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特許7190613積層造形焼成体および該積層造形焼成体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】積層造形焼成体および該積層造形焼成体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20221208BHJP
   C04B 35/622 20060101ALI20221208BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221208BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20221208BHJP
【FI】
B28B1/30
C04B35/622
B33Y10/00
B33Y80/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022538071
(86)(22)【出願日】2021-08-18
(86)【国際出願番号】 JP2021030235
(87)【国際公開番号】W WO2022044930
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2020145503
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(72)【発明者】
【氏名】本堂 剛
(72)【発明者】
【氏名】川原 彰広
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-141225(JP,A)
【文献】特開2020-084311(JP,A)
【文献】特開2017-024929(JP,A)
【文献】特開2017-077707(JP,A)
【文献】特開2019-111803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/30
C04B 35/622
B33Y 10/00
B33Y 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形用粉末を用いて積層造形物を造形する造形工程と、
前記積層造形物を焼成して積層造形焼成体を得る焼成工程と、
を包含する積層造形焼成体の製造方法であって、
前記造形工程では、前記積層造形用粉末を用いて、前記積層造形物を支持するサポーターを、該積層造形物を取り囲むようにして、該積層造形物とともに造形する、製造方法。
【請求項2】
前記焼成工程では、前記積層造形物と前記サポーターとが相互に接合しないように焼成して、前記積層造形焼成体と前記サポーターの焼成体を得る、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記焼成工程では、前記積層造形物と前記サポーターとの間に、該積層造形物が該サポーターに接触するのを防止するための無機物質からなる干渉材を配置した状態で、前記積層造形物と前記サポーターとを焼成して、互いに独立した前記積層造形焼成体と前記サポーターの焼成体を得る、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記サポーターはメッシュ形状を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記積層造形用粉末はセラミック粒子を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記セラミック粒子は、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、およびケイ素(Si)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物、窒化物、炭化物、および硫化物のいずれかを含む、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記焼成工程では、前記積層造形物と前記サポーターとの間に、該積層造形物が該サポーターに接触するのを防止するための無機物質からなる干渉材を配置した状態で、前記積層造形物と前記サポーターとを焼成して、互いに独立した前記積層造形焼成体と前記サポーターの焼成体を得ており、
前記干渉材は粒子状に構成されており、該粒子状干渉材の平均粒子径は前記セラミック粒子の平均粒子径よりも大きい、請求項5または6に記載の製造方法。
【請求項8】
積層造形焼成体であって、
該積層造形焼成体を支持するサポーターの焼成体に取り囲まれた状態で配置されており、前記サポーター焼成体とは相互に接合されておらず、該サポーター焼成体の内部において可動状態である積層造形焼成体。
【請求項9】
前記積層造形焼成体と前記サポーター焼成体とは、同じ組成のセラミック体で構成されている、請求項8に記載の積層造形焼成体。
【請求項10】
前記サポーター焼成体はメッシュ形状を有する、請求項8または9に記載の積層造形焼成体。
【請求項11】
前記セラミック体は、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、およびケイ素(Si)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物、窒化物、炭化物、および硫化物のいずれかを含む、請求項9に記載の積層造形焼成体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形焼成体および該積層造形焼成体の製造方法に関する。詳しくは、積層造形焼成体と、該積層造形焼成体を支持するサポーターであって、当該積層造形焼成体を取り囲むサポーターの構成に関する。本出願は、2020年8月31日に出願された日本国特許出願2020-145503に基づく優先権を主張しており、その出願の全内容は本明細書中に参照として組み入れられている。
