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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   B62H 5/00 20060101AFI20221208BHJP
   B62J 17/06 20060101ALI20221208BHJP
   B62J 23/00 20060101ALI20221208BHJP
   B62J 45/42 20200101ALI20221208BHJP
   B60R 25/32 20130101ALI20221208BHJP
【FI】
B62H5/00 Z
B62J17/06
B62J23/00 A
B62J45/42
B60R25/32
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020561280
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2019047385
(87)【国際公開番号】W WO2020129642
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】201811579327.3
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】川隅 慎司
(72)【発明者】
【氏名】唐 櫻
(72)【発明者】
【氏名】宋 超
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-184001(JP,A)
【文献】特開2014-080181(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157372(WO,A1)
【文献】特開2010-105642(JP,A)
【文献】特開2007-152986(JP,A)
【文献】特開2013-193627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62H 5/00-5/20
B62J 17/06,23/00,
45/00-45/423,99/00
B60R 25/30-25/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の足を覆うレッグシールド(164)と、前記レッグシールド(164)とともに内部空間(242)を形成するフロントカバー(162)とを備え、前記レッグシールド(164)に、オン状態であるときに当該鞍乗型車両(10)の走行を可能とするキースイッチ(200)が設けられた鞍乗型車両(10)において、
前記レッグシールド(164)は、該レッグシールド(164)の一部位が前記フロントカバー(162)側に向かって陥没することで形成されたインナボックス(184)を該レッグシールド(164)と一体的に有し、
前記インナボックス(184)は、前記内部空間(242)側に突出した下方壁(185a)、側壁(185b)、上方壁(185c)と、前記下方壁(185a)、前記側壁(185b)及び前記上方壁(185c)に連なる底壁(185d)とを有し、
前記上方壁(185c)の、前記内部空間(242)側の上面に、当該鞍乗型車両(10)の振動を検知する振動検知器(272)が配設され、
前記振動検知器(272)の車幅方向寸法が前記インナボックス(184)の車幅方向寸法に比して小さく、且つ前記振動検知器(272)が前記インナボックス(184)の車幅方向中間よりもヘッドパイプ(18)に近接する側に収まるように配設された鞍乗型車両(10)。
【請求項2】
請求項1記載の鞍乗型車両(10)において、前記振動検知器(272)は、前記キースイッチ(200)がオフ状態であるときにのみ当該鞍乗型車両(10)の振動を検知する鞍乗型車両(10)。
【請求項3】
請求項1又は記載の鞍乗型車両(10)において、前記上方壁(185c)の、前記振動検知器(272)が配設された前記内部空間(242)側の上面に、SB端子(186)が配設されるとともに、前記振動検知器(272)の通信ケーブル(274)と、前記USB端子(186)の電力供給ケーブル(276)とが、前記底壁(185d)の前記内部空間(242)側の面に設けられた1個のクランプ部(280)によって束ねられている鞍乗型車両(10)。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の鞍乗型車両(10)において、当該鞍乗型車両(10)は、走行駆動力発生源としてのモータと、前記モータに電力を供給するバッテリ(92)とを備え、さらに、前記振動検知器(272)は補助電源を有し、
前記バッテリ(92)は、当該鞍乗型車両(10)から取り外すことが可能であり、
前記バッテリ(92)が当該鞍乗型車両(10)に搭載されているときには、前記振動検知器(272)に対して前記バッテリ(92)から電力が供給されることで前記振動検知器(272)が作動する一方、前記バッテリ(92)の放電容量が所定の閾値よりも低下したとき又は前記バッテリ(92)が当該鞍乗型車両(10)から取り外されたときには、前記補助電源によって前記振動検知器(272)が作動する鞍乗型車両(10)。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の鞍乗型車両(10)において、前記振動検知器(272)が、前記上方壁(185c)の、前記内部空間(242)側の上面に直接接合される鞍乗型車両(10)。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の鞍乗型車両(10)において、前記振動検知器(272)が通信装置を兼ねる鞍乗型車両(10)。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の鞍乗型車両(10)において、前記上方壁(185c)の、前記振動検知器(272)が配設された前記内部空間(242)側の上面が、車幅方向外方から内方に向かうに従って下方に傾斜した傾斜部(270)である鞍乗型車両(10)。
【請求項8】
乗員の足を覆うレッグシールド(164)と、前記レッグシールド(164)とともに内部空間(242)を形成するフロントカバー(162)とを備え、前記レッグシールド(164)に、オン状態であるときに当該鞍乗型車両(10)の走行を可能とするキースイッチ(200)が設けられた鞍乗型車両(10)において、
前記レッグシールド(164)は、該レッグシールド(164)の一部位が前記フロントカバー(162)側に向かって陥没することで形成されたインナボックス(184)を該レッグシールド(164)と一体的に有し、
前記インナボックス(184)は、前記内部空間(242)側に突出した下方壁(185a)、側壁(185b)、上方壁(185c)と、前記下方壁(185a)、前記側壁(185b)及び前記上方壁(185c)に連なる底壁(185d)とを有し、
前記上方壁(185c)の、前記内部空間(242)側の上面に、当該鞍乗型車両(10)の振動を検知する振動検知器(272)が配設され、
ヘッドパイプ(18)を中心に前記内部空間(242)を車幅方向左部と車幅方向右部とに区分したとき、前記インナボックス(184)は、前記車幅方向左部又は前記車幅方向右部のいずれかに寄り、
前記内部空間(242)における前記車幅方向左部と前記車幅方向右部のうち、前記インナボックス(184)と同一側に寄って前記インナボックス(184)の近傍にUSB端子(186)が配設され
