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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/40 20071001AFI20221208BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20221208BHJP
   B60K 6/36 20071001ALI20221208BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20221208BHJP
   F16H 41/24 20060101ALI20221208BHJP
   F16H 45/02 20060101ALI20221208BHJP
   H02K 7/10 20060101ALI20221208BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20221208BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20221208BHJP
【FI】
B60K6/40 ZHV
B60K6/48
B60K6/36
B60K6/54
F16H41/24 B
F16H45/02 Z
H02K7/10 A
B60L15/20 K
B60L50/16
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021512001
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020014032
(87)【国際公開番号】W WO2020203776
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2019067566
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】太田 浩史
(72)【発明者】
【氏名】清水 健
(72)【発明者】
【氏名】岡澤 廉
(72)【発明者】
【氏名】池邨 将史
(72)【発明者】
【氏名】譚 国棟
(72)【発明者】
【氏名】大木 崇生
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0166049(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0210050(US,A1)
【文献】特開2018-196219(JP,A)
【文献】特開2015-174561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20ー 6/547
F16H 41/24
F16H 45/02
H02K 7/10
B60L 1/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の駆動力源となる回転電機と、
前記回転電機のロータに連結された第1回転部材と、
前記回転電機に対して軸方向の一方側である軸方向第1側に配置され、回転ハウジングを有する流体継手と、を備え、
前記第1回転部材及び前記回転ハウジングには、周方向に沿って複数の締結部が設けられ、
前記第1回転部材と前記回転ハウジングとが、複数の前記締結部のそれぞれにおいて、締結部材によって締結され、
複数の前記締結部のそれぞれは、前記軸方向に沿うように前記第1回転部材に形成されて、前記締結部材が挿入される第1締結孔と、前記軸方向に沿うように前記回転ハウジングに形成されて、前記締結部材が挿入される第2締結孔と、を有し、
前記第1回転部材及び前記回転ハウジングの一方の外周部に被係止部が設けられ、
前記第1回転部材及び前記回転ハウジングの他方の外周部に係止部が設けられ、
前記係止部は、前記被係止部に対して前記軸方向に挿入されて、前記被係止部に対して前記周方向の相対回転が規制されるように係止され、
前記第1締結孔と前記第2締結孔とは、前記係止部が前記被係止部に係止された状態で、前記軸方向に沿う軸方向視で重なるように配置され
前記流体継手は、前記軸方向に対向して配置されて互いに相対回転可能に支持されたポンプインペラ及びタービンランナと、前記ポンプインペラと前記タービンランナとを選択的に直結係合状態とするロックアップクラッチと、を備え、
前記ポンプインペラ及び前記タービンランナは、前記ロックアップクラッチに対して前記軸方向第1側に配置され、
前記回転ハウジングは、前記ポンプインペラと前記タービンランナと前記ロックアップクラッチとを収容すると共に、前記ポンプインペラと一体的に回転するように連結され、
複数の前記締結部は、前記ロックアップクラッチに対して径方向の外側であって、前記径方向に沿う径方向視で前記ロックアップクラッチと重複すると共に、前記軸方向視で前記ポンプインペラ及び前記タービンランナと重複する位置に配置されている、車両用駆動装置。
【請求項2】
車輪の駆動力源となる回転電機と、
前記回転電機のロータに連結された第1回転部材と、
前記回転電機に対して軸方向の一方側である軸方向第1側に配置され、回転ハウジングを有する流体継手と、を備え、
前記第1回転部材及び前記回転ハウジングには、周方向に沿って複数の締結部が設けられ、
前記第1回転部材と前記回転ハウジングとが、複数の前記締結部のそれぞれにおいて、締結部材によって締結され、
複数の前記締結部のそれぞれは、前記軸方向に沿うように前記第1回転部材に形成されて、前記締結部材が挿入される第1締結孔と、前記軸方向に沿うように前記回転ハウジングに形成されて、前記締結部材が挿入される第2締結孔と、を有し、
前記第1回転部材及び前記回転ハウジングの一方の外周部に被係止部が設けられ、
前記第1回転部材及び前記回転ハウジングの他方の外周部に係止部が設けられ、
前記係止部は、前記被係止部に対して前記軸方向に挿入されて、前記被係止部に対して前記周方向の相対回転が規制されるように係止され、
前記第1締結孔と前記第2締結孔とは、前記係止部が前記被係止部に係止された状態で、前記軸方向に沿う軸方向視で重なるように配置され
前記軸方向における、前記第1回転部材及び前記回転ハウジングの一方に対して他方の側を突出側とし、当該突出側の反対側を反突出側として、
前記第1回転部材及び前記回転ハウジングの一方の外周部に、前記突出側に突出する突出部が設けられ、
前記被係止部が、前記突出部の前記突出側の端縁から前記反突出側に切り欠くと共に、前記突出部を径方向に貫通するように形成され、
前記係止部が、前記第1回転部材及び前記回転ハウジングの他方の外周部から前記径方向の外側に突出するように形成されている、車両用駆動装置。
【請求項3】
前記被係止部の前記軸方向の寸法は、前記係止部の前記軸方向の寸法よりも大きい、請求項2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記被係止部の前記軸方向の寸法は、前記締結部が1つも締結されていない状態において、前記第1回転部材と前記回転ハウジングとが前記軸方向に相対的に移動可能な範囲よりも大きい、請求項2又は3に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記締結部材が、前記反突出側から前記第1締結孔及び前記第2締結孔に挿入されている、請求項2から4のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
前記締結部材が、前記軸方向における前記回転ハウジングに対して前記第1回転部材の側から前記第1締結孔及び前記第2締結孔に挿入されている、請求項に記載の車両用駆動装置。
【請求項7】
互いに係止された前記係止部と前記被係止部との前記周方向の間にクリアランスが形成され、
前記第1締結孔と前記第2締結孔とは、前記係止部が前記被係止部に対して前記周方向の一方側から当接した状態で、前記軸方向視で重なるように配置されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項8】
前記係止部及び前記被係止部の前記周方向の配置領域と、前記第1締結孔及び前記第2締結孔の前記周方向の配置領域とが重なっている、請求項1からのいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項9】
前記第1回転部材と同軸に配置され、内燃機関に駆動連結される第2回転部材と、
動力伝達経路における前記第1回転部材と前記第2回転部材との間に配置されて、前記回転電機と前記内燃機関とを選択的に連結する係合装置と、を更に備え、
前記第2回転部材は、前記第1回転部材に対して前記軸方向第1側とは反対側である軸方向第2側に配置され、前記第1回転部材とは独立して回転自在である、請求項1からのいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪の駆動力源となる回転電機と、流体継手と、を備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような車両用駆動装置の一例が、下記の特許文献1に開示されている。以下、この背景技術の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1の車両用駆動装置(16)では、内燃機関切離用係合装置(26)を介して、第1回転部材(66)と第2回転部材(64)とが選択的に連結されている。第1回転部材(66)には、当該第1回転部材に対して径方向の外側に延在するフレックスプレート(68)が一体的に回転可能に連結されている。フレックスプレート(68)は、流体継手(22)の回転ハウジングに対して一体的に回転可能に連結されている。具体的には、フレックスプレート(68)及び回転ハウジングには、周方向に沿って複数の締結部が設けられ、当該複数の締結部のそれぞれにおいて、フレックスプレート(68)と回転ハウジングとが締結部材(78)によって締結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2015/0166049号明細書(段落0033及び0034、並びに、第2図及び第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の車両用駆動装置(16)の製造工程では、ケース(60)の開口部(80)を通して、複数の締結部のそれぞれにおける締結作業が行われる。その際、フレックスプレート(68)及び回転ハウジングを回転させて、作業対象となる締結部の周方向の位置を開口部(80)の周方向の位置に対応させる必要がある。
