IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネカの特許一覧

特許7190556太陽電池の製造方法および太陽電池の仕掛品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】太陽電池の製造方法および太陽電池の仕掛品
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/18 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
H01L31/04 420
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021508878
(86)(22)【出願日】2020-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2020008626
(87)【国際公開番号】W WO2020195570
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-06-18
(31)【優先権主張番号】P 2019054986
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発/先端複合技術型シリコン太陽電池、高性能CIS太陽電池の技術開発」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】中野 邦裕
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特許第4168413(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2010/0047721(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104681641(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
H01L 31/18-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の少なくとも1つの主面側にパターン化層を備える太陽電池の製造方法であって、
前記半導体基板の前記主面側に、前記パターン化層の基となるパターン化前の非パターン化層を形成する非パターン化層形成工程と、
前記非パターン化層上に、パターン化されたレジスト膜であるレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、
エッチング法を用いて、前記レジストパターンに基づいて前記非パターン化層をパターン化した前記パターン化層を形成するパターン化層形成工程と、
を含み、
前記レジストパターン形成工程では、スクリーン印刷法を用いて、所定間隔だけ分離するようにレジスト剤を印刷し、
前記所定間隔とは、前記レジスト剤の流動性により、分離した前記レジスト剤同士が連結して前記レジストパターンを形成し、前記レジストパターンにおいて分離した前記レジスト剤同士が連結した連結部分の厚さが前記連結部分以外の厚さよりも薄くなる、間隔である、
太陽電池の製造方法。
【請求項2】
前記レジストパターン形成工程では、前記レジストパターンにおける、袋小路を形成する部分に前記連結部分を形成する、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記レジストパターン形成工程では、前記連結部分の延在方向が、前記パターン化層形成工程におけるエッチング溶液に対する前記半導体基板の挿入および取出方向に沿うように、前記連結部分を形成する、請求項1または2に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記パターン化層は、半導体層、透明電極層または金属電極層である、請求項1~3のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記太陽電池は、前記半導体基板の2つの主面の両方に電極層を備える両面電極型、または、前記半導体基板の2つの主面の一方に電極層を備える裏面電極型である、請求項1~4のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項6】
前記レジストパターンを形成するための前記レジスト剤は、チキソトロピー性を有する材料を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項7】
半導体基板の少なくとも1つの主面側にパターン化層を形成するための太陽電池の仕掛品であって、
前記半導体基板の前記主面側に形成された、前記パターン化層の基となるパターン化前の非パターン化層と、
前記非パターン化層上に形成された、パターン化したレジスト膜であるレジストパターンと、
を備え、
前記レジストパターンは、他の部分よりも厚さが薄い溝部分を有し、
前記溝部分は、前記非パターン化層上の除去予定箇所でない位置であって、前記レジストパターンにおける、袋小路を形成する部分に配置され、
前記溝部分は、前記溝部分の延在方向に交差する交差方向において、異なる厚さを有し、
前記交差方向において、前記溝部分の中央側の厚さは、前記溝部分の前記他の部分側の厚さよりも薄い、
