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特許7190648固体撮像素子、及び、固体撮像素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】固体撮像素子、及び、固体撮像素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/10 20060101AFI20221209BHJP
   H01L 31/107 20060101ALI20221209BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
H01L31/10 A
H01L31/10 B
H01L27/146 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018238928
(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公開番号】P2020102498
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】中西 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】可部 達也
(72)【発明者】
【氏名】森 三佳
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2007-0118391(KR,A)
【文献】特表2009-525619(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0043438(US,A1)
【文献】特開2006-210919(JP,A)
【文献】特開2011-114068(JP,A)
【文献】特開2004-146764(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0104020(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/0392
H01L 31/08-31/119
H01L 31/18-31/20
H01L 51/42-51/48
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板と、前記シリコン基板上に層状に配置された絶縁層と、前記絶縁層上に層状に配置された半導体層とを有するSOI(Silicon On Insulator)基板を備え、
前記半導体層は、不純物を含み、且つ、前記SOI基板に入射した光を光電変換する光電変換領域を有し、
前記SOI基板は、前記光電変換領域を複数の画素領域に分離するトレンチ部を有し、
前記トレンチ部は、前記SOI基板の上面から前記絶縁層に接触するまで延在している第1のトレンチを有し、
前記半導体層は、
前記絶縁層の上部に接触して形成された高濃度不純物拡散層と、
前記高濃度不純物拡散層の上部に接触し、且つ、前記高濃度不純物拡散層より前記不純物の濃度が低い低濃度不純物拡散層と、を有し、
前記光電変換領域は、前記低濃度不純物拡散層に形成され、第1導電型の第1の半導体層と、前記第1の半導体層に層状に配置され、前記第1導電型とは異なる第2導電型の第2の半導体層と、を有し、
前記低濃度不純物拡散層は、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層と前記第1のトレンチとを離間するように、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層と前記第1のトレンチとの間であって、且つ、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層と前記第1のトレンチとに接触するように設けられている、
固体撮像素子。
【請求項2】
前記光電変換領域は、フォトダイオード領域である、
請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記光電変換領域は、アバランシェ・フォトダイオード増倍領域である、
請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記複数の画素領域は、第1の波長領域の光を光電変換する第1の光電変換領域を含む第1の画素領域と、前記第1の波長領域より短波長領域である第2の波長領域の光を光電変換する第2の光電変換領域を含む第2の画素領域と、を有し、
前記第1の光電変換領域は、前記第1導電型の前記第1の半導体層と、前記第1導電型とは異なる前記第2導電型の前記第2の半導体層と、を有し、
前記第2の光電変換領域は、前記第1導電型の第3の半導体層と、前記第2導電型の第4の半導体層と、を有し、
前記第2の半導体層は、前記第4の半導体層より厚い、
請求項3に記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記SOI基板は、さらに、前記SOI基板の上面から前記高濃度不純物拡散層と接触するまで延在し、且つ、前記高濃度不純物拡散層と電気的に接続されたコンタクト領域を有する、
請求項に記載の固体撮像素子。
【請求項6】
前記コンタクト領域は、前記低濃度不純物拡散層より不純物濃度が高い半導体である、
請求項に記載の固体撮像素子。
【請求項7】
前記コンタクト領域は、前記SOI基板の上面に交差する方向に凹んだ凹部に配置された金属である、
請求項に記載の固体撮像素子。
【請求項8】
前記トレンチ部は、さらに、上面視で前記コンタクト領域の周囲に位置し、且つ、前記絶縁層に接触していない第2のトレンチを有する、
請求項5~7のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項9】
前記コンタクト領域は、前記SOI基板を上面視した場合に、前記複数の画素領域のうち、隣り合う少なくとも2以上の画素領域の間に位置し、且つ、前記少なくとも2以上の画素領域と電気的に接続されている、
請求項5~7のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項10】
シリコン基板と、前記シリコン基板上に層状に配置された絶縁層と、前記絶縁層上に層状に配置された半導体層とを有するSOI(Silicon On Insulator)基板を準備する準備ステップと、
