(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】センサ及びセンサシステム
(51)【国際特許分類】
H04L 61/5038 20220101AFI20221208BHJP
H04L 12/28 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H04L61/5038
H04L12/28 100A
(21)【出願番号】P 2021058284
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】服部 智成
(72)【発明者】
【氏名】西尾 仁
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昭博
(72)【発明者】
【氏名】河浦 貴志
(72)【発明者】
【氏名】竹越 聖也
【審査官】宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-117245(JP,A)
【文献】特開2015-122732(JP,A)
【文献】特開2014-226947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/00-13/18,41/00-69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に構築された2つの通信バスのいずれかを介して制御装置に接続され、固有の識別子で識別されるセンサであって、
2つの前記通信バスのうち一方の通信バスと他方の通信バスのいずれかに接続されて前記制御装置と通信する通信用端子と、
いずれの電位にも接続されない開放状態と、接地電位に接続される接地状態のいずれかの接続状態とされる複数の識別用端子と、
複数の前記識別用端子の前記接続状態と、前記通信用端子が接続される前記通信バスの相違に応じて、当該センサの前記識別子を設定する識別子設定部と、
を備え、
前記識別子設定部は、前記通信用端子に接続された前記通信バスが前記一方の通信バスであるか前記他方の通信バスであるかにより、異なるパターンで前記識別子を設定する、センサ。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサであって、
前記識別用端子は、第1端子と第2端子とからなり、
前記通信用端子は、
前記第1端子と前記第2端子のいずれかが、前記接地状態とされている場合には、前記一方の通信バスに接続され、
前記第1端子と前記第2端子のいずれもが、前記開放状態とされている場合には、前記他方の通信バスに接続される、センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセンサであって、
前記制御装置は、第1制御対象を制御する第1制御装置と、第2制御対象を制御する第2制御装置と、からなり、
当該センサが、前記第1制御装置と通信する第1センサ群に含まれる場合と、前記第2制御装置と通信する第2センサ群に含まれる場合とで、
前記通信用端子が接続される前記通信バスと、前記識別用端子の前記接続状態との対応関係を入れ替えてなる、センサ。
【請求項4】
請求項2に記載のセンサを複数備えるセンサシステムであって、
複数の前記センサは、
燃料電池スタックから漏出するガスを検出する第1のガスセンサと、
前記燃料電池スタックから漏出する前記ガスを検出する第2のガスセンサと、
からなり、
前記第1のガスセンサの前記第1端子と前記第2端子は、いずれかが前記接地状態に設定され、
前記第2のガスセンサの前記第1端子と前記第2端子は、いずれも前記開放状態に設定される、センサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、センサ及びセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、センサに識別子設定用の外部端子を複数設け、該外部端子の電圧レベルの組み合わせにより、センサの識別子を設定(割り当て)するセンサの識別子設定方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された車載センサの識別子設定方法では、車載センサの外部端子が接地電位(GND)に接続された接地状態をローレベルと認識する。外部端子がセンサ外部のいずれの電位とも接続されない開放状態、すなわち外部端子の電位がセンサ内部の制御用電源電圧と等しい状態をハイレベルと認識する。そして、外部端子の1つが断線等により故障した場合に(1bit故障が発生した場合に)故障した車載センサと他の正常な車載センサの識別子が重複しないよう、電圧レベルの1つが反転した組み合わせに対して識別子を割り当てないようにしている(特許文献1の段落[0042]、[0047])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような特許文献1の識別子設定方法によれば、故障した車載センサの識別子と他の正常な車載センサの識別子とが通信バス上で混同されることを防ぐことができる。また、故障した車載センサに対して故障前に割り当てられていた識別子は通信バス上で未使用となるため、故障した車載センサを特定できる可能性が高まるとしている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の識別子設定方法では、識別子を設定可能なセンサの数が少ないという問題がある。例えば、外部端子が2個のセンサの場合、識別子を設定可能なセンサの数は、外部端子の数(2個)の2乗の半分まで、すなわち2個までとなる。3個目及び4個目のセンサに対して識別子を設定すると、センサが故障した場合に識別子の混同を防ぐことができず、故障したセンサを特定することができない。識別子を設定可能なセンサの数を増やすためには、外部端子の数を増やす必要があるが、コネクタの設置スペースが増大し、コストの増加を招く。
【0007】
