルフィルタリングステップ103は、より正確には、ここでより詳細に説明され得る複数のサブステップから成る。
【0051】
第1のサブステップ110は、パーティクルフィルタの初期化段階が存在するか否かを判断することにあり、これは例えば、自動車10が始動される場合である。
【0052】
この状況は、パーティクルがまだ生成されていない場合の始動シナリオとして挙げられ得る。
【0053】
続くサブステップ112はさらにまた、車両10の地理的位置P0を想定して、地図上のパーティクルPiを作成しかつ分布させることにある。
【0054】
この目的のために、パーティクルPiを、車両10の地理的位置P0を中心としてディスク内で分布させ、このディスクの半径は、この場合、水平保護レベルHPLに等しい。
【0055】
これらのパーティクルを、より正確には、一定の角度オフセットによって螺旋状に分布させる。螺旋状、およびパーティクルPi間の角度オフセットの特徴は、生成することが望まれるパーティクルPiの数に応じて選定される。
【0056】
この数は、100を上回る、より好ましくは、1000ほどである。この数は、その他の場合はコンピュータに過度な負担をかけない十分な精度を得るように判断される。
【0057】
現段階では、パーティクルPiはまだ配向されていない。
【0058】
それぞれのパーティクルPiはよって、誤差が地理位置情報システムに影響すると想定して、車両が有することができる可能な位置に対応する。
【0059】
図3において見ることができるようないくつかのパーティクルは、道路から離れて位置する。これは、パーティクルが地図に制限されず、これらパーティクルが2次元空間で移動してよいという事実を示す。したがって、このフィルタは、非常に柔軟であり、かつ、非常に多くの種々の解決策を最初に考えることを可能にし、これらのうち最も実現不可能なものはさらにまた、パーティクルフィルタによって排除されることになる。
【0060】
続くサブステップ113では、コンピュータはそれぞれのパーティクルPiをこれに最も近い道路区間と関連付ける。
【0061】
ここで選定される方法はポイントツーカーブ方法である。これは、それぞれのパーティクルPiを、ユークリッド距離に関して最も近い道路区間と関連付けることにある。
【0062】
実例として、このように
図4において、パーティクルP
1が道路区間ABと関連付けられることがわかる。
【0063】
現段階では、コンピュータは、とりわけ、それぞれのパーティクルが関連付けられる道路区間の配向に応じて(および場合によっては、車両の動態にも応じて)パーティクルPiを配向してよい。
【0064】
方法はその後、さらに説明されるサブステップ116を続ける。
【0065】
上述されているように、第1のサブステップ110は、パーティクルフィルタの初期化段階が存在したか否かを判断することにある。
【0066】
ここで、これに該当せず、かつプロセスが既に前もって初期化されていることが考えられ得る。
【0067】
この場合、サブステップ114では、コンピュータは地図上のパーティクルPiを更新する。
【0068】
この目的のために、パーティクルPiを全て、車両の動態に関する情報に応じて地図上で移動させる。
【0069】
2つのデータ項目、すなわち、車両の速度V、および自動車10のヨー角速度Ψは、具体的には、一定距離によってパーティクルPiの全てを移動させるために、および一定角度によってパーティクルを再配向するために使用される。
【0070】
この時のこのサブステップが自動車の地理的位置P0を使用しないことは留意されたい。
【0071】
続くサブステップ115では、コンピュータは、それぞれのパーティクルPiを道路区間と再び関連付ける。
【0072】
より正確には、コンピュータは、どのパーティクルPiが新しい道路区間と関連付けられなければならないかを判断し、かつこの新しい道路区間を識別する。
【0073】
コンピュータがどのように機能するかを理解するために、点M1、M2を中心とした2つのパーティクルP
1、P
2が示され、かつ道路区間ABも示される
図4を参照することができる。
【0074】
この場合、先の時間増分で、2つのパーティクルP1、P2はただ1つの同じ道路区間ABと関連付けられたと考えられるが、これは、それらパーティクルがサブステップ114において移動したからである。
【0075】
コンピュータはさらにまた、それぞれのパーティクルが新しい道路区間と関連付けられるべきか否かを確かめるために、それぞれのパーティクルPiに対する比率rを判断する。
【0076】
【0077】
この比率rが0と1との間である場合、パーティクルPiとこの元の道路区間との関連性は変更されるべきではない。これはここではパーティクルP1の場合である。
【0078】
この比率が負である場合、パーティクルPiとこの道路区間との関連性は、変更されるべきである。このパーティクルはより正確には、先の道路区間と、または先の道路区間のうちの1つと関連付けられるべきである。
【0079】
