(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】過熱蒸気発生装置及び調理器
(51)【国際特許分類】
F24C 1/00 20060101AFI20221209BHJP
F22G 1/16 20060101ALI20221209BHJP
F22B 1/28 20060101ALN20221209BHJP
【FI】
F24C1/00 320B
F24C1/00 320C
F22G1/16
F22B1/28 A
(21)【出願番号】P 2018155890
(22)【出願日】2018-08-23
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】野村 周平
(72)【発明者】
【氏名】新田 浩朗
(72)【発明者】
【氏名】後藤 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】平石 裕二
【審査官】上尾 敬彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-317085(JP,A)
【文献】特開2016-044880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 1/00
F22G 1/16
F22B 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱容器と、
前記加熱容器に水を供給する給水口と、
前記加熱容器を加熱することで前記給水口から前記加熱容器に供給された水を蒸発させる蒸発ヒータと、
前記蒸発ヒータにより生成した蒸気が通るパイプと、
前記パイプの外側に配置され、前記パイプを加熱することで前記パイプ内を通過する蒸気を過熱する過熱ヒータと、を備え、
前記蒸発ヒータと前記過熱ヒータは2つ以上の直線部を有
し、
対向する前記蒸発ヒータの直線部と前記過熱ヒータの直線部とが
並列且つ平行になるように構成し、
前記蒸発ヒータと前記過熱ヒータの断面中心の軸間距離の最小距離が、
前記蒸発ヒータの直線部の断面中心の軸間距離の最大距離および前記過熱ヒータの直線部の断面中心の軸間距離の最大距離よりも短くなるように構成された過熱蒸気発生装置。
【請求項2】
前記給水口から給水された水は前記蒸発ヒータの長手方向に沿って移動し、前記蒸発ヒータによって生成した蒸気は、前記蒸発ヒータもしくは前記過熱ヒータの長手方向に沿って移動するように構成された請求項1に記載の過熱蒸気発生装置。
【請求項3】
前記パイプ内には熱交換促進部が設けられ、
前記熱交換促進部は芯棒と、前記芯棒の外周に巻きつけられた螺旋体で構成された請求項1に記載の過熱蒸気発生装置。
【請求項4】
加熱容器と、
前記加熱容器に水を供給する給水口と、
前記加熱容器を加熱することで前記給水口から前記加熱容器に供給された水を蒸発させる蒸発ヒータと、
前記蒸発ヒータにより生成した蒸気が通るパイプと、
前記パイプの外側に配置され、前記パイプを加熱することで前記パイプ内を通過する蒸気を過熱する過熱ヒータと、を備え、
前記蒸発ヒータと前記過熱ヒータは2つ以上の直線部を有しており、
前記蒸発ヒータと前記過熱ヒータの軸間距離の最小距離が、
前記蒸発ヒータの直線部の軸間距離の最大距離および前記過熱ヒータの直線部の軸間距離の最大距離よりも短くなるように構成され、
前記蒸発ヒータと、前記パイプと、前記過熱ヒータがそれぞれ前記加熱容器と密着するように構成された過熱蒸気発生装置。
【請求項5】
前記パイプと前記過熱ヒータの間に伝熱部が設けられ、
