(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】太陽電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0747 20120101AFI20221208BHJP
【FI】
H01L31/06 455
(21)【出願番号】P 2021508249
(86)(22)【出願日】2020-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2020006029
(87)【国際公開番号】W WO2020195324
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2019062652
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】中野 邦裕
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-075526(JP,A)
【文献】中国実用新案第203846108(CN,U)
【文献】特開2018-163999(JP,A)
【文献】特開2012-178500(JP,A)
【文献】特開平11-233484(JP,A)
【文献】中国実用新案第201473591(CN,U)
【文献】特開2006-286821(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104037257(CN,A)
【文献】特開2011-077064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/078
H01L 31/18-31/20
H01L 51/42-51/48
H02S 10/00-10/40
H02S 30/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に順に積層された第1導電型半導体層および第1電極層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域に順に積層された第2導電型半導体層および第2電極層とを備える裏面電極型の太陽電池の製造方法であって、
前記半導体基板の前記他方主面側に、前記第1導電型半導体層の材料膜を形成する第1半導体層材料膜形成工程と、
前記第1導電型半導体層の材料膜の上に、リフトオフ層を形成するリフトオフ層形成工程と、
前記第2領域における前記リフトオフ層および前記第1導電型半導体層の材料膜を除去することにより、前記第1領域に、パターン化された前記第1導電型半導体層および前記リフトオフ層を形成する第1半導体層形成工程と、
前記第1領域における前記リフトオフ層および前記第2領域の上に、前記第2導電型半導体層の材料膜を形成する第2半導体層材料膜形成工程と、
前記リフトオフ層を除去することにより、前記第1領域における前記第2導電型半導体層の材料膜を除去し、前記第2領域に、パターン化された前記第2導電型半導体層を形成する第2半導体層形成工程と、
を含み、
前記第2半導体層形成工程では、前記半導体基板の前記他方主面側をエッチング溶液の液面に対面させて着液させ、前記エッチング溶液の液面上において前記半導体基板を搬送させ
、
パターン化された前記第1導電型半導体層は、櫛歯状のパターンを含み、
前記第2半導体層形成工程では、前記半導体基板を、前記櫛歯状のパターンの長手方向に沿う搬送方向に搬送させる、
太陽電池の製造方法。
【請求項2】
前記エッチング溶液は液流を有し、
前記エッチング溶液の液流方向は、前記搬送方向に沿う方向である、
請求項
1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記エッチング溶液は、前記搬送方向に沿う方向において互いに乖離する2つの前記液流を有する、請求項
2に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記第2半導体層形成工程は、
前記エッチング溶液の液面上において前記半導体基板を搬送させるエッチング工程と、
リンス溶液を用いて、前記半導体基板の表面をリンスするリンス工程と、
を含み、
前記リンス溶液は、水を主成分として含み、
前記エッチング溶液または前記リンス溶液のうち少なくとも一方は、液性を調整する液性調整剤が添加されている、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記液性調整剤は、少なくとも1種類の界面活性剤を含む、請求項
4に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項6】
前記液性調整剤が添加されたエッチング溶液中またはリンス溶液中において、除去されたリフトオフ層または第2導電型半導体層の材料膜のうち少なくとも一方が凝集する、請求項
4または5に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項7】
凝集した凝集物の比重は水より大きい、請求項
