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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 21/04 20060101AFI20221209BHJP
   F25D 23/00 20060101ALI20221209BHJP
   F25D 19/00 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
F25D21/04 F
F25D23/00 B
F25D19/00 510C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021110429
(22)【出願日】2021-07-02
(62)【分割の表示】P 2017130047の分割
【原出願日】2017-07-03
(65)【公開番号】P2021167719
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】堀井 愼一
(72)【発明者】
【氏名】西澤 克彦
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-081841(JP,A)
【文献】特開平05-322222(JP,A)
【文献】特開2000-88437(JP,A)
【文献】中国実用新案第204177033(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 21/04
F25D 23/00
F25D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室を有する冷蔵庫本体と、前記冷蔵庫本体の底面部に敷設した放熱パイプとを備え、前記冷蔵庫本体の前方底部にパイプ固定部を設け、前記冷蔵庫本体の底面に前記パイプ固定部と対向する部分を一段低くした段差部を設け、前記段差部に前記パイプ固定部を位置させて前記パイプ固定部に前記放熱パイプを固定し、前記段差部は、前記貯蔵室から遠ざかる方向に設けられている冷蔵庫。
【請求項2】
前記段差部に前記パイプ固定部に設けたパイプ固定爪を位置させて前記放熱パイプを固定した請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記パイプ固定爪を設けた前記パイプ固定部の下側の面に補強リブを設けた請求項2記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷蔵庫の底部に設けた放熱パイプの固定構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に冷蔵庫は、冷蔵庫本体の底部に防露用の放熱パイプを敷設し、底面部分に結露が生じないようにしてある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図14は特許文献1に記載された冷蔵庫を示し、この冷蔵庫は、冷蔵本体101の底部に放熱パイプ102を敷設し、その前後方向途中を冷蔵本体101底部に埋設した階段搬送専用把手103の係合爪104に係合させてある。
【0004】
このように冷蔵庫本体101の底部に放熱パイプ102を敷設した冷蔵庫は、貯蔵室からの冷輻射により冷蔵庫本体101の底面が低温化するのを防止でき、冷蔵庫本体101の底面に大気中の水分が結露して床面に滴下し、床面を濡らす等の障害が発生するのを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-44941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記放熱パイプ102は、その前方端部分、すなわち、貯蔵室の前方開口付近は固定しておらずフリーな状態となっているため、冷蔵庫本体101の内箱と外箱との間に充填する発泡断熱材の発泡圧変動や流動ばらつき、また組み立て輸送時における振動等よって上下あるいは前後方向に位置ずれすることがあった。そして、その位置ずれした状態のまま発泡断熱材によって固定されてしまう。
【0007】