前記SOI基板の上面から前記絶縁層に接触するまで延在している第1のトレンチを形成する形成ステップと、
前記半導体層に不純物を注入することで、前記SOI基板に入射した光を光電変換する光電変換領域を形成する光電変換領域形成ステップと、を含み、
前記準備ステップでは、前記絶縁層の上部に接触して形成された高濃度不純物拡散層と、前記高濃度不純物拡散層の上部に位置し、且つ、前記高濃度不純物拡散層より前記不純物の濃度が低い低濃度不純物拡散層と、を前記半導体層に含む前記SOI基板を準備し、
前記光電変換領域形成ステップでは、第1導電型の第1の半導体層と、前記第1の半導体層に層状に配置され、前記第1導電型とは異なる第2導電型の第2の半導体層と、を有する前記光電変換領域を前記低濃度不純物拡散層に形成し、且つ、前記低濃度不純物拡散層が、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層と前記第1のトレンチとを離間するように、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層と前記第1のトレンチとの間であって、且つ、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層と前記第1のトレンチとに接触するように、前記光電変換領域を形成する、
固体撮像素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体撮像素子、及び、固体撮像素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、近赤外光(以下、IR光と表記)に高い分光感度特性を有する固体撮像素子として、化合物半導体を用いた固体撮像素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された固体撮像素子は、化合物半導体からなる基板(例えば、InP基板)上に形成され、単層の化合物半導体(例えば、InGaAsN)からなる第1の受光層と、第1の受光層よりも長波長側の光の吸収効率が高い量子井戸構造(例えば、InP/InAsP構造)からなる第2の受光層と、を備えている。
【0004】
また、固体撮像素子における光電変換効率(以下、単に変換効率と表記)を向上するために、固体撮像素子が有する半導体基板に凹凸を形成した固体撮像素子が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
特許文献2に開示された固体撮像素子によれば、半導体基板に形成された凹凸により、固体撮像素子に入射した光が反射されるため、反射された光を光電変換することができる。そのため、特許文献2に開示された固体撮像素子によれば、変換効率が向上される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-153311号公報
【文献】特開2010-226071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の化合物半導体からなる基板を備える固体撮像素子は、当該基板のウエハコストが高い課題がある。また、従来の化合物半導体を用いた固体撮像素子では、光を光電変換する光電変換領域を製造するためのプロセスコストも高い。このため、ウエハコスト及びプロセスコストが安くなるシリコン半導体基板を用い、且つ、IR光に対する高い変換効率を確保するために、空乏層を従来よりも厚くした構造を有する固体撮像素子が提案されている。
【0008】
しかしながら、このような構造の固体撮像素子は、高電圧駆動が前提であり、消費電力を抑制しつつ、且つ、IR光と可視光、特に、波長の短い青色光(以下、B光と表記)との変換効率を向上させることが困難である。
【0009】
また、半導体基板に凹凸を形成する固体撮像素子では、凹凸を形成する際に意図しないダメージが半導体基板に導入されるため、暗電流が増大することが懸念される。
【0010】
さらには、IR光を検出するための固体撮像素子では、IR光が半導体基板に吸収されるまで、半導体基板の内部をIR光が伝搬するため、隣接する画素に光が漏れこむ課題が生じる。
【0011】
本開示は、これらの課題を解決するために提供されるものであり、変換効率が高く、隣接する画素領域への光の漏れこみを抑制でき、かつ、低コストで実現可能な固体撮像素子等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様に係る固体撮像素子は、シリコン基板と、前記シリコン基板上に層状に配置された絶縁層と、前記絶縁層上に層状に配置された半導体層とを有するSOI(Silicon On Insulator)基板を備え、前記半導体層は、不純物を含み、且つ、前記SOI基板に入射した光を光電変換する光電変換領域を有し、前記SOI基板は、前記光電変換領域を複数の画素領域に分離するトレンチ部を有し、前記トレンチ部は、前記SOI基板の上面から前記絶縁層に接触するまで延在している第1のトレンチを有する。
【0013】
また、本開示の一態様に係る固体撮像素子の製造方法は、シリコン基板と、前記シリコン基板上に層状に配置された絶縁層と、前記絶縁層上に層状に配置された半導体層とを有するSOI(Silicon On Insulator)基板を準備する準備ステップと、前記SOI基板の上面から前記絶縁層に接触するまで延在している第1のトレンチを形成する形成ステップと、前記半導体層に不純物を注入することで、前記SOI基板に入射した光を光電変換する光電変換領域を形成する光電変換領域形成ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本開示の一態様に係る固体撮像素子によれば、変換効率が高く、隣接する画素領域への光の漏れこみを抑制でき、且つ、低コストで実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施の形態に係る固体撮像素子の構造を示す上面図である。
図2図2は、図1のII-II線における、実施の形態に係る固体撮像素子の断面を示す断面図である。
図3図3は、図1のIII-III線における、実施の形態に係る固体撮像素子の断面を示す断面図である。