前記加熱容器と前記給水口と前記蒸発ヒータで構成された蒸発部と、前記パイプと前記過熱ヒータと前記伝熱部で構成された過熱部が接合する接合部を備えた請求項1に記載の過熱蒸気発生装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の過熱蒸気発生装置を備えた調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、100℃以上の蒸気を生成する過熱蒸気発生装置、及びこの過熱蒸気発生装置を備える調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の過熱蒸気発生装置としては、特許文献1に開示されたものがある。
図11は特許文献1に記載の過熱蒸気発生装置の断面図である。
図11に示すように、この過熱蒸気発生装置の蒸気生成容器30内には蒸発ヒータ32が埋設されており、蒸気生成容器30内の蒸発ヒータ32よりも高所の位置には過熱ヒータ33が埋設されている。蒸気生成容器30内には蒸気生成室31が設けられており、蒸発ヒータ32は給水口35から蒸気生成室31内に供給された水を蒸発させ、蒸気を生成する。生成された蒸気bは蒸気生成室31内を上昇途中に、過熱ヒータ33により加熱されたフィン群34と接触し、フィン群34によって蒸気bは過熱され、蒸気口36から蒸気生成容器30外部に放出される。この構成にすることで、蒸気bを過熱ヒータ33に供給するためのファン装置が不要になるため、構成を簡略化させることができる。また、過熱蒸気発生装置を取り付ける調理器内の調理室の有効面積がファン装置の影響で削減されることもなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の過熱蒸気発生装置では、同一の蒸気生成容器30内に蒸発ヒータ32と過熱ヒータ33を埋設した構成にすることで、蒸発ヒータ32の熱をフィン群34まで伝達させることができ、蒸発ヒータ32の熱を蒸気の過熱にも使用することができる。また、過熱ヒータ33の熱は蒸気生成容器30の蒸発ヒータ32近傍に伝達することで蒸気生成室31内の水を蒸発させることに使用することもできる。このような構成にすることで、蒸発ヒータ32による水の昇温、蒸発に使用される熱もしくは過熱ヒータ33で蒸気を過熱する熱に使用されない熱の余剰分をもう一方に供給することで、熱を有効活用し、より効率的な加熱を実現できる。
【0005】
しかしながら、特許文献1の過熱蒸気発生装置では、蒸発ヒータ32により生成された蒸気が、上昇途中で過熱ヒータ33によって加熱されたフィン群34によって過熱される構成のため、フィン群34と蒸気の伝熱面積を十分に確保するためには、蒸気生成容器30の高さ方向の寸法を大きくする必要がある。この場合、蒸発ヒータ32と過熱ヒータ33の軸間距離が大きくなり、蒸発ヒータ32もしくは過熱ヒータ33の熱がもう一方の過熱ヒータ33もしくは蒸発ヒータ32に伝達するまでの経路において放熱量が増加し、熱効率が低減してしまう課題がある。
【0006】
本発明は、蒸発ヒータの直線部の軸間距離と過熱ヒータの直線部の軸間距離よりも、蒸発ヒータと過熱ヒータの軸間距離を短くする構成にすることで、蒸発ヒータが過熱ヒータ近傍に伝達させる経路もしくは過熱ヒータが蒸発ヒータ近傍に伝達させる経路での放熱量を低減させることができ、熱効率を向上させることができる過熱蒸気発生装置及びこの過熱蒸気発生装置を備える調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の過熱蒸気発生装置は、
加熱容器と、前記加熱容器に水を供給する給水口と、前記加熱容器を加熱することで前記給水口から前記加熱容器に供給された水を蒸発させる蒸発ヒータと、前記蒸発ヒータにより生成した蒸気が通るパイプと、前記パイプの外側に配置され、前記パイプを加熱することで前記パイプ内を通過する蒸気を過熱する過熱ヒータと、を備え、前記蒸発ヒータと前記過熱ヒータはそれぞれ2つ以上の直線部を有しており、前記蒸発ヒータと前記過熱ヒータの軸間距離の最小距離が、前記蒸発ヒータの直線部の軸間距離の最大距離および前記過熱ヒータの直線部の軸間距離の最大距離よりも短くなるように構成するものである。
