(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】人為的拍動の発生
(51)【国際特許分類】
A61M 60/569 20210101AFI20221208BHJP
A61M 60/178 20210101ALI20221208BHJP
A61M 60/232 20210101ALI20221208BHJP
A61M 60/242 20210101ALI20221208BHJP
A61M 60/419 20210101ALI20221208BHJP
【FI】
A61M60/569
A61M60/178
A61M60/232
A61M60/242
A61M60/419
(21)【出願番号】P 2021084764
(22)【出願日】2021-05-19
(62)【分割の表示】P 2018117781の分割
【原出願日】2011-09-23
【審査請求日】2021-06-17
(32)【優先日】2010-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517073591
【氏名又は名称】ティーシー1 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ケビン ボウルクエ
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-297174(JP,A)
【文献】特開2002-224066(JP,A)
【文献】特表2005-514962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/00-60/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置であって、前記制御装置は、心室補助装置の回転子の回転速度を、
前記
心室補助装置を人為的拍動モードで作動させ、ここで、前記回転子は、前記心室補助装置を通じて血液を移動させるインペラを備え、
前記人為的拍動モードが、
前記回転子を第1の期間にわたり第1の回転速度で回転させる、動作区間(a)と;
前記回転子の回転速度を前記第1の回転速度から第2の回転速度へと減速させる、動作区間(b)と;
前記回転子を第2の期間にわたり前記第2の回転速度で回転させる、動作区間(c)と;
前記回転子の回転速度を前記第2の回転速度から第3の回転速度へと減速させる、動作区間(d)と;
前記回転子を第3の期間にわたり前記第3の回転速度で回転させる、動作区間(e)と;
前記回転子の回転速度を前記第3の回転速度から前記第1の回転速度へと加速させる、動作区間(f)と
を含み、
低電源状態が検出されると、前記
心室補助装置の作動を前記人為的拍動モードから
電力消費量が低い節電モードに移行させ、そして
前記
心室補助装置を定常速度モードで作動させる
ように制御するように構成された、制御装置。
【請求項2】
前記人為的拍動モードの前記回転子によって生成される平均体積流量が、前記定常速度モードの前記回転子によって生成される平均体積流量と一致する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記定常速度モードについて前記回転子の定常回転速度の指標となる臨床医の入力を受信するように構成された、請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記人為的拍動モードが、前記定常速度モードの間につくり出される前記心室補助装置を通じた血液の体積流量とほぼ同じ前記心室補助装置を通じた血液の平均体積流量をつくり出すように、前記第1の回転速度、前記第1の期間、前記第2の回転速度、前記第2の期間、前記第3の回転速度、および前記第3の期間が選択される、請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記人為的拍動モードが、前記定常速度モードの間につくり出される前記心室補助装置を通じた血液の体積流量とほぼ同じ前記心室補助装置を通じた血液の平均体積流量をつくり出すように、前記第1の回転速度、前記第1の期間、前記第2の回転速度、前記第2の期間、前記第3の回転速度、および前記第3の期間が選択される、請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記
心室補助装置の作動を前記定常速度モードから前記人為的拍動モードへと移行させるように前記回転子の前記回転速度を制御する
ように構成された、制御装置。
【請求項7】
前記動作区間(f)が、
前記回転子の回転速度を前記第3の回転速度から第4の回転速度へと加速させる、動作細分区間(f-1)と;
前記回転子を第4の期間にわたり前記第4の回転速度で回転させる、動作細分区間(f-2)と;
前記回転子の回転速度を前記第4の回転速度から前記第1の回転速度へと加速させる、動作細分区間(f-3)と
を含む、請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
前記動作区間(a)~(f)が、サイクルを含み、前記制御装置が前記サイクルを繰り返すように構成される、請求項1に記載の制御装置。
【請求項9】
前記サイクルが継続期間を有し、前記
心室補助装置を前記第2の期間にわたり前記第2の回転速度で作動させることが、前記
心室補助装置を前記サイクルの前記継続期間の少なくとも半分の継続期間にわたり前記第2の回転速度で作動させることを含む、請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記サイクルを繰り返すことが、1分あたり50サイクル~110サイクルの生理的心拍で前記サイクルを繰り返すことを含む、請求項8に記載の制御装置。
【請求項11】
前記サイクルを繰り返すことが、1分あたり40サイクル未満の非生理的心拍で前記サイクルを繰り返すことを含む、請求項8に記載の制御装置。
【請求項12】
前記
心室補助装置を前記第2の回転速度で作動させることが、前記
心室補助装置を、前記サイクルを通じた平均流量と実質的に等しい流量をつくり出す第2の回転速度で作動させることを含む、請求項8に記載の制御装置。
【請求項13】
前記
心室補助装置を前記第2の回転速度で作動させることが、前記サイクルを通じた平均流量の10%以内の平均流量を達成するのに十分である、請求項8に記載の制御装置。
【請求項14】
前記サイクルが2秒の継続期間を有する、請求項8に記載の制御装置。
【請求項15】
前記制御装置が、ヒトの心臓の心室の収縮を検出するためのセンサーの出力を処理し;
前記動作区間(c)の前記第2の期間が、前記ヒトの心臓の心室の収縮と少なくとも一部重複する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項16】
前記制御装置が、前記回転子の速度と前記心室補助装置の電力消費量との間の関係に基づいて、ヒトの心臓の心室の収縮を検出するように構成され、
前記動作区間(c)の前記第2の期間が、前記ヒトの心臓の心室の収縮と少なくとも一部重複する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項17】
前記回転子の回転速度を前記第1の回転速度から第2の回転速度に減速させること、前記回転子の回転速度を前記第2の回転速度から第3の回転速度に減速させること、および、前記回転子の回転速度を前記第3の回転速度から前記第1の回転速度に加速させることのうちの1つまたは複数が、第1の時点で駆動信号を発生して、望ましい時点で作動速度に対応する変化をつくり出すことを含む、請求項1に記載の制御装置。
【請求項18】
前記第2の期間が前記第1の期間より長い、請求項1に記載の制御装置。
