(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】温度センサ
(51)【国際特許分類】
G01K 7/22 20060101AFI20221208BHJP
G01K 1/14 20210101ALI20221208BHJP
【FI】
G01K7/22 J
G01K1/14 E
(21)【出願番号】P 2022514487
(86)(22)【出願日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 JP2021033171
【審査請求日】2022-03-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145242
【氏名又は名称】株式会社芝浦電子
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】吉原 孝正
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 康平
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-173112(JP,A)
【文献】特開平05-215614(JP,A)
【文献】実開平04-024032(JP,U)
【文献】特開2010-181166(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122661(WO,A1)
【文献】特開平09-223601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱体と、
前記感熱体に電気的に接続される一対の電線と、
前記感熱体と一対の前記電線の一部とを覆う樹脂製の保護体と、
前記保護体に一体的に形成される、温度測定対象物への固定を担う固定要素と、を備え、
前記固定要素は、前記感熱体および前記電線が設けられる前記保護体のセンサ要素保持領域からずれる自由領域に設けられる、前記保護体の表裏を貫通する固定孔であることを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
前記自由領域は、
前記センサ要素保持領域よりも厚さ方向の寸法が小さく設定されている、
請求項1に記載の温度センサ。
【請求項3】
前記固定孔に挿入される締結具によって前記温度測定対象物に固定される、
請求項1または請求項2に記載の温度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度測定対象物への固定が容易な温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
温度センサとして、例えばサーミスタ(thermistor)からなる感熱体と、感熱体に電気的に接続される引出線と、引出線に電気的に接続されるリード線と、を備えるものが広く用いられている。感熱体は、例えばガラスからなる電気的な絶縁材料の被覆層で覆われることがある。
【0003】
この温度センサにおいて、温度を測定する対象物に近接していることが測定温度の正確性を得るうえで好ましい。また、温度測定対象物に近接する典型例として、温度センサを温度測定対象物に固定することが行われる。
【0004】
例えば、特許文献1に記載される温度センサは、感熱体およびガラス製の保護層を収容する金属製のケースを備え、このケースは測定対象物への伝熱面を有するラグ端子を備える。特許文献1の温度センサによれば、ラグ端子を温度測定対象物にネジ止めすることで伝熱面を温度測定対象物に密着させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の温度センサは、ラグ端子の伝熱面を温度測定対象物に密着させることができるので、測定温度の精度を確保できる。しかし、特許文献1は、ラグ端子を含む金属製のケースを備え、このケースに温度センサの本体部分を収容する作業が必要である。したがって、ラグ端子を温度測定対象物に締結具で固定する作業を含み作業工数が多くなる。
以上より、本発明は、温度測定対象物に固定するために必要な作業工数の少ない温度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の温度センサは、感熱体と、感熱体に電気的に接続される一対の電線と、感熱体と一対の電線の一部とを覆う樹脂製の保護体と、保護体に一体的に形成される、温度測定対象への固定を担う固定要素と、を備える。
