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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】コイン型全固体電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20221208BHJP
   H01M 4/80 20060101ALI20221208BHJP
   H01M 50/109 20210101ALI20221208BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20221208BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20221208BHJP
   H01M 6/18 20060101ALI20221208BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20221208BHJP
   H01M 4/06 20060101ALI20221208BHJP
   H01M 50/528 20210101ALI20221208BHJP
   H01M 50/531 20210101ALI20221208BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20221208BHJP
   H01M 4/08 20060101ALI20221208BHJP
   H01M 4/12 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M4/80 C
H01M50/109
H01M10/0562
H01M10/0565
H01M6/18 Z
H01M4/13
H01M4/06 N
H01M4/06 V
H01M50/528
H01M50/531
H01M4/139
H01M4/08 N
H01M4/12 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021006216
(22)【出願日】2021-01-19
(65)【公開番号】P2022110671
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】有賀 稔之
(72)【発明者】
【氏名】谷内 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】大田 正弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊充
(72)【発明者】
【氏名】田名網 潔
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-213307(JP,A)
【文献】特開2000-208144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-62
H01M4/64-84
H01M10/05-0587、36-39
H01M50/10-198
H01M50/50-598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質層と、
前記固体電解質層の両側に配置され、発泡金属多孔体で構成される、正極及び負極の第1電極集電体と、
前記第1電極集電体の外側にそれぞれ配置され、発泡金属多孔体で構成される、正極及び負極の第2電極集電体と、
正極及び負極の前記第2電極集電体の外側にそれぞれ配置される、集電可能な蓋部材及び受け部材と、を備えるコイン型全固体電池であって、
前記第1電極集電体は、前記固体電解質層と接する一の面に、前記発泡金属多孔体の孔内に電極合材が充填される合材充填領域が形成されており、
前記第1電極集電体の他の面には、前記電極合材が充填されていない合材未充填領域が存在し、
前記第1電極集電体の前記合材未充填領域と、前記第2電極集電体とが加圧接合されている、コイン型全固体電池。
【請求項2】
前記第2電極集電体と前記蓋部材、及び、前記第2電極集電体と前記受け部材とが、超音波又は溶接で接合されている、請求項1に記載のコイン型全固体電池。
【請求項3】
前記加圧接合されている、前記第1電極集電体の前記合材未充填領域と、前記第2電極集電体との接合面には、互いに係合する係合凹部と係合凸部がそれぞれ形成されている、請求項1又は2に記載のコイン型全固体電池。
【請求項4】
一の発泡金属多孔体の一の面に、孔内に電極合材を充填して合材充填領域を形成すると共に、他の面には、前記電極合材が充填されていない合材未充填領域を形成して、正極及び負極の第1電極集電体を得る第1工程と、
固体電解質層の両側に、前記合材充填領域が対向するように、正極及び負極の前記第1電極集電体をそれぞれ接合して電極積層体を得る第2工程と、
