(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】ブレイアコニチンAの用途
(51)【国際特許分類】
A61K 31/439 20060101AFI20221208BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221208BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20221208BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20221208BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20221208BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20221208BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20221208BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20221208BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20221208BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20221208BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20221208BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
A61K31/439
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/107
A61K9/12
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/19
A61K9/20
A61K9/48
A61P17/04
A61P25/00
(21)【出願番号】P 2021526786
(86)(22)【出願日】2019-06-13
(86)【国際出願番号】 CN2019091049
(87)【国際公開番号】W WO2020103435
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-05-21
(31)【優先権主張番号】201811376531.5
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521209731
【氏名又は名称】ユンナン ハオピィ ファーマシューティカルズ エルティーディー
【氏名又は名称原語表記】YUNNAN HAOPY PHARMACEUTICALS LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シャンゴー
(72)【発明者】
【氏名】リ,ビアオ
(72)【発明者】
【氏名】ウー,チョンフェン
【審査官】伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102552254(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105343070(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61P 17/00-17/18
A61P 25/00-25/36
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚そう痒症又はその二次的損傷の治療及び/又は予防するための医薬品の製造における、ブレイアコニチンAの使用
(ただし、二次的損傷は、引っ掻きによって引き起こされる皮膚の荒れ、苔癬化、湿疹、神経皮膚炎、結節性痒疹からなる群より選択される)。
【請求項2】
前記ブレイアコニチンAの投与量が0.125mg/kgマウス体重/日~0.5mg/kgマウス体重/日である、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ブレイアコニチンAの投与量が0.01375mg/kgヒト体重/日~0.055mg/kgヒト体重/日である、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記皮膚そう痒症が神経障害性掻痒である、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記皮膚そう痒症がヒスタミン及び/又はクロロキンによって引き起こされるそう痒である、ことを特徴とする請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記医薬品は、ブレイアコニチンAおよび薬学的に許容される担体を含有し、前記医薬品における前記ブレイアコニチンAの含有量が0.2質量%~88質量%である、ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記医薬品の剤形が経口剤、注射剤又は外用剤である、ことを特徴とする請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記経口剤が硬カプセル剤、滴丸剤、顆粒剤、錠剤、合剤、軟カプセル剤、濃縮丸剤、経口液剤又は散剤である、ことを特徴とする請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記注射剤が注射液又は凍結乾燥粉末注射剤である、ことを特徴とする請求項7に記載の使用。