【0006】
その第1の方法として、内燃機関切離用係合装置(26)を係合状態とし、ケース(60)の外部からのアクセスが容易な第2回転部材(64)を回転させて、第1回転部材(66)及びフレックスプレート(68)を回転させることにより、複数の締結部のうちの作業対象となる締結部の周方向の位置を、開口部(80)の周方向の位置に対応させることが特許文献1に開示されている。
【0007】
また、第2の方法として、複数のノッチ(76)を、フレックスプレート(68)の外周部に一定の間隔で設け、ケース(60)の開口部(80)を通して、バールやマイナスドライバー等の工具(84)をノッチ(76)に差し込み、内燃機関切離用係合装置(26)を解放した状態で、工具(84)によりフレックスプレート(68)及び第1回転部材(66)を回転させることが特許文献1に開示されている。
【0008】
しかし、上記のいずれの方法においても、締結部が1つも締結されていない状態では、フレックスプレート(68)と回転ハウジングとが互いに相対回転するため、複数の締結部のうちの作業対象となる締結部の周方向の位置を開口部(80)の周方向の位置に対応させる作業は煩雑となり易い。その結果、車両用駆動装置(16)の製造工数が増加するという課題があった。
【0009】
そこで、車両用駆動装置の製造工数を少なく抑えることができる技術の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記に鑑みた、車両用駆動装置の特徴構成は、
車輪の駆動力源となる回転電機と、
前記回転電機のロータに連結された第1回転部材と、
前記回転電機に対して軸方向の一方側である軸方向第1側に配置され、回転ハウジングを有する流体継手と、を備え、
前記第1回転部材及び前記回転ハウジングには、周方向に沿って複数の締結部が設けられ、
前記第1回転部材と前記回転ハウジングとが、複数の前記締結部のそれぞれにおいて、締結部材によって締結され、
複数の前記締結部のそれぞれは、前記軸方向に沿うように前記第1回転部材に形成されて、前記締結部材が挿入される第1締結孔と、前記軸方向に沿うように前記回転ハウジングに形成されて、前記締結部材が挿入される第2締結孔と、を有し、
前記第1回転部材及び前記回転ハウジングの一方の外周部に被係止部が設けられ、
前記第1回転部材及び前記回転ハウジングの他方の外周部に係止部が設けられ、
前記係止部は、前記被係止部に対して前記軸方向に挿入されて、前記被係止部に対して前記周方向の相対回転が規制されるように係止され、
前記第1締結孔と前記第2締結孔とは、前記係止部が前記被係止部に係止された状態で、前記軸方向に沿う軸方向視で重なるように配置されている点にある。
【0011】
この特徴構成によれば、係止部(7b)が被係止部(7a)に係止された状態とすることで、締結部(6)が1つも締結部材(F2)によって締結されていない状態においても、第1回転部材(RT1)と回転ハウジング(44)との周方向(C)の相対移動を規制することができる。そのため、締結部(6)が1つも締結部材(F2)によって締結されていない状態においても、第1締結孔(H1)と第2締結孔(H2)とが、軸方向(L)に沿う軸方向視で重なっている状態を維持することができる。これにより、締結部(6)を締結する作業を容易に行うことができる。その結果、車両用駆動装置の製造工数を少なく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る車両用駆動装置のスケルトン図
図2】実施形態に係る車両用駆動装置の要部を示す軸方向に沿う断面図
図3】第1回転部材の軸部材の側面図
図4】第1回転部材の軸部材の正面図
図5】第1回転部材のフレックスプレートの正面図
図6】トルクコンバータにおける回転ハウジングの連結部の正面図
図7】係止部が被係止部に係止された状態におけるフレックスプレート及び連結部の正面図
図8】係止部が被係止部に係止された状態におけるフレックスプレート及び連結部を径方向の外側から見た図
図9】実施形態に係る車両用駆動装置の製造方法を示すフローチャート
図10】回転治具を示す図
図11】回転工程を示す図
図12】締結工程を示す図
図13】その他の実施形態に係る収容工程を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、実施形態に係る車両用駆動装置100について、図面を参照して説明する。図1に示すように、車両用駆動装置100は、車輪Wの駆動力源となる回転電機MGと、当該回転電機MGのロータRoに連結された第1回転部材RT1と、トルクコンバータTCと、を備えている。トルクコンバータTCは、回転電機MGと出力軸Oとの間の動力伝達経路に設けられている。本実施形態では、出力軸Oは、差動歯車装置DFを介して一対の車輪Wに駆動連結されている。そのため、出力軸Oに伝達された回転及びトルクは、差動歯車装置DFによって一対の車輪Wに分配される。
【0014】
なお、以下の説明では、特に区別して明記している場合を除き、「軸方向L」、「径方向R」、及び「周方向C」は、回転電機MGの軸心を基準として定義している。そして、軸方向Lにおける回転電機MGに対してトルクコンバータTC側(図2における右側)を「軸方向第1側L1」とし、その反対側(図2における左側)を「軸方向第2側L2」とする。また、径方向Rにおいて、回転電機MGの軸心側を「径方向内側R1」とし、その反対側を「径方向外側R2」とする。
【0015】
本実施形態では、車両用駆動装置100は、内燃機関ENのトルクを車輪Wに伝達させて車両を走行させることも可能に構成されている。具体的には、図1に示すように、車両用駆動装置100は、内燃機関ENに駆動連結された第2回転部材RT2と、動力伝達経路における第2回転部材RT2と第1回転部材RT1との間に配置されて、内燃機関ENと回転電機MGとを選択的に連結する係合装置CLと、を備えている。これにより、本実施形態では、車両用駆動装置100は、車輪Wの駆動力源として内燃機関EN及び回転電機MGの一方又は双方を用いる、所謂1モータパラレル方式のハイブリッド車両用の駆動装置として構成されている。
【0016】
本実施形態では、第1回転部材RT1と第2回転部材RT2とが、同軸に配置されている。そして、第2回転部材RT2は、第1回転部材RT1に対して軸方向第2側L2に配置されている。また、本実施形態では、第2回転部材RT2は、第1回転部材RT1とは独立して回転自在に構成されている。上述したように、本実施形態では、係合装置CLが設けられているため、係合装置CLが係合状態である場合には、第1回転部材RT1と第2回転部材RT2とは一体的に回転する。
【0017】
内燃機関ENは、燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等)である。内燃機関ENの出力軸(クランクシャフト等)は、第2回転部材RT2に駆動連結されている。なお、内燃機関ENの出力軸は、伝達されるトルクの変動を減衰するダンパ(図示を省略)を介して第2回転部材RT2に駆動連結されていると好適である。
【0018】
本実施形態では、動力伝達経路におけるトルクコンバータTCと出力軸Oとの間には、変速機TMが配置されている。変速機TMは、変速比を段階的又は無段階に変更可能な装置であり、変速入力軸としての中間軸Mの回転速度を所定の変速比で変速して、変速出力軸としての出力軸Oへ伝達する。
【0019】
図2に示すように、本実施形態では、回転電機MG、第1回転部材RT1、第2回転部材RT2、トルクコンバータTC、及び変速機TMは、ケース1に収容されている。本実施形態では、ケース1は、周壁部11と、第1側壁部12と、第2側壁部13と、を備えている。また、本実施形態では、ケース1は、軸方向Lに分離可能な2つの部分を備えている。具体的には、ケース1は、第1ケース部1Aと、当該第1ケース部1Aに対して軸方向第2側L2に接合された第2ケース部1Bと、を備えている。
【0020】
周壁部11は、回転電機MG、トルクコンバータTC等の径方向外側R2を囲む筒状に形成されている。本実施形態では、周壁部11は、第1ケース部1Aに形成された第1周壁部11Aと、第2ケース部1Bに形成された第2周壁部11Bと、を備えている。また、周壁部11の径方向内側R1に形成された空間は、第1側壁部12及び第2側壁部13によって軸方向Lに区画されている。本実施形態では、第1側壁部12及び第2側壁部13は、軸方向第1側L1から記載の順に配置されている。第1側壁部12と第2側壁部13との間の空間には、回転電機MG及び係合装置CLが配置されている。また、第1側壁部12よりも軸方向第1側L1の空間には、トルクコンバータTCが配置されている。
【0021】