【0008】
これによって、蒸発ヒータが過熱ヒータ近傍に伝達させる経路もしくは過熱ヒータが蒸発ヒータ近傍に伝達させる経路での放熱量を低減することで、熱効率を向上させた過熱蒸気生成装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、蒸発ヒータの直線部の軸間距離と過熱ヒータの直線部の軸間距離よりも、蒸発ヒータと過熱ヒータの軸間距離を短くする構成にすることで、蒸発ヒータが過熱ヒータ近傍に伝達させる経路もしくは過熱ヒータが蒸発ヒータ近傍に伝達させる経路での放熱量を低減させることができ、熱効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態1における過熱蒸気発生装置の斜視図
【
図2】本発明の実施の形態1における過熱蒸気発生装置の分解斜視図
【
図3】
図1におけるX方向から見た同過熱蒸気発生装置の外観図
【
図4】
図1におけるY方向から見た同過熱蒸気発生装置の外観図
【
図8】本発明の実施の形態1における過熱蒸気発生装置を搭載したオーブンの構成の模式図
【
図9】本発明の実施の形態2における過熱蒸気発生装置の斜視図
【
図10】本発明の実施の形態2における過熱蒸気発生装置の分解斜視図
【
図11】特許文献1に示す従来の過熱蒸気発生装置の概略構成を示す模式断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、加熱容器と、前記加熱容器に水を供給する給水口と、前記加熱容器を加熱することで前記給水口から前記加熱容器に供給された水を蒸発させる蒸発ヒータと、前記蒸発ヒータにより生成した蒸気が通るパイプと、前記パイプの外側に配置され、前記パイプを加熱することで前記パイプ内を通過する蒸気を過熱する過熱ヒータと、を備え、前記蒸発ヒータと前記過熱ヒータはそれぞれ2つ以上の直線部を有しており、前記蒸発ヒータと前記過熱ヒータの軸間距離の最小距離が、前記蒸発ヒータの直線部の軸間距離の最大距離および前記過熱ヒータの直線部の軸間距離の最大距離よりも短くなるように構成された過熱蒸気生成装置である。
【0012】
これにより、蒸発ヒータと過熱ヒータの距離が近づくことで、蒸発ヒータの熱が過熱ヒータ近傍に熱が伝達するもしくは過熱ヒータの熱が蒸発ヒータ近傍に伝達する経路での放熱量を低減することができ、熱効率を向上させることできる。
【0013】
第2の発明は、特に、第1の発明において、前記給水口から給水された水は前記蒸発ヒータの長手方向に沿って移動し、前記蒸発ヒータによって生成した蒸気は、前記蒸発ヒータもしくは前記過熱ヒータの長手方向に沿って移動するように構成された過熱蒸気発生装
置である。
【0014】
これにより、水が移動する加熱容器内の流路に対して蒸発ヒータの距離が近い状態を維持しやすくなり、蒸発ヒータからの熱が水に伝達しやすくなることで、水を効率的に昇温、蒸発させることができる。また、蒸発した蒸気が移動する流路においても、蒸発ヒータの距離が近い状態を維持しやすくなり、過熱ヒータの熱が蒸気に伝達しやすくなることで、蒸気の温度を効率的に高められる。また、蒸発ヒータで加熱される水は、蒸発ヒータに沿った流路途中で蒸発した場合、残りの蒸発ヒータに沿った流路において100℃以上に過熱することもできる。
【0015】
第3の発明は、特に、第1の発明において、前記パイプ内には熱交換促進部が設けられ、前記熱交換促進部は芯棒と、前記芯棒の外周に巻きつけられた螺旋体で構成された過熱蒸気発生装置である。
【0016】
これにより、パイプ内を通過する蒸気は、螺旋体に沿ってパイプ内を移動することで、過熱ヒータにより昇温したパイプ内面と蒸気の接触面積が拡大することでき、熱交換効率を向上させることができる。