【請求項10】
前記外用剤がチンキ剤、軟膏剤、クリーム剤、ペースト剤、エアゾール剤、スプレー剤、散剤、耳用製剤、ローション剤、リンス剤、リニメント剤、塗り剤、コーティング剤、ゲル剤又は貼付剤である、ことを特徴とする請求項7に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【相互参照】
【0001】
本願は、2018年11月19日に中国特許局に出願された出願番号が201811376531.5、発明名称が「ブレイアコニチンAの用途」である中国特許出願に基づく優先権を主張し、その全内容は援用により本出願に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、医薬分野に関し、特に、ブレイアコニチンA(bulleyaconitine A)の用途に関する。
【背景技術】
【0003】
皮膚そう痒症は、皮膚のかゆみとも呼ばれ、掻きたいという欲求に関連する一般的な感覚現象である。皮膚のかゆみにはさまざまな原因があり、多くの臨床的疾患が皮膚のかゆみを引き起こす可能性があり、その病因も比較的複雑であるが、臨床的に皮膚のかゆみのみがあるが原発性皮膚発疹のないものがそう痒症または皮膚そう痒症と呼ばれる。皮膚そう痒症は、発症部位により、全身性皮膚そう痒症及び限局性皮膚そう痒症に分けられる。全身性皮膚症の病因は、主に生体代謝障害と内分泌異常に関連する。その一般的な原因は、以下のとおりである。老人性皮膚そう痒症は、高齢者の皮脂腺の機能低下、末梢循環の不良、皮膚の保水機能低下により、皮膚が乾燥し、周りの環境の冷熱変化によって刺激されやすくなりそう痒を引き起こす。また、高齢者の性ホルモンのようなホルモンのレベルの低下も、閉経期の女性によく見られるそう痒の原因の一つである。季節性皮膚そう痒症は、冬の乾燥肌、夏の発汗による刺激がいずれもそう痒を引き起こす可能性がある。全身性疾患による皮膚そう痒症は、例えば、腫瘍、糖尿病、腎臓病、甲状腺機能異常、貧血、胆道疾患などは、いずれもそう痒を引き起こす可能性がある。糖尿病患者に現れるそう痒は、糖の代謝過程でピルビン酸や乳酸が皮膚や神経組織に蓄積することに関連し、神経末梢が刺激されかゆみを引き起こす。糖尿病患者は、全身性又は限局性の皮膚のかゆみを伴うことがある。甲状腺機能亢進症は、患者の基礎代謝の増加、多動性、多汗症に関連しているが、甲状腺機能の低下は、皮膚乾燥に関連する。腎臓病の患者は、尿素窒素、クレアチニンなどの代謝性廃棄物が体内に蓄積し、尿素の一部が汗腺から排泄し皮膚を刺激してかゆみを引き起こす。特に、腎臓病が進行した尿毒症患者は、そう痒がより顕著となる。
【0004】
限局性皮膚そう痒症の病因は、全身性そう痒症と同じである場合があり、例えば、腫瘍のある患者は全身性掻痒と限局性掻痒の両方を患う可能性がある。このようなそう痒症は、原発疾患が抑制された後に消える。ある種のそう痒症が患者の個人的な精神や気分にも関係し、例えば、性感染症恐懼症の患者の全身または外陰部のそう痒や不快感が典型的な例である。全身性皮膚そう痒症は、疾患の初期に全身性そう痒として現れることもあり、限局して全身に広がることもあり、そのそう痒の程度は軽度または重度である可能性がある。軽度は夜間のかゆみのみであり、通常の仕事や生活には影響しないが、重度は、重い者では、昼夜を問わず耐えられず、耐え難いそう痒や苦痛に苦しめられ、皮破や出血するまで無意識のうちに引っ掻くことがよくあり、より悪くは、ナイフ、フォーク、ハサミや釘などの刃物で劇痛を感じるまで皮膚を刺すこともある。このような患者は、長時間かゆみやトラブルにより、ある程度の精神的なストレスを伴い、不機嫌そう、不快に感じたら怒ることが多いので、ある程度悪化する。さらに、長時間の無意識の引っ掻き傷のために、皮膚に荒れや苔癬化が生じ、湿疹、神経皮膚炎、結節性痒疹などの二次的損傷につながる恐れもある。患者はしばしばかゆみに苦しんでいる。さらに、かゆみは夜間に発生しやすく、睡眠や休みにも大きな悪影響を与え、患者及びその家庭に莫大な苦痛及び精神的なストレスをもたらす。
【0005】