その結果、上記放熱パイプ102の位置が上方向にずれたような場合には、放熱パイプ102の前方端部分と貯蔵室の底面との間の距離が短くなって、放熱パイプ102の熱が貯蔵室に影響を与えるようになり、省エネ性が低下してしまう。特に上記熱パイプ102の前方端が位置する部分は扉により開閉される貯蔵室の開口付近であって外気温の影響を受けて温度が高くなりがちなところであるので、放熱パイプ102の位置ずれによる熱影響は大きくなる。
【0008】
そのうえ、放熱パイプ102の前方端部分と冷蔵庫本体101の底面との間の距離が大きくなって、放熱パイプ102による冷蔵庫本体101の底面保温が不十分なものとなり、十分な防露効果が得られなくなったりする。
【0009】
そのため出願人は、上記課題を解決すべく放熱パイプ102の前方部分をテープによって冷蔵庫本体101の外箱内面に貼り付け固定することを試みた。
【0010】
しかしながら、上記構成では、テープ貼りという工程が別途必要になってコストアップを招くうえに、テープ貼り作業のばらつき等によりテープが剥がれて放熱パイプ102が上方向に位置ずれしてしまうことがあり、省エネ性と防露効果のばらつきを解消して安定したものとするには改善の余地が残るものであった。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みてなしたもので、放熱パイプ前端部分の固定を確実なものとして冷蔵庫の省エネ性と防露効果を安定したものとすることを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明における冷蔵庫は、貯蔵室を有する冷蔵庫本体と、冷蔵庫本体の底面部に敷設した放熱パイプとを備え、冷蔵庫本体の前方底部にパイプ固定部を設け、冷蔵庫本体の底面にパイプ固定部と対向する部分を一段低くした段差部を設け、段差部にパイプ固定部を位置させてパイプ固定部に放熱パイプを固定し、段差部は、貯蔵室から遠ざかる方向に設けられている構成としてある。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上記した構成によって、放熱パイプを所定位置に強固かつ正確に固定することができるので、安定した省エネ性と防露効果を持つ冷蔵庫とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の斜視図
図2】同実施の形態1における冷蔵庫の縦断面図
図3】同実施の形態1における冷蔵庫の冷蔵庫本体前方底部を示す斜視図
図4】同実施の形態1における冷蔵庫の冷蔵庫本体前方底部を示す正面図
図5】同実施の形態1における冷蔵庫の冷蔵庫本体前方底部を示す側面図
図6】同実施の形態1における冷蔵庫の冷蔵庫本体を底面側から見た斜視図
図7】同実施の形態1における冷蔵庫の冷蔵庫本体の底面を示す下面図
図8図7の要部拡大下面図
図9図8のA-A断面図
図10】同実施の形態1における冷蔵庫の脚部高さ調節用工具を取り外した時の冷蔵庫本体を底面側から見た斜視図
図11図10の要部拡大斜視図
図12図8のB-B断面図
図13図8のC-C断面図
図14】従来の冷蔵庫の断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の発明は、貯蔵室を有する冷蔵庫本体と、前記冷蔵庫本体の前方底部に取り付けた搬送用の把手部材と、前記冷蔵庫本体の底面部に敷設した放熱パイプとを備え、前記把手部材にパイプ固定部を設けて当該パイプ固定部に前記放熱パイプを固定した構成としてある。
【0016】
これにより、放熱パイプは把手部材を利用してその前方端部分を冷蔵庫本体の前方底部に確実に固定することができる。しかも把手部材は冷蔵庫本体に取り付け固定してあるので、発泡断熱材の発泡圧変動や組み立て輸送時の振動等によって動くことがなく、放熱パイプを所定位置に正確に固定することができる。したがって、放熱パイプの位置がずれたまま固定されるようなことがなくなり、省エネ性と防露効果を安定したものとすることができる。
【0017】
第2の発明は、第1の発明において、前記冷蔵庫本体の底面には把手部材のパイプ固定部と対向する部分を一段低くした段差部を設け、この段差部に前記把手部材のパイプ固定部に設けたパイプ固定爪を位置させて放熱パイプを固定した構成としてある。
【0018】