【0008】
本発明における固定要素は、好ましくは、感熱体および電線が設けられる保護体のセンサ要素保持領域からずれる自由領域に設けられる。
【0009】
本発明における自由領域は、好ましくは、センサ要素保持領域よりも厚さ方向の寸法が小さく設定されている。
【0010】
この固定要素は、好ましくは、保護体の表裏を貫通する固定孔である。この場合、好ましくは、固定孔に挿入される締結具によって温度測定対象物に固定される。
【0011】
また、この固定要素は、好ましくは、保護体の表面から突出する固定突起である。この場合、温度測定対象物に形成される保持孔に固定突起が挿入されることで温度測定対象物に固定される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の温度センサによれば、温度測定対象物への固定を担う固定要素が保護体に設けられている。保護体は感熱体などの温度センサの構成要素を保護するために設けられているものであり、温度センサはこの保護体に固定要素を一体的に備える。このように、本発明による温度センサによれば、固定要素を設けるための個別の部材を作製しこの部材を温度センサに取り付ける作業を省くことができるので、温度測定対象物に固定するために必要な作業工数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る温度センサを示し、(a)は平面図、(b)は底面図である。
【
図2】第1実施形態に係る温度センサを示し、(a)は左側面図、(b)は右側面図である。
【
図3】第1実施形態に係る温度センサを温度測定対象物に固定する手順を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係る温度センサの変形例を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る温度センサの他の変形例を示す図である。
【
図6】第1実施形態に係る温度センサの他の変形例を示す図である。
【
図7】第1実施形態に係る温度センサの他の変形例を示す図である。
【
図8】第2実施形態に係る温度センサを示し、(a)は平面図、(b)は底面図である。
【
図9】第2実施形態に係る温度センサを示し、(a)は左側面図、(b)は右側面図である。
【
図10】第2実施形態に係る温度センサを温度測定対象物に固定する手順を示す図である。
【
図11】第2実施形態に係る温度センサを温度測定対象物に固定する他の手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態:
図1~
図7]
第1実施形態に係る温度センサ10Aは、温度測定対象物への固定を担う固定要素の一例として、例えば締結具が挿入される固定孔21を備える。そして、この固定孔21は、温度センサ10Aの感熱体11を直に覆う保護体19に形成される。以下、
図1から
図7を参照しながら、温度センサ10Aを説明する。
【0015】
[温度センサ10A:
図1,
図2]
温度センサ10Aは、
図1および
図2に示すように、感熱体11と、感熱体11の周囲を覆うガラス製の保護層13と、感熱体11に電気的に接続される一対の引出線15,15と、引出線15,15のそれぞれに接続されるリード線17,17と、を備える。引出線15,15とリード線17,17により本発明の一対の電線が構成される。また、温度センサ10Aは、感熱体11、保護層13および引出線15,15のそれぞれの全体ならびにリード線17,17の前端部分を覆う樹脂材料製の保護体19を備える。なお、温度センサ10Aにおいて、
図1および
図2に示すように、感熱体11が設けられる側を前方(F)と定義し、その逆側を後方(B)と定義する。ただし、この定義は相対的なものとする。また、温度センサ10Aにおいて、
図1および
図2に示すように、長手方向(L)、幅方向(W)および厚さ方向(T)が定義される。この定義は本実施形態の説明の便宜のために用いられるものであり、本発明を特定するものではない。
【0016】
[感熱体11]
感熱体11には、例えば、サーミスタ(thermistor:thermally sensitive resistor)が適用される。サーミスタは、温度によって電気抵抗が変化することを利用して温度を測定する金属酸化物である。
サーミスタは、NTC(negative temperature coefficient)とPTC(positive temperature coefficient)に区分されるが、感熱体11にはいずれのサーミスタをも使用できる。