【請求項19】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記制御装置により前記回転子を前記第1の期間にわたり前記第1の回転速度で
回転させることが、前記制御装置により前記回転子を第1の所定の継続期間を有する第1の期間にわたり前記第1の回転速度で
回転させることを含み;
前記制御装置により前記回転子を前記第2の期間にわたり前記第2の回転速度で
回転させることが、前記制御装置により前記回転子を第2の所定の継続期間を有する第2の期間にわたり前記第2の回転速度で
回転させることを含み;そして
前記制御装置により前記回転子を前記第3の期間にわたり前記第3の回転速度で
回転させることが、前記制御装置により前記回転子を第3の所定の継続期間を有する第3の期間にわたり前記第3の回転速度で
回転させることを含む、
制御装置。
【請求項20】
前記第2の期間が、前記第1の期間と前記第3の期間を組み合わせた継続時間より長い、請求項1に記載の制御装置。
【請求項21】
前記回転子の回転速度を前記第3の回転速度から前記第1の回転速度に加速させることが、前記回転子の回転速度を前記第3の回転速度から前記第1の回転速度へと段階的な移行で加速させることを含む、請求項1に記載の制御装置。
【請求項22】
前記回転子の回転速度を前記第3の回転速度から前記第1の回転速度へと段階的な移行で加速させることが、1秒あたり500から1000mmHgへの圧力変化速度をつくり出すように前記回転子の回転速度を加速させることを含む、請求項21に記載の制御装置。
【請求項23】
前記回転子の回転速度を前記第3の回転速度から前記第1の回転速度に加速させることが、10mmHgまたはそれ以上の拍動圧力をつくり出すように前記回転子の回転速度を加速させることを含む、請求項21に記載の制御装置。
【請求項24】
前記回転子の回転速度を前記第3の回転速度から前記第1の回転速度に加速させることが、約20mmHgから約40mmHgの間の拍動圧力をつくり出すように前記回転子の回転速度を加速させることを含む、請求項21に記載の制御装置。
【請求項25】
前記回転子の回転速度を前記第3の回転速度から前記第1の回転速度に加速させることが、前記心室補助装置のセンサーからの信号がヒトの心臓の心室の収縮の開始時と関連付けられるときに、前記回転子の回転速度を前記第3の回転速度から前記第1の回転速度に加速させることを含む、請求項1に記載の制御装置。
【請求項26】
前記回転子の回転速度を前記第2の回転速度から前記第3の回転速度に減速させることが、前記心室補助装置のセンサーからの信号がヒトの心臓の心室の収縮の終了と関連付けられるときに、前記回転子の回転速度を前記第2の回転速度から前記第3の回転速度に減速させることを含む、請求項25に記載の制御装置。
【請求項27】
前記第3の回転速度と前記第1の回転速度の間の速度差が1000rpmまたはそれ以上である、請求項1に記載の制御装置。
【請求項28】
埋め込み可能な血液ポンプシステムであって、
心臓の汲み出し機能を支援または代替するように構成された埋め込み可能な血液ポンプであって、第1のポンプ速度パターンおよび第2のポンプ速度パターンで作動可能であり、かつ、前記埋め込み可能な血液ポンプを通じて血液を移動させるインペラを備える回転子を含む、埋め込み可能な血液ポンプと;
前記埋め込み可能な血液ポンプと結合された、かつ、第1の入力を受信し、前記第1の入力の受信に応じて、前記埋め込み可能な血液ポンプに信号を送信して、前記第1のポンプ速度パターンでの作動から前記第2のポンプ速度パターンでの作動に移行させるように構成された、制御装置と
を備え、
前記第1の入力が、前記埋め込み可能な血液ポンプシステムの低電源状態を示し;
前記第1のポンプ速度パターンが、脈動的動作モードを提供し;
前記第2のポンプ速度パターンが定常速度モードである、
埋め込み可能な血液ポンプシステム。
【請求項29】
前記
制御装置が、前記第1のポンプ速度パターンよりも低い電力消費量を有する
節電モードで前記埋め込み可能な血液ポンプの作動を制御するように構成される、請求項28に記載の埋め込み可能な血液ポンプシステム。
【請求項30】
前記制御装置がさらに、第2の入力を受信し、前記第2の入力に応じて、前記埋め込み可能な血液ポンプに信号を送信して、前記第2のポンプ速度パターンでの作動から前記第1のポンプ速度パターンでの作動に移行させるように構成される、請求項28に記載の埋め込み可能な血液ポンプシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願について
本願は、2010年9月24日に「人為的拍動の発生」と題して出願した米国仮出願第61/386,018及に対する優先権及びその他のすべての関連利権を主張するものである。ここ特許の全内容はここに参照することにより本明細書に組み入れられるものとする。
本明細書は人為的拍動の発生に関するものである。
【背景技術】
【0002】
VADとして知られている心室補助装置は、患者の心臓が十分な血液循環を行うことができない場合に短期的及び長期的の両方に用いられるタイプの血液ポンプである。例えば、心臓病を患っている患者は、心臓移植を待機している間にVADを用いることができる。別の例で、心臓手術から回復中の患者もVADを用いることができる。従って、VADは弱った心臓を機能的に支援したり、自然の心臓機能を効果的に代替することができる。VADは患者の体内に埋め込んで、その患者の身体の外部に配置された電源装置から電源を受け取ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
1つの一般的な態様で、持続的血流ポンプを作動して、脈動性血流をつくりだすことができる。そのポンプのモータ速度は2つ以上の速度レベルを含むサイクルを繰り返すことで調節することができる。このポンプの作動は、自然の生理的な拍動の圧力変化速度を擬態する圧力変化速度をつくりだすことができる。
【0004】
別の一般的な態様で、脈動的な状態で血液を汲み出す動作は第1の期間第1の速度で血液ポンプを作動させるステップと、上記血液ポンプの速度を第1の速度から第2の速度に減少させるステップと、第2の期間第2の速度でその血液ポンプを作動させるステップと、その血液ポンプの速度を上記第2の速度から第3の速度に減少させるステップと、その血液ポンプを第3の期間第3の速度で作動させるステップと、そして、その血液ポンプの速度を第3の速度から第1の速度に増大させるステップと含んでいる。
【0005】
本発明の実施例は以下の特徴の1つ又は複数を含むことができる。例えば、上記血液ポンプの速度を第3の速度から第1の速度に増大させるステップは、その血液ポンプの速度を第3の速度から第4の速度に増大させるステップと、血液ポンプをその第4の速度で第4の期間作動させるステップと、そして、血液ポンプの速度を第4の速度から第1の速度に増大させるステップを含んでいる。上記第2の期間は第1の期間と第3の期間を合わせたものより長い。血液ポンプを第1の速度で作動させるステップ、血液ポンプの速度を第1の速度から第2の速度に減少させるステップ、血液ポンプを第2の速度で作動させるステップ、血液ポンプの速度を第2の速度から第3の速度に減少させるステップ、血液ポンを第3の速度で作動させるステップ、そして、血液ポンプの速度を第3の速度から第1の速度に増大させるステップは1つのサイクルを構成しており、脈動的な状態で血液をポンピングするステップはさらにこのサイクルを繰り返すステップを含んでいる。第2の期間の継続時間は上記サイクルの半分より長い。血液ポンプを第2の期間第2の速度で作動させるステップは、血液ポンプを作動させて、そのサイクル中の平均血流量との所定の関係を有する血流をつくり出すステップを含んでいる。血液ポンプを第2の速度で第2の期間作動させるステップはその血液ポンプを作動させてそのサイクル中の平均血流量とほぼ同じ血流をつくりだすステップを含んでいる。