これにより、把手部材を利用して放熱パイプを固定する場合に生じがちな弊害を解消して省エネ性と防露効果を安定したものとすることができる。すなわち、把手部材を利用して放熱パイプを固定する構成とすると、放熱パイプは把手部材のパイプ固定部に設けたパイプ固定爪等の高さ寸法分だけ貯蔵室に近くなり、放熱パイプからの熱による影響が大きくなって省エネ性が低下してしまう。
【0019】
また冷蔵庫底面にパイプ固定爪でパイプを固定した場合、パイプ固定爪が底面から床面に向かって飛び出し運搬時に床を傷付けるおそれがある。
【0020】
しかしながら、冷蔵庫本体の底面のパイプ固定部と対向する部分を一段低くして段差部を設ければ、この段差部によってパイプ固定爪に固定した放熱パイプの前方端部分を貯蔵室から離して当該放熱パイプと貯蔵室との間の断熱距離を大きなものとすることができ、放熱パイプからの熱による貯蔵室への影響を低減して省エネ性を高めることができる。つまり、省エネ性を高めつつ当該省エネ性と防露効果を安定したものとすることができる。
【0021】
第3の発明は、第2の発明において、前記把手部材は冷蔵庫本体の底面形状と同様段差を持たせて、貯蔵室の開口部に近い前方側の厚肉部分をビス固定部とするとともに、開口部とは反対の一段低いパイプ固定部にパイプ固定爪を設け、前記厚肉のビス固定部を冷蔵庫本体の底面にビス止めして把手部材を冷蔵庫本体に取り付け固定した構成としてある。
【0022】
これにより、把手部材の冷蔵庫本体に対する取り付けが強固なものとなり、放熱パイプの前方端位置を発泡断熱材の発泡圧変動や組み立て輸送時における振動等があっても所定位置に正確かつ強固に固定することができる。よって、省エネ性および防露効果をより安定したものとすることができ、高品質な冷蔵庫とすることができる。
【0023】
第4の発明は、第1~第3の発明において、前記把手部材は少なくともパイプ固定爪を設けた一段低いパイプ固定部の反対側の面に補強リブを設けた構成としてある。
【0024】
これにより、一段低くして強度が弱くなりがちなパイプ固定部の強度を高めてパイプ固定部による放熱パイプの固定を堅牢なものとすることができ、放熱パイプの固定を更に確実かつ強固なものとして省エネ性および防露効果を安定させ、一段と高品質な冷蔵庫とすることができる。
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0026】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における冷蔵庫の斜視図、図2は同冷蔵庫の縦断面図、図3は同冷蔵庫の冷蔵庫本体前方底部を示す斜視図、図4は同冷蔵庫の冷蔵庫本体前方底部を示す正面図、図5は同冷蔵庫の冷蔵庫本体前方底部を示す側面図、図6は同冷蔵庫の冷蔵庫本体を底面側から見た斜視図、図7は同冷蔵庫の冷蔵庫本体の底面を示す下面図、図8図7の要部拡大下面図、図9図8のA-A断面図、図10は実施の形態1における冷蔵庫の脚部高さ調節用工具を取り外した時の冷蔵庫本体を底面側から見た斜視図、図11図10の要部拡大斜視図、図12図8のB-B断面図、図13図8のC-C断面図である。
【0027】
図1図5において、本実施の形態に係る冷蔵庫は、前方を開口した冷蔵庫本体1を備え、この冷蔵庫本体1は、主に鋼板を用いた外箱2と、ABSなどの硬質樹脂で成型された内箱3と、前記外箱2と内箱3との間に発泡充填された硬質発泡ウレタンなどの発泡断熱材4とから構成されている。
【0028】
冷蔵庫本体1は、断熱性の仕切板5.6によって複数の貯蔵室に区分されており、冷蔵庫本体1の最上部には冷蔵室7、その冷蔵室7の下部には上下二段の冷凍室8、9、更にその下部に野菜室10が配置されている。
【0029】
そして、前記各貯蔵室の前面開口部は、観音開き式の冷蔵室扉11、引出式の冷凍室扉12a、12b、同引出式の野菜室扉13によって開閉可能に閉塞されている。なお、上記各扉11、12a、12b、13の前面はガラス板で構成し、外観の意匠性を高めている。
【0030】
また、冷蔵庫本体1の上部後方領域には機械室14が設けられている。機械室14には、圧縮機15、水分除去を行うドライヤ(図示せず)等の冷凍サイクルの高圧側構成部品が収容されている。
【0031】
また、前記冷蔵庫本体1の冷凍室背面には冷気を生成する冷却室16が設けられており、冷却室16からは各室に冷気を供給する冷気通路17が形成されている。
【0032】