前記USB端子(186)は、前記振動検知器(272)よりも車幅方向外方に配設された鞍乗型車両(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に関し、一層詳細には、通信ユニットを搭載した鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、自動二輪車をはじめとする鞍乗型車両に盗難防止用の機器が搭載される。例えば、特開2010-120626号公報には、自動二輪車に、現在地を通知するGPSユニットを搭載することが提案されている。この場合、ユーザは、通知されたGPSユニットの現在地から鞍乗型車両の現在地を知ることが可能である。
【0003】
この点に基づき、鞍乗型車両を移動させようとするユーザではない者(非ユーザ)が、GPSユニットを鞍乗型車両から取り外そうとすることが想起される。従って、GPSユニットを、非ユーザが見つけることが困難であり、且つ取り外すことが困難な位置に配置することが望ましい。この観点から、特開2010-120626号公報では、乗員用シートの下方の内部空間にGPSユニットを配設することが提案されている。
【発明の概要】
【0004】
GPSユニットは、振動を検知する振動検知器としても機能することが多々ある。一方、乗員用シートの下方は、比較的振動が伝わり難い箇所である。このため、上記したように乗員用シートの下方の内部空間にGPSユニットを配設した場合、非ユーザが鞍乗型車両を移動させるべく該鞍乗型車両を振動させたとしても、GPSユニットが精度よく振動を検知し得ない懸念がある。
【0005】
本発明の主たる目的は、振動検知器が振動を精度よく検知することが可能な鞍乗型車両を提供することにある。
【0006】
本発明の一実施形態によれば、乗員の足を覆うレッグシールドと、前記レッグシールドとともに内部空間を形成するフロントカバーとを備え、前記レッグシールドに、オン状態であるときに当該鞍乗型車両の走行を可能とするキースイッチが設けられた鞍乗型車両において、
前記レッグシールドは、該レッグシールドの一部位が前記フロントカバー側に向かって陥没することで形成されたインナボックスを該レッグシールドと一体的に有し、
前記インナボックスは、前記内部空間側に突出した下方壁、側壁、上方壁と、前記下方壁、前記側壁及び前記上方壁に連なる底壁とを有し、
前記上方壁の、前記内部空間側の上面に、当該鞍乗型車両の振動を検知する振動検知器が配設された鞍乗型車両が提供される。
【0007】
なお、鞍乗型車両の典型例としては自動二輪車が挙げられるが、本発明は特にこれに限定されるものではなく、前輪又は後輪のいずれかが2個である自動三輪車であってもよいし、バギー四輪車であってもよい。また、上記した振動検知器の配置に関する構成は、電動の鞍乗型車両のみならず、内燃機関を搭載した鞍乗型車両にも適用することが可能である。
【0008】
非ユーザが鞍乗型車両を移動させようとするとき、該非ユーザがキースイッチやレッグシールドを操作することが想定される。本発明においては、上記したようにキースイッチが設けられるレッグシールドの内部空間側(裏面側)に振動検知器が配設されるので、鞍乗型車両に発生した振動を精度よく検知することができる。しかも、振動発生器は、レッグシールドとフロントカバーの間に形成される内部空間に収容される。このため、非ユーザが見つけることが困難である。
【0009】
従って、上記のような構成とすることにより、GPSユニットが非ユーザから取り外されることが抑制される。
【0010】
上記の目的、特徴及び利点は、添付した図面を参照して説明される以下の実施の形態の説明から容易に了解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る鞍乗型車両としての自動二輪車の全体概略側面図である。
図2図2は、図1の自動二輪車を構成する車体フレームの全体概略斜視図である。
図3図3は、図2の車体フレームの要部概略斜視図である。
図4図4は、図1の自動二輪車の要部概略斜視図である。
図5図5は、図1の自動二輪車の要部概略背面図である。
図6図6は、図2の車体フレームに取り付けられるスイングアームの全体概略斜視図である。
図7図7は、スイングアームの全体概略側面図である。
図8図8は、スイングアームのサスペンション連結部とシート下ボックスとの位置関係を示す要部概略平面図である。
図9図9は、シート下ボックス及びその近傍の概略斜視図である。
図10図10は、レセプタクルの全体概略斜視図である。
図11図11は、図1の要部拡大図である。
図12図12は、自動二輪車の、フロントカバーを省略した要部概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る鞍乗型車両につき自動二輪車を例示して好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下における前後左右は、乗員用シートに着席した運転者(乗員)の前方、後方、左方、右方に対応し、「車幅方向」は「左右方向」に一致する。また、「ユーザ」には、運転者の他に販売事業者や整備作業者等が含まれる。
【0013】
図1は、本実施の形態に係る自動二輪車10の全体概略側面図である。この自動二輪車10は、走行するための前輪12及び後輪14と、後輪14のホイール15内に収容されたモータ(図示せず)とを有する。モータは後輪14を回転させる走行駆動力発生源であり、自動二輪車10は、後輪14が回転することに伴って走行する。すなわち、この自動二輪車10は、いわゆるインホイールモータを備える電動二輪車である。
【0014】
自動二輪車10は、図2に示す車体フレーム16を備える。該車体フレーム16は、ヘッドパイプ18と、ヘッドパイプ18の後方から斜め下方に延在するメインパイプ20と、メインパイプ20から後方に向かって延在し且つその後端が斜め上方に延在する左シートレール22L、右シートレール22Rと、左シートレール22L、右シートレール22Rの下方に配設された左サブフレーム24L、右サブフレーム24Rとを有する。
【0015】
左シートレール22L、右シートレール22Rの間には、車体フレーム16を構成して略U字形状をなす前クロスメンバ26、中クロスメンバ28、後クロスメンバ30が設けられる。左サブフレーム24L、右サブフレーム24Rは、この中の前クロスメンバ26、中クロスメンバ28を介して左シートレール22L、右シートレール22Rに支持される。さらに、左シートレール22Lと左サブフレーム24Lの間、右シートレール22Rと右サブフレーム24Rの間には、左ストッパ32L、右ストッパ32Rがそれぞれ立設される。なお、前クロスメンバ26にはメインパイプ20の下端が連結される。
【0016】
中クロスメンバ28の左方には、スタンド取付ステー34が取り付けられる。該スタンド取付ステー34には、サイドスタンド35(図1参照)が回動可能に保持される。
【0017】
左シートレール22Lから右シートレール22Rにかけて、その一部が平面視でスタンド取付ステー34に重なる位置にバー状ステー38が跨がる。さらに、左シートレール22L、右シートレール22Rの各々の、バー状ステー38よりも後方の上面には、左ボックス支持ブラケット42L、右ボックス支持ブラケット42Rが設けられる(図2参照)。
【0018】