4~6のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面電極型(バックコンタクト型)の太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板を用いた太陽電池として、受光面側および裏面側の両面に電極が形成された両面電極型の太陽電池と、裏面側のみに電極が形成された裏面電極型の太陽電池とがある。両面電極型の太陽電池では、受光面側に電極が形成されるため、この電極により太陽光が遮蔽されてしまう。一方、裏面電極型の太陽電池では、受光面側に電極が形成されないため、両面電極型の太陽電池と比較して太陽光の受光率が高い。特許文献1には、裏面電極型の太陽電池が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の太陽電池は、光電変換層として機能する半導体基板と、半導体基板の裏面側の一部に順に積層された第1導電型半導体層および第1電極層と、半導体基板の裏面側の他の一部に順に積層された第2導電型半導体層および第2電極層とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、第1導電型半導体層のパターニング(1回目のパターニング)および第2導電型半導体層のパターニング(2回目のパターニング)において、フォトリソグラフィ技術を用いたエッチング法が用いられる。しかし、フォトリソグラフィ技術を用いたエッチング法では、例えばスピンコート法によるフォトレジスト塗布、フォトレジスト乾燥、フォトレジスト露光、フォトレジスト現像、フォトレジストをマスクとして用いた半導体層のエッチング、およびフォトレジスト剥離のプロセスが必要であり、プロセスが複雑であった。
【0006】
この点に関し、特許文献1には、2回目のパターニングにおいて、リフトオフ層(犠牲層)を用いたリフトオフ法により、パターニングのプロセスの簡略化を図る技術が記載されている。リフトオフ法では、リフトオフされた除去物が太陽電池の受光面に再付着してしまうという問題がある。リフトオフされた除去物が太陽電池の受光面に再付着すると、太陽電池の性能が低下したり、外観が損なわれてしまったりする。
【0007】
本発明は、製造プロセスの簡略化を行っても、太陽電池の性能低下および太陽電池の外観が損なわれることを抑制する太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る太陽電池の製造方法は、半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に順に積層された第1導電型半導体層および第1電極層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域に順に積層された第2導電型半導体層および第2電極層とを備える裏面電極型の太陽電池の製造方法であって、前記半導体基板の前記他方主面側に、前記第1導電型半導体層の材料膜を形成する第1半導体層材料膜形成工程と、前記第1導電型半導体層の材料膜の上に、リフトオフ層を形成するリフトオフ層形成工程と、前記第2領域における前記リフトオフ層および前記第1導電型半導体層の材料膜を除去することにより、前記第1領域に、パターン化された前記第1導電型半導体層および前記リフトオフ層を形成する第1半導体層形成工程と、前記第1領域における前記リフトオフ層および前記第2領域の上に、前記第2導電型半導体層の材料膜を形成する第2半導体層材料膜形成工程と、前記リフトオフ層を除去することにより、前記第1領域における前記第2導電型半導体層の材料膜を除去し、前記第2領域に、パターン化された前記第2導電型半導体層を形成する第2半導体層形成工程と、を含み、前記第2半導体層形成工程では、前記半導体基板の前記他方主面側をエッチング溶液の液面に対面させて着液させ、前記エッチング溶液の液面上において前記半導体基板を搬送させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、太陽電池の製造プロセスの簡略化を行っても、太陽電池の性能低下および太陽電池の外観が損なわれることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る太陽電池を裏面側からみた図である。
【
図2】
図1の太陽電池におけるII-II線断面図である。
【
図3A】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層材料膜形成工程およびリフトオフ層形成工程を示す図である。
【
図3B】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程を示す図である。
【
図3C】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程を示す図である。
【
図3D】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程を示す図である。
【
図3E】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層材料膜形成工程を示す図である。
【
図3F】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層形成工程を示す図である。
【
図4】
図3Fに示す第2半導体層形成工程におけるエッチング工程を説明するための図である。