冷却室16内には冷却器18が配設されており、冷却器18の上部には冷却ファン19が配置されている。前記冷却ファン19は、冷却器18により生成された冷気を、冷気通路17を介して、冷蔵室7、上段冷凍室8,下段冷凍室9、野菜室10に強制循環させ各室を冷却する。
【0033】
一方、図6図8に示すように冷蔵庫本体1の底部の外箱2と内箱3との間には冷凍サイクルを構成する放熱パイプ20の一部が敷設してあり、野菜室10からの冷輻射によって冷蔵庫本体1の底面に結露が生じないようにしてある。
【0034】
また、前記冷蔵庫本体1はその底部の四隅に高さ調節用の脚部21が設けてある。この脚部21は冷蔵庫本体1の左右の高さを調節して水平に設置可能とするもので、後述するレンチ等の工具を用いて高さ調節可能な構成としてある。
【0035】
例えばこの例では脚部21は脚金具21aにボルト付きの六角部を備えた脚21bをねじ込んで構成してあるが、その構成は工具を用いて高さ調節可能な構造となっていれば特に限定されるものではない。
【0036】
更に、上記冷蔵庫本体1の前方底部には脚部21とは別に把手部材22が設けてある。この把手部材22は冷蔵庫本体1を上下方向に立てた状態で搬送するときに使用するもので、左右の間隔が人の肩幅と略等しくなるような位置に配置して、冷蔵庫本体1の前方底面に取り付け固定してある。
【0037】
そして、上記冷蔵庫本体1の前方底部には化粧カバー23が着脱自在に装着してある。この化粧カバー23は、前記冷蔵庫本体1の前方側の脚部21と把手部材22を覆って安全性と意匠性を確保している。
【0038】
ここで、上記冷蔵庫本体1の底部に敷設してある放熱パイプ20は、その前後方向途中部分を先行文献と同様冷蔵庫本体1の底部に埋設した階段搬送専用把手1aに係合させて左右方向に位置ずれしないよう係止してあるが、更に前方端部分は冷蔵庫本体1の底部に固定してある。
【0039】
その構成を、図9を用いて説明する。図9において、冷蔵庫本体1はその前方底面の前記放熱パイプ20の前方端部と対向する部分を一段低くして本体段差部24を設け、階段形状としてある。
【0040】
一方、把手部材22は把手部25とその後方に位置する本体固定部26とからなり、前記把手部25の後方の本体固定部26はその上面を冷蔵庫本体1の底面と同様に階段状にして段差を持たせてある。
【0041】
そして、上記一段低くした段差部をパイプ固定部27として当該部分に一対の鍵状突起部を備えたパイプ固定爪28を立設し、このパイプ固定爪28を内箱3の底面より内箱3と外箱2の間に突入させてその鍵状部分に前記放熱パイプ20の前方端部を圧入し固定してある。この状態で内箱3と外箱2との間に発泡断熱材4を充填してある。
【0042】
なお、上記パイプ固定爪28を設けたパイプ固定部27の下側の面には補強リブ27aを一体形成して強度を高めてある。
【0043】
上記のようにして放熱パイプ20の前方端部分を冷蔵庫本体1の底部に固定してあるが、この放熱パイプ20を固定保持している把手部材22は、その本体固定部26の野菜室10の開口に近い前方側の一段高くて厚肉となっている部分をビス固定部30とし、当該ビス固定部30の下側から冷蔵庫本体1の内箱3にビス31をねじ込んで冷蔵庫本体1の底部に取り付け固定してある。
【0044】
また、上記把手部材22はその把手部25と本体固定部26との間に手挿入用開口32を有しており、把手部25と化粧カバー23の裏面との間には前記手挿入用開口32から前方側に向かって略L字状に屈曲する手挿入部33を形成している。
【0045】
そして、上記把手部25の手挿入用開口32の前側の端部に上向きに突出する円弧状の膨出部34を設けてある。さらに、前記手挿入用開口32の後側の壁面に後方向に窪む凹所35が形成してある。
【0046】
なお、本実施の形態の冷蔵庫では、前記脚部21及び把手部材22を覆う化粧カバー23の裏面には、図6図8に示すように脚高さ調節用の工具36が装着してある。
【0047】
以下、上記工具36の取り付け構成を説明すると、前記脚部21及び把手部材22を覆う化粧カバー23の裏面には図10に示すように工具取り付け部37が設けてある。
【0048】
上記工具取り付け部37は、図11に示すように工具36の一端側を嵌め込み固定する第一リブ37a、他端側を嵌め込み固定する第二リブ37bとからなり、化粧カバー23の把手部材22同士間の左右方向スペースに工具36を装着可能としている。