【0017】
第4の発明は、特に、第1の発明において、前記蒸発ヒータと、前記パイプと、前記過熱ヒータそれぞれが前記加熱容器と密着するように構成された過熱蒸気発生装置である。
【0018】
これにより、蒸発ヒータの熱が過熱ヒータ近傍に熱が伝達するもしくは過熱ヒータの熱が蒸発ヒータ近傍に伝達するときに、熱を介する物質を加熱容器のみにすることで、素早い熱移動が可能となる。
【0019】
第5の発明は、特に、第1の発明において、前記パイプと前記過熱ヒータの間に伝熱部が設けられ、前記加熱容器と前記給水口と前記蒸発ヒータで構成された蒸発部と、前記パイプと前記過熱ヒータと前記伝熱部で構成された過熱部が接合する接合部を備えた過熱蒸気発生装置である。
【0020】
これにより、パイプの外部に設けられた過熱ヒータの熱が伝熱部を介してパイプに伝達されることで、過熱ヒータの熱がパイプに効率的に伝達され、過熱ヒータの熱で効率的に蒸気を過熱することが可能となる。また、接合部で蒸発部と過熱部を接合させることで、蒸発ヒータの熱が過熱部に熱が伝達するもしくは過熱ヒータの熱が蒸発部に伝達するときに、熱伝達の抵抗になる物質を介することを極力減らすことで、素早い熱移動が可能となる。
【0021】
第6の発明は、第1~5のいずれか1つの発明の過熱蒸気発生装置を備えた調理器である。これにより、過熱蒸気を使用した高性能な調理が可能となる。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。また、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
図1~
図8を用いて、本発明の実施の形態1における過熱蒸気発生装置の構成とその過熱蒸気発生装置を備えた調理器について説明する。
図1には本発明の実施の形態1における過熱蒸気発生装置の斜視図を示す。
図2には本発明の実施の形態1における過熱蒸気発生装置の分解斜視図を示す。
図3には
図1におけるX方向から見た同過熱蒸気発生装置の外観図を示す。
図4には
図1におけるY方向から見た同過熱蒸気発生装置の外観図を示す。
図5には
図3におけるA-A線断面図を示す。
図6には
図4におけるB-B線断面図を
示す。
図7には
図4におけるC-C線断面図を示す。
図8には本発明の実施の形態1における過熱蒸気発生装置を搭載したオーブンの構成の模式図を示す。
【0024】
図1~
図7に示すように、本実施の形態1における過熱蒸気発生装置10は、空間状の加熱容器内11Aを有する加熱容器11と、加熱容器11の開口部を塞ぐように構成された加熱容器カバー12と、加熱容器カバー12の外側面に取り付けられ、加熱容器内11Aに水を供給する給水管13Aを有している。給水管13Aの一端である給水口13は、加熱容器内11Aと連通している。加熱容器内11Aには、給水口13から供給された水が流れる流路が蛇行するように複数のフィンが形成されている。
【0025】
加熱容器内11Aは、略直方体で形成され、一方の短辺部がU字形状で形成されている。過熱蒸気発生装置10は、U字形状で形成されたヒータである蒸発ヒータ14と過熱ヒータ15をさらに有している。加熱容器内11Aに蒸発ヒータ14と過熱ヒータ15とパイプ16が密着するように、加熱容器11に蒸発ヒータ14と過熱ヒータ15とパイプ16が埋設されている。蒸発ヒータ14は、加熱容器11を加熱することで給水口13から加熱容器11に供給された水を蒸発させる構成である。パイプ16は、蒸発ヒータ14により加熱容器内11Aで生成された蒸気が通る構成である。パイプ16の一端は加熱容器カバー12と離間し、加熱容器内11Aと連通している。過熱ヒータ15は、パイプ16の外側に配置され、パイプ16を加熱することでパイプ16内を通過する蒸気を過熱する構成である。
【0026】
図4と
