(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】車両用シート装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/08 20060101AFI20221209BHJP
【FI】
B60N2/08
(21)【出願番号】P 2019022547
(22)【出願日】2019-02-12
【審査請求日】2021-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 親則
(72)【発明者】
【氏名】原 健太
(72)【発明者】
【氏名】村林 賢司
(72)【発明者】
【氏名】中川 茂
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-226358(JP,A)
【文献】特開2003-327022(JP,A)
【文献】特開平10-071879(JP,A)
【文献】特開2011-011731(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0119051(US,A1)
【文献】国際公開第95/19272(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート本体と、前記シート本体を車室フロア上で往復スライド可能に支持するスライド機構と、スライドロック機構と、操作レバーをロック位置から解除位置まで操作
する際の動作力を受けて前記スライドロック機構のロック動作を解除するロック解除機構とを備える車両用シート装置であって、
前記操作レバーが前記ロック位置にある状態では、前記操作レバーと前記ロック解除機構間の力伝達が可能であり、
前記操作レバーを
前記ロック位置から解除位置まで操作した状態で、前記シート本体がスライド途中の所定位置までスライド
すると、前記操作レバーと前記ロック解除機構間の力伝達が解除されて、前記スライドロック機構がロック動作し、
前記操作レバーを
前記解除位置からロック位置に戻
すと、前記操作レバーと前記ロック解除機構間の力伝達が可能となり、再度、
前記操作レバーを解除位置まで操作することで、前記所定位置における前記スライドロック機構のロック動作が解除される車両用シート装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シート装置であって、
前記スライドロック機構は、前記スライド機構のスライド部を固定部に対してスライド方向において多段階でロックできるように構成されている車両用シート装置。
【請求項3】
請求項1及び請求項2のいずれかに記載の車両用シート装置であって、
前記ロック解除機構は、前記操作レバーの動作力を受けて前記スライドロック機構のロック動作を解除する解除部材と、前記操作レバーと前記解除部材間に設けられたクラッチ機構とを備えており、
前記クラッチ機構は、前記操作レバーが解除位置にある状態で、前記シート本体が所定位置までスライドした段階で、前記解除部材に対する前記操作レバーの力伝達を解除し、前記所定位置で前記操作レバーがロック位置に戻された状態で、前記操作レバーと前記解除部材とを力伝達可能に連結する車両用シート装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用シート装置であって、
前記クラッチ機構は、カムとカムフォロアとを備えており、
前記カムフォロアが前記シート本体と共にスライド可能に設けられ、前記カムが前記車室フロア上に設けられており、
前記シート本体が所定位置から一定範囲内をスライドし、前記カムフォロアが前記カムにガイドされて移動する動作により、前記解除部材に対する前記操作レバーの力伝達が解除される車両用シート装置。
【請求項5】
シート本体と、前記シート本体を車室フロア上で往復スライド可能に支持するスライド機構と、スライドロック機構と、操作レバーをロック位置から解除位置まで操作して前記スライドロック機構のロック動作を解除するロック解除機構とを備える車両用シート装置であって、
前記操作レバーを解除位置まで操作した状態で、前記シート本体がスライド途中の所定位置までスライドしたときに、前記スライドロック機構がロック動作し、
前記操作レバーをロック位置に戻し、再度、解除位置まで操作することで、前記所定位置における前記スライドロック機構のロック動作が解除される構成であり、
前記ロック解除機構は、前記操作レバーの動作力を受けて前記スライドロック機構のロック動作を解除する解除部材と、前記操作レバーと前記解除部材間に設けられたクラッチ機構とを備えており、
前記クラッチ機構は、前記操作レバーが解除位置にある状態で、前記シート本体が所定位置までスライドした段階で、前記解除部材に対する前記操作レバーの力伝達を解除し、前記所定位置で前記操作レバーがロック位置に戻された状態で、前記操作レバーと前記解除部材とを力伝達可能に連結する構成であり、
また、前記クラッチ機構は、カムとカムフォロアとを備えており、
前記カムフォロアが前記シート本体と共にスライド可能に設けられ、前記カムが前記車室フロア上に設けられており、
前記シート本体が所定位置から一定範囲内をスライドし、前記カムフォロアが前記カムにガイドされて移動する動作により、前記解除部材に対する前記操作レバーの力伝達が解除される構成であり、