【0049】
そして、上記工具取り付け部37は、工具36の一部、この例では工具36の前後方向幅が大きくなるレンチ部36aの後側が図12に示すように冷蔵庫本体1側に突出して冷蔵庫本体1の底面とオーバーラップするような形で装着される構成としてある。
【0050】
また、上記化粧カバー23には工具36を装着する部分の後側端縁にカバー部38が一体形成してあり、化粧カバー23の後端より本体側に突出するレンチ部36a、すなわち工具36の冷蔵庫本体1とオーバラップする部分を覆う構成としてある。
【0051】
なお、この例では図10図11に示すようにカバー部38はオーバラップする部分だけではなく工具36のほぼ全長にわたって設けているが、これは少なくとも工具36の冷蔵庫本体1とオーバラップする部分だけ覆うように設ければよいものである。
【0052】
また、上記工具36はレンチ部36aと柄部36bとの間を略く字状に屈曲した構成とするとともに、化粧カバー23には前記工具36を正規の状態と逆向きに装着(上下の面を逆向きにして装着)されるのを防止する逆付け防止部39が設けてある。
【0053】
この逆付け防止部39は、図12図13に示すように正規の状態に工具36をセットした場合は工具36の上面に当接し、上下の面を逆向きにセットすると逆付け防止部39の先端が工具36の上面より下方に位置する形となって第一リブ37aと第二リブ37bによる工具36の係止ができなくなる構成としてあるが、これは逆向き装着を防止できればどのような構成であってもよいものである。
【0054】
以上のように構成された冷蔵庫について、次にその作用、効果を説明する。
【0055】
本実施の形態の冷蔵庫は、冷蔵庫本体1の前方底部に搬送用の把手部材22を取り付け、この把手部材22のパイプ固定部27にパイプ固定爪28を設けて、当該パイプ固定爪28によって冷蔵庫本体1の底部に敷設した放熱パイプ20の前方端部分を固定している。そして、上記放熱パイプ20の前方端部分を固定する把手部材22は冷蔵庫本体1にビス31によって機械的に取り付けてある。
【0056】
したがって、放熱パイプ20の前方端部分はテープ貼りの時のように発泡断熱材の発泡圧変動や組み立て輸送時の振動等によって位置ずれするようなことがなく、所定位置に正確に固定されることになる。よって、安定した省エネ性と防露効果を持つ冷蔵庫とすることができる。しかも、テープ貼り等のような作業が不要であるから、部品点数増や工数増によるコストアップを招くことがなく、安価にパイプ固定することができる。
【0057】
ここで、上記省エネ性と防露効果をばらつくことなく安定させるために、把手部材22のパイプ固定部27にパイプ固定爪28を設けて放熱パイプ20の前方端部分を固定する構成とすると、内箱3の内部に突入するパイプ固定爪28の高さ寸法h分だけ放熱パイプ20の前方端部分が野菜室10の底面近くに位置する形となる。そのため、放熱パイプ20による野菜室10への熱影響が増大し、冷却運転の頻度が上がって省エネ性が低下するという弊害が生じる。
【0058】
しかしながら、本実施の形態では、上記放熱パイプ20の前方端部分を固定する部分の冷蔵庫本体底面は一段低くして本体段差部24を設けているので、この段差によって放熱パイプ20の前方端部分と野菜室10の底面との間の寸法、すなわち断熱距離は大きなものとなる。したがって、放熱パイプ20による野菜室10への熱影響を低減することができ、省エネ性を高めることができる。
【0059】
つまり本実施の形態の構成とすることにより、省エネ性と防露効果を安定させるだけでなく省エネ性そのものを高めることもできる。
【0060】
また、本実施の形態の把手部材22は本体固定部26を冷蔵庫本体の底面形状と同様段差を持たせて、野菜室10の開口に近い前方側のビス固定部30をビス31によって固定しているので、冷蔵庫本体1の底部に強固に取り付け固定することができる。
【0061】
すなわち、把手部材22は階段状として段差を持たせたことにより野菜室10の開口に近い前方側のビス固定部30は一段高くなって厚肉となっており、その分堅牢なものとなり、冷蔵庫本体1の底部に強固に取り付け固定することができるのである。
【0062】