この発明は、このような課題を考慮してなされたものであって、識別子を設定するセンサの数を増やしても、識別子が混同されることを防止することが可能なセンサ及びセンサシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、移動体に構築された2つの通信バスのいずれかを介して制御装置に接続され、固有の識別子で識別されるセンサであって、2つの通信バスのうち一方の通信バスと他方の通信バスのいずれかに接続されて制御装置と通信する通信用端子と、いずれの電位にも接続されない開放状態と、接地電位に接続される接地状態のいずれかの接続状態とされる複数の識別用端子と、複数の識別用端子の接続状態と、通信用端子が接続される通信バスの相違に応じて、当該センサの識別子を設定する識別子設定部と、を備え、識別子設定部は、通信用端子に接続された通信バスが一方の通信バスであるか他方の通信バスであるかにより、異なるパターンで識別子を設定する。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、識別子設定部は、通信用端子に接続された通信バスが一方の通信バスであるか他方の通信バスであるかにより、異なるパターンで識別子を設定する。仮に、断線等により故障したセンサにおける識別用端子の接続状態と、他の正常なセンサにおける識別用端子の接続状態とが同一の組み合わせになった場合であっても、故障したセンサと他の正常なセンサの通信用端子が互いに異なる通信バスに接続されていれば、両者の識別子は異なるパターンで設定される。異なるパターンで設定された識別子は、互いに異なるものとして認識されるので、識別子を設定するセンサの数を増やしても、識別子が混同されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1Aは、この実施形態に係る4つのセンサを含むセンサシステムが搭載された燃料電池車両の概略構成側面図である。
図1Bは、燃料電池車両の概略構成上面図である。
【
図3】幹線と枝線アセンブリからなる車両ハーネスと、車両ECU及び水素センサの模式的実体配線図である。
【
図4】識別用端子と通信バスと水素センサに設定される識別子との対応関係を示す説明図である。
【
図5】車両ハーネスに対する水素センサの取付工程を示す概略的な工程図である。
【
図6】第1の変形例におけるセンサシステムの回路ブロック図である。
【
図7】第1の変形例における幹線と枝線アセンブリからなる車両ハーネスと、車両ECU及び水素センサの模式的実体配線図である。
【
図8】第1の変形例における、識別用端子と通信バスと水素センサに設定される識別子との対応関係を示す説明図である。
【
図9】第2の変形例におけるセンサシステムの回路ブロック図である。
【
図10】第2の変形例における、識別用端子と通信バスと水素センサに設定される識別子との対応関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明に係るセンサ及びセンサシステムについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1Aは、この実施形態に係る4つのセンサ51~54を含むセンサシステム10が搭載された燃料電池車両12の概略構成側面図である。
図1Bは、燃料電池車両12の概略構成上面図である。
図2は、センサシステム10の回路ブロック図である。
【0013】
図1A及び
図1Bにおいて、燃料電池車両12は、基台フレーム14を有し、この基台フレーム14上に、直接的にあるいは構造体を介して、前輪WF、後輪WR、前記前輪WFを駆動する駆動モータ16、燃料電池スタック18、第1水素タンク20a、第2水素タンク20b、配管21、バッテリ19(高圧バッテリ)等が支持されている。なお、
図1A、
図1Bに示す矢印の方向にしたがって、前後、左右、上下の方向を説明する。
【0014】
燃料電池車両12は、例えばパーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜をカソード電極とアノード電極とで挟持した電解質膜・電極構造体(MEA)を備える燃料電池スタック18と、この燃料電池スタック18に一方の反応ガスである水素を供給する第1水素タンク20a及び第2水素タンク20bと、他方の反応ガスである酸素含有ガス(空気)を供給するエアポンプ(不図示)と、からなる燃料電池システムと、前記燃料電池スタック18の電気化学反応により生成された電気を蓄積するバッテリ19と、このバッテリ19のエネルギ及び/又は燃料電池スタック18のエネルギにより駆動される走行駆動源としての駆動モータ16と、から構成される。
【0015】
燃料電池車両12は、フロントフード22、フロントウインド24、ルーフ26、リヤゲート28、床板30、荷室板32、ダッシュパネル34、前席42、及び後席44等を備えている。ダッシュパネル34の上部のダッシュボード上には、マルチインフォメーションディスプレイ等の表示装置35が取り付けられている。
【0016】
さらに、燃料電池車両12のセンサシステム10を管理制御すると共に、燃料電池車両12全体を管理制御する車両ECU36(車両制御ECU)が、燃料電池スタック18及び駆動モータ16と共に、フロントフード22下のモータ室38内に配置されている。なお、燃料電池スタック18は、水素隔離カバー48内に収納されて、気密に保たれている。
【0017】
一方、後席44下の荷室板32と基台フレーム14との間にバッテリ19が配置され、荷室46下の荷室板32と基台フレーム14との間に第1水素タンク20aと第2水素タンク20bが前後方向に配置されている。第1水素タンク20a及び第2水素タンク20bと燃料電池スタック18とは床板30下を通る配管(水素流路)21(
図1A参照)により相互に連通されている。
【0018】