さらに、前記クラッチ機構は、前記操作レバーに固定されて、貫通穴を備える第1連結板と、前記解除部材に固定されて、前記第1連結板に対して厚み方向から重ねられ、前記第1連結板の貫通穴と重なる位置に貫通穴を備える第2連結板と、前記カムフォロアに取付けられて、前記第1連結板の貫通穴から第2連結板の貫通穴まで挿通可能なピン状部材とを備えており、
前記カムフォロアが前記カムにガイドされて移動することにより、前記カムフォロアに取付けられた前記ピン状部材が第2連結板の貫通穴から抜け、前記操作レバーの第1連結板と前記解除部材の第2連結板間の力伝達が解除される車両用シート装置。
【請求項6】
請求項3から請求項5のいずれかに記載の車両用シート装置であって、
前記ロック解除機構の解除部材は、前記クラッチ機構により前記操作レバーからの力伝達が解除された状態で付勢力によりロック位置に戻される車両用シート装置。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれかに記載の車両用シート装置であって、
前記カムは、付勢力で使用位置に保持されている第1カム片と第2カム片とを備えており、
前記第1カム片は、前記シート本体が後方にスライドする際、前記使用位置にあって前記カムフォロアをガイド可能で、前記シート本体が前方にスライドする際、前記カムフォロアに押されて付勢力に抗して待避位置まで移動し、
前記第2カム片は、前記シート本体が前方にスライドする際、前記使用位置にあって前記カムフォロアをガイド可能で、前記シート本体が後方にスライドする際、前記カムフォロアに押されて付勢力に抗して待避位置まで移動する車両用シート装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の車両用シート装置であって、
前記スライド機構上には、前記シート本体を車両前向きの着座位置からドア開口部側を向く乗降位置間で水平回転させる回転機構が設けられている車両用シート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート本体と、前記シート本体を車室フロア上で往復スライド可能に支持するスライド機構と、スライドロック機構と、操作レバーをロック位置から解除位置まで操作して前記スライドロック機構のロック動作を解除するロック解除機構とを備える車両用シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する車両用シート装置が特許文献1に記載されている。特許文献1の車両用シート装置は、シート本体を車室フロア上で前後スライド可能に支持するスライド機構と、シート本体をスライド方向において多段階でロックするスライドロック機構と、前記スライドロック機構のロック動作を解除するロック解除機構とを備えている。また、車両用シート装置には、シート本体をスライド中間位置で強制的に停止させてロックする中間停止ロック機構と、中間停止ロック機構のロック動作を解除する中間停止解除機構とを備えている。
【0003】
これにより、ロック解除機構の操作レバーによりスライドロック機構のロック動作を解除してシート本体をスライド中間位置までスライドさせると、強制的に中間停止ロック機構がロック動作してシート本体はスライド中間位置で停止し、この位置にロックされる。ここで、中間停止解除機構の操作レバーを操作することで、中間停止ロック機構のロック動作が解除され、シート本体をスライド中間位置からさらにスライドさせることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した車両用シート装置では、スライドロック機構のロック動作を解除するためにはロック解除機構の操作レバーを操作する必要があり、中間停止ロック機構のロック動作解除するためには中間停止解除機構の操作レバーを操作する必要がある。このように、シート本体のスライドロックを解除するために二種類の操作レバーを操作する必要があるため、ロック解除操作が煩雑となる。このため、操作性の向上が要望されている。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、所定位置で強制的にスライドロックされるシート本体のロック解除操作の操作性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各発明によって解決される。第1の発明は、シート本体と、前記シート本体を車室フロア上で往復スライド可能に支持するスライド機構と、スライドロック機構と、操作レバーをロック位置から解除位置まで操作する際の動作力を受けて前記スライドロック機構のロック動作を解除するロック解除機構とを備える車両用シート装置であって、前記操作レバーが前記ロック位置にある状態では、前記操作レバーと前記ロック解除機構間の力伝達が可能であり、前記操作レバーを前記ロック位置から解除位置まで操作した状態で、前記シート本体がスライド途中の所定位置までスライドすると、前記操作レバーと前記ロック解除機構間の力伝達が解除されて、前記スライドロック機構がロック動作し、前記操作レバーを前記解除位置からロック位置に戻すと、前記操作レバーと前記ロック解除機構間の力伝達が可能となり、再度、前記操作レバーを解除位置まで操作することで、前記所定位置における前記スライドロック機構のロック動作が解除される。
【0008】