太陽電池の仕掛品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の製造方法および太陽電池の仕掛品に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、光電変換層として機能する半導体基板と、半導体基板の主面に積層された半導体層、透明電極層(Transparent Conductive Oxide:TCO)および金属電極層とを備える。一般に、これらの半導体層、透明電極層または金属電極層のパターニングでは、例えばフォトリソグラフィ技術(フォトレジスト)を用いたエッチング法が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-164057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体層、透明電極層または金属電極層をエッチング法を用いて形成する場合、レジスト近傍にエッチング溶液が溜まることがある。その結果、エッチングが不均一となり、太陽電池の性能が低下することがある。
【0005】
本発明は、エッチング法を用いたパターニングプロセスに起因する太陽電池の性能低下を抑制する太陽電池の製造方法および太陽電池の仕掛品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る太陽電池の製造方法は、半導体基板の少なくとも1つの主面側にパターン化層を備える太陽電池の製造方法であって、半導体基板の主面側に、パターン化層の基となるパターン化前の非パターン化層を形成する非パターン化層形成工程と、非パターン化層上に、パターン化されたレジスト膜であるレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、エッチング法を用いて、レジストパターンに基づいて非パターン化層をパターン化したパターン化層を形成するパターン化層形成工程とを含み、レジストパターン形成工程では、スクリーン印刷法を用いて、所定間隔だけ分離するようにレジスト剤を印刷し、所定間隔とは、レジスト剤の流動性により、分離したレジスト剤同士が連結してレジストパターンを形成し、レジストパターンにおいて分離したレジスト剤同士が連結した連結部分の厚さが連結部分以外の厚さよりも薄くなる、間隔である。
【0007】
本発明に係る太陽電池の仕掛品は、半導体基板の少なくとも1つの主面側にパターン化層を形成するための太陽電池の仕掛品であって、半導体基板の主面側に形成された、パターン化層の基となるパターン化前の非パターン化層と、非パターン化層上に形成された、パターン化したレジスト膜であるレジストパターンとを備え、レジストパターンは、他の部分よりも厚さが薄い溝部分を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エッチング法を用いたパターニングプロセスに起因する太陽電池の性能低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る太陽電池を裏面側からみた図である。
図2図1の太陽電池におけるII-II線断面図である。
図3A】本実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるパッシベーション層形成工程および光学調整層形成工程を示す図である。
図3B】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層材料膜形成工程(非パターン化層形成工程)を示す図である。
図3C】本実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるレジストパターン形成工程を示す図である。
図3D】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程(パターン化層形成工程)を示す図である。
図3E】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層材料膜形成工程(非パターン化層形成工程)を示す図である。
図3F】本実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるレジストパターン形成工程を示す図である。
図3G】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層形成工程(パターン化層形成工程)を示す図である。
図4A図3Cに示すレジストパターン形成工程における太陽電池の仕掛品のIV部分の裏面図およびIVA-IVA線断面図である(パターン印刷直後)。
図4B図3Cに示すレジストパターン形成工程における太陽電池の仕掛品のIV部分の裏面図およびIVB-IVB線断面図である(所定時間経過後)。
図5】従来のレジストパターン形成工程における太陽電池の仕掛品のIV部分相当の裏面図およびV-V線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0011】
(太陽電池の一例)
まず、本実施形態に係る太陽電池の製造方法で製造される太陽電池の一例について説明する。図1は、本実施形態に係る太陽電池を裏面側からみた図である。図1に示す太陽電池1は、裏面電極型(バックコンタクト型)の太陽電池である。太陽電池1は、2つの主面を備える半導体基板11を備え、半導体基板11の一方の主面において第1領域7と第2領域8とを有する。
【0012】
第1領域7は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー部7fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部7bとを有する。バスバー部7bは、半導体基板11の一方の辺部に沿って第1方向(X方向)に延在し、フィンガー部7fは、バスバー部7bから、第1方向(X方向)に交差する第2方向(Y方向)に延在する。