第1側壁部12は、周壁部11から径方向内側R1に延在するように形成されている。本実施形態では、第1側壁部12は、第2ケース部1Bに固定されている。第1側壁部12は、回転電機MG及び係合装置CLとトルクコンバータTCとの間に配置されている。第1側壁部12には、当該第1側壁部12を軸方向Lに貫通する開口が形成されており、当該開口が閉塞部材12aによって閉塞されている。また、第1側壁部12は、当該第1側壁部12を軸方向Lに貫通する貫通孔に第1回転部材RT1が挿通された状態で、第1回転部材RT1を回転可能に支持している。本実施形態では、第1回転部材RT1は、第2回転部材RT2及び中間軸Mと同軸に配置されている。第1回転部材RT1の詳細な構成については後述する。
【0022】
第2側壁部13は、周壁部11から径方向内側R1に延在するように形成されている。本実施形態では、第2側壁部13は、第2ケース部1Bに固定されている。第2側壁部13は、回転電機MG及び係合装置CLよりも軸方向第2側L2に配置されている。第2側壁部13は、当該第2側壁部13を軸方向Lに貫通する貫通孔に第2回転部材RT2が挿通された状態で、第2回転部材RT2を回転可能に支持している。
【0023】
回転電機MGは、ステータStと、当該ステータStに対して径方向内側R1に配置されたロータRoと、を有している。ここで、本願において「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
【0024】
ステータStは、ステータコアStcと、当該ステータコアStcから軸方向Lの両側(軸方向第1側L1及び軸方向第2側L2)にそれぞれ突出するコイルエンド部Ceが形成されるようにステータコアStcに巻装されたコイルと、を有している。本実施形態では、ステータコアStcは、第2ケース部1Bに固定されている。ロータRoは、ロータコアRocと、当該ロータコアRoc内に配置された永久磁石PMと、を有している。本実施形態では、ステータコアStc及びロータコアRocのそれぞれは、円環板状の磁性体(例えば、電磁鋼板等)である積層体を軸方向Lに複数積層して形成されている。
【0025】
本実施形態では、ロータRoは、ロータ支持部材2によって支持されている。ロータ支持部材2は、第1筒状部21と、支持部22と、第2筒状部23と、第3筒状部24と、を有している。
【0026】
第1筒状部21は、軸方向Lに延在する筒状に形成されている。第1筒状部21の外周面には、ロータRoが取り付けられている。第1筒状部21の外周面に対するロータRoの取り付けは、例えば、溶接、かしめ等によって行われる。第1筒状部21の軸方向第2側L2の端部には、第1筒状部21に対して径方向内側R1に延在する軸受支持部25が連結されている。そして、軸受支持部25の径方向内側R1の端部が、径方向外側R2から第2軸受B2により支持されている。また、ケース1の第2側壁部13が、径方向外側R2から第2軸受B2を支持している。こうして、ロータ支持部材2は、第2軸受B2を介して、ケース1の第2側壁部13に回転可能に支持されている。
【0027】
支持部22は、径方向Rに沿って延在するように形成されている。支持部22は、第1筒状部21から径方向内側R1に突出するように、第1筒状部21に連結されている。支持部22の径方向内側R1の端部には、第2筒状部23が連結されている。また、支持部22における第2筒状部23よりも径方向外側R2の部分には、第3筒状部24が連結されている。
【0028】
第2筒状部23は、支持部22から軸方向第2側L2に突出するように、支持部22に連結されている。第2筒状部23には第1回転部材RT1が挿通されており、それらが一体的に回転可能に連結されている。つまり、本実施形態では、第1回転部材RT1は、ロータ支持部材2を介して、ロータRoに連結されている。第3筒状部24は、支持部22から軸方向第1側L1に突出するように、支持部22に連結されている。第3筒状部24の外周面には、第1軸受B1が取り付けられている。つまり、第3筒状部24が、径方向外側R2から第1軸受B1により支持されている。また、ケース1の第1側壁部12が、径方向外側R2から第1軸受B1を支持している。こうして、ロータ支持部材2は、第1軸受B1を介して、ケース1の第1側壁部12に回転可能に支持されている。
【0029】
本実施形態では、係合装置CLは、回転電機MGよりも径方向内側R1であって、径方向Rに沿う径方向視で回転電機MGと重複する位置に配置されている。ここで、2つの要素の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線と直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの要素の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを指す。
【0030】
また、本実施形態では、係合装置CLは、摩擦係合装置であり、供給される油圧に基づいて係合の状態が制御される。係合装置CLは、摩擦部材31と、当該摩擦部材31の係合状態を切り替えるピストン32と、を備えている。
【0031】
摩擦部材31は、対となる外側摩擦材311及び内側摩擦材312を含んでいる。外側摩擦材311及び内側摩擦材312は、いずれも円環板状に形成されており、互いに回転軸を一致させて配置されている。また、外側摩擦材311及び内側摩擦材312は複数枚ずつ設けられており、これらは軸方向Lに沿って交互に配置されている。外側摩擦材311及び内側摩擦材312は、いずれか一方をフリクションプレートとし、他方をセパレートプレートとすることができる。
【0032】
外側摩擦材311は、本例では、ロータ支持部材2によって支持されている。具体的には、ロータ支持部材2の第1筒状部21の内周面には、軸方向Lに延在する複数のスプライン歯が周方向Cに分散して形成されている。そして、外側摩擦材311の外周面にも同様のスプライン歯が形成されており、それらのスプライン歯が係合された状態で、外側摩擦材311が第1筒状部21により径方向外側R2から支持されている。これにより、外側摩擦材311は、ロータ支持部材2に対して周方向Cの相対回転が規制された状態で軸方向Lに摺動可能に支持されている。
【0033】
内側摩擦材312は、第2回転部材RT2に連結された摩擦材支持部3aによって支持されている。摩擦材支持部3aは、第2回転部材RT2から径方向外側R2に突出するように、第2回転部材RT2に連結されている。本実施形態では、摩擦材支持部3aは、第2回転部材RT2の軸方向第1側L1の端部に配置されている。摩擦材支持部3aの径方向外側R2の端部の外周面には、軸方向Lに延在する複数のスプライン歯が周方向Cに分散して形成されている。そして、内側摩擦材312の内周面にも同様のスプライン歯が形成されており、それらのスプライン歯が係合された状態で、内側摩擦材312が摩擦材支持部3aにより径方向内側R1から支持されている。これにより、内側摩擦材312は、摩擦材支持部3aに対して周方向Cの相対回転が規制された状態で軸方向Lに摺動可能に支持されている。
【0034】
ピストン32は、摩擦部材31に対して軸方向第1側L1に配置されている。ピストン32は、付勢部材321によって軸方向第1側L1に付勢されている。本実施形態では、ピストン32は、当該ピストン32と支持部22との間に形成された油室に所定油圧の油が供給された際に、当該油圧に応じて付勢部材321の付勢力に抗して軸方向第2側L2に摺動し、摩擦部材31を軸方向第1側L1から押圧する。また、本実施形態では、ピストン32は、径方向Rに沿って延在し、ピストン32の径方向外側R2の端部が摩擦部材31を押圧するように形成されている。
【0035】
上記の通り、回転電機MGのステータStは第2ケース部1Bに固定されており、ロータ支持部材2、第1回転部材RT1、及び第2回転部材RT2は、第2ケース部1Bに固定された第1側壁部12又は第2側壁部13に対して回転可能に支持されている。したがって、本実施形態では、回転電機MG、係合装置CL、第1回転部材RT1、及び第2回転部材RT2は、第2ケース部1Bに支持されている。
【0036】
トルクコンバータTCは、回転電機MGに対して軸方向第1側L1に配置されている。トルクコンバータTCは、「流体継手」に相当する。トルクコンバータTCは、ポンプインペラ41と、タービンランナ42と、ロックアップクラッチ43と、回転ハウジング44と、を備えている。本実施形態では、トルクコンバータTCは、ケース1に収容されている。具体的には、トルクコンバータTCは、変速機TMと共に、第1ケース部1Aに支持されている。
【0037】
ポンプインペラ41とタービンランナ42とは、軸方向Lに対向して配置されている。本実施形態では、ポンプインペラ41がタービンランナ42に対して軸方向第1側L1で対向するように配置されている。ポンプインペラ41とタービンランナ42とは、互いに相対回転可能に支持されている。ポンプインペラ41及びタービンランナ42は、ロックアップクラッチ43に対して軸方向第1側L1に配置されている。ポンプインペラ41は、回転ハウジング44と一体的に回転するように連結されている。タービンランナ42は、中間軸Mと一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、タービンランナ42と中間軸Mとは、軸方向Lに相対的に移動すると共に周方向Cに一体的に回転するように、スプライン係合により連結されている。ロックアップクラッチ43は、ポンプインペラ41とタービンランナ42とを選択的に直結係合状態とするように構成されている。つまり、ロックアップクラッチ43は、回転ハウジング44と中間軸Mとを直結係合状態に切り替え可能に構成されている。
【0038】