本発明によると、操作レバーを解除位置まで操作した状態で、シート本体をスライドさせることで、前記シート本体はスライド途中の所定位置で止まり、この位置でロックされる。また、前記シート本体を所定位置から動かす場合には、操作レバーをロック位置に戻し、再度、解除位置まで操作することでロック状態が解除される。即ち、シート本体がスライド途中の所定位置にある場合のロック解除動作と、前記シート本体のスライド範囲内におけるロック解除動作とを一つの操作レバーで行えるため、操作性が向上する。
【0009】
第2の発明によると、スライドロック機構は、スライド機構のスライド部を固定部に対してスライド方向において多段階でロックできるように構成されている。
【0010】
第3の発明によると、ロック解除機構は、操作レバーの動作力を受けてスライドロック機構のロック動作を解除する解除部材と、前記操作レバーと前記解除部材間に設けられたクラッチ機構とを備えており、前記クラッチ機構は、前記操作レバーが解除位置にある状態で、前記シート本体が所定位置までスライドした段階で、前記解除部材に対する前記操作レバーの力伝達を解除し、前記所定位置で前記操作レバーがロック位置に戻された状態で、前記操作レバーと前記解除部材とを力伝達可能に連結する。即ち、クラッチ機構の働きにより、操作レバーが解除位置にあっても、シート本体を所定位置でロックできるようになる。
【0011】
第4の発明によると、クラッチ機構は、カムとカムフォロアとを備えており、前記カムフォロアが前記シート本体と共にスライド可能に設けられ、前記カムが前記車室フロア上に設けられており、前記シート本体が所定位置から一定範囲内をスライドし、前記カムフォロアが前記カムにガイドされて移動する動作により、前記解除部材に対する前記操作レバーの力伝達が解除される。即ち、カムとカムフォロアとの働きによりシート本体が所定位置に到達した段階で確実に操作レバーと解除部材間の力伝達を解除できる。
【0012】
第5の発明は、シート本体と、前記シート本体を車室フロア上で往復スライド可能に支持するスライド機構と、スライドロック機構と、操作レバーをロック位置から解除位置まで操作して前記スライドロック機構のロック動作を解除するロック解除機構とを備える車両用シート装置であって、前記操作レバーを解除位置まで操作した状態で、前記シート本体がスライド途中の所定位置までスライドしたときに、前記スライドロック機構がロック動作し、前記操作レバーをロック位置に戻し、再度、解除位置まで操作することで、前記所定位置における前記スライドロック機構のロック動作が解除される構成であり、前記ロック解除機構は、前記操作レバーの動作力を受けて前記スライドロック機構のロック動作を解除する解除部材と、前記操作レバーと前記解除部材間に設けられたクラッチ機構とを備えており、前記クラッチ機構は、前記操作レバーが解除位置にある状態で、前記シート本体が所定位置までスライドした段階で、前記解除部材に対する前記操作レバーの力伝達を解除し、前記所定位置で前記操作レバーがロック位置に戻された状態で、前記操作レバーと前記解除部材とを力伝達可能に連結する構成であり、また、前記クラッチ機構は、カムとカムフォロアとを備えており、前記カムフォロアが前記シート本体と共にスライド可能に設けられ、前記カムが前記車室フロア上に設けられており、前記シート本体が所定位置から一定範囲内をスライドし、前記カムフォロアが前記カムにガイドされて移動する動作により、前記解除部材に対する前記操作レバーの力伝達が解除される構成であり、さらに、クラッチ機構は、操作レバーに固定されて、貫通穴を備える第1連結板と、解除部材に固定されて、前記第1連結板に対して厚み方向から重ねられ、前記第1連結板の貫通穴と重なる位置に貫通穴を備える第2連結板と、前記カムフォロアに取付けられて、前記第1連結板の貫通穴から第2連結板の貫通穴まで挿通可能なピン状部材とを備えており、前記カムフォロアが前記カムにガイドされて移動することにより、前記カムフォロアに取付けられた前記ピン状部材が第2連結板の貫通穴から抜け、前記操作レバーの第1連結板と前記解除部材の第2連結板間の力伝達が解除される。このように、簡単な構成で操作レバーと解除部材間の力伝達、及び力伝達解除を行なえるようになる。
【0013】
第6の発明によると、ロック解除機構の解除部材は、クラッチ機構により操作レバーからの力伝達が解除された状態で付勢力によりロック位置に戻される。このため、操作レバーと解除部材間の力伝達が解除された状態で、スライドロック機構を確実にロック動作できる。
【0014】
第7の発明によると、カムは、付勢力で使用位置に保持されている第1カム片と第2カム片とを備えており、前記第1カム片は、前記シート本体が後方にスライドする際、前記使用位置にあって前記カムフォロアをガイド可能で、前記シート本体が前方にスライドする際、前記カムフォロアに押されて付勢力に抗して待避位置まで移動し、前記第2カム片は、前記シート本体が前方にスライドする際、前記使用位置にあって前記カムフォロアをガイド可能で、前記シート本体が後方にスライドする際、前記カムフォロアに押されて付勢力に抗して待避位置まで移動する。このため、シート本体が後方にスライドして所定位置に到達した場合と、前記シート本体が前方にスライドして所定位置に到達した場合との双方において、操作レバーと解除部材間の力伝達を解除できる。
【0015】
第8の発明によると、スライド機構上には、前記シート本体を車両前向きの着座位置からドア開口部側を向く乗降位置間で水平回転させる回転機構が設けられている。このため、シート本体が所定位置までスライドし、スライドロックされている状態でシート本体を着座位置から乗降位置間で水平回転させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、所定位置で強制的にスライドロックされるシート本体のロック解除操作の操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態1に係る車両用シート装置の模式側面図である。