さらに、ガスセンサである水素センサ51~54が、燃料電池車両12内の4箇所に取り付けられている。フロントフード22下の水素隔離カバー48の上部の位置P1、P2には、燃料電池スタック18をガス漏れ検知対象部とする水素センサ51、52が取り付けられている。第1水素タンク20aと第2水素タンク20bの遮断弁近傍の上部であって、荷室板32下の位置P3、P4には、第1水素タンク20aと第2水素タンク20bをそれぞれガス漏れ検知対象部とする水素センサ53、54が取り付けられている。
【0019】
水素は、空気より軽い気体であるので、ガス漏れ検知対象部としての燃料電池スタック18、第1水素タンク20a及び第2水素タンク20bが、万一ガス漏洩した場合には、その上方の凹部に停留する。このため、概ね下方に向かって凹部(水素溜まり)となる位置P1、P2、P3、P4に水素センサ51、52、53、54が取り付けられている。
【0020】
車両ECU36及び水素センサ51~54は、それぞれ、マイクロコンピュータを含む計算機を有している。マイクロコンピュータは、CPU(中央処理装置)、メモリであるROM(EEPROMも含む。)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、その他、A/D変換器、D/A変換器等の入出力装置、計時部としてのタイマ等を有しており、CPUがROMに記録されているプログラムを読み出し実行することで各種機能実現部(機能実現手段)、例えば制御部、演算部、及び処理部等として機能する。
【0021】
図2に示すように、この実施形態において、車両ECU36は機能部としてのID照合部36v等を有し、水素センサ51~54は機能部としてのID設定部(識別子設定部)51s、52s、53s、54s等を有している。
【0022】
車両ECU36及び水素センサ51~54は、それぞれ、書き換え可能な記憶部36m、51m、52m、53m、54mを備えている。記憶部36m、51m~54mは、不揮発性メモリであることが好ましいが、揮発性メモリであってもよい。
【0023】
これら車両ECU36及び水素センサ51~54は、車両ハーネス60に相互に接続されている。
【0024】
図2に示すように、車両ハーネス60は、第1通信バスCAN1と第2通信バスCAN2を含む2系統のCANバス(通信バス)からなる幹線62と、この幹線62上の位置Q1、R2、Q3、Q4から延びる4本の枝線アセンブリ(枝線組立体)71、72、73、74と、から構成されている。幹線62上の位置Q1、R2、Q3、Q4は、幹線62が燃料電池車両12に配線されたときに、燃料電池車両12上の前記位置P1、P2、P3、P4に概ね一致するように配される。
【0025】
図2に示すように、第1通信バスCAN1上の位置Q1、Q3、Q4には、枝線アセンブリ71、73、74を介して水素センサ51、53、54が接続され、第2通信バスCAN2上の位置R2には、枝線アセンブリ72を介して水素センサ52が接続される。
【0026】
なお、幹線62は、CANバスに限らず、LINバス、その他FlexRayバス等の他の通信バスに代替することができる。
【0027】
図3は、幹線62と枝線アセンブリ71~74からなる車両ハーネス60と、車両ECU36、低圧バッテリ37及び水素センサ51~54の模式的実体配線図を示している。
【0028】
幹線62は、モータ室38内の車両ECU36から延びる第1通信バスCAN1のCAN1-L線及びCAN1-H線と、車両ECU36から延びる第2通信バスCAN2のCAN2-L線及びCAN2-H線と、低圧バッテリ37(
図1A、
図1Bには不図示)から延びる電源線及びGND線と、から構成される。幹線62上の位置Q1、R2、Q3、Q4には、それぞれリード付きコネクタ81~84を備える枝線アセンブリ71~74が取り付けられている。
【0029】
幹線62は、燃料電池車両12内に配線される際、低圧バッテリ37及び車両ECU36を始端(始点)として、その車両ECU36の位置から、まず水素センサ51の取り付け位置P1まで配されて、第1通信バスCAN1上の位置Q1に枝線アセンブリ71が配される。次いで、水素センサ52が取り付けられる位置P2まで配され、位置R2を第2通信バスCAN2の終端(終点)として枝線アセンブリ72が配される。さらに、床板30下を這って、水素センサ53の取り付け位置P3まで配されて、第1通信バスCAN1の位置Q3で枝線アセンブリ73が配される。そして、水素センサ54の取り付け位置P4まで配され、位置Q4を第1通信バスCAN1の終端(終点)として枝線アセンブリ74が配される。
【0030】
このような配置構成(配線構成)では、幹線62(伝送線路)の始端(始点)に配される車両ECU36の入出力端と、幹線62(伝送線路)の終端(終点)に配される水素センサ52、54の入出力端に、伝送信号(CANデータ信号)の反射を抑制するための終端抵抗(不図示)が取り付けられる。
【0031】
位置Q1、R2、Q3、Q4で幹線62にそれぞれ取り付けられている枝線アセンブリ71~74の水素センサ51~54側の端部には、メス型の6極のコネクタ81~84が取り付けられている。水素センサ51~54は、幹線62上の位置Q1、R2、Q3、Q4に臨む位置P1~P4に配置されており、コネクタ81~84は、水素センサ51~54に設けられたオス型の6極のコネクタ51c~54cに着脱自由に構成されている。
【0032】
枝線アセンブリ71~74の6極のコネクタ81~84は、それぞれ、GND-G、電源-P、CAN-H、CAN-L、識別A、識別Bの各メスピン(端子)を有している。一方、水素センサ51~54の6極のコネクタ51c~54cは、これらに対応して、同様に、それぞれGND-G、電源-P、CAN-H、CAN-L、識別A、識別Bの各オスピン(端子)を有している。幹線62側のコネクタ81~84及び水素センサ51~54側のコネクタ51c~54cは、逆方向(てれこ)に嵌合ができないように構成されている。
【0033】
なお、
図3から理解されるように、この実施形態に係る枝線アセンブリ
71~74側のコネクタ81~84の極数は、バス線が配線されるピン(