【0017】
NTCサーミスタとしてスピネル構造を有するマンガン酸化物(Mn3O4)を基本組成とする酸化物焼結体を感熱体11に用いることができる。この基本構成にM元素(Ni、Co、Fe、Cu、Al及びCrの1種又は2種以上)を加えたMXMn3-XO4の組成を有する酸化物焼結体を感熱体11に用いることができる。さらに、V、B、Ba、Bi、Ca、La、Sb、Sr、Ti及びZrの1種又は2種以上を加えることができる。
また、PTCサーミスタとして典型的なペロブスカイト構造を有する複合酸化物、例えばYCrO3を基本構成とする酸化物焼結体を感熱体11に用いることができる。
サーミスタ以外の例えば白金からなる電気的な抵抗要素を感熱体11に用いることもできる。
【0018】
[保護層13:
図1,
図2]
ガラス製の保護層13は、感熱体11を封止して気密状態に保持することによって、環境条件に基づく感熱体11の化学的、物理的変化を抑えるとともに、感熱体11を機械的に保護する。ガラス製の保護層13は、感熱体11の全体に加えて引出線15,15の前端を覆い、引出線15,15を封着する。
なお、ガラス製の保護層13を設けることは好ましい例にすぎず、本発明において保護層13を設けることは任意である。
【0019】
[引出線15,15:
図1,
図2]
引出線15,15は、感熱体11の図示を省略する一対の電極にそれぞれが電気的に接続される。
引出線15,15は、保護層13により封着されるため、好ましくは線膨張係数が保護層13を構成するガラスと近似するジュメット線が用いられる。なお、ジュメット線は、鉄とニッケルを主成分とする合金を導体(芯線)として用い、そのまわりを銅で被覆した導線である。
【0020】
[リード線17,17:
図1,
図2]
リード線17,17は、導体からなる芯線17A,17Aと、芯線17A,17Aの周囲を覆う電気的な絶縁被覆17B,17Bと、を備える。リード線17,17の一端側は、所定の範囲で芯線17A,17Aが絶縁被覆17Bから露出している。この芯線17A,17Aの露出した部分と引出線15,15とが電気的に接続される。
本実施形態では、芯線17Aに接続されたパッド17C,17Cに引出線15の端部が溶接等により接合されることで、引出線15,15と芯線17A,17Aとが電気的に接続される。各リード線17,17の他端は、必要に応じて他の電線を介して、図示しない回路基板に接続される。
【0021】
[保護体19A:
図1,
図2]
保護体19Aは、感熱体11と、保護層13と、感熱体11から引き出される引出線15,15と、引出線15,15に接続されるリード線17,17の一部区間とに亘り温度センサ10Aを覆っている。このように保護体19Aは、感熱体11などの温度センサ10Aの要素を外的な要因から保護するために設けられる。
保護体19Aは、感熱体11、引出線15,15およびリード線17,17の芯線17A,17Aを衝撃等の外力から保護する。
保護体19Aは、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素系樹脂から形成されるのが好ましい。この保護体19Aは、これらの樹脂材料の他、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を問わず、適宜な樹脂材料を用いて構成することもできる。
保護体19Aが透明な樹脂から構成されていると、保護体19Aの透視による感熱体11の外観検査が可能である。
【0022】
保護体19Aは、好ましい一例として、長手方向(L)に延びる直方体状の外観形状を有するが、円柱状などの他の外観形状としてもよい。また、保護体19Aは、例えば、金型に温度センサ10Aを配置し、射出成形により製造することができる。
【0023】
保護体19Aには、感熱体11よりも前方(F)に、おもて面19A1とうら面19A2を厚さ方向(T)に貫通する固定孔21が形成されている。この固定孔21は、本発明における固定要素の一例である。
図1および
図2に示される固定孔21は、開口形状が円形をなしている。ただし、具体的には後述するように、本発明における固定孔21における開口形状は円形に限らない。
【0024】