【
図2】前記車両用シート装置の前後スライド機構、多段式ロック機構、ロック解除機構等を表す斜視図である。
【
図3】前記多段式ロック機構、及び前記ロック解除機構の解除部材の動作を表す縦断面図(
図2のIII-III矢視断面図)である。
【
図4】前記ロック解除機構のクラッチ機構の動作を表す斜視図である。
【
図5】前記ロック解除機構のクラッチ機構の動作を表す斜視図である。
【
図6】前記ロック解除機構のクラッチ機構の動作を表す平面図である。
【
図7】前記ロック解除機構のクラッチ機構の動作を表す平面図である。
【
図8】前記ロック解除機構のクラッチ機構の動作を表す平面図である。
【
図9】前記ロック解除機構のクラッチ機構の動作を表す平面図である。
【
図10】前記ロック解除機構のクラッチ機構の動作を表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施形態1]
以下、
図1~
図10に基づいて、本発明の実施形態1に係る車両用シート装置の説明を行なう。本実施形態に係る車両用シート装置10は、車両の車室内に設置されるシート装置である。ここで、図中に示す前後左右及び上下は、車両用シート装置10を備える車両の前後左右及び上下に対応している。
【0019】
<車両用シート装置10の概要について>
車両用シート装置10は、
図1等に示すように、乗員が着座するシート本体12と、そのシート本体12を車両前向きの着座位置とドア開口部側(図示省略)を向く乗降位置間で移動させるシート移動装置20とから構成されている。シート移動装置20は、車室フロアF上に設置される前後スライド機構30と、その前後スライド機構30の前後スライドベース35上に設置される回転機構40とを備えている。
【0020】
前後スライド機構30は、車室内でシート本体12を車両前後方向に移動させる機構である。前後スライド機構30は、
図1、
図2に示すように、車室フロアF上に固定されて車両前後方向に延びる左右一対のロアレール32と、左右一対のロアレール32に沿って前後スライドする左右の一対のアッパレール33とを備えている。そして、左右の一対のアッパレール33が前後スライドベース35の下面に固定されている。ここで、アッパレール33は、多段式ロック機構50(後記する)の働きにより、ロアレール32に対して多段階でスライドロックできるように構成されている。なお、
図2では、車両左側のアッパレール33は図示省略されている。
【0021】
回転機構40は、シート本体12を車両前向きの着座位置とドア開口部側を向く乗降位置との間で約90°水平回転させる機構である。回転機構40は、
図1に示すように、前後スライドベース35上に固定された内輪41と、内輪41に対して回転可能に支持された外輪43と、外輪43上に固定された回転テーブル45とを備えている。そして、回転機構40の回転テーブル45上にシート本体12が設置されている。上記構成により、シート本体12を手動で車両前後方向に所定位置までスライドさせ、さらに前記シート本体12を着座位置と乗降位置間で水平回転させることが可能になる。
【0022】
<多段式ロック機構50について>
多段式ロック機構50は、
図3等に示すように、ロアレール32に形成されたロック歯52と、アッパレール33内に設けられ、前記ロック歯52の歯溝に対して係合可能に構成されたロックスプリング53とから構成されている。ここで、ロアレール32は、
図3に示すように、アッパレール33を幅方向両側から挟んでスライド方向にガイドする左右のガイド壁部32wを備えている。そして、左右のガイド壁部32wの下端位置には、前記ロック歯52がスライド方向に等ピッチで多数形成されている(
図1参照)。即ち、多段式ロック機構50のロック歯52は、ロアレール32を介して車室フロアF側に設けられている。
【0023】
多段式ロック機構50のロックスプリング53は、
図2に示すように、左右対称に形成された棒状のバネであり、上記したように、アッパレール33内に収納されている。ロックスプリング53は、途中位置に二対の角形係合部53kを備えており、それらの角形係合部53kがアッパレール33の側面開口33h(
図3参照)から左右方向に突出している。ロックスプリング53は、そのロックスプリング53の角形係合部53kがアッパレール33の側面開口33hの上部位置に保持されるように付勢された状態で、アッパレール33内に保持されている。そして、多段式ロック機構50がロック動作状態では、
図3に示すように、アッパレール33内の左右のロックスプリング53の角形係合部53kが付勢力でロアレール32の左右のガイド壁部32wのロック歯52に対して下方から係合している。多段式ロック機構50がロック動作すると、シート本体12の前後スライドが禁止される。
【0024】
<ロック解除機構60について>
ロック解除機構60は、多段式ロック機構50のロック動作を解除する機構である。ロック解除機構60は、
図1、
図2に示すように、例えば、シート本体12に着座している乗員が上方に引き操作可能なループハンドル状の操作レバー61と、その操作レバー61の動作力を多段式ロック機構50の左右のロックスプリング53に伝達する左右の解除部材63とを備えている。また、ロック解除機構60は、
