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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】吸引器
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20221208BHJP
   A24F 40/50 20200101ALI20221208BHJP
   A24F 40/51 20200101ALI20221208BHJP
【FI】
A61B5/16 110
A24F40/50
A24F40/51
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021099518
(22)【出願日】2021-06-15
(62)【分割の表示】P 2020505584の分割
【原出願日】2018-11-27
(65)【公開番号】P2021166519
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/009706
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 直人
(72)【発明者】
【氏名】桐迫 瑛人
(72)【発明者】
【氏名】谷本 侑成
(72)【発明者】
【氏名】今飯田 佳代子
(72)【発明者】
【氏名】入矢 達秋
(72)【発明者】
【氏名】武井 祥平
(72)【発明者】
【氏名】安藤 北斗
(72)【発明者】
【氏名】林 登志也
(72)【発明者】
【氏名】小山 栄一
(72)【発明者】
【氏名】赤瀬 哲也
(72)【発明者】
【氏名】福島 慎一
(72)【発明者】
【氏名】毛利 一雄
(72)【発明者】
【氏名】森田 朱香
(72)【発明者】
【氏名】廣江 朋也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼妻 雄二
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-325756(JP,A)
【文献】特開2006-100088(JP,A)
【文献】特開2010-246787(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0312749(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に設けられ、香味成分を放出する香味発生源と、
前記筐体に設けられ、使用者による吸引時に前記香味発生源から放出される香味成分を使用者の口腔内に供給するための吸い口を有する吸い口ユニットと、
前記筐体内に設けられた電源と、
外部に露出するように前記筐体に設けられ、前記電源から電力供給を受けた微弱電流を使用者の皮膚に流した際の皮膚コンダクタンスに対応する応答値を出力する電極と、
前記筐体内に設けられた気圧センサと、
前記気圧センサから出力される筐体内の気圧に関する気圧情報に基づいて使用者による前記吸い口の吸引動作を検知し、使用者による前記吸い口の吸引動作中に記電極を用いて測定した測定結果に基づいて使用者のストレス度合いを分析するストレス度合い分析制御を実行する制御部と、
を備える、
吸引器。
【請求項2】
前記制御部は、ストレス度合い分析制御の結果を使用者に通知する、請求項1に記載の吸引器。
【請求項3】
前記制御部は、使用者による前記吸い口の吸引動作中にのみ、前記ストレス度合い分析制御を実行する、請求項1又は2に記載の吸引器。
【請求項4】
前記制御部は、プロセッサ及び記憶部を含み、前記記憶部に記憶されているプログラムを前記プロセッサが実行することで前記ストレス度合い分析制御が実行される、請求項1から3の何れか一項に記載の吸引器。
【請求項5】
記電極は前記筐体に一対設けられており、使用者が前記筐体を把持した際に当該筐体を把持する使用者の掌の異なる2つの領域が触れる予め定められた2箇所に配置されている、
請求項1からの何れか一項に記載の吸引器。
【請求項6】
一対の前記電極は、使用者が前記筐体を把持した際に当該筐体を把持する使用者の人差
し指と中指が触れる予め定められた2箇所に配置されている、
請求項に記載の吸引器。
【請求項7】
一対の前記電極は、使用者が前記筐体を把持した際に当該筐体を把持する使用者の掌の掌底と母指球が触れる予め定められた2箇所に配置されている、
請求項5に記載の吸引器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引器、吸引器の制御方法および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日はストレス社会と呼ばれているが、ストレスの解消や軽減に深呼吸が有効であるものと考えられる。また、使用者に香味を付与可能な吸引器が知られており、この種の吸引器を用いて使用者が吸引する際、自然と深呼吸が促されることで、ストレスの解消、軽減に寄与するものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-37642号公報
【文献】特開2006-17394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の吸引器においては、ストレスを解消する用途で吸引しようにも、成り行きまかせで吸引動作(深呼吸)を繰り返すしかなく、いつまで吸引動作(深呼吸)を繰り返せば良いのかを適切に判断することは難しかった。
【0005】
本発明は、上記した実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、吸引動作によってストレス状態が解消されたかどうかの判断を使用者が把握することの可能な吸引器に関する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明に係る吸引器は、筐体と、前記筐体に設けられ、吸い口を有する吸い口ユニットと、外部に露出するように前記筐体に設けられ、使用者の精神性発汗量を測定するための発汗量測定用電極と、前記発汗量測定用電極を用いて測定した精神性発汗量に基づいて使用者のストレス度合いを分析し、分析結果を使用者に通知する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る吸引器は、前記筐体内に設けられた気圧センサを更に備え、前記制御部は、前記気圧センサから出力される筐体内の気圧に関する気圧情報に基づいて使用者による前記吸い口の吸引動作を検知し、使用者による前記吸い口の吸引動作中にのみ、前記発汗量測定用電極を用いて精神性発汗量を測定するように構成されていても良い。
【0008】
また、本発明において、前記制御部は、前記精神性発汗量が所定の低ストレス発汗量まで低下したと判定した場合に、使用者に刺激を付与する覚醒処理を実行するように構成されていても良い。
【0009】
また、本発明において、前記筐体が香気成分を含んでいても良い。この場合、前記筐体が木製筐体であり、当該木製筐体が香気成分を含む香気発生源として形成されていても良い。
【0010】
また、本発明において、前記発汗量測定用電極は前記筐体に一対設けられており、使用者が前記筐体を把持した際に当該筐体を把持する使用者の掌の異なる2つの領域が触れる予め定められた2箇所に配置されていても良い。この場合、一対の前記発汗量測定用電極
は、使用者が前記筐体を把持した際に当該筐体を把持する使用者の人差し指と中指が触れる予め定められた2箇所に配置されていても良い。
【0011】
また、前記制御部は、使用者のストレス度合いを分析するストレス度合い分析制御を実行する際、所定の第1タイムアウト時期が到来する前に使用者の精神性発汗量が所定の判定用閾値未満になったときに所定のストレス解消完了通知を使用者に通知するメイン処理を実行し、前記制御部は、前記メイン処理の開始時から前記第1タイムアウト時期が到来するまでのメイン処理継続最大期間よりも短い所定の予測用特徴量測定期間において経時的に変化する使用者の精神性発汗量の推移と、前記メイン処理継続最大期間における使用者の精神性発汗量の最小値との関連性を表す発汗量最小値予測モデルと、前記予測用特徴量測定期間において経時的に変化する使用者の精神性発汗量の推移と前記メイン処理継続最大期間における使用者の精神性発汗量の最大値との関連性を表す発汗量最大値予測モデルと、を格納する記憶部と、前記メイン処理の開始時から前記予測用特徴量測定期間に亘って測定した使用者における精神性発汗量の測定値を特徴量として、前記発汗量最小値予測モデルと前記発汗量最大値予測モデルとにそれぞれ適用することによって、前記メイン処理継続最大期間における使用者の精神性発汗量の最小値と最大値をそれぞれ予測する予測部と、前記判定用閾値を、前記予測部が予測した前記メイン処理継続最大期間における使用者の精神性発汗量の最小値である最小予測値以上であって且つ当該メイン処理継続最大期間における使用者の精神性発汗量の最大値である最大予測値以下の範囲で設定する設定部と、を有していても良い。
【0012】
また、前記発汗量最小値予測モデルは、予め前記ストレス度合い分析制御を実行したときの前記予測用特徴量測定期間における使用者の精神性発汗量の測定値の推移と前記メイン処理継続最大期間における使用者の精神性発汗量の測定値の最小値とを対応付けた複数の発汗量最小値学習用データを教師データとして用いた機械学習によって前記予測用特徴量測定期間における使用者の精神性発汗量の推移と前記メイン処理継続最大期間における使用者の精神性発汗量の最小値との関連性を学習済みの予測モデルであって、前記発汗量最大値予測モデルは、予め前記ストレス度合い分析制御を実行したときの前記予測用特徴量測定期間における使用者の精神性発汗量の測定値の推移と前記メイン処理継続最大期間における使用者の精神性発汗量の最大値とを対応付けた複数の発汗量最大値学習用データを教師データとして用いた機械学習によって前記予測用特徴量測定期間における使用者の精神性発汗量の推移と前記メイン処理継続最大期間における使用者の精神性発汗量の最大値との関連性を学習済みの予測モデルであっても良い。
【0013】
また、前記予測部は、前記メイン処理の開始時から前記予測用特徴量測定期間が経過した時点で、前記予測部に格納された前記発汗量最小値予測モデルと前記発汗量最大値予測モデルとに基づいて前記最小予測値と前記最大予測値をそれぞれ予測しても良い。
【0014】
また、前記制御部は、前記メイン処理の開始時から前記予測用特徴量測定期間が経過した時点以降に測定した使用者の精神性発汗量の測定値を、前記発汗量最小値予測モデルと前記発汗量最大値予測モデルとに基づいてそれぞれ予測した前記最小予測値および前記最大予測値を用いて、前記最小予測値を第1の値とすると共に前記最大予測値を前記第1の値よりも大きい第2の値としてスケーリング処理を行う処理部を更に備え、前記設定部は、前記第1の値以上で且つ前記第2の値以下の固定値として前記判定用閾値を設定しても良い。
【0015】
また、本発明は、吸引器の制御方法としても特定することができる。すなわち、本発明は、筐体と、前記筐体に設けられると共に吸い口を有する吸い口ユニットと、外部に露出するように前記筐体に設けられて使用者の精神性発汗量を測定するための発汗量測定用電極と、を備える吸引器の制御方法であって、前記発汗量測定用電極を用いて使用者の精神
性発汗量を測定し、当該測定した精神性発汗量に基づいて使用者のストレス度合いを分析し、分析結果を使用者に通知することを特徴とする。
【0016】
また、吸引器の制御方法において、前記吸引器を制御する制御部は、使用者のストレス度合いを分析するストレス度合い分析制御を実行する際、所定の第1タイムアウト時期が到来する前に使用者の精神性発汗量が所定の判定用閾値以下になったときに所定のストレス解消完了通知を使用者に通知するメイン処理を実行し、前記制御部は、前記メイン処理の開始時から前記第1タイムアウト時期が到来するまでのメイン処理継続最大期間よりも短い所定の予測用特徴量測定期間において経時的に変化する使用者の精神性発汗量の推移と、前記メイン処理継続最大期間における使用者の精神性発汗量の最小値との関連性を表す発汗量最小値予測モデルと、前記予測用特徴量測定期間において経時的に変化する使用者の精神性発汗量の推移と前記メイン処理継続最大期間における使用者の精神性発汗量の最大値との関連性を表す発汗量最大値予測モデルと、を格納する記憶部を有し、前記メイン処理の開始時から前記予測用特徴量測定期間に亘って測定した使用者における精神性発汗量の測定値を特徴量として、前記発汗量最小値予測モデルと前記発汗量最大値予測モデルとにそれぞれ適用することによって、前記メイン処理継続最大期間における使用者の精神性発汗量の最小値と最大値をそれぞれ予測し、当該予測した前記メイン処理継続最大期間における使用者の精神性発汗量の最小値である最小予測値以上であって且つ当該メイン処理継続最大期間における使用者の精神性発汗量の最大値である最大予測値以下の範囲内で前記判定用閾値を設定しても良い。
【0017】
また、吸引器の制御方法において、前記制御部は、前記メイン処理の開始時から前記予測用特徴量測定期間が経過した時点で、前記予測部に格納された前記発汗量最小値予測モデルと前記発汗量最大値予測モデルとに基づいて前記最小予測値と前記最大予測値をそれぞれ予測しても良い。