図4図4は、図1のIV-IV線における、実施の形態に係る固体撮像素子の断面を示す断面図である。
図5図5は、図1のII-II線に対応する、実施の形態に係る固体撮像素子の製造方法を説明するための断面図である。
図6図6は、図1のII-II線に対応する、実施の形態に係る固体撮像素子の製造方法を説明するための断面図である。
図7図7は、図1のII-II線に対応する、実施の形態に係る固体撮像素子の製造方法を説明するための断面図である。
図8図8は、図1のIII-III線に対応する、実施の形態に係る固体撮像素子の製造方法を説明するための断面図である。
図9図9は、図1のIII-III線に対応する、実施の形態に係る固体撮像素子の製造方法を説明するための断面図である。
図10図10は、図1のIII-III線に対応する、実施の形態に係る固体撮像素子の製造方法を説明するための断面図である。
図11図11は、図1のIV-IV線に対応する、実施の形態に係る固体撮像素子の製造方法を説明するための断面図である。
図12図12は、図1のIV-IV線に対応する、実施の形態に係る固体撮像素子の製造方法を説明するための断面図である。
図13図13は、図1のIV-IV線に対応する、実施の形態に係る固体撮像素子の製造方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本開示の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。本開示は、特許請求の範囲だけによって限定される。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素について説明される。
【0017】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、実質的に同一の構成に対する重複説明は省略する場合がある。
【0018】
また、以下で説明する実施の形態において、「上方」及び「下方」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)及び下方向(鉛直下方)を指すものではない。また、「上方」及び「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔をあけて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに密着して配置されて2つの構成要素が接する場合にも適用される。
【0019】
また、以下で説明する実施の形態において、「上面」とは、固体撮像素子の光の受光側の面を示す。また、「上面視(平面視)」とは、固体撮像素子を受光面(上面)側から見た場合を示す。また、本明細書において、「深さ」又は「厚さ」とは、SOI(Silicon On Insulator)基板の主面の法線方向における長さを示す。
【0020】
また、以下で説明する実施の形態においては、第1導電型をN型とし、第2導電型をP型として説明するが、第1導電型をP型とし、第2導電型をN型としてもよい。
【0021】
また、以下で説明する実施の形態において、層の厚さ、トレンチの深さ等について具体的な数値を記載する場合がある。各数値は、あくまで一例であり、例えば、10%程度の誤差を含んでもよい。
【0022】
(実施の形態)
[構成]
まず、実施の形態に係る固体撮像素子の構成について説明する。
【0023】
図1は、実施の形態に係る固体撮像素子100の構造を示す上面図である。図2は、図1のII-II線における、実施の形態に係る固体撮像素子100の断面を示す断面図である。図3は、図1のIII-III線における、実施の形態に係る固体撮像素子100の断面を示す断面図である。図4は、図1のIV-IV線における、実施の形態に係る固体撮像素子100の断面を示す断面図である。
【0024】
図1図4に示すように、固体撮像素子100は、SOI(Silicon On Insulator)基板101を備える。
【0025】
SOI基板101は、Psub基板(シリコン基板)5と、シリコン基板5に積層されたBOX層(絶縁層)6と、絶縁層6に積層された半導体層104と、コンタクト領域3と、トレンチ部103と、を有する。具体的には、SOI基板101は、シリコン基板5と、シリコン基板5上に層状に配置された絶縁層6と、絶縁層6上に層状に配置された半導体層104と、を有する。
【0026】
シリコン基板5は、絶縁層6及び半導体層104が上面に積層されたシリコン基板である。
【0027】
絶縁層6は、シリコン基板5の上部に接触して配置された、電気的な絶縁性を有する層である。絶縁層6は、例えば、二酸化シリコン(SiO)からなる層である。
【0028】
半導体層104は、絶縁層6の上部に接触して配置され、且つ、不純物を含む光電変換領域15a~15dが形成される層である。例えば、半導体層104は、シリコンからなる層に不純物が注入された層である。また、例えば、半導体層104は、絶縁層6の上部に接触して形成されたP型高濃度エピ層(高濃度不純物拡散層)7と、高濃度不純物拡散層7の上部に接触し、且つ、高濃度不純物拡散層7より不純物の濃度が低いP型低濃度エピ層(低濃度不純物拡散層)8と、を有する。言い換えると、半導体層104は、絶縁層6に積層された高濃度不純物拡散層7と、高濃度不純物拡散層7に積層された低濃度不純物拡散層8と、を有する。
【0029】
なお、不純物(具体的には、P型の不純物)の成分は特に限定されるものではない。本実施の形態では、不純物は、例えば、ホウ素(ボロン)である。
【0030】
また、絶縁層6と半導体層104とは、屈折率が異なる材料が選択されている。そのために、SOI基板101の上部からSOI基板101の内部に入射され、且つ、光電変換領域15a~15dで吸収されなかった光は、絶縁層6と半導体層104との界面で反射され、光電変換領域15a~15dに戻る。
【0031】
また、光電変換領域15a~15dは、それぞれ、低濃度不純物拡散層8の側面と接するように形成されている。例えば、光電変換領域15a~15dは、低濃度不純物拡散層8に第1導電型の不純物と、第2導電型の不純物とが注入されることで形成されている。
【0032】
本実施の形態では、光電変換領域15a~15dは、4種類の互いに異なる波長の光を光電変換する領域としてそれぞれSOI基板101に設けられている。
【0033】