【
図5A】
図3Fに示す第2半導体層形成工程におけるエッチング工程を説明するための図である。
【
図5B】
図3Fに示す第2半導体層形成工程におけるエッチング工程を説明するための図である。
【
図6】
図3Fに示す第2半導体層形成工程におけるエッチング工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0012】
(太陽電池)
図1は、本実施形態に係る太陽電池を裏面側からみた図である。
図1に示す太陽電池1は、裏面電極型の太陽電池である。太陽電池1は、2つの主面を備える半導体基板11を備え、半導体基板11の主面において第1領域7と第2領域8とを有する。
【0013】
第1領域7は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー部7fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部7bとを有する。バスバー部7bは、半導体基板11の一方の辺部に沿って第1方向(X方向)に延在し、フィンガー部7fは、バスバー部7bから、第1方向(X方向)に交差する第2方向(Y方向)に延在する。
同様に、第2領域8は、いわゆる櫛型の形状であり、櫛歯に相当する複数のフィンガー部8fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部8bとを有する。バスバー部8bは、半導体基板11の一方の辺部に対向する他方の辺部に沿って第1方向(X方向)に延在し、フィンガー部8fは、バスバー部8bから、第2方向(Y方向)に延在する。
フィンガー部7fとフィンガー部8fとは、第1方向(X方向)に交互に設けられている。
なお、第1領域7および第2領域8は、ストライプ状に形成されてもよい。
【0014】
図2は、
図1の太陽電池におけるII-II線断面図である。
図2に示すように、太陽電池1は、半導体基板11と、半導体基板11の主面のうちの受光する側の一方の主面である受光面側に順に積層された真性半導体層13および光学調整層15を備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の主面のうちの受光面の反対側の他方の主面である裏面側の一部(第1領域7)に順に積層された第1真性半導体層23、第1導電型半導体層25および第1電極層27を備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の裏面側の他の一部(第2領域8)に順に積層された第2真性半導体層33、第2導電型半導体層35、および第2電極層37を備える。
【0015】
半導体基板11は、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等の結晶シリコン材料で形成される。半導体基板11は、例えば結晶シリコン材料にn型ドーパントがドープされたn型の半導体基板である。n型ドーパントとしては、例えばリン(P)が挙げられる。
半導体基板11は、受光面側からの入射光を吸収して光キャリア(電子および正孔)を生成する光電変換基板として機能する。
半導体基板11の材料として結晶シリコンが用いられることにより、暗電流が比較的に小さく、入射光の強度が低い場合であっても比較的高出力(照度によらず安定した出力)が得られる。
【0016】
真性半導体層13は、半導体基板11の受光面側に形成されている。第1真性半導体層23は、半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。第2真性半導体層33は、半導体基板11の裏面側の第2領域8に形成されている。真性半導体層13、第1真性半導体層23および第2真性半導体層33は、例えば真性(i型)アモルファスシリコンを主成分とする材料で形成される。
真性半導体層13、第1真性半導体層23および第2真性半導体層33は、いわゆるパッシベーション層として機能し、半導体基板11で生成されたキャリアの再結合を抑制し、キャリアの回収効率を高める。
【0017】
光学調整層15は、半導体基板11の受光面側の真性半導体層13上に形成されている。光学調整層15は、入射光の反射を防止する反射防止層として機能するとともに、半導体基板11の受光面側および真性半導体層13を保護する保護層として機能する。光学調整層15は、例えば酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、または酸窒化珪素(SiON)のようなそれらの複合物等の絶縁体材料で形成される。
【0018】
第1導電型半導体層25は、第1真性半導体層23上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。すなわち、第1導電型半導体層25は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー部と、櫛歯の支持部に相当し、複数のフィンガー部の一端が接続されたバスバー部とを有する。バスバー部は、第1領域7のバスバー部7bに対応し、半導体基板11のX方向の一方端側の辺部に沿ってY方向に延在する。フィンガー部は、第1領域7のフィンガー部7fに対応し、バスバー部からX方向に延在する。
【0019】