現在、マレイン酸クロルフェニラミン、ロラタジン、セチリジン、ミゾラスチンなどの抗ヒスタミン薬;ビタミンC、ドキセピン、オリザノール、ジアゼパム、グルコン酸カルシウムなどの薬物が皮膚そう痒症の治療のためによく用いられている。重症の患者は、経口催眠鎮静薬、副腎皮質ホルモン剤、プロカインによる静脈閉鎖などの経口薬、およびカラミンローション、カラミンメントールローション、乳膏やクリーム剤などの外用薬がよく用いられている。しかし、これらの薬には、いずれも顕著な催眠の作用、大きなホルモン系の副作用がある。臨床的には、主に抗ヒスタミンのH1及びH2受容体拮抗剤、グルココルチコイド、免疫調節及び局所的なUV照射により治療するが、有害反応が発生するために長期間使用できないことが多く、治療を中断すると、そう痒が急速に再発する。したがって、皮膚そう痒症のための安全で有効かつ手頃な価格の医薬品の開発が差し迫っている。
【0006】
ブレイアコニチンA(BLA)は、雲南省西部の特産物としての薬用植物であるAacomitum Bulleyanum Dielsから分離されたトリカブト属の植物由来のアルカロイドであり、良好な抗炎症鎮痛作用および免疫調節作用を有する。ブレイアコニチンAは、新しい第三類鎮痛薬として、NSAIDに属せず、ナトリウムイオンチャンネルを調節でき、心理学的な依存性および器質性器官に与える毒性作用がほとんどなく、NSAIDおよびオピオイド鎮痛薬による胃腸管、心血管および腎臓の副作用、薬物依存などのような潜在的な危険を回避することが可能なものである。現在、ブレイアコニチンAは、関節リウマチ(RA)、変形性関節症、筋線維膜炎、首および肩の痛み、腰および下肢の苦痛、癌性疼痛および様々な原因に起因した慢性疼痛の治療のために臨床的に広く用いられている。しかし、皮膚そう痒症の治療における作用及び有効性に関する報告は今までもない。同時に、該ブレイアコニチンAの薬物モノマーは、漢方薬から抽出された活性薬物であり、安全性が高く、副作用が少ない、嗜癖性がないという特徴を有する。そこで、中国の漢方薬抽出物であるブレイアコニチンAの薬物に関するさらに鋭意な研究には、一定の市場見通しがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は、ブレイアコニチンAの用途を提供する。皮膚そう痒症を治療するためのブレイアコニチンAの使用は、治療が効果的であり、肝腎への毒性副作用がなく、長期間内服でき、皮膚そう痒症の再発を抑制し、無意識の引っ掻き傷による皮膚の荒れや苔癬化、湿疹、神経皮膚炎、結節性痒疹などの二次的損傷を防ぐ。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の技術を提供する。
【0009】
本発明は、皮膚そう痒症又はその二次的損傷の治療及び/又は予防するための医薬品の製造におけるブレイアコニチンAの使用を提供する。
【0010】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、前記ブレイアコニチンAの投与量が0.125mg/kgマウス体重/日~0.5mg/kgマウス体重/日である。
【0011】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、前記ブレイアコニチンAの投与量が0.01375mg/kgヒト体重/日~0.055mg/kgヒト体重/日である。
【0012】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、前記皮膚そう痒症が神経障害性掻痒である。
【0013】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、前記皮膚そう痒症がヒスタミン及び/又はクロロキンによって引き起こされるそう痒である。
【0014】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、前記医薬品は、ブレイアコニチンAおよび薬学的に許容される担体を含有し、前記医薬品における前記ブレイアコニチンAの含有量が0.2質量%~88質量%である。
【0015】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、前記医薬品の剤形が経口剤、注射剤又は外用剤である。
【0016】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、前記経口剤が硬カプセル剤、滴丸剤、顆粒剤、錠剤、合剤、軟カプセル剤、濃縮丸剤、経口液剤又は散剤である。
【0017】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、前記注射剤が注射液又は凍結乾燥粉末注射剤である。
【0018】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、前記外用剤がチンキ剤、軟膏剤、クリーム剤、ペースト剤、エアゾール剤、スプレー剤、散剤、耳用製剤、ローション剤、リンス剤、リニメント剤、塗り剤、コーティング剤、ゲル剤又は貼付剤である。
【0019】
本発明は、ブレイアコニチンAの新たな用途を提供する。その作用機構が、ナトリウムイオンチャンネルを調節することで、そう痒症の伝達に特に関与する末梢および中枢神経における特定のニューロンを抑制する作用を奏する可能性があり、同時に、ナトリウムイオンチャンネルを調節することで、そう痒性メディエーターの活性化及び伝達を抑制し、そう痒を引き起こす物質の選択的受容体の調節を抑制する可能性があることにより、そう痒を抑制する。