例えば、SOI基板101には、IR光を検出するための画素領域(第1の画素領域)4aに光電変換領域(第1の光電変換領域)15aが設けられ、可視光のうちの赤色光(以下、R光と表記)を検出するための画素領域(第2の画素領域)4bに光電変換領域(第2の光電変換領域)15bが設けられている。また、SOI基板101には、可視光のうちの緑色光(以下、G光と表記)を検出するための画素領域(第3の画素領域)4cに光電変換領域(第3の光電変換領域)15cが設けられ、可視光のうちのB光を検出するための画素領域(第4の画素領域)4dに光電変換領域(第4の光電変換領域)15dが設けられている。
【0034】
例えば、固体撮像素子100の受光面(上面)側には、特定の波長の光のみを透過させる図示しないカラーフィルタが配置されている。例えば、第1の光電変換領域15aは、IR光を光電変換する。また、例えば、第2の光電変換領域15bは、R光を光電変換する。また、例えば、第3の光電変換領域15cは、G光を光電変換する。また、例えば、第4の光電変換領域15dは、B光を光電変換する。
【0035】
また、これらの光電変換領域15a~15dは、トレンチ部103(より具体的には、第1のトレンチ1)によって、互いに電気的に分離されている。
【0036】
なお、図示しないが、固体撮像素子100は、光電変換領域15a~15dの組を複数備えてもよい。
【0037】
また、光電変換領域15a~15dは、それぞれ、フォトダイオード領域でもよいし、アバランシェ・フォトダイオード(APD/Avalanche Photo Diode)領域でもよい。
【0038】
例えば、光電変換領域15a~15dは、アバランシェ・フォトダイオード領域である場合、P型のアバランシェ増倍領域となるP型拡散層9a~9dと、P型拡散層9a~9dの上部であって、SOI基板101の表面に露出しているN型のアバランシェ増倍領域であるN型拡散層11a~11dと、を備える。このように、光電変換領域15a~15dは、アバランシェ・フォトダイオード領域である場合、P型拡散層9a~9dとN型拡散層11a~11dとの接合領域に高電界が印加されることで、光電変換されることで発生した電子がアバランシェ増倍される。
【0039】
一方、例えば、光電変換領域15a~15dは、フォトダイオード領域である場合、P型拡散層9a~9dを備える。なお、暗電流低減に効果的な埋め込み型構造とするため、SOI基板101の表面にN型拡散層を備えてもよい。
【0040】
なお、例えば、光電変換領域15a~15dは、フォトダイオード領域である場合、SOI基板101の上面に交差する方向に不純物の濃度勾配が形成されていなくてもよい。
【0041】
また、例えば、光電変換領域15a~15dは、アバランシェ・フォトダイオード領域である場合、SOI基板101の上面に交差する方向に不純物の濃度勾配が形成されていてもよい。 また、光電変換領域15a~15dのそれぞれは、全てフォトダイオード領域又は全てアバランシェ・フォトダイオード領域でもよいし、光電変換領域15a~15dのうちの少なくとも1つがフォトダイオード領域であり、且つ、少なくとも一つがアバランシェ・フォトダイオード領域でもよい。
【0042】
なお、以下では、光電変換領域15a~15dは、全てアバランシェ・フォトダイオード領域であるとして説明する。
【0043】
また、例えば、複数の画素領域4a~4dは、第1の波長領域の光を光電変換する光電変換領域を含む画素領域と、第1の波長領域より短波長領域である第2の波長領域の光を光電変換する光電変換領域を含む第2の画素領域と、を有する。
【0044】
図2図4に示すように、第1の光電変換領域15aは、第1導電型のN型低濃度拡散層(第1の半導体層)11aと、第1導電型とは異なる第2導電型のP型拡散層(第2の半導体層)9aと、を有する。
【0045】
第2の光電変換領域15bは、第1導電型のN型低濃度拡散層(第3の半導体層)11bと、第2導電型のP型拡散層(第4の半導体層)9bと、を有する。
【0046】
第3の光電変換領域15cは、第1導電型のN型低濃度拡散層(第5の半導体層)11cと、第2導電型のP型拡散層(第6の半導体層)9cと、を有する。
【0047】
第4の光電変換領域15dは、第1導電型のN型低濃度拡散層(第7の半導体層)11dと、第2導電型のP型拡散層(第8の半導体層)9dと、を有する。
【0048】
例えば、第2の半導体層9aは、第4の半導体層9bより厚い。また、例えば、第2の半導体層9aは、第6の半導体層9c及び第8の半導体層9dより厚い。また、例えば、第4の半導体層9bは、第6の半導体層9c及び第8の半導体層9dより厚い。また、例えば、第6の半導体層9cは、第8の半導体層9dより厚い。これらのように、長波長側の光を検出するための光電変換領域の第2導電型の半導体層の方が、短波長側の光を検出するための光電変換領域の第2導電型の半導体層より厚い。言い換えると、第1の波長領域の光を光電変換する光電変換領域が有する第2導電型の半導体層の方が、第1の波長領域より短波長領域である第2の波長領域の光を光電変換する光電変換領域が有する第2導電型の半導体層より厚い。
【0049】
また、P型拡散層9a~9dを薄く形成することで、P型拡散層9a~9dに高電圧を印加させやすくすることができるようになる。そのため、アバランシェ増倍させやすくするために、P型拡散層9a~9dを薄く形成されるとよい。
【0050】
一方で、P型拡散層9a~9dを厚く形成することで、多くの光を光電変換することができるようになる。そのため、半導体層で吸収しにくいIR光を光電変換するために、例えば、IR光を光電変換するために設けられている第2の半導体層9aは、第4の半導体層9b、第6の半導体層9c、及び、第8の半導体層9dよりも、膜厚が厚く形成されていてもよい。
【0051】
なお、本実施の形態においては、上面視した場合に、4つの画素領域4a~4dの面積は、それぞれ等しいが、異なってもよい。例えば、IR光を検出する第1の画素領域4aは、IR光より波長が短い光を検出する第2の画素領域4bよりも面積が小さくてもよい。例えば、IR光等の長波長の光は、可視光等のIR光よりも短波長の光より混色を起こしやすい。そのため、このような構成によれば、第1の画素領域4aと他の画素領域(例えば、画素領域4b~4d)との混色を抑制することができる。
【0052】