同様に、第2領域8は、いわゆる櫛型の形状であり、櫛歯に相当する複数のフィンガー部8fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部8bとを有する。バスバー部8bは、半導体基板11の一方の辺部に対向する他方の辺部に沿って第1方向(X方向)に延在し、フィンガー部8fは、バスバー部8bから、第2方向(Y方向)に延在する。
フィンガー部7fとフィンガー部8fとは、第1方向(X方向)に交互に設けられている。
【0013】
図2は、図1の太陽電池におけるII-II線断面図である。図2に示すように、太陽電池1は、半導体基板11と、半導体基板11の主面のうちの受光する側の一方の主面である受光面側に順に積層されたパッシベーション層13および光学調整層15を備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の主面のうちの受光面の反対側の他方の主面である裏面側の一部(第1領域7)に順に積層されたパッシベーション層23、第1導電型半導体層25および第1電極層27を備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の裏面側の他の一部(第2領域8)に順に積層されたパッシベーション層33、第2導電型半導体層35、および第2電極層37を備える。
【0014】
半導体基板11は、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等の結晶シリコン材料で形成される。半導体基板11は、例えば結晶シリコン材料にn型ドーパントがドープされたn型の半導体基板である。n型ドーパントとしては、例えばリン(P)が挙げられる。
半導体基板11は、受光面側からの入射光を吸収して光キャリア(電子および正孔)を生成する光電変換基板として機能する。
【0015】
パッシベーション層13は、半導体基板11の受光面側に形成されている。パッシベーション層23は、半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。パッシベーション層33は、半導体基板11の裏面側の第2領域8に形成されている。パッシベーション層13,23,33は、例えば真性(i型)アモルファスシリコンを主成分とする材料で形成される。
パッシベーション層13,23,33は、半導体基板11で生成されたキャリアの再結合を抑制し、キャリアの回収効率を高める。
【0016】
光学調整層15は、半導体基板11の受光面側のパッシベーション層13上に形成されている。光学調整層15は、入射光の反射を防止する反射防止層として機能するとともに、半導体基板11の受光面側およびパッシベーション層13を保護する保護層として機能する。光学調整層15は、例えば酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、または酸窒化珪素(SiON)のようなそれらの複合物等の絶縁体材料で形成される。
【0017】
第1導電型半導体層25は、パッシベーション層23上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。すなわち、第1導電型半導体層25は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー部と、櫛歯の支持部に相当し、複数のフィンガー部の一端が接続されたバスバー部とを有する。バスバー部は、第1領域7のバスバー部7bに対応し、半導体基板11のX方向の一方端側の辺部に沿ってY方向に延在する。フィンガー部は、第1領域7のフィンガー部7fに対応し、バスバー部からX方向に延在する。
【0018】
第2導電型半導体層35は、パッシベーション層33上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第2領域8に形成されている。すなわち、第2導電型半導体層35は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー部と、櫛歯の支持部に相当し、複数のフィンガー部の一端が接続されたバスバー部とを有する。バスバー部は、第2領域8のバスバー部8bに対応し、半導体基板11のX方向の他方端側の辺部に沿ってY方向に延在する。フィンガー部は、第2領域8のフィンガー部8fに対応し、バスバー部からX方向に延在する。
【0019】
第1導電型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。第1導電型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料にp型ドーパントがドープされたp型半導体層である。p型ドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられる。
第2導電型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。第2導電型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料にn型ドーパント(例えば、上述したリン(P))がドープされたn型の半導体層である。
【0020】
なお、第1導電型半導体層25がn型半導体層であり、第2導電型半導体層35がp型半導体層であってもよい。
また、半導体基板11は、結晶シリコン材料にp型ドーパント(例えば、上述したホウ素(B))がドープされたp型半導体基板であってもよい。
【0021】