図3例では、P、G、H、Lの4ピン)の他に、少なくとも1つの識別ピンを有する極数を備えることが、前記コネクタ81~84に接続される同一仕様のガスセンサ等の水素センサ51~54を識別するための最小構成であるということが分かる。
【0034】
ここで、コネクタ81~84に固有の識別構成1~4と、水素センサ51~54に設定される識別子について説明する。
【0035】
コネクタ81は、
図3に示すように、識別AピンとGND-Gピンがピン間短絡線であるジャンパ線等で短絡され、識別Bピンにはピン間短絡線が設けられていない識別構成1とされる。
【0036】
識別構成1とされたコネクタ81が、水素センサ51のコネクタ51cに嵌合されると、コネクタ51cの識別Aピン(識別用端子A)はピン間短絡線を介して接地電位に接続される接地状態(GND)とされ、識別Bピン(識別用端子B)はいずれの電位にも接続されない開放状態(OPEN)とされる。
【0037】
コネクタ82は、識別Aピンと識別Bピンのいずれにもピン間短絡線が設けられていない識別構成2とされる。
【0038】
識別構成2とされたコネクタ82が、水素センサ52のコネクタ52cに嵌合されると、コネクタ52cの識別Aピンと識別Bピンは、いずれの電位にも接続されない開放状態(OPEN)とされる。
【0039】
コネクタ83は、識別Aピンにピン間短絡線が設けられておらず、識別BピンとGND-Gピンがピン間短絡線で短絡された識別構成3とされる。
【0040】
識別構成3とされたコネクタ83が、水素センサ53のコネクタ53cに嵌合されると、コネクタ53cの識別Aピンはいずれの電位にも接続されない開放状態(OPEN)とされ、識別Bピンはピン間短絡線を介して接地電位に接続される接地状態(GND)とされる。
【0041】
コネクタ84は、識別Aピンと識別BピンとGND-Gピンとがピン間短絡線で短絡された識別構成4とされる。
【0042】
識別構成4とされたコネクタ84が、水素センサ54のコネクタ54cに嵌合されると、コネクタ54cの識別Aピンと識別Bピンは、ピン間短絡線を介して接地電位に接続される接地状態(GND)とされる。
【0043】
コネクタ81、83、84のCAN-HピンとCAN-Lピンは、それぞれ第1通信バスCAN1のCAN1-H線とCAN1-L線に接続されている。このため、水素センサ51、53、54のCAN-HピンとCAN-Lピンは、それぞれ第1通信バスCAN1のCAN1-H線とCAN1-L線に接続される。
【0044】
コネクタ82のCAN-HピンとCAN-Lピンは、それぞれ第2通信バスCAN2のCAN2-H線とCAN2-L線に接続されている。このため、水素センサ52のコネクタ52cにおけるCAN-HピンとCAN-Lピンは、それぞれ第2通信バスCAN2のCAN2-H線とCAN2-L線に接続される。
【0045】
つまり、各枝線アセンブリ71~74は、コネクタ81~84におけるジャンパ線の挿入位置が異なるために、異なる識別構成1~4とされると共に、接続される通信バスが異なっている。これにより各枝線アセンブリ71~74は、水素センサ51~54を電気的に一意に識別(区別)することができ、水素センサ51~54を異なる通信バスに接続することが可能になっている。
【0046】
水素センサ51~54のID設定部51s、52s、53s、54sは、燃料電池車両12のパワースイッチ(不図示)がオン状態とされ、水素センサ51~54に低圧バッテリ37からの電源が供給されたときに、前記識別構成1~4に基づいて、コネクタ51c~54cの識別Aピンと識別Bピンの接続状態が接地状態(GND)であるか開放状態(OPEN)であるかを判定する。さらに、コネクタ51c~54cのCAN-HピンとCAN-Lピン(以下、コネクタ51c~54cのCAN-HピンとCAN-Lピンをまとめて通信用端子ということがある)から、水素センサ51~54が接続されている通信バスが第1通信バスCAN1であるのか、第2通信バスCAN2であるのかを判定する。
【0047】
水素センサ51、53、54が接続されている通信バスが第1通信バスCAN1であると判定されると、ID設定部51s、53s、54sは、コネクタ51c、53c、54cの識別Aピンと識別Bピンの接続状態に応じて、標準フォーマットによる識別子を記憶部51m、53m、54mに書き込む。
【0048】
標準フォーマットとは、CANバスにおけるデータフレームの形式(パターン)の一つであり、標準フォーマットによる識別子(標準ID)は11ビットのデータで表現される。
【0049】
一方、水素センサ52に接続されている通信バスが第2通信バスCAN2であると判定されると、ID設定部52sは、コネクタ52cの識別Aピンと識別Bピンの接続状態に応じて、拡張フォーマットによる識別子を記憶部52mに書き込む。
【0050】
拡張フォーマットとは、CANバスにおけるデータフレームの形式(パターン)の一つであり、拡張フォーマットによる識別子(拡張ID)は29ビットのデータで表現される点で、標準フォーマットとは相違する。この実施形態において、車両ECU36は、標準フォーマットによるデータフレームと拡張フォーマットによるデータフレームのいずれも認識可能(送受信可能)であり、標準フォーマットによる識別子と拡張フォーマットによる識別子を互いに異なるものとして認識する。
【0051】
図4は、水素センサ51~54に設定される識別子の一例を示している。
【0052】
燃料電池スタック18上部の位置P1に取り付けられた水素センサ51は、識別Aピン(端子A、識別用端子A)が接地状態(GND)、識別Bピン(端子B、識別用端子B)が開放状態(OPEN)であり、通信用端子は第1通信バスCAN1に接続されている。このため、水素センサ51の記憶部51mには、標準フォーマット(標準ID)による識別子CAN-ID_Aが書き込まれる。
【0053】
燃料電池スタック18上部の位置P2に取り付けられた水素センサ52は、識別Aピンと識別Bピンのいずれも開放状態(OPEN)であり、通信用端子は第2通信バスCAN2に接続されている。このため、水素センサ52の記憶部52mには、拡張フォーマット(拡張ID)による識別子CAN-EID_Aが書き込まれる。