【0018】
また、吸引器の制御方法において、前記制御部は、前記メイン処理の開始時から前記予測用特徴量測定期間が経過した時点以降に測定した使用者の精神性発汗量の測定値を、前記発汗量最小値予測モデルと前記発汗量最大値予測モデルとに基づいてそれぞれ予測した前記最小予測値および前記最大予測値を用いて、前記最小予測値を第1の値とすると共に前記最大予測値を前記第1の値よりも大きい第2の値としてスケーリング処理を行い、且つ、前記第1の値以上で且つ前記第2の値以下の固定値として前記判定用閾値を設定しても良い。
【0019】
また、本発明は、吸引器の制御プログラムとしても特定することができる。すなわち、本発明は、筐体と、前記筐体に設けられると共に吸い口を有する吸い口ユニットと、外部に露出するように前記筐体に設けられて使用者の精神性発汗量を測定するための発汗量測定用電極と、を備える吸引器の制御部に実行させるプログラムであって、前記制御部に、前記発汗量測定用電極に使用者の精神性発汗量を測定させ、当該精神性発汗量の測定値に基づいて使用者のストレス度合いを分析させ、分析結果を使用者に通知させることを特徴とする。
【0020】
また、前記吸引器の制御プログラムは、前記制御部に、使用者のストレス度合いを分析するストレス度合い分析制御を実行させる際、所定の第1タイムアウト時期が到来する前に使用者の精神性発汗量が所定の判定用閾値以下になったときに所定のストレス解消完了通知を使用者に通知するメイン処理を実行させ、前記制御部は、前記メイン処理の開始時から前記第1タイムアウト時期が到来するまでのメイン処理継続最大期間よりも短い所定の予測用特徴量測定期間において経時的に変化する使用者の精神性発汗量の推移と、前記メイン処理継続最大期間における使用者の精神性発汗量の最小値との関連性を表す発汗量最小値予測モデルと、前記予測用特徴量測定期間において経時的に変化する使用者の精神
性発汗量の推移と前記メイン処理継続最大期間における使用者の精神性発汗量の最大値との関連性を表す発汗量最大値予測モデルと、を格納する記憶部を有し、前記吸引器の制御プログラムは、前記制御部に、前記メイン処理の開始時から前記予測用特徴量測定期間に亘って測定した使用者における精神性発汗量の測定値を特徴量として、前記発汗量最小値予測モデルと前記発汗量最大値予測モデルとにそれぞれ適用することによって、前記メイン処理継続最大期間における使用者の精神性発汗量の最小値と最大値をそれぞれ予測させ、当該予測させた前記メイン処理継続最大期間における使用者の精神性発汗量の最小値である最小予測値以上であって且つ当該メイン処理継続最大期間における使用者の精神性発汗量の最大値である最大予測値以下の範囲に前記判定用閾値を設定させても良い。
【0021】
また、吸引器の制御プログラムは、前記制御部に、前記メイン処理の開始時から前記予測用特徴量測定期間が経過した時点で、前記予測部に格納された前記発汗量最小値予測モデルと前記発汗量最大値予測モデルとに基づいて前記最小予測値と前記最大予測値をそれぞれ予測させても良い。
【0022】
また、吸引器の制御プログラムは、前記制御部に、前記メイン処理の開始時から前記予測用特徴量測定期間が経過した時点以降に測定した使用者の精神性発汗量の測定値を、前記発汗量最小値予測モデルと前記発汗量最大値予測モデルとに基づいてそれぞれ予測した前記最小予測値および前記最大予測値を用いて、前記最小予測値を第1の値とすると共に前記最大予測値を前記第1の値よりも大きい第2の値としてスケーリング処理を行わせ、且つ、前記第1の値以上で且つ前記第2の値以下の固定値として前記判定用閾値を設定させても良い。
【0023】
また、本発明は、上記吸引器の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であっても良い。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、吸引動作によってストレス状態が解消されたかどうかの判断を使用者が把握することの可能な吸引器に関する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、実施形態1に係る吸引器の外観斜視図である。
図2図2は、実施形態1に係る吸引器の分解斜視図である。
図3図3は、実施形態1に係る吸引器の正面図である。
図4図4は、実施形態1に係る吸引器の側面図である。
図5図5は、実施形態1に係る吸引器における吸い口ユニットと木製筐体との取り付け構造を説明する図である。
図6図6は、実施形態1に係る吸引器における吸い口ユニットと木製筐体との取り付け構造を説明する図である。
図7図7は、実施形態1に係る吸引器のブロック図である。
図8図8は、実施形態1におけるパワーオン処理ルーチンを示すフローチャートである。
図9図9は、実施形態1におけるメイン処理ルーチンを示すフローチャートである。
図10図10は、実施形態1におけるフィードバック処理ルーチンを示すフローチャートである。
図11図11は、吸引器の制御部がストレス度合い分析制御を実行した際における精神性発汗量の時間推移を概念的に示した図である。
図12図12は、実施形態2に係る吸引器のブロック図である。
図13図13は、実施形態2に係るパワーオン処理ルーチンを示すフローチャートである。
図14図14は、実施形態2に係るメイン処理ルーチンを示すフローチャートである。
図15図15は、変形例に係る吸引器を説明する図である。
図16図16は、実施形態3に係る吸引器におけるブロック図である。
図17図17は、実施形態3に係る吸引器がストレス度合い分析制御を実行した際の使用者における精神性発汗量の推移を例示した図である。
図18図18は、実施形態3に係るメイン処理の処理内容を示す図である。
図19図19は、実施形態3に係るメイン処理における発汗量判定処理の処理内容を示すフローチャートである。
図20図20は、吸引器を使用する複数の使用者に対してストレス度合い分析制御を実施した際のスケーリング済み発汗量測定値の時間推移を示す図である。
図21図21は、吸引器を使用する複数の使用者に対してストレス度合い分析制御を実施した際の補正済み発汗量測定値の時間推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ここで、本発明に係る吸引器の実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に特定的な記載がない限りは、発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0027】
<実施形態1>
≪吸引器≫
図1は、実施形態1に係る吸引器1の外観斜視図である。図2は、実施形態1に係る吸引器1の分解斜視図である。図3は、実施形態1に係る吸引器1の正面図である。図4は、実施形態1に係る吸引器1の側面図である。なお、図3および図4において、吸引器1の内部構造の一部を破線で図示している。
【0028】
吸引器1は、使用者の掌部の精神性発汗量を測定することで使用者のストレス度合いをチェックするストレスチェック機能を有する小型携帯吸引器である。吸引器1は、吸い口11、吸い口受け12、木製筐体13等を有し、これらによって外形が画定されている。吸い口11および吸い口受け12の材質はとくに限定されないが、本実施形態では樹脂製である。
【0029】
図2に示す符号20は、吸引器1全体の制御を行う制御ユニットである。制御ユニット20は、電子基板21(図3に破線にて外形を図示)を格納する基板格納部22、電源23、固定ユニット24等を有する。基板格納部22の表面の一部には、吸引器1として組み上げられた状態で外部に露出する露出部25が形成されており、当該露出部25に一対の精神性発汗量測定用電極26,27が上下に並んで配置されている。精神性発汗量測定用電極26,27は、精神性発汗量を測定するために用いられる電極である。なお、基板格納部22の内部に格納される電子基板21が、格納空間内に占める位置、大きさ、形状等は特に限定されない。
【0030】
電源23は、電池230を格納する電池格納部231を有する。電池格納部231の内部には、電池230を収納する収納空間231aが形成されており、基板格納部22の上部に形成された挿入口から電池230を収納空間231aに挿抜することができる。本実施形態において、電池230は乾電池であるがこれには限定されず、例えばリチウムイオン電池等であっても良い。なお、本実施形態の制御ユニット20においては、基板格納部22および電源23が一体的に形成されているが、別体として構成されていても良い。電源23(電池230)は、吸引器1の動作に必要な電力を供給する。
【0031】
木製筐体13には、図2等に示す制御ユニット20を収容する収容空間130を有している。固定ユニット24は、図2に示すネジ28を用いて木製筐体13に制御ユニット20を固定するための部材である。固定ユニット24の下面には、電池230のマイナス極に接触するバネ端子241と、電池230のプラス極に接触する接触端子242が設けられている(図2図3等を参照)。また、図3に示す符号231bは電池格納部231側に設けられるバネ端子、符号231cは電池格納部231側に設けられる接触端子である。電池格納部231のバネ端子231bは、電池格納部231に格納される電池230のマイナス極に接触し、接触端子231cは、電池格納部231に格納される電池230のプラス極に接触するように設けられている。電池格納部231のバネ端子231bおよび接触端子231cは、収納空間231aの底部に配置されている。
【0032】
固定ユニット24は、ネジ28を挿通するための一対の挿通孔243が設けられている。挿通孔243にネジ28を挿通させた状態で、ネジ28を木製筐体13に設けられたネジ孔131に螺着することで、電池230を端子間に押さえ付けた状態で、木製筐体13の収容空間130内に制御ユニット20を固定することができる。また、固定ユニット24は内部が中空となっており、固定ユニット24の上面には着脱用開口244が形成されている。着脱用開口244は、円形状を有する挿抜用孔244aと、挿抜用孔244aに連通すると共に細長形状を有するスライド用孔244bを含んでいる。スライド用孔244bの延伸方向に直交する幅寸法は、挿抜用孔244aの直径に比べて小さな寸法に設計されている。
【0033】
本実施形態に係る吸引器1において、吸い口受け12に吸い口11が装着された状態で吸い口ユニット10が形成されており、吸い口ユニット10は木製筐体13に対して着脱自在となっている。図2に示すように、吸い口受け12には、吸い口11の一端側に設けられる円筒体111を装着可能な装着孔121を有している。ここで、装着孔121の内径は、円筒体111の外径と略同一である。吸い口受け12の装着孔121に吸い口11の円筒体111を差し込むことで、吸い口11が吸い口受け12に装着され、一体の吸い口ユニット10となる。なお、吸い口11の他端側には吸い口孔112が設けられている。吸い口孔112は、吸い口11を軸方向に貫通するように延在している。吸引器1における木製筐体13には、通気孔(図示せず)が設けられており、木製筐体13内部には通気孔と吸い口ユニット10(吸い口11)の吸い口孔112を接続する通気路(図示せず)が形成されている。
【0034】
図5および図6は、実施形態1に係る吸引器1における吸い口ユニット10と木製筐体13との取り付け構造を説明する図である。図5に示すように、吸い口ユニット10における吸い口受け12の下面12a側には、係止用突起122が下方に向かって突設されている。係止用突起122は、下面12aから凸設する軸部122aと、軸部122aの先端に設けられた係止部122bを有する。係止用突起122の係止部122bは、軸部122aよりも大きな直径を有する円盤形状を有している。
【0035】
上記のように構成される吸い口ユニット10における係止用突起122は、固定ユニット24に設けられた着脱用開口244に係脱自在となっている。具体的には、係止用突起122における係止部122bの直径は、固定ユニット24における着脱用開口244の挿抜用孔244aの内径よりも小さく、スライド用孔244bの幅寸法よりも大きい。また、係止用突起122における軸部122aの直径は、スライド用孔244bの幅寸法よりも小さい。
【0036】
吸い口ユニット10を木製筐体13に装着する場合、固定ユニット24における挿抜用孔244aの位置に吸い口ユニット10における係止用突起122の位置を合わせ、吸い口受け12の下面12aが固定ユニット24の上面24aに当接するまで係止用突起12
2を挿抜用孔244aに挿入する。その後、吸い口受け12の下面12aが固定ユニット24の上面24aと摺動するように係止用突起122の軸部122aをスライド用孔244bに沿ってスライドさせる。そして、係止用突起122の軸部122aを例えばスライド用孔244bの先端までスライドさせた時点で、図6に示すロック部29が作動し、吸い口ユニット10の被係止部(図示せず)を係止することで、木製筐体13に吸い口ユニット10が装着される。また、この状態においては、係止用突起122における係止部122bは、スライド用孔244bの縁部に形成された状態となっている。
【0037】