第1電極層27は、第1導電型半導体層25上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。第2電極層37は、第2導電型半導体層35上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第2領域8に形成されている。
第1電極層27は、第1導電型半導体層25上に順に積層された透明電極層28と金属電極層29とを有する。第2電極層37は、第2導電型半導体層35上に順に積層された透明電極層38と金属電極層39とを有する。
【0022】
透明電極層28および金属電極層29は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー部と、櫛歯の支持部に相当し、複数のフィンガー部の一端が接続されたバスバー部とを有する。バスバー部は、第1領域7のバスバー部7bに対応し、半導体基板11のX方向の一方端側の辺部に沿ってY方向に延在する。フィンガー部は、第1領域7のフィンガー部7fに対応し、バスバー部からX方向に延在する。
【0023】
透明電極層38および金属電極層39は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー部と、櫛歯の支持部に相当し、複数のフィンガー部の一端が接続されたバスバー部とを有する。バスバー部は、第2領域8のバスバー部8bに対応し、半導体基板11のX方向の他方端側の辺部に沿ってY方向に延在する。フィンガー部は、第2領域8のフィンガー部8fに対応し、バスバー部からX方向に延在する。
【0024】
透明電極層28,38は、透明な導電性材料で形成される。透明導電性材料としては、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムおよび酸化スズの複合酸化物)、ZnO(Zinc Oxide:酸化亜鉛)が挙げられる。
金属電極層28,38は、金属材料で形成される。金属材料としては、例えば、Cu、Ag、Alおよびこれらの合金が用いられる。金属電極層28,38は、例えば、銀等の金属粉末を含有する導電性ペースト材料で形成されてもよい。
【0025】
(太陽電池の製造方法の一例)
次に、図3A図3G図4Aおよび図4Bを参照して、図1および図2に示す本実施形態の太陽電池1の製造方法について説明する。図3Aは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるパッシベーション層形成工程および光学調整層形成工程を示す図であり、図3Bは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層材料膜形成工程(非パターン化層形成工程)を示す図である。図3Cは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるレジストパターン形成工程を示す図であり、図3Dは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程(パターン化層形成工程)を示す図である。図3Eは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層材料膜形成工程(非パターン化層形成工程)を示す図であり、図3Fは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるレジストパターン形成工程を示す図である。図3Gは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層形成工程(パターン化層形成工程)を示す図である。図4Aは、図3Cに示すレジストパターン形成工程における太陽電池の仕掛品のIV部分の裏面図およびIVA-IVA線断面図であり(パターン印刷直後)、図4Bは、図3Cに示すレジストパターン形成工程における太陽電池の仕掛品のIV部分の裏面図およびIVB-IVB線断面図である(所定時間経過後)。また、図5は、従来のレジストパターン形成工程における太陽電池の仕掛品のIV部分相当の裏面図およびV-V線断面図である。
【0026】
本実施形態では、基板トレイ3として、半導体基板11の側面側、および半導体基板11の裏面側の周縁領域を被覆するトレイを用いるが、基板トレイはこれに限定されず、種々のトレイが用いられてもよい。
【0027】
まず、図3Aに示すように、例えばCVD法(化学気相堆積法)を用いて、半導体基板11の受光面側の全面に、パッシベーション層13を積層(製膜)する(パッシベーション層形成工程)。次に、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の受光面側のパッシベーション層13上の全面に、光学調整層15を積層(製膜)する(光学調整層形成工程)。
【0028】
次に、図3Bに示すように、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25(パターン化層)の基となるパターン化前のパッシベーション層材料膜23Zおよび第1導電型半導体層材料膜25Z(非パターン化層)を順に形成(製膜)する(第1半導体層材料膜形成工程:非パターン化層形成工程)。
【0029】
次に、図3Cに示すように、半導体基板11の裏面側の第1領域7におけるパッシベーション層材料膜23Zおよび第1導電型半導体層材料膜25Z上に、パターン化されたレジスト膜であるレジストパターンを形成する(レジストパターン形成工程)。
【0030】
ここで、従来、フォトリソグラフィ―技術を用いて、図5に示すように、第1領域7におけるフィンガー部7fおよびバスバー部7bに対応し、略均一な厚さを有するレジストパターン40Xを形成した。この従来のレジストパターン40Xでは、後述するエッチング法を用いたパターン化層形成工程において、以下の問題が生じる。