固定孔21は、保護体19Aの前方(F)に設けられる薄肉部19A3に形成される。薄肉部19A3には、感熱体11、引出線15,15などの保護体19Aを除く温度センサ10Aの要素が存在しておらず、締結具で締め付けても温度センサ10Aの要素に機械的な圧力を与えるおそれが小さい。薄肉部19A3は、薄肉部19A3を除く厚肉部19A4の例えば1/2程度の厚さとされる。固定孔21を含む保護体19Aは、前述した樹脂材料から例えば射出成形により一体的に形成される。つまり、保護体19Aにおいて、固定孔21を形成するための個別の部材の用意および作業工数を要しない。
ここで、厚肉部19A4は感熱体11、引出線15,15などの温度センサ10Aの要素が保持されるセンサ要素保持領域ということができる。また、薄肉部19A3はセンサ要素保持領域からずれる自由領域ということができる。
【0025】
[温度センサ10Aの固定手順:
図3]
次に、
図3を参照して、温度センサ10Aを温度測定対象物30に固定する手順の一例を説明する。この固定手順は、温度センサ10Aをボルト35とナット37からなる締結具33で温度測定対象物30に固定する。
はじめに、
図3(a)に示すように、保護体19Aの固定孔21と温度測定対象物30に形成される固定孔21との位置を合わせる。この位置合わせは、長手方向(L)と幅方向(W)について行われる。またこの例では、温度センサ10Aに向けてボルト35を配置し、温度測定対象物30に向けてナット37を配置する。ボルト35は固定孔21と位置合わせされ、ナット37は固定孔21と位置合わせされる。
【0026】
保護体19A、温度測定対象物30、ボルト35およびナット37の位置合わせができたら、
図3(b)に示すように、ボルト35のネジ部35Bを固定孔21および保持孔31を貫通させ、その先端部を温度測定対象物30のうら側(図中の下側)に露出させる。露出したネジ部35Bの先端にナット37を嵌め合わせた後に、ナット37を回転しないように保持しながら、ボルト35の頭部35Aを締め付ける。
【0027】
以上の手順により、温度センサ10Aを温度測定対象物30に密着できる。
図3(b)に示すように、温度センサ10Aが載せられる温度測定対象物30の支持面30Aは平坦であり、一方、温度センサ10Aの熱感知面となる保護体19Aのうら面19A2も平坦である。したがって、温度センサ10Aの熱感知面は温度測定対象物30の支持面30Aに密着できる。ただし、支持面30Aおよび熱感知面(うら面19A2)が平坦なのは一例にすぎず、本発明においては、平坦面に替えて曲面、凹凸面などの他の形態を採用できる。また、保護体19Aが柔軟な材料から構成され、温度測定対象物30の平坦な支持面または平坦でないはない支持面30Aに倣って変形する形態をも採用できる。
【0028】
[温度センサ10Aの効果]
温度センサ10Aは、締結具により温度測定対象物30に固定するための固定孔21が保護体19Aに設けられている。保護体19Aは感熱体11などを保護するために設けられているものであり、温度センサ10Aはこの保護体19Aに固定孔21を設ける。このように、温度センサ10Aによれば、固定要素である固定孔21を設けるための個別の部材を作製しこの部材を温度センサ10Aに取り付ける作業を省くことができるので、温度センサ10Aを温度測定対象物30に固定するために必要な作業工数を減らすことができる。
【0029】
また、温度センサ10Aにおける固定孔21は、保護体19Aの前方(F)に設けられる薄肉部19A3に形成される。薄肉部19A3には、感熱体11、引出線15,15などの保護体19Aを除く温度センサ10Aの要素が存在しておらず、締結具で締め付けても、感熱体11等の温度センサ10Aの構成要素に機械的な圧力を与えるおそれが小さい。
【0030】
[第1実施形態の変形例:
図4,
図5,
図6,
図7]
次に、
図4~
図7を参照して、第1実施形態に係る温度センサ10Aの変形例について説明する。
図4は固定孔21を設ける位置に関する変形例を示している。
図4(a)は、感熱体11よりも後方(B)であって、引出線15,15およびリード線17,17の芯線17A,17Aの間に、固定孔21が設けられる例を示している。また、
図4(b)は、感熱体11よりも後方(B)であって、リード線17,17の絶縁被覆17B,17Bの間に、固定孔21が設けられる例を示している。なお、
図4(b)は二つの固定孔21を設ける例を示しているが、固定孔21は一つであってもよいし、三つ以上であってもよい。