その結果として、大重量化した冷蔵庫本体1の重量に耐えうる把手とすることができるのはもちろん、放熱パイプ20の前方端位置を所定位置に強固かつ正確に固定することができる。これにより、省エネ性および防露効果を更に安定したものとすることができる。
【0063】
加えて上記把手部材22のパイプ固定爪28を設けたパイプ固定部27の下側の面には補強リブ27aを一体形成してあるので、一段低くして強度が弱くなりがちなパイプ固定部27自体の強度も高まり、パイプ固定爪28による放熱パイプ20の固定をより堅牢なものとして、省エネ性および防露効果の安定化を更に高めることができる。
【0064】
更に、本実施の形態の冷蔵庫は、次のような効果も有する。
【0065】
すなわち、冷蔵庫本体1の前方底部には化粧カバー23を設けて前記把手部25とともに脚部21も覆っているが、この化粧カバー23はその裏面に工具取り付け部37を設け、この工具取り付け部37に脚部21の高さ調節をするための工具36を装着してある。
【0066】
したがって、冷蔵庫本体1が大型で大重量化しているものであっても、工具36を用いて脚部21の高さ調節を容易に行うことができる。
【0067】
また、脚部21の高さ調節を行った後の工具36は化粧カバー23の裏面に装着して保管することができ、紛失を防止することができる。
【0068】
更に、冷蔵庫本体1を別の場所に移動させて再設置するような時にも、化粧カバー23を取り外して工具36を取り出し、脚部21の高さ調節を容易に行うことができる。
【0069】
そして、上記化粧カバー23の取り外しは脚部21の高さ調節を行う際に必ず行う作業であるので、この化粧カバー23の取り外しによって工具36の存在に気づき、わざわざ工具36を探すことなく使用できる。
【0070】
しかも上記工具36を取り出すための作業は高さ調節を行う際に必ず行う必須の作業であるので、工具取り出しのための動作を別途行うというわずらわしさもない。
【0071】
よって、再設置の際の作業性は著しく向上する。
【0072】
ここで、上記脚部21の高さ調節の作業性を向上させるために、工具36を化粧カバー23に装着しておく構成とすると、化粧カバー23の前後方向幅が長大化し、化粧カバー23の前端が冷蔵庫本体1の野菜室扉13前面より前方に突出しやすくなる弊害が生じる。
【0073】
すなわち、化粧カバー23に工具36を装着する構成とすると、化粧カバー23に装着した工具36の前後方向幅が大きなものである場合、この例ではレンチ部36aの前後方向幅が大きいので、このレンチ部36aの前後方向幅分だけ化粧カバー23の前後方向寸法が長大化する。その結果、化粧カバー23の前端が冷蔵庫本体1の野菜室扉13前面より突出しがちになる。
【0074】
しかしながら、本実施の形態では、上記化粧カバー23に設けた工具取り付け部37は、工具36のレンチ部36aの後方部が冷蔵庫本体1側に突出して冷蔵庫本体1の底面とオーバーラップする状態で装着可能な構成としてあるから、このオーバラップする分だけ化粧カバー23の前後方向幅を短縮することができる。
【0075】
したがって、その分化粧カバー23の前端を後方に位置させて化粧カバー23の前端が冷蔵庫本体1の野菜室扉13前面より突出することがないように設置することができ、美観及び安全性の高い冷蔵庫とすることができる。
【0076】
また、上記化粧カバー23は工具36の冷蔵庫本体1とオーバラップするレンチ部36aを覆うカバー部38が設けてあるので、冷蔵庫本体1の底部に結露が生じてこれが落下するようなことがあっても工具36に結露水が付着するのを防止できる。
【0077】
よって、金属で形成することが多い工具36の腐食を防止して長期間良好な状態で保管しておくことができる。
【0078】
また、前記工具36は略く字状に屈曲した構成としてあるので、脚部21の高さが低くても柄部36bが床面に接して調節作業の邪魔になるようなことがなく、脚部21の高さ調節を容易に行うことができる。
【0079】
この場合、工具36は略く字状に屈曲しているので正規の状態とは逆向きの状態で装着すると、工具36の一部、例えばこの場合はレンチ部36aの一部が床面側に大きく飛び出し、床面に接して床面を傷つける等の恐れがある。
【0080】
しかしながら、本実施の形態では上記化粧カバー23には工具取り付け部37とともに工具36の逆向き装着を防止する逆付け防止部39が設けてあるので、工具36の逆向き装着を防止することができる。