一方、木製筐体13から吸い口ユニット10を取り外す際には、ロック部29のロックを解除して、係止用突起122の軸部122aをスライド用孔244bに沿って基端(挿抜用孔244aとの接続される方の端部)に向かってスライドさせる。そして、係止用突起122の位置を挿抜用孔244aまでスライドさせた後、挿抜用孔244aから係止用突起122を引き抜くことで、木製筐体13から吸い口ユニット10を取り外すことができる。
【0038】
図7は、実施形態1に係る吸引器1のブロック図である。吸引器1の電子基板21には、吸引器1を制御する制御ユニットである制御部30が実装されている。制御部30は、例えばプロセッサ、メモリ等を有するマイクロコンピュータであっても良い。制御部30は、精神性発汗量測定用電極26,27、気圧センサ40、振動モータ41、発光素子43、電源23等と電気配線を介して接続されており、精神性発汗量測定用電極26,27、気圧センサ40が出力する出力信号が入力されるようになっている。
【0039】
気圧センサ40は、木製筐体13の内部に設けられており、木製筐体13内の気圧を検出するセンサである。気圧センサ40は、例えばコンデンサマイクロフォンセンサであり、例えばコンデンサの電気容量を示す電圧値を出力しても良い。気圧センサ40は、使用者によって吸い口11が吸引されることで、通気孔(図示せず)から木製筐体13内に取り込まれた空気が、吸い口11の吸い口孔112に向かって通気路(図示せず)を流れる際に変化する木製筐体13内の気圧を出力する。
【0040】
振動モータ41は、電源23における電池230からの電力供給を受けて駆動(作動)するモータである。振動モータ41の駆動時には、木製筐体13が振動するように振動モータ41の周波数が決定されている。
【0041】
発光素子43は、例えば、LEDや電灯などの光源である。発光素子43は、例えば木製筐体13に、発光時における光が使用者に視認できる態様で設けられている。例えば、発光素子43は、木製筐体13において、吸い口11とは反対側の側面に設けられていても良く、これによって、使用者は、吸い口11の吸引動作中において発光素子43の発光パターンを容易に視認することができる。発光素子43は、吸引器1の状態に応じて異なる発光パターンで発光されても良い。なお、発光素子43を作動させるための電力は、電源23から供給される。
【0042】
精神性発汗量測定用電極26,27は、電源23から電力供給を受けて微弱な発汗量測定用電流を使用者の指の皮膚に流した際の抵抗値に基づいて、皮膚コンダクタンスに対応する応答値を出力する。本実施形態に係る吸引器1において、例えば、使用者が木製筐体13を把持した際に人差し指と中指が触れる予め定められた2箇所(すなわち、人差し指と中指が置かれるそれぞれの位置)に一組の精神性発汗量測定用電極26,27が配置されている。これにより、吸引器1を使用者が把持している間、精神性発汗量測定用電極26,27を使用者の指の皮膚表面に触れた状態に維持することができる。但し、一組の精神性発汗量測定用電極26,27の配置位置は上記の位置に限られない。例えば、使用者が木製筐体13を把持した際に当該木製筐体13を把持する使用者の掌の異なる2つの領
域(部位)が触れる予め定められた2箇所に配置されていても良い。例えば、一組の精神性発汗量測定用電極26,27が、使用者の掌の掌底と母指球に対応する2箇所に配置されていても良いし、使用者の掌の掌底と、何れかの指に対応する2箇所に配置されていても良いし、掌の母指球と何れかの指に対応する2箇所に配置されていても良い。また、一組の精神性発汗量測定用電極26,27が、使用者の掌の人差し指と中指の組み合わせと異なる2本の指に対応する2箇所に配置されていても良い。
【0043】
図7に示すように、制御部30は、気圧取得部31、電源スイッチ部32、発汗量測定部33、モータ制御部34、記憶部35、設定部36、発光制御部37、判定部38、計時部39等を有している。記憶部35は、例えば不揮発性メモリであり、制御部30のプロセッサが実行するための各種プログラムが記憶されている。制御部30のプロセッサが記憶部35に記憶されている各種プログラムを実行することで、ストレス度合い分析制御が実施される。ストレス度合い分析制御は、吸引器1を使用する使用者の精神性発汗量を測定することで、使用者のストレス度合いを分析するための制御である。
【0044】
気圧取得部31は、気圧センサ40の出力信号に基づいて木製筐体13内の気圧を取得する。例えば、気圧取得部31は、取得した木製筐体13内の気圧に基づいて(すなわち、負圧を検出することで)、使用者による吸い口11の吸引動作(パフ動作)を検出する。例えば、気圧取得部31は、使用者が吸い口11を吸引している吸引状態(吸引区間)と、吸い口11を吸引していない非吸引状態(非吸引区間)を検出する。これによって、気圧取得部31は、吸い口11を吸引する吸引動作の回数を特定できる。気圧センサ40を用いた吸引動作(パフ動作)の開始や、吸引動作の終了を検出する具体的な手法自体は公知であり、ここでの詳しい説明は割愛する。
【0045】
計時部39は、例えば使用者による吸引(パフ)動作の終了からの経過時間を計時したり、後述するメイン処理やフィードバック処理が開始されてからの経過時間を計時する計時機能を有している。
【0046】
電源スイッチ部32は、吸引器1の電源が投入される場合にオン状態に切り替わり、吸引器1の電源が切断される場合にオフ状態に切り替わる。電源スイッチ部32は、計時部39におけるタイマーの満了、例えば気圧取得部31によって直近の吸引動作が検出されてから次回の吸引動作が検出されることなく所定時間が経過した場合に、オン状態からオフ状態に切り替わっても良い。また、電源スイッチ部32がオフ状態にあるときに、例えば気圧取得部31が使用者による初回の吸引動作の開始を検出した場合に、電源スイッチ部32がオフ状態からオン状態に切り替わっても良い。
【0047】
制御部30の発汗量測定部33は、精神性発汗量測定用電極26,27と接続されており、精神性発汗量測定用電極26,27から出力される皮膚コンダクタンスに対応する応答値に基づいて使用者の精神性発汗量を測定する。
【0048】
制御部30の設定部36は、後述するストレス度合い分析制御に関連する各パラメータに関する基準値、閾値等の設定、記憶部35への記憶、および更新(リセット)を行う。更に、設定部36は、電源スイッチ部32がオン状態のときに使用者の吸引(パフ)回数をカウントしたカウント値に関しても、記憶部35への記憶、更新(リセット)等を行う。
【0049】
また、モータ制御部34は、振動モータ41の駆動制御を行い、木製筐体13を振動させることで、使用者に種々の情報を通知する。また、発光制御部37は、発光素子43の発光制御を行い、使用者に種々の情報を通知する。更に、判定部38は、後述するストレス度合い分析制御において、各種の判定処理を行う。
【0050】
≪制御内容≫
次に、実施形態1に係る吸引器1における制御部30が実行するストレス度合い分析制御について説明する。図8は、実施形態1において制御部30が実行するパワーオン処理ルーチンを示すフローチャートである。図9は、実施形態1におけるパワーオン処理ルーチンの終了後、制御部30が実行するメイン処理ルーチンを示すフローチャートである。図10は、実施形態1におけるメイン処理ルーチンの終了後、制御部30が実行するフィードバック処理ルーチンを示すフローチャートである。図8図10に示す各種処理ルーチンは、制御部30のプロセッサが記憶部35に記憶されている各種プログラムを実行することで実現することができる。
【0051】
また、図11は、吸引器1の制御部30がストレス度合い分析制御を実行した際における精神性発汗量Qsの時間推移を概念的に示した図である。図11は、横軸に時間Tを示し、縦軸に精神性発汗量Qsを示す。図11に示すように、時間T0~T1の区間に対応するパワーオン処理区間においてパワーオン処理が実行される。また、時間T1~T2の区間に対応するメイン処理区間においてメイン処理が実行され、時間T2~T3の区間に対応するフィードバック処理区間においてフィードバック処理が実行される。
【0052】
〔パワーオン処理ルーチン〕
次に、図8を参照して、パワーオン処理の具体的内容について説明する。パワーオン処理は、電源スイッチ部32がオフ状態からオン状態に切り替わったことを契機として制御部30が実行を開始する制御フローである。上記のように、電源スイッチ部32がオフ状態にあるときに、気圧取得部31が使用者による初回の吸引(パフ)動作の開始を検出した場合に、電源スイッチ部32がオフ状態からオン状態に切り替わる。
【0053】
図11に示す時間T0において電源スイッチ部32がオフ状態からオン状態に切り替わることで、パワーオン処理が開始されると、ステップS101において、制御部30の設定部36は、記憶部35に記憶されている前回設定情報を初期化(リセット)する初期化処理を行う。ここでいう前回設定情報は、吸引器1が前回起動された際に(オフ状態からオン状態に切り替わった際に)ストレス度合い分析制御を実行した際に記憶部35に記憶させておいた吸引回数に関する吸引回数データ、気圧基準値に関する気圧基準値データ、初期基準発汗量Qsbに関する初期基準発汗量データ、判定用発汗量Qsjに関する判定用発汗量データ等をリセット(削除)する。気圧基準値データ、初期基準発汗量データ、判定用発汗量データについては後述する。
【0054】
次に、ステップS102、S103において、今回のストレス度合い分析制御に関する気圧基準値データ、初期基準発汗量データを制御部30の設定部36が取得し、記憶部35に記憶させる。具体的には、ステップS102において、制御部30の気圧取得部31が、気圧センサ40の出力信号に基づいて木製筐体13内の気圧データを取得する。本ステップでは、使用者が吸い口11を吸引していない非吸引状態(非吸引区間)のときに、例えば、所定のデータ取得期間(例えば、3秒間)に亘って、所定の周期(例えば、100ms)毎に取得した気圧データを平均処理して得られた平均値を気圧基準値に設定する。設定部36は、本ステップにおいて設定した気圧基準値に関する気圧基準値データを、記憶部35に記憶させる。なお、上記のように取得される気圧基準値は、非吸引状態(非吸引区間)における木製筐体13内の気圧データであるため、概ね大気圧に一致する。
【0055】
次に、ステップS103において、制御部30の発汗量測定部33は、所定のデータ取得期間(例えば、3秒間)に亘って、所定の周期(例えば、100ms)毎に使用者の精神性発汗量を測定する。精神性発汗量の測定は、発汗量測定部33が電源23に指令を出し、精神性発汗量測定用電極26,27に対して電源23から電力を供給させる。上記の
ように、精神性発汗量測定用電極26,27は、吸引器1を把持する使用者の指(例えば、人差し指と中指)が精神性発汗量測定用電極26,27に触れるような位置に配置されている。発汗量測定部33は、精神性発汗量測定用電極26,27から吸引器1を把持する使用者の指の皮膚に微弱な発汗量測定用電流を流し、精神性発汗量測定用電極26,27から出力される皮膚コンダクタンスに対応する応答値に基づいて使用者の精神性発汗量を測定することができる。
【0056】
制御部30の発汗量測定部33は、上記のように所定のデータ取得期間(例えば、3秒間)に亘って所定の周期(例えば、100ms)毎に取得した精神性発汗量に関する複数の精神性発汗量データを平均処理して得られた平均値を初期基準発汗量Qsbとして取得する。そして、制御部30の設定部36は、初期基準発汗量Qsbに関する初期基準発汗量データを、記憶部35に記憶させる。なお、本ステップで取得する初期基準発汗量Qsbは、ストレス度合い分析制御の開始時において使用者が吸い口11を吸引していない非吸引状態(非吸引区間)のときにおける使用者の状態を反映した精神性発汗量の基準値である。なお、ステップS103の処理と、上述したステップS102の処理は、同時に行っても良いし、順序を入れ替えて実行しても良い。
【0057】
次に、ステップS104においては、使用者にストレス度合い分析制御の開始を通知(報知)する開始通知が行われる。具体的には、制御部30のモータ制御部34が、振動モータ41に対して電源23から電力を供給させ、振動モータ41を作動(駆動)させる。なお、振動モータ41を駆動することで木製筐体13を振動させ、その振動を使用者に感知させることで、ストレス度合い分析制御の開始を使用者に知らせることができる。また、木製筐体13の振動による通知に代え、あるいは併用して、発光素子43の発光によって開始通知が行われても良い。この場合、発光制御部37が、発光素子43に対して電源23から電力を供給させ、所定の発光パターンで発光素子43を発光させる。
【0058】
振動、あるいは発光による開始通知を感知することで、吸引器1側の準備が完了したことを把握し、ストレスを解消するための吸い口11の吸引動作(深呼吸動作)に移行するタイミングを容易に把握することができる。なお、本ステップにおいて使用者に通知される開始通知は、使用者に初期基準発汗量Qsbの取得が完了したことを通知(報知)するための通知としても利用できる。
【0059】