【0006】
例えば、血液ポンプの速度を上記第1の速度から第2の速度に減少させるステップと、血液ポンプの速度を第2の速度から第3の速度に減少させるステップ、そして、血液ポンプの速度を第3の速度から第1の速度に増大させるステップのうちの1つあるいは複数のステップは、段階的に速度を減少させる方式と速度を曲線的に減少させる方式の一方あるいは両方を含んでいる。血液ポンプを第2の速度で作動させるステップは選択された血液ポンプと液通しているヒトの心臓の心室の収縮の少なくとも一部の間に血液ポンプを第2の速度で作動させるステップを含んでいる。血液を脈動的な状態で汲み出すステップも、血液ポンプの速度とその血液ポンプの電力消費との間の関係に基づいて、第2の速度でインペラを作動させるステップと血液ポンプと液通しているヒトの心臓の収縮との間の同期を判定するステップを含んでいる。発生される脈動性血流は生理的な拍動の一時的な血圧変化速度と近似した一時的な血圧変化速度を含んでいる。血液ポンプの速度を第1の速度から第2の速度に減少させるステップ、血液ポンプの速度を第2の速度から第3の速度に減少させるステップ、そして、血液ポンプの速度を第3の速度から第1の速度に増大させるステップのうちの1つまたは複数のステップは、第1の時点で駆動信号を発生して、望ましい時点で作動速度に対応する変化をつくり出すステップを含んでいる。第2の時間は第1の時間より長い。
【0007】
別の一般的な態様で、血液ポンプ制御装置は血液ポンプを作動させるための波形を発生する波形発生装置と、その発生された駆動波形を上記血液ポンプに供給するための駆動波形送信器を含んでいる。発生された波形は血液ポンプを第1の期間第1の速度で作動させ、上記血液ポンプの速度を上記第1の速度から第2の速度に減少させ、その血液ポンプを第2の期間上記第2の速度で作動させ、その血液ポンプの速度を上記第2の速度から第3の速度に減少させ、その血液ポンプを第3の期間第3の速度で作動させ、そして、その血液ポンプの速度を上記第3の速度から上記第1の速度に増大させるように構成されている。
【0008】
本発明の実施の形態は以下の特徴の1つあるいは複数を含むことができる。例えば、その血液ポンプの速度を上記第3の速度から上記第1の速度に増大させるステップが、その血液ポンプの速度を上記第3の速度から第4の速度に増大させるステップと、その血液ポンプを第4の期間上記第4の速度で作動させるステップと、そして、その血液ポンプの速度を上記第4の速度から上記第1の速度に増大させるステップを含んでいる。上記第2の期間は上記第1の期間及び上記第3の期間の合計より長い。その血液ポンプを上記第1の速度で作動させるステップと、その血液ポンプの速度を上記第1の速度から上記第2の速度に減少させるステップと、その血液ポンプを上記第2の速度で作動させるステップと、その血液ポンプの速度を上記第2の速度から上記第3の速度に減少させるステップと、その血液ポンプを上記第3の速度で作動させるステップと、そして、その血液ポンプの速度を上記第3の速度から上記第1の速度に増大させるステップは1つのサイクルを構成しており、そして、発生された波形はそのサイクルを繰り返すように構成されている。第2の期間の継続時間は上記サイクルの半分より長い。その血液ポンプを上記第2の期間上記第2の速度で作動させるステップは、その血液ポンプを作動させて上記サイクルの平均血流量に対して所定の関係を有する血流量をつくりだすステップを含んでいる。上記第2の期間上記第2の速度でそのポンプを作動させるステップは、上記サイクルの平均血流量とほぼ同じ血流量をつくりだすためにその血液ポンプを作動させるステップを含んでいる。
【0009】
上記の発生された波形は速度の段階的変化と速度の曲線的変化の一方あるいは両方で血液ポンプの速度を変化させるように構成されている。発生された波形はその血液ポンプと血流が通じているヒトの心臓の心室を収縮中にその血液ポンプを上記第2の速度で作動させる。上記血液ポンプ制御装置はさらに、その血液ポンプの速度とその血液ポンプの電力消費量との間の関係に基づいて、その血液ポンプを上記第2の速度の速度で作動させるステップとその血液ポンプと血流が通じているヒトの心臓の心室の収縮との同期化を判定するように構成されているプロセッサを備える。発生された波形は、その血液ポンプを駆動して、自然の生理的な拍動の血圧の一時的な変化量に近似した血圧の一時的な変化量をつくりだす。発生された波形はさらに、望ましい時点でポンプ作動速度に対応する変化をつくりだすように構成されている。上記第2の期間は上記第1の期間より長い。
【0010】
別の一般的な態様で、比較的低い圧力部分と比較的高い圧力部分を有し、さらり、自然の生理的な拍動の圧力変化速度を擬態する圧力変化速度を有する脈動性の血流をつくりだすステップは、継続流血液ポンプを作動させて上記脈動性血流の上記比較的低い圧力部分に関連した上記継続流血液ポンプを通じて流れる第1の血流量をつくりだすステップと、上記継続流血液ポンプを作動させて上記脈動性血流の上記比較的高い圧力部分に関連した上記継続流血液ポンプを通じて流れる第2の血流量をつくりだすステップと、そして、上記継続流血液ポンプを制御してその継続流血液ポンプを通じて流れる血流量を上記第1の流量から上記第2の流量に増大させて自然の生理的拍動の圧力変化速度を擬態する圧力変化速度をつくりだすステップを含んでいる。
【0011】
本発明の実施の形態は、以下の特徴の1つあるいは複数を含むことができる。例えば、上記の継続流血液ポンプを作動させて上記第2の血流量をつくりだすステップは、その継続流血液ポンプを第1の作動速度で作動させるステップを含むことができ、制御はその継続流血液ポンプを第2の作動速度で作動させるステップを含むことができる。この第2の作動速度は第3の血流量と関連しており、その第3の血流量は上記第2の血流量より大きい。その継続流血液ポンプを作動させて上記第2の血流量をつくりだすステップは、上記継続流血液ポンプを作動させて、上記比較的高い圧力部分が上記比較的低い圧力部分の継続時間よりは長い継続時間を持つように上記第2の血流量をつくりだすステップを含んでいる。サイクルを繰り返すが、上記比較的高い圧力部分の継続時間は上記そのサイクルの半分より長い。このサイクルは上記継続流血液ポンプを作動させて上記第1の血流量をつくりだすステップと、上記継続流血液ポンプを作動させて上記第2の血流量をつくりだすステップと、そして、その継続流血液ポンプを制御して血流量を増大させるステップを含んでいる。その継続流血液ポンプを作動させて上記第2の血流量をつくりだすステップは、その継続流血液ポンプを作動させて、上記第2の血流量がその脈動性血流の平均血流量との所定の関係を有するように上記第2の血流量をつくりだすステップを含んでいる。上記第2の血流量は上記脈動性血流の平均血流量とほぼ等しい。上記継続流血液ポンプを制御して血流量を増大させるステップはその継続流血液ポンプを通じて流れる血流量が上記第2の流量をオーバーシュートして自然の生理的拍動の圧力変化速度を擬態する圧力変化速度をつくりだすように上記継続流血液ポンプを制御して、その継続流血液ポンプをつうじて流れる血流量を上記第1の流量から上記第2の流量に増大させるステップを含んでいる。
【0012】
1つあるいは複数の実施例の詳細を添付図面を参照にして以下に詳細に説明する。その他の特徴、目的、及び利点は以下の説明と図面、及び添付請求項を参照すれば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は埋め込まれた血液ポンプを示す図である。
【
図6】