他の発泡金属多孔体で構成される第2電極集電体の一の面に、蓋部材及び受け部材を接合して、正極及び負極の集電体を得る第3工程と、
前記第2工程後の前記第1電極集電体の前記合材未充填領域と、前記第3工程後の前記第2電極集電体の他の面とを対向させ、前記蓋部材側及び受け部材側の少なくとも一方側から加圧接合して一体化する第4工程と、を備える、コイン型全固体電池の製造方法。
【請求項5】
前記第1工程における前記合材未充填領域の表面と、前記第3工程における前記第2電極集電体の他の面とに、互いに係合する係合凹部と係合凸部をそれぞれ形成し、
前記第4工程において、前記係合凹部と係合凸部が係合した状態で前記加圧接合を行う、請求項4に記載のコイン型全固体電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイン型全固体電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高エネルギー密度を有する二次電池として、リチウムイオン二次電池が幅広く普及している。電解質が固体である固体電池の場合には、正極と負極との間に固体電解質が存在するセル構造を有する。
【0003】
固体電池の場合、正極活物質又は負極活物質を含有する電極合材と、固体電解質とは、リチウムイオンなどのイオン伝導性を維持する観点から十分な密着性が求められる。充放電時に膨張と収縮を繰り返すことで密着性が緩むとイオン伝導性が低下する。このため、電極合材と固体電解質とはプレスなどによって加圧状態で拘束されている必要がある。
【0004】
コイン型全固体電池の場合、集電極となる上下の金属性の蓋部材と受け部材とで電極積層体を挟み、上下の蓋部材側と受け部材側から加圧することにより積層一体化し、コイン形状の全固体電池を構成する。このため、上記の加圧拘束状態を維持したまま効率よく集電する構造が困難である。
【0005】
この点に関して、例えば下記の特許文献1には、電極積層体の上下に多孔質金属からなる導電層を設け、導電層と電極積層体との密着性を向上したコイン型全固体電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-056827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1においても多孔質金属と電極積層体との接合は不十分であって、より確実で簡易な集電構造が求められている。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、コイン型全固体電池における加圧拘束状態を維持しつつも、確実に集電できる集電構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、電極積層体側及び蓋部材側(受け部材側)の接合面の両方に金属多孔体の集電体を配置し、これを対向して加圧接合して一体化することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のものを提供する。
【0010】
(1) 固体電解質層と、
前記固体電解質層の両側に配置され、金属多孔体で構成される、正極及び負極の第1電極集電体と、
前記第1電極集電体の外側にそれぞれ配置され、金属多孔体で構成される、正極及び負極の第2電極集電体と、
正極及び負極の前記第2電極集電体の外側にそれぞれ配置される、集電可能な蓋部材及び受け部材と、を備えるコイン型全固体電池であって、
前記第1電極集電体は、前記固体電解質層と接する一の面に、前記金属多孔体の孔内に電極合材が充填される合材充填領域が形成されており、
前記第1電極集電体の他の面には、前記電極合材が充填されていない合材未充填領域が存在し、
前記第1電極集電体の前記合材未充填領域と、前記第2電極集電体とが加圧接合されている、コイン型全固体電池。
【0011】
(1)の発明によれば、加圧接合によって、共に金属多孔体で構成される第1電極集電体の合材未充填領域と、第2電極集電体とが絡み合って圧縮接合される。また、第1電極集電体の合材未充填領域の表面凹凸と、第2電極集電体の表面凹凸とのアンカー効果によって接合が安定する。このため、充放電時に膨張と収縮を繰り返した場合においても金属多孔体の弾性による追従効果を発揮でき、集電効果が低下することを抑制できる。
【0012】
(2) 前記第2電極集電体と前記蓋部材、及び、前記第2電極集電体と前記受け部材とが、超音波又は溶接で接合されている、(1)に記載のコイン型全固体電池。
【0013】
(2)の発明によれば、蓋部材及び受け部材の内側に、第2電極集電体を強固に接合できるため、集電効果の低下を更に抑制できる。
【0014】
(3) 前記加圧接合されている、前記第1電極集電体の前記合材未充填領域と、前記第2電極集電体との接合面には、互いに係合する係合凹部と係合凸部がそれぞれ形成されている、(1)又は(2)に記載のコイン型全固体電池。
【0015】
(3)の発明によれば、接合面で凹凸係合させることで、位置決めが容易になり、また、接合面がずれることを防止できる。