また、上記開始通知において、振動モータ41を振動させる際の振動パターンは、適宜変更することができる。例えば、振動モータ41を振動させる際、振動モータ41を駆動する状態と、駆動を休止させた状態とを交互に繰り返しても良い。特に限定されるものではないが、例えば振動モータ41の駆動時間を200ms、休止時間を400msとし、駆動および休止を複数セット(例えば、2回)繰り返しても良い。また、木製筐体13の振動によるバイブレーション通知と、発光素子43の発光による発光通知を併用する場合、双方を同時に行っても良いし、時間的にずらして行っても良い。時間的にずらす場合、バイブレーション通知と発光通知を行う順序は適宜入れ替えることができる。制御部30は、ステップS104の処理が終了すると、パワーオン処理を一旦終了し、図9に示すメイン処理ルーチンに係る処理を開始する。
【0060】
図11に示す時間T1において、パワーオン処理が終了されると共にメイン処理が開始されると、精神性発汗量Qsは、時間T1から時間T2に亘って徐々に減少する。これは、メイン処理区間においては後述するように使用者が吸引器1を吸引する吸引動作が繰り返し行われることに伴い、実質的に使用者が深呼吸を繰り返すことになり、使用者のストレス度合いを反映する精神性発汗量Qsの低下に繋がることに拠るものである。なお、交感神経系が緊張しているときは皮膚表面からの精神性発汗量が増加することが知られている。また、深呼吸を行うことで心身の緊張状態を緩和すると副交感神経が優位になるため
、精神性発汗量も少なくなる。精神性発汗量が少なくなったことが、使用者のストレスの解消、軽減につながっていると本発明においては判断するものとする。すわなち、本実施形態におけるストレス度合い分析制御では、ストレスの増加・軽減が交感神経系の緊張・緩和と相関があるものと推定し、交感神経系の緊張・緩和と相関が認められる精神性発汗量に基づいて使用者のストレス度合いを分析する。なお、本実施形態に係る吸引器1によれば、木製筐体13を有し、当該木製筐体13が香気成分を含む香気発生源として形成されている。そのため、使用者が吸引器1の吸引動作を行うだけでもストレスが低減するが、吸引器1の吸引時に木製筐体13から発せられる香気成分を使用者は吸引することができ、更なるリラックス感を付与することができる。
【0061】
図11において、メイン処理が開始される時間T1において、精神性発汗量Qsは、パワーオン処理において設定した初期基準発汗量Qsbである。そして、図11に示す例では、時間T2において所定の低ストレス発汗量Qsb2まで精神性発汗量Qsが低下したことを契機に使用者に微小なストレスを付与することで使用者を覚醒させるための覚醒処理を行い、メイン処理を終了すると共にフィードバック処理が開始される。
【0062】
低ストレス発汗量Qsb2は、初期基準発汗量Qsbから所定の第1基準発汗低下量ΔQsd1だけ低い値に設定されている。ここで、低ストレス発汗量Qsb2は、精神性発汗量Qsが初期基準発汗量Qsbから第1基準発汗低下量ΔQsd1だけ低下すれば、使用者の交感神経系の緊張が緩和され、ストレスが十分に解消されたと判断できる閾値として設定されている。第1基準発汗低下量ΔQsd1は、固定値として設定されても良いし、使用者によって設定の変更が可能であっても良い。
【0063】
図11における時間T2において覚醒処理が行われると、それを境に精神性発汗量Qsは徐々に上昇する。覚醒処理の詳細については後述するが、覚醒処理においては使用者の皮膚に刺激を付与することで使用者に僅かなストレスを敢えて与え、使用者の覚醒レベルを若干上昇させる。図11において、時間T2における精神性発汗量Qsは低ストレス発汗量Qsb2に対応しており、時間T2において覚醒処理に係る刺激が使用者に付与されることで精神性発汗量Qsが時間T2からT3にかけて徐々に上昇する。そして、時間T3において所定の覚醒完了発汗量Qsb3に至った時点でフィードバック処理が終了する。
【0064】
覚醒完了発汗量Qsb3は、低ストレス発汗量Qsb2よりも所定の第1基準発汗上昇量ΔQsu1だけ大きな値に設定されている。第1基準発汗上昇量ΔQsu1は、第1基準発汗低下量ΔQsd1に比べて小さな値に設定されている。第1基準発汗上昇量ΔQsu1は、精神性発汗量Qsが低ストレス発汗量Qsb2から第1基準発汗上昇量ΔQsu1だけ上昇すれば、使用者が低ストレス状態を維持しつつ、且つ意識も十分に覚醒した状態になると判断できる閾値として設定することができる。第1基準発汗上昇量ΔQsu1は、固定値として設定されても良いし、使用者によって設定の変更が可能であっても良い。
【0065】
〔メイン処理ルーチン〕
次に、図9を参照して、制御部30が実行するメイン処理の具体的内容について説明する。図9に示すメイン処理ルーチンが開始されると、ステップS201において、気圧取得部31が気圧センサ40から出力される気圧データを取得する。
【0066】
次に、ステップS202において、判定部38は、ステップS201において取得した気圧データに基づいて、現在、使用者による吸い口11の吸引動作中か否かを判定する。本ステップにおいて、判定部38が吸引状態であると判定した場合、記憶部35に記憶されている吸引回数データを更新する。記憶部35に記憶されている吸引回数データは、記
憶部35に記憶されている吸引回数データは、パワーオン処理のステップS101において一旦リセットされているため、本ステップでは、今回のメイン処理ルーチンが開始されてからの吸引回数を積算した値が記憶部35に記憶される。そして、記憶部35における吸引回数データを更新した後、ステップS203に進む。なお、ステップS202において、判定部38が非吸引状態と判定した場合にはステップS209に進む。ステップS209の処理内容については後述する。
【0067】
次に、ステップS203において、発汗量測定部33は、使用者の精神性発汗量Qsを測定する。すなわち、本ステップでは、吸引動作中の使用者の精神性発汗量Qsが測定される。本ステップにおいては、図8に示すパワーオン処理のステップS103と同様、吸引器1を把持する使用者の指の皮膚に精神性発汗量測定用電極26,27から微弱な発汗量測定用電流を流すことで皮膚コンダクタンスを測定し、皮膚コンダクタンスの測定値に基づいて精神性発汗量Qsを取得する。なお、本ステップにおいて、吸引状態における使用者の精神性発汗量Qsを測定するようにしたので、体動による見掛け上の精神性発汗量の変化(ノイズ)である体動アーティファクトを低減することができる。
【0068】
なお、上記ステップS202、S203では、使用者による吸引動作中であることが検出されたことを契機に精神性発汗量Qsの測定を行っているが、吸引動作を一定時間以上継続していることが検出されて初めて精神性発汗量Qsの測定を行うようにしても良い。この場合、判定部38は、使用者による吸引動作の継続時間を計時部39から取得し、吸引動作の継続時間が所定の閾値を超えたと判定した場合に、発汗量測定部33が精神性発汗量Qsの測定を行うようにしても良い。
【0069】
次に、ステップS204へと進み、判定部38は、直近に取得した精神性発汗量の測定値(以下、「最新測定値」という)と、記憶部35に記憶されている判定用発汗量Qsjとの差である発汗変化量ΔQsを算出する。判定用発汗量Qsjは、後述する判定ステップにおいて低ストレス発汗量Qsb2との大小を比較する際に用いられる判定用の発汗量であり、吸引器1を繰り返し吸引することで徐々に精神性発汗量が低下する使用者の状態を反映する発汗量である。
【0070】
判定部38は、算出した発汗変化量ΔQsが所定の閾値である許容変化量ΔQsa(例えば、10[mg/cm2/min])未満であるか否かを判定する。ここで、発汗変化量ΔQsが許容変化量ΔQsa未満であった場合には、ステップS205に進み、設定部36は、最新測定値を用いて記憶部35に記憶されている判定用発汗量Qsjに関する判定用発汗量データを更新する。ステップS205では、最新測定値が判定用発汗量Qsjとして採用され、記憶部35に記憶される。ステップS205の処理が終了すると、ステップS206に進む。
【0071】
なお、メイン処理ルーチンが開始されてから最初に精神性発汗量を測定する初回測定時においては、記憶部35に判定用発汗量Qsjに関する判定用発汗量データがリセットされた状態であるため、その場合には、ステップS204の処理を省略してステップS205へと進み、精神性発汗量に関する初回の測定値を判定用発汗量Qsjとして記憶部35に記憶する。ステップS205の処理が終了すると、ステップS206に進む。
【0072】
また、ステップS204において、発汗変化量ΔQsが許容変化量ΔQsa以上であった場合には、記憶部35に記憶されている判定用発汗量Qsjに関する判定用発汗量データを更新せずに、そのままステップS206に進む。本実施形態では、発汗変化量ΔQsが許容変化量ΔQsa以上である場合、すなわち、直近に取得した最新測定値が、当該最新測定値の前に取得した測定値に対して過度に変化しているような場合には、最新測定値に体動アーティファクトの及ぼす影響が大きいと判断され、最新測定値を判定用発汗量Q
sjとして採用しない。
【0073】
次に、ステップS206において、判定部38は、記憶部35に記憶されている判定用発汗量Qsjが、図11で説明した低ストレス発汗量Qsb2未満であるか否かを判定する。なお、低ストレス発汗量Qsb2は、パワーオン処理のステップS103で設定した初期基準発汗量Qsbよりも第1基準発汗低下量ΔQsd1だけ低い値として設定される。ステップS206において、判定用発汗量Qsjが低ストレス発汗量Qsb2未満であると判定された場合にはステップS207に進み、判定用発汗量Qsjが低ストレス発汗量Qsb2以上であると判定された場合にはステップS209に進む。
【0074】
ステップS207においては、モータ制御部34が、振動モータ41に対して電源23から電力を供給させ、振動モータ41を作動(駆動)させることで覚醒処理を実行する。覚醒処理は、振動モータ41の駆動に起因する木製筐体13の振動刺激(微小なストレス)を使用者に付与することで、使用者の覚醒レベルを上昇させる処理である。覚醒処理における振動モータ41の駆動パターンは特に限定されないが、例えば1000msに亘って振動モータ41を駆動することで、使用者の覚醒レベルを上昇させても良い。ステップS207の覚醒処理が終了すると、ステップS208に進む。
【0075】
ステップS208においては、発光制御部37が、発光素子43に対して電源23から電力を供給させる制御を行い、所定の発光パターンで発光素子43を発光させることで、ストレス解消完了通知を使用者に通知(報知)する。このストレス解消完了通知は、使用者の交感神経系の緊張が緩和され、ストレスが十分に解消された状態に至ったことを使用者に知らせるための通知である。本ステップにおける発光素子43の発光パターンは、上述したパワーオン処理のステップS105において使用者に開始通知を通知する場合と異なる発光パターンに設定されても良い。ステップS208の処理が終了すると、メイン処理を一旦終了し、図10に示すフィードバック処理ルーチンに係る処理を開始する。
【0076】
次に、ステップS209の処理について説明する。ステップS209において、判定部38は、メイン処理が開始されてからの経過時間Tp1を計時部39から取得する。そして、判定部38は、取得した経過時間Tp1が所定の第1タイムアウト時間Tsh1を超えたか否かを判定する。第1タイムアウト時間Tsh1は、固定値(一例として、180秒程度)として設定しておいても良いし、使用者によって設定の変更が可能であっても良い。
【0077】
ステップS209において、経過時間Tp1が第1タイムアウト時間Tsh1を経過していないと判定された場合には、ステップS201の処理に戻り、ステップS201~S206の処理が繰り返される。一方、ステップS209において、経過時間Tp1が第1タイムアウト時間Tsh1を経過したと判定された場合にはステップS210に進み、ステップS207と同様、覚醒処理を行う。そして、ステップS210の覚醒処理が終了すると、ステップS211に進む。
【0078】
ステップS211においては、発光制御部37が発光素子43を所定の発光パターンで発光させることで、タイムアウトした旨のタイムアウト通知を使用者に通知(報知)する。本ステップにおける発光素子43の発光パターンは、上述したパワーオン処理時における開始通知や、ストレス解消完了通知とは異なる発光パターンに設定されても良い。ステップS211の通知処理が終了すると、メイン処理を一旦終了し、図10に示すフィードバック処理ルーチンに係る処理を開始する。
【0079】
〔フィードバック処理〕
制御部30がフィードバック処理ルーチンを開始すると、まずステップS301におい
て、発汗量測定部33は、使用者の精神性発汗量Qsを測定する。精神性発汗量Qsの測定は、メイン処理のステップS203での処理内容と同様である。次に、ステップS302へと進み、判定部38は、ステップS301で測定した精神性発汗量Qsが、覚醒完了発汗量Qsb3を超えているか否かを判定する。
【0080】
ここで、覚醒完了発汗量Qsb3の決定手法について説明する。本実施形態において、覚醒完了発汗量Qsb3は、上述したメイン処理ルーチンにおいて精神性発汗量Qsが低ストレス発汗量Qsb2まで低下したか、或いは、タイムアウトによってメイン処理ルーチンを終了したかの違いに応じて、それぞれ異なる値に設定される。