図6はコンピュータ・システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1で、左心室補助血液ポンプ100は血液汲み出しにおいて患者の心臓Hを支援したりその機能を代替するために、その患者の体内に埋め込まれる。ポンプ100は心臓Hの左心室LV内に延びる導入カニューラ112を含むハウジング110を有している。血液を血液ポンプ100から患者の循環系に導く導出導管102がハウジング110に接続されている。血液ポンプ100は継続流ポンプ、例えば、回転式ポンプであってもよい。血液ポンプ100は軸流、遠心流、あるいは軸流と遠心流の混合をもたらすことができる。
【0015】
血液ポンプ100は固定子120と回転子140を含んでいる。上記回転子140は血液を導入カニューラ112から導出導管102に移動させるインペラを有している。例えば、血液ポンプ100は、2010年8月20日に出願された米国仮特許出願第61/375,504に述べられているポンプであってもよい。上記特許の全内容はここに参照したことで本明細書に組み入れられる。いくつかの実施例で、回転子140はハウジング110から隙間108だけ内壁115から分離されている。使用時には、その隙間は約0.1ミリメートルから約2.0ミリメートルの範囲である。例えば、いくつかの実施例では、隙間108は使用中には約0.5ミリメートルである。さらに、いくつかの実施例では、上記回転子は約5グラムから約50グラムの重量を有している。例えば、いくつかの実施例では、回転子140は約10グラムの重量を有している。
【0016】
回転子140の回転速度を制御して望ましい血流量をつくりだすことができる。その望ましい血流量は患者の心臓Hに対して望ましいレベルの補助を与えるように選択することができる。例えば、血流量は、患者の心臓Hの血液循環機能を部分的に補助するように選択することができる。あるいは、血流量はその患者の心臓Hの血液循環機能を実質的に代替するように選択することもできる。導入カニューラ112から導出導管102への血流量は、少なくとも部分的には、ポンプ速度と血液ポンプ100を通じて流れる血流量との間の直接的な関係に基づいて回転子140の回転速度を制御することによって制御される。
【0017】
望ましい量での血流をつくりだすのに加えて、脈動性血流パターンが望ましい場合もある。脈動性血流パターンは比較的高い血流量及び血圧の期間と比較的低い血流量及び血圧の期間を含んでいる。患者、特にその自然の心臓出力がその血液ポンプの体積流量と比較して小さな患者の衰弱した拍動を補ったり代替するために、そうした脈動性血流パターンが望ましい場合があるであろう。さらに、自然の脈動性血流パターン及び/又は健康な心臓からの血液拍動圧力と類似した生理的応答をつくりだすために、脈動性血流パターンが望ましい場合もある。この生理的応答は定常速度で作動する血液ポンプの応答とは顕著に違っている場合もある。非脈動性循環が何らかの生理的、代謝的及び血管運動上の変化に導く場合もあるが、VADに対する拍動性の臨床的な適切さは明らかではない。それにもかかわらず、脈動性循環は心室内での血液鬱滞を減らし、大動脈弁の運動を助け、アテローム性動脈硬化症性病変箇所の遠位側の洗浄を改善し、冠動脈及び/又は終末器官灌流を増大させ、心室吸引のリスクの低減し、動静脈奇形などの拍動性低減に関連した疾病の進行抑制し、そして、心筋回復を増大してくれると考えられている。さらに、これらの現象は自然の拍動波形をそっくりそのまま擬態する必要ないと考えられている。むしろ、それらはここに述べられている技術と波形を用いて達成できる可能性がある。
【0018】
重要なのは、生理的な拍動によって起こされるのに類似した反応を身体内につくりだすことはできるものの、人為的な拍動の種々の特性が生理的な拍動のそれとはかなり違っている場合があることである。多くの臨床的な利点と共に生理的応答を媒介する自然の拍動の異なった側面もあるであろうが、有意な拍動を特徴づけている散逸エネルギーの主要な供給源が心臓収縮によって発生される圧力波であることは一般的に知られている。従って、ここで述べられている人為的な拍動は、そうした散逸エネルギーをつくりだすように意図された自然の比較的短い摂動を含んでいる場合がある。
【0019】
いくつかの実施例で、人為的な拍動サイクルは生理的な拍動における心臓収縮の開始時点で起きる拍動圧力を擬態する摂動期間を含んでいる。この摂動期間は、例えば、血液ポンプ16が低速で作動される期間を含んでおり、それにすぐ続いて、血液ポンプ100がより高い速度で作動される期間がある。人為的な拍動サイクルはその摂動期間より長い期間を含んでいる場合もあり、この期間中にポンプ16は中間的な速度、例えば、摂動期間中に実現されるいくつかの速度の間で維持される速度で作動される。
【0020】
ポンプを中間的な速度で作動させると、高い作動効率の達成に貢献してくれる可能性がある。達成される効率は、例えば、高速での作動と低速での作動を等しい時間で切り換えるためのポンプの効率より高い場合もある。一般的に、定常流ポンプの作動効率はその回転範囲の中央近くで最も高くなる。従って、そうしたポンプは人為的拍動サイクルの少なくとも一部では範囲の中間速度、あるいはそれに近い速度で作動させるのが有利である。
【0021】
生理現象に影響を及ぼすそうしたパラメータには、拍動圧力及び血圧変化速度(dp/dt)が含まれている。血液ポンプ100の場合、例えば、拍動圧力と血圧の時間変動は回転子140の角速度によって影響される。従って、血液ポンプ100は回転子の回転が比較的高い時間と回転子の回転速度が比較的低い期間を含むポンプ速度パターンをつくりだすことによって、望ましい拍動圧力及び/又は望ましい圧力変化速度を含む脈動血流パターンをつくりだすように選択的に制御可能である。いくつかの実施例で、血液ポンプ100によってつくりだされる拍動圧力、あるいは血液ポンプ100によってつくりだされる拍動圧力と患者の心臓Hの組み合わせでつくり出される拍動圧力の組み合わせは、約10mmHgあるいはそれ以上であってよく、例えば約20mmHgから約40mmHgの範囲であってもよい。
【0022】
例えば、血液ポンプ100は
図2に示されているポンプ速度パターン200をつくりだすように作動させることができる。ポンプ速度パターン200は比較的高い血圧をつくりだす高いポンプ速度の第1の部分210と、比較的低い血圧をつくりだす低いポンプ速度の第2の部分220を含んでいる。さらに、この脈動性血流パターンは上記第1の部分210から第2の部分220への移行期を含んでおり、この移行期は自然の生理的拍動を擬態し、圧力変化速度に関連した望ましい生理学的効果をつくりだす圧力変化速度などのような患者の循環系において望ましい圧力変化速度をつくりだす。いくつかの実施例で、この移行期がつくりだす圧力変化速度は、例えば、1秒間あたり500から1000mmHgへの速度変化である。
【0023】
ポンプ速度パターン200の第1の部分210及び/又は第2の部分220は複数の細分区間(セグメント)を含んでいてもよい。いくつかの実施例で、これらの細分区間はそれぞれ所定の継続時間を有している。
図2に示してあるように、ポンプ速度パターン200の第1の高速部分210は第1の区間210aと第2の区間210bを含んでいる。第1の区間210aでは、回転子140は時点T0から時点T1の間の第1の期間に第1の回転速度ω1で回転される。時点T1で、回転子140の回転速度は第1の回転速度ω1から第2の回転速度ω2に急速に減速され、段階的な移行期間をつくりだす。回転子140は、ポンプ速度パターン200の第1の部分210の第2の区間210b中に時点T1から時点T2までの第2の期間に第2の回転速度ω2で回転される。時点T2で、回転子140の回転速度はポンプ速度パターン200の第2の部分220中に時点T2から時点T4に至る第3の期間に第3の回転速度ω3に減速される。この減速は上に述べた加速と同様の速さであってもよいし、自然の心臓拡張期の圧力変化と同様により緩やかなものであってもよい。