前記後クロスメンバ30は、左シートレール22L、右シートレール22Rの、車幅方向内方に屈曲する屈曲部よりも前方に配置される。また、中クロスメンバ28から後クロスメンバ30には、図3に示すように、緩やかに湾曲する湾曲フレーム46が橋架される。該湾曲フレーム46にはサスペンション支持ステー50が設けられるとともに、このサスペンション支持ステー50に、リアサスペンション52(図7参照)の下端が連結される。
【0019】
左シートレール22L、右シートレール22Rの前記屈曲部近傍には、下方に向かって垂下するように左アーム取付ステー54L、右アーム取付ステー54Rが設けられる(図2参照)。さらに、屈曲部から後端まで至る途中に左PCU支持ブラケット60L、62L、右PCU支持ブラケット60R、62Rがそれぞれ取り付けられ、後端に、左シートレール22Lから右シートレール22Rに跨がる支持プレート64が設けられる。
【0020】
以上のように構成される車体フレーム16中のヘッドパイプ18には、キーブラケット66を介して後述するキーシステム199が支持されるとともに、図示しないステアリングステムのステムシャフト68が通される(いずれも図12参照)。該ステアリングステムには、2個1組のフロントフォーク70(図1参照)が保持される。前記前輪12は、左右のフロントフォーク70、70同士の間に回転可能に挟持される。また、前輪12の上部はフロントフェンダ72で覆われる。ステムシャフト68の、ヘッドパイプ18から突出した上端にはステアリング74(図5参照)が通される。これらステムシャフト68の上端及びステアリング74は、ハンドルカバー76で覆われる。
【0021】
ハンドルカバー76の前面には、フロントウィンカ78が左右に設けられる。また、図5に示すように、ハンドルカバー76の後面にはウィンカスイッチ80、スタータスイッチ82等が設けられる。一方、ステアリング74の左端にはハンドルグリップ84が被せられ、右端にはアクセルグリップ86が回動可能に設けられる。ハンドルグリップ84、アクセルグリップ86の近傍には、リアブレーキレバー88、フロントブレーキレバー89が回動可能に配設される。
【0022】
図1及び図4に示すように、左サブフレーム24L、左シートレール22L、右サブフレーム24R及び右シートレール22Rによって画成される空間には、フロアサポート170(後述)の一部であるバッテリボックス90が配設される。該バッテリボックス90は左ストッパ32L、右ストッパ32Rによって堰き止められており、これにより、前記空間内から車幅方向外方に露出することが防止される。
【0023】
バッテリボックス90内には、二次電池としてのモバイルバッテリ92が収納されている。なお、モバイルバッテリ92は、バッテリボックス90から取り出すことも可能である。
【0024】
左シートレール22L及び右シートレール22Rの屈曲部近傍には、ピボット軸94(図7参照)を介してスイングアーム100が取り付けられる。このスイングアーム100につき説明すると、該スイングアーム100は、図6に示すように、前方上端で集合し後方に向かうに従って互いに離間するように分岐した左アーム部102Lと右アーム部102Rを有する。左アーム部102Lと右アーム部102Rが収束する前方上端には、サスペンション連結部104が設けられる。
【0025】
また、左アーム部102Lの前方下端から右アーム部102Rの前方下端にかけては、ピボット軸94が連結される円筒状のピボット連結部106が橋架される。左アーム取付ステー54Lと右アーム取付ステー54Rとの間に介挿されたピボット連結部106は、ピボット軸94を介して前記左アーム取付ステー54L、前記右アーム取付ステー54Rに連結される(図1参照)。この連結により、スイングアーム100が左シートレール22L及び右シートレール22R、ひいては車体フレーム16に取り付けられる。
【0026】
図7(及び図8)に示すように、前記サスペンション連結部104には、前記リアサスペンション52の上端が連結される。すなわち、リアサスペンション52の下端及び上端は、車体フレーム16、スイングアーム100にそれぞれ連結される。なお、図7中のO1はスイングアーム100の回動中心を表し、O2、O3はリアサスペンション52の回動中心を表す。
【0027】
ピボット連結部106からサスペンション連結部104までの距離、換言すれば、スイングアーム100の前端の高さH1は、該スイングアーム100の後端の高さH2に比して大きく設定される。このため、左アーム部102L、右アーム部102Rは、側面視で略三角形形状をなす。このような構造とすることにより、スイングアーム100を小型化しながら、左アーム部102L、右アーム部102Rに十分な剛性を得ることができる。しかも、小型化が可能であるのでスイングアーム100の軽量化を図ることができる。また、側面視で略三角形状をなすスイングアーム100は、美観に優れる。
【0028】
左アーム部102Lには第1貫通孔108a及び第2貫通孔108bが厚み方向に沿って形成され、右アーム部102Rにも同様に第3貫通孔108c及び第4貫通孔108dが形成される。これら第1貫通孔108a~第4貫通孔108dを形成することにより、スイングアーム100の一層の軽量化を図ることができる。自動二輪車10を側面視したとき、第1貫通孔108a~第4貫通孔108dは、図1から諒解されるように左シートレール22L及び右シートレール22R(すなわち、車体フレーム16)に重なる。
【0029】
この場合、ピボット連結部106は、サスペンション連結部104よりも下方且つ後方に位置する。換言すれば、サスペンション連結部104は、ピボット連結部106よりも前方側に突出している。この構造によっても、スイングアーム100が十分な剛性を示すものとなる。さらに、サスペンション連結部104は、ピボット連結部106に比して幅狭に設定される。
【0030】
左アーム部102Lから右アーム部102Rには、バー形状の前支持部110が橋架される。該前支持部110は、第2貫通孔108b及び第4貫通孔108dよりも若干後方の上方に設けられる。また、左アーム部102L及び右アーム部102Rの後端には、後輪14を支持するための左支持凹部112L、右支持凹部112Rがそれぞれ形成される。右アーム部102Rの、右支持凹部112R近傍の上方には、前記前支持部110とともにリアフェンダ114(図1参照)を支持する後支持部116が突出する。リアフェンダ114が後輪14の上部を覆うことは勿論である。
【0031】
このように、本実施の形態では、リアフェンダ114がスイングアーム100に取り付けられる。このため、リアフェンダ114を、ステー等を介して車体フレーム16に取り付ける場合に比して部品点数を低減することができる。しかも、ユーザ等が視認した際の美観が良好となる。
【0032】
左アーム部102Lの、右アーム部102Rを臨む内壁と、右アーム部102Rの、左アーム部102Lを臨む内壁には、それぞれ、複数個の左掛止フック(図示せず)、右掛止フック118(図6参照)が設けられる。これら左掛止フック及び右掛止フック118は、第2貫通孔108b、第4貫通孔108dよりも後方に配置される。
【0033】
そして、スイングアーム100の上方には、図1に示すように、制御装置であるパワーコントロールユニット(以下、「PCU」とも表記する)140が配設される。PCU140は、左PCU支持ブラケット60L、62L、右PCU支持ブラケット60R、62R、支持プレート64に連結されることで位置決め固定されている。
【0034】