【0081】
具体的には、メイン処理ルーチンにおいて、精神性発汗量Qsが低ストレス発汗量Qsb2まで低下したことを契機に覚醒処理が行われた場合、覚醒完了発汗量Qsb3は、低ストレス発汗量Qsb2よりも所定の第1基準発汗上昇量ΔQsu1だけ大きな値として設定される。一方、メイン処理ルーチンでタイムアウトに至り、精神性発汗量Qsが低ストレス発汗量Qsb2まで減少していない状態で覚醒処理が行われた場合、覚醒完了発汗量Qsb3は、メイン処理ルーチンの終了時点で記憶部35に記憶されている判定用発汗量Qsjを基準として、当該判定用発汗量Qsjよりも所定の第2基準発汗上昇量ΔQsu2だけ高い値として設定される。ここで、第2基準発汗上昇量ΔQsu2は、第1基準発汗上昇量ΔQsu1に比べて小さな値に設定されている。
【0082】
ステップS302において、精神性発汗量Qsが覚醒完了発汗量Qsb3以下であると判定された場合にはステップS303に進み、精神性発汗量Qsが覚醒完了発汗量Qsb3を超えていると判定された場合にはステップS305に進む。
【0083】
ステップS303においては、判定部38は、フィードバック処理が開始されてからの経過時間Tp2を計時部39から取得する。そして、判定部38は、取得した経過時間Tp2が所定の第2タイムアウト時間Tsh2を超えたか否かを判定する。第2タイムアウト時間Tsh2は、固定値(一例として、30秒程度)として設定しておいても良いし、使用者によって設定の変更が可能であっても良い。
【0084】
ステップS303において、経過時間Tp2が第2タイムアウト時間Tsh2を経過していないと判定された場合には、ステップS301の処理に戻り、ステップS301~S302の処理が繰り返される。一方、ステップS303において、経過時間Tp2が第2タイムアウト時間Tsh2を超えたと判定された場合にはステップS304に進む。
【0085】
ステップS304においては、使用者に対してタイムアウトした旨を知らせるタイムアウト通知が通知される。タイムアウト通知は、モータ制御部34の駆動によって木製筐体13を振動させるバイブレーション通知であっても良いし、これに代え、或いは併用される発光素子43の発光による発光通知であっても良い。そして、ステップS304の処理が終了すると、ステップS306に進む。
【0086】
ステップS305においては、使用者に対して完了通知が通知される。完了通知は、使用者が低ストレス状態を維持しつつ、意識も十分に覚醒した状態であることを使用者に知らせるための通知である。ステップS305の処理が終了すると、ステップS306に進む。そして、ステップS306においては、電源スイッチ部32がオン状態からオフ状態に切り替わり、フィードバック処理が終了すると共に吸引器1の電源が切断される。
【0087】
以上のように、本実施形態に係る吸引器1によれば、制御部30がストレス度合い分析制御を行うことで、使用者の精神性発汗量に関する精神性発汗量情報に基づいて使用者のストレス度合いを分析し、その分析結果を使用者に通知するため、使用者は吸引器1の吸
引動作を繰り返すことによってストレスが十分に解消されたかどうかを容易に把握することができる。
【0088】
そして、上述したメイン処理ルーチンにおいては、メイン処理ルーチンが開始してからタイムアウトするまでは、制御部30によって使用者の精神性発汗量Qsを繰り返し(例えば、100ms毎)測定し、精神性発汗量Qsが低ストレス発汗量Qsb2まで低下し、ストレスが十分に解消された状態となったか否かを精度良く判別することができる。そして、精神性発汗量Qsが低ストレス発汗量Qsb2まで低下したことが確認された際には、敢えて使用者に僅かな刺激(ストレス)を付与し、覚醒レベルを上昇させる覚醒処理を実行することで、使用者の意識がぼんやりした状態ではなく、意識がリフレッシュした状態に使用者を覚醒させることができる。但し、本実施形態におけるストレス度合い分析制御において覚醒処理は必須ではなく、適宜省略しても良い。例えば、図9に示すメイン処理ルーチンのステップS206において、記憶部35に記憶されている判定用発汗量Qsj(使用者の精神性発汗量Qs)が低ストレス発汗量Qsb2未満であると判定された場合に、覚醒処理を行うことなくステップS208に進み、ストレス解消完了通知を使用者に通知しても良い。また、メイン処理ルーチンのステップS209においてタイムアウトした場合においても、覚醒処理を行うことなくステップS211に進み、タイムアウト通知を使用者に通知しても良い。
【0089】
また、本実施形態における覚醒処理においては、振動モータ41の駆動によって木製筐体13を振動させることによる振動刺激を使用者に付与するようにしたが、使用者に微小なストレスを付与することができれば他の方法を採用しても構わない。例えば、発光素子43を発光させることで使用者に刺激を付与し、覚醒させても良い。また、吸引器1は音声を出力する音声出力装置を備えていても良く、その場合、音声による刺激を付与することで使用者を覚醒させても良い。なお、本実施形態における吸引器1は、発光素子43を備えていなくても良く、上述したストレス度合い分析制御において発光素子43を用いて行った各種の通知は、振動モータ41を駆動させることによる木製筐体13の振動によって代替することができる。
【0090】
また、本実施形態における吸引器1によれば、ストレス度合い分析制御に係るメイン処理ルーチンにおいて、使用者が吸引器1の吸引動作中にのみ、精神性発汗量の測定を行うようにしたので、体動による見掛け上の精神性発汗量の変化である体動アーティファクトの影響を低減し、使用者の精神性発汗量を精度良く把握することができる。但し、本実施形態における吸引器1において、精神性発汗量の測定を非吸引動作中に行うようにしても良い。
【0091】
<実施形態2>
次に、実施形態2に係る吸引器1Aについて説明する。図12は、実施形態2に係る吸引器1Aのブロック図である。実施形態2に係る吸引器1Aにおいて、実施形態1に係る吸引器1と同一の構成要素については同一の符号を付すことで詳しい説明を省略する。図12に示すように、吸引器1Aは、感圧センサ44を備えている。感圧センサ44は、木製筐体13に露出した状態で設けられており、使用者が吸引器1を比較的強く把持した際の圧力を検知する。吸引器1Aの制御部30Aは、感圧センサ44の出力信号を取得する圧力検知部31Aを有する。また、吸引器1Aは、気圧センサ40を備えていない点で実施形態1に係る吸引器1と相違し、その他の構成は実施形態1に係る吸引器1と共通である。
【0092】
本実施形態に係る吸引器1Aにおいては、制御部30Aがストレス度合い分析制御を実行する際、感圧センサ44からの出力信号に基づいて使用者が木製筐体13を把持するグリップ圧を検知した場合に、使用者の精神性発汗量を測定する。
【0093】
図13は、実施形態2に係るパワーオン処理ルーチンを示すフローチャートである。図14は、実施形態2に係るメイン処理ルーチンを示すフローチャートである。以下では、実施形態1の図9図10で説明したパワーオン処理ルーチンおよびメイン処理ルーチンと相違する処理内容を中心に説明する。
【0094】
〔パワーオン処理ルーチン〕
図13に示すパワーオン処理ルーチンでは、図9に示すステップS102の処理内容が省略されている。すなわち、電源スイッチ部32がオフ状態からオン状態に切り替わったことを契機として制御部30Aがパワーオン処理ルーチンを開始すると、ステップS101において記憶部35に記憶されている前回設定情報の初期化処理を行い、続くステップS103において発汗量測定部33が初期基準発汗量Qsbを取得する。そして、続くステップS104において、ストレス度合い分析制御の開始を通知する開始通知を使用者に通知した後、パワーオン処理ルーチンを終了し、図14に示すメイン処理ルーチンを開始する。なお、電源スイッチ部32は、オフ状態にあるときに、感圧センサ44の出力データに基づいて圧力検知部31Aが使用者による木製筐体13のグリップ圧を検出した場合に、オフ状態からオン状態に切り替わる。
【0095】
〔メイン処理〕
メイン処理ルーチンが開始されると、ステップS401において、圧力検知部31Aが感圧センサ44の出力データを取得する。次に、ステップS402において、判定部は、圧力検知部31Aが取得した感圧センサ44の出力データに基づいて、使用者が吸引器1(木製筐体13)を把持しているか否かを判定する。本ステップにおいて、使用者が木製筐体13を把持していると判定された場合、ステップS203に進む。一方、使用者が木製筐体13を把持していないと判定された場合、ステップS209に進む。ステップS203~S211の各処理については、図10で説明したメイン処理ルーチンと同様である。なお、上記ステップS402においては、使用者によって木製筐体13が把持された状態が検出されたことを契機に精神性発汗量Qsの測定を行っているが、使用者による把持状態が一定時間以上継続していることが検出されて初めて精神性発汗量Qsの測定を行っても良い。この場合、判定部38は、使用者による木製筐体13の把持状態の継続時間を計時部39から取得し、把持状態の継続時間が所定の閾値を超えたと判定した場合に、発汗量測定部33が精神性発汗量Qsの測定を行うようにしても良い。なお、実施形態2における吸引器1Aにおいて、メイン処理ルーチンの終了後に実行されるフィードバック処理は、実施形態1で説明したものと同様である。
【0096】
<変形例>
次に、変形例について説明する。図15は、変形例に係る吸引器1Bを説明する図である。図15に示すように、変形例に係る吸引器1Bは、吸い口ユニット10における吸い口受け12に、液体保持用凹部123が設けられている。液体保持用凹部123には、例えばアロマオイルなどの液体香料を滴下することで、これを保持することができる。これによれば、吸引器1Bの吸引時に液体保持用凹部123に保持している液体香料から発せられる香気成分を使用者が吸引することができ、更なるリラックス感を付与することができる。
【0097】
また、吸引器1Bは、木製筐体13内に香味成分を放出する香味発生源(例えば、香料、たばこ源)を収容しておき、使用者が吸引器1Bを吸引する際に、香味発生源から放出される香味成分を木製筐体13の通気路を流れる空気と混合させて、吸い口孔112から口腔内に供給しても良い。その場合、例えば吸引器1Bは、木製筐体13内の収容部に収容される香味発生源(例えば、香料、たばこ源)を加熱し、香味発生源からの香味成分の放出を促進させるための加熱ヒータ(図示せず)を有していても良い。この場合、例えば
吸引器1Bの制御部30は、使用者による吸引(パフ)動作を検出したことを契機に、加熱ヒータによって香味発生源を加熱し、香味成分の放出を促しても良い。このようにすることで、吸引器1Bの吸引時に香味発生源から発せられる香味成分を吸入空気と共に供給し、使用者に更なるリラックス感を付与することができる。
【0098】
なお、上記実施形態において、気圧取得部31、圧力検知部31A、電源スイッチ部32、発汗量測定部33、モータ制御部34、設定部36、発光制御部37、判定部38、計時部39の動作として説明した処理は、コンピュータによって実行することができる。例えば、コンピュータがプロセッサ(CPU)、メモリ、および入出力回路等のハードウェア資源を用いてプログラムを実行することによって、上記の各処理を実行する。具体的には、プロセッサが処理対象のデータをメモリ又は入出力回路等に出力したりすることによって、各処理を実行する。
【0099】
<実施形態3>
次に、実施形態3に係る吸引器1について説明する。図16は、実施形態3に係る吸引器1におけるブロック図である。実施形態3に係る吸引器1のハードウェア構成については、実施形態1に係る吸引器1と同一である。以下では、実施形態3における吸引器1のうち、実施形態1における吸引器1と相違する部分を中心に説明し、同一の要素については同一の参照符号を付すことで詳しい説明を割愛する。実施形態3における吸引器1においても、吸引器1を制御する制御ユニットである制御部30を備えている。制御部30は、例えばプロセッサ、メモリ等を有するマイクロコンピュータであっても良い。
【0100】
制御部30は、図16に示すように、気圧取得部31、電源スイッチ部32、発汗量測定部33、モータ制御部34、設定部36、発光制御部37、判定部38、計時部39、予測部50、処理部51等といった各機能部を有している。また、制御部30は、制御部30のプロセッサが実行するための各種プログラムが記憶された記憶部35を備えている。記憶部35は、例えば不揮発性メモリであり、制御部30が備える主記憶装置又は補助記憶装置であっても良い。なお、上記各機能部は、制御部30が備えるプロセッサ(CPU)が所定のプログラムに従って動作することにより実現される。すなわち、制御部30がプロセッサ(CPU)、メモリ、および入出力回路等のハードウェア資源を用いてプログラムを実行することによって、上記各機能部における各処理を実行する。具体的には、プロセッサが処理対象のデータをメモリ又は入出力回路等に出力したりすることによって、各機能部における各処理を実行する。
【0101】