【0024】
ポンプ速度パターン200で、第2の回転速度ω2は目標としての高血流ポンプ速度であって、第1の回転速度ω1は上記第1の期間中に血圧の変化速度を増大させるために選択された望ましいオーバーシュート・ポンプ速度である。血液ポンプ100が第1の回転速度ω1で回転される時点T0から時点T1までの第1の期間は、血液ポンプ100が第2の回転速度ω2で回転される時点T1から時点T2に至る第2の期間より短い。第1の期間は約0.01秒から約1秒の範囲であってよい。いくつかの実施例で、この第1の期間の継続時間は約0.05秒である。いくつかの実施例では、この第1の期間は第2の期間とほぼ等しいか、それより長くてもよい。
【0025】
さらに、第1の期間の継続時間は望ましい拍動圧力、つまり速度変化時点T1前の血圧と時点T1での血圧の違いをつくりだすように選択することができ、第2の期間の継続時間とは無関係に選択することができる。時点T0から時点T2に至る第1及び第2の期間を含む第1の部分210は第2の部分220より長い。いくつかの実施例では、時点T0から時点T2に至る第1及び第2の期間は、第2の部分220より短くても、長くても、あるいはほぼ同じ継続時間であってもよい。例えば、より低い流量でのポンピングに対してより高い流量でのポンピングの継続時間を増大しつつ偶発的な拍動も利用しようと思うなら、第1の部分210は第2の部分220より長目に設定した方が有利である。望むのであれば、血液ポンプ100の速度を第1の回転速度ω1にまで増大させて、ポンプ速度パターン200を繰り返すこともできる。ポンプ速度パターン200は継続的ベースあるいは非継続的ベースで繰り返すことができ、回転子140の回転速度の増大も望ましい圧力変化速度をつくりだすのに十分な程度に速くでもよい。
【0026】
例えば、第1の回転速度ω1などのようなより速い速度で第2の回転速度ω2をオーバーシュートするという考え方は、部分的には非干渉性の拍動圧力、つまり、高速高流量からの速度変更を行う前と後の血圧の差に基づいている。従って、目標とする拍動圧力と高流量とは種々の流動条件で達成することができる。理想的な値は、ポンプの設計や必要条件によって変わる。
【0027】
図2に示すように、期間210bは期間210aより長くてもよい。期間210bも部分220より長くてもよい。いくつかの実施例で、期間210bの継続時間はポンプ速度パターン200の半分より長い。例えば、期間210bの継続時間はポンプ速度パターン200の60%、70%、80%、あるいはそれ以上であってもよい。別の方式としては、患者のニーズとポンプの特性に応じて、期間210bの継続時間をポンプ速度パターン200の50%以下、例えば、40%、30%、20%あるいはそれ以下としてもよい。
【0028】
期間710b中にポンプを回転速度ω2で作動させると、ポンプ速度パターン210b中の液体力学的効果を高めることに貢献してくれる場合がある。ポンプ速度パターン200中に、患者の体内でつくりだされる拍動圧力は基本的にはポンプ回転速度の変化、例えば、時点T4での速度ω3とω1の間の速度変化の程度との相関関係を持っている。従って、生理的拍動の心臓収縮の開始時に起きる圧力変化を擬態するためには、回転速度ω3とω1の間のかなりの速度差が一般的には望ましい。その速度差は、血液ポンプ100の特性にもよるが、1000rpm、2000rpm、あるいはそれ以上の場合もある。速度差の程度に応じて、血液ポンプ100の最も高い作動効率範囲外で、速度ω3とω1の一方、あるいは両方が起こり得る。
【0029】
回転速度ω2は血液ポンプ100の高い液体力学的効果をもたらす速度、例えば、血液ポンプ100の作動範囲の中央近くの速度の場合もある。ポンプ速度パターン200中に、血液ポンプ100は速度ω2で作動することができ、これはポンプ速度パターン200のかなりの部分で高い効率をもたらし、高効率の達成に貢献してくれる。上に述べたように、血液ポンプ100はポンプ速度パターン200の継続時間のうちの半分以上で速度ω2で作動することができる。従って、血液ポンプ100は、ポンプ速度パターン200の大部分において非常に効率の高い方法で作動することができ、生理学上の心臓の収縮開始時を擬態する圧力変化をつくりだすこともできる。従って、ポンプ速度パターン200のいくつかの実施例は、自然の心臓サイクルのすべての側面を擬態しようとする制御モードより高い効率を提供することができる。
【0030】
ポンプ速度パターン200の長さに対する期間210bの長さの割合は人為的拍動の頻度に基づいて変動する。それとは対照的に、期間210aと部分220の継続時間は、心拍とは無関係であり得る。望ましい生理的な反応をつくりだすためには、期間210aと部分220の最少継続時間を、例えば、0.125秒と設定することができる。期間210bがポンプ速度パターン200の残りの全部を占める場合もある。
【0031】
一例として、ポンプ速度パターン200は1分間あたり60サイクルの頻度に対して1秒間の継続時間を持つことができる。期間210aと部分220の合計継続時間が0.125秒であるとすると、期間210bは0.750の継続時間をもつことができ、これはポンプ速度パターン200の75%に相当する。別の例として、ポンプ速度パターン200の継続時間が2秒であるとすると(従って、1分あたり30サイクル)、期間210bの継続時間は1.75秒であってもよく、これはポンプ速度パターン200の継続時間の87.5%に相当する。
【0032】
いくつかの実施例で、回転速度ω2は、その回転速度での血液ポンプ100の作動がポンプ速度パターン200中に平均流量に対して所定の関係を満たす流量をつくりだすように選択される。部分210b中の流量は平均流量の所定の範囲内、例えば、平均流量の30%、あるいは10%以内であってもよい。部分210b中の流量は平均流量とほぼ等しくてもよい。
【0033】
平均流量とほぼ等しい流量をつくりだす回転速度ω2を選択すると、拍動制御モードと定常流制御モードなどの別の制御モードの間の移行を簡単に行うことができる。いくつかの実施例で、血液ポンプ100はポンプ速度パターン200の半分以上を特定の定常速度で作動する。定常速度での作動は、例えば、期間210b中に起こり得る。速度ω1とω3及び期間210aと部分220の継続時間を調節することによって、平均ポンプ体積流量を異なった作動設定で実現される平均ポンプ体積流量とほぼ合致するように調節することができる。その結果、臨床医あるいは患者は平均的な体積流量にわずかな変化しか起きないかあるいは変化が起きないような状態で、人為的な拍動モードから別の制御モードに切り替えることができる。このことは、例えば、人為的拍動が定常速度オプションなど少なくとも1つの別の方式と切り換え可能な場合に、臨床上の利点をもたらす。
【0034】
一例として、定常速度モードに対して臨床医が設定した速度は人為的な拍動モードの定常速度部分のためにも用いることができる。その速度は定常速度モード中(例えば、血液ポンプ100の継続流あるいは非拍動作動中)に血液ポンプ16を通じて流れる望ましい体積流量をつくりだすために、臨床医によって選択することができる。人為的拍動モードにおいては、同じ選択された速度を、例えば、ポンプ速度パターン200の期間210b中に回転速度ω2として用いることができる。速度ω1、ω3及び期間210aの継続時間及び部分220はポンプ速度パターン200中の体積流量をほぼ平衡に保つために計算され、あるいは選ばれる。例えば、部分220中に流量を減らすと、部分210a中の流量の増大を相殺することができる。その結果、ポンプ速度パターン200中の正味体積流量は定常速度モード中の体積流量とほぼ一致する。このように、定常速度モードと人為的拍動モードのいずれにおいても、体積流量はほぼ同じにすることができ、臨床医が体積流量に影響を及ぼさずに1つのモードから別のモードに切り換えることができる。これは1つのモードから別のモードへの切換えが流量に突然変化をもたらした場合に起きるであろうような潜在的に危険な状態を回避する上で役立つ。例えば、体積流量が突然減少すると患者に対する潅流を急激に不十分にさせるし、一方、体積流量の突然の増大は心室吸引及び不整脈を引き起こす可能性がある。