回転ハウジング44は、ポンプインペラ41、タービンランナ42、及びロックアップクラッチ43を収容している。回転ハウジング44は、ポンプインペラ41、タービンランナ42、及びロックアップクラッチ43を、軸方向Lの両側及び径方向外側R2から覆うように形成されている。回転ハウジング44は、第1回転部材RT1と連結される連結部45を備えている。連結部45の詳細な構成については後述する。
【0039】
図2に示すように、本実施形態では、第1回転部材RT1は、軸方向Lに沿って延在する軸部材51と、軸部材51に連結されていると共に径方向Rに沿って延在するフレックスプレート52と、を備えている。
【0040】
図2及び図3に示すように、本実施形態では、軸部材51は、本体部511と、本体部511よりも径方向Rの寸法が大きい拡径部512と、を有している。
【0041】
本体部511は、軸方向Lに沿って延在する円柱状に形成されている。本体部511の内部には、油路が形成されている。本体部511は、ケース1の第1側壁部12を軸方向Lに貫通する貫通孔に挿通された状態で、第1側壁部12によって回転可能に支持されている。また、本体部511は、ロータ支持部材2の第2筒状部23に挿通された状態で、第2筒状部23と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、本体部511の外周面における軸方向第2側L2の端部に形成されたスプライン歯と、第2筒状部23の内周面における軸方向第2側L2の端部に形成されたスプライン歯とが互いに係合することにより、軸部材51とロータ支持部材2とが連結されている。
【0042】
図2から図4に示すように、拡径部512は、本体部511よりも大径の筒状に形成されている。本実施形態では、拡径部512は、本体部511の軸方向第1側L1の端部に連結され、本体部511に対して径方向外側R2に突出するように形成されている。拡径部512は、本体部511と一体的に回転可能に連結されている。本実施形態では、拡径部512は、本体部511と一体的に形成されている。図示の例では、拡径部512は、本体部511から径方向外側R2に突出するフランジ状に形成されている。
【0043】
本実施形態では、拡径部512には、トルクコンバータTCの回転ハウジング44が備える筒状部441が挿入されている。具体的には、拡径部512は、軸方向第1側L1に開口する筒状に形成されている。一方、回転ハウジング44の筒状部441も、軸方向第1側L1に開口する筒状に形成されている。そして、筒状部441は、当該筒状部441の軸方向第2側L2の端部から径方向外側R2に突出するように形成された摺動部441aが、拡径部512の内周面上を軸方向Lに摺動するように、拡径部512に対して径方向内側R1に配置されている。
【0044】
図4に示すように、拡径部512には、当該拡径部512とフレックスプレート52とを締結する内側締結部材F1(図2参照)が挿入される締結孔512aが形成されている。締結孔512aは、拡径部512を軸方向Lに貫通するように形成されている。締結孔512aは、周方向Cに沿って一定の間隔で複数配置されている。図示の例では、締結孔512aは、12個配置されている。後述するように、隣接する一対の締結孔512aの間に1つの凹部513aが位置するように、締結孔512aと凹部513aとが周方向Cに沿って交互に配置されている。図示の例では、内側締結部材F1はボルトである。
【0045】
図2及び図5に示すように、フレックスプレート52は、円形の薄板状に形成されている。図2に示すように、フレックスプレート52は、軸部材51の拡径部512よりも径方向外側R2に突出するように、径方向Rに沿って延在している。図5に示すように、フレックスプレート52には、内側締結部材F1が挿入される内側締結孔52aが形成されている。内側締結孔52aは、フレックスプレート52を軸方向Lに貫通するように形成されている。内側締結孔52aは、フレックスプレート52の半径の中央位置よりも径方向内側R1に配置されている。内側締結孔52aは、周方向Cに沿って一定の間隔で複数配置されている。具体的には、内側締結孔52aは、拡径部512の締結孔512aと同数(ここでは、12個)形成され、締結孔512aと対応する位置関係となるように配置されている。そして、複数の内側締結孔52aと複数の締結孔512aとが対応するようにフレックスプレート52と軸部材51とを軸方向Lに重ねて配置した状態で、それらの締結孔に内側締結部材F1が挿入されて、フレックスプレート52と軸部材51とが締結される。
【0046】
また、フレックスプレート52には、当該フレックスプレート52と回転ハウジング44の連結部45とを締結する外側締結部材F2(図2参照)が挿入される外側締結孔52bが形成されている。外側締結孔52bは、フレックスプレート52を軸方向Lに貫通するように形成されている。外側締結孔52bは、フレックスプレート52の半径の中央位置よりも径方向外側R2に配置されている。外側締結孔52bは、周方向Cに沿って一定の間隔で複数(ここでは、6個)配置されている。図示の例では、外側締結部材F2は、ボルトである。
【0047】
図2及び図6に示すように、連結部45は、円環板状に形成されている。図6に示すように、連結部45には、外側締結部材F2が挿入される締結孔45aが形成されている。締結孔45aは、連結部45を軸方向Lに貫通するように形成されている。締結孔45aは、周方向Cに沿って一定の間隔で複数配置されている。具体的には、締結孔45aは、フレックスプレート52の外側締結孔52bと同数(ここでは、6個)形成され、外側締結孔52bと対応する位置関係となるように配置されている。そして、複数の締結孔45aと複数の外側締結孔52bとが対応するように連結部45とフレックスプレート52とを軸方向Lに重ねて配置した状態で、それらの締結孔に外側締結部材F2が挿入されて、連結部45とフレックスプレート52とが締結される。
【0048】
図5に示すように、第1回転部材RT1のフレックスプレート52における外側締結孔52bが形成された部分は、第1締結部53として機能する。また、図6に示すように、回転ハウジング44の連結部45における締結孔45aが形成された部分は、第2締結部46として機能する。そのため、第1締結部53と第2締結部46とは、外側締結部材F2によって互いに締結される「締結部6」として機能する。したがって、第1回転部材RT1及び回転ハウジング44には、周方向Cに沿って複数の締結部6が設けられている。なお、本実施形態では、外側締結部材F2が「締結部材」に相当する。また、フレックスプレート52の外側締結孔52bが、軸方向Lに沿うように第1回転部材RT1に形成されて、締結部材(外側締結部材F2)が挿入される「第1締結孔H1」に相当する。そして、回転ハウジング44における連結部45の締結孔45aが、軸方向Lに沿うように回転ハウジング44に形成されて、締結部材(外側締結部材F2)が挿入される「第2締結孔H2」に相当する。このように、複数の締結部6のそれぞれは、第1締結孔H1と、第2締結孔H2と、を有している。
【0049】
本実施形態では、フレックスプレート52における、軸部材51の拡径部512とフレックスプレート52とを締結する内側締結部材F1が挿入される内側締結孔52aよりも径方向外側R2に、締結部6を締結する外側締結部材F2が挿入される外側締結孔52bが配置されている(図5参照)。つまり、本実施形態では、フレックスプレート52における、軸部材51との連結部よりも径方向外側R2に、締結部6が配置されている。
【0050】
図3及び図4に示すように、第1回転部材RT1には、周方向Cに沿う複数の凹凸を備えた係合凹凸部513が形成されている。係合凹凸部513は、第1回転部材RT1における締結部6よりも径方向内側R1に形成されている。本実施形態では、拡径部512に係合凹凸部513が形成されている。
【0051】
本実施形態では、係合凹凸部513は、複数の凹部513aによって構成されている。本実施形態では、凹部513aは、周方向Cに沿って一定の間隔で配置されている。また本例では、凹部513aは、締結孔512aと同数(ここでは、12個)配置されている。そして、隣接する一対の締結孔512aの間に1つの凹部513aが位置するように、凹部513aと締結孔512aとが周方向Cに沿って交互に配置されている。また、複数の凹部513aは、拡径部512の外周面が径方向内側R1に窪むように形成されている。これにより、締結孔512aが設けられていない部分を利用して、複数の凹部513aを適切に配置することができている。図示の例では、凹部513aは、拡径部512の軸方向第2側L2の端面から軸方向Lの中央部にかけて形成されている。また、図示の例では、凹部513aは、軸方向Lに沿う軸方向視で径方向内側R1に向かうに従って次第に周方向Cの間隔が狭くなる三角形状に形成されている。
【0052】
図2に示すように、ケース1に、当該ケース1の内部と外部とを連通する第1開口領域141及び第2開口領域142が形成されている。図11及び図12に示すように、本実施形態では、第1開口領域141と第2開口領域142とは、互いに周方向Cに離間して配置されている。そして、ケース1の周方向Cにおける第1開口領域141と第2開口領域142との間に、ケース1の壁部によって覆われた非開口領域143が設けられている。本実施形態では、ケース1の周壁部11に、第1開口領域141及び第2開口領域142が形成されている。そして、周壁部11の周方向Cにおける第1開口領域141と第2開口領域142との間の部分が、非開口領域143に相当する。図示の例では、第1開口領域141と第2開口領域142とは、回転電機MGの軸心を挟んで対向する位置に配置されている。なお、第1開口領域141及び第2開口領域142のそれぞれは、車両用駆動装置100の使用時には、不図示の蓋部材によって閉塞される。
【0053】