以上のように、第1実施形態においては、感熱体11よりも後方(B)であって、引出線15,15およびリード線17,17の一方または双方の間に、固定孔21を設けることによっても、温度センサ10Aを温度測定対象物30に固定するために必要な作業工数を減らすことができる。なお、固定孔21の位置、締結具の寸法などの仕様は、固定孔21に締結具を挿入して締め付けたときに、感熱体11、引出線15,15およびリード線17,17に機械的な圧力が及ぶことがないように適宜設定することが好ましい。
【0031】
図5は、固定片23を保護体19Aの幅方向(W)の一方の辺に沿って保護体19Aと一体的に形成し、固定片23の厚さ方向(T)を貫通するように固定孔21を形成した変形例を示している。
図5に示される変形例は、例えば、温度測定対象物30との関係上、平面視する保護体19Aの範囲内に固定孔21を設けることができない場合に、採用される。
固定片23は射出成形により保護体19Aと一体的に設けることができるので、
図5に示される変形例においても、温度センサ10Aを温度測定対象物30に固定するために必要な作業工数を減らすことができる。
【0032】
図6および
図7には、
図1~
図5は平面視した形状が円形の固定孔21を例示したが、円形以外の固定孔21の形状の例が示されている。本発明における固定孔21の形状は、既に例示した円形形状に限定されず、固定孔21の位置、締結具の寸法などの仕様等により、適宜変更することができる。
つまり、本発明においては、
図6(a)に示すように長円形状の固定孔21、
図6(b)に示すように矩形形状の固定孔21を採用することができる。ここでいう長円形状については、楕円形状、レーストラック形状を含む概念として定義される。また、ここでいう矩形形状については、正方形を含むひし形、長方形を含む平行四辺形を含む概念として定義される。さらに、本発明においては、
図7(a)に示すように三角形状の固定孔21を採用できるのに加えて、
図7(b)に示すように不定形形状の固定孔21をも採用することができる。
また、ここまでは固定孔21の厚さ方向(T)の寸法が一定であることを前提に図示および説明したが、固定孔21の厚さ方向(T)の寸法が、例えば一方の面側から他方の面側に向けて小さくなるというように、変化してもよい。
【0033】
[第2実施形態:
図8,
図9,
図10,
図11]
次に、第2実施形態に係る温度センサ10Bは、測定対象物への固定要素の一例として、例えば温度測定対象物30の保持孔31に挿入される固定突起25を備える場合を説明する。この固定突起25は、温度センサ10Bの感熱体11を直に覆う保護体19Bに形成される。以下、
図8から
図11を参照しながら、温度センサ10Bを説明する。なお、
図8から
図11において、先に説明した温度センサ10Aと同じ構成要素については温度センサ10Aと同じ符号を用いるとともに、これら構成要素の説明を省略し、以下では保護体19Bに焦点を当てて説明する。
【0034】
[保護体19B:
図8,
図9]
保護体19Bは、感熱体11よりも前方(F)に、おもて面19A1(またはうら面19A2)から厚さ方向(T)に突き出す固定突起25が形成されている。固定突起25は、本発明における固定要素の一例である。
図8および
図9に示される固定突起25は、横断面形状が円形をなしている。ただし、本発明における固定突起25における横断面形状は円形に限られない。温度センサ10Aの固定孔21について説明したように、その目的を達成できる限り、固定突起25は、種々の形状を採用できる。固定突起25を含む保護体19Bは、前述した樹脂材料から例えば射出成形により一体的に形成される。つまり、保護体19Bにおいて、固定突起25を形成するための個別の作業工数を要しない。なお、
図8および
図9に示される保護体19Bは、温度センサ10Aが備える薄肉部19A3を有しない厚さ方向(T)の寸法が一定の例に従っているが、固定突起25を薄肉部19A3に設けることを妨げない。
【0035】
[温度センサ10Bの固定手順:
図10]
次に、
図10を参照して、温度センサ10Bを温度測定対象物30に固定する手順の一例を説明する。この固定手順は、
図10(a)に示すように、温度センサ10Bの固定突起25を温度測定対象物30に固定する。
はじめに、
図10(a)に示すように、保護体19Aの固定突起25と温度測定対象物30に形成される保持孔31との位置を合わせる。この位置合わせは、長手方向(L)と幅方向(W)について行われる。
【0036】
固定突起25と保持孔31の位置合わせができたら、