【0035】
上に述べたように、ポンプ速度パターン200の第2の部分210も複数の区間を含むことができる。例えば、
図3に示すように、ポンプ速度パターン300は第1の区間310aと第2の区間310bを有する第1の部分310を含んでおり、さらに、ポンプ速度パターン300は第1の区間310aと第2の区間320bを有する第2の部分を含んでいる。時点T0から時点T1に至る第1の区間310a中、血液ポンプ100は第1の回転速度ω1で作動される。時点T1で、血液ポンプ100の速度は第2の回転速度ω2に減少され、そして、時点T1から時点T2に至る第2の期間中は、血液ポンプ100は第2の回転速度ω2で作動される。時点T2で、血液ポンプ100の速度は第2の回転速度ω2から第3の回転速度ω3に減少される。血液ポンプ100はポンプ速度パターン300の第2の部分320の第1の区間320a中は時点T2から時点T3に至る第3の期間中、第3の回転速度ω3で作動される。時点T3で、血液ポンプ100の速度は第3の回転速度ω3から第4の回転速度ω4に増大され、血液ポンプ100は、ポンプ速度パターン300の第2の部分320の第2の区間320b中、時点T3から時点T4に至る第4の期間中、第4の回転速度ω4で作動される。望ましい場合、血液ポンプ100の速度は第1の回転速度ω1に増大されて、ポンプ速度パターン300が繰り返される。ポンプ速度パターン300は継続ベースあるいは非継続ベースで繰り返すことができ、回転子140の回転速度の増大は圧力変化の望ましい速度をつくりだすのに十分な程度に迅速である。
【0036】
パターン200におけるオーバーシューティングω2のコンセプトと同様に第4の回転速度ω4を第1の回転速度ω3などのより低い回転速度でオーバーシューティングするというコンセプトは、より低い第4の回転速度ω4における体積流量と拍動圧力の非干渉性にも基づいている。従って、ポンプ速度パターン300では、ポンプ速度パターン200の場合より、より完全に目標拍動圧力と体積流量とが切り離されているので、いろいろな流動条件で理想的な数値を達成することができ、あるいはより近い近似値を得ることができる。
【0037】
図2と3にポンプ速度間の移行のための単一のオーバーシュートポンプ速度を示してあるが、一回あるいはそれ以上の移行のために複数のオーバーシュートポンプ速度を用いることができる。例えば、
図4は各移行のための複数のオーバーシュートポンプ速度を含むポンプ速度パターン400を示している。ポンプ速度パターン400は第1の区間410aと第2の区間410bを有する第1の部分410と第1の区間420aと第2の区間420bを有する第2の部分420を含んでいる。ポンプ速度パターン400の第1の部分410の第1の区間410aは血液ポンプ100が目標ポンプ速度ω2をオーバーシュートするために第1の回転速度ω1で作動される第1のステップ431と第1の回転速度ω1から第2の回転速度ω2への移行するために血液ポンプ100が第5の速度ω5で作動される第2の移行ステップ433を含んでいる。同様に、第2の部分420の第1の区間420aは血液ポンプ100が第3の回転速度ω3で作動される第1のステップ441と血液ポンプ16が第3の回転速度ω3と第4の回転速度ω4との間の移行のために第6の速度ω6で作動される第2の区間443を含んでいる。望ましい場合、血液ポンプ100の速度を第1の回転速度ω1に増大させて、ポンプ速度パターン400を繰り返すことができる。ポンプ速度パターン400は継続ベースあるいは非継続ベースで繰り返すことができ、回転子140の回転速度の増大も圧力変化の望ましい速度をつくりだすのに十分な速さを有している。
【0038】
複数の段階的な速度変化をつくりだすというコンセプトはヒトの心臓収縮及び拡大中につくりだされるものと類似する生理的応答をつくりだすという考え方に基づいている。これは自然の拍動波長全体を擬態するということとは違っている。上に述べたように、拍動サイクルを通じて生理的な圧力波長を擬態することを避けることによってより大きな液体力学的効率を達成することができる場合もしばしばある。人為的拍動が潜在的な意味での臨床効果を多数提供してくれることは、これまでにも述べられている。こうした潜在的な意味での臨床効果の一部あるいは全部で、健康な自然の拍動中に散逸されるエネルギーに極近い状態で一致させることの利点には違いが生じる。極近い状態で一致させることがこれらの潜在的な意味での臨床効果を達成し易くしてくれるという範囲で、パターン400をさらに複雑にした方が良いかもしれない。
【0039】
図2-4までを参照して上に説明した段階的あるいは非継続的な移行とは対照的に、異なったポンプ作動速度間の段階的移行と組み合わせて、あるいはそれに代えて滑らかな、あるいは継続的移行を用いることもできる。例えば、滑らかな移行は
図5のポンプ速度パターン500に示してある。ポンプ速度パターン500は第1の部分510と第2の部分520を含んでいる。第1の部分510は、血液ポンプ100の速度が、時点T0から時点T1にかけて第1の回転速度ω1から第2の回転速度ω2に徐々に、戦略的に選択された速度で減速される第1の区間510aを含んでいる。ポンプ速度減少の選択された速度は、例えば、特定の線形速度であってもよいし、あるいは、特定の非線形速度であってもよい。時点T1から時点T2に至る第1の部分510の第2の区間510b中に、血液ポンプ100は第2の回転速度ω2で作動される。同様に、第2の部分520は血液ポンプ100の速度が、時点T2から時点T3に至るまでに第3の回転速度ω3から第4の回転速度ω4に徐々に、戦略的に選択された速度で増大される第1の区間520aを含んでいる。第2の部分520の第2の区間520b中に、時点T3から時点T4までに、血液ポンプ16は第4の回転速度ω4で作動される。望ましい場合であれば、時点T4に、回転子140の回転速度が第1の回転速度ω1に急速に加速できる加速ステップが設けられ、ポンプ速度パターン500が繰り返される。
【0040】
戦略的に選択された速度での複数の速度変化をつくりだすというコンセプトは、ヒトの心臓の収縮及び拡張中につくりだされるものと類似した生理的応答をつくりだすことに基づいている。例えば、ヒトの拍動中のエネルギー散逸と非常に正確に一致していることが必要な場合であれば、ポンプ速度パターン500をさらに複雑にした方が良いかもしれない。
【0041】
ポンプ速度パターン500は、回転子140の回転速度の急速な変化によってつくりだされるポンプ速度パターン200-400に関連して上に述べた段階的な移行とポンプ速度パターン500の第1の部分510の第1の区間510aと第2の部分520の第1の区間520aの緩やかな移行との違いを示している。ポンプ速度パターン500の第1の部分510の第1の区間510aの緩やかな移行で達成されるこうした緩やかな移行を、例えば、自然の心臓収縮中に示される圧力変化を擬態するために含めることが可能である。いくつかの実施例で、ポンプ速度パターンのうちの1回又は複数回の回転速度減速がこうした緩やかな移行であってもよい。例えば、ポンプ速度パターンは第1の回転速度ω1から第3の回転速度ω3への回転速度の緩やかな減速を1回と第3の回転速度ω3から第1の回転速度ω1へ戻る段階的移行を1回含むことができる。望ましい動脈圧力波形状やその他の望ましい生理的な効果を生み出すために、段階的な移行と緩やかな移行のいろいろな組み合わせをポンプ速度パターンに含めることができる。さらに回転速度間の移行のタイプは血液ポンプ100の電力消費に影響を及ぼす場合があり、ポンプ速度パターンは、少なくとも部分的には、電力消費を考慮に入れて選択することができる。