左ボックス支持ブラケット42L、右ボックス支持ブラケット42Rには、中空の筐体であるシート下ボックス142の後下端が連結される。なお、該シート下ボックス142の左前下端、右前下端には、下方で開口した図示しないU型フックがそれぞれ設けられている。これらU型フックは、左シートレール22L、右シートレール22Rにそれぞれ係合される。シート下ボックス142の上部後端に設けられた突出部144の下面には、ブレーキランプやリアウィンカ等が設けられたランプユニット146が配置される。
【0035】
スイングアーム100のピボット連結部106が左シートレール22L、右シートレール22Rの各屈曲部の下方に位置するとともに、シート下ボックス142の下端が左シートレール22L、右シートレール22Rの上面側に設けられた左ボックス支持ブラケット42L、右ボックス支持ブラケット42Rに連結されることから、ピボット連結部106は、シート下ボックス142の下端よりも下方に位置する。このため、ピボット連結部106がシート下ボックス142に干渉することがないので、シート下ボックス142の容量を大きくすることができる。すなわち、シート下ボックス142に多くの、又は大きな荷物を収納することが可能である。
【0036】
サスペンション連結部104は、シート下ボックス142の下端よりも上方に位置する。サスペンション連結部104をこのように配置することにより、自動二輪車10は、スイングアーム100の剛性が十分に活用されるものとなる。
【0037】
なお、サスペンション連結部104は上記したようにピボット連結部106よりも幅狭であり、スイングアーム100は全体として略四角錐形状に設定されている(図6参照)。図8に示すように、シート下ボックス142にはサスペンション連結部104の干渉を回避するための逃げ部149が形成されるが、スイングアーム100が略四角錐形状であり、且つサスペンション連結部104が幅狭に構成されるため、逃げ部149のクリアランスを小さく設定することができる。従って、逃げ部149を形成することに伴うシート下ボックス142の容量低下を可及的に小さくすることができる。
【0038】
シート下ボックス142の上方は開口しており、少なくとも運転者が着席する乗員用シート150によって閉塞されている。乗員用シート150の前端は、図示しないシート用ヒンジを介してシート下ボックス142の前端に回動可能に連結されている。
【0039】
図9は、シート下ボックス142が開放状態にあるときの要部拡大図である。なお、該図9では、乗員用シート150の図示を省略している。
【0040】
特に図示していないが、乗員用シート150の下面後方にはロック用フックが設けられる。一方、シート下ボックス142を構成する前記突出部144の内部には、ロック用フックを掛止するシート用ロック機構152が設けられる。後述するキーシステム199のキースイッチ200(図5参照)を操作する(回転させる)ことに伴い、シート用ロック機構152が解除されて乗員用シート150がシート用ロック機構152の拘束から解放される。この状態で、運転者をはじめとするユーザが、乗員用シート150の後方を把持して前方側に引き上げることにより、乗員用シート150が前端のシート用ヒンジを回動中心として回動する。その結果、図1に仮想線で示すように、乗員用シート150の後端が上方に向かって移動した起立姿勢となって停止する。これにより、シート下ボックス142が開放状態となる。
【0041】
突出部144の上面には、後述するステップフロア168(図1及び図4参照)を回動可能とするための解除スイッチ154が右方に偏倚するように設けられる。解除スイッチ154のボタン156は、右方から左方に向かうに従って、換言すれば、自動二輪車10の車幅方向外方から内方に向かうに従って、下方に傾斜する。ユーザが、ボタン156の、左端に比して上方に位置する右端を下方に押し下げることにより、ステップフロア168が回動可能となる。
【0042】
図1に示すように、車体フレーム16は、ヘッドライト160が設けられたフロントカバー162、レッグシールド164、左サイドカバー166L、右サイドカバー166R、ステップフロア168によって覆われる。レッグシールド164の後方には、フロアサポート170が配設される。図4に示すようにフロアサポート170の前端であるバッテリボックス90には開口部172が形成されており、前記ステップフロア168はこの開口部172内に配置されている。
【0043】
ステップフロア168は、乗員である運転者が足を置くためのものである。特に図示していないが、ステップフロア168の前端は、図示しないフロア用ヒンジを介してフロアサポート170の前端に回動可能に連結されている。また、ステップフロア168の下面後方にロック用フックが設けられる一方、開口部172の後端近傍に、ロック用フックを掛止する図示しないフロア用ロック機構が配設される。ユーザが図9に示される解除スイッチ154を操作する(ボタン156の右端を下方に押し下げる)ことに伴い、フロア用ロック機構が解除されてステップフロア168がフロア用ロック機構の拘束から解放される。
【0044】
この状態で、ユーザが、ステップフロア168の後方を把持して前方側に引き上げることにより、ステップフロア168が前端のフロア用ヒンジを回動中心として回動する。その結果、図1及び図4に仮想線で示すように、ステップフロア168の後端が上方に向かって移動した起立姿勢となって停止する。これによりバッテリボックス90の開口部172が開放状態となり、ユーザが開口部172から手を差し入れてモバイルバッテリ92に触れることが可能となる。
【0045】
レッグシールド164及びフロントカバー162はいずれも単一個の部材からなり、ステップフロア168から前方に向かって傾斜するように延在する下傾斜部174a、アンダシールド部176aと、下傾斜部174aに連なり且つ後方に向かって傾斜するように延在する上傾斜部174b、アッパシールド部176bをそれぞれ有する。従って、下傾斜部174aと上傾斜部174bの間、アンダシールド部176aとアッパシールド部176bとの間に所定角度の折曲部178が形成される。フロントフェンダ72は、折曲部178の近傍から露呈する。また、ステアリング74及びハンドルカバー76は、アッパシールド部176bの上方に配置される。
【0046】
図5に示すように、レッグシールド164を構成するアッパシールド部176bの後面左方には、フロントカバー162側に向かって略四角柱形状に陥没した幅広凹部180が形成される。該幅広凹部180の下方の約半分は覆壁182に囲繞されており、これによりポケット状のインナボックス184が画成されている。図12に示すように、幅広凹部180の下方壁185a、側壁185b、上方壁185c、底壁185dと覆壁182はアッパシールド部176bと一体的に構成されており、レッグシールド164の一部位である。すなわち、幅広凹部180の下方壁185a、側壁185b、上方壁185c、底壁185dと覆壁182は、レッグシールド164と別個に作製された部材がアッパシールド部176bに取り付けられたものではない。なお、下方壁185a、側壁185b、上方壁185cが底壁185dに連なることは勿論である。
【0047】
幅広凹部180の上方には、USB端子186が配設される。USB端子186には、例えば、充電を要するスマートフォンを接続することができる。インナボックス184には、このスマートフォンを収納すればよい。勿論、インナボックス184にその他の物品を収納するようにしてもよい。
【0048】