図10(b)に示すように、固定突起25を保持孔31に貫通させる。ここで、固定突起25を保持孔31の内部において保護体19に固定されるが、その手段は任意である。例えば、固定突起25の外径を保持孔31の開口径よりも大きく設定することで、固定突起25を保持孔31に圧入して固定することができる。他の手段としては、固定突起25を保持孔31に接着剤を用いて固定することもできる。
【0037】
以上の手順により、温度センサ10Bを温度測定対象物30に密着させることができる。
図10(b)に示すように、温度センサ10Bが載せられる温度測定対象物30の支持面30Aは平坦であり、一方、温度センサ10Bの熱感知面となる保護体19Bのうら面19A2も平坦である。したがって、温度センサ10Bの熱感知面は温度測定対象物30の支持面30Aに密着できる。
【0038】
[温度センサ10Bの効果]
温度センサ10Bは、温度測定対象物30に固定するための固定突起25が保護体19Bに設けられている。保護体19Bは感熱体11などを保護するために設けられているものであり、温度センサ10Bはこの保護体19Bに固定突起25を設ける。このように、温度センサ10Bによれば、固定要素である固定突起25を設けるための個別の部材を作製しこの部材を温度センサ10Bに取り付ける作業を省くことができるので、温度センサ10Bを温度測定対象物30に固定するために必要な作業工数を減らすことができる。
【0039】
[第2実施形態の変形例:
図11]
次に、
図11を参照して、第2実施形態に係る温度センサ10Bの変形例について説明する。
図11に示される温度センサ10Bは、固定突起25が突出する寸法を温度測定対象物30の厚さ方向(T)の寸法よりも大きく設定する。そして、
図11(a),(b)に示すように、固定突起25が保持孔31を貫通してその先端が温度測定対象物30のうら面30Bから突出させる。次いで、うら面30Bから突出する部分を例えば加熱することにより軟化させてから押し潰して、係止端27を形成する。この係止端27の形成により、温度センサ10Bは温度測定対象物30に対して固定される。
【0040】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に置き換えたりすることができる。
第1実施形態に係る温度センサ10Aにおいては固定孔21を備え、第2実施形態に係る温度センサ10Bにおいては固定突起25を備えるが、保護体19A,19Bに固定孔21と固定突起25の双方設けることもできる。固定孔21と固定突起25の双方を設ければ、温度センサと温度測定対象物との固定強度を強くできるのに加えて、温度センサと温度測定対象物との相対的な位置関係を正確に特定できる。
【0041】
第1実施形態においては固定孔21を保護体19Aの表裏を貫通して設けたが、本発明はこれに限定されない。例えば木ねじのように先端が尖った締結具を用いることができ、この場合には表裏を貫通せずに底部分が封止された固定穴を設けることができる。この場合には、先端が尖った締結具を固定穴に沿ってねじ込み、封止された底部分を貫通して、温度測定対象物に固定すればよい。
【0042】
第2実施形態においては固定突起25を保持孔31に挿入する際に圧入する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、固定突起25を保持孔31に圧力を加わることをしないで、固定突起25を保持孔31に挿入した後に、締結具、例えば先端が尖った木ねじを保持孔31の内部の固定突起25にねじ込み、固定突起25の径を拡大させて固定突起25に圧力を生じさせて温度測定対象物30に固定させてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10A,10B 温度センサ
11 感熱体
13 保護層
15 引出線
17 リード線
17A 芯線
17B 絶縁被覆
17C パッド
19A,19B 保護体
19A1 おもて面
19A2 うら面
19A3 薄肉部
19A4 厚肉部
21 固定孔
23 固定片
25 固定突起
27 係止端
30 温度測定対象物
30A 支持面
31 保持孔
33 締結具
35 ボルト
35A 頭部
35B ネジ部
37 ナット
【要約】
本発明は、温度測定対象物に固定するために必要な作業工数の少ない温度センサを提供することを目的とする。この目的を達成するために、本発明の温度センサは、感熱体(11)と、感熱体(11)に電気的に接続される一対の電線(15,17)と、感熱体(11)と一対の電線(15,17)の一部とを覆う樹脂製の保護体(19)と、保護体(19)に一体的に形成される、温度測定対象に対する固定要素(21,25)と、を備える。