図6に示すように、外部から給水管13Aを通して給水口13から水が加熱容器内11Aに供給される。外部から供給される水は水道水を想定しており、通常0~30℃の温度で供給される。加熱容器内11Aに供給された水aは加熱容器内11Aの蒸発ヒータ14の長手方向となる直線部14bに沿った流路を通る。直線部14bに沿った流路を形成することで、加熱容器内11Aの流路と蒸発ヒータ14の距離が近い構成となり、流路に蒸発ヒータ14の熱が伝達しやすくなる。加熱容器内11Aに給水された水aは加熱容器内11Aの流路を通り、水aは蒸発ヒータ14によって加熱された加熱容器11から熱を受けて加熱される。加熱容器11の流路は水aが蛇行するように構成することで、加熱容器11と水aとの接触面積を増加させ、熱交換効率を向上させることもできる。加熱容器内11Aで加熱された水aは加熱容器内11Aが大気圧とした場合、100℃付近に達すると蒸発し始める。蒸発した水aは
図6中、点線で示す蒸気bとして加熱容器内11Aを移動する。加熱容器内11Aの流路途中で蒸発した場合、蒸気bはパイプ16に到達するまでの加熱容器内11Aの流路で100℃以上に過熱させることも可能である。
【0027】
蒸発ヒータ14により蒸発した加熱容器内11Aの蒸気bは、
図5と
図6に示すようにパイプ16へ移動する。
図7ないし
図9に示すようにパイプ16の外部には過熱ヒータ15が設けてあり、過熱ヒータ15の熱は加熱容器11を介してパイプ16に伝達する構成となっている。パイプ16を通過する100℃以上の蒸気bは、過熱ヒータ15によって加熱されたパイプ16内面と接触し、過熱されることでさらに昇温し、パイプ16の他端から外部に排出される。
【0028】
また、
図5と
図7に示すように、パイプ16内には熱交換促進部17が設けられており、熱交換促進部17はパイプ16中央に配置された芯棒17aと芯棒17aの外周に巻きつけられた螺旋体17bで構成されている。芯棒17aと螺旋体17bは、螺旋体17bと芯棒17aの接合部17cの位置で溶接され、固定される。螺旋体17bとパイプ16は、螺旋体17bとパイプ16の接合部17dの位置で溶接され、固定される。蒸発ヒータ14で蒸発した加熱容器内11Aの蒸気bはパイプ16中央部の芯棒17aの外側を流れ、螺旋体17bに沿って流れ、一部の蒸気bは芯棒17aと螺旋体17b、螺旋体17bとパイプ16それぞれの隙間を直進する。螺旋体17bに沿って移動する蒸気は、パイ
プ16内面との接触面積が大きくなり、熱交換効率を向上させることができる。螺旋体17bに沿わない蒸気も芯棒17aによりパイプ16内面から距離が離れ、熱が伝わりにくいパイプ16中央部に蒸気を通過させないようにすることで、パイプ16内面近傍を蒸気が通過するようにすることで熱交換効率を向上させる効果もある。また、熱交換促進部17を設けることで、パイプ16内の流路面積が小さくなり、蒸気bの流速が早くなることで、パイプ16内面と蒸気bの対流熱流束を大きくすることができる。熱交換促進部17を設けることで、例えば過熱ヒータ15を300℃を越えない温度で制御したとしても、過熱蒸気の温度を250℃以上に昇温させることも可能となる。
【0029】
図3と
図4と
図7を用いて蒸発ヒータ14と過熱ヒータ15の位置関係について説明する。蒸発ヒータ14と過熱ヒータ15は断面が円形となる形状、例えばシーズヒータとした場合、
図7のように断面の中央部が蒸発ヒータ軸14a、過熱ヒータ軸15aとなる。
【0030】
蒸発ヒータ14と過熱ヒータ15の各ヒータの形状をU字形状とした場合、
図6の蒸発ヒータ14の直線部14bのように同一ヒータ内に2つの直線部を有する。また、蒸発ヒータ14と過熱ヒータ15の直線部が平行になるように構成した場合、
図7における蒸発ヒータ軸間距離dおよび過熱ヒータ軸間距離eはそれぞれ蒸発ヒータ14の直線部の軸間距離および過熱ヒータ15の直線部の軸間距離の最大の軸間距離となる。