この比率が厳格に1を上回る場合、パーティクルPiとこの道路区間との関連性は、変更されるべきである。このパーティクルは、より正確には、後の道路区間とまたは後の道路区間のうちの1つと関連付けられるべきである。
【0080】
そのように多くの状況に遭遇する場合がある。
【0081】
道路区間ABがただ1つの後続区間BB’を有する
図4の状況において、パーティクルP
2はこの後続区間と関連付けられる(比率rがこの新しい道路区間によって0と1との間である限り、他の別の後続区間が考えられる)。
【0082】
道路区間ABが複数の後続区間BC、BD、BEを有する
図5の状況では、先の時間増分で対象としているパーティクルP
2は、後続区間BC、BD、BEがあるのと同じ数のパーティクルP
21、P
22、P
23にクローン化される。
【0083】
また、車両の動態を想定して、考えられ得る後続区間のいくつかがない場合パーティクルはより少ない回数クローン化されてよい。
【0084】
図に示されない別の状況では、パーティクルは、(とりわけ、例えば、別の車両を追い越すために車両が横に車線を変える時に生じることになる)先の時間増分で関連付けられた道路区間に平行な別の道路区間と関連付けられなければならないことが考えられる。これは、パーティクルが同じ道路区間でのみ移動することに制限されないため、可能とされる。この状況は、パーティクルの新しい位置および地図に記憶されたデータ(地表標識情報、車線幅など)を想定して検出可能である。1つの別形では、この状況が車両に搭載されたカメラを使用しても検出されると考えることが可能である。
【0085】
サブステップ115およびサブステップ113両方の後のサブステップ116では、コンピュータはそれぞれのパーティクルPiの尤度wiを算出する。
【0086】
パーティクルの尤度は、ここで、この重みwiによって表される。パーティクルの重みが大きいほど、対象としているパーティクルが自動車10の厳密な位置に相当する可能性が高くなる。
【0087】
この重みは、さまざまなやり方で算出されてよい。
【0088】
第1の実施形態では、それぞれのパーティクルPiの重みwiは地図からのデータのみに応じて算出される。
【0089】
より正確には、この重みは、対象としているパーティクルとこのパーティクルが関連付けられる道路区間との間のユークリッド距離に応じて判断される(この重みは例えば、この距離に反比例して等しい)。
【0090】
第2の実施形態では、それぞれのパーティクルPiの重みwiは、外受容センサからのデータにも応じて、これらのデータが信頼できるとみなされるという条件で算出される。
【0091】
具体的には、車両のカメラCAMからの横情報に応じて対象としているパーティクルの重みが増加するまたは低減することを仮定することが可能である。これらのカメラは、効果的には、地表標示線を検出すること、およびこれらを多項式モデルの形式でコンピュータにフィードバックすることが可能である。コンピュータはさらにまた、これらの地表標示線の形状が地図に記録された地表標識の形状に対応するかどうかを検証し、それに応じてパーティクルの重みを調節してよい。
【0092】
地表標識が常にカメラによって検出されるわけではないことは留意されたい。これは、例えば、点灯不良、濡れた道路、消去された標示など、センサにとって困難である条件によるものであり得る。これらの具体的な事例では、カメラは、コンピュータに低信頼度を指示し、重みの算出はさらにまた、第1の実施形態において説明されるように、地図によって提供されるデータにのみ基づく。
【0093】
ここで、データ項目の信頼性基準は一般的に、例えば、パーセンテージの形式でデータ項目を測定するセンサによって提供されることに気付く(このパーセンテージはさらにまた、データ項目が考慮されるべきか否かを判断するために使用されることになる)。
【0094】
使用される方法に関係なく、方法は、パーティクルPiの限定された集合を、自動車10の瞬間的な地理的位置P0から離れすぎていると思われるパーティクルを排除するように選択するサブステップ117を続ける。
【0095】
このサブステップを実施するために、コンピュータは、自動車10の新しい地理的位置P0を取得し、さらにまた、それぞれのパーティクルPiとこの瞬間的な地理的位置P0との間の距離を算出する。
【0096】
この距離が水平保護レベルHPLを上回る場合、対応するパーティクルPiの重みwiはゼロに設定され、それによって、このパーティクルはその後自動的に排除可能となる。
【0097】
上回らない場合、対応するパーティクルPiの重みwiは修正されない。
【0098】
続くサブステップ118では、コンピュータは、地図上のパーティクルPiをリサンプリングすることが必要か否かを判断する。
【0099】
この目的のために、コンピュータは、パーティクルPiの重みwiおよびパーティクルPiの数に応じて算出される指標Neffを使用する。
【0100】
この指標Neffが(コンピュータの読み出し専用メモリに記憶される)あらかじめ定められた閾値を下回る場合、コンピュータは地図上のパーティクルPiをリサンプリングする。下回らない場合、パーティクルPiはその状態に保たれる。