図2に示すように、第1開口領域141は、ケース1における、係合凹凸部513の軸方向Lの位置に対応する軸方向Lの領域の周方向Cの一部に配置されている。本実施形態では、第1開口領域141は、ケース1の周壁部11の周方向Cの一部であって、径方向Rに沿う径方向視で係合凹凸部513と重複する部分に配置されている。そして、第1開口領域141を通して、ケース1の径方向外側R2から係合凹凸部513を視認できるように構成されている。
【0054】
第2開口領域142は、ケース1における、締結部6の軸方向Lの位置に対応する軸方向Lの領域の周方向Cの一部に配置されている。本実施形態では、第2開口領域142は、ケース1の周壁部11の周方向Cの一部であって、第1回転部材RT1及び回転ハウジング44が回転した際の締結部6の移動軌跡と径方向Rに沿う径方向視で重複する部分に配置されている。そして、第2開口領域142を通して、ケース1の径方向外側R2から締結部6を視認できるように構成されている。
【0055】
なお、上述したように、本実施形態では、第1開口領域141と第2開口領域142とは互いに周方向Cに離間して配置されているが、ケース1における周方向Cの異なる位置に配置されている以外、それらは同様に構成されている。そのため、図2では、便宜上、第1開口領域141及び第2開口領域142の双方の符号を同一の箇所に付している。
【0056】
図5及び図6に示すように、第1回転部材RT1及び回転ハウジング44の一方の外周部には、被係止部7aが設けられている。そして、第1回転部材RT1及び回転ハウジング44の他方の外周部には、係止部7bが設けられている。図7及び図8に示すように、係止部7bは、被係止部7aに対して軸方向Lに挿入されて、被係止部7aに対して周方向Cの相対回転が規制されるように係止される。
【0057】
本実施形態では、第1回転部材RT1及び回転ハウジング44の一方の外周部には、軸方向Lに突出する突出部71が設けられている。そして、突出部71に、被係止部7aが形成されている。本例では、第1回転部材RT1のフレックスプレート52に、軸方向第1側L1に突出する突出部71が形成されている。つまり、本例では、第1回転部材RT1の外周部に、被係止部7aが設けられている。図示の例では、突出部71は、フレックスプレート52の径方向外側R2の端部が、軸方向第1側L1に向けて屈曲され、それにより軸方向第1側L1に突出するように形成されている。ここでは、軸方向第1側L1が、第1回転部材RT1及び回転ハウジング44の一方に対して他方の側である「突出側」に相当する。そして、軸方向第2側L2が、突出側の反対側である「反突出側」に相当する。
【0058】
図7及び図8に示すように、本実施形態では、被係止部7aは、突出部71の突出側(ここでは、軸方向第1側L1)の端縁から反突出側(ここでは、軸方向第2側L2)に切り欠くと共に、突出部71の内周面から径方向外側R2に切り欠くように形成されている。本例では、被係止部7aは、突出部71の軸方向Lの全域に亘って形成されている。そして、被係止部7aは、突出部71を径方向Rに貫通するように形成されている。図示の例では、被係止部7aは、一定の周方向Cの幅で形成されている。また、本実施形態では、被係止部7aは、周方向Cに沿って一定の間隔で複数配置されている。図示の例では、被係止部7aは、外側締結孔52bと同数、つまり、6個配置されている。そして、6個の被係止部7aのそれぞれは、対応する外側締結孔52bに対して径方向外側R2に隣接するように配置されている。
【0059】
本実施形態では、係止部7bは、第1回転部材RT1及び回転ハウジング44の他方の外周部から径方向外側R2に突出するように形成されている。本例では、係止部7bは、回転ハウジング44の連結部45から径方向外側R2に突出するように形成されている。
【0060】
本実施形態では、係止部7bは、周方向Cに沿って一定の間隔で複数配置されている。具体的には、係止部7bは、被係止部7aと同数(ここでは、6個)形成され、被係止部7aと対応する位置関係となるように配置されている。
【0061】
複数の係止部7bのそれぞれが、対応する被係止部7aに挿入されるように、第1回転部材RT1のフレックスプレート52に対して回転ハウジング44の連結部45を配置することで、締結部6が1つも外側締結部材F2によって締結されていない状態においても、フレックスプレート52と連結部45との周方向Cの相対移動が規制される。本例では、複数の係止部7bのそれぞれは、対応する被係止部7aに対して軸方向第1側L1から挿入されて、当該被係止部7aに対して周方向Cの相対回転が規制されるように係止される。
【0062】
このように、係止部7b及び被係止部7aは、「係止構造7」として機能する。つまり、第1回転部材RT1と回転ハウジング44とは、複数の締結部6とは別に、周方向Cに互いに係止される係止構造7を備えている。
【0063】
図5に示すように、本実施形態では、被係止部7aの周方向Cの配置領域と、第1締結孔H1の周方向Cの配置領域とが重なっている。そして、図6に示すように、係止部7bの周方向Cの配置領域と、第2締結孔H2の周方向Cの配置領域とが重なっている。そのため、図7に示すように、係止部7b及び被係止部7aの周方向Cの配置領域と、第1締結孔H1及び第2締結孔H2の周方向Cの配置領域とが重なっている。
【0064】
図7に示すように、第1締結孔H1と第2締結孔H2とは、係止部7bが被係止部7aに係止された状態で、軸方向Lに沿う軸方向視で重なるように配置されている。ここで、第1締結孔H1と第2締結孔H2とが軸方向Lに沿う軸方向視で重なっている状態とは、第1締結孔H1と第2締結孔H2とが、当該締結孔H1,H2の双方に締結部材(外側締結部材F2)を軸方向Lに挿入可能な位置関係となっている状態を指す。
【0065】
本実施形態では、互いに係止された係止部7bと被係止部7aとの周方向Cの間にクリアランスSが形成されている。つまり、被係止部7aの周方向Cの寸法は、係止部7bの周方向Cの寸法よりも大きい。そのため、係止部7bは、クリアランスSの分だけ、被係止部7aに対して周方向Cに相対的に移動可能となっている。そして、本実施形態では、第1締結孔H1と第2締結孔H2とは、係止部7bが被係止部7aに対して周方向Cの一方側から当接した状態で、軸方向Lに沿う軸方向視で重なるように配置されている。
【0066】
図2に示すように、本実施形態では、外側締結部材F2は、反突出側から第1締結孔H1及び第2締結孔H2に挿入されている。ここでは、外側締結部材F2は、軸方向Lにおける回転ハウジング44に対して第1回転部材RT1の側、つまり、軸方向第2側L2から第1締結孔H1及び第2締結孔H2に挿入されている
【0067】
図2に示すように、本実施形態では、複数の締結部6は、ロックアップクラッチ43に対して径方向外側R2であって、径方向Rに沿う径方向視でロックアップクラッチ43と重複する位置に配置されている。更に、複数の締結部6は、軸方向Lに沿う軸方向視でポンプインペラ41及びタービンランナ42と重複する位置に配置されている。
【0068】
以下では、実施形態に係る車両用駆動装置100の製造工程S1について図面を参照して説明する。図9に示すように、製造工程S1は、第1準備工程S11と、第2準備工程S12と、収容工程S13と、回転工程S14と、締結工程S15と、を備えている。
【0069】
第1準備工程S11は、ケース1と、第1回転部材RT1と、第2回転部材RT2と、係合装置CLと、トルクコンバータTCと、回転電機MGと、を準備する工程である。本実施形態の第1準備工程S11では、中間軸M、出力軸O、ロータ支持部材2、及び変速機TMも準備する。
【0070】
第2準備工程S12は、回転治具T1を準備する工程である。回転治具T1は、ケース1の外部から第1回転部材RT1を回転させるための治具である。図10に示すように、回転治具T1は、係合凹凸部513に噛み合うギヤ部81と、ギヤ部81を回転させる回転機構82と、を備えている。
【0071】
本実施形態では、ギヤ部81は、複数(ここでは、5個)の爪部811を有している。爪部811は、係合凹凸部513を成す凹部513aに係合するように形成されている。
【0072】
本実施形態では、回転機構82は、回転体821と、入力部材822と、巻回体823と、を備えている。
【0073】
回転体821は、第1軸部821aを中心として回転可能に構成されている。回転体821は、円板状に形成されている。回転体821は、複数の爪部811を支持している。複数の爪部811は、回転体821の外周面から径方向外側R2に突出するように形成されている。また、複数の爪部811は、回転体821の周方向に沿って一定の間隔で配置されている。複数の爪部811の配置間隔(周方向の配置ピッチ)は、係合凹凸部513を構成する複数の凹部513aの配置間隔(周方向の配置ピッチ)に対応している。
【0074】
入力部材822は、回転機構82の入力要素である。入力部材822は、第2軸部822aを中心として回転可能に構成されている。入力部材822は、作業者により手動で回転され、或いは、サーボモータ等のアクチュエータにより自動で回転される。
【0075】
巻回体823は、入力部材822に入力された回転を回転体821に伝達する部材である。巻回体823は、第1軸部821aと第2軸部822aとに巻回されている。巻回体823としては、チェーンやベルト等を採用可能である。第1軸部821a及び第2軸部822aは、支持体83によって支持されている。本例では、第1軸部821a及び第2軸部822aの双方が、支持体83に対して回転可能に支持されている。ただし、第1軸部821aが支持体83に固定され、回転体821が第1軸部821aに対して回転可能に支持されていても良く、第2軸部822aが支持体83に固定され、入力部材822が第2軸部822aに対して回転可能に支持されていても良い。