パターン化層形成工程では、半導体基板11の表面に気泡が発生することを抑制するために、エッチング溶液に対する半導体基板11の挿入(浸漬)および取出方向は、フィンガー部に対応するレジストパターン40Xの延在方向(Y方向)に沿う。
この場合、エッチング溶液から半導体基板11を取り出す際に、レジストパターン40Xにおけるバスバー部とフィンガー部とに対応する部分で形成される袋小路(blind alley,impasse)Aにエッチング溶液が溜まり、袋小路Aの部分のエッチングが袋小路A以外の部分よりも進行し過ぎることがある。そのため、エッチングが不均一となり、太陽電池の性能が低下することがある。
【0031】
この点に関し、本実施形態では、スクリーン印刷法を用いて、レジストパターン40を形成する。具体的には、図4Aに示すように、印刷版を用いて、所定間隔だけ分離するようにレジスト剤40Zを印刷する。所定間隔とは、レジスト剤40Zの流動性により、分離したレジスト剤40Z同士が連結してレジストパターン40を形成し、レジストパターン40において分離したレジスト剤40Z同士が連結した連結部分41の厚さが連結部分41以外の厚さよりも薄くなる、間隔である。
このように、印刷版を通過させた直後のレジスト剤40Zを分離配置させると、一定時間経過後、図4Bに示すように、分離していたレジスト剤40Z同士が連結し、連結部分41の厚さが連結部分41以外の厚さよりも薄くなる。これにより、連結部分41に溝が形成される。
【0032】
連結部分(溝部分)41は、レジストパターン40における、袋小路Aを形成する部分に形成される。連結部分(溝部分)41は、連結部分41の延在方向が、後述するパターン化層形成工程におけるエッチング溶液に対する半導体基板11の挿入および取出方向、換言すればフィンガー部に対応するレジストパターン40の延在方向(Y方向)に沿うように、形成される。
【0033】
これにより、後述するエッチング法を用いたパターン化層形成工程において、エッチング溶液から半導体基板11を取り出す際に、袋小路Aにエッチング溶液が溜まることが抑制される。そのため、エッチングの不均一が抑制され、太陽電池の性能低下が抑制される。
【0034】
なお、連結部分(溝部分)41は袋小路Aにエッチング溶液が溜まることを抑制できればよく、連結部分41の延在方向は、エッチング溶液に対する半導体基板11の挿入および取出方向(Y方向)に対して斜めに沿うように形成されてもよい。また、連結部分(溝部分)41は、袋小路Aを形成する、レジストパターン40におけるバスバー部に対応する部分のみならず、袋小路Aを形成する、レジストパターン40におけるフィンガー部に対応する部分に形成されてもよい。
【0035】
レジストパターン40を形成するためのレジスト剤40Zは、チキソトロピー性を有する材料を含む。これにより、スクリーン印刷の印刷版を通過する際に受ける力によってレジスト剤40Zの粘度が低下し(流動性が上昇し)、所定間隔だけ分離した部分において連結する。その際、次第にレジスト剤40Zの粘度が上昇し(流動性が低下し)、所定間隔だけ分離した部分において表面が平坦になる前に、レジスト剤40Zの粘度が戻り、連結部分41の厚さが連結部分41以外の厚さよりも薄くなり、連結部分41に溝が形成される。このように、スクリーン印刷において、チキソトロピー性を有するレジスト剤を用いると、連結部分41の厚さを連結部分41以外の厚さよりも薄くすること、換言すれば連結部分41に溝を形成することが容易となる。
【0036】
図4Bに示すように、本実施形態の太陽電池の製造方法における非パターン化層形成工程およびレジストパターン形成工程後であって、パターン化層形成工程前の太陽電池の仕掛品1Zの一例は、半導体基板11の裏面側の全面に形成された、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25(パターン化層)の基となるパターン化前のパッシベーション層材料膜23Zおよび第1導電型半導体層材料膜25Z(非パターン化層)と、半導体基板11の裏面側の第1領域7におけるパッシベーション層材料膜23Zおよび第1導電型半導体層材料膜25Z上に形成された、パターン化されたレジスト膜であるレジストパターン40とを備える。レジストパターン40は、他の部分よりも厚さが薄い連結部分(溝部分)41を有する。連結部分(溝部分)41は、レジストパターン40における、袋小路Aを形成する部分に配置される。
【0037】
次に、図3Dに示すように、エッチング法を用いて、半導体基板11の裏面側の第2領域8におけるパッシベーション層材料膜23Zおよび第1導電型半導体層材料膜25Z(非パターン化層)を除去する。これにより、半導体基板11の裏面側の第1領域7に、パターン化されたパッシベーション層23および第1導電型半導体層25(パターン化層)を形成する(第1半導体層形成工程:パターン化層形成工程)。
【0038】
エッチング溶液としては、例えばフッ酸と硝酸との混合液等の酸性溶液が用いられる。
その後、リンス処理が行われ、レジストパターン40を剥離する。
【0039】
次に、図3Eに示すように、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、すなわち第2領域8における露出した半導体基板11上および第1領域7における第1導電型半導体層25上に、パッシベーション層33および第2導電型半導体層35(パターン化層)の基となるパターン化前のパッシベーション層材料膜33Zおよびn型半導体層材料膜35Z(非パターン化層)を順に形成(製膜)する(第2半導体層材料膜形成工程:非パターン化層形成工程)。
【0040】