【0042】
上に述べたすべてのポンプ速度パターンに関して、回転子の速度は人為的拍動を付与するための技術的なパラメータであるが、すべての生理的効果は、拍動圧力、血圧変化速度(dp/dt)の最大時間変動などを含む人為的な拍動の付与の結果としての圧力及び流動パターンと関係していることを理解しておかなければならない。回転子速度はそれ自体としては生理学的な意味を有さない。ヒトの血管システムは通常心臓によってつくりだされる拍動を緩め、上に述べたようにつくりだされる人為的な拍動と同じような作用をする。本発明は生理的に意味のある拍動をもたらす実用的な因子(ファクター)の組み合わせについて開示している。従って、上に述べたポンプ速度パターン200-500は生理的に意味のある拍動をもたらす実用的なパラメータの例示的な組み合わせである。
【0043】
使用時には、血液ポンプ100を作動させるための電気駆動信号を発生するように構成された制御装置によって、ポンプ速度パターン200-500を発生させることができる。例えば、制御装置は血液ポンプ100を作動させるための電気駆動信号を発生する
図6に示されているコンピュータ装置600を含むこともできる。上に述べたポンプ速度パターン200をつくりだすために、制御装置は時点T0から時点T1までに第1の電流を出力させる。時点T1で、制御装置は出力電流を第1の電流より低い第2の電流に下げて、時点T1から時点T2の間にその第2の電流を出力させる。時点T2で、制御装置は出力電流を第2の電流から第3の電流に下げて、時点T2から時点T4までに第3の電流を出力させる。
【0044】
コンピュータ装置600は1つあるいは複数のプロセッサ610、メモリー・モジュール620、記憶装置630、そして、システム・バスによって接続された入力/出力装置640を含んでいる。入力/出力装置640は1つあるいは複数の周辺装置660と信号をやり取りするために作動させることができる。例えば、周辺装置660を用いて、メモリー・モジュール620及び/又は記憶装置630にコンピュータが実行可能な命令を記憶保存するために用いることができる。これらの命令がプロセッサによって実行されると、制御装置がポンプ100の作動を制御する波形を生成したり、例えば、ポンプ速度パターン200-500などのポンプ速度パターンをつくりだす。
【0045】
さらに、上記制御装置は心臓Hの活動を示す信号を提供するセンサーを含むことができる。例えば、その制御装置は血液ポンプ100による電力消費を示す信号を提供するセンサーを含むことができる。この信号は、左心室LVが収縮する時を判定するために用いることができる。例えば、血液ポンプ100の電力消費は、任意の作動速度で、左心室LVが収縮すると増大する。判定された心臓の活動に基づいて、上記制御装置は発生される制御波形を修正することができる。例えば、制御装置は、第1の部分210が左心室LVの収縮とほぼ一致するようにポンプ速度パターン200の第1の部分210と第2の部分220のタイミングと継続時間を自動的に調節することができる。血液ポンプ100は時点T0が左心室LVの収縮の開始とほぼ一致し、時点T2が左心室LVの収縮の終了とほぼ一致するように制御される。時点T4は左心室LVの次の収縮の開始とほぼ一致している。従って、上に述べたポンプ速度パターンのいろいろな部分及び/又は区間の継続時間を、1回あるいは複数回のそのポンプ速度パターンの反復に対して、個別的あるいは集合的に変更することができる。これらの技術を用いて、制御装置20は血液ポンプ100の脈動的作動を心臓Hの自然の生理的拍動と同期化させることができる。
【0046】
あるいは、上記制御装置は心臓Hの活動とは無関係に、及び/又は左心室弛緩時に第1の部分210が起きる場合など心臓Hの拍動に逆らって作動するように制御波形を発生させることが出来る。同様に、上記制御装置は1分間に40高圧期未満などのはっきりと非生理的な心拍を含む制御波形を発生させることができ、その波形は自然の心臓の機能とは無関係に発生させることができる。いくつかの実施例で、血液ポンプ100は、1分間に50回から110回の範囲の高圧期を含むなど、はっきりと生理的な心拍をつくりだすように作動させることもでき、心臓の機能とは無関係に、あるいはそれに従って制御を受けることができる。
【0047】
多数の実施例について上に説明した。しかし、権利請求される発明の精神と範囲から逸脱せずに種々の修正が可能であることは分かるであろう。例えば、上に述べたポンプ速度パターンは軸方向血流ポンプや遠心血流ポンプなどいろいろなタイプの血液ポンプと共に用いることができる。同様に、脈動性血流パターンをつくりだすために用いられる血液ポンプの回転子の作動を、電磁的に中断させたり、液体力学的に中断させたり、あるいは機械的に中断させたりすることもでき、それらの方式の組み合わせも用いて中断させることができる。回転子の作動は部分的にでも受動的に磁気的に中断させることができる。しかしながら、一般的には、他の条件が変わらなければ、電磁的中断が速度変化入力に対して回転子の高度の対応性を生み出すので、部分的に受動的な磁力による中断と共に、あるいはそれなしに回転子が電磁的に中断されるポンプによって、人為的拍動の効果が最も正確に擬態されるであろう。例えば、機械的中断に関連する機械的ベアリング及び/又は液体力学的中断に関連するローターの非常に狭い空隙は電磁的集団を用いるポンプと比較して、回転子の急速な加速を邪魔する。さらに、上に述べたポンプ速度パターンは角速度の測定と関連付けて説明されているが、ポンプ速度パターンは1つまたは複数の異なったポンプ速度の測定に関連してつくりだすことも可能である。さらに、その制御装置によって発生される駆動信号の変化と血液ポンプの作動速度の変化との間に遅延があってもよい。従って、出力駆動信号の変化が、心臓の選択された活動とほぼ一致する時点など、望ましい時点でポンプ作動速度の対応する変化がつくりだされる時点で行われるように上記制御装置を作動させることができる。
【0048】
いくつかの実施の形態で、ポンプ速度パターン200-500は血液ポンプが他の速度で作動される追加的な部分や区間を含むことができる。例えば、望ましい時点で血液ポンプを作動させて、動脈弁を開けたり閉じたりするような望ましい生理的効果をつくりだすポンプ速度パターンをつくりだすことができる。血液ポンプのそうした作動は、特に限定のない定常速度の期間を含め、上に述べた選択された1つ又は複数のポンプ速度パターンの基本的には定常的な反復を妨げてしまい、定常速度の期間を不明確にしたりする場合があり、選択されたポンプ速度パターンを望ましい生理的効果が達成された後で再開することができる。ポンプ速度パターン200-500は異なった部分や区間を含むことも出来る。例えば、ポンプ速度パターン200の第1の部分210の第2の区間210bは複数のポンプ速度を含むことができる。同様に、第1の回転速度ω1から第2の回転速度ω2へのポンプ速度の減少など、ポンプ速度間の移行は、ポンプ速度パターン500の第1の部分510の第1の区間510aなどの移行が線形的、曲線的、双曲線状、対数関数的、正弦曲線的、段階的、あるいはそれらの組み合わせになるように、一定時間中に定常的、変動的、指数関数的それらの組み合わせによる、あるいはその他の速度変化率を含むことができる。