【0020】
1.皮膚そう痒症を治療するための医薬品の製造のためのブレイアコニチンAの使用によれば、抗ヒスタミン類、ホルモン類などの薬物の使用によって引き起こされた有害反応のために長期間使用できず、断続的にしか使用できず、そう痒が再発することを避けることができる。
【0021】
2.皮膚そう痒症を治療するための医薬品の製造のためのブレイアコニチンAの使用によれば、治療が効果的であり、肝腎への毒性副作用がなく、長期間服用でき、皮膚そう痒症の再発を制御でき、無意識の引っ掻き傷による皮膚に荒れや苔癬化、湿疹、神経皮膚炎、結節性痒疹などの二次的損傷を防ぐことができる。
【0022】
3.皮膚そう痒症を治療するための医薬品の製造のためのブレイアコニチンAの使用によれば、患者がしばしばかゆみに苦しんでいることや、夜間に発生しやすく患者の睡眠や休みに大きな悪影響を与えることを解消し、そう痒がもたらす患者及びその家庭に莫大な苦痛及び精神的なストレスを有効に軽減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
以下、本発明の実施例または先行技術における技術をより明らかにするために、実施例または先行技術の説明のために必要な図面を簡単に紹介する。
【
図1】
図1は、実験プロセスを示し、BLAがブレイアコニチンA、Dが日、hが時間である。
【
図2】
図2は、ヒスタミン群の30min以内の引っ掻き回数を示す(「*」が溶媒群に比べてP<0.05を示し、「***」が溶媒群に比べてP<0.001を示す)。
【
図3】
図3は、クロロキン群の30min以内の引っ掻き回数を示す(「**」が溶媒群に比べてP<0.01を示し、「***」が溶媒群に比べてP<0.001を示す)。
【
図4】
図4は、動物への投与量間の換算関係を示す。詳細は施新猷の「医用試験動物学」第422頁、表3を参照する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、ブレイアコニチンAの用途を開示し、当業者は、これらの記載を参考し、プロセスパラメータを適切に改善して実現されることができる。なお、全ての類似な置換および変更が当業者にとって自明であり、それらはすべて本発明に含まれるとみなされることを指摘すべきである。本発明の方法および応用は、好ましい実施例を用いて説明したが、当業者は、本発明の技術を達成および適用するために、本発明の内容、思想、および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の方法および応用を修正または適切な変更および組み合わせを行うことができることが明らかである。
【0025】
用語の解釈
皮膚そう痒症とは、皮膚そう痒を主な特徴とする皮膚疾患のグループを指し、皮膚そう痒のみがあるが原発性皮膚発疹がないそう痒症を含み、皮膚そう痒と原発性皮膚発疹と同時に共存する神経皮膚炎、痒疹、結節性痒疹も含む。
【0026】
皮膚そう痒症又はその二次的損傷:「二次的損傷」とは、皮膚そう痒症の再発、引っ掻きによって引き起こされる皮膚の荒れ、苔癬化、湿疹、神経皮膚炎、結節性痒疹などの病症を意味する。
【0027】
本発明によって提供されるブレイアコニチンAの用途に用いられる原料および試薬は、いずれも市場から購入することができる。
以下、実施例を参照しながら、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0028】
実施例1
試験の目的
数年間の研究から、そう痒が主に二種類のC繊維に伝達され、1つは、ヒスタミンに敏感であり、もう1つはクロロキンに敏感であることが明らかである。従って、ヒスタミン或いはクロロキンの皮下注射によって引き起こされる動物の引っ掻き反応は、国際的に認められた急性かゆみモデルである。本発明は、ブレイアコニチンA(BLA)の胃内投与がヒスタミン又はクロロキンによって引き起こされる急性のかゆみを抑制できるかどうかを調査することを目的とする。
【0029】
実験材料および方法
実験では、6~8週齢のC57マウス(体重が17~20グラム、中山大学実験動物センターからの動物)を使用した。マウスは、ランダムに、溶媒+ヒスタミン対照群、BLA+ヒスタミン群、溶媒+クロロキン対照群、およびBLA+クロロキン群の4つのグループに分けられた。実験開始3日前、皮下注射および引っ掻き動作の観察を容易にするために、イソフルランで短期間に麻酔する際に、首の後ろの毛(少なくても3×5cm)を剃った。対照群は、ヒスタミン(2mg/ml)又はクロロキン(4mg/ml)50μlを皮下注射し、また注射の2時間前に溶媒(カルボキシメチルセルロース)を胃内投与した。実験群は、ヒスタミン或いはクロロキンの注射の2時間前に、異なる投与量のBLA(0.125、0.25および0.5mg/kg)を胃内投与した。2時間前にBLAを事前に使用したのは、胃内投与から薬効の発揮まで1.52時間かかるからである。以前の研究から、ヒスタミンおよびクロロキンによって誘発された急性の引っかき反応は、薬物を注射後30分で治まることが示されているため、この期間中の各群の総引っ掻き回数を数え、それらを比較した。実験プロセスは、