コンタクト領域3は、SOI基板101の上面から高濃度不純物拡散層7と接触するまで延在し、且つ、高濃度不純物拡散層7と電気的に接続されている。コンタクト領域3は、図示しない外部商用電源、電池等と電気的に接続されており、画素領域4a~4dが有する高濃度不純物拡散層10a~10dに共通の電圧を印加する。
【0053】
コンタクト領域3は、例えば、低濃度不純物拡散層8より不純物濃度が高い半導体である。コンタクト領域3の不純物濃度は、低濃度不純物拡散層8より高ければよく、特に限定されない。例えば、コンタクト領域3は、例えば、高濃度不純物拡散層10a~10dと同じ(例えば、±10%程度の濃度差を含む)不純物濃度でもよい。
【0054】
また、例えば、コンタクト領域3は、SOI基板101の上面に交差する方向に凹んだ凹部に配置された金属である。コンタクト領域3に採用される金属としては、例えば、銅が例示されるが、特に限定されない。例えば、コンタクト領域3には、タングステンが採用されてもよい。
【0055】
また、図1には、コンタクト領域3が上面視でひし形である場合を例示しているが、コンタクト領域3の上面視形状は、特に限定されない。
【0056】
また、コンタクト領域3は、SOI基板101を上面視した場合に、複数の画素領域4a~4dのうち、隣り合う少なくとも2以上の画素領域の間に位置し、且つ、少なくとも2以上の画素領域と電気的に接続されている。本実施の形態では、コンタクト領域3は、4つの画素領域4a~4d全てと電気的に接続されている。
【0057】
トレンチ部103は、光電変換領域15a~15dを複数の画素領域4a~4dに電気的に分離する。トレンチ部103は、第1のトレンチ1と、第2のトレンチ2とを有する。
【0058】
第1のトレンチ1は、SOI基板101の上面から絶縁層6に接触するまで延在している。本実施の形態では、図2図4に示すように、第1のトレンチ1は、SOI基板101の上面から絶縁層6の内部に到達するように形成されている。
【0059】
第2のトレンチ2は、上面視においてコンタクト領域3の周囲に接触して位置し、且つ、絶縁層6に接触していない。本実施の形態では、図2図4に示すように、第2のトレンチ2は、SOI基板101の上面から、高濃度不純物拡散層7まで到達し、且つ、絶縁層6に接触しないように形成されている。なお、第2のトレンチ2の下面と、高濃度不純物拡散層7の上面との間には、低濃度不純物拡散層8が存在していてもよい。
【0060】
このように、SOI基板101内部には、SOI基板101が有する複数の画素領域4a~4bそれぞれの電気的なコンタクトを取る、言い換えると、複数の画素領域4a~4bそれぞれに共通の電位を印加するために、コンタクト領域3が配置されており、コンタクト領域3の周囲には第2のトレンチ2が形成されている。
【0061】
なお、第1のトレンチ1は、DTI(Deep Trench Isolation)でもよいし、STI(Shallow Trench Isolation)でもよい。また、第2のトレンチ2は、DTIでもよいし、STIでもよい。本実施の形態では、第1のトレンチ及び第2のトレンチ2は、いずれもDTIである。第1のトレンチ1及び第2のトレンチ2は、例えば、SOI基板101に形成された溝に、SiO等の絶縁部材が配置されることで形成される。
【0062】
このように、SOI基板101は、複数の画素領域4a~4dに対応して、複数の光電変換領域15a~15dを有する。また、複数の光電変換領域15a~15dは、それぞれ断面視において上面以外が第1のトレンチ1、第2のトレンチ2、及び、絶縁層6からなる絶縁領域102によって周囲が囲まれている。また、絶縁領域102は、光電変換領域15a~15d(及び、高濃度不純物拡散層7)と屈折率が異なる。これにより、光電変換領域15a~15d(及び、高濃度不純物拡散層7)と絶縁領域102との界面では、SOI基板101に入射した光であって、光電変換領域15a~15dに吸収されなかった光が反射する。
【0063】
図2に示すように、SOI基板101には、シリコン基板5、絶縁層6、高濃度不純物拡散層7、及び、低濃度不純物拡散層8がこの順に積層されて存在する。
【0064】
コンタクト領域3は、高濃度不純物拡散層7と接するように形成されている。
【0065】
また、第1のトレンチ1は、絶縁層6に接触するように形成されている。一方で、コンタクト領域3の周囲に形成されている第2のトレンチ2は、絶縁層6に接触しないように形成されている。
【0066】
また、第1の光電変換領域15aには、N型増倍領域としてN型低濃度拡散層(第1の半導体層)11aが形成され、P型増倍領域としてP型拡散層(第2の半導体層)9aが形成されている。
【0067】
また、第2の光電変換領域15bには、N型増倍領域としてN型低濃度拡散層(第3の半導体層)11bが形成され、P型増倍領域としてP型拡散層(第4の半導体層)9bが形成されている。
【0068】
第1の光電変換領域15aに形成されている第2の半導体層9aの典型的な接合深さ(厚さ)は、例えば、8μmである。
【0069】
また、第2の光電変換領域15bに形成されている第4の半導体層9bの厚さは、例えば、5μmである。
【0070】
なお、第2の半導体層9a及び第4の半導体層9bの厚さは、これらに限定されない。
【0071】
また、第2の光電変換領域15bの第4の半導体層9bの下方には、高濃度不純物拡散層7の一部として高濃度不純物拡散層10bが形成されている。
【0072】
また、第1の光電変換領域15aの第2の半導体層9aの下方には、高濃度不純物拡散層7の一部として高濃度不純物拡散層10aが形成されている。
【0073】
図3に示すように、第3の光電変換領域15cには、N型増倍領域としてN型低濃度拡散層(第5の半導体層11c)が形成されており、P型増倍領域としてP型拡散層(第6の半導体層9c)が形成されている。
【0074】
また、第3の光電変換領域15cに形成されている第6の半導体層9cの厚さは、例えば、3μmである。
【0075】
なお、第6の半導体層9cの厚さは、これに限定されない。
【0076】
また、第3の光電変換領域15cの第6の半導体層9cの下方には、高濃度不純物拡散層7の一部として高濃度不純物拡散層10cが形成されている。
【0077】
図4に示すように、第4の光電変換領域15dには、N型増倍領域としてN型低濃度拡散層(第7の半導体層)11dが形成されており、P型増倍領域としてP型拡散層(第8の半導体層)9dが形成されている。