第2導電型半導体層35は、第2真性半導体層33上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第2領域8に形成されている。すなわち、第2導電型半導体層35は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー部と、櫛歯の支持部に相当し、複数のフィンガー部の一端が接続されたバスバー部とを有する。バスバー部は、第2領域8のバスバー部8bに対応し、半導体基板11のX方向の他方端側の辺部に沿ってY方向に延在する。フィンガー部は、第2領域8のフィンガー部8fに対応し、バスバー部からX方向に延在する。
【0020】
第1導電型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。第1導電型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料にp型ドーパントがドープされたp型の半導体層である。p型ドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられる。
第2導電型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。第2導電型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料にn型ドーパント(例えば、上述したリン(P))がドープされたn型半導体層である。
【0021】
なお、第1導電型半導体層25がn型半導体層であり、第2導電型半導体層35がp型半導体層であってもよい。
また、半導体基板11は、結晶シリコン材料にp型ドーパント(例えば、上述したホウ素(B))がドープされたp型半導体基板であってもよい。
【0022】
第1電極層27は、第1導電型半導体層25上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。第2電極層37は、第2導電型半導体層35上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第2領域8に形成されている。
第1電極層27および第2電極層37は、透明電極層と金属電極層とを含んでもよいし、金属電極層のみを含んでもよい。本実施形態では、第1電極層27は、第1導電型半導体層25上に順に積層された透明電極層28と金属電極層29とを有する。第2電極層37は、第2導電型半導体層35上に順に積層された透明電極層38と金属電極層39とを有する。
【0023】
透明電極層28および金属電極層29は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー部と、櫛歯の支持部に相当し、複数のフィンガー部の一端が接続されたバスバー部とを有する。バスバー部は、第1領域7のバスバー部7bに対応し、半導体基板11のX方向の一方端側の辺部に沿ってY方向に延在する。フィンガー部は、第1領域7のフィンガー部7fに対応し、バスバー部からX方向に延在する。
【0024】
透明電極層38および金属電極層39は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー部と、櫛歯の支持部に相当し、複数のフィンガー部の一端が接続されたバスバー部とを有する。バスバー部は、第2領域8のバスバー部8bに対応し、半導体基板11のX方向の他方端側の辺部に沿ってY方向に延在する。フィンガー部は、第2領域8のフィンガー部8fに対応し、バスバー部からX方向に延在する。
【0025】
透明電極層28,38は、透明な導電性材料で形成される。透明導電性材料としては、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムおよび酸化スズの複合酸化物)、ZnO(Zinc Oxide:酸化亜鉛)が挙げられる。
金属電極層29,39は、金属材料で形成される。金属材料としては、例えば、Cu、Ag、Alおよびこれらの合金が用いられる。金属電極層29,39は、例えば、銀等の金属粉末を含有する導電性ペースト材料で形成されてもよい。
【0026】
(太陽電池の製造方法)
次に、
図3A~
図3Fを参照して、
図1および
図2に示す本実施形態の太陽電池1の製造方法について説明する。
図3Aは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における真性半導体層形成工程、光学調整層形成工程、第1半導体層材料膜形成工程およびリフトオフ層形成工程を示す図であり、
図3B~
図3Dは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程を示す図である。
図3Eは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層材料膜形成工程を示す図であり、
図3Fは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層形成工程を示す図である。
【0027】
まず、
図3Aに示すように、例えばCVD法(化学気相堆積法)を用いて、半導体基板11の受光面側の全面に、真性半導体層13を積層(製膜)する(真性半導体層形成工程)。次に、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の受光面側の真性半導体層13上の全面に、光学調整層15を積層(製膜)する(光学調整層形成工程)。