図1に示す。
【0030】
実験を記録する際に、マウスは、別々の透明なアクリルのボックスに入れられ、各箱はサイズが15×15×20センチメートルの大きさである。なお、各ボックスの上には、2つの空気が流通する小さな開口がある。マウスが首の後ろを引っ掻く動作が基本的にマウスの背中部の直上方に向かう視野であるので、マウスの上方にカメラを置き、それらの引っ掻き動作をビデオで記録した。
【0031】
引っ掻き動作が気を散らすために抑制される。意識移動を極力少なくして緊張感を取り除くために、マウスから排出された尿を吸収するように、各透明なボックスに少量のマットを入れ、雰囲気温度を23~27℃に維持した。また、静かな実験環境を確保するために、記録の際に全員が現場を離れた。実験は、9:00~14:00の間に実施された。動物を実験環境に順応させるために、正式な実験の2日前に、マウスを毎日9:00および13:00で透明なボックスに1時間順応させた。マウスの引っ掻きプロセスが非常に速いことが多いので、マウスの後足が首の後ろを引っ掻き始めたときから、その後足が地面に落ちるか、口に入れて皮屑をきれいにするまでの動作を、1回の引っ掻き動作とした。
【0032】
統計的方法は、以下の通りである。
引っ掻き回数を平均値±標準偏差として表し、チューキー検定により異なるグループの間の差を比較した。
【0033】
かかる溶液の調製および使用の方法は、以下の通りである。
0.05gのBLAを秤量し、1000mlの0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウムの溶液に溶解した。ヒスタミンおよびクロロキンをいずれも0.9%減菌生理食塩水で調製し、ヒスタミンの投与量は100μg、クロロキンは200μgであった。注射部位の皮膚の損傷を最小限に抑えるために、マイクロシリンジの針口に、より細い0.3mlのインスリン注射針を接続してマウスに対する損傷を減らした。
【0034】
実験結果:
ヒスタミンまたはクロロキンの皮下注射前30分間以内に、マウスの引っ掻き回数は3.42±2.40であり、ヒスタミンまたはクロロキンの注射後30分間以内の引っ掻き回数はそれぞれ29.42±16.63(n=12)または73.75±34.11(n=12)に増加し、モデルが製造できたことが確認され、その試験結果は表1に示した。BLAの胃内投与は、ヒスタミン又はクロロキンによって引き起こされるかゆみを投与量依存的に抑制した。表2-3および
図2-3に示すように、投与量が0.5mg/kgの場合、BLAはヒスタミンまたはクロロキンによる急性かゆみを完全に抑制でき(P<0.001)、最も強い抑制効果を示すが、マウスに眠気があった。投与量が0.25mg/kgの場合、BLAはヒスタミン(P<0.05)又はクロロキン(P<0.01)によって引き起こされる引っ掻き反応を有意に抑制した。投与量が0.125mg/kgの場合、BLAはヒスタミンによるかゆみを抑制効果がなく、クロロキンによる急性のかゆみをわずかに抑制しただけでしたが、統計的に有意なレベルに達しなかった(P>0.05)。また、マウスの最後の2つの投与では、マウスの眠気やその他の副作用は見られなかった。
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
上述した試験結果から、経口ブレイアコニチンAは、ヒスタミン又はクロロキンによって引き起こされるかゆみを投与量依存的に抑制できることが示された。従って、経口ブレイアコニチンAは、さまざまな病気や薬物によって引き起こされる神経障害性のかゆみを治療するために使用することができる。
【0039】
測定されたマウスに対する濃度は、成人の0.11×0.125mg/kg=0.01375mg/kg、0.11×0.25mg/kg=0.0275mg/kg、0.11×0.5mg/kg=0.055mg/kgとほぼ同等である。即ち、テストは0.01375mg/kgから0.055mg/kgまでのヒトの濃度に相当する場合、ブレイアコニチンAが急性かゆみを抑制する特定の効果がある。
【0040】
実施例2
神経障害性掻痒における本発明のブレイアコニチンAの適用は、ブレイアコニチンAを様々な剤形の医薬品に製造し使用することができる。具体的には、ブレイアコニチンAを経口剤、注射剤や外用剤を含む剤形にすることができる。具体的な医薬品は、ブレイアコニチンAおよび他の薬学的に許容される担体を含むことができる。医薬品における各成分の使用量は、医薬品の成分の組成比の要件に応じて調整すればよい。ブレイアコニチンAの有効含有量は、異なる剤形などの従来の剤形の要求に応じて計算すればよく、実施例1に記載の0.01375mg/kgから0.055mg/kgヒト体重/日は、この実施例で参照値の範囲であるだけであり、特に限定されない。さらに、薬学的に許容される担体は、矯味剤、充填剤、崩壊剤、着色剤、増稠剤などを使用することができる。矯味剤は、例えば、グルコース、ソルビトール、マンニトールなどであるが、これらの矯味剤、増稠剤に限定されない。充填剤は、微結晶セルロースなどである。崩壊剤は、カルボキシメチルデンプンカリウムなどである。