アッパシールド部176bの後面右方には、前方側に陥没したキー用凹部190が形成される。このキー用凹部190の底面には、キーシステム199を構成するキースイッチ200が配設される。発信器を内蔵したスマートキーを携帯するユーザがキースイッチ200の把持部202を把持して右方のON位置まで回転させることにより、モータが始動可能なON状態となる。
【0049】
また、把持部202を左方のOFF位置まで回転させると前記モータの運転が停止されるOFF状態となり、ステアリング74を若干左方に傾斜させ且つ把持部202を一層左方のLOCK位置まで回転させると、ステアリング74が回動不能にロックされる。さらに、キースイッチ200を押し込みながら把持部202をOFF位置から一層左方のOPEN位置まで回転させると、乗員用シート150が上記したようにシート用ロック機構152の拘束から解放される、すなわち、乗員用シート150が前端のシート用ヒンジを中心として回動可能となり、シート下ボックス142が開放される。
【0050】
幅広凹部180とキー用凹部190との間(以下、「ピラー部210」と指称する)には、前方側に向かって陥没する第1トラック状凹部212が形成され、さらに、該第1トラック状凹部212内の下方に、深さが大である第2トラック状凹部214が形成される。第2トラック状凹部214は、第1トラック状凹部212の下端から長手方向略中間部を若干超える程度まで延在する。
【0051】
第2トラック状凹部214には、充電器のコネクタ(図示せず)が接続されるレセプタクル230が配設される。このレセプタクル230につき説明する。
【0052】
図10に示すように、レセプタクル230は、コネクタ232が設けられた本体部234と、長手方向に直交する断面が略逆凹字形状である蓋部236とを有する。この中の本体部234は平面視でトラック形状をなし、長手方向の一端部である上端部には、後方に向かって突出するように半円環状壁部238が立ち上がっている。半円環状壁部238には開閉用ヒンジ239が設けられ、この開閉用ヒンジ239を介して、前記蓋部236の円筒形状の上端が本体部234に連結されている。
【0053】
従って、蓋部236は、開閉用ヒンジ239を回動中心に、実線で示す位置から仮想線で示す位置まで、又はその逆方向に回動することが可能である。実線で示す位置は、コネクタ232を遮蔽する閉位置であり、仮想線で示す位置は、コネクタ232を露呈させる開位置である。図5から諒解されるように、閉位置は自動二輪車10の前方側であり、開位置は後方側である。すなわち、蓋部236を閉位置から開位置とする際には、蓋部236の下方を、前方から後方に向かうように回動させる。このときの回動中心は、蓋部236の、円筒形状の上端である。
【0054】
蓋部236には、該蓋部236を閉方向に付勢するリターンスプリング(図示せず)等の付勢手段が設けられる。蓋部236は、コネクタ232を露呈させる開位置でロックされて開位置を保つ一方、開位置にて蓋部236に荷重が付与されると、前記リターンスプリングの弾発付勢によって閉位置に戻る。
【0055】
コネクタ232は、保護壁220内に埋設された複数個の通電端子(図示せず)を有する。そして、本体部234には、全ての保護壁220及び通電端子を取り囲む周壁224が設けられる。保護壁220及び周壁224は自動二輪車10の後方に向かって突出しており、周壁224の突出高さは、保護壁220に比して大きく設定されている。
【0056】
第1トラック状凹部212及び第2トラック状凹部214の各底壁は、アッパシールド部176bの傾斜に倣って傾斜している(図5参照)。このため、第2トラック状凹部214の底壁に位置決め固定されたレセプタクル230は、アッパシールド部176bの傾斜に沿う姿勢となっている。
【0057】
図10に示すように、蓋部236の厚みは、半円環状壁部238の突出厚みと略同等である。そして、本体部234の底面(自動二輪車10の前方を臨む面)から半円環状壁部238の最標高面(自動二輪車10の後方を臨む面)までの厚みT1は、第1トラック状凹部212の開口端から第2トラック状凹部214の底面までの深さと同等に、又は若干小さく設定されている。このため、第2トラック状凹部214の底壁に取り付けられたレセプタクル230において、蓋部236が閉位置にあるとき、蓋部236が第1トラック状凹部212の開口よりも自動二輪車10の後方側に露出することが回避される(図5及び図11参照)。
【0058】
特に図示しないが、第2トラック状凹部214の底面には挿通孔が形成され、該挿通孔には、レセプタクル230のコネクタ232に電気的に接続された通電ケーブル240が通される。該通電ケーブル240は、レッグシールド164とフロントカバー162の間に画成される内部空間242(図12参照)を通され、さらに、モバイルバッテリ92と左ストッパ32Lの間を通されて(図4参照)PCU140まで延在する。通電ケーブル240には、高圧の電流が流れる。
【0059】
一方、前記モバイルバッテリ92に対しては、高圧電流が流れる制御ケーブル250(図4参照)が接続される。制御ケーブル250は、シート下ボックス142の左前端近傍の下方で前記通電ケーブル240に結線されており、結局、モバイルバッテリ92は、制御ケーブル250及び通電ケーブル240を介してPCU140に電気的に接続される。
【0060】
以上のように、本実施の形態では、レセプタクル230をレッグシールド164の後面に配置するとともに、モバイルバッテリ92をステップフロア168の下方(換言すれば、自動二輪車10の前方の床下)に配置している。このため、レセプタクル230とモバイルバッテリ92との離間距離が小さくなる。従って、制御ケーブル250と通電ケーブル240が近接するので、両ケーブルを結線することによって、高圧電流が流れる制御ケーブル250の長さを可及的に小さくすることができる。
【0061】
その一方で、モータからPCU140には、高圧電流が流れる高圧ケーブル254(図6参照)が延在する。モータを出発した高圧ケーブル254は、例えば、前記右掛止フック118に掛止され、第3貫通孔108cから右アーム部102Rの外方に引き出される。高圧ケーブル254の、PCU140に近接する一端部は、前記ケーブル固定ブラケット58(図2参照)の右方に固定される。このように、本実施の形態によれば、第3貫通孔108cを形成したことからスイングアーム100の内面を用いて高圧ケーブル254を配線することが可能である。このため、ユーザが高圧ケーブル254を視認することは困難である。従って、美観に優れるとともに、高圧ケーブル254を好適に保護することができる。
【0062】
さらに、第3貫通孔108cには、側面視で右シートレール22R(車体フレーム16)が重なる。このため、高圧ケーブル254が右シートレール22Rによって保護される。
【0063】
上記したように、モータは後輪14に設けられる(いわゆるインホイールモータ)。また、PCU140は車体フレーム16の後方に配置される。このため、モータとPCU140の離間距離が小さい。従って、高圧ケーブル254の長さを小さくすることができる。高圧ケーブル254は概して重量が大であり、しかも、高価であるので、長さを小さくすることで軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【0064】