【0078】
また、第4の光電変換領域15dに形成されている第8の半導体層9dの厚さは、例えば、1μmである。
【0079】
なお、第8の半導体層9dの厚さは、これに限定されない。
【0080】
また、第4の光電変換領域15dの第8の半導体層9dの下方には、高濃度不純物拡散層7の一部として高濃度不純物拡散層10dが形成されている。
【0081】
[製造方法]
続いて、図5図13を参照して、実施の形態に係る固体撮像素子100の製造方法について説明する。
【0082】
図5図7は、図1のII-II線に対応する、実施の形態に係る固体撮像素子100の製造方法を説明するための断面図である。図8図10は、図1のIII-III線に対応する、実施の形態に係る固体撮像素子の製造方法を説明するための断面図である。図11図13は、図1のIV-IV線に対応する、実施の形態に係る固体撮像素子の製造方法を説明するための断面図である。
【0083】
なお、図5図13の(a)~(i)は、それぞれ図5図13で共通のステップ、つまり、製造工程における同一の段階であるものとして説明する。
【0084】
まず、図5図8、及び、図11の(a)に示すように、シリコン基板5、絶縁層6、及び、半導体層104(より具体的には、P型の高濃度不純物拡散層7、並びに、P型の低濃度不純物拡散層8)から構成されるSOI基板101aを準備する。
【0085】
P型不純物濃度として、P型の高濃度不純物拡散層7は、1E19cm-3、P型の低濃度不純物拡散層8は、1E15cm-3が例示されるが、これらの濃度に限定されない。例えば、高濃度不純物拡散層7は、P型の不純物濃度が5E19cm-3でもよい。
【0086】
また、P型の高濃度不純物拡散層7は、例えば、厚さが1μmであり、P型の低濃度不純物拡散層8は、例えば、厚さが9μmである。なお、これらの厚さは一例であり、特に限定されない。
【0087】
SOI基板101aは、例えば、表面に絶縁膜(絶縁層)を形成したシリコン基板と、表面に絶縁膜を形成しないシリコン基板とを張り合わせ、2つのシリコン基板の一方に不純物を注入することで形成する。もちろん、SOI基板101aは、任意の製造方法で形成されてよい。
【0088】
次に、図5図8、及び、図11の(b)に示すように、画素領域4a~4dを分離するための第1のトレンチ1を形成することで、SOI基板101bを形成する。より具体的には、SOI基板101bの上面から絶縁層6に接触するまで延在している第1のトレンチ1を形成する。第1のトレンチ1を形成する際には、まず、SOI基板101bの上面から絶縁層6に到達するまでトレンチを深く形成する。次に、形成したトレンチに、SiO等の絶縁部材を埋め込むことにより、第1のトレンチ1を形成する。第1のトレンチ1の深さは、例えば、10μmである。
【0089】
次に、図5の(c)に示すように、コンタクト領域3が形成されるべき領域の周囲にのみ、局所的に第2のトレンチ2を形成する。第2のトレンチ2を形成する際には、まず、P型の高濃度不純物拡散層7には到達するが、絶縁層6には到達しないように、トレンチを形成する。次に、形成したトレンチに、SiO等の絶縁部材を埋め込むことにより、第2のトレンチ2を形成する。このように、SOI基板101bからSOI基板101cが形成される。第2のトレンチ2の深さは、例えば、9μmである。
【0090】
次に、図6図9、及び、図12の(d)に示すように、P型のアバランシェ増倍領域及びコンタクト領域3が形成されるべき領域にのみ、選択的に不純物(より具体的には、ボロン)注入を行うことで、コンタクト領域3a及びP型拡散層9a、9b1、9c1、9d1を形成する。例えば、500KeV、及び、1MeVから7MeVまで1MeV刻みで、ドーズ量が1E12cm-2の多段注入を実施する。このように、SOI基板101cからSOI基板101dが形成される。
【0091】
次に、図6図9、及び、図12の(e)に示すように、例えば図2図4に示す第1の画素領域4aが有する高濃度不純物拡散層10aを除く高濃度不純物拡散層10b~10d、及び、コンタクト領域3が形成されるべき領域にのみ、選択的にボロン注入を行うことで、コンタクト領域3b及び高濃度不純物拡散層10b、10c1、10d1を形成する。例えば、5MeVから7MeVまで1MeV刻みで、ドーズ量が5E13cm-2の多段注入を実施する。また、これにより、P型拡散層9b1、9c1、9d1の厚みが薄くなったP型拡散層9b、9c2、9d2が形成される。このように、SOI基板101dからSOI基板101eが形成される。
【0092】
次に、図6図9、及び、図12の(f)に示すように、例えば図2図4に示す第1の画素領域4aが有する高濃度不純物拡散層10a及び第2の画素領域4bが有する高濃度不純物拡散層10bを除く高濃度不純物拡散層10c、10d、並びに、コンタクト領域3が形成されるべき領域にのみ、選択的にボロン注入を行うことで、コンタクト領域3c及び高濃度不純物拡散層10c、10d2を形成する。例えば、3MeVから4MeVまで1MeV刻みで、ドーズ量が5E13cm-2の多段注入を実施する。また、これにより、P型拡散層9c2、9d2の厚みが薄くなったP型拡散層9c、9d3が形成される。このように、SOI基板101eからSOI基板101fが形成される。
【0093】
次に、図7図10、及び、図13の(g)に示すように、例えば図2図4に示す第4の画素領域4dのみの高濃度不純物拡散層10d及びコンタクト領域3が形成されるべき領域にのみ、選択的にボロン注入を行うことで、コンタクト領域3d及び高濃度不純物拡散層10dを形成する。例えば、1MeVから2MeVまで1MeV刻みで、ドーズ量が5E13cm-2の多段注入を実施する。また、これにより、P型拡散層9d3の厚みが薄くなったP型拡散層9dが形成される。このように、SOI基板101fからSOI基板101gが形成される。
【0094】
以上の製造方法によって、複数の画素領域4a~4dのそれぞれが有するP型拡散層9a~9d、及び、高濃度不純物拡散層10a~10dが、所望の厚み、及び、所望の不純物濃度で形成される。P型拡散層9a~9dの不純物濃度は、例えば、1E17cm-3であり、高濃度不純物拡散層10a~10dの不純物濃度は、例えば、5E18cm-3であるが、特にこれらに限定されない。
【0095】