【0016】
(4) 一の金属多孔体の一の面に、孔内に電極合材を充填して合材充填領域を形成すると共に、他の面には、前記電極合材が充填されていない合材未充填領域を形成して、正極及び負極の第1電極集電体を得る第1工程と、
固体電解質層の両側に、前記合材充填領域が対向するように、正極及び負極の前記第1電極集電体をそれぞれ接合して電極積層体を得る第2工程と、
他の金属多孔体で構成される第2電極集電体の一の面に、蓋部材及び受け部材を接合して、正極及び負極の集電体を得る第3工程と、
前記第2工程後の前記第1電極集電体の前記合材未充填領域と、前記第3工程後の前記第2電極集電体の他の面とを対向させ、前記蓋部材側及び受け部材側の少なくとも一方側から加圧接合して一体化する第4工程と、を備える、コイン型全固体電池の製造方法。
【0017】
(4)の製法の発明によれば、加圧接合による一体化が可能となり、他に溶接などの接合手段を不要とすることで、コイン型全固体電池の製造を簡易に行うことができ、生産性を向上できる。
【0018】
(5) 前記第1工程における前記合材未充填領域の表面と、前記第3工程における前記第2電極集電体の他の面とに、互いに係合する係合凹部と係合凸部をそれぞれ形成し、
前記第4工程において、前記係合凹部と係合凸部が係合した状態で前記加圧接合を行う、(4)に記載のコイン型全固体電池の製造方法。
【0019】
(5)の発明によれば、接合面で凹凸係合させることで、接合面がずれることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のコイン型全固体電池の一実施形態を示す断面模式図である。
図2図1の加圧接合前の分解図である。
図3図2の変形例の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。本発明の内容は以下の実施形態の記載に限定されない。なお、以下の実施形態においては、固体のリチウムイオン電池を例に説明するが、本発明はリチウムイオン電池以外の電池にも適用できる。
【0022】
[第1実施形態]
<コイン型全固体電池の全体構成>
図1に示すように、本実施形態に係る図1のコイン型全固体電池100は、全体として平面視が円形の面状体をなしている。外装容器と集電極を兼ねる、蓋部材60、受け部材70の間に、電極積層体50が配置されている構成である。蓋部材60と受け部材70とは加圧接合後のカシメ工程により互いに凹形状をなし、互いに嵌合して一体化されており、その隙間には絶縁体80が配置されている。この状態で、蓋部材60、受け部材70はそれぞれ電池の正負極の外部電極を構成する。
【0023】
電極積層体50は、正極をなす第1電極集電体10と、固体電解質層30と、負極をなす第1電極集電体20と、がこの順に積層配置されている。正極の第1電極集電体10は全体が金属多孔体で構成されており、金属多孔体の固体電解質層30との接合面には、正極合材が充填されて正極合材層をなす合材充填領域11が形成されると共に、接合面と反対側の面は、金属多孔体のみで構成される合材未充填領域12を構成している。同様に、負極の第1電極集電体10は全体が金属多孔体で構成されており、負極合材が充填されて負極合材層をなす合材充填領域21と、金属多孔体のみで構成される合材未充填領域22を構成している。
【0024】
すなわち、電極積層体50は、正極の合材未充填領域12/正極の合材充填領域11/固体電解質層30/負極の合材充填領域21/負極の合材未充填領域22の層構成をなしている。
【0025】
蓋部材60の内側には正極の第2電極集電体15が接合され、受け部材70の内側には、負極の第2電極集電体25が接合されている。そして、正極の合材未充填領域12と正極の第2電極集電体15とが接合面40で接合されており、負極の合材未充填領域22と負極の第2電極集電体25とが接合面40で圧縮接合されている。
【0026】
以下、それぞれを構成する部材について説明する。
<正極及び負極>
この実施形態においては、第1電極集電体10、20は、それぞれ、互いに連続した孔部(連通孔部)を有する金属多孔体により集電体を構成し、それぞれの集電体の孔部には、電極活物質を含む電極合材(正極合材、負極合材)がそれぞれ充填配置されている。
【0027】
(集電体)
集電体は、互いに連続した孔部を有する金属多孔体により構成される。空隙率は50%以上99%以下であることが好ましい。互いに連続した孔部を有することで、孔部の内部に電極活物質を含む正極合材、負極合材を充填することができ、電極層の単位面積あたりの電極活物質量を増加させることができる。上記金属多孔体としては、例えば発泡による孔部を有する発泡金属、金属不織布等の形態が挙げられる。
【0028】
金属多孔体に用いられる金属としては、導電性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、チタン、銅、銀等が挙げられる。これらの中では、正極を構成する集電体としては、発泡アルミニウム、発泡ニッケル及び発泡ステンレスが好ましく、負極を構成する集電体としては、発泡銅及び発泡ステンレスを好ましく用いることができる。