【0081】
したがって、工具36のレンチ部36aの一部が下方に飛び出し床面に接して床面を傷つける等の弊害を防止することができる。
【0082】
また、上記化粧カバー23に設けた工具取り付け部37は冷蔵庫本体1に設けた前記左右の把手部材22の間に位置する形としてあるので、化粧カバー23の把手部材22間に生じる左右方向のスペースを利用して比較的長い寸法の工具であっても無理なく装着保管することができる。これと同時に化粧カバー23の前後方向の幅寸法を短いものとすることもできる。これにより、化粧カバーの大型化を防止して、より確実に化粧カバー23の前端が野菜室扉13前面より飛び出さないようにすることができる。
【0083】
また、上記把手部材22は把手部25の手挿入用開口側の端部に膨出部34を設けた構成としてあるので、把手部25が膨出部34により厚肉化して強度が向上し、大重量化した冷蔵庫本体であってもその荷重に耐えうるものとすることができる。そして、把手部25の前後方向の長さ寸法を従来のものより短いものとして化粧カバー23の前後方向の幅寸法を短くすることができる。
【0084】
よって、把手部25の前後方向の長さ寸法を短くした分化粧カバー23の前後方向寸法を小型化して化粧カバー23の前端が後方に位置するようにし、冷蔵庫本体1の野菜室扉13前面より突出することがないようにすることができる。
【0085】
また、上記膨出部34は手の引っ掛かり部ともなるので、手の指が滑って把手部25から不用意に外れてしまうのを防止することもでき、搬送時の安全性をも向上させることができる。
【0086】
更に、上記把手部材22は手挿入用開口32の後側の壁面に後方向に窪む凹所35を設けているので、この凹所35を設けた分だけ手挿入用開口32の後側壁面と前記把手部25の膨出部34との間に形成される手挿入用開口32の位置を後側にずらせることができる。
【0087】
したがって、当該手挿入用開口32の位置を後側にずらせた分だけ把手部材22の前後方向寸法を短くすることができる。これによって、化粧カバー23の前後方向寸法も小型化して化粧カバー23の前端が後方に位置するようにし、冷蔵庫本体1の野菜室扉13前面より突出することがないようにすることができる。
【0088】
そして、上記のように化粧カバー23の前端が野菜室扉13の前面から突出しないようにすることによって、冷蔵庫本体1の前方底部の美観と安全性を良好なものとすることができる。
【0089】
以上、本発明に係る冷蔵庫について、上記実施の形態を用いて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば本実施の形態において把手部材22は脚部21と別体物で説明したが、これは脚部21と一体物であってもよいものであり、このようにしても同様の効果が得られる。すなわち、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。つまり、本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上のように、本発明の冷蔵庫は、放熱パイプの前方端部分を所定位置に強固に固定することができ、省エネ性と防露効果をばらつくことなく安定したものとすることができる。よって、家庭用冷蔵庫をはじめとして業務用冷蔵庫、自動販売機など他の冷凍冷蔵応用商品に広く適用できる。
【符号の説明】
【0091】
1 冷蔵庫本体
2 外箱
3 内箱
4 発泡断熱材
5、6 仕切板
7 冷蔵室
8 上段冷凍室
9 下段冷凍室
10 野菜室
11 冷蔵室扉
12a、12b 冷凍室扉
13 野菜室扉
14 機械室
15 圧縮機
16 冷却室
17 冷気通路
18 冷却器
19 冷却ファン
20 放熱パイプ
21 脚部
21a 脚金具
21b 脚
22 把手部材
23 化粧カバー
24 本体段差部
25 把手部
26 本体固定部
27 パイプ固定部
27a 補強リブ
28 パイプ固定爪
30 ビス固定部
31 ビス
32 手挿入用開口
33 手挿入部
34 膨出部
35 凹所
36 工具
36a レンチ部
36b 柄部
37 工具取り付け部
37a 第一リブ
37b 第二リブ
38 カバー部
39 逆付け防止部
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