【0054】
第1水素タンク20a上部の位置P3に取り付けられた水素センサ53は、識別Aピンが開放状態(OPEN)、識別Bピンが接地状態(GND)であり、通信用端子は第1通信バスCAN1に接続されている。このため、水素センサ53の記憶部53mには、標準フォーマットによる識別子CAN-ID_Bが書き込まれる。
【0055】
第2水素タンク20b上部の位置P4に取り付けられた水素センサ54は、識別Aピンと識別Bピンのいずれも接地状態(GND)であり、通信用端子は第1通信バスCAN1に接続されている。このため、水素センサ54の記憶部54mには、標準フォーマットによる識別子CAN-ID_Cが書き込まれる。
【0056】
なお、4個の水素センサ51~54は、記憶部51m~54mに識別子が書き込まれるまでは、特に違いがない。すなわち、4個の水素センサ51~54は、単一仕様(同一仕様)の水素センサであり、大量生産に適し、製造コスト及び部品管理コストを低減することができる。
【0057】
次に、この実施形態に係るセンサシステム10における識別子の設定手順について、水素センサ51~54の燃料電池車両12への取付工程を例として説明する。
【0058】
図5は、水素センサ51~54の車両ハーネス取付工程の概略的な工程図を示している。
【0059】
実際上、ステップS1の車両ハーネス取付工程の前に、燃料電池車両12に対して、
図1A及び
図1Bに示した構成要素のうち、
図3に示した車両ハーネス60(枝線アセンブリ71~74が取り付けられた幹線62)及び水素センサ51~54以外の必要な部品、例えば、車両ECU36等が燃料電池車両12に既に組み付けられているものとする。
【0060】
ステップS1の車両ハーネス取付工程では、燃料電池車両12の電源がオフ状態下で、車両ハーネス60の始端部が車両ECU36に取り付けられる。車両ハーネス60の残りの部分は、上述したように、燃料電池車両12上の所定の箇所に沿って配される。この実施形態では、まず車両ハーネス60の幹線62上の位置Q1の枝線アセンブリ71が位置P1に臨むように配され、次いで、幹線62上の位置R2の枝線アセンブリ72が位置P2に臨むように配される。さらに、モータ室38から後ろ下方側に向かって這わされ、床板30下を這って、幹線62上の位置Q3、Q4の枝線アセンブリ73、74が位置P3、P4に臨むように這わされて配されて、車両ハーネス60の幹線62の配線が完了される。
【0061】
次に、ステップS2のセンサ取付工程では、燃料電池車両12内の位置P1~P4に、同一仕様(単一仕様、同じ型式)の水素センサ51~54が取り付けられる。この場合、水素センサ51~54は、同一仕様であり、どの位置P1~P4に取り付けられてもよいので、いわゆる誤組が発生しない。なお、水素センサ51~54は車両ハーネス60よりも先に取り付けてられていてもよい。
【0062】
次いで、ステップS3のコネクタ接続工程では、位置P1~P4に固定されている水素センサ51~54のコネクタ51c~54cに対して、その近傍に既に配置されている枝線アセンブリ71~74のコネクタ81~84を嵌合させることで、水素センサ51~54のコネクタ51c~54cの各オスピンとコネクタ81~84の各メスピンとが機械的・電気的に接続される。
【0063】
さらに、ステップS4の電源ON工程では、燃料電池車両12の電源がオン状態にされる。これにより、車両ECU36に、低圧バッテリ37から電源が供給されると共に、低圧バッテリ37から幹線62の電源線及びGND線を通じて水素センサ51~54に電源が供給される。
【0064】
電源の供給をトリガとして、水素センサ51~54の各CPUは、ステップS5のID設定工程を含む初期設定を開始する。
【0065】
ステップS5にて、水素センサ51~54の各ID設定部51s~54sは、枝線アセンブリ71~74のコネクタ81~84にジャンパ線等により付与されている識別構成1~4(どのピンとどのピンが短絡されているか)に基づいて、コネクタ51c~54cの識別Aピンと識別Bピンの接続状態が接地状態(GND)であるか開放状態(OPEN)であるかを判定する。さらに、コネクタ51c~54cのCAN-HピンとCAN-Lピン(通信用端子)から、水素センサ51~54が接続されている通信バスが第1通信バスCAN1であるのか、第2通信バスCAN2であるのかを判定する。
【0066】
ID設定部51s~54sは、通信用端子に接続された通信バスが第1通信バスCAN1であるか第2通信バスCAN2であるかにより、異なるパターンで識別子(ID)を設定する。
【0067】
通信用端子に接続された通信バスが第1通信バスCAN1である場合には、ID設定部51s~54sは、識別Aピンと識別Bピンの接続状態が接地状態(GND)であるか開放状態(OPEN)であるかに応じて、標準フォーマットによる識別子を記憶部51m~54mに書き込む。
【0068】
通信用端子に接続された通信バスが第2通信バスCAN2である場合には、ID設定部51s~54sは、識別Aピンと識別Bピンの接続状態が接地状態(GND)であるか開放状態(OPEN)であるかに応じて、拡張フォーマットによる識別子を記憶部51m~54mに書き込む。
【0069】
すなわち、この実施形態では、各ID設定部51s~54sは、識別構成1~4に基づく識別Aピンと識別Bピンの接続状態(接地状態(GND)であるか開放状態(OPEN)であるか)と、通信用端子に接続された通信バスの相違(第1通信バスCAN1であるか第2通信バスCAN2であるか)に応じて、異なるパターン(標準フォーマット又は拡張フォーマットのいずれか)で識別子(ID)を設定する。
【0070】
次いで、ステップS6の車両ECU36へのID送信工程では、水素センサ51~54の各ID設定部51s~54sは、各記憶部51m~54mに書き込んだ各水素センサ51~54に固有の識別子(ID)を読み出し、幹線62を通じて車両ECU36に送信する。
【0071】