【0076】
収容工程S13は、係合凹凸部513の軸方向Lの位置がケース1の第1開口領域141の軸方向Lの位置に対応すると共に、締結部6の軸方向Lの位置がケース1の第2開口領域142の軸方向Lの位置に対応するように、回転電機MG、第1回転部材RT1、第2回転部材RT2、係合装置CL、及びトルクコンバータTCをケース1に収容する工程である。図2に示すように、本実施形態では、係合凹凸部513が、径方向R視で第1開口領域141と重複すると共に、第1回転部材RT1及び回転ハウジング44が回転した際の締結部6の移動軌跡が、径方向R視で第2開口領域142と重複するように収容工程S13を行う。
【0077】
本実施形態の収容工程S13では、複数の係止部7bのそれぞれを、対応する被係止部7aに係止させる。具体的には、複数の係止部7bのそれぞれが、対応する被係止部7aに挿入されるように、第1回転部材RT1のフレックスプレート52に対して軸方向第1側L1から回転ハウジング44の連結部45を相対的に移動させる。これにより、複数の係止部7bと複数の被係止部7aとの互いに対応するもの同士が係止され、第1回転部材RT1と回転ハウジング44とが、周方向Cに互いに係止される。
【0078】
また、本実施形態の収容工程S13では、中間軸M、ロータ支持部材2、及び変速機TM等もケース1に収容する。本実施形態では、ケース1は、第1ケース部1Aと第2ケース部1Bとを備えており、トルクコンバータTCを含む第1構成部材群を第1ケース部1Aに組み付けて構成された第1サブアッセンブリと、回転電機MGと第1回転部材RT1とを含む第2構成部材群を第2ケース部1Bに組み付けて構成された第2サブアッセンブリと、を製造する作業を先に行い、その後、第1サブアッセンブリと第2サブアッセンブリとを組み付ける。そして、第1サブアッセンブリと第2サブアッセンブリとの組み付け作業において、第1ケース部1Aと第2ケース部1Bとを接合する際に、上述したように、複数の係止部7bのそれぞれが、対応する被係止部7aに挿入されるように、第1回転部材RT1のフレックスプレート52に対して軸方向第1側L1から回転ハウジング44の連結部45を相対的に移動させる。その後、トルクコンバータTCと第1回転部材RT1とを複数の締結部6において締結するために、後述する回転工程S14と締結工程S15とを実行する。ここで、第1構成部材群には、トルクコンバータTCに加えて、変速機TMが含まれる。また、第2構成部材群には、回転電機MG及び第1回転部材RT1に加えて、第2回転部材RT2、係合装置CL、第1側壁部12、及び第2側壁部13が含まれる。
【0079】
図11に示すように、回転工程S14は、第1開口領域141を通して回転治具T1をケース1の内部に挿入して、回転治具T1のギヤ部81を係合凹凸部513に噛み合わせた状態でギヤ部81を回転させることにより、複数の締結部6の1つである対象締結部6Tの周方向Cの位置を、第2開口領域142の周方向Cの位置に対応させる工程である。対象締結部6Tは、未だ外側締結部材F2によって締結されていない締結部6である。
【0080】
本実施形態では、収容工程S13にて、複数の係止部7bのそれぞれを、対応する被係止部7aに係止させている。そのため、締結部6が1つも締結されていない状態であっても、回転工程S14において、回転治具T1のギヤ部81を係合凹凸部513に噛み合わせた状態でギヤ部81を回転させることにより、第1回転部材RT1と回転ハウジング44とを一体的に回転させて、対象締結部6Tの周方向Cの位置を第2開口領域142の周方向Cの位置に対応させることができる。
【0081】
図12に示すように、締結工程S15は、第2開口領域142を通して外側締結部材F2によって対象締結部6Tを締結する工程である。本実施形態の締結工程S15では、第2開口領域142を通して締結具T2をケース1の内部に挿入し、締結具T2によって外側締結部材F2を対象締結部6Tに締結する。
【0082】
また、本実施形態の締結工程S15では、締結部6の締結時の反力を受ける反力受け具T3を、第1開口領域141を通してケース1の内部に挿入する。そして、反力受け具T3によって第1回転部材RT1及び回転ハウジング44の周方向Cへの回転を規制した状態で、第2開口領域142を通して対象締結部6Tを締結する。
【0083】
図示の例では、反力受け具T3は、被係止部7aに係止される係止体T3aを備えている。そして、反力受け具T3の係止体T3aを、被係止部7aに対して径方向外側R2から係止させることにより、第1回転部材RT1及び回転ハウジング44の周方向Cへの回転を規制する。本例では、反力受け具T3の係止体T3aを、被係止部7aにおける係止部7bが配置されていない部分(ここでは、被係止部7aにおける係止部7bよりも軸方向第1側L1の部分)に径方向外側R2から係止させる。なお、これを実現するために、図示の例では、複数の被係止部7aのそれぞれは、締結工程S15において第1開口領域141に対応する周方向Cの位置となるように配置されている。
【0084】
製造工程S1では、全ての締結部6が締結されるまで、回転工程S14と締結工程S15とを繰り返す。こうして、トルクコンバータTCと第1回転部材RT1とが一体回転するように連結される。なお、全ての締結部6が締結された後、第1開口領域141及び第2開口領域142のそれぞれを、上記の蓋部材(図示を省略)によって閉塞する。
【0085】
本実施形態では、図13に示すように、被係止部7aの軸方向Lの寸法である軸寸法d1は、締結部6が1つも締結されていない状態において、第1回転部材RT1と回転ハウジング44とが軸方向Lに相対的に移動可能な範囲である軸移動可能範囲d2よりも大きい(d1>d2)。これにより、収容工程S13において、係止部7bを被係止部7aに対して軸方向Lに挿入して、それらを係止状態とすることで、係止部7bが被係止部7aに対して軸方向Lに離れるように相対移動した場合であっても、係止部7bと被係止部7aとの係止状態を維持することができる。
【0086】
図13に示す例では、締結部6が1つも締結されていない状態で、回転ハウジング44は、トルクコンバータTCの自重等により、筒状部441における軸方向第1側L1を向く内面が中間軸Mの軸方向第2側L2の端面に当接するまで、軸方向第1側L1に移動している。一方、第1回転部材RT1は、当該第1回転部材RT1に連結されたロータ支持部材2により、軸方向Lの位置が固定されている(図2参照)。このとき、第1回転部材RT1と回転ハウジング44とが最も軸方向Lに離間した状態となる。一方、第1回転部材RT1のフレックスプレート52に対して、回転ハウジング44の連結部45が軸方向第1側L1から当接した場合に(図13において2点鎖線で示された連結部45参照)、第1回転部材RT1と回転ハウジング44とが最も軸方向Lに接近した状態となる。このような構成では、回転ハウジング44の連結部45が第1回転部材RT1のフレックスプレート52から軸方向Lに最も離れた位置から、回転ハウジング44の連結部45が第1回転部材RT1のフレックスプレート52に対して軸方向第1側L1から当接する位置までの間において、回転ハウジング44が軸方向Lに移動可能な範囲を「第1範囲」とすると、当該第1範囲が軸移動可能範囲d2に相当する。
【0087】
なお、第1回転部材RT1が、回転ハウジング44に対して軸方向Lに離間するように、軸方向第2側L2への移動が許容されている場合、第1回転部材RT1のフレックスプレート52が回転ハウジング44の連結部45から軸方向Lに最も離れた位置から、第1回転部材RT1のフレックスプレート52が回転ハウジング44の連結部45に対して軸方向第2側L2から当接する位置までの間において、第1回転部材RT1が軸方向Lに移動可能な範囲を「第2範囲」とすると、当該第2範囲と上記第1範囲との合計が軸移動可能範囲d2に相当する。
【0088】
なお、軸寸法d1が軸移動可能範囲d2よりも大きい構成では、図13に示すように、収容工程S13の作業性を向上させるため、軸方向第2側L2が鉛直方向の上側となるように、軸方向Lが鉛直方向に沿った状態で、収容工程S13を行うと好適である。なお、収容工程S13に続いて、回転工程S14及び締結工程S15も、軸方向Lが鉛直方向に沿った状態で行っても良い。
【0089】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、第1開口領域141が、ケース1の周壁部11の周方向Cの一部であって、径方向R視で係合凹凸部513と重複する部分に配置されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、係合凹凸部513を利用した第1回転部材RT1の回転を、第1開口領域141を通して行うことができれば、係合凹凸部513と第1開口領域141とが、径方向R視で重複しないように軸方向Lにずれた位置関係で配置されていても良い。
【0090】
(2)上記の実施形態では、第2開口領域142が、ケース1の周壁部11の周方向Cの一部であって、第1回転部材RT1及び回転ハウジング44が回転した際の締結部6の移動軌跡と径方向R視で重複する部分に配置されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第2開口領域142を通して対象締結部6Tを締結することができれば、締結部6の移動軌跡と第2開口領域142とが、径方向R視で重複しないように軸方向Lにずれた位置関係で配置されていても良い。
【0091】