次に、図7図10、及び、図13の(h)に示すように、コンタクト領域3が形成されるべき領域にのみ、選択的にボロン注入を行うで、コンタクト領域3を形成する。例えば、10keV及び30keV(ドーズ量:5E14cm-2)と、100keV及び300keV(ドーズ量:1E14cm-2)との多段注入を実施する。このように、SOI基板101gからSOI基板101hが形成される。
【0096】
なお、トレンチ(凹部)を形成して金属を埋め込むことによりコンタクト領域3を形成した埋め込み型構造とする場合、SOI基板101gの表面にN型拡散層を形成するために、例えば、20keV(ドーズ量:5E13cm-2のAs注入を追加して実施してもよい。
【0097】
最後に、図7図10、及び、図13の(i)に示すように、N型低濃度拡散層11a~11dが形成されるべき領域にのみ、選択的にN型の不純物としてAs注入を行うことで、N型低濃度拡散層11a~11dを形成する。例えば、50keV及び200keVで、ドーズ量が5E12cm-2の多段注入を実施する。N型低濃度拡散層11a~11dの不純物濃度は、特に限定されないが、例えば、1E17cm-3である。このように、SOI基板101gからSOI基板101、つまり、固体撮像素子100が形成される。また、N型の不純物としてAsを例示したが、N型の不純物は、Asに限定されない。
【0098】
なお、コンタクト領域3は、図5図13に示す不純物の注入による方法ではなく、トレンチ(凹部)を形成して銅等の金属(導電膜)を埋め込むことにより、形成されてもよい。この場合、例えば、コンタクト領域3に金属を配置するための溝は、第1のトレンチ1及び第2のトレンチ2の溝を形成する際に形成されればよい。もちろん、当該トレンチに配置される金属は、銅に限定されず、金、銀等の金属でもよい。
【0099】
また、図5~13で説明した製造方法における、不純物(ボロン)の注入条件は、例えば、アバランシェ・フォトダイオードを形成する際の注入条件である。フォトダイオードを形成するために、不純物の注入条件は、変更されてもよい。例えば、図6図9、及び、図12の(d)に示す工程において、P型拡散層9a~9dが形成されるべき領域にのみ選択的に、10KeV、30KeV、100KeV、300KeV、500KeV、及び、1MeVから7MeVまで1MeV刻みで、ドーズ量が1E12cm-2の不純物の多段注入を実施してもよい。
【0100】
また、第1のトレンチ1及び第2のトレンチ2は、SOI基板に形成した溝にSiO等の絶縁部材を埋め込むことにより、形成されるとしたが、これに限定されない。第1のトレンチ1及び第2のトレンチ2は、例えば、SOI基板に酸素を注入して加熱することで形成されてもよい。
【0101】
[効果等]
以上説明したように、本実施の形態に係る固体撮像素子100は、シリコン基板5と、シリコン基板5上に層状に配置された絶縁層6と、絶縁層6上に層状に配置された半導体層104とを有するSOI基板101を備える。半導体層104は、不純物を含み、且つ、SOI基板101に上方から入射した光を光電変換する光電変換領域15a~15dを有する。SOI基板は、光電変換領域15a~15dを複数の画素領域4a~4dに分離するトレンチ部103を有する。トレンチ部103は、SOI基板101の上面から絶縁層6に接触するまで延在している第1のトレンチ1を有する。
【0102】
本実施の形態に係る固体撮像素子100によれば、SOI基板101を用いているため、IR光を検出するための固体撮像素子として、化合物半導体基板を用いる場合に比べ、ウエハコスト及びプロセスコストが安くなる。また、固体撮像素子100によれば、SOI基板101の絶縁層6が、SOI基板101に入射した光を反射する反射層として機能する。これにより、SOI基板101に入射した光に加え、さらに、絶縁層6で反射した光も光電変換に寄与する。そのため、固体撮像素子100によれば、光の変換効率が向上する。また、固体撮像素子100によれば、画素領域4a~4d間及び周囲に形成された第1のトレンチ1も光を反射する。また、第1のトレンチ1は、絶縁層6まで到達するように深く形成されている。これにより、固体撮像素子100によれば、隣接する画素領域への光の漏れこみを抑制できるため、混色が抑制され得る。この第1のトレンチ1による画素領域4a~4dごとに、それぞれの内部での光閉じ込め効果によっても、光の変換効率の向上が期待できる。以上のことから、本開示に係る固体撮像素子100は、変換効率が高く、隣接する画素領域への光の漏れこみを抑制でき、かつ、低コストで実現できる。
【0103】
また、例えば、光電変換領域15a~15dは、フォトダイオード領域である。
【0104】
このような構成によれば、光電変換領域15a~15dがアバランシェ増倍する構成である場合と比較して、簡便に光電変換領域15a~15dが形成され得る。そのため、固体撮像素子100の製造コストは、さらに低減され得る。
【0105】
また、例えば、光電変換領域15a~15dは、アバランシェ・フォトダイオード増倍領域である。
【0106】
このような構成によれば、光電変換領域15a~15dは、アバランシェ増倍によって光の検出強度を強めることができる。そのため、固体撮像素子100の光の検出精度は、さらに向上され得る。
【0107】
また、例えば、複数の画素領域は、第1の波長領域の光を光電変換する第1の光電変換領域を含む第1の画素領域と、第1の波長領域より短波長領域である第2の波長領域の光を光電変換する第2の光電変換領域を含む第2の画素領域と、を有する。また、例えば、第1の光電変換領域は、第1導電型の第1の半導体層と、第1導電型とは異なる第2導電型の第2の半導体層と、を有する。また、例えば、第2の光電変換領域は、第1導電型の第3の半導体層と、第2導電型の第4の半導体層と、を有する。また、例えば、第2の半導体層は、第4の半導体層より厚い。具体的に例えば、固体撮像素子100は、第1の光電変換領域15aを含む第1の画素領域4aと、第1の波長領域より短波長領域である第2の波長領域の光を光電変換する第2の光電変換領域15bを含む第2の画素領域4bと、を有する。また、例えば、第1の光電変換領域15aは、第1導電型の第1の半導体層11aと、第1導電型とは異なる第2導電型の第2の半導体層9aと、を有する。また、例えば、第2の光電変換領域15bは、第1導電型の第3の半導体層11bと、第2導電型の第4の半導体層9bと、を有する。また、例えば、第2の半導体層9aは、第4の半導体層9bより厚い。