なお、前記左掛止フックには、例えば、リアドラムブレーキを作動させるブレーキワイヤ256が掛止される。ブレーキワイヤ256は、第2貫通孔108bから左アーム部102Lの外方に引き出され、モバイルバッテリ92と左ストッパ32Lとの間に通される。すなわち、第2貫通孔108bを形成したことにより、ブレーキワイヤ256等もスイングアーム100の内面側に通すことが可能となり、ユーザがブレーキワイヤ256を視認することは困難となる。このことも、美観の向上に寄与するとともにブレーキワイヤ256を好適に保護する。また、第2貫通孔108bに対し、側面視で左シートレール22L(車体フレーム16)が重なることから、ブレーキワイヤ256が左シートレール22Lによって保護される。
【0065】
図5に戻り、第1トラック状凹部212の底壁には、第2トラック状凹部214の上方に荷掛フック260が配設される。このため、荷掛フック260はレセプタクル230の上方に位置する。荷掛フック260に対する取付強度は、所定重量の荷物262(袋やバッグ等)が掛止されてもアッパシールド部176bから離脱しないように設定されている。
【0066】
図11に示す垂線Mを参照して諒解されるように、蓋部236が開位置となった(開状態である)とき、該蓋部236の上方に荷掛フック260が位置する。換言すれば、自動二輪車10を平面視したとき、荷掛フック260は、開状態である蓋部236の上方で重なる。従って、蓋部236が開位置であるとき、荷掛フック260に荷物262を掛止すると、該荷物262が蓋部236に干渉して荷重を付与する。
【0067】
上記したように、レッグシールド164とフロントカバー162の間には内部空間242が画成される。図12に示すように、前記幅広凹部180の下方壁185a、側壁185b、上方壁185c及び底壁185dは、内部空間242において前方に突出する。上方壁185cの一部は、左方から右方に向かうに連れて下方に向かうように傾斜した傾斜部270となっている。傾斜部270は、ピラー部210の裏面に近接する側に設けられる。このように、傾斜部270は、車幅方向の内方となるに従って下方に傾斜している。
【0068】
傾斜部270の上面には、振動検知器であり且つ通信装置を兼ねるGPSユニット272が位置決め固定されている。該GPSユニット272は、その内部にリチウムイオン電池等の補助電源を内蔵する。GPSユニット272は、後述するようにキースイッチ200の把持部202がOFF位置である際にモバイルバッテリ92から供給された電力で作動するが、前記補助電源の作用下に作動することも可能である。すなわち、GPSユニット272は、いわゆる自立電源型無線センサとしても機能する。
【0069】
GPSユニット272は、自動二輪車10が特に駐車中に振動したときに当該振動を検知する。さらに、この場合には、GPSユニット272からの通信により、ユーザ(典型的には、自動二輪車10の所有者)が所有するスマートフォンに、自動二輪車10の現在位置が通知される。
【0070】
GPSユニット272の位置決め固定は、例えば、両面テープを介する接合によってなされている。又は、マジックテープ(登録商標)を用いてGPSユニット272を位置決め固定するようにしてもよい。このように、本実施の形態では、GPSユニット272は、ステー等の支持部材を介することなくインナボックス184の上方壁185c(傾斜部270)の上面に直接接合されている。このため、部品点数を低減することができるとともに、GPSユニット272の位置決め固定を簡素に且つ低コストで行うことができる。また、ステー等を介してGPSユニット272を取り付けていないので、振動の検知をより精度よく行うことができる。
【0071】
傾斜部270がピラー部210の裏面に近接する側に設けられているため、該傾斜部270の上面に位置決め固定されたGPSユニット272は、インナボックス184の車幅方向中心を示す中心線Lよりもヘッドパイプ18(自動二輪車10の車幅方向中心)に近接する位置に配設される。
【0072】
GPSユニット272には、PCU140まで延在する通信ケーブル274が接続される。また、USB端子186には電力供給ケーブル276が接続される。これら通信ケーブル274及び電力供給ケーブル276は、内部空間242において、インナボックス184の底壁185dの裏面側に設けられたクランプフック280(クランプ部)に掛止される。すなわち、クランプフック280によって通信ケーブル274及び電力供給ケーブル276が一括するように束ねられる。この場合、通信ケーブル274及び電力供給ケーブル276で1個のクランプフック280を共有するので、通信ケーブル274、電力供給ケーブル276の各々を別個のクランプフックに掛止する場合に比して、部品点数の低減を図ることができる。また、後述するように、GPSユニット272が傾斜部270の上面から脱落したり、USB端子186から電力供給ケーブル276が離脱したりすること等が防止される。
【0073】
なお、内部空間242には、メインパイプ20、キーシステム199の信号線290、ブレーキワイヤ256、フロントブレーキ用のブレーキホース292等の他、ヘッドライト160、ホーン等に通電するための各電気配線が収容されるが、これらの中には図示を省略したものもある。
【0074】
本実施の形態に係る自動二輪車10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果につき説明する。
【0075】
先ず、スイングアーム100を上記のような構造としたことにより、該スイングアーム100を、小型化且つ軽量化を図りながら剛性が大きなものとして得ることができる。
【0076】
自動二輪車10を走行させるには、運転者は、所定の周波数の無線信号を発するスマートキーを携帯し、ステアリング74を握持した後に足でサイドスタンド35を払うとともに回動させる。さらに、運転者は、乗員用シート150に着席した後、キースイッチ200の把持部202を把持して該把持部202がON位置となるまでキースイッチ200を回転させ、前記スタータスイッチ82を押す。これにより、モータが始動する。この際、GPSユニット272の振動検知機能が自動的にOFF状態となり、振動が検知されなくなる。ただし、GPSユニット272の位置情報取得機能は、ON状態を継続する。
【0077】
この状態で運転者がアクセルグリップ86(図5参照)を後方に回動させることにより、自動二輪車10が前方に向かって走行を開始する。速度を低減するにはアクセルグリップ86を前方に回動させればよく、方向転換を行うにはステアリング74を転舵すればよい。
【0078】
ここで、GPSユニット272、USB端子186にそれぞれ接続された通信ケーブル274、電力供給ケーブル276は、図12に示すように幅広凹部180(インナボックス184)の底壁185d(裏面)に設けられたクランプフック280に掛止されている。このため、自動二輪車10が走行する最中に通信ケーブル274や電力供給ケーブル276が内部空間242で振動したり、揺動したりすることが抑制される。従って、GPSユニット272が傾斜部270の上面から脱落することや、USB端子186から電力供給ケーブル276が離脱すること等が有効に抑制される。
【0079】
自動二輪車10の走行中、GPSユニット272の振動検知機能は上記したようにOFF状態にある。このためにモバイルバッテリ92からの供給電力が少なくなるので、省電力化を図ることができる。
【0080】
目的地に到着し、自動二輪車10を駐車させる際には、運転者は、キースイッチ200の把持部202(図5参照)を把持して該キースイッチ200を回転させ、把持部202をOFF位置に到達させる。これにより、モータがOFF状態となる。運転者は、ステアリング74を握持したまま降車し、サイドスタンド35(図1参照)を足で払って回動させ、さらに、自動二輪車10を左方に傾けてサイドスタンド35を接地させればよい。これにより、自動二輪車10がサイドスタンド35を介して地面に支持される。