【0028】
また、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の裏面側に、第1真性半導体層材料膜23Zおよび第1導電型半導体層材料膜25Zを順に積層(製膜)する(第1半導体層材料膜形成工程)。
【0029】
次に、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、具体的には第1導電型半導体層材料膜25Z上の全面に、リフトオフ層(犠牲層)40を積層(製膜)する(リフトオフ層形成工程)。
リフトオフ層40は、酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、または酸窒化珪素(SiON)のようなそれらの複合物等の材料で形成される。
【0030】
次に、
図3B~
図3Dに示すように、例えばレジスト90を用いて、半導体基板11の裏面側において、第2領域8における第1真性半導体層材料膜23Z、第1導電型半導体層材料膜25Zおよびリフトオフ層40を除去することにより、第1領域7に、パターン化された第1真性半導体層23、第1導電型半導体層25およびリフトオフ層40を形成する(第1半導体層形成工程)。
【0031】
具体的には、フォトリソグラフィ法を用いて、半導体基板11の両面側の全面にフォトレジストを塗布した後に、マスクを用いて裏面側の第2領域8におけるフォトレジストを露光および現像して除去する。これにより、
図3Bに示すように、半導体基板11の裏面側の第1領域7および受光面側の全面を覆うレジスト90を形成する。
【0032】
その後、
図3Cに示すように、レジスト90をマスクとして、第2領域8におけるリフトオフ層40、第1導電型半導体層材料膜25Zおよび第1真性半導体層材料膜23Zをエッチングすることにより、第1領域7に、パターン化された第1真性半導体層23、第1導電型半導体層25およびリフトオフ層40を形成する。リフトオフ層40、第1導電型半導体層材料膜25Zおよび第1真性半導体層材料膜13Zに対するエッチング溶液としては、例えばフッ酸と硝酸との混合液等の酸性溶液が用いられる。
【0033】
その後、
図3Dに示すように、レジスト90を除去する。レジスト90に対する剥離溶液としては、レジストの種類に対応して、例えばアセトン等の有機溶剤が用いられる。
【0034】
次に、
図3Eに示すように、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、第2真性半導体層材料膜33Zおよび第2導電型半導体層材料膜35Zを順に積層(製膜)する(第2半導体層材料膜形成工程)。
【0035】
次に、
図3Fに示すように、リフトオフ層(犠牲層)を用いたリフトオフ法を利用して、半導体基板11の裏面側において、第1領域7における第2真性半導体層材料膜33Zおよび第2導電型半導体層材料膜35Zを除去することにより、第2領域8に、パターン化された第2真性半導体層33および第2導電型半導体層35を形成する(第2半導体層形成工程)。
【0036】
具体的には、リフトオフ層40を除去することにより、リフトオフ層40上の第2真性半導体層材料膜33Zおよび第2導電型半導体層材料膜35Zを除去し、第2領域8に第2真性半導体層33および第2導電型半導体層35を形成する。リフトオフ層40の除去溶液としては、リフトオフ層の構成に対応して、例えばフッ酸または塩酸等の酸性溶液が用いられる。
【0037】
次に、半導体基板11の裏面側に、第1電極層27および第2電極層37を形成する(電極層形成工程)。
具体的には、例えばスパッタリング法等のPVD法(物理気相成長法)を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、透明電極層材料膜を積層(製膜)する。その後、例えばエッチングペーストを用いたエッチング法を用いて、透明電極層材料膜の一部を除去することにより、パターン化された透明電極層28,38を形成する。透明電極層材料膜に対するエッチング溶液としては、例えば塩酸または塩化第二鉄水溶液が用いられる。
その後、例えばパターン印刷法または塗布法を用いて、透明電極層28上に金属電極層29を形成し、透明電極層38の上に金属電極層39を形成することにより、第1電極層27および第2電極層37を形成する。
【0038】
以上の工程により、
図1および
図2に示す本実施形態の裏面電極型の太陽電池1が完成する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態の太陽電池の製造方法によれば、第2半導体層形成工程において、リフトオフ層(犠牲層)を用いたリフトオフ法を利用して第2導電型半導体層35のパターニングを行うので、太陽電池の製造プロセスの簡略化、短縮化、低コスト化が可能となる。
【0040】
ここで、リフトオフ法では、リフトオフされた除去物が太陽電池の受光面および裏面に再付着してしまうという問題がある。リフトオフされた除去物が太陽電池の受光面および裏面に再付着すると、太陽電池の性能が低下したり、外観が損なわれてしまったりする。
この点に関し、本実施形態では、第2半導体層形成工程は、以下に示すエッチング工程とリンス工程とを含む。
【0041】
エッチング工程では、
図4に示すように、半導体基板11の裏面側をエッチング溶液の液面に対面させて着液させ、エッチング溶液の液面上において半導体基板11を搬送させる。例えば、エッチング溶液の液面近傍にパイプを配置し、パイプを回転させることにより半導体基板11を搬送させる。これにより、半導体基板11は、エッチング溶液に浮いたり(
図5A)、パイプに触れたり(
図5B)しながら、パイプとの摩擦で搬送される。エッチング溶液としては、上述したように、例えばフッ酸または塩酸等の酸性溶液が用いられる。
【0042】
リンス工程では、リンス溶液を用いて、半導体基板11の表面をリンスする。リンス溶液としては、水(H2O)を主成分とする溶液が用いられる。
【0043】
これによれば、エッチング工程において、半導体基板11の裏面側の片面だけがエッチング溶液に触れ、半導体基板の受光面はエッチング溶液に触れないので、半導体基板11の受光面がエッチング溶液に不要に曝露されることを避けることができ、リフトオフされた除去物が半導体基板の受光面に再付着することを回避することができる。そのため、リフトオフされた除去物が半導体基板の受光面に再付着することにより太陽電池の外観が損なわれることを回避することができる。
このように、リフトオフ法を利用して太陽電池の製造プロセスの簡略化を行っても、太陽電池の性能低下および太陽電池の外観が損なわれることを抑制することができる。
【0044】
エッチング工程では、半導体基板11を、第1導電型半導体層25の櫛歯状のフィンガー部(パターン)の長手方向(
図1においてY方向)が搬送方向に沿うように搬送させると好ましい。長手方向がオーバーフローや搬送による液流に沿うことで、エッチング液が均一に浸透しやすく、液流からの力によってリフトオフが進行しやすいという利点がある。
【0045】
また、エッチング工程では、
図6に示すように、エッチング溶液をオーバーフローさせてもよい。
図6の例では、エッチング溶液が満たされた内浴と、内浴からオーバーフローしたエッチング溶液を受ける外浴とを備える。オーバーフローしたエッチング溶液は、内浴の中央部に戻され、内浴において下から上へ送液される。これにより、エッチング溶液は、液流を有する。
図6の例では、エッチング溶液は、内浴の中央部から互いに乖離する2つの液流を有する。
【0046】
このとき、エッチング溶液の液流方向を、半導体基板11の搬送方向に沿うようにする。これにより、エッチング溶液は、搬送方向に沿う方向において互いに乖離する2つの液流を有することとなる。
【0047】
これによれば、半導体基板11をフレッシュなエッチング溶液に触れさせることが容易である。その結果、リフトオフされた除去物が半導体基板11の裏面に再付着することを抑制することができ、リフトオフされた除去物が半導体基板の裏面に再付着することによる太陽電池の性能低下を抑制することができる。
【0048】
また、エッチング溶液またはリンス溶液のうち少なくとも一方は、液性を調整する液性調整剤が添加されていてもよい。液性調整剤は、少なくとも1種類の界面活性剤を含んでもよい。これによれば、リフトオフされた除去物を溶液中に分散させることができ、リフトオフされた除去物が半導体基板11の裏面に再付着することを抑制することができる。そのため、リフトオフされた除去物が半導体基板の裏面に再付着することによる太陽電池の性能低下を抑制することができる。
【0049】
また、液性調整剤は、エッチング溶液中またはリンス溶液中において、除去されたリフトオフ層または第2導電型半導体層の材料膜のうち少なくとも一方を凝集させるような液性調整剤を含んでもよい。例えば、リンス溶液では、凝集した凝集物の比重が水より大きいと、凝集物は沈殿する。これによれば、リフトオフされた除去物を凝集させることができ、リフトオフされた除去物が半導体基板11の裏面に再付着することを抑制することができる。そのため、リフトオフされた除去物が半導体基板の裏面に再付着することによる太陽電池の性能低下を抑制することができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、
図2に示すようにヘテロ接合型の太陽電池1の製造方法を例示したが、本発明の特徴は、ヘテロ接合型の太陽電池に限らず、ホモ接合型の太陽電池等の種々の太陽電池の製造方法に適用可能である。
【0051】
また、上述した実施形態では、結晶シリコン基板を有する太陽電池を例示したが、これに限定されない。例えば、太陽電池は、ガリウムヒ素(GaAs)基板を有していてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 太陽電池
7 第1領域
7b,8b バスバー部
7f,8f フィンガー部
8 第2領域
11 半導体基板
13 真性半導体層
15 光学調整層
23 第1真性半導体層
23Z 第1真性半導体層材料膜
25 第1導電型半導体層
25Z 第1導電型半導体層材料膜
27 第1電極層
28,38 透明電極層
29,39 金属電極層
33 第2真性半導体層
33Z 第2真性半導体層材料膜
35 第2導電型半導体層
35Z 第2導電型半導体層材料膜
37 第2電極層
40 リフトオフ層(犠牲層)
90 マスク