ここで、記憶部35には、制御部30が実行するストレス度合い分析制御のメイン処理実行時において用いる発汗量最小値予測モデル351、発汗量最大値予測モデル352が格納されている。発汗量最小値予測モデル351、発汗量最大値予測モデル352の詳細については後述する。
【0102】
次に、実施形態3における吸引器1におけるストレス度合い分析制御を説明する。本実施形態におけるストレス度合い分析制御においても、上述の実施形態と同様、制御部30がパワーオン処理、メイン処理などの各処理を行う。
【0103】
図17は、実施形態3に係る吸引器1がストレス度合い分析制御を実行した際の使用者における精神性発汗量Qsの推移を例示した図である。図17の横軸は時間を示し、縦軸は使用者の精神性発汗量Qsを示す。時間Ta~Tbの区間は、パワーオン処理が実行されるパワーオン処理期間(キャリブレーション期間)ΔTkである。
【0104】
パワーオン処理は、実施形態1と同様、電源スイッチ部32がオフ状態からオン状態に切り替わったことを契機として制御部30が実行を開始する。例えば、図17に示す時間
Taにおいて電源スイッチ部32がオフ状態からオン状態に切り替わることでパワーオン処理が開始されると、制御部30の発汗量測定部33は、パワーオン処理期間ΔTkに亘って、所定のサンプリング周期(ここでは、例示的に500ms)毎に使用者の精神性発汗量Qsを測定する。パワーオン処理期間ΔTkは特に限定されないが、図17ではパワーオン処理期間ΔTkを5秒間に設定されている場合を示している。なお、電源スイッチ部32は、電源スイッチ部32がオフ状態にあるときに、気圧取得部31が使用者による初回の吸引(パフ)動作の開始を検出した場合に、電源スイッチ部32がオフ状態からオン状態に切り替わる。
【0105】
使用者の精神性発汗量Qsの測定は、発汗量測定部33が電源23に指令を出し、精神性発汗量測定用電極26,27に対して電源23から電力を供給させる。発汗量測定部33は、精神性発汗量測定用電極26,27から吸引器1を把持する使用者の指の皮膚に微弱な発汗量測定用電流を流し、精神性発汗量測定用電極26,27から出力される皮膚コンダクタンスに対応する出力値に基づいて使用者の精神性発汗量を測定することができる。パワーオン処理時において、所定のサンプリング周期毎に取得した使用者の精神性発汗量は、記憶部35に記憶される。なお、発汗量測定部33は、パワーオン処理が開始されてからの経過時間を計時部39から取得することで、所定のサンプリング周期毎に使用者の精神性発汗量を測定することができる。
【0106】
ここで、図17に示す使用者の精神性発汗量Qsは、精神性発汗量測定用電極26,27が出力する皮膚コンダクタンスに対応する出力値である。図17に示す精神性発汗量Qsの単位はマイクロジーメンス[μS]であり、電気抵抗の逆数に相関している。なお、精神性発汗量測定用電極26,27が出力する出力値[単位:μS]と、皮膚の単位面積当たりにおいて単位時間に発生する汗の水分量[単位:mg/cm2/min]との関係は関数となっており、精神性発汗量測定用電極26,27が出力する出力値から汗の水分量としての発汗量は一義的に求めることができる。従って、本明細書において、「使用者の精神性発汗量」は、[μS]で表す場合と、[mg/cm2/min]で表す場合の何れも実質的に等価なものを指す。
【0107】
ここで、パワーオン処理の開始からパワーオン処理期間ΔTkが経過した時間Tbにおいて、制御部30はパワーオン処理を終了する。その際、制御部30は、記憶部35にアクセスし、パワーオン処理期間ΔTkにおいて取得した使用者の精神性発汗量Qsのうちの最大値を、初期基準発汗量Qs#maxとして記憶部35に記憶させる。更に、制御部30は、使用者に吸引器1の吸引開始を促す吸引開始通知が行われる。例えば、制御部30のモータ制御部34が、振動モータ41に対して電源23から電力を供給させ、振動モータ41を作動(駆動)させる。振動モータ41を駆動することで木製筐体13を振動させ、その振動を使用者に感知させることで、吸引開始通知を使用者に知らせることができる。また、木製筐体13の振動による通知に代え、あるいは併用して、発光素子43の発光によって開始通知が行われても良い。この場合、発光制御部37が、発光素子43に対して電源23から電力を供給させ、所定の発光パターンで発光素子43を発光させる。なお、制御部30は、パワーオン処理においては、使用者が吸い口11を吸引している吸引状態であるか、吸引していない非吸引状態であるかに関わらず、所定のサンプリング周期毎に使用者の精神性発汗量Qsを測定する。
【0108】
ここで、図17に示す時間Tb~Tcの区間は、制御部30が予測用特徴量測定処理を実行する予測用特徴量測定期間ΔTmpである。また、予測用特徴量測定期間ΔTmpの終了時期である時間Tcにおいて、制御部30は、min-max予測処理を行う。そして、図17における時間Tc~Tdの区間に対応する発汗量判定期間ΔTmjにおいて、制御部30は、使用者の精神性発汗量Qsが判定用閾値未満になることで使用者が低ストレス状態となったかどうかを判定する発汗量判定処理を行う。上述の予測用特徴量測定処
理、min-max予測処理、および発汗量判定処理の詳細については後述するが、これらの各処理を含んでメイン処理が構成されている。
【0109】
なお、本実施形態において、予測用特徴量測定期間ΔTmpの長さは特に限定されないが、以下では予測用特徴量測定期間ΔTmpを100秒間に設定する場合を例に説明する。また、発汗量判定処理においては、使用者の精神性発汗量Qsが判定用閾値未満であるか否かを所定のサンプリング周期(ここでは、例示的に500msとする)毎に制御部30の判定部38が判定する。そして、使用者の精神性発汗量Qsが判定用閾値未満となったことが確認されると、使用者における交感神経系の緊張が緩和された低ストレス状態にあると判断し、メイン処理を終了する。
【0110】
また、本実施形態のメイン処理では、発汗量判定処理において使用者の精神性発汗量Qsが判定用閾値以上に維持されていたとしても、メイン処理の開始時(時間Tb)からの経過時間Tが予め定められた所定の第1タイムアウト時間を経過した場合には、タイムアウトとしてメイン処理(発汗量判定処理)を強制的に終了させる。なお、上記の第1タイムアウト時間の長さは特に限定されないが、以下では180秒間とする場合を例に説明する。ここで、パワーオン処理期間ΔTkを5秒間、予測用特徴量測定期間ΔTmpを100秒間、第1タイムアウト時間ΔTtoを185秒間とすると、発汗量判定期間ΔTmjは最大で80秒間となる。なお、本実施形態では、予測用特徴量測定期間ΔTmpは、第1タイムアウト時間ΔTtoよりも短い期間として設定されている。また、メイン処理(予測用特徴量測定処理)が開始される時間Tbから第1タイムアウト時間ΔTtoが経過した時点(第1タイムアウト時期)の時間Tdは、メイン処理が継続される最大(最長)の期間に相当し、以下では「メイン処理継続最大期間ΔTmax」という。
【0111】
次に、制御部30はメイン処理を開始する。図18は、実施形態3に係るメイン処理の処理内容を示す図である。図18に示す各処理は、制御部30のプロセッサが記憶部35に記憶されている各種プログラムを実行することで実現される。本実施形態におけるメイン処理は、ステップS30における予測用特徴量測定処理、ステップS40におけるmin-max予測処理、ステップS50における発汗量判定処理を含む。
【0112】
先ず、ステップS30の予測用特徴量測定処理において、制御部30は上述した予測用特徴量測定期間ΔTmp(100秒間)に亘り、所定のサンプリング周期(ここでは、例示的に500msとする)毎に、使用者の精神性発汗量Qsを測定する。使用者における精神性発汗量Qsの測定については、パワーオン処理時と同様、制御部30の発汗量測定部33が電源23に指令を出し、精神性発汗量測定用電極26,27に対して電源23から電力を供給させ、精神性発汗量測定用電極26,27から出力される出力値を取得することで行われる。発汗量測定部33は、メイン処理(予測用特徴量測定処理)が開始されてからの経過時間Tを計時部39から取得することで、所定のサンプリング周期毎に使用者の精神性発汗量を測定することができる。
【0113】
なお、予測用特徴量測定処理において、判定部38は、サンプリング周期(ここでは、例示的に500msとする)毎に、現在、使用者が吸い口11を吸引動作中か否かを判定し、判定部38が吸引動作中と判定した場合にのみ発汗量測定部33が使用者の精神性発汗量Qsを測定する。ここで、処理部51は、ストレス度合い分析制御において測定した使用者の精神性発汗量Qsの測定値に対して各種の処理を行う機能部である。なお、現在、使用者が吸引動作中か否かの判定については、気圧取得部31による吸引動作(パフ動作)の検出結果に基づいて行うことができる。ここで、処理部51は、発汗量測定部33が測定した使用者の精神性発汗量Qsの測定値を、パワーオン処理時に取得した初期基準発汗量G#maxによって割る演算処理を行うことで「補正済み発汗量測定値G」(G=
Qs/G#max)を算出し、当該算出された補正処理済み発汗量測定値Gを、メイン処
理開始時からの経過時間T(i=0,0.5,1.0,・・・99.5)に対応付けた発汗量測定
データDgを記憶部35に記憶させる。なお、補正済み発汗量測定値G(i=0,0.5,1.0,・・・99.5)を算出する際、使用者の精神性発汗量Qsの測定値の時系列データを
平滑化するために、精神性発汗量Qsの測定値に対して移動平均処理を施し、移動平均処理後の精神性発汗量Qsを初期基準発汗量G#maxによって割る演算処理を行うことで補正済み発汗量測定値Gを求めてもよい。
【0114】
また、上記の添字表記iは、メイン処理開始時からの経過時間を示している。上記のように、ここでの説明では予測用特徴量測定期間ΔTmpを100秒間に設定し、精神性発汗量の測定周期を500msに設定しているため、予測用特徴量測定処理において生成される発汗量測定データDgには、メイン処理開始からの経過時間T(i=0,0.5,1.0
,・・・99.5)に対応する200個の補正済み発汗量測定値G(i=0,0.5,1.0,・
・・99.5)が含まれる。また、発汗量測定データDgに含まれる各補正済み発汗量測定値を配列で表すと、以下のようになる。
Dg=[G0,G0.5,G1.0,・・・G99.5
なお、メイン処理開始時(予測用特徴量測定処理開始時)における補正済み発汗量測定値Gの値は1とする。
【0115】
また、予測用特徴量測定処理の各サンプリング時において、判定部38が非吸引動作中と判定した場合には、発汗量測定部33は使用者の精神性発汗量Qsを測定しない。この場合、処理部51は、前回のサンプリング時における補正済み発汗量測定値Gを、今回のサンプリング時における補正済み発汗量測定値Gとして、発汗量測定データDgに格納する。例えば、メイン処理開始からの経過時間T5.0において非吸引動作中である場合には
、G5.0は、経過時間T4.5に対応するG4.5と同じ値として発汗量測定データDgに格納
される。
【0116】
上記のように、予測用特徴量測定処理時において、吸引動作状態にのみ使用者の精神性発汗量Qsを測定するようにしたので、体動による見掛け上の精神性発汗量の変化(ノイズ)である体動アーティファクトを低減することができる。なお、図17に示すように、メイン処理の予測用特徴量測定処理が行われる予測用特徴量測定期間ΔTmpにおいては、使用者の精神性発汗量Qsが徐々に減少する。これは、使用者による吸引器1の吸引動作が繰り返し行われることに伴い、実質的に使用者が深呼吸を繰り返すことになり、使用者のストレス度合いを反映する精神性発汗量Qsの低下に繋がることに拠るものである。
【0117】
ここで、予測用特徴量測定期間ΔTmp(100秒間)が終了した時点で、制御部30は予測用特徴量測定処理を終了し、図18のステップS40におけるmin-max予測処理を行う。min-max予測処理は、制御部30の予測部50が、予測用特徴量測定処理において記憶部35に記憶した補正済み発汗量測定値G(i=0,0.5,1.0,・・
・99.5)とメイン処理開始時からの経過時間T(i=0,0.5,1.0,・・・99.5)が対
応付けられた発汗量測定データDgと、記憶部35に格納されている発汗量最小値予測モデル351および発汗量最大値予測モデル352に基づいて、メイン処理継続最大期間ΔTmax(180秒間)において使用者の精神性発汗量が最小となる最小値と、当該精神性発汗量が最大となる最大値をそれぞれ予測する処理である。
【0118】
発汗量最小値予測モデル351および発汗量最大値予測モデル352を説明する。発汗量最小値予測モデル351は、予測用特徴量測定期間ΔTmp(100秒間)において経時的に変化する使用者の精神性発汗量の推移と、メイン処理継続最大期間ΔTmax(180秒間)における使用者の精神性発汗量の最小値との関連性を示す予測モデルである。より具体的には、発汗量最小値予測モデル351は、予め複数(多数)の被験者に吸引器1を使用させ、ストレス度合い分析制御(メイン処理)を実行することで得られた、予測
用特徴量測定期間ΔTmpにおける被験者の精神性発汗量の測定値の推移とメイン処理継続最大期間ΔTmaxにおける被験者の精神性発汗量の測定値の最小値を対応付けたデータである複数(多数)の発汗量最小値学習用データを教師データとして用いた機械学習によって、予測用特徴量測定期間ΔTmpにおける使用者の精神性発汗量の推移とメイン処理継続最大期間ΔTmaxにおける使用者の精神性発汗量の最小値との関連性を学習済みの予測モデルである。