【0029】
金属多孔体の集電体を用いることで、電極の単位面積あたりの活物質量を増加させることができ、その結果、リチウムイオン二次電池の体積エネルギー密度を向上させることができる。また、正極合材、負極合材の固定化が容易となるため、従来の金属箔を集電体として用いる電極とは異なり、電極合材層を厚膜化する際に、電極合材層を形成する塗工用スラリーを増粘する必要がない。このため、増粘に必要であった有機高分子化合物等の結着剤を低減することができる。従って、電極の単位面積当たりの容量を増加させることができ、リチウムイオン二次電池の高容量化を実現することができる。
【0030】
(電極合材)
正極合材、負極合材は、それぞれ、集電体の内部に形成される孔部に配置される。正極合材、負極合材は、それぞれ正極活物質、負極活物質を必須として含んでいる。
【0031】
(電極活物質)
正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出することができるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、LiCoO、Li(Ni5/10Co2/10Mn3/10)O2、Li(Ni6/10Co2/10Mn2/10)O2、Li(Ni8/10Co1/10Mn1/10)O2、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O2、Li(Ni1/6Co4/6Mn1/6)O2、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiFePO、硫化リチウム、硫黄等が挙げられる。
【0032】
負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、金属リチウム、リチウム合金、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、Si、SiO、および人工黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料等が挙げられる。
【0033】
(その他の成分)
電極合材は、電極活物質及びイオン伝導性粒子以外のその他の成分を任意に含んでいてもよい。その他の成分としては特に限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池を作製する際に用い得る成分であればよい。例えば、導電助剤、結着剤等が挙げられる。正極の導電助剤としては、アセチレンブラックなどが例示でき、正極のバインダーとしては、ポリフッ化ビニリデンなどが例示できる。負極のバインダーとしては、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸ナトリウムなどが例示できる。
【0034】
<固体電解質層>
固体電解質層30を構成する固体電解質としては、特に限定されないが、例えば、硫化物系固体電解質材料、酸化物系固体電解質材料、窒化物系固体電解質材料、ハロゲン化物系固体電解質材料等を挙げることができる。硫化物系固体電解質材料としては、例えばリチウムイオン電池であれば、LPS系ハロゲン(Cl、Br、I)や、LiS-P、LiS-P-LiI等が挙げられる。なお、上記「LiS-P」の記載は、LiSおよびPを含む原料組成物を用いてなる硫化物系固体電解質材料を意味し、他の記載についても同様である。酸化物系固体電解質材料としては、例えばリチウムイオン電池であれば、NASICON型酸化物、ガーネット型酸化物、ペロブスカイト型酸化物等を挙げることができる。NASICON型酸化物としては、例えば、Li、Al、Ti、PおよびOを含有する酸化物(例えばLi1.5Al0.5Ti1.5(PO)を挙げることができる。ガーネット型酸化物としては、例えば、Li、La、ZrおよびOを含有する酸化物(例えばLiLaZr12)を挙げることができる。ペロブスカイト型酸化物としては、例えば、Li、La、TiおよびOを含有する酸化物(例えばLiLaTiO)を挙げることができる。
【0035】
<コイン型全固体電池の製造方法>
次に、コイン型全固体電池100について、図2の分解図を用いて製法に沿って詳細に説明する。図2は、本発明の製造方法の一例を示す分解図である。
【0036】
(第1工程)
第1工程は、正極及び負極の第1電極集電体10a、20aを得る工程である。具体的には、金属多孔体の一の面に、孔内に電極合材を充填して合材充填領域11、21を形成すると共に、他の面には、電極合材が充填されていない合材未充填領域12a、22aを形成して、正極及び負極の第1電極集電体10a、20aを得る。
【0037】