【0101】
知られるように、リサンプリングは、(以降、元のパーティクルと呼ばれる)パーティクルを全体として考慮すること、およびこの元の集合から新しいパーティクルを引き出すことにある。
【0102】
パーティクルをリサンプリングするために、コンピュータは、所定の数の新しいパーティクルをパーティクルPiの元の集合からランダムに引き出すようにする従来の方法を使用することができ、それぞれのパーティクルPiを引き出す可能性はこのパーティクルPiの重みwiに比例している。しかしながら、この方法は一般的に、パーティクルの減少を引き起こすが、これは、常に、引き出されるパーティクルの重みが非常に大きいからである。
【0103】
この場合、コンピュータは好ましくは、むしろ、「低分散」リサンプリング方法と呼ばれるものを使用する。具体的には、この方法は、地図上のパーティクルの良好な分布の維持を促進する。この方法は、所定の数の新しいパーティクルをパーティクルPiの元の集合からランダムに引き出すことにあり、それぞれのパーティクルPiを引き出す可能性はこのパーティクルPiの重みwiに応じるものであるが、今回はこの重みに比例していない。
【0104】
現段階では、コンピュータは、地図上の自動車10の正確な位置PPに対応すると考えられる、全てが1つの同じ点の周りに位置するパーティクルを得るまでサブステップ114~118をループで再開することで済ますことが可能である。
【0105】
しかしながら、これは、ここで選定されるオプションではない。よって、上で説明されているように、サブステップ118が完了すると、シナリオ選択動作200が提供される。
【0106】
このシナリオ選択動作200は、パーティクルフィルタリング動作100が収束し、かつ限定された数の解決策が与えられると実施される(パーティクルは例えば、あらかじめ定められた閾値より低い数の点の周りに集められる)。
【0107】
このシナリオ選択動作200は、再帰的に、すなわち、ループでおよび規則的な時間増分で実施される。この動作はいくつかの連続したステップを含む。
【0108】
第1のステップ201では、コンピュータは「シナリオ」を選択する。
【0109】
この目的のために、さまざまな集合のパーティクルPiが考えられ、これらのそれぞれの中で、パーティクルは全て、1つの同じ車線(または別形として、1つの同じ道路区間)と関連付けられる。
【0110】
シナリオに作用する利益は、さらにまた、最も可能性の高いシナリオの全てを選択することが可能になることであり、これによって、最初に、選択されたシナリオから正しいシナリオを保持し、次に、それぞれの選択されたシナリオの妥当性を検証することが可能になる。
【0111】
シナリオは、「車両は、基準が…である車線に位置する」というような表明の形式で表現されてよい。
【0112】
本開示の意味の範囲内に相当するのはどんなシナリオかを十分理解してもらうために、
図3では、パーティクルを、それぞれがシナリオに対応する8の集合Z
1、Z
2、Z
3、Z
4、Z
5、Z
6、Z
7、Z
8に一斉にグループ分けする。
【0113】
例として、集合Z1におけるパーティクルは、「車両は道路R1の右側車線に位置する」というシナリオに対応する。
【0114】
集合Z2におけるパーティクルは、「車両は道路R1の左側車線に位置する」というシナリオに対応する。
【0115】
集合Z3におけるパーティクルは、「車両は道路R2の左側車線に位置する」というシナリオに対応する。
【0116】
集合Z4におけるパーティクルは、「車両は道路R1およびR2による分岐合流点の間の円形交差点に位置する」というシナリオなどに対応する。
【0117】
数「J」のシナリオ(
図3ではJ=8)が見られることを考慮すると、それぞれのシナリオはまた、ベクトル
の形式で表現されてよく、この成分はこれらのパーティクルの重みw
iによって重み付けされた、このシナリオのパーティクルP
iの座標の合計に対応する。
【0118】
コンピュータは、「信頼指数」をそれぞれのシナリオに割り当ててよく、この信頼指数はこのシナリオのパーティクルPiの重みwiの合計に等しい。
【0119】
第2のステップ202では、コンピュータは、それぞれのシナリオの共分散行列
、および車両10の地理的位置P
0の共分散行列Σ
-1(X
GNSS)を判断することになる。
【0120】
このような共分散行列を具体的に操作することによって、それぞれのシナリオにリンクされており、かつ地理位置情報システムによって提供される地理的位置P0にリンクされている不確定性を特徴付けることが可能になる。
【0121】
上で説明したように、車両10の地理的位置P0にリンクされている共分散行列Σ-1(XGNSS)はこの場合、地理位置情報システムによってコンピュータに直接送信され、この場合、2×2行列である。
【0122】
それぞれのシナリオにリンクされる共分散行列
に関して、これは、このシナリオに関連付けられたパーティクルP