(3)上記の実施形態では、第1開口領域141と第2開口領域142とが互いに周方向Cに離間して配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1開口領域141と第2開口領域142とが互いに軸方向Lに離間して配置されていても良い。また、第1開口領域141と第2開口領域142とが、連続するように形成されていても良い。
【0092】
(4)上記の実施形態では、拡径部512の外周面が窪むように形成された複数の凹部513aが係合凹凸部513を成す構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、拡径部512の外周面が径方向外側R2に突出するように形成された複数の凸部によって係合凹凸部513が構成されても良い。或いは、複数の凸部と複数の凹部513aとの組み合わせによって係合凹凸部513が構成されても良い。
【0093】
(5)上記の実施形態では、第1回転部材RT1が軸部材51とフレックスプレート52とを備えた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1回転部材RT1がフレックスプレート52を備えておらず、軸部材51の拡径部512が回転ハウジング44に直接連結された構成としても良い。或いは、軸部材51と回転ハウジング44とが、フレックスプレート52とは異なる連結部材により連結された構成としても良い。
【0094】
(6)上記の実施形態では、第1回転部材RT1の軸部材51の拡径部512に係合凹凸部513が形成された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、軸部材51における拡径部512以外の部分、例えば、本体部511に係合凹凸部513が形成された構成としても良い。或いは、第1回転部材RT1における軸部材51以外の部材、例えば、第1回転部材RT1のフレックスプレート52に係合凹凸部513が形成された構成としても良い。
【0095】
(7)上記の実施形態では、回転治具T1と反力受け具T3とが独立した治具である構成を例として説明したが、これらが一体的に構成されていても良い。この場合、回転治具T1と反力受け具T3とが、第1回転部材RT1及び回転ハウジング44に対して交互に作用するように構成されていると好適である。例えば、回転治具T1が第1回転部材RT1の係合凹凸部513に係合している状態では、反力受け具T3は第1回転部材RT1及び回転ハウジング44から離間し、反力受け具T3が第1回転部材RT1及び回転ハウジング44の少なくとも一方に接触している状態では、回転治具T1が第1回転部材RT1から離間するように、回転治具T1と反力受け具T3との相対位置関係を変更可能に構成されていると好適である。
【0096】
(8)上記の実施形態では、反力受け具T3が係止体T3aを備え、締結工程S15において、当該係止体T3aを被係止部7aにおける係止部7bが配置されていない部分に径方向外側R2から係止させる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、反力受け具T3を、突出部71の外周面と、連結部45の係止部7bの外周部とに接触させることにより、フレックスプレート52と連結部45とに対して周方向Cの摩擦力を発生させて、それらの回転を規制する構成としても良い。
【0097】
(9)上記の実施形態では、突出部71の軸方向第1側L1の端縁から軸方向第2側L2に切り欠くと共に、突出部71の内周面から径方向外側R2に切り欠くように被係止部7aが形成され、回転ハウジング44の連結部45から径方向外側R2に突出するように係止部7bが形成された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、軸方向Lに突出するように形成された係止部7bが、軸方向Lに延在する筒状に形成された被係止部7aに対して、軸方向Lの一方側から挿入される構成としても良い。
【0098】
(10)上記の実施形態では、被係止部7aが、第1回転部材RT1のフレックスプレート52に設けられた突出部71に形成されている共に、係止部7bが、回転ハウジング44の連結部45に形成された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、被係止部7aが、フレックスプレート52における突出部71以外の部分に形成されていると共に、係止部7bが、回転ハウジング44における連結部45以外の部分に形成されていても良い。また、被係止部7aが回転ハウジング44に設けられている共に、係止部7bが第1回転部材RT1に設けられていても良い。
【0099】
(11)上記の実施形態では、第1回転部材RT1のフレックスプレート52の外周部に、軸方向第1側L1に突出する突出部71が設けられた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、回転ハウジング44の連結部45の外周部に、軸方向第2側L2に突出する突出部71が設けられていても良い。この場合、軸方向第2側L2が「突出側」に相当し、軸方向第1側L1が「反突出側」に相当する。
【0100】
(12)上記の実施形態では、互いに係止された係止部7bと被係止部7aとの周方向Cの間にクリアランスSが形成され、第1締結孔H1と第2締結孔H2とが、係止部7bが被係止部7aに対して周方向Cの一方側から当接した状態で、軸方向Lに沿う軸方向視で重なるように配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1締結孔H1と第2締結孔H2とが、係止部7bが被係止部7aに対して周方向Cの一方側から当接していない状態で、軸方向Lに沿う軸方向視で重なるように配置されていても良い。また、互いに係止された係止部7bと被係止部7aとの周方向Cの間にクリアランスSが形成されていなくても良い。
【0101】
(13)上記の実施形態では、被係止部7aの軸方向Lの寸法である軸寸法d1が、締結部6が1つも締結されていない状態で、第1回転部材RT1と回転ハウジング44とが最も軸方向Lに接近した位置と最も軸方向Lに離間した位置との間で移動した場合における、被係止部7aに対する係止部7bの相対的な移動距離である軸移動可能範囲d2よりも大きい(d1>d2)構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、軸寸法d1が軸移動可能範囲d2以下(d1≦d2)であっても良い。
【0102】
(14)上記の実施形態では、外側締結部材F2が軸方向第2側L2から第1締結孔H1及び第2締結孔H2に挿入されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、外側締結部材F2が軸方向第1側L1から第1締結孔H1及び第2締結孔H2に挿入されていても良い。
【0103】
(15)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0104】
〔上記実施形態の概要〕
以下では、上記において説明した車両用駆動装置(100)の概要について説明する。
【0105】
車両用駆動装置(100)は、
車輪(W)の駆動力源となる回転電機(MG)と、
前記回転電機(MG)のロータ(Ro)に連結された第1回転部材(RT1)と、
前記回転電機(MG)に対して軸方向(L)の一方側である軸方向第1側(L1)に配置され、回転ハウジング(44)を有する流体継手(TC)と、を備え、
前記第1回転部材(RT1)及び前記回転ハウジング(44)には、周方向(C)に沿って複数の締結部(6)が設けられ、
前記第1回転部材(RT1)と前記回転ハウジング(44)とが、複数の前記締結部(6)のそれぞれにおいて、締結部材(F2)によって締結され、
複数の前記締結部(6)のそれぞれは、前記軸方向(L)に沿うように前記第1回転部材(RT1)に形成されて、前記締結部材(F2)が挿入される第1締結孔(H1)と、前記軸方向(L)に沿うように前記回転ハウジング(44)に形成されて、前記締結部材(F2)が挿入される第2締結孔(H2)と、を有し、
前記第1回転部材(RT1)及び前記回転ハウジング(44)の一方の外周部に被係止部(7a)が設けられ、
前記第1回転部材(RT1)及び前記回転ハウジング(44)の他方の外周部に係止部(7b)が設けられ、
前記係止部(7b)は、前記被係止部(7a)に対して前記軸方向(L)に挿入されて、前記被係止部(7a)に対して前記周方向(C)の相対回転が規制されるように係止され、
前記第1締結孔(H1)と前記第2締結孔(H2)とは、前記係止部(7b)が前記被係止部(7a)に係止された状態で、前記軸方向(L)に沿う軸方向視で重なるように配置されている。
【0106】
この構成によれば、係止部(7b)が被係止部(7a)に係止された状態とすることで、締結部(6)が1つも締結部材(F2)によって締結されていない状態においても、第1回転部材(RT1)と回転ハウジング(44)との周方向(C)の相対移動を規制することができる。そのため、締結部(6)が1つも締結部材(F2)によって締結されていない状態においても、第1締結孔(H1)と第2締結孔(H2)とが、軸方向(L)に沿う軸方向視で重なっている状態を維持することができる。これにより、締結部(6)を締結する作業を容易に行うことができる。その結果、車両用駆動装置の製造工数を少なく抑えることができる。
また、本構成によれば、締結部(6)を締結する作業を、第1締結孔(H1)と第2締結孔(H2)との位置を合わせるためのピン等の治具を用いることなく容易に行うことができる。そのため、治具を設置する工程と、治具を取り外す工程とを別途行う必要がなく、また、それらの工程を行うためのスペースを確保する必要もなくなる。その結果、車両用駆動装置の製造工数を少なく抑えることができると共に、車両用駆動装置の大型化を抑制することができる。