【0031】
本実施の形態における過熱蒸気発生装置10は蒸発ヒータ14の直線部14bの軸間距離dの最大距離および過熱ヒータ15の直線部の軸間距離eの最大距離よりも蒸発ヒータ14と過熱ヒータ15の軸間距離cの最小値が小さくなるように構成している。このような構成にすることで、蒸発ヒータ14の熱が過熱ヒータ15近傍までの伝達しやすくなり、蒸発ヒータ14の熱をパイプ16を通過する蒸気の過熱にも使用することができる。また、反対に過熱ヒータ15の熱が蒸発ヒータ14近傍に伝達しやすくなることで、過熱ヒータ15の熱を水の蒸発に使用することもできる。
【0032】
蒸発ヒータや過熱ヒータは1つのU字形状のヒータだけでなはなく、2本以上の直線形状のヒータで構成されるものや、2回以上曲げた構成のものも考えられ、このような構成においても、蒸発ヒータの直線部の軸間距離の最大距離および過熱ヒータの直線部の軸間距離の最大距離よりも蒸発ヒータと過熱ヒータの軸間距離の最小値が小さくなるように構成することで、同様の効果を得られる。
【0033】
本実施の形態の過熱蒸気発生装置10の想定する使用方法としては、まず過熱ヒータ15を100℃以上の所定の温度になるまで予熱し、その後給水口13から加熱容器内11Aに水を供給し、蒸発ヒータ14で水を蒸発させ、蒸発した蒸気を過熱ヒータ15で加熱されたパイプ16を通過させることで過熱して、100℃以上の所定の温度の過熱蒸気を外部に排出する。
【0034】
例えば、10℃の水を0.3g/sで供給する条件において、水の比熱を4.2J/(g・℃)、蒸発潜熱を2250J/gとした場合、1秒間で水を蒸発させるには最低約790Wの電力が必要となる。100℃の蒸気が0.3g/sでパイプ16を通過する条件において、過熱ヒータ15で250℃まで昇温させる場合は、水蒸気の比熱を2.1J/(g・℃)とした場合、必要な最低電力は約100Wであり、蒸発ヒータ14と比較して、消費電力は小さくて済む。
【0035】
しかしながら、蒸気を過熱するためには、過熱ヒータ15、パイプ16、パイプ16周囲の加熱容器11の温度も予熱段階で所定の温度まで昇温させる必要があり、予熱時間が規定されている場合、100Wでは規定された予熱時間内に所定の温度まで昇温させることができない可能性がある。
【0036】
反対に、規定された予熱時間内に所定の温度まで昇温させるために過熱ヒータ15の消費電力を100W以上に設計した場合、予熱完了後は消費電力が過剰となり、過熱ヒータ15を所定の温度で制御するためにON/OFFを繰り返すこととなるが、過熱蒸気発生装置全体で使用できる消費電力が限られている場合、過熱ヒータ15がOFFの状態での電力が熱として使用できず、無駄になってしまう。
【0037】
例えば過熱蒸気装置全体の消費電力を1300W以下とする条件で、予熱時間内に過熱ヒータ15、パイプ16、パイプ16周囲の加熱容器11を所定の温度まで昇温させるのに600W必要とした場合、蒸発ヒータ14で使用できる消費電力は700W以下となる。水を0.3g/sで蒸発させたい場合、蒸発ヒータ14の消費電力は足りない。
【0038】
また、一旦予熱が完了した過熱ヒータ15は蒸気の過熱には100Wで十分なため、蒸発ヒータ14では消費電力が不足しているにも関わらず過熱ヒータ15では500Wが余剰となってしまうことになる。
【0039】
このとき、本実施の形態のように蒸発ヒータ14と過熱ヒータ15の軸間距離cの距離を小さくし、過熱ヒータ15の熱を蒸発ヒータ14近傍に伝達しやすくした構成にすることで、過熱ヒータ15の余剰電力を熱として蒸発ヒータ14近傍に伝達し、水の昇温、蒸発に使用することで、蒸発ヒータ14の消費電力の不足分を補填することが可能となる。また、反対に予熱段階では蒸発ヒータ14の熱は水の蒸発には使用されないため、予熱段階において蒸発ヒータ14の熱を過熱ヒータ15近傍に伝達させることで過熱ヒータ15、パイプ16、パイプ16周囲の加熱容器11を所定の温度まで昇温させることに用いることができる。