次に、ステップS7において、車両ECU36のID照合部36vは、受信した各水素センサ51~54に固有の識別子の中に、同一の識別子が複数存在するかどうかを判定する。
【0072】
ステップS7において同一の識別子が複数存在すると判定された場合(ステップS7:YES)、ステップS8に進み、車両ECU36は、各水素センサ51~54のいずれかが正常に動作しておらず、何らかの異常が生じているものと判定する。
【0073】
水素センサ51~54の異常としては、例えば識別Aピン又は識別Bピンに断線による故障が発生し、故障した水素センサの識別子が他の正常な水素センサの識別子と同一の識別子に変更されてしまい、両者の識別子に混同が生じる等の状況が考えられる。
【0074】
そこで、水素センサ51~54のいずれかが異常と判定された場合には、ステップS9において、車両ECU36は、配管21上の図示しない主止弁を閉じて燃料電池スタック18への水素供給を遮断する。
【0075】
一方、ステップS7において同一の識別子が複数存在しないと判定された場合には(ステップS7:NO)、ステップS10に進み、車両ECU36は、各水素センサ51~54が正常に動作していると判定する。
【0076】
次いで、ステップS11の車両ECU36におけるID照合工程において、車両ECU36のID照合部36vは、車両ECU36が受信した各水素センサ51~54に設定された固有の識別子と、車両ECU36の記憶部36mに幹線62の位置Q1、R2、Q3、Q4の情報に対応して予め記憶している識別子とを照合する。
【0077】
この照合結果により、車両ECU36は、位置P1~P4に取り付けられている水素センサ51~54に固有の識別子を識別(区別)することができる。
【0078】
[実施形態から把握し得る発明]
上述の実施形態から把握し得る発明について、以下に記載する。なお、理解の便宜のために各構成要素には上述の実施形態で用いた符号を付しているが、該構成要素は、その符号を付けたものに限定されない。
【0079】
この実施形態に係る水素センサ(センサ)51~54は、燃料電池車両(移動体)12に構築された第1通信バスCAN1(一方の通信バス)及び第2通信バスCAN2(他方の通信バス)のいずれかを介して車両ECU(制御装置)36に接続され、固有の識別子で識別される水素センサ51~54であって、2つの通信バスのうち第1通信バスCAN1と第2通信バスCAN2のいずれかに接続されて車両ECU36と通信するCAN-Hピン及びCAN-Lピン(通信用端子)と、いずれの電位にも接続されない開放状態(OPEN)と、接地電位に接続される接地状態(GND)のいずれかの接続状態とされる識別Aピン及び識別Bピン(識別用端子)と、識別Aピン及び識別Bピンの接続状態と、CAN-Hピン及びCAN-Lピンが接続される通信バスの相違に応じて、当該水素センサ51~54の識別子を設定するID設定部(識別子設定部)51s~54sと、を備える。
【0080】
ID設定部51s~54sは、CAN-Hピン及びCAN-Lピンに接続された通信バスが第1通信バスCAN1であるか第2通信バスCAN2であるかにより、標準フォーマット(標準ID)又は拡張フォーマット(拡張ID)のいずれか異なるパターンで識別子を設定する。
【0081】
仮に、燃料電池スタック18上部の位置P1に取り付けられた水素センサ51に識別Aピンの断線等の故障が発生した場合、識別Aピンの接続状態は接地状態(GND)から開放状態(OPEN)に変化する(識別Bピンは開放状態(OPEN)のままとする)。
【0082】
このとき、水素センサ51の識別子は、識別Aピンの接続状態の変化に応じて、故障前の識別子CAN-ID_Aから新たな識別子CAN-ID_Dに変更される。この新たな識別子CAN-ID_Dは、識別Aピンと識別Bピンのいずれもが開放状態(OPEN)である場合の、標準フォーマットによる識別子の一例である。
【0083】
水素センサ51を含むセンサシステム10には、故障後の水素センサ51と同じように、識別Aピンと識別Bピンの接続状態のいずれもが開放状態(OPEN)である他の正常な水素センサ52が存在する。しかしながら、この実施形態では、水素センサ52は第2通信バスCAN2に接続されており、水素センサ52には、標準フォーマットではなく拡張フォーマットによる識別子CAN-EID_Aが設定されている。
【0084】
車両ECU36は、フォーマットの異なる識別子を互いに異なるものとして認識するので、故障後の水素センサ51の標準フォーマットによる識別子CAN-ID_Dと、他の正常な水素センサ52の拡張フォーマットによる識別子CAN-EID_Aを混同することがない。また、故障前の水素センサ51の識別子CAN-ID_Aは幹線62上からいなくなるので、車両ECU36は故障箇所(故障した水素センサ51)を特定することができる。
【0085】
このように、この実施形態に係る水素センサ51~54では、識別子を設定する水素センサの数を増やしても、識別子が混同されることを防止することができる。
【0086】
なお、故障後の水素センサ51の識別Aピンと識別Bピンの組み合わせ、すなわち識別Aピンと識別Bピンのいずれもが開放状態(OPEN)となる組み合わせに対して、標準フォーマットによる識別子を設定しないようにしてもよい。これにより、故障後の水素センサ51に対して識別子が何ら設定されない(割り当てられない)ので、車両ECU36は、故障後の水素センサ51と他の水素センサ52~54とを混同することがない。また、故障前の水素センサ51の識別子CAN-ID_Aは幹線62上からいなくなるので、車両ECU36は故障箇所(故障した水素センサ51)を特定することができる。
【0087】
ところで、水素センサ51において接地状態(GND)の識別Aピンは、断線等の故障により開放状態(OPEN)に変化する可能性がある一方、逆方向の変化、すなわち開放状態(OPEN)の識別Bピンが、短絡等の故障により接地状態(GND)に変化する可能性は低い。
【0088】