【0107】
ここで、互いに係止された前記係止部(7b)と前記被係止部(7a)との前記周方向(C)の間にクリアランス(S)が形成され、
前記第1締結孔(H1)と前記第2締結孔(H2)とは、前記係止部(7b)が前記被係止部(7a)に対して前記周方向(C)の一方側から当接した状態で、前記軸方向視で重なるように配置されていると好適である。
【0108】
この構成によれば、被係止部(7a)の周方向(C)の寸法が、係止部(7b)の周方向(C)の寸法よりも大きいため、係止部(7b)を被係止部(7a)に対して容易に挿入させることができる。
また、係止部(7b)が被係止部(7a)に挿入された状態で、第1回転部材(RT1)と回転ハウジング(44)とを周方向(C)に相対回転させるだけで、容易に第1締結孔(H1)と第2締結孔(H2)とが軸方向視で重なった状態とすることができる。
【0109】
また、前記軸方向(L)における、前記第1回転部材(RT1)及び前記回転ハウジング(44)の一方に対して他方の側を突出側とし、当該突出側の反対側を反突出側として、
前記第1回転部材(RT1)及び前記回転ハウジング(44)の一方の外周部に、前記突出側に突出する突出部(71)が設けられ、
前記被係止部(7a)が、前記突出部(71)の前記突出側の端縁から前記反突出側に切り欠くと共に、前記突出部(71)の内周面から径方向(R)の外側(R2)に切り欠くように形成され、
前記係止部(7b)が、前記第1回転部材(RT1)及び前記回転ハウジング(44)の他方の外周部から径方向(R)の外側(R2)に突出するように形成され、
前記被係止部(7a)の前記軸方向(L)の寸法(d1)は、前記締結部(6)が1つも締結されていない状態において、前記第1回転部材(RT1)と前記回転ハウジング(44)とが前記軸方向(L)に相対的に移動可能な範囲(d2)よりも大きいと好適である。
【0110】
この構成によれば、締結部(6)が1つも締結されていない状態で、第1回転部材(RT1)と回転ハウジング(44)とが最も軸方向(L)に離間した場合であっても、係止部(7b)と被係止部(7a)との係止状態を維持することができる。これにより、締結部(6)が1つも締結されていない状態であっても、締結部(6)を締結する作業を容易に行うことができる。
【0111】
前記突出部(71)が設けられた構成において、
前記締結部材(F2)が、前記反突出側から前記第1締結孔(H1)及び前記第2締結孔(H2)に挿入されていると好適である。
【0112】
この構成によれば、突出部(71)が突出する突出側とは反対側の反突出側から、第1締結孔(H1)及び第2締結孔(H2)に締結部材(F2)が挿入されている。そのため、締結部材(F2)を第1締結孔(H1)及び第2締結孔(H2)に挿入する際、締結部材(F2)が突出部(71)に干渉することを回避することができる。したがって、締結部(6)を締結する作業を更に容易に行うことができる。
【0113】
また、前記流体継手(TC)は、前記軸方向(L)に対向して配置されて互いに相対回転可能に支持されたポンプインペラ(41)及びタービンランナ(42)と、前記ポンプインペラ(41)と前記タービンランナ(42)とを選択的に直結係合状態とするロックアップクラッチ(43)と、を備え、
前記ポンプインペラ(41)及び前記タービンランナ(42)は、前記ロックアップクラッチ(43)に対して前記軸方向第1側(L1)に配置され、
前記回転ハウジング(44)は、前記ポンプインペラ(41)と前記タービンランナ(42)と前記ロックアップクラッチ(43)とを収容すると共に、前記ポンプインペラ(41)と一体的に回転するように連結され、
複数の前記締結部(6)は、前記ロックアップクラッチ(43)に対して径方向(R)の外側(R2)であって、前記径方向(R)に沿う径方向視で前記ロックアップクラッチ(43)と重複すると共に、前記軸方向視で前記ポンプインペラ(41)及び前記タービンランナ(42)と重複する位置に配置されていると好適である。
【0114】
この構成によれば、複数の締結部(6)が、ロックアップクラッチ(43)に対して径方向(R)の外側(R2)であって、径方向(R)に沿う径方向視でロックアップクラッチ(43)と重複する配置されている。これにより、複数の締結部(6)がロックアップクラッチ(43)よりも軸方向(L)にずれた位置に配置された構成と比べて、車両用駆動装置(100)の軸方向(L)の寸法を小さく抑えることができる。
また、本構成によれば、複数の締結部(6)が、軸方向(L)に沿う軸方向視でポンプインペラ(41)及びタービンランナ(42)と重複する位置に配置されている。これにより、複数の締結部(6)がポンプインペラ(41)及びタービンランナ(42)に対して径方向(R)の外側(R2)に配置された構成と比べて、車両用駆動装置(100)の径方向(R)の寸法を小さく抑えることができる。
【0115】
前記締結部材(F2)が前記反突出側から前記第1締結孔(H1)及び前記第2締結孔(H2)に挿入されている構成、又は、前記流体継手(TC)が前記ポンプインペラ(41)と前記タービンランナ(42)と前記ロックアップクラッチ(43)とを備えた構成において、
前記締結部材(F2)が、前記軸方向(L)における前記回転ハウジング(44)に対して前記第1回転部材(RT1)の側から前記第1締結孔(H1)及び前記第2締結孔(H2)に挿入されていると好適である。
【0116】
一般的に、第1回転部材(RT1)と回転ハウジング(44)とを締結部(6)において締結することにより、回転電機(MG)及び第1回転部材(RT1)を含む第1アッセンブリと、流体継手(TC)を含む第2アッセンブリとが互いに軸方向(L)に連結される。そのため、軸方向(L)における締結部(6)に対して第1回転部材(RT1)の側に余剰スペースが形成され易い。本構成によれば、このスペースを利用して締結部(6)を締結する作業を行うことができるため、締結部(6)を締結する作業を行うためのスペースを別途設ける場合と比べて、車両用駆動装置(100)の軸方向(L)の寸法を小さく抑えることができる。
更に、流体継手(TC)がポンプインペラ(41)とタービンランナ(42)とロックアップクラッチ(43)とを備えた上記構成においては、軸方向(L)における締結部(6)とポンプインペラ(41)及びタービンランナ(42)との間に、締結部(6)を締結する作業を行うためのスペースを確保する必要がない。これにより、軸方向(L)における締結部(6)とポンプインペラ(41)及びタービンランナ(42)との距離を小さく抑えることができる。したがって、車両用駆動装置(100)の軸方向(L)の寸法を小さく抑えることができる。
【0117】
また、前記係止部(7b)及び前記被係止部(7a)の前記周方向(C)の配置領域と、前記第1締結孔(H1)及び前記第2締結孔(H2)の前記周方向(C)の配置領域とが重なっていると好適である。
【0118】
この構成によれば、第1回転部材(RT1)の外周部に被係止部(7a)が設けられていると共に、回転ハウジング(44)の外周部に係止部(7b)が設けられている場合には、第1回転部材(RT1)における被係止部(7a)及び第1回転部材(RT1)が配置される部分と、回転ハウジング(44)における係止部(7b)及び第2回転部材(RT2)が配置される部分とのそれぞれの周方向(C)の寸法を小さく抑えることができる。
また、第1回転部材(RT1)の外周部に係止部(7b)が設けられていると共に、回転ハウジング(44)の外周部に被係止部(7a)が設けられている場合には、第1回転部材(RT1)における係止部(7b)及び第1回転部材(RT1)が配置される部分と、回転ハウジング(44)における被係止部(7a)及び第2回転部材(RT2)が配置される部分とのそれぞれの周方向(C)の寸法を小さく抑えることができる。
したがって、本構成によれば、第1回転部材(RT1)及び回転ハウジング(44)の重量を小さく抑えることができるため、車両用駆動装置(100)を軽量化することができる。
【0119】
また、前記第1回転部材(RT1)と同軸に配置され、内燃機関(EN)に駆動連結される第2回転部材(RT2)と、
動力伝達経路における前記第1回転部材(RT1)と前記第2回転部材(RT2)との間に配置されて、前記回転電機(MG)と前記内燃機関(EN)とを選択的に連結する係合装置(CL)と、を更に備え、
前記第2回転部材(RT2)は、前記第1回転部材(RT1)に対して前記軸方向第1側(L1)とは反対側である軸方向第2側(L2)に配置され、前記第1回転部材(RT1)とは独立して回転自在であると好適である。
【0120】
この構成によれば、締結部(6)を締結する作業において、第1回転部材(RT1)を外部から直接回転させることが難しい場合であっても、係合装置(CL)を係合状態として内燃機関(EN)を駆動することで、第2回転部材(RT2)を介して第1回転部材(RT1)を回転させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本開示に係る技術は、車輪の駆動力源となる回転電機と、流体継手と、を備えた車両用駆動装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0122】
100 :車両用駆動装置
44 :回転ハウジング
6 :締結部
W :車輪
MG :回転電機
Ro :ロータ
TC :トルクコンバータ(流体継手)
RT1 :第1回転部材
RT2 :第2回転部材
F2 :外側締結部材(締結部材)
L :軸方向
L1 :軸方向第1側
L2 :軸方向第2側
R :径方向
R1 :径方向内側
R2 :径方向外側
C :周方向
図1
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