【0040】
本実施の形態の過熱蒸気発生装置10は過熱蒸気を使用して調理を行う調理器、例えば
図8のような加熱オーブンへの搭載が可能である。
図8において、貯水タンク4内に溜められた水を、ポンプ5によって過熱蒸気発生装置10内に供給する。過熱蒸気発生装置10内に供給された水は、過熱蒸気発生装置10で100℃以上の所定の過熱蒸気として、加熱オーブン本体1内の加熱室2に投入することで、過熱蒸気を使用した調理が可能となる。また、調理器は加熱オーブンに限らず、炊飯器やオーブンレンジ等の調理器にも用いることができる。
【0041】
(実施の形態2)
図9、
図10を用いて、本発明の実施の形態2における過熱蒸気発生装置の構成について説明する。
図9には本発明の実施の形態2における過熱蒸気発生装置が接合部で接合した状態を示す斜視図を示す。
図8には本発明の実施の形態2における過熱蒸気発生装置の分解斜視図を示す。
【0042】
本発明の実施の形態においては、実施の形態1と相違する事項について説明し、実施の形態1と同様の構成及び作用効果等を有するものについては説明を省略する。
【0043】
図9、
図10に示すように本実施の形態2における過熱蒸気発生装置10は加熱容器11と加熱容器11内に水を供給する給水管13Aと蒸発ヒータ14で構成された蒸発部20と、過熱ヒータ15とパイプ16と過熱ヒータ15とパイプ16の間に設けられた伝熱部18で構成された過熱部21が、蒸発部接合部19aと過熱部接合部19bで接合された構成となっている。
【0044】
本実施の形態2における過熱蒸気発生装置10は、蒸発部20と過熱部21とに分離可能な構成である。
【0045】
過熱部21において、伝熱部18を過熱ヒータ15とパイプ16との隙間や周囲を覆い、密着するように配置することで、過熱ヒータ15の表面からの熱を伝熱部18を介して、パイプ16に素早く伝達させることができる。
【0046】
本実施の形態2にように過熱蒸気発生装置10を蒸発部20と過熱部21に分離する構造にすることで、蒸発部20と過熱部21を接合するときに、蒸発部20と過熱部21の接触面に断熱材もしくは空気層を設けることで、部分的に蒸発ヒータ14もしくは過熱ヒータ15の熱を過熱ヒータ15近傍もしくは蒸発ヒータ14近傍に伝達する熱量を抑えることができる。例えば、過熱部21における、パイプ16近傍の熱は蒸気を過熱するために重要となるため、パイプ16近傍に水が接触し、過剰に熱が水に奪われると、パイプ16近傍の熱量が不足し、パイプ16を通過する蒸気が十分に過熱されない可能性がある。そこで、過熱部21のパイプ16近傍と蒸発部20の接触箇所の一部に断熱材を設けることで、過熱部21のパイプ16近傍から蒸発部20への熱移動を抑制し、パイプ16内を通過する蒸気を過熱するための熱量を保持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は過熱蒸気発生装置の熱交換効率向上を実現するものであり、調理機以外にも過熱蒸気を使用する、乾燥装置、殺菌装置等の他分野での活用も可能である。
【符号の説明】
【0048】
a 水
b 蒸気
c 軸間距離
d 軸間距離
e 軸間距離
1 加熱オーブン本体
2 加熱室
4 貯水タンク
5 ポンプ
10 過熱蒸気発生装置
11 加熱容器
11A 加熱容器内
12 加熱容器カバー
13 給水口
13A 給水管
14 蒸発ヒータ
14a 蒸発ヒータ軸
14b 直線部
15 過熱ヒータ
15a 過熱ヒータ軸
16 パイプ
17 熱交換促進部
17a 芯棒
17b 螺旋体
17c 接合部
17d 接合部
18 伝熱部
19a 蒸発部接合部
19b 過熱部接合部
20 蒸発部
21 過熱部