【0041】
実施例3
1錠当たり0.275mgのブレイアコニチンAとアジュバント130mgとを含有するフィルムコーティング錠としてのブレイアコニチンAを含有する錠剤を製造した。それは、ブレイアコニチンAを食品グレードまたは薬用グレードのエタノールに溶解し、アジュバントとしてのラクトース20mg、アイシングシュガーパウダー25mg、微結晶セルロース40mgおよびヒドロキシプロピルセルロース10mgを混合し、次に、ブレイアコニチンAのエタノール溶液を加えて混合し、適切な量の精製水を加えて混合して、やわらかい材料を作り、さらにペレットにした後、乾燥し、乾燥されたペレットにステアリン酸マグネシウム5mgおよびカルボキシメチルデンプンナトリウム30mgを加えて錠剤を作り、次に、フィルムコーティングすることにより得られた。
【0042】
実施例4
1カプセル当たり0.4mgのブレイアコニチンAとアジュバント165mgとを含有するブレイアコニチンAのカプセルは、アジュバントとしてのアイシングシュガーパウダー80mg、澱粉25mg、微結晶セルロース20mg、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース15mg、ステアリン酸マグネシウム5mgおよびフタル酸エステル5mgに、湿潤剤としてのエタノールを加えてやわらかい材料を作り、さらにペレットを作って乾燥し、その後、腸溶性コーティングとしてのアクリル樹脂15mgでコーティングすることにより、製造された。乾燥したペレットを放置して室温になった後、アクリル樹脂でコーティングし、コーティングしたペレットを硬カプセル剤に充填し、その後、内包し、外包することにより、ペレットのカプセル製品が得られた。
【0043】
実施例5
ブレイアコニチンA徐放性錠剤は、1錠当たり0.98mgのブレイアコニチンA、骨格材料(ヒドロキシプロピルメチルセルロース125mg)、潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム1mg)を含むように、それらをよく混合し、打錠機で打錠し、打錠した錠をコーティング材料でフィルムコーティング機よりコーティングすることで、製造された。
【0044】
実施例6
1mlあたり2mgのブレイアコニチンAを含むブレイアコニチンA注射液を製造した。それは、ブレイアコニチンAを2000mg秤量し、希硫酸5mlを加えて溶解した後、1000mlになるように注射用水を加え、pHを5.0に調整し、ろ過し、ポッティングし、滅菌することより、得られた。
【0045】
実施例7
1本あたり0.2mgのブレイアコニチンAを含む注射用ブレイアコニチンAを製造した。それは、200mgのブレイアコニチンAを秤量し、希硫酸5mlを加えて溶解した後、500mlになるように注射用水を加え、マンニトール200gを加えて溶解した後、1000mlになるように注射用水を加え、pHを5.0に調整し、濾過し、1000本にポッティングし、栓をし、凍結乾燥した後、密栓することにより、得られた。
【0046】
実施例8
1枚あたりブレイアコニチンA4mgを含むブレイアコニチンA貼付剤を製造した。それは、4000mgのブレイアコニチンA、シリコン感圧接着剤150000mg、ユーカリ油2000mgを秤量し、100mlエタノールを加えてブレイアコニチンAを溶解した後、シリコン感圧接着剤およびアン油とを均一によく混合し、1000枚になるように塗布の厚みを制御しながらポリテトラフルオロエチレンフィルムの保護層に塗布し、乾燥し、不織布バッカー層を覆い、適当な形状とサイズにカットすることで、得られた。
【0047】
実施例9
1錠当たりブレイアコニチンA3.3mgを含有する錠剤を製造した。それは、3300mgのブレイアコニチンAと、ラクトース3000mg、ヒドロキシプロピルセルロース1500mg、ステアリン酸マグネシウム50mg、カルボキシメチルデンプンナトリウム400mgを均一に混合し、そのまま1000錠になるように打錠することで、得られた。
【0048】
実施例10
1錠当たりブレイアコニチンA3.3mgを含有する錠剤を製造した。それは、ブレイアコニチンA3300mgと、ラクトース250mg、ヒドロキシプロピルセルロース100mg、ステアリン酸マグネシウム50mg、カルボキシメチルデンプンナトリウム50mgを均一に混合し、そのまま1000錠になるように打錠することで、得られた。
【0049】
以上、本発明により提供されるブレイアコニチンAの用途を詳細に説明した。本明細書において具体例により本発明の原理および実施形態を説明したが、以上の実施例の説明は、本発明の方法及び要旨を理解するためにのみ用いられる。なお、当業者にとって、本発明の原理から逸脱することなく、幾つの改良及び修飾を加えることができ、それらの改良及び修飾も本発明の特許範囲に含まれることに留意する必要がある。