そこで、この実施形態では、水素センサ51と、水素センサ51の識別Aピンが故障したときに識別Aピン及び識別Bピンの前記接続状態が水素センサ51と重複する可能性の高い水素センサ52とを、互いに異なる通信バスに接続し、異なるパターンで識別子を設定することにしている。これにより、水素センサ51が故障した場合であっても、故障後の水素センサ51と正常な水素センサ52とが通信バス上で混同されることを確実に防止することができる。
【0089】
また、この実施形態に係るセンサシステム10では、燃料電池スタック18から漏出する水素ガスを検出する水素センサ(第1のガスセンサ)51について、識別Aピン(第1端子)を接地状態(GND)とし、識別Bピン(第2端子)を開放状態(OPEN)に設定している。燃料電池スタック18から漏出する水素ガスを検出する水素センサ(第2のガスセンサ)52については、識別Aピン(第1端子)と識別Bピン(第2端子)をいずれも開放状態(OPEN)に設定している。
【0090】
識別Aピンと識別Bピンがともに開放状態(OPEN)である水素センサ52は、前述の通り断線による影響を受けにくい。このため、燃料電池スタック18のガス漏れ検知を2つの水素センサ51と水素センサ52により冗長化して、センサシステム10の検出信頼性を大幅に向上させることが可能となる。
【0091】
[第1の変形例]
図6~
図8を参照して、第1の変形例について説明する。
【0092】
上述の実施形態では、水素センサ54が第1通信バスCAN1の位置Q4に接続されているが、
図6~
図8に示す変形例では、水素センサ55が第2通信バスCAN2の位置R4に接続されている点が異なる。
【0093】
なお、上述の実施形態と共通する要素については、
図6~
図8中に
、下2桁が同じ参照符号を付して説明を省略する。
【0094】
図8に示すように、水素センサ55は、水素センサ54と同様に第2水素タンク20b上部の位置P4に取り付けられ、識別Aピンと識別Bピンはいずれも接地状態(GND)とされる。一方、水素センサ55の通信用端子は第1通信バスCAN1ではなく第2通信バスCAN2に接続される。このため、水素センサ55の記憶部55mには、標準フォーマットではなく拡張フォーマットによる識別子CAN-EID_Bが書き込まれる。
【0095】
この第1の変形例によれば、4つの水素センサ51、52、53、55のいずれかにおいて、識別Aピン又は識別Bピンの断線等の故障が1箇所発生した場合であっても、故障した水素センサと他の正常な水素センサの全ての組み合わせについて識別子の重複(混同)を防止することができる。
【0096】
例えば、水素センサ55の識別Aピンが断線した場合、識別Aピンが開放状態(OPEN)で識別Bピンが接地状態(GND)という、正常な水素センサ53と同じ組み合わせに変化する。しかしながら、水素センサ55は第2通信バスCAN2に接続され、拡張フォーマットによる識別子が設定されるため、標準フォーマットによる識別子CAN-ID_Bが設定されている水素センサ53とは、識別子が重複することがない。
【0097】
また、水素センサ55の識別Bピンが断線した場合、識別Aピンが接地状態(GND)で識別Bピンが開放状態(OPEN)という、正常な水素センサ51と同じ組み合わせに変化する。しかしながら、水素センサ55は第2通信バスCAN2に接続されており、拡張フォーマットによる識別子が設定されるため、標準フォーマットによる識別子CAN-ID_Aが設定されている水素センサ51とは、識別子が重複することがない。
【0098】
なお、水素センサ51(GND/OPEN)と水素センサ53(OPEN/GND)のいずれかで1bit故障が発生した場合には、水素センサ51と水素センサ53の識別Aピンと識別Bピンの接続状態は水素センサ52(OPEN/OPEN)と同じ組み合わせに変化する。しかしながら、水素センサ51と水素センサ53は第1通信バスCAN1に接続されており、標準フォーマットによる識別子が設定されるため、拡張フォーマットによる識別子CAN-EID_Aが設定されている水素センサ52とは、識別子が重複することがない。
【0099】
このように、第1の変形例によれば、4つの水素センサ51、52、53、55のいずれかに断線等の故障が1箇所発生した場合であっても、識別子の重複(混同)を防止することができる。
【0100】
なお、第1の変形例は、識別用端子の数が2本の場合だけでなく、識別用端子の数が3本以上の場合にも適用することができる。すなわち、接地状態(GND)となる識別用端子の数が奇数個のセンサについては、第1通信バスCAN1に接続し、標準フォーマットによる識別子を設定する。接地状態(GND)となる識別用端子の数が偶数個のセンサと、接地状態(GND)となる識別用端子の数がゼロ(全て開放状態(OPEN))のセンサについては、第2通信バスCAN2に接続し、拡張フォーマットによる識別子を設定する。このような構成によれば、仮に1bit故障が発生した場合であっても、故障したセンサと他の正常なセンサの間で識別子の重複(混同)を防止することができ、従来技術と比べて識別子を設定可能なセンサの数を増やすことができる。
【0101】
[第2の変形例]
図9及び
図10を参照して、第2の変形例について説明する。
【0102】
なお、上述の実施形態及び第1の変形例と共通する要素については、
図9及び
図10中に
、下2桁が同じ参照符号を付して説明を省略する。
【0103】
この第2の変形例は、燃料電池スタックを複数搭載したトラックやバス等の大型車両への適用を想定した変形例である。
【0104】
上述の実施形態では、幹線62(第1通信バスCAN1と第2通信バスCAN2)に対して合計4個の水素センサ51~54が接続されているが、
図9及び
図10に示す第2の変形例では、幹線62に対して合計8個の水素センサ151~154、251~254が接続されている点が異なる。
【0105】
この第2の変形例におけるセンサシステム210は、2つの制御装置(ECU)を有する。
【0106】
図9及び図10に示すように、1つ目の制御装置であるFCECU136は、第1制御対象130を制御する制御装置(ECU)であって、第1制御対象130には、第1燃料電池スタック118と、第1水素タンク120aと、第2水素タンク120bが含まれる。