第1電極集電体10a、20aは、集電体としての互いに連続した孔部を有する金属多孔体の一の面のみの孔部に、電極合材を充填することにより得られる。まず、電極活物質、更に必要に応じてバインダーや助剤を、従来公知の方法にて均一に混合し、所定の粘度に調整された、好ましくはペースト状の電極合材組成物を得る。
【0038】
次いで、上記の電極合材組成物を電極合材として、集電体である金属多孔体の孔部に充填する。集電体に電極合材を充填する方法は、特に限定されず、例えば、プランジャー式ダイコーターを用いて、圧力をかけて、集電体の孔部の内部に電極合材を含むスラリーを充填する方法が挙げられる。上記以外に、ディップ方式により金属多孔体の内部にイオン伝導体層を含侵させてもよい。このとき、金属多孔体の一の面からのみ充填を行うことで、合材充填領域11、21と合材未充填領域12a、22aを備える第1電極集電体を得ることができる。
【0039】
(第2工程)
第2工程は電極積層体50aを積層する工程である。固体電解質層30の両面に、合材充填領域11、21が対向するように、第1電極集電体10a、20aを貼り合わせることで、電極積層体50aが形成される。
【0040】
(第3工程)
次に、第3工程で、金属多孔体で構成される第2電極集電体15aの一の面に、蓋部材60を積層して正極集電体を得る。同様に、金属多孔体で構成される第2電極集電体25aの一の面に、受け部材70を積層して正極集電体を得る。このとき、積層は、超音波又は抵抗溶接等の圧力が加わる接合が好ましい。これにより、金属多孔体が接合時の押圧により圧縮され、高密度な状態で蓋部材60ないし受け部材70と接合するので接合部の強度向上が期待できる。また、この際、第2電極集電体15a、25aには接合時の押圧による凹部15c、25cが各々形成される。
【0041】
(第4工程)
最後に、第2工程後の第1電極集電体の合材未充填領域12aと、第3工程後の第2電極集電体15aとを対向させて正極側を構成し、同様に、第2工程後の第1電極集電体の合材未充填領域22aと、第3工程後の第2電極集電体25aとを対向させて負極側を構成しするように配置し、この状態で、上下の前記蓋部材60及び受け部材70側から加圧接合して一体化する。
【0042】
加圧接合は、従来公知のプレス工程により行うことができる。このとき、蓋部材60及び受け部材70をカシメ工程で一体化する際に、絶縁層80を蓋部材60と受け部材70との間に充填する。
【0043】
加圧処理によって、第1電極集電体の合材未充填領域12a(22a)と第2電極集電体15a(25a)の凹部15c、25c以外の部分は互いの金属多孔体が絡み合った状態で圧縮されて厚さが薄くなり、図1のように、接合面40を挟んで、第1電極集電体の合材未充填領域12(22)と第2電極集電体15(25)が圧縮接合された状態となる。このように、金属多孔体同士を加圧接合させた集電体とすることで、リチウムイオン電池のように充放電時に膨張と収縮を繰り返した場合においても金属多孔体の弾性による追従効果を発揮でき、集電効果が低下することを抑制でき、集電体としての寿命も延長できる。
【0044】
[変形例]
図3は、図2の変形例を示す図である。この実施形態においては、加圧接合時に接合面40をなす、合材未充填領域12aの表面に凸部12bが形成されており、第2電極集電体15aの表面に凹部15bが形成されている点が図2と異なっている。凹部15bと凸部12bとは対向して互いに係合する位置関係にある。負極側の合材未充填領域22aの表面に形成される凸部22bと、第2電極集電体25aの表面に形成される凹部25bも同様である。
【0045】
この状態で、第4工程において、凹部15b(25b)と凸部12b(22b)とが係合するように加圧接合を行うことで、接合面の位置合わせが容易となり、また、接合面がずれることを防止できる。なお、互いに係合する凹凸部の形状や位置、個数は特に限定されない。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明の内容は上記実施形態に限定されず、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 第1電極集電体(正極)
10a 加圧接合前の第1電極集電体(正極)
11 合材充填領域(正極合材層)
12 合材未充填領域(正極)
12a 加圧接合前の合材未充填領域(正極)
12b 凸部
15 第2電極集電体(正極)
15a 加圧接合前の第2電極集電体(正極)
15b 凹部
15c 凹部
20 第1電極集電体(負極)
20a 加圧接合前の第1電極集電体(負極)
21 合材充填領域(負極合材層)
22 合材未充填領域(負極)
22a 加圧接合前の合材未充填領域(負極)
22b 凸部
25 第2電極集電体(負極)
25a 加圧接合前の第2電極集電体(負極)
25b 凹部
25c 凹部
30 固体電解質層
40 接合面
50 電極積層体
50a 加圧接合前の電極積層体
60 蓋部材
70 受け部材
80 絶縁体
100 コイン型全固体電池
図1
図2
図3