図2に示すように、操作レバー61の左端部と、車両左側の解除部材63との間にクラッチ機構70を備えている。
【0025】
<解除部材63について>
ロック解除機構60の解除部材63は、
図2、
図3に示すように、アッパレール33内に収納されてロックスプリング53上に配置される上下動アーム65と、その上下動アーム65の基端部(前端部)に固定されて、アッパレール33から前方に突出する接続アーム64とから構成されている。そして、
図2に示すように、操作レバー61の右端部が右側の解除部材63の接続アーム64に接続されている。また、操作レバー61の左端部が前記クラッチ機構70を介して左側の解除部材63の接続アーム64に接続されている。
【0026】
解除部材63の上下動アーム65は、
図2に示すように、その上下動アーム65の中央部分に上方に突出する支点部65cを備えており、この支点部65cがアッパレール33の天井面(図示省略)に当接している。また、上下動アーム65の先端部(後端部)には、ロックスプリング53の角形係合部53kに対応する位置に押圧部65pが設けられている。
【0027】
上記構成により、ロック解除機構60の操作レバー61が上方に引き操作されて、その操作レバー61の動作力が解除部材63の接続アーム64に加わると、上下動アーム65の基端部側が支点部65cを中心に引き上げられる。これにより、上下動アーム65の先端の押圧部65pが支点部65cを中心に押し下げられ、前記押圧部65pがロックスプリング53の角形係合部53kを付勢力に抗して下方に押圧する。この結果、ロックスプリング53の角形係合部53kが、
図3の点線に示すように、ロアレール32のガイド壁部32wのロック歯52から外れ、多段式ロック機構50のロック動作が解除される。ここで、ロック解除機構60の操作レバー61と解除部材63とは、アッパレール33、前後スライドベース35等を介してシート本体12側に設けられている。
【0028】
<クラッチ機構70について>
クラッチ機構70は、ロック解除機構60の操作レバー61の動作力を左側の解除部材63の接続アーム64に伝達し、あるいはその力伝達を解除する機構である。クラッチ機構70は、
図2に示すように、ロック解除機構60の操作レバー61と解除部材63間に設けられて、前後スライドベース35の下面に取付けられるクラッチ本体部70aと、車室フロアF側に設けられて、クラッチ本体部70aをシート本体12の回転位置、即ち、スライド中間位置で動作させるカム80とから構成されている。
【0029】
<クラッチ本体部70aについて>
クラッチ本体部70aは、
図2、及び
図6に示すように、前後スライドベース35の下面に固定される下側ベース部75を備えている。また、クラッチ本体部70aは、
図2、
図4~
図6に示すように、下側ベース部75に対して上下回動可能な状態で連結された第1連結板71と第2連結板72と、前記下側ベース部75に対して水平回動可能な状態で連結されたカムフォロア74とを備えている。なお、
図4、
図5等では、下側ベース部75は省略されている。
【0030】
<下側ベース部75について>
クラッチ本体部70aの下側ベース部75は、
図2、及び
図6に示すように、前後スライドベース35の下面に固定される略台形状のベース本体部75bと、ベース本体部75bの左右端で略直角下方に折り曲げられた右板部75rと左板部75sとを備えている。下側ベース部75の右板部75rと左板部75sとは、
図6に示すように、ベース本体部75bから前方に張り出しており、右板部75rの先端部と左板部75sの途中部位とに左右一対の連結軸78を水平に支持する軸受部75jが同軸に設けられている。
【0031】
また、下側ベース部75の左板部75sの上端には、その左板部75sの軸受部75jよりも前側に、前後スライドベース35の下面に固定されるフランジ部75fがベース本体部75bと等しい高さで形成されている。さらに、下側ベース部75の左板部75sの前端位置には、永久磁石(図示省略)を支持する角形の磁石支持板75m(
図6の点線参照)がその左板部75sの上端から左方向に張り出すように設けられている。また、下側ベース部75の後端部には、カムフォロア74を水平回動可能に支持する軸受部75xが設けられている。
【0032】
<第1連結板71について>
第1連結板71は、
図2、
図6に示すように、ロック解除機構60の操作レバー61の左端部が固定される固定板部71fと、固定板部71fの左端で略直角下方に折り曲げられ、さらに固定板部71fの後端から後方に張り出す第1クラッチ板部71cとを備えている。そして、第1連結板71の第1クラッチ板部71cが厚み方向から下側ベース部75の左板部75sに重ねられている。また、第1連結板71は、
図6に示すように、固定板部71fの後端に固定され、その固定板部71fの後端から後方に張り出すように形成された平面逆L形の支持板71sを備えている。
【0033】
そして、固定板部71fの後端から後方に張り出した支持板71sと、同じく固定板部71fの後端から後方に張り出した第1クラッチ板部71cとに、前記左右一対の連結軸78がそれぞれ通される軸受部(図番省略)が同軸に形成されている。即ち、第1連結板71は、下側ベース部75に対して連結軸78を中心に上下回動可能な状態で連結されている。また、第1連結板71の第1クラッチ板部71cには、
図7等に示すように、連結軸78の軸受部を挟んで一対の貫通穴71kが形成されている。そして、一対の貫通穴71kには、カムフォロア74に連結されたU字形のピン状部材76(後記する)の先端が挿入されている。