iの全ての重みw
iに応じて算出され、この場合も、2×2行列である。
【0123】
さらにまた、地理位置情報システムによって提供される地理的位置P0を想定して、かつこの地理的位置の測定にリンクされている誤差を考慮して、それぞれのシナリオが「無矛盾である」程度を判断することが必要である。
【0124】
この目的のために、ステップ203では、マハラノビス距離D
Mjと呼ばれる数学的対象が使用され、この数式は以下のようになる。
ここで、X
GNSSはベクトル「地理的位置P
0」に対応する。
【0125】
マハラノビス距離は、具体的には、変数の共分散(すなわち、それぞれの変数にリンクされている疑惑)を考慮して、2つの不確定状況の間の整合性を評価することを可能にするオブジェクトである。
【0126】
さらにまた、ステップ204において、ステップ201で取得されたシナリオの中からシナリオの第1の限定された(あるいは空の)集合が選択される。
【0127】
この目的のために、それぞれのマハラノビス距離DMjに対するカイ二乗(X2)検定が行われる。
【0128】
実際には、それぞれのマハラノビス距離DMjはここで、対象としているシナリオが地理的位置P0と無矛盾であるか否かを判断するために臨界閾値と比較される。
【0129】
対象としているシナリオおよび地理的位置P0がカイ二乗検定の意味の範囲内で無矛盾である場合、シナリオは保持される。
【0130】
それに反して、対象としているシナリオおよび地理的位置P0がカイ二乗検定の意味の範囲内で無矛盾でない場合、シナリオは拒否される。
【0131】
ここで、シナリオが保持される場合、これが、必ずしも、このシナリオが真であることを意味するわけではないことは留意されたい。具体的には、現段階では、いくつかのシナリオは保持されてよい。
【0132】
それに反して、シナリオが拒否される場合、これは、必ずしも、このシナリオが偽であったことを意味するわけではない。具体的には、このシナリオは、大きな誤差が地理的位置P0の測定に影響する場合であり得る。この場合、真のシナリオは拒否され得る。本開示のこれ以降で疑いなく明らかになるように、これはその他の場合、ここで提案される方法の信頼性に影響することはない。
【0133】
後続のステップ205において、ステップ204で選択されたシナリオの中からシナリオの第2の限定(あるいは空)集合が選択される。
【0134】
ここで、この第2の選択が、その他の場合方法の進行状況に影響を与えることなく、第1の選択の前に行われている可能性があることは留意されたい。
【0135】
この第2の選択は、「可能性が高い」シナリオのみを保持することにあり、これらのシナリオに対して、このシナリオを形成するパーティクルPiの重みwiにリンクされている指標は判断された閾値より大きい。この目的は、具体的には、カイ二乗整合性検定を満たしているが可能性が低いシナリオを排除することである。
【0136】
この目的のために、コンピュータは、信頼指数(取り消されるものは対象としているシナリオのパーティクルPiの重みwiの合計に等しい)は、判断された閾値より低いシナリオを排除する。この閾値はこの場合、不変であり、かつコンピュータの読み出し専用メモリに記憶される。
【0137】
これらの2つのシナリオ選択ステップの終わりに、コンピュータは、無矛盾であるだけでなく可能性が高い、数Nのシナリオを保持している。
【0138】
ステップ206では、さらにまた、この数Nに応じて、それぞれの選択されたシナリオの使用可能または使用不可能な性質が判断される。
【0139】
3つの事例が考えられ得る。
【0140】
第1の事例は、数Nが1に等しい場合である。この場合、ただ1つのシナリオが保持されているため、このシナリオは、正当であるとみなされ、かつ自律走行車両に対する走行命令を生成するために使用可能である。したがって、コンピュータはこれを信用することができる。この場合、コンピュータはさらにまた、このシナリオの最高の重みのパーティクルが車両10の正確な位置PPに対応すると考慮し得る。
【0141】
第2の事例は、数Nが厳格に1より大きい場合である。この場合、いくつかのシナリオが保持されているため、これらのどれもが、自律走行車両に対する走行命令を生成するために使用可能であると考慮されない。したがって、方法は、ただ1つのシナリオが得られるまでループで再開される。
【0142】
最後の事例は、数Nが0に等しい場合である。この場合、保持されているシナリオがないため、自律走行車両に対する走行命令を生成するために使用可能であると考慮されるパーティクルはない。さらに、コンピュータは有利には、地理位置情報システムによって行われる測定と取得したシナリオとの間に矛盾があるこの状況から推論可能であり、これは恐らく、地理位置情報システムに影響を与える問題によるものである。この場合、自律走行モードの車両の運転手および/または制御ユニットに、これらが必要な測定を行う(緊急停止、低下モードでの制御など)ことができるようにアラートを送信するステップ207が行われる。