【0119】
また、発汗量最大値予測モデル352は、予測用特徴量測定期間ΔTmp(100秒間)において経時的に変化する使用者の精神性発汗量の推移と、メイン処理継続最大期間ΔTmax(180秒間)における使用者の精神性発汗量の最大値との関連性を示す予測モデルである。より具体的には、発汗量最大値予測モデル352は、予め複数(多数)の被験者に吸引器1を使用させ、ストレス度合い分析制御(メイン処理)を実行することで得られた、予測用特徴量測定期間ΔTmpにおける複数(多数)の被験者の精神性発汗量の測定値の推移と前記メイン処理継続最大期間ΔTmaxにおける複数(多数)の被験者の精神性発汗量の最大値を対応付けたデータである複数(多数)の発汗量最大値学習用データを教師データとして用いた機械学習によって、予測用特徴量測定期間ΔTmpにおける使用者の精神性発汗量の推移とメイン処理継続最大期間ΔTmaxにおける使用者の精神性発汗量の最大値との関連性を学習済みの予測モデルである。
【0120】
本実施形態において、発汗量最小値予測モデル351および発汗量最大値予測モデル352は線形モデルとして構築されている。このような線形モデルとしては、例えば、LASSO等を好適に用いることができる。但し、発汗量最小値予測モデル351および発汗量最大値予測モデル352は、LASSOに限定されず、また、非線形モデルを用いても良い。
【0121】
min-max予測処理において、予測部50は、メイン処理開始時から予測用特徴量測定期間ΔTmpに亘って測定した使用者における精神性発汗量の測定値の一例である補正済み発汗量測定値G(i=0,0.5,1.0,・・・99.5)を特徴量として、発汗量最小
値予測モデル351と発汗量最大値予測モデル352にそれぞれ適用することによって、メイン処理継続最大期間ΔTmaxにおける使用者の精神性発汗量の最小値と使用者の精神性発汗量の最大値をそれぞれ予測する。以下、このようにして発汗量最小値予測モデル351を用いた予測によって得られたメイン処理継続最大期間ΔTmaxにおける使用者の精神性発汗量の最小値を、「最小予測値Gpmin」という。また、発汗量最大値予測モデル352を用いた予測によって得られたメイン処理継続最大期間ΔTmaxにおける使用者の精神性発汗量の最大値を、「最大予測値Gpmax」という。
【0122】
発汗量最小値予測モデル351は、以下の(1)式によって最小予測値Gpminを予測する。
Gpmin=a0×G0+a0.5×G0.5+a1.0×G1.0+…+a99.5×G99.5 (1)式
ここで、a(i=0,0.5,1.0,・・・99.5)は、特徴量である補正済み発汗量測定
値G(i=0,0.5,1.0,・・・99.5)に対する重みである。
【0123】
発汗量最大値予測モデル352は、以下の(2)式によって最大予測値Gpmaxを予測する。
Gpmax=b0×G0+b0.5×G0.5+b1.0×G1.0+…+b99.5×G99.5 (2)式
ここで、b(i=0,0.5,1.0,・・・99.5)は、特徴量である補正済み発汗量測定
値G(i=0,0.5,1.0,・・・99.5)に対する重みである。
【0124】
このようにして、学習済みの発汗量最小値予測モデル351および発汗量最大値予測モデル352を用いて予測部50が予測したメイン処理継続最大期間ΔTmaxにおける精
神性発汗量の最小予測値Gpminおよび最大予測値Gpmaxは、記憶部35に記憶される。そして、制御部30は、min-max予測処理の終了後、図18におけるステップS50に進み、発汗量判定処理を実行する。
【0125】
本実施形態において、発汗量判定処理は、上記の通り、予測用特徴量測定期間ΔTmp(メイン処理開始後から100秒間)が経過した時間Tc以降、最大で第1タイムアウト時期が到来する時間Td(メイン処理開始後から180秒経過後)までの期間に亘って行われる。つまり、発汗量判定処理は、メイン処理が開始されてから100秒経過後に開始され、メイン処理が開始されてから最大で180秒経過するまで行われる。
【0126】
発汗量判定処理における具体的な処理内容について説明すると、発汗量判定処理に際して、発汗量測定部33は所定のサンプリング周期毎に使用者の精神性発汗量Qsを測定する。ここでは、発汗量判定処理において使用者の精神性発汗量Qsを測定するサンプリング周期を500msとする場合を例に説明するが、上記サンプリング周期は特に限定されない。なお、発汗量測定部33は、メイン処理が開始されてからの経過時間T(i=0
,0.5,1.0,・・・99.5)を計時部39から取得することで、所定のサンプリング周期(ここでは、500ms)毎に使用者の精神性発汗量を測定することができる。
【0127】
発汗量判定処理において、発汗量測定部33が測定した使用者の精神性発汗量Qsの測定値は、処理部51によって補正処理される。具体的には、処理部51は、パワーオン処理時に取得した初期基準発汗量G#maxによって精神性発汗量Qsの測定値を割る補正処理を行うことで補正済み発汗量測定値Gを算出する。更に、処理部51は、算出した補正済み発汗量測定値Gを、記憶部35に記憶されている最小予測値Gpminおよび最大予測値Gpmaxを用いて、スケーリング処理を行う。
【0128】
ここで、処理部51は、記憶部35に記憶されている最小予測値Gpminを所定の第1の値とし、最大予測値Gpmaxを第2の値としてmin-maxスケーリング処理を行う。ここで、第2の値とは、第1の値よりも大きな値として設定されている。ここでは、第1の値を0、第2の値を1とする場合を例に説明する。
【0129】
処理部51は、min-maxスケーリング処理を行う際、以下の(3)式に、補正済み発汗量測定値G(i=100,100.5,101,・・・180)を代入することで、min-maxスケーリング処理後のスケーリング済み発汗量測定値Gt(i=100,100.5,101
,・・・180)を算出する。
Gt=(G-Gpmin)/(Gpmax-Gpmin) (3)式
【0130】
処理部51が算出したスケーリング済み発汗量測定値Gtは、設定部36によって設定される判定用閾値と対比され、当該スケーリング済み発汗量測定値Gtが判定用閾値未満である場合に、使用者の状態が低ストレス状態に移行したと判断される。ここで、設定部36は、判定用閾値を、第1の値(最小予測値Gpmin)以上で且つ第2の値(最大予測値Gpmax)以下の範囲に設定する。上記の通り、本実施形態においては、第1の値(最小予測値Gpmin)を0、第2の値(最大予測値Gpmax)を1として、発汗量判定期間ΔTmjにおいて測定した使用者の精神性発汗量の測定値(具体的には、補正済み発汗量測定値G)に対してスケーリング処理を行う。そのため、設定部36は、判定用閾値を、0以上1以下の値に設定する。
【0131】
発汗量判定処理において、判定部38は、発汗量判定期間ΔTmjにおける所定のサンプリング周期(ここでの例では、500ms)毎に取得されるスケーリング済み発汗量測定値Gtを、その都度、判定用閾値と対比し、スケーリング済み発汗量測定値Gtが判定用閾値未満であるか否かを判定する。そして、スケーリング済み発汗量測定値Gt
が判定用閾値未満になったことが確認された時点でメイン処理を終了すると共に、ストレス解消完了通知を使用者に通知(報知)する。
【0132】
一方、発汗量判定処理において、スケーリング済み発汗量測定値Gtが判定用閾値まで低下していなくても、メイン処理の開始からの経過時間が予め設定される第1タイムアウト時間ΔTtoを経過した場合には、タイムアウトとして制御部30はメイン処理を強制的に終了させる。具体的には、判定部38は、メイン処理が開始されてからの経過時間を計時部39から取得する。そして、判定部38は、取得した経過時間が所定の第1タイムアウト時間ΔTtoを超えたか否かを判定する。第1タイムアウト時間ΔTtoは、本制御例では予め定められた固定の時間(180秒間)としているが、第1タイムアウト時間ΔTtoの長さは使用者によって設定の変更が可能であっても良い。
【0133】
また、上記のストレス解消完了通知は、使用者の交感神経系の緊張が緩和され、ストレスが十分に解消された状態に至ったことを使用者に知らせるための通知である。ストレス解消完了通知は、実施形態1と同様、発光制御部37が、発光素子43に対して電源23から電力を供給させる制御を行い、所定の発光パターンで発光素子43を発光させることで使用者に通知しても良い。
【0134】
ここで、図19は、実施形態3に係るメイン処理における発汗量判定処理の処理内容を示すフローチャートである。図19に示すステップS501において、発汗量測定部33は、現在、使用者の精神性発汗量Qsを測定する測定タイミングかどうかを判定する。発汗量測定部33は、メイン処理(予測用特徴量測定処理)が開始されてからの経過時間を計時部39から取得することで、所定のサンプリング周期毎に使用者の精神性発汗量を測定することができる。ステップS501において、測定タイミングであると判定された場合、ステップS502に進み、測定タイミングではないと判定された場合には、ステップS501に戻る。
【0135】
ステップS502において、判定部38は、気圧取得部31による吸引動作(パフ動作)の検出結果に基づいて、現在、使用者が吸引動作中であるか否かを判定する。本ステップにおいて、現在、使用者が吸引動作中であると判定された場合、ステップS503に進み、吸引動作中でないと判定された場合、ステップS501に戻る。
【0136】
ステップS503において、発汗量測定部33は使用者の精神性発汗量Qsを測定する。次に、ステップS504において、処理部51は、発汗量測定部33が測定した使用者の精神性発汗量Qsの測定値を初期基準発汗量G#maxによって割ることで補正済み発汗量測定値Gを算出する。ここで、補正済み発汗量測定値Gを算出する際、使用者の精神性発汗量Qsの測定値の時系列データを平滑化するために、精神性発汗量Qsの測定値に対して移動平均処理を施し、移動平均処理後の精神性発汗量Qsを初期基準発汗量G#maxによって割る演算処理を行うことで補正済み発汗量測定値Gを求めてもよい。
【0137】
次に、ステップS505において、処理部51は、記憶部35に記憶されている最小予測値Gpminを所定の第1の値とし、最大予測値Gpmaxを第2の値として補正済み発汗量測定値Gに対するmin-maxスケーリング処理を行い、スケーリング済み発汗量測定値Gtを算出する。スケーリング済み発汗量測定値Gtは、上記(3)式に基づいて算出することができる。
【0138】
次に、ステップS506において、判定部38は、スケーリング済み発汗量測定値Gtが判定用閾値未満であるか否かを判定する。ステップS506において、スケーリング済み発汗量測定値Gtが判定用閾値未満であると判定された場合、ステップS507に進み、スケーリング済み発汗量測定値Gtが判定用閾値以上であると判定された場合には、ス
テップS509に進む。
【0139】
ステップS507においては、発光制御部37が、ストレス解消完了通知を使用者に通知(報知)する。例えば、発光制御部37は、発光素子43に対して電源23から電力を供給させる制御を行い、所定の発光パターンで発光素子43を発光させることで使用者にストレス解消完了通知を通知する。ステップS507の処理が終了すると、ステップS508に進む。
【0140】
ステップS508においては、モータ制御部34が、振動モータ41に対して電源23から電力を供給させ、振動モータ41を作動(駆動)させることで覚醒処理を実行する。覚醒処理は、振動モータ41の駆動に起因する木製筐体13の振動刺激(微小なストレス)を使用者に付与することで、使用者の覚醒レベルを上昇させる処理である。覚醒レベルを上昇させる覚醒処理を実行することで、使用者の意識がぼんやりした状態ではなく、意識がリフレッシュした状態に使用者を覚醒させることができる。
【0141】
覚醒処理における振動モータ41の駆動パターンや、その継続期間は特に限定されない。例えば、覚醒処理において、振動モータ41を間欠的に駆動させても良い。例えば、振動モータ41を駆動させる振動時間と、駆動を停止させる休止時間を複数サイクル繰り返しても良い。その場合、1サイクル毎に、振動モータ41の振動時間と休止時間を変化させても良い。例えば、覚醒処理の1サイクル目における振動モータ41の振動時間と休止時間をそれぞれ200msとし、2サイクル目以降は、振動時間と休止時間を20msずつ短くしていっても良い。覚醒処理において、所定のサイクル数が完了したした時点、或いは、覚醒処理の開始から一定時間が経過した時点で覚醒処理を完了し、図19に示す制御ルーチンが終了する。なお、本実施形態においても、実施形態1と同様、覚醒処理において、振動による刺激以外の手法を用いて、使用者の覚醒レベルを上昇させても良い。例えば、発光素子43を発光させることで使用者を覚醒させても良い。
【0142】