【0107】
2つ目の制御装置であるFCECU236は、第2制御対象230を制御する制御装置(ECU)であって、第2制御対象230には、第2燃料電池スタック218と、第3水素タンク220aと、第4水素タンク220bとが含まれる。
【0108】
次に、FCECU136と通信する水素センサ151~154(第1センサ群)について説明する。これらの水素センサ151~154は、それぞれ第1燃料電池スタック118の上部の位置P1及び位置P2と、第1水素タンク120aの上部の位置P3と、第2水素タンク120bの上部の位置P4とに取り付けられる。
【0109】
図9に示すように、水素センサ151~154のうち、水素センサ151、153、154は、第1通信バスCAN1の位置Q1、Q3、Q4に接続され、水素センサ152は、第2通信バスCAN2の位置R2に接続される。なお、
図9において、低圧バッテリ37の図示は省略している。
【0110】
水素センサ151~154の識別Aピンと識別Bピンの接続状態は、
図10に示すように、それぞれGND/OPEN、OPEN/OPEN、OPEN/GND、GND/GNDに設定される。なお、FCECU1
36と水素センサ151~154の配置構成(配線構成)については、上述の実施形態における
図3と共通するので図示を省略する。
【0111】
次いで、FCECU236と通信する水素センサ251~254(第2センサ群)について説明する。これらの水素センサ251~254は、それぞれ第2燃料電池スタック218の上部の位置P5及び位置P6と、第3水素タンク220aの上部の位置P7と、第4水素タンク220bの上部の位置P8とに取り付けられる。
【0112】
図9に示すように、水素センサ251~254のうち、水素センサ251、253、254は、第2通信バスCAN2の位置R8、R6、R5に接続され、水素センサ252は、第1通信バスCAN1の位置Q7に接続される。
【0113】
水素センサ251~254の識別Aピンと識別Bピンの接続状態は、
図10に示すように、それぞれGND/OPEN、OPEN/OPEN、OPEN/GND、GND/GNDに設定される。なお、FCECU2
36と水素センサ251~254の配置構成(配線構成)については、第1センサ群に含まれる水素センサ151~154の通信用端子が接続される通信バス(第1通信バスCAN1であるか第2通信バスCAN2であるか)と、識別Aピン及び識別Bピンの接続状態(GNDであるかOPENであるか)との対応関係を入れ替えただけなので、図示を省略する。
【0114】
この第2の変形例に係る水素センサ(センサ)151~154、251~254では、制御装置(ECU)は、第1制御対象130を制御するFCECU136(第1制御装置)と、第2制御対象230を制御するFCECU236(第2制御装置)と、からなり、当該水素センサ151~154、251~254が、FCECU136と通信する第1センサ群に含まれる場合と、FCECU236と通信する第2センサ群に含まれる場合とで、通信用端子が接続される通信バス(第1通信バスCAN1又は第2通信バスCAN2)と、識別Aピン及び識別Bピン(識別用端子)の接続状態(GNDであるかOPENであるか)との対応関係を入れ替えている。
【0115】
このような構成によれば、それぞれの水素センサ151~154、251~254に対して標準フォーマット又は拡張フォーマットのいずれか異なるパターンで識別子を設定することができると共に、第1センサ群の水素センサ151~154と第2センサ群の水素センサ251~254を同時に冗長化することができる。
【0116】
例えば、8つの水素センサ151~154、251~254のうち、仮に第1燃料電池スタック118のガス漏れ検知を担う水素センサ151において識別Aピンの断線等の故障が発生した場合、故障後の水素センサ151の識別Aピンと識別Bピンの接続状態の組み合わせはOPEN/OPENとなる。水素センサ151は、第1通信バスCAN1に接続されているため、故障後の識別子は第2燃料電池スタック218のガス漏れ検知を担う水素センサ252と同じCAN-ID_Dに変化する。
【0117】
そこで、第1燃料電池スタック118のガス漏れ検知については、位置P2に取り付けられた故障をしていない別途の水素センサ152の検出結果を利用することとし、第2燃料電池スタック218のガス漏れ検知については、位置P5に取り付けられた水素センサ251の検出結果のみを利用することにすれば、ガス漏れ検知を継続することができる。
【0118】
なお、上述の実施形態及び変形例では、燃料電池車両を例にとって説明したが、この発明に係るセンサ及びセンサシステムが適用可能な移動体は燃料電池車両に限定されるものではない。内燃機関を有する四輪車、二輪車、飛行機やドローン、船舶や電車等の移動体にも適用可能である。
【0119】
また、上述の実施形態及び変形例では、通信バスの相違により、異なるパターン(標準フォーマット又は拡張フォーマット)の識別子を設定しているが、異なる通信バスに接続したセンサに対して同一パターン(例えば標準フォーマット)の識別子を設定しても、識別子の混同を防ぐことができる場合がある。
【0120】
例えば、第1通信バスCAN1に接続した2個のセンサの識別用端子(識別Aピン及び識別Bピン)をGND/OPENとOPEN/GNDに設定すると共に、第2通信バスCAN2に接続した2個のセンサの識別用端子をGND/OPENとOPEN/GNDに設定し、いずれも標準フォーマットで識別子を設定すれば、1bit故障による識別子の混同を防ぐことができる。
【0121】
この発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0122】
12…燃料電池車両(移動体) 36…車両ECU(制御装置)
51~54、55、151~154、251~254…水素センサ(センサ)
51s~54s…ID設定部(識別子設定部)
CAN1…第1通信バス CAN2…第2通信バス