【0034】
<第2連結板72について>
第2連結板72は、
図6に示すように、第1連結板71の第1クラッチ板部71cと下側ベース部75の左板部75sとの間に挟まれる第2クラッチ板部72cを備えている。そして、第2クラッチ板部72cの前端部には、上端位置から左方向に張り出す水平な角形平板部72fが設けられている。第2クラッチ板部72cには、
図4~
図6に示すように、左側の連結軸78が通される軸受部(図番省略)が形成されている。また、第2クラッチ板部72cには、前記第1連結板71の一対の貫通穴71kに対応する位置にU字形のピン状部材76の先端が抜差しされる一対の貫通穴72kが形成されている。
【0035】
そして、第1連結板71の一対の貫通穴71kから第2連結板72の一対の貫通穴72kまでU字形のピン状部材76の先端が挿入されている状態で、第2連結板72は第1連結板71と一体で下側ベース部75に対して連結軸78を中心に回動するようになる。また、第2連結板72の一対の貫通穴72kからU字形のピン状部材76の先端が抜けると、第2連結板72は単独で下側ベース部75に対して連結軸78を中心に回動できるようになる。
【0036】
第2連結板72の角形平板部72fは、
図2、
図6に示すように、下側ベース部75の磁石支持板75mに対して上方から重ねられるように形成されている。このため、第2連結板72の角形平板部72fは、下側ベース部75の磁石支持板75mから磁力による吸着力を受けている。また、角形平板部72fの突出端部(左端部)が、
図4、
図5に示すように、解除部材63の接続アーム64に固定されている。これにより、第2連結板72の貫通穴72kに対してU字形のピン状部材76の先端が挿入されている状態で、操作レバー61がロック位置(下端位置)から上方に引き上げられると、操作レバー61の動作力が第1連結板71を介して第2連結板72に加わるようになる。この結果、第2連結板72が磁力に抗して連結軸78を中心に上回動し、ロック解除機構60の解除部材63(接続アーム64)が上方に引き上げられる。
【0037】
<カムフォロア74について>
カムフォロア74は、カム80(後記する)にガイドされて移動することにより、U字形のピン状部材76の先端を第2連結板72の一対の貫通穴72kに対して抜差しする部材である。カムフォロア74は、
図4、
図5に示すように、横板部74yと縦板部74tとから断面L字形に形成されている。カムフォロア74の横板部74yは、
図7等に示すように、前後に長い略長方形状に形成されており、その横板部74yの後端部が下側ベース部75の軸受部75x(
図6参照)に対して連結軸75cにより水平回動可能に連結されている。また、カムフォロア74の横板部74yの左辺における前端位置には、
図7等に示すように、半円状の突起物であるカムフォロア本体部74cが左方向に突出するように設けられている。
【0038】
カムフォロア74は、
図6、
図7等に示すように、U字形のピン状部材76をカムフォロア74の縦板部74tに連結するための連結ピン76pの頭部が連結軸78の右端面に当接する位置まで水平に左回動が可能なように構成されている。そして、カムフォロア74が左回動限位置にある状態で、カムフォロア74の縦板部74t、及び横板部74yの左辺は前後方向に延びるように配置される。
【0039】
カムフォロア74の縦板部74tは、
図6、
図7等に示すように、横板部74yの右端に設けられており、その横板部74yの前端から前方に突出している。そして、横板部74yから突出している前記縦板部74tの前端部左側には、U字形のピン状部材76が上記した連結ピン76pによりその縦板部74tに沿って上下回動可能な状態で連結されている。ピン状部材76は、カムフォロア74が左回動限位置にある状態で、そのピン状部材76の先端が第1連結板71と第2連結板72との一対の貫通穴71k,72kの双方に挿入可能になる。さらに、カムフォロア74の縦板部74tと第1連結板71の支持板71sとの間には、
図6に示すように、カムフォロア74を左回動限位置に付勢するためのコイルバネ77が装着されている。そして、カムフォロア74がコイルバネ77のバネ力に抗して左回動限位置から右回動することで、
図8に示すように、ピン状部材76の先端が第2連結板72の一対の貫通穴72kから抜けるようになる。
【0040】
<カム80について>
カム80は、シート本体12がスライド中間の回転位置近傍の所定範囲をスライドする際に、カムフォロア74のカムフォロア本体部74cをガイドすることで、そのカムフォロア74をコイルバネ77のバネ力に抗して右回動させる部材である。カム80は、
図2、
図4等に示すように、断面逆U字形に形成されたカムベース85と、そのカムベース85の右側で水平回動可能な状態で支持された第1カム片81と第2カム片82とを備えている。カム80のカムベース85は、シート本体12の回転位置で前後スライド機構30のロアレール32を下側から覆った状態で車室フロアF上に固定されている。
【0041】
第1カム片81は、
図7に示すように、シート本体12が後方にスライドする際、カムフォロア74のカムフォロア本体部74cが前方から当接する円弧状のカム面81cを備えている。そして、第1カム片81のカム面81cの円弧中心位置にカムベース85に設けられた回転中心軸83が通されている。これにより、第1カム片81は回転中心軸83を中心に水平回動が可能になる。また、第1カム片81には、カムベース85の縦壁面に当接することで、その第1カム片81の右回動を禁止する回動ストッパ部81sが設けられている。