また、覚醒処理は電池230の残量に応じて異なるパターンとすることで、電池残量のアラート機能を兼ねていても良い。例えば、電池230の残量が十分な状態における覚醒処理では、発光素子43を所定の第1の色(例えば、青色)に点灯させつつ振動モータ41を所定の振動パターン(例えば、「200ms振動+200ms休止」で数サイクル(例えば、4サイクル)作動させた後、振動モータ41の作動を終了させると同時に発光素子43を消灯してもよい。また、電池230の残量が少ない状態における覚醒処理では、発光素子43を所定の第2の色(例えば、赤色)に点灯させつつ振動モータ41を所定の振動パターン(例えば、「200ms振動+200ms休止」で数サイクル(例えば、5サイクル)作動させた後、振動モータ41の作動を終了させると同時に発光素子43を消灯してもよい。また、上記のパターンは例示であり、適宜変更しても良い。
【0143】
また、上記発汗量判定処理のステップS506において、スケーリング済み発汗量測定値Gtが判定用閾値以上であると判定されることでステップS509の処理に進む場合、判定部38は、メイン処理の開始時(図17に示す時間Tb)からの経過時間Tが予め定められた所定の第1タイムアウト時間ΔTtoを経過したか否かを判定する。本制御例では、第1タイムアウト時間ΔTtoが180秒に設定されているが、使用者による第1タイムアウト時間ΔTtoの設定変更が可能であっても良い。判定部38は、メイン処理の開始からの経過時間Tを計時部39から取得することができる。
【0144】
ステップS509において、メイン処理を開始してからの経過時間Tが第1タイムアウト時間ΔTtoを経過していないと判定された場合、ステップS501の処理に戻り、ステップS501~S506の処理が繰り返される。また、ステップS509において、メイン処理を開始してからの経過時間Tが第1タイムアウト時間ΔTtoを経過したと
判定された場合にはステップS510に進み、使用者にタイムアウトした旨を伝えるためのタイムアウト通知を通知する。例えば、発光制御部37が発光素子43を所定の発光パターンで発光させることで、タイムアウト通知を行っても良い。タイムアウト通知の実行が終了すると、図19に示す制御ルーチンを終了する。
【0145】
以上のように、本実施形態におけるストレス度合い分析制御によれば、メイン処理継続最大期間ΔTmaxよりも短い期間として設定される予測用特徴量測定期間ΔTmpで測定した使用者の精神性発汗量の経時的な推移と、発汗量最小値予測モデル351および発汗量最大値予測モデル352に基づいて、将来的に刻一刻と推移する使用者の精神性発汗量の最小値と最大値を予測することができる。そして、上記予測モデルに基づいて予測した使用者の精神性発汗量の最小値と最大値を用いて、予測用特徴量測定期間ΔTmp以後の発汗量判定期間ΔTmjにおいて測定する使用者の精神性発汗量の測定値をスケーリング処理することで、使用者毎に精神性発汗量の変動特性が大きくばらついたとしても、発汗量判定期間ΔTmjにおいて取得するスケーリング済み発汗量測定値Gtの変動範囲をある程度の範囲に小さく収めることができる。本実施形態におけるストレス度合い分析制御によれば、上記のように精神性発汗量の変動特性に関する個人差を小さくするアルゴリズムを採用することで、発汗量判定処理に用いる判定用閾値を固定値に設定する場合においても、タイムアウト通知が通知されるケースの割合が過度に高くなったり、逆に、発汗量判定処理を開始した直後にストレス解消完了通知が通知されるケースの割合が過度に高くなることを抑制でき、ユーザビリティの優れた吸引器1を実現することができる。
【0146】
図20は、吸引器1を使用する複数の使用者(被験者)に対してストレス度合い分析制御を実施した際のスケーリング済み発汗量測定値Gtの時間推移を示す図である。図21は、比較用に、吸引器1を使用する複数の使用者(被験者)に対してストレス度合い分析制御を実施した際の補正済み発汗量測定値Gの時間推移を示す図である。図21における補正済み発汗量測定値Gは、使用者における精神性発汗量の測定値を初期基準発汗量G#maxによって割った値であり、発汗量最小値予測モデル351および発汗量最大値予測モデル352に基づいて予測した精神性発汗量の最小値と最大値を用いたスケーリング処理はなされていない。なお、図20に示すスケーリング済み発汗量測定値Gtと、図21に示す補正済み発汗量測定値Gは、同じ複数の被験者(11人)から測定した精神性発汗量の測定値に基づいて算出したものである。
【0147】
図20および図21を対比すると明らかなように、精神性発汗量の測定値を初期基準発汗量G#maxによって割っただけの補正済み発汗量測定値Gの推移は、メイン処理が開始されてからの経過時間が同時刻のときの被験者毎(個人差)によるばらつきが比較的大きい(図21を参照)。一方、図20に示すスケーリング済み発汗量測定値Gtは、メイン処理が開始されてからの経過時間が同時刻のときの被験者毎(個人差)によるばらつきが、図21に示す補正済み発汗量測定値Gに比べて小さいことが判る。
【0148】
図21における補正済み発汗量測定値Gにおいては、スケーリング済み発汗量測定値Gtで評価する場合に比べて個人差によるばらつきが大きいため、発汗量判定処理に用いる判定用閾値を固定値に設定してしまうと、大多数の被験者がタイムアウトしてしまうか、逆に、吸引回数が少ない状態のまま発汗量判定処理を開始した直後に低ストレス状態と判断され易くなる傾向がある。例えば、図21における補正済み発汗量測定値Gを用いて発汗量判定処理に係る判定用閾値を0.6程度にすると、多くの被験者はタイムアウトに至ってしまい、逆に、判定用閾値を0.9程度に上げてしまうと、実際には初期基準発汗量G#maxから10%しか精神性発汗量が低下していないにも関わらず発汗量判定処理を開始した直後に多くの被験者が低ストレス状態と判断され易くなる傾向がある。
【0149】
これに対して、図20に示すスケーリング済み発汗量測定値Gtを用いて発汗量判定処
理を行う場合、例えば、発汗量判定処理に用いる判定用閾値を0.2程度に設定した場合、大多数の被験者にタイムアウトに至らず、且つ、発汗量判定期間ΔTmjに突入した直後にスケーリング済み発汗量測定値Gtが判定用閾値(ここでは、0.2)を下回ることがないため、被験者が十分な吸引動作を経て実際にストレスが解消された状態でストレス解消完了通知が通知されることになる。すなわち、本実施形態におけるストレス度合い分析制御によれば、使用者毎に精神性発汗量の変動特性がばらついても、大多数の使用者がタイムアウトに至らず、且つ、実際にストレスが解消された状態でストレス解消完了通知を使用者に通知することができ、非常にユーザビリティが優れていることが判る。
【0150】
なお、実施形態3における吸引器1の制御部30は、制御部30がストレス度合い分析制御時に測定した使用者の精神性発汗量の測定値に基づいて、記憶部35に格納(記憶)されている発汗量最小値予測モデル351および発汗量最大値予測モデル352を更新する学習処理部を有していても良い。すなわち、学習処理部は、使用者が吸引器1を使用した際に得られた、予測用特徴量測定期間ΔTmpにおける使用者の精神性発汗量の測定値の推移と、メイン処理継続最大期間ΔTmaxにおける使用者の精神性発汗量の測定値の最小値とを対応付けた発汗量最小値学習用データを教師データとする機械学習によって、予測用特徴量測定期間ΔTmpにおける使用者の精神性発汗量の推移とメイン処理継続最大期間ΔTmaxにおける使用者の精神性発汗量の最小値との関連性を学習(訓練)することで、(1)式における重みaの係数を修正し、発汗量最小値予測モデル351を更新してもよい。
【0151】
同様に、学習処理部は、使用者が吸引器1を使用した際に得られた、予測用特徴量測定期間ΔTmpにおける使用者の精神性発汗量の測定値の推移と、メイン処理継続最大期間ΔTmaxにおける使用者の精神性発汗量の測定値の最大値とを対応付けた発汗量最大値学習用データを教師データとする機械学習によって、予測用特徴量測定期間ΔTmpにおける使用者の精神性発汗量の推移とメイン処理継続最大期間ΔTmaxにおける使用者の精神性発汗量の最大値との関連性を学習(訓練)することで、(2)式における重みbの係数を修正し、発汗量最大値予測モデル352を更新してもよい。
【0152】
また、記憶部35に格納されている発汗量最小値予測モデル351および発汗量最大値予測モデル352は、必ずしも機械学習によって構築(生成)された予測モデルである必要は無く、他の手法に基づいて構築された予測モデルであっても良い。
【0153】
また、実施形態3におけるストレス度合い分析制御においては、発汗量判定期間ΔTmjにおいて測定した使用者の精神性発汗量の測定値(具体的には、補正済み発汗量測定値G)に対して、予測部50が予測した最小予測値Gpminを第1の値(上記の例では、“0”)とすると共に予測部50が予測した最大予測値Gpmaxを第2の値(上記の例では、“1”)としてmin-maxスケーリング処理を行うようにしたので、第1の値以上であって且つ第2の値以下の範囲内で判定用閾値を設定するようにしているが、これには限られない。
【0154】
例えば、発汗量判定期間ΔTmjにおいて測定した使用者の精神性発汗量の測定値に対してmin-maxスケーリング処理を行わない場合、設定部36は、予測部50が予測した最小予測値Gpmin以上最大予測値Gpmax以下の範囲で判定用閾値を設定すればよい。この場合、精神性発汗量および判定用閾値の単位は特に限定されない。例えば、予測部50が予測した最小予測値Gpminが0.6[μS]であり、予測した最大予測値Gpmaxが2.5[μS]であった場合、発汗量判定処理に適用される判定用閾値を、0.6[μS]以上、2.5[μS]以下の範囲内で設定すればよい。例えば、判定用閾値を、最小予測値Gpminおよび最大予測値Gpmaxの平均値に設定しても良い。本実施形態におけるストレス度合い分析制御によれば、予測部50が予測した最小予測値
Gpmin以上最大予測値Gpmax以下の範囲で判定用閾値を設定するようにしたので、使用者毎による精神性発汗量の変動特性のばらつきの影響を大きく受けることなく判定用閾値を適正な値に設定することができる。
【0155】
更に、本実施形態に係るストレス度合い分析制御によれば、発汗量判定期間ΔTmjにおいて測定した使用者の精神性発汗量の測定値に対してmin-maxスケーリング処理をするようにしたので、使用者毎による精神性発汗量の変動特性のばらつきの影響をより一層小さくすることができ、ユーザビリティの優れた吸引器1を提供することができる。
【0156】
なお、本実施形態に係るストレス度合い分析制御の発汗量判定処理において、min-maxスケーリング処理を行う際、予測部50が予測した最小予測値Gpminを第1の値の例示として0に設定し、最大予測値Gpmaxを第2の値の例示として1に設定する場合を説明したが、第1の値と第2の値の組み合わせは特定の値に限定されない。
【0157】
また、上記の各処理を実行するためのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されていても良い。当該プログラムが記録された記録媒体については、コンピュータに、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、上述の処理が可能となる。
【0158】
ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、又は化学的作用によって蓄積し、コンピュータから読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータから取り外し可能なものとしては、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、光ディスク、磁気テープ、メモリカード等がある。また、コンピュータに固定された記録媒体としては、ハードディスクドライブやROM等がある。
【0159】
また、上述までの実施形態に係る吸引器が行う各処理を実行するためのプログラムを記憶するメモリおよびメモリに記憶されたプログラムを実行するプロセッサによって構成されるチップが提供されても良い。
【0160】
以上、本発明を上述した実施形態および変形例によって説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の代替実施形態を採用することができる。例えば、吸引器は、電源スイッチ部32のオン、オフを切り替えるための使用者の操作を受け付け可能な押しボタン等のハードスイッチを備えていても良い。また、上述した各実施形態および変形例は適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0161】
1・・・吸引器
10・・・吸い口ユニット
11・・・吸い口
12・・・吸い口受け
13・・・木製筐体
20・・・制御ユニット
21・・・電子基板
23・・・電源
24・・・固定ユニット
26,27・・・精神性発汗量測定用電極
30・・・制御部
31・・・気圧取得部
32・・・電源スイッチ部
33・・・発汗量測定部
34・・・モータ制御部
35・・・記憶部
36・・・設定部
37・・・発光制御部
38・・・判定部
39・・・計時部
40・・・気圧センサ
41・・・振動モータ
43・・・発光素子
図1
図2
図3
図4
図5
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