【0081】
必要であれば、運転者は、キースイッチ200の把持部202を把持し、該キースイッチ200を押し込みながら一層左方に回転させ、把持部202をOPEN位置に到達させる。これに伴い、シート用ロック機構152が解除される。すなわち、乗員用シート150の下面後方に設けられたロック用フックが、シート用ロック機構152の拘束から解放される。そして、運転者が乗員用シート150の後方を把持して前方側に引き上げることにより、乗員用シート150が前端のシート用ヒンジを回動中心として回動する。乗員用シート150は、図1に仮想線で示すように後端が上方に向かって移動した起立姿勢となって停止する。
【0082】
この結果、シート下ボックス142が開放状態となる。一般的な電動二輪車では、バッテリはシート下ボックス142に収納されるが、本実施の形態では、モバイルバッテリ92がステップフロア168の下方のバッテリボックス90に収納される(図4参照)。このため、シート下ボックス142の内部に十分な容量の空間が得られる。この空間には、ヘルメット等を収納することが可能である。このように、モバイルバッテリ92をステップフロア168の下方に配置したことにより、シート下ボックス142の内部を有効な荷物収納空間として活用することができる。
【0083】
なお、把持部202がOPEN位置となるまで回転されたキースイッチ200は、運転者が把持力を低減することによって、図示しない弾性部材の作用下に自発的にOFF位置まで戻る。運転者が乗員用シート150を回動させて該乗員用シート150がシート下ボックス142の開口を覆った後、乗員用シート150の後端を下方に向かって押し込むと、ロック用フックがシート用ロック機構152から拘束を受ける。
【0084】
必要に応じ、ステアリング74を回動不能なロック状態とする。このためには、運転者は、ステアリング74を左方に転舵して前輪12を左方に向けた後、キースイッチ200の把持部202を、OFF位置よりも一層左方のLOCK位置まで回転させればよい。
【0085】
キースイッチ200の把持部202がOFF位置となると、GPSユニット272の振動検知機能が自動的にON状態となる。その後、運転者が自動二輪車10から離れてスマートキーからの無線信号が自動二輪車10に到達しなくなった後、又は、所定の時間が経過した後、振動の有無の検知を開始する。なお、この際にも、GPSユニット272の位置情報取得機能は継続してON状態である。
【0086】
運転者が自動二輪車10から離れた後、所定の周波数の無線信号を発するスマートキーを持たないユーザ以外の者(非ユーザ)が自動二輪車10を運搬ないし運転するべく、サイドスタンド35の回動やキースイッチ200の回転等を強制的に行うことが想定される。この際には、自動二輪車10が振動する。この振動は、GPSユニット272によって検知される。
【0087】
ここで、GPSユニット272は、図12に示すように、キースイッチ200が設けられたレッグシールド164の別部位であるインナボックス184(幅広凹部180)の底壁185dの裏面側に取り付けられている。キースイッチ200が操作され、その際に発生した振動がレッグシールド164に伝わると、その振動が、該レッグシールド164に取り付けられたGPSユニット272にも容易に伝わる。このように、キースイッチ200とGPSユニット272の双方をともに、同一の部材であるレッグシールド164に設けたことにより、キースイッチ200が不正に操作されたときの振動を精度よく検知することが可能となる。
【0088】
しかも、GPSユニット272は、インナボックス184(幅広凹部180)の底壁185dの裏面側に両面テープ等で直接接合されている。すなわち、底壁185dとGPSユニット272の間にステー等の支持部材が介在していない。このことも相俟って、振動を一層精度よく検知することができる。
【0089】
非ユーザがステアリング74を回動不能のロック状態から回動させることを試みた場合には、ヘッドパイプ18が振動する。GPSユニット272が、インナボックス184の底壁185dの、ヘッドパイプ18に近接する位置に配設されているので、このときの振動も精度よく検知される。
【0090】
振動を検知したGPSユニット272は、自動二輪車10の現在位置をユーザのスマートフォンに通信する。ユーザは、この通知を受けた時点で、非ユーザが自動二輪車10に触れていることを認識することができる。また、自動二輪車10が駐車位置から移動されたとしても、スマートフォンの表示に基づいて自動二輪車10の現在位置を把握することができる。なお、GPSユニット272が振動を検知した際にホーンが自動的に鳴るようにしてもよい。
【0091】
非ユーザが振動を検知されることを回避するべく、GPSユニット272の取り外しを試みることが想定される。しかしながら、この自動二輪車10では、GPSユニット272は、フロントカバー162とレッグシールド164の間に形成される内部空間242に配設されている。従って、GPSユニット272を取り外すためには、フロントカバー162又はレッグシールド164を取り外さなければならない。この作業は煩雑である上、長時間を要する。また、取外し時にはレッグシールド164が振動することが想定される。この振動をGPSユニット272が検知してユーザに通知するので、ユーザが自動二輪車10の異状を認識することができる。
【0092】
仮に、非ユーザがフロントカバー162又はレッグシールド164の側方を操作して内部空間242に手を差し入れても、GPSユニット272は、上記したようにヘッドパイプ18に近接する位置、すなわち、車幅方向の略中間近くに配設されている。このため、GPSユニット272を取り外すためには、手を内部空間242の奥深くに差し入れる必要がある。この差し入れを行うこと自体、困難である。
【0093】
しかも、GPSユニット272は、車幅方向中央に向かうに従って下方に傾斜する傾斜部270に位置決め固定されている。このため、自動二輪車10の左方から手を差し入れたときにはGPSユニット272に触れることが困難である。なお、右方から手を差し入れた場合、GPSユニット272の手前にヘッドパイプ18が位置するので、このときにもGPSユニット272に触れることは困難である。
【0094】
以上のように、非ユーザが自動二輪車10を振動させた(自動二輪車10に触れた)ときにはGPSユニット272及びスマートフォンを介してユーザがこれを認識することができる。また、GPSユニット272を取り外すことは煩雑であるとともに困難を伴う。このことから、盗難防止に有効である。
【0095】
図5に示すように、荷掛フック260には、耐荷重を下回る荷物262(例えば、袋や鞄等)を掛止することが可能である。荷掛フック260がレセプタクル230の上方に位置するので、荷掛フック260に掛止された荷物262はレセプタクル230を遮蔽する。この状態で、走行するようにしてもよい。
【0096】
走行中に、例えば、雨水等の水が荷物262を伝わる懸念がある。しかしながら、この場合、レセプタクル230のコネクタ232は蓋部236で覆われている。このため、レセプタクル230の内部に雨水等が侵入し難い。仮にレセプタクル230の内部に雨水等が侵入した場合であっても、コネクタ232が周壁224に囲繞されている。雨水がこの周壁224を乗り越えることも困難である。従って、漏洩した液体でコネクタ232が濡れることが防止される。以上のように、蓋部236及び周壁224を設けたことにより、レセプタクル230の通電端子(電気的接点)を保護することができる。