【0108】
固体撮像素子100では、光が長波長である程、P型拡散層9a~9dにおいて光が吸収されにくいことから、光の検出効率が低下する。そこで、長波長領域の光を検出する第2の半導体層9aの厚さを、例えば、第2の半導体層9aよりも短波長領域の光を検出する第4の半導体層9bより厚くすることで、第2の半導体層9aにおいても多くの長波長領域の光を吸収させることができる。そのため、固体撮像素子100によれば、複数の画素領域4a~4dがそれぞれ異なる波長領域の光を検出する場合においても、長波長側の光も精度良く検出することができる。
【0109】
また、例えば、半導体層104は、絶縁層6の上部に接触して形成された高濃度不純物拡散層7と、高濃度不純物拡散層7の上部に接触し、且つ、高濃度不純物拡散層7より不純物の濃度が低い低濃度不純物拡散層8と、を有する。また、例えば、光電変換領域15a~15dは、低濃度不純物拡散層8に形成されている。
【0110】
このような構成によれば、第1のトレンチ1、あるいは、第2のトレンチ2に隣接して、P型の低濃度不純物拡散層8が存在するため、N型の低濃度拡散層11a~11dの端部でのブレークダウンを抑制しつつ、且つ、P型拡散層9a~9dとN型拡散層11a~11dとの接合領域に高電界を印加することができる。
【0111】
また、例えば、SOI基板101は、さらに、SOI基板101の上面から高濃度不純物拡散層7と接触するまで延在し、且つ、高濃度不純物拡散層7と電気的に接続されたコンタクト領域3を有する。
【0112】
このような構成によれば、画素領域4a~4dのそれぞれに、簡便に共通の電位を印加することができる。
【0113】
また、例えば、コンタクト領域3は、低濃度不純物拡散層8より不純物濃度が高い半導体である。
【0114】
このような構成によれば、例えば、凹部を形成して当該金属を配置することでコンタクト領域3を形成する場合と比較して、少ない工程でコンタクト領域3を形成することができる。
【0115】
また、例えば、コンタクト領域3は、SOI基板101の上面に交差する方向に凹んだ凹部に配置された金属である。
【0116】
このような構成によれば、コンタクト領域3に金属を用いるため、コンタクト領域3が半導体である場合と比較して、コンタクト領域3を高い電気伝導率にすることができる。
【0117】
また、例えば、トレンチ部103は、さらに、上面視でコンタクト領域3の周囲に位置し、且つ、絶縁層6に接触していない第2のトレンチ2を有する。
【0118】
このような構成によれば、画素領域4a~4d間でも光の漏れ出しをさらに抑制でき、且つ、画素領域4a~4dとコンタクト領域3とを高濃度不純物拡散層7を介して電気的に接続させることができる。
【0119】
また、例えば、コンタクト領域3は、SOI基板101を上面視した場合に、複数の画素領域4a~4dのうち、隣り合う少なくとも2以上の画素領域の間に位置し、且つ、少なくとも2以上の画素領域と電気的に接続されている。
【0120】
このような構成によれば、1つのコンタクト領域3で複数の画素領域4a~4dに共通の電圧を印加することができる。そのため、1つのコンタクト領域3で1つの画素領域に電圧を印加する場合と比較して、SOI基板101が備えるコンタクト領域3が、SOI基板101内で占有する範囲を、削減することができる。これにより、固体撮像素子100は、小型化され得る。また、1つのコンタクト領域3で複数の画素領域4a~4dに共通の電圧を印加できるため、同じ電圧をそれぞれの画素領域に印加させやすくすることができる。
【0121】
また、本実施の形態に係る固体撮像素子100の製造方法は、シリコン基板5と、シリコン基板5上に層状に配置された絶縁層6と、絶縁層6上に層状に配置された半導体層104とを有するSOI基板101を準備する準備ステップと、SOI基板101の上面から絶縁層6に接触するまで延在している第1のトレンチ1を形成する形成ステップと、半導体層104に不純物を注入することで、SOI基板101に入射した光を光電変換する光電変換領域15a~15dを形成する光電変換領域形成ステップと、を含む。
【0122】
このような製造方法によって製造された固体撮像素子100は、SOI基板101を用いているため、IR光を検出するための固体撮像素子として、化合物半導体基板を用いる場合に比べ、ウエハコスト及びプロセスコストが安くなる。また、このような製造方法によって製造された固体撮像素子100によれば、画素領域4a~4d間及び周囲に形成された第1のトレンチ1も光を反射する。また、第1のトレンチ1は、絶縁層6まで到達するように深く形成されている。これにより、固体撮像素子100によれば、隣接する画素領域への光の漏れこみを抑制できるため、混色が抑制され得る。この第1のトレンチ1による画素領域4a~4dごとに、それぞれの内部での光閉じ込め効果によっても、光の変換効率の向上が期待できる。以上のことから、本開示に係る固体撮像素子100の製造方法によれば、変換効率が高く、隣接する画素領域への光の漏れこみを抑制でき、かつ、低コストで実現できる固体撮像素子100を製造できる。
【0123】
(その他の実施の形態)
以上、本開示の実施の形態に係る固体撮像素子ついて、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したもの、又は異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0124】
例えば、固体撮像素子100が有する画素領域4a~4dそれぞれが受光する光の波長領域は、互いに一部が重なっていてもよい。
【0125】
また、上記実施の形態では、固体撮像素子100が有する画素領域4a~4dの一例として、IR光、R光、G光、及び、B光を受光して光電変換する例について説明した。しかしながら、固体撮像素子100は、例えば、IR光、及び、R光を受光して光電変換する画素領域のみを有していてもよいし、IR光、R光、及び、G光を受光して光電変換する画素領域のみを有していてもよく、固体撮像素子100が有する画素領域4a~4dの組み合わせは、特に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本開示の固体撮像素子は、可視光からIR光に対して変換効率が高く、画素間の混色を抑制でき、かつ、低コストで実現