【0042】
ここで、シート本体12が後方にスライドする際、
図7に示すように、第1カム片81のカム面81cに対してカムフォロア74のカムフォロア本体部74cが前方から当接すると、第1カム片81には右回動方向に力が加わる。しかし、第1カム片81の回動ストッパ部81sがカムベース85の縦壁面に当接することで、第1カム片81の右回動が禁止される。この結果、カムフォロア74のカムフォロア本体部74cが第1カム片81のカム面81cに沿って右後方に移動し、カムフォロア74はコイルバネ77のバネ力に抗して右回動するようになる。即ち、第1カム片81の回動ストッパ部81sがカムベース85の縦壁面に当接する位置が第1カム片81の使用位置となる。
【0043】
また、カム80には、回転中心軸83の回りに、
図4、
図5等に示すように、第1カム片81を使用位置方向に付勢するバネ材(図番省略)が装着されている。さらに、第1カム片81には、
図6等に示すように、円弧状のカム面81cの後側に段差状の凹面81kが形成されている。第1カム片81の凹面81kは、シート本体12が後退限位置から前方にスライドする際、カムフォロア74のカムフォロア本体部74cが後方から当接する面である。カムフォロア74のカムフォロア本体部74cが第1カム片81の凹面81kに後方から当接すると、シート本体12が前方にスライドする過程で第1カム片81には左回動方向に力が加わる。これにより、第1カム片81はバネ材の力に抗して左回動し、カムフォロア74のカムフォロア本体部74cは第1カム片81の凹面81kから外れるようになる。即ち、第1カム片81の凹面81kがカムフォロア74のカムフォロア本体部74cから外れる位置が第1カム片81の待避位置である。
【0044】
第2カム片82は、
図6等に示すように、第1カム片81と前後方向において対称に形成されており、第1カム片81に対して上から重ねられた状態で回転中心軸83により水平回動可能な状態でカムベース85に連結されている。第2カム片82は、シート本体12が前方にスライドする際、カムフォロア74のカムフォロア本体部74cが後方から当接する円弧状のカム面82cを備えている。また、第2カム片82には、回動ストッパ部82sが設けられており、カム面82cに対して後方からカムフォロア74のカムフォロア本体部74cが当接しても、第2カム片82の左回動が禁止される。このため、カムフォロア74のカムフォロア本体部74cが後方から第2カム片82のカム面82cに当接すると、カムフォロア本体部74cはカム面82cに沿って右前方に移動し、カムフォロア74はコイルバネ77のバネ力に抗して右回動するようになる。即ち、第2カム片82の回動ストッパ部82sがカムベース85の縦壁面に当接する位置が第2カム片82の使用位置となる。
【0045】
また、カム80には、回転中心軸83の回りに、第2カム片82を使用位置方向に付勢するバネ材(図番省略)が装着されている。さらに、第2カム片82には、
図7等に示すように、円弧状のカム面81cの前側に段差状の凹面82kが形成されている。そして、シート本体12の後方スライド過程で、カムフォロア74のカムフォロア本体部74cが第2カム片82の凹面82kに前方から当接すると、
図10に示すように、第2カム片82がバネ材の力に抗して右回動し、カムフォロア本体部74cは凹面82kから外れるようになる。即ち、第2カム片82の凹面82kがカムフォロア74のカムフォロア本体部74cから外れる位置が第2カム片82の待避位置である。
【0046】
<車両用シート装置10の動作について>
次に、車両用シート装置10の動作について説明する。シート本体12が前進限位置にある状態では、
図6に示すように、クラッチ本体部70aのカムフォロア74のカムフォロア本体部74cがカム80の前方にあって第1カム片81のカム面81cから離れている。このため、カムフォロア74はコイルバネ77のバネ力で左回動限位置に保持されている。即ち、カムフォロア74のU字形のピン状部材76の先端は、第1連結板71の第1クラッチ板部71cの貫通穴71kと第2連結板72の第2クラッチ板部72cの貫通穴72kとの双方に挿入されている。このため、クラッチ本体部70aは、第1連結板71と第2連結板72間で力伝達が可能な状態に保持されている。
【0047】
この状態で、
図4に示すように、ロック解除機構60の操作レバー61をロック位置(下端位置)から上方の解除位置まで引き上げると、操作レバー61の動作力が第1連結板71、第2連結板72を介して解除部材63の接続アーム64に加わるようになる。これにより、解除部材63の上下動アーム65の基端部側が支点部65c(
図2参照)を中心に引き上げられ、その上下動アーム65の先端の押圧部65pが、
図3に示すように、ロックスプリング53の角形係合部53kを押し下げる。この結果、多段式ロック機構50のロック動作が解除され、シート本体12の後方スライドが可能になる。
【0048】
そして、操作レバー61が解除位置にある状態で、シート本体12を後方にスライドさせて、シート本体12がスライド中間位置である回転位置の近傍まで到達すると、
図7に示すように、カムフォロア74のカムフォロア本体部74cが第1カム片81のカム面81cに当接する。この状態で、シート本体12がさらに後方にスライドすると、