【0097】
なお、荷掛フック260に荷物262を掛止していない状態で降雨の最中に走行することも想定される。しかしながら、レセプタクル230は、傾斜したアッパシールド部176bに、該アッパシールド部176bの傾斜に沿った姿勢で配置されている。しかも、レセプタクル230は、レッグシールド164のピラー部210に形成された第2トラック状凹部214に埋入されている。従って、雨水がレセプタクル230を濡らすことが抑制される。仮に雨水がレセプタクル230(蓋部236)に付着したとしても、上記したようにレセプタクル230が傾斜しているため、雨水は重力の作用下に流下する。このため、レセプタクル230が濡れ難い。
【0098】
その上、この場合においても蓋部236がコネクタ232を遮蔽し、且つコネクタ232が周壁224に囲繞されている。従って、上記と同様の理由から、雨水でコネクタ232が濡れることが防止される。結局、荷掛フック260に荷物262が掛止されていないときにおいても、レセプタクル230の電気的接点である通電端子を保護することができる。
【0099】
ここで、レセプタクル230は、蓋部236が閉状態にあるとき、その全体が第2トラック状凹部214内に収まっている。従って、荷掛フック260に荷物262が掛止されていないときであっても、蓋部236が第2トラック状凹部214から運転者側に突出して邪魔になることはない。このため、利便性が良好となる。
【0100】
モバイルバッテリ92の放電容量は、自動二輪車10の走行距離が大となるに従って低下する。放電容量が所定の閾値を下回った際には、充電ステーションにて充電を行えばよい。
【0101】
荷掛フック260に荷物262を掛止した状態では、該荷物262がレセプタクル230の蓋部236を遮蔽している。この状態では、運転者が蓋部236を開状態となる方向に回動すること、すなわち、蓋部236の下端を上方に移動させることが阻止される。荷物262の自重に抗して蓋部236を回動させることは困難であるからである。このため、荷物262の中に液体が漏洩ないし貯留されているときであっても、該荷物262を荷掛フック260に掛止したままの状態で蓋部236が開状態とされてコネクタ232が露呈することや、露呈したコネクタ232が液体で濡れることが回避される。
【0102】
従って、運転者は、荷掛フック260から荷物262を取り外し、その後にレセプタクル230の蓋部236を回動させる。上記したように、蓋部236の回動中心は該蓋部236の上端に設けられた開閉用ヒンジ239であり、蓋部236の下端が上方に向かうように移動する。蓋部236は、例えば、前後方向に沿って延在する位置まで回動して停止する。蓋部236は、ロックによって停止位置(開位置)に位置決めされる。
【0103】
この回動により、コネクタ232が露呈する。充電作業者(主に運転者)が充電装置のコネクタを該コネクタ232に接続することに伴い、充電が開始される。所定時間が経過してモバイルバッテリ92の放電容量が回復したときには、充電装置のコネクタをコネクタ232から離脱させればよい。
【0104】
ここで、開位置にある蓋部236の上方には、上記したように荷掛フック260が位置する。このため、仮に蓋部236が開位置にあるときに荷掛フック260に荷物262が掛止された場合、該荷物262が蓋部236に干渉する。これに伴って荷物262から蓋部236に荷重が付与されると、蓋部236が位置決め停止状態から解除されて閉位置に向かって回動する。蓋部236に、該蓋部236を閉方向に付勢するリターンスプリング等が設けられているからである。このようにして蓋部236が閉じられるため、荷掛フック260に荷物262を掛止した状態で充電が行われることを回避できる。
【0105】
モバイルバッテリ92をバッテリボックス90から取り出し、単体で充電することも可能である。このためには、先ず、キースイッチ200の把持部202をOPEN位置まで回転させて乗員用シート150をシート用ロック機構152から解放した後、乗員用シート150を回動させる。この回動により、解除スイッチ154が露呈する。該解除スイッチ154を構成するボタン156の、左端に比して上方に位置する右端を下方に押し下げることにより、ステップフロア168のロック用フックがフロア用ロック機構の拘束から解放される。
【0106】
そして、運転者がステップフロア168の後方を把持して前方側に引き上げることにより、ステップフロア168が前端のフロア用ヒンジを回動中心として回動する。ステップフロア168は、図1に仮想線で示すように後端が上方に向かって移動した起立姿勢となって停止する。さらに、制御ケーブル250のコネクタ部をモバイルバッテリ92のコネクタ部から取り外すことにより、モバイルバッテリ92をバッテリボックス90から取り出すことが可能となる。
【0107】
このように、モバイルバッテリ92をバッテリボックス90から取り出すには、乗員用シート150を回動させて解除スイッチ154を露呈させる作業を行う。仮に、非ユーザがモバイルバッテリ92を取り外すことを試みる場合、シート下ボックス142と乗員用シート150の間の側方外側(例えば、解除スイッチ154に近い右側方)から内側に向かって工具等を差し入れ、該工具でボタン156を押さなければならない。しかしながら、フロア用ロック機構を解除するためには、解除スイッチ154のボタン156の右端を下方に押し込む必要がある。右端から左端に向かうに従って標高が小さくなるように傾斜したボタン156の、標高が最大である右端に対し、右方から左方に向かって移動する工具によってこのような押し込みを行うことは困難である。
【0108】
なお、左側方から工具を差し入れて右側方に移動させようとした場合、工具がボタン156に到達する前にロック用フックに堰き止められる。従って、工具を左方から右方に向かって移動させても、解除スイッチ154のボタン156を押し込むことはできない。
【0109】
以上のような理由から、非ユーザがフロア用ロック機構を解除することは困難である。従って、モバイルバッテリ92が盗難されることが有効に抑制される。
【0110】
モバイルバッテリ92が自動二輪車10から取り外された後は、GPSユニット272には、該GPSユニット272に内蔵された補助電源(リチウムイオン電池等)から電力が供給される。このため、モバイルバッテリ92が取り外された状態であってもGPSユニット272が有効に作動する。従って、モバイルバッテリ92が取り外された自動二輪車10を、非ユーザが移動させようとしたときにおいても、上記と同様にユーザのスマートフォンに対する通知がなされる。
【0111】
本発明は、上記した実施の形態に特に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0112】
例えば、乗員用シート150を、タンデムシートを含む二人乗車用のものとして構成するとともに、シート下ボックス142等にタンデムステップやハンドルバーを設けるようにしてもよい。この場合、タンデムシートに座る同乗者もユーザとなり得る。
【0113】
また、モバイルバッテリ92の放電容量が所定の閾値を下回ったときにも、補助電源からGPSユニット272への電力供給を行うようにしてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12