【背景技術】
【0002】
従来から、付加造形(Additive manufacturing;3次元造形ともいう。)の一手法では、粉末材料と水溶性樹脂との混合物を積層し、所定の領域に水分を与えて水溶性樹脂を固化させることで粉体固化層を形成する。この粉体固化層を順次積層することによって、所望の立体形状の積層造形物(三次元構造物)を造形することができる。粉末材料の付加造形(粉末積層造形)において積層造形物を造形する際、積層造形物を支持するサポーターを造形して、かかる積層造形物の形状を適切に保つことが知られている(特許文献1~6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特許出願公表第2019-513183号公報
【文献】日本国特許出願公開第2019-123208号公報
【文献】日本国特許出願公表第2020-501022号公報
【文献】日本国特許出願公表第2020-501018号公報
【文献】日本国特許出願公表第2020-501019号公報
【文献】日本国特許出願公開第2019-107889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような粉末積層造形では、典型的には、積層造形物を造形した後に、かかる積層造形物を乾燥させて、焼成を行っている。この乾燥によって、積層造形物の造形完了時から焼成までの間に、積層造形物に変形が生じることがある。そうすると、かかる変形が生じたまま積層造形物が焼成されて、積層造形焼成体が製造される虞がある。あるいは、積層造形物を焼成する過程において変形が生じる虞がある。近年では、粉末積層造形を用いて精密鋳造用中子が多く製造されている。そのため、積層造形物における変形の抑制に対する要求はますます高まっている。
【0005】
本発明は、かかる点を鑑みて創出されたものであり、その目的とするところは、変形の発生等が高度に抑制された積層造形焼成体を製造する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、積層造形物を作製する際に、同時に、該積層造形物を構成する粉末材料と同じ粉末材料を用いてサポーターを作製することに着目した。そして、かかるサポーターで周囲を取り囲むようにして積層造形物を造形することによって、積層造形物に、乾燥や焼成にともなう変形が生じるのを顕著に抑制し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
ここで開示される技術によると、積層造形用粉末を用いて積層造形物を造形する造形工程と、前記積層造形物を焼成して積層造形焼成体を得る焼成工程と、を包含する積層造形焼成体の製造方法が提供される。
前記造形工程では、前記造形用粉末を用いて、前記積層造形物を支持するサポーターを、該積層造形物を取り囲むようにして、該積層造形物とともに造形する。
かかる構成の製造方法によると、製造工程(例えば乾燥、焼成等)において積層造形物に変形が生じるのを抑制し、かかる変形が抑制された積層造形焼成体を提供することができる。
なお、本明細書において「取り囲む」とは、必ずしも積層造形物の100体積%がサポーターの内部に配置される態様に限定されない。「積層造形物がサポーターに取り囲まれた状態」とは、積層造形物の少なくとも50体積%以上がサポーターの内部に配置されていることをいう。
【0007】
好ましい一態様において、前記焼成工程では、前記積層造形物と前記サポーターとが相互に接合しないように焼成して、前記積層造形焼成体と前記サポーターの焼成体を得る。
かかる構成によると、上述の積層造形物の変形を抑制する効果をより好適に発揮することができ、サポーター焼成体の容易除去性を向上させることができる。
【0008】
好ましくは、前記焼成工程では、前記焼成工程では、前記積層造形物と前記サポーターとの間に、該積層造形物が該サポーターに接触するのを防止するための無機物質からなる干渉材を配置した状態で、前記積層造形物と前記サポーターとを焼成して、互いに独立した前記積層造形焼成体と前記サポーターの焼成体を得る。
かかる構成によると、サポーターの内部において、積層造形物とサポーターとの接合を防止することができ、サポーター焼成体の容易除去性を向上させることができる。
【0009】
好ましくは、前記サポーターはメッシュ形状を有する。
かかる構成によると、上述の効果に加えて、ここで開示される製造方法において粉はらいを行う際に、効率よく余剰粉末を除去することができる。また、サポーターの内部に配置された状態の積層造形物を容易に視認することができる。
【0010】
好ましくは、前記積層造形用粉末はセラミック粒子を含む。
かかる構成は、セラミック製の積層造形焼成体を提供するのに好適である。
また、好ましくは、前記セラミック粒子は、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、およびケイ素(Si)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物、窒化物、炭化物、および硫化物のいずれかを含む。
かかる構成は、上記のような材料を含むセラミック製の積層造形焼成体を提供するのに好適である。
【0011】
好ましい一態様において、前記干渉材は粒子状に構成されており、該粒子状干渉材の平均粒子径は前記セラミック粒子の平均粒子径よりも大きい。
かかる構成によると、特にセラミック製の積層造形焼成体を作製する際に、上述の積層造形物の変形を抑制する効果を好適に発揮することができ、サポーターの容易除去性を向上させることができる。
【0012】
また、ここで開示される技術によると、積層造形焼成体が提供される。該積層造形焼成体を支持するサポーターの焼成体に取り囲まれた状態で配置されている。
かかる積層造形焼成体は、積層造形物からの変形が抑制されている。
なお、「積層造形焼成体がサポーター焼成体に取り囲まれた状態」とは、積層造形焼成体の少なくとも50体積%以上がサポーター焼成体の内部に配置されていることをいう。
【0013】
好ましい一態様では、前記積層造形焼成体は、前記サポーター焼成体とは相互に接合されておらず、該サポーター焼成体の内部において可動状態である。
かかる構成の積層造形焼成体は、上記の効果に加えて、サポーター焼成体の容易除去性が向上されている。
【0014】
好ましくは、前記積層造形焼成体と前記サポーター焼成体とは、同じ組成のセラミック体で構成されている。
かかる構成によると、上記の効果に加えて、積層造形焼成体の製造容易性が向上されている。
【0015】
好ましくは、前記サポーター焼成体はメッシュ形状を有する。
かかる構成によると、サポーター焼成体の容易除去性ならびに積層造形焼成体の製造容易性が、さらに向上されている。また、外部からサポーター焼成体の内部に配置された積層造形焼成体を容易に視認することができる。
【0016】
好ましくは、前記セラミック体は、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、およびケイ素(Si)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物、窒化物、炭化物、および硫化物のいずれかを含む。
かかる構成は、上記のような材料を含むセラミック製の積層造形焼成体において好ましく実現され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、一実施形態にかかる積層造形焼成体の製造方法を模式的に示すフロー図である。
図2図2は、一実施形態にかかる積層造形物およびサポーターを示す模式的な斜視図である。
図3図3は、図2のIII-III断面図である。
図4図4は、変形例1にかかる積層造形物およびサポーターを示す模式的な部分斜視図である。
図5図5は、本願発明に係る好適な一実施例の手順を示す概略図である。
図6図6は、上記実施例にかかる積層造形焼成体およびサポーター焼成体の観察画像である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書により教示されている技術内容と、当該分野における当業者の一般的な技術常識とに基づいて理解することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、所定の数値範囲をA~B(A、Bは任意の数値)と記すときは、A以上B以下を意味する。したがって、かかる記載は、Aを上回り、かつ、Bを下回る場合を包含する。
【0019】
ここに開示される技術は、積層造形用粉末に含まれる無機材料をバインダで結合させて所定の断面形状の硬化層(粉体固化層)を形成し、この硬化層を順次積層しながら形成することにより、所望の立体形状の積層造形物を造形する各種の付加造形に適用され得る。ここで開示される技術は、粉末固着式積層法を用いた付加造形への適用が特に好ましい。かかる粉末固着式積層法では、典型的には、積層造形用粉末を薄層状に堆積させた後、該堆積物における所定領域に水を含む造形液を混合して硬化層を形成し、この硬化層を繰り返し積層することで、積層造形物を造形する。以下、主として粉末固着式積層法を用いた付加造形に適用する場合を例として本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲を限定する意図ではない。例えば、本発明は、光造形技術にも適用することができる。かかる光造形技術では、典型的には、無機粒子(例えばセラミック粒子)を光硬化性樹脂に混ぜ合わせたスラリーに光を照射して硬化させることで、積層造形物を造形することができる。また、本発明は、石膏(例えば無水石膏(無水硫酸カルシウム:CaSO))やセメント等を使用した積層造形技術にも適用することができる。
【0020】
ここで開示される積層造形焼成体の製造方法は、図1に示されるように、おおまかにいって、造形工程S10、焼成工程S20、および取り外し工程S30を包含する。
<造形工程>
造形工程S10は、積層造形用粉末を用いて積層造形物を造形することを含む。この造形は、造形対象となる積層造形物に対応する三次元データ等に基づいて立体を造形する積層造形装置を用いて行われ得る。本実施形態では、積層造形用粉末を用いて粉末固着式積層法によって積層造形物を造形する。
ここで開示される製造方法では、造形工程S10において、上記のように積層造形物を造形する際、該積層造形物を支持するサポーターをともに造形する。即ち、本工程において造形対象となるのは、目的とする積層造形物およびサポーターである。
【0021】
図2,3に示されるように、サポーター20は、所定の一の方向(図3におけるZ方向)における2つの端部のうちの少なくとも一つ(本実施形態においては2つの端部21a,21b)が開口した枠部21を備えている。サポーター20は、枠部21は、かかる開口を塞ぐようにして、保持部22を備えている。積層造形物10は、枠部21および保持部22によってサポーター20の内部に取り囲まれている。
【0022】
保持部22は、サポーター20の内部に取り囲まれた状態の積層造形物10を外部から視認できるように構成されていることが好ましい。かかる構成によって、後述する粉はらい工程や焼成工程における作業性を向上させることができる。本実施形態では、保持部22は、網目状(メッシュ形状)に構成されている。かかる網目形状は、後述する第1保持部22aおよび第2保持部22bの一の先端と、枠部21の端部21aまたは端部21bとが相互に接続されることによって形成されている。
【0023】
保持部22は、第1保持部22aおよび第2保持部22bから構成されている。
第1保持部22aは、サポーター20の上面24(枠部21の端部21a側の面)および下面25(即ち枠部21の端部21b側の面)から積層造形物10に向かって延びている。第1保持部22aの先端は積層造形物10と接合されておらず、積層造形物10は、サポーター20の内部において可動状態であることが好ましい。第1保持部22aの先端は積層造形物10と接触しなくてもよく(図3中の枠A1)、接触してもよい(枠A2)。
第2保持部22bは、サポーター20の上面24および下面25から対向する他方の面に向かって延びており、上面24と下面25とを接続している。第2保持部22bはサポーター20の内部に取り囲まれた状態の積層造形物10と隣接し得る。かかる場合、第2保持部22bと積層造形物10とは接合されていない。特に限定するものではないが、後述する焼成工程S20における操作を考慮すると、第2保持部22bと積層造形物10とは接触しないことが好ましい。
【0024】
上記のような保持部の構成は、積層造形焼成体の製造工程における、乾燥や焼成による変形の発生を抑制するのに好適である。また、サポーター焼成体を除去して、内部の積層造形焼成体を取り出す際の容易性を向上される観点からも、好適である。
ただし、サポーター焼成体の取り外しによって積層造形焼成体を変形あるいは破損させない限りは、積層造形物10は、サポーター20の内部において非可動状態であってもよい。また、本発明の効果を実現し得る限りは、積層造形物10と保持部22とは接合されていてもよい。例えば、第1保持部22aのうちの一部が積層造形物10と接合されていてもよい。この場合、積層造形部10は、サポーター20の内部において、非可動状態であってもよい。第1保持部22aのうちの一部が積層造形物10と接合されていると、サポーター20の内部において積層造形物10を安定的に保持することができる。かかる構成によっても、乾燥や焼成による変形の発生を好適に抑制することができる。
なお、網目を構成する各格子の幅等は特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができる。
【0025】
また、図2,3において、保持部22は、上面24および下面25から、積層造形物10または対向する他方の面に向かって略垂直に延びているが、これに限定されない。本発明の効果を実現し得る限りにおいて、保持部22は、適当な角度θで積層造形物10または対向する他方の面に向かっていてもよい。
また、特に限定するものではないが、枠部21には必要に応じて、貫通孔21cを設けてもよい。貫通孔を設けておくことで、後述する粉はらい工程において、余剰粉末をサポーターの内部から外部に排出しやすくなる。貫通孔21cの大きさ、形状、数は、特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができる。
【0026】
ここで開示される製造方法では、積層造形物およびサポーターがともに造形される。そのため、これらの構成材料を、同一の積層造形用粉末とすることができる。かかる積層造形用粉末としては、この種の積層造形用粉末に含まれ得る種々の無機材料を特に制限なく選択することができる。また、好ましくは、かかる積層造形用粉末は、バインダとしての有機材料(例えば水溶性有機材料)を含んでもよい。
無機材料からなる粒子(無機粒子)としては、例えば、セラミックを主体として構成されるセラミック粒子を好適に用いることができる。かかるセラミックとしては、特に限定されないが、種々の金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等が挙げられる。本明細書において、「金属」は半金属を包含する。例えば、周期表の第4族~第14族に属する少なくともいずれか1種の元素を含む酸化物、窒化物、炭化物、硫化物;等を主体として構成されるセラミック粒子を好適に用いることができる。また、周期表の第2族に属する少なくともいずれか1種の元素を含む酸化物、窒化物、炭化物、硫化物;等を主体として構成されるセラミック粒子を好適に用いることができる。アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、およびケイ素(Si)のうちのいずれかうちのいずれか1種の元素を含む酸化物、窒化物、炭化物、硫化物;等を主体として構成される無機粒子が好ましい。アルミニウム(Al)元素を含む酸化物、窒化物、炭化物;等を主体として構成されるセラミック粒子を好適に用いることができる。
【0027】
具体的には、無機粒子の好適例として、酸化アルミニウム(例えばアルミナ)粒子、酸化ジルコニウム(例えばジルコニア)粒子、酸化チタン(例えばチタニア)粒子、酸化ケイ素(例えばシリカ)粒子、酸化亜鉛粒子、酸化鉄粒子、酸化ニッケル粒子、酸化セリウム(例えばセリア)粒子、酸化マグネシウム(例えばマグネシア)粒子、酸化クロム粒子、二酸化マンガン粒子、チタン酸バリウム粒子、炭酸カルシウム粒子、炭酸バリウム粒子等の酸化物粒子;窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等の窒化物粒子;炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子等の炭化物粒子;等のいずれかを主体として構成される無機粒子が挙げられる。無機粒子は1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、チタニア粒子、シリカ粒子、酸化亜鉛粒子、チタン酸バリウム粒子は、高強度の造形物を形成し得る点で好ましい。あるいは、無機粒子は石膏(例えば無水石膏(無水硫酸カルシウム:CaSO))で構成されてもよい。
【0028】
あるいは、上記無機粒子として、金属を主体として構成される金属粒子を用いることができる。金属としては、金属材料を用いた造形技術において使用される種々の金属を特に制限なく選択することができる。例えば、周期表の第4族~第14族に属する金属元素の単体もしくは該金属元素のうちの少なくともいずれか一つを含む合金が選択され得る。これに限定されず、マグネシウム(Mg)の単体、Mgを含む合金も使用され得る。金属としては、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、およびマグネシウム(Mg)のうちのいずれかの元素の単体もしくは該金属元素のうちの少なくともいずれか一つを含む合金が好ましい。なかでも、無機粒子としては、アルミニウム粒子、ニッケル粒子、および鉄粒子は、高強度の造形物を形成し得る点で好ましい。
【0029】
なお、本明細書において、無機粒子および後述するバインダの組成について「Aを主体として構成される」とは、該無機粒子または該バインダに占めるAの割合(Aの純度)が、質量基準で90%以上(好ましくは95%以上)であることをいう。無機粒子およびバインダには、不可避的な不純物が含まれ得る。
【0030】
無機粒子の形状(外形)は、特に限定されない。無機粒子は、球形であってもよく、非球形であってもよい。機械的強度および製造容易性等の観点からは、無機粒子は、球形であることが好ましい。なお、ここで「球形」は、略球形を包含する。
【0031】
無機粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば5μm以上100μm以下であり得る。積層造形用粉末の流動性を好適に保つ観点から、無機粒子の平均粒子径は、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、特に好ましくは20μm以上である。積層ズレを抑制する観点から、無機粒子の平均粒子径は、好ましくは50μm以下である。
なお、本明細書中において「平均粒子径」とは、特記しない限り、レーザ散乱・回折法に基づく粒度分布測定装置に基づいて測定した粒度分布における積算値50%での粒子径、即ち50%体積平均粒子径(D50径)を意味する。
【0032】
積層造形用粉末における無機粒子(無機材料)の含有量は、特に制限はない。無機粒子の含有量は、積層造形用粉体の全量を100質量部とした場合に、機械的強度向上等の観点から、好ましくは60質量部以上、より好ましくは70質量部以上、さらに好ましくは80質量部以上である。無機粒子の含有量の上限は、特に限定されないが、例えば95質量部以下であり得る。
【0033】
上記のとおり、積層造形用粉体は、必要に応じてバインダを含んでよい。バインダの形状は特に限定されないが、例えば粒子状であり得る。バインダは、上記無機粒子同士を接着する成分である。かかるバインダは、例えば水溶性有機材料であり得る。これと水を含む造形液とを混合すると、水に溶解して無機粒子同士を接着することができる。
【0034】
水溶性有機材料の材質や性状は、特に限定されない。例えば、熱可塑性樹脂(ビニルアルコール系樹脂、イソブチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等)、熱硬化性樹脂(メラミン系樹脂等)、多糖類(セルロース誘導体等)および水溶性ワックスのいずれかを主体として構成された水溶性有機材料が好ましく用いられる。水溶性有機材料は、上述した以外の有機材料(例えば、ポリエチレングリコール等)を用いてもよい。また、水溶性有機材料は、1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
積層造形用粉末の総体積(粒子間の隙間部分を除いた体積をいう。)に対するバインダの体積割合は特に限定されないが、概ね20体積%以上とすることができる。また、バインダの体積割合は、概ね60体積%以下にすることができる。
【0036】
バインダと無機粒子とは、相互に接着しておらず、それぞれ独立した粒子として存在していてもよい。あるいは、造形物の強度を向上させる観点から、無機粒子の表面にバインダを付着させてもよい。即ち、無機粒子の一部または全部をバインダで被覆(コーティング)してもよい。
【0037】
積層造形用粉末は、必要に応じて、分散剤、増粘剤、印刷助剤等の、この種の積層造形用粉末に用いられ得る公知の添加剤を含んでよい。かかる添加剤の含有量は、その添加目的に応じて適宜設定すればよく、本発明を特徴づけるものではないため、詳しい説明は省略する。
【0038】
積層造形用粉末の調製方法は特に限定されない。周知の混合方法を用いて、積層造形用粉末に含まれる各成分を混合するとよい。例えば、市販のV型混合機、ロッキングミキサー、タンブラーミキサー、混合容器等を使用し得る。これらの成分を混合する態様は特に限定されず、例えば全成分を一度に混合してもよく、適宜設定した順序で混合してもよい。
【0039】
上記積層造形用粉末は、例えば水を含む造形液と混合される態様で、積層造形物の造形に用いられ得る。
上記造形液に用いられる溶媒としては、純水、超純水、イオン交換水(脱イオン水)、蒸留水等を好ましく用いることができる。造形液は、必要に応じて、水と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコール、低級ケトン等)をさらに含有してもよい。通常は、造形液に含まれる溶媒の40体積%以上100体積%以下が水であり得る。かかる造形液は、造形時に積層造形用粉末100質量部に対して、20質量部~80質量部(典型的には40質量部~60質量部)の比率で混合され得る。
【0040】
造形液は、必要に応じて染料、有機顔料、無機顔料、湿潤剤、流量増加剤等の、造形液に用いられ得る公知の添加剤を含んでよい。上記添加剤の含有量は、その添加目的に応じて適宜設定すればよく、本発明を特徴づけるものではないため、詳しい説明は省略する。
【0041】
積層造形用粉末を用いて積層造形物を造形する方法としては、特に限定されない。例えば、積層造形用粉末を用いて該粉末の層を形成した後、該層における所定領域に造形液を供給して、積層造形物を造形することができる。例えば、造形対象となる積層造形物に対応する三次元データ等に基づいて立体を造形する3Dプリンタを用いて、積層造形物を造形することができる。かかる3Dプリンタは、造形液を滴下するインクジェットと、積層造形用粉末が配置される裁置台とを備え得る。
【0042】
下記の操作1~3を繰り返して、積層造形用粉末からなる層を順次積層して積層造形物を造形することができる。
操作1:積層造形用粉末を、造形対象となる積層造形物の各層に対応する厚さ(例えば0.01mm~0.3mm)となるように、裁置台上に層状に充填(堆積)する。
操作2:層状に充填された積層造形用粉末(堆積物)のうち硬化すべき部分(即ち、造形対象となる積層造形物の一部に相当する部分)に対してインクジェットヘッドから造形液を滴下する。そして当該滴下部分に含まれるバインダを溶解して無機粒子間を接着させて、硬化層(層状固形物)を形成する。
操作3:裁置台を上記積層造形物の各層に対応する厚さの分だけ、鉛直下方に下降させる。
【0043】
その後、硬化されなかった積層造形用粉末を最終的に取り除き(「粉はらい工程」ともいう。)、積層造形物の造形が完了する。かかる積層造形物は、溶解したバインダにより多数の無機粒子が接着されて形成されている。造形後、得られた積層造形物を乾燥させてもよい。乾燥時間としては特に限定されないが、概ね1.5時間~24時間程度、好ましくは15時間~20時間である。
【0044】
特に限定するものではないが、ここで開示される製造方法は、必要に応じて含浸工程を包含してもよい。かかる含浸工程では、造形工程S10において造形した積層造形物およびサポーターに、カップリング剤を含むカップリング液を含浸させる。これによって、積層造形物を構成する無機粒子と無機粒子との間に、カップリング液(カップリング剤)が入り込む。含浸工程を行うことによって、積層造形物および積層造形焼成体の機械的強度を向上させることができる。
【0045】
上記カップリング液に含有されるカップリング剤としては、この種の粉末積層造形技術で一般的に使用されるカップリング液を特に制限なく使用することができる。好適例として、例えば、ケイ素(Si)を含むカップリング剤、アルミニウム(Al)をカップリング剤、チタン(Ti)を含むカップリング剤およびジルコニア(Zr)を含むカップリング剤が挙げられる。
なお、カップリング剤の種類やカップリング液の組成については、本発明を特徴づけるものではないため、詳細な説明は省略する。
【0046】
カップリング液を積層造形物に含浸させる方法は、特に限定されない。例えば、積層造形物をカップリング液中に浸漬して積層造形物中にカップリング液を含浸させる方法、積層造形物にカップリング液を塗布して積層造形物中にカップリング液を含浸させる方法等が採用され得る。積層造形物をカップリング液中に浸漬する場合、浸漬時間としては、積層造形用粉末における無機粒子と無機粒子との間の隙間にカップリング液が十分に染み渡る程度の時間であればよい。かかる浸漬時間は、通常は30秒~600秒であり、例えば50秒~120秒であり得る。
積層造形物をカップリング液から取り出した後、焼成を行う前に自然乾燥してもよい。乾燥時間としては特に限定されないが、概ね1時間~10時間程度、例えば2時間~5時間であり得る。
【0047】
<焼成工程>
焼成工程S20では、積層造形物とサポーターとを焼成して、積層造形焼成体とサポーター焼成体を得る。本工程は、特に限定するものではないが、例えば、任意のガス雰囲気の下、室温から最高焼成温度まで一定の昇温速度で昇温して、最高焼成温度において焼成対象物を所定の時間焼成し、一定の高温速度で降温する焼成スケジュールの下で実施され得る。
焼成時のガス雰囲気は、特に限定されないが、例えば大気雰囲気、酸素雰囲気、水蒸気雰囲気、ならびに、窒素雰囲気およびアルゴン雰囲気等の不活性雰囲気であり得る。造形用粉末がバインダを含む場合、バインダの熱分解を考慮すると、大気雰囲気および酸素雰囲気であることが好ましい。
焼成の温度条件は、特に限定されないが、最高焼成温度を600℃以上1650℃以下の範囲に設定するとよい。焼成の温度をかかる範囲に設定すると、積層造形用粉末に含まれる無機粒子同士の焼結を効率よく行うことができる。また、造形用粉末がバインダを含む場合、かかる温度条件において、効率よくバインダを熱分解して除去することができる。さらに、上記含浸工程を実施した場合には、上記温度条件下での焼成によって、カップリング剤中の金属元素を介した無機粒子と無機粒子との間の焼結を効率よく行うことができる。
【0048】
昇温速度は、特に限定されないが、例えば0.1℃/min~10℃/min、好ましくは1℃/min~10℃/minであり得る。
最高焼成温度での焼成時間は、特に限定されないが、概ね1時間~10時間(好ましくは1.5時間~5時間、特に好ましくは2時間~3時間)とするとよい。
降温速度は、特に限定されないが、例えば0.1℃/min~50℃/min、好ましくは1℃/min~10℃/minであり得る。
なお、焼成工程S20における諸条件は、積層造形物およびサポーターの構成材料、バインダの有無、所望する焼成体の密度によって異なり得るため、必要に応じて適宜変更することができる。
【0049】
特に限定するものではないが、必要に応じて最高焼成温度における焼成を行う前に、かかる焼成温度よりも低い温度条件の熱処理を別途行ってもよい。例えば、バインダを含む造形用粉末を用いた場合、積層造形物およびサポーターの脱脂処理を行うことができる。かかる脱脂処理では、例えば、あらかじめ、バインダが燃焼する程度の温度条件で所定の期間、熱処理を行ってもよい。脱脂処理における温度条件や時間は特に限定されず、バインダの種類、含有量等によって適宜変更することができる。
【0050】
焼成工程S20では、積層造形物とサポーターとが相互に接合しないように、焼成を行う。その手段としては、かかる目的を達成し得る限りは特に限定されないが、例えば、焼成中に積層造形物とサポーターとが直接接触するのを防止するための干渉材を使用することが挙げられる。積層造形物とサポーターとの間に干渉材を配置した状態で焼成を行えば、積層造形物とサポーターとの焼結を効果的に防止することができる。
干渉材としては、この種の目的を達成するために用いられる種々の無機物質を好適に使用することができる。かかる無機物質は、例えば耐熱性、流動性が高いものであることが好ましく、積層造形用粉末に含まれる無機粒子の焼結温度よりも高い焼結温度を有することが好ましい。特に限定するものではないが、好適例として、アルミナ、ムライト、焼成カオリン、炭化ケイ素等が挙げられる。
特に限定するものではないが、干渉材は、積層造形用粉末に含まれる無機粒子とは異なる形状や大きさを有することが好ましい。その形状は、特に限定されないが、例えば板状、粒子状であり得る。好ましくは、干渉材は、積層造形用粉末に含まれる無機粒子の平均粒子径よりも大きな平均粒子径を有する無機粒子であり得る。なお、干渉材としての無機粒子は、積層造形用粉末に含まれる無機粒子とは異なる種類であってもよく、同じ種類であってもよい。
【0051】
上記焼成後、干渉材と、固化されなかった積層造形用粉末を取り除く。そして、積層造形焼成体と、サポーター焼成体とが得られる。積層造形焼成体およびサポーター焼成体の構成については、積層造形物10とサポーター焼成体20の構成と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0052】
<取り外し工程>
取り外し工程S30では、サポーター焼成体を取り外し、サポーター焼成体と積層造形焼成体とを分離する。サポーター焼成体を取り外す方法は、特に限定されない。従来法によって切断、粉砕等することによって、サポーター焼成体を取り外すことができる。より具体的には、例えばダイヤモンドカッター等にて切断することによって、サポーター焼成体を取り外すことができる。
【0053】
ここで開示される積層造形焼成体は、造形用粉末を用いて積層造形物を造形する造形工程と、積層造形物を焼成して積層造形焼成体を得る焼成工程と、を包含する製造方法を経て製造されたものである。上記造形工程では、積層造形用粉末を用いて、積層造形物を支持するサポーターを、該積層造形物を取り囲むようにして、該積層造形物とともに造形している。当該製造方法を経て得られた積層造形焼成体は、該積層造形焼成体を支持するサポーター焼成体に取り囲まれた状態で配置されている。そのため、積層造形焼成体は、変形の発生が高度に抑制されている。
ここで開示される技術は、例えば複雑な構造を有し、かつ、高精度な構造が求められる部品(例えば、産業用ガスタービン動静翼(タービンブレード)や、ジェットエンジン、ターボチャージャーなど高温環境で使用される耐熱構造用部品等)を製造するための精密鋳造用中子の製造過程において好ましく適用され得る。
【0054】
<変形例1>
上記実施形態では、積層造形物10の全体がサポーター20の内部に配置されているが(図2,3参照)、これに限定されない。本発明の効果を実現し得る限りは、積層造形物10は必ずしも全体がサポーター20の内部に配置されていなくてもよく、その一部がサポーター20の外部に配置されていてもよい。特に限定するものではないが、積層造形物10の一部は、サポーター20(即ち、枠部21、保持部22)の外部に配置され得る。
図4に示されるように、積層造形物210は、ほぼ全体がサポーター220の内部に配置されているが、一部が保持部222(図4では上面224)を突き抜けて、サポーター220の外部に出ている。焼成後の変形防止の観点からは、積層造形物210の全体積を100体積%としたときに、サポーター220の外部に配置され得る積層造形物210の体積割合は、例えば50体積%未満、30体積%以下、好ましくは20体積%以下、さらに好ましくは10体積%以下であるとよい。即ち、積層造形物210の50体積%~100体積%は、サポーター220の内部に配置されるとよい。
図示されるように、積層造形物210において、保持部222を突き抜けて外部に出ている部分に向かっては、第1保持部222aは形成されていない。そのため、変形例1では、上記実施形態において上面24側に形成されていた第1保持部22a(図2,3参照。)が形成されないことがある。即ち、変形例1では、上面224側に第1保持部222aが形成されないことがある。
【0055】
積層造形物210と保持部222とが焼成によって接合されない限りにおいて、積層造形物210が外部に突出する部位では、積層造形物210と保持部222とは、接触していてもよく、接触しなくてもよい。焼成前の粉はらい工程や干渉材の配置を考慮すると、積層造形物210と保持部222とは接触していないことが好ましい。ただし、かかる粉はらい工程や、干渉材の配置において不都合が生じない限りは、積層造形物210とサポーター220とは接触していてもよい。
なお、図4では積層造形物210は上面224から外部に向かって突出しているが、これに限定されない。積層造形物210が突出する部位は、下面の一部であってもよく、枠部221の一部であってもよい。
第1保持部222a、第2保持部222bの構成については、上記実施形態と同様である。また、製造工程に関する諸々の事項についても、上記実施形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0056】
<変形例2>
上記実施形態では、保持部22の形状は、該保持部がサポーター20の内部において積層造形物10を安定的に保持し、かつ、サポーター20の外部から内部に取り囲まれた状態の積層造形物10を視認できる限りは、特に限定されない。即ち、保持部22は、必ずしもメッシュ形状でなくてもよく、例えば多孔質板であってもよい。
【0057】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明を係る実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0058】
<例1>
例1では、図2,3に示される形状を有する積層造形焼成体およびサポーター焼成体を作製した。
例1にかかる積層造形焼成体を作製するために、まず、図2に示される積層造形物10と、該積層造形物を取り囲むサポーター20を設計した。積層造形物10としては、図示されるような直方体形状の試験片を設計した。サポーター20としては、枠部21と保持部22を備えるサポーターを設計した。例1にかかるサポーターの上面24および下面25は、図示されるように、網目状(メッシュ形状)とした。
ここで、積層造形物10とサポーター20とは、後述する焼成工程において、相互に接合しないように設計した。即ち、積層造形物10とサポーター20とが、空隙のために相互に隔てられている構成を設計した。積層造形物10は、サポーター20の内部において、可動状態であった。
【0059】
図5に示されるように、原料粉末としてのシリカとアルミナとの混合粉末を用意した。かかる混合粉末におけるシリカとアルミナとの重量比は、80:20であった。また、当該混合粉末は、粒径D(10)が5μm、粒径D(50)が30μm、粒径D(90)が90μmとなるように調整されていた。かかる粒径D(10)、粒径D(50)、および粒径D(90)は、レーザ散乱・回折法に基づく粒度分布測定装置(商品名:マイクロトラックMT-3000II、販売元:マイクロトラック・ベル社)に基づいて測定した流動分布における積算値10%、50%、および90%での粒子径である。この混合粉末およびPVAを90:10の質量比で調合し、市販の混合機(商品名:ロッキングミキサー(形式:RM GHLV-30(S)HD/MC))、販売元:愛知電機株式会社)で20分間混合して積層造形用粉末を得た。この積層造形用粉末を3D Systems社製ProJet460Plusに投入して、積層造形物およびサポーターをともに3D造形した。次いで、積層造形物およびサポーターを室温で16時間乾燥させた。次いで、硬化されなかった積層造形用粉末を取り除いた(粉はらい)。ここで、サポーターの内部における積層造形物の可動性を確認した。ここでの可動・非可動の別を表1の該当欄に示す。
次いで、含浸剤(カップリング剤)としてシランカップリング剤(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)を用意した。上記造形した積層造形物およびサポーターを、かかる含浸液中に1分間浸漬させて、積層造形物およびサポーターに含浸液を含浸させた(含浸)。
その後、積層造形物およびサポーターを含浸液から取り出し、大気中で1時間乾燥させた後、65℃で1時間乾燥させた。
【0060】
次いで、乾燥後の積層造形物およびサポーターを、干渉材としてのアルミナ粉末(平均粒子径80μm~90μm)(アルコア社)の中に埋設した。この状態で、積層造形物およびサポーターの焼成を行った。具体的な焼成条件は、大気雰囲気中で2℃/分の昇温速度で1250℃まで昇温し、1250℃で2時間保持するという条件であった。かかる焼成によって、積層造形焼成体およびサポーター焼成体を得た(図6)。
【0061】
次いで、サポーター焼成体をダイヤモンドカッターで切断して除去し、積層造形焼成体を分離した。
次いで、測定機器として丸紅情報システムズ株式会社製のATOS Capsuleを用いて、積層造形焼成体の三次元形状のデータを取得した。かかる三次元形状のデータと、焼成前の積層造形物の三次元形状の3Dデータ(設計時のデータ)とを対比した。そして、上記乾燥や上記焼成に起因する変形量を算出した。かかる変形量の最大値を表1の「変形量」欄に記載した。
【0062】
<例2>
例2では、図2に示される形状を有する積層造形焼成体およびサポーター焼成体を作製した。まず、積層造形物10と、該積層造形物を取り囲むサポーター20を設計した(図2参照)。ただし、例2では、焼成工程において、積層造形物10とサポーター20とが相互に接合されるように設計した。例2では、積層造形物10とサポーター20とは空隙のために相互に隔てられていなかった。例2においては、干渉材を用いた埋設を行わなかった。
それ以外は例1と同様の材料および方法を用いて、例2にかかる積層造形焼成体およびサポーター焼成体を作製した。例2では、焼成後に、サポーター焼成体が除去できなかった。そのため、例2では、積層造形物および積層造形焼成体の三次元形状のデータの対比を行わなかった。例2についての表1の該当欄には「-」と記載しているが、これはかかるデータの対比を行わなかったことを示している。
【0063】
<例3>
例3では、積層造形物10のみを造形して、これを焼成し、積層造形焼成体のみを得た(図2参照)。即ち、例3では、サポーター20を造形せず、サポーター焼成体を作製しなかった。例3においては、干渉材を用いた埋設を行わなかった。
それ以外は例1と同様の材料および方法を用いて、例3にかかる積層造形焼成体を作製した。例1と同様の方法を用いて、例3にかかる積層造形焼成体の3次元形状と積層造形物の三次元形状とを対比した。例3について得られたデータを、表1に示す。なお、例3では、上記のとおりサポーターの造形を行っていないため、サポーターの内部における積層造形物の可動性は評価しなかった。そのため、該当欄には「-」と記載している。
【0064】
【表1】
【0065】
表1に示されるように、例1,2では積層造形物を造形する際に、該積層造形物を取り囲むサポーターを造形しており、焼成前の積層造形物と焼成後の積層造形焼成体との間の変形は、顕著に抑制されていた。例1では、積層造形物とサポーターとが相互に接合しないように焼成されている。そのため、焼成後に積層造形焼成体からサポーター焼成体を、容易に除去することができた。また、サポーター焼成体を除去する際に、積層造形焼成体に対して、かかる除去にともなうダメージの発生が、より顕著に抑制された。
一方、例3では、積層造形物を取り囲むサポーターは造形されなかった。例3では、積層造形物を乾燥させた際に、反り等の変形が確認された。
【0066】
以上のことから、積層造形用粉末を用いて積層造形物を造形する造形工程と、該積層造形物を焼成して積層造形焼成体を得る焼成工程とを包含する積層造形焼成体の製造方法について、造形工程において造形用粉末を用いて、上記積層造形物を支持するサポーターを、該積層造形物を取り囲むようにして、該積層造形物とともに造形すると、かかる積層造形物の乾燥や焼成にともなう変形を顕著に抑制することができる。
【0067】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0068】
10 積層造形物
20 サポーター
21 枠部
22 保持部
24 上面
25 下面
210 積層造形物
220 サポーター
221 枠部
222 保持部
S10 造形工程
S20 焼成工程
S30 取り外し工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6