図8に示すように、カムフォロア74のカムフォロア本体部74cが第1カム片81のカム面81cに沿って右後方に移動し、カムフォロア74はコイルバネ77のバネ力に抗して右回動するようになる。これにより、カムフォロア74のU字形のピン状部材76の先端が第2連結板72の貫通穴72kから抜け、第2連結板72と第1連結板71間の力伝達が解除される。
【0049】
この結果、
図5に示すように、操作レバー61が解除位置にある状態で、第2連結板72は、自重と角形平板部72fが下側ベース部75の磁石支持板75mに吸着されることにより、下側ベース部75の連結軸78を中心に下回動する。即ち、第2連結板72はロック位置(下端位置)まで戻される。これにより、解除部材63の接続アーム64がロック位置に戻され、上下動アーム65の押圧部65pが上方に移動して、
図3に示すように、ロックスプリング53の角形係合部53kが付勢力でロック歯52と係合するようになる。即ち、シート本体12が回転位置に到達すると、多段式ロック機構50が自動的にロック動作するようになる。
【0050】
さらに、シート本体12が回転位置に到達すると、
図9に示すように、カムフォロア74のカムフォロア本体部74cが第1カム片81の凹面81kと第2カム片82の凹面82kの間に嵌り込み、カムフォロア74はコイルバネ77のバネ力で左回動限位置に戻される。このため、操作レバー61をロック位置(下端位置)まで戻すと、カムフォロア74のピン状部材76の先端がコイルバネ77のバネ力で第1連結板71の第1クラッチ板部71cの貫通穴71kから第2連結板72の第2クラッチ板部72cの貫通穴72kまで挿入される。このように、シート本体12が回転位置でスライドロックされるため、シート本体12を回転位置で水平回動させることができる。
【0051】
シート本体12を回転位置からさらに後方スライドさせる場合には、操作レバー61をロック位置(下端位置)から解除位置まで上方に引き上げて、上記したように、多段式ロック機構50のロック動作を解除する。そして、シート本体12が後方スライドする過程で、
図10に示すように、カムフォロア74のカムフォロア本体部74cが第2カム片82の凹面82kを前方から押圧する。これにより、第2カム片82はバネ材の力に抗して待避位置まで右回動するようになる。なお、カムフォロア74が通過した後は、第2カム片82はバネ材の力で使用位置まで戻される。
【0052】
また、シート本体12が後進限位置から前方スライドする場合には、第2カム片82のカム面82cとカムフォロア74との働きで第2連結板72と第1連結板71間の力伝達が解除され、多段式ロック機構50がシート本体12の回転位置で自動的にロック動作する。なお、カムフォロア74のカムフォロア本体部74cは、シート本体12の前方スライド過程で第1カム片81の凹面81kを後方から押圧し、第1カム片81を待避位置まで左回動させる。
【0053】
<本実施形態で使用した用語と本発明における用語との対応>
多段式ロック機構50が本発明のスライドロック機構に相当する。また、シート本体12の回転位置が本発明におけるスライド途中の所定位置である。また、前後スライド機構30が本発明のスライド機構に相当し、ロアレール32とアッパレール33とがそれぞれ固定部とスライド部とに相当する。
【0054】
<本実施形態に係る車両用シート装置10の長所について>
本実施形態に係る車両用シート装置10によると、操作レバー61を解除位置まで操作した状態で、シート本体12をスライドさせることで、シート本体12はスライド中間位置である回転位置(所定位置)で自動的に止まり、この位置でロックされる。また、シート本体12を回転位置から動かす場合には、操作レバー61をロック位置に戻し、再度、解除位置まで操作することでロック状態が解除される。即ち、シート本体12がスライド途中の回転位置にある場合のロック解除動作と、シート本体12のスライド範囲内におけるロック解除動作とを一つの操作レバー61で行えるため、操作性が向上する。
【0055】
<変更例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、クラッチ機構70の第1連結板71の第1クラッチ板部71cと第2連結板72の第2クラッチ板部72c間の力伝達、及び力伝達解除をU字形のピン状部材と貫通穴71k,72kとにより行う例を示した。しかし、クラッチ機構70に電磁式のクラッチを使用することも可能である。この場合、カムフォロア74とカム80を使用する代わりに、リミットスイッチとストライカ等を使用し、シート本体12が回転位置まで前後スライドした段階でリミットスイッチを動作させ、電磁式のクラッチをオフする構成でも可能である。また、本実施形態では、第1カム片81と第2カム片82とからなるカム80を例示したが、一方のカム片を省略することも可能である。
【符号の説明】
【0056】
10・・・・車両用シート装置
12・・・・シート本体
30・・・・前後スライド機構(スライド機構)
32・・・・ロアレール(固定部)
33・・・・アッパレール(スライド部)
40・・・・回転機構
50・・・・多段式ロック機構(スライドロック機構)
60・・・・ロック解除機構
61・・・・操作レバー
63・・・・解除部材
64・・・・接続アーム
70・・・・クラッチ機構
70a・・・クラッチ本体部
71・・・・第1連結板
71c・・・第1クラッチ板部
71k・・・貫通穴
72・・・・第2連結板
72c・・・第2クラッチ板部
72k・・・貫通穴
74・・・・カムフォロア
76・・・・ピン状部材
80・・・・カム
81・・・・第1カム片
82・・・・第2カム片