【0049】
いくつかの実施例で、ポンプ速度パターン200-500におけるポンプ速度変化の1つあるいは複数が単調であってもよい。1つの速度から別の速度への移行は一定の時間中に徐々に行われてもよいが、ただし、その変化は1つの速度から別の速度への直接的なものである。例えば、第1の回転速度から第2の回転速度にポンプ速度を減少させるために、上記制御装置はポンプ速度を増大させる介在期間を設けることなしにポンプ速度を減速させることができる。同様に、第1の回転速度から第2の回転速度への移行を、その移行中にポンプを第1の回転速度より大きい速度で作動させなくても起こすことができる。
【0050】
さらに、ポンプ速度パターンに関連したポンプの電力消費速度、そのポンプ速度パターンに関連したポンプ効率、そのポンプ速度パターンに関連した血流量、及び/又はそのポンプ速度パターンに関連した血圧変化速度に従って選択されるポンプ速度パターンに従って、血液ポンプを作動させることができる。例えば、第1のモードで、上記制御装置を作動させて、望ましい血圧変化速度をつくりだすポンプ速度パターンをつくることができる。低電源状態が探知された場合は、上記制御装置を節電モードに切り換えて、望ましい圧力変化速度がその節電モードでつくりだされないとしても、電力消費量が低いポンプ速度パターンをつくりだすことが可能である。
【0051】
上に述べたように、いくつかの実施例で、ポンプ100を用いて、病気及び/又は手術やその他の措置からの回復期間中などの移行期間中に患者の心臓を補助することができる。他の実施例で、例えば、患者の大動脈弁が手術により閉じられている場合など、ポンプ100は基本的には永続ベースで患者の心臓の機能を部分的あるいは完全に代替させるために用いることができる。
【0052】
この明細書に述べられている主題や機能的動作は、本明細書に開示されている構造やそれと構造的に同等なものを含め、さらに、それらの1つあるいは複数の組み合わせも含めて、デジタル電子回路、具体化されたコンピュータ・ソフトウエアやファームウエア、コンピュータ・ハードウエアで実施することができる。本明細書に述べられている主題は、1つあるいは複数のコンピュータ・プログラム、つまり、データ処理装置による、あるいはその動作を制御する目的で実行されるために、具体的な、そして非一時的なプログラム担体上にコード化された1つあるいは複数のコンピュータ・プログラム命令のモジュールとして実装することができる。このプログラム担体は、以下に述べるような、コンピュータ記憶媒体、機械で読み取り可能な記憶装置、機械で読み取り可能な記憶媒体、ランダムあるいはシリアル・アクセス記憶装置、あるいはそれらの組み合わせであってよい。あるいは、又はさらに、これらのプログラム命令は、人為的に発生されたプログラム化された信号、例えば、データ処理装置による実行のために適切な受信装置に送られるための情報をコード化するためには作成される機械によって発生される電気的、光による、あるいは電磁的信号としてコード化することができる。
【0053】
上記の『データ処理装置』とは、例として挙げれば、プログラム可能なプロセッサ、コンピュータ、あるいは複数のプロセッサやコンピュータなどを含むデータを処理するためのすべての種類の装置、機器及び機械を含んでいる。この装置はFPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)やASIC(アプリケーション固有集積回路)などの特殊目的論理回路を含むこともできる。この装置は、ハードウエアに加えて、プロセッサ・ファームウエアを構成するコード、プロトコール・スタック、データベース管理システム、オペレーティング・システム、あるいはそれらのうちの1つ以上のものの組み合わせなど、そのコンピュータ・プログラムの実行環境をつくりだすコードも含むことができる。
【0054】
(プログラム、ソフトウエア、ソフトウエア・アプリケーション、モジュール、ソフトウエアモジュール、スクリプト、あるいはコードとも呼ばれたり記述されたりすることもある)コンピュータ・プログラムは、コンパイルされたあるいはインタープリタ型言語や宣言型又は手続き型言語を含むどんな形態のプログラミング言語で書かれていてもよく、さらに、スタンドアローン・プログラムやモジュール、コンポーネント、サブルーチン、あるいはコンピューティング環境での使用に適したその他のものも含めて、どんな形態ででも展開することができる。コンピュータ・プログラムはファイル・システム内の1つのファイルに対応していてもよいが、必ずしもその必要はない。プログラムは、マークアップ言語ドキュメントに記憶保存されている1つあるいは複数のスクリプトなど他のプログラムやデータを保有しているファイルの一部や、当該プログラム専用の単一のファイル、あるいは1つ又は複数のモジュール、サブ・プログラム、あるいはコードの部分を記憶したファイルなどの複数の相互に関連付けられたファイル内に記憶保存されてもよい。コンピュータ・プログラムは、1つのコンピュータや、1つの場所に配置されていたり、複数の場所に配置されているがコンピュータ・ネットワークで相互に接続されている場所に分散されている複数のコンピュータで実行するために展開することができる。
【0055】
本明細書に開示したプロセスや論理フローは、入力データ上で作動したり出力を行うことによって諸機能を実行するための1つあるいは複数のコンピュータ・プログラムを実行する1つまたは複数のプログラム可能なコンピュータによって実行することができる。これらのプロセスや論理フローは、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)あるいはASIC(アプリケーション固有集積回路)などの特殊目的論理回路によって実行され、装置もそうした特殊目的論理回路として実装することができる。
【0056】
コンピュータ・プログラムの実行に適したコンピュータは、例として挙げれば、汎用マイクロプロセッサでも特殊目的のマイクロプロセッサでも、その両方でも、あるいはどんな種類の中央処理装置でもあってもよい。一般的には、中央処理装置は、読み取り専用メモリーかランダム・アクセス・メモリー、あるいはその両方から命令及びデータを受け取る。コンピュータの基本的な要素は命令を実行したり、命令やデータを記憶保存するための1つあるいは複数のメモリー装置を作動させるための処理装置である。コンピュータは、磁気ディスク、磁気光ディスク、あるいは光ディスクなどデータを記憶保存するための1つ以上の大量記憶装置を含むことができ、あるいはそれらの装置と作動的結合されてデータを受信したり送信することができる。しかしながら、コンピュータはそうした装置を必ずしも保有していなくてもよい。さらに、コンピュータはポンプやポンプ制御装置などの他の装置や、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)フラッシュ・ドライブなどの携帯型記憶装置や、その他の取り外し可能な記憶保存モジュールなどに組み込むこともできる。上に上げた装置はごく少数の例に過ぎない。
【0057】
コンピュータ・プログラム命令及びデータを記憶保存するのに適したコンピュータ読み取り可能媒体は、例として挙げれば、EPROM、EEPROM及びフラッシュ・メモリー装置などの半導体メモリー装置、内部ハードディスクやリムーバブル・ディスクなどの磁気ディスク、磁気光ディスク、あるいはCD-ROMやDVD-ROMディスクなどを含むすべての形態の非揮発性メモリー、メディア及びメモリー装置を含んでいる。プロセッサ及びメモリーは特殊目的論理回路で補助されたり、その回路に組み込むことも可能である。
【0058】
従って、その他の実施の形態は以下の請求項の範囲内にある。