なお、第1半導体層形成工程において、半導体基板11の裏面側の第2領域8におけるパッシベーション層材料膜23Zの全部が残る場合、パッシベーション層材料膜の積層(製膜)を行わなくてもよい。また、第1半導体層形成工程において、半導体基板11の裏面側の第2領域8におけるパッシベーション層材料膜23Zの一部が残る場合、除去された分だけパッシベーション層材料膜の積層(製膜)を行えばよい。
【0041】
次に、図3Fに示すように、上述したレジストパターン形成工程(図3C図4Aおよび図4B)と同様に、スクリーン印刷法を用いて、半導体基板11の裏面側の第2領域8におけるパッシベーション層材料膜33Zおよびn型半導体層材料膜35Z上に、パターン化されたレジスト膜であるレジストパターン40を形成する(レジストパターン形成工程)。
【0042】
次に、図3Gに示すように、エッチング法を用いて、半導体基板11の裏面側の第1領域7におけるパッシベーション層材料膜33Zおよび第2導電型半導体層材料膜35Z(非パターン化層)を除去する。これにより、半導体基板11の裏面側の第2領域8に、パターン化されたパッシベーション層33および第2導電型半導体層35(パターン化層)を形成する(第2半導体層形成工程:パターン化層形成工程)。
【0043】
エッチング溶液としては、例えばフッ酸と硝酸との混合液等の酸性溶液が用いられる。
その後、リンス処理が行われ、レジストパターン40を剥離する。
【0044】
次に、半導体基板11の裏面側に、第1電極層27および第2電極層37を形成する(電極層形成工程)。
具体的には、例えばスパッタリング法等のPVD法(物理気相成長法)を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、透明電極層材料膜を積層(製膜)する。その後、例えばエッチングペーストを用いたエッチング法を用いて、透明電極層材料膜の一部を除去することにより、透明電極層28,38のパターニングを行う。透明電極層材料膜に対するエッチング溶液としては、例えば塩酸または塩化第二鉄水溶液が用いられる。
その後、例えばパターン印刷法または塗布法を用いて、透明電極層28上に金属電極層29を形成し、透明電極層38の上に金属電極層39を形成することにより、第1電極層27および第2電極層37を形成する。
【0045】
以上の工程により、図1および図2に示す本実施形態の裏面電極型の太陽電池1が完成する。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の太陽電池の製造方法によれば、レジストパターン形成工程において、スクリーン印刷法を用いて、所定間隔だけ分離するようにレジスト剤40Zを印刷し(図4A)、所定間隔とは、レジスト剤40Zの流動性により、分離したレジスト剤40Z同士が連結してレジストパターン40を形成し、レジストパターン40において分離したレジスト剤40Z同士が連結した連結部分41の厚さが連結部分41以外の厚さよりも薄くなる、間隔である(図4B)。これにより、連結部分41に、例えば袋小路Aを形成する部分に溝が形成される。これにより、エッチング法を用いたパターン化層形成工程において、エッチング溶液から半導体基板11を取り出す際に、袋小路Aにエッチング溶液が溜まることが抑制される。そのため、エッチングの不均一が抑制され、太陽電池の性能低下が抑制される。その結果、太陽電池の歩留りの低下が抑制される。
【0047】
また、本実施形態の太陽電池の製造方法によれば、エッチング溶液から半導体基板11を取り出す際に、エッチング溶液が袋小路に溜まることが軽減されるので、その後のリンス処理へのエッチング溶液の持ち込み量が軽減される。そのため、リンス処理の処理時間の短縮、およびリンス溶液量およびリンス液交換回数の省力化ができ、コストダウンが可能となる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、エッチング法を用いた半導体層のパターン化層形成において、本発明の特徴のスクリーン印刷法を用いたレジストパターン形成工程を適用した太陽電池の製造方法を例示したが、本発明の特徴はこれに限定されず、透明電極層または金属電極層のパターン化層形成においてエッチング法を用いる場合にも適用可能である。
【0049】
また、上述した実施形態では、裏面電極型の太陽電池の製造方法を例示したが、本発明の特徴は、両面電極型の太陽電池の製造方法にも適用可能である。
【0050】
また、上述した実施形態では、図2に示すようにヘテロ接合型の太陽電池1の製造方法を例示したが、本発明の特徴は、ヘテロ接合型の太陽電池に限らず、ホモ接合型の太陽電池等の種々の太陽電池の製造方法に適用可能である。
【0051】
また、上述した実施形態では、結晶シリコン基板を有する太陽電池を例示したが、これに限定されない。例えば、太陽電池は、ガリウムヒ素(GaAs)基板を有していてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 太陽電池
7 第1領域
7b,8b バスバー部
7f,8f フィンガー部
8 第2領域
11 半導体基板
13 パッシベーション層
15 光学調整層
23 パッシベーション層
23Z,33Z パッシベーション層材料膜
25 第1導電型半導体層(パターン化層)
25Z 第1導電型半導体層材料膜(非パターン化層)
27 第1電極層
28,38 透明電極層(パターン化層)
29,39 金属電極層(パターン化層)
33 パッシベーション層
35 第2導電型半導体層(パターン化層)
35Z 第2導電型半導体層材料膜(非パターン化層)
37 第2電極層
40,40X レジストパターン
40Z レジスト剤
41 連結部分(溝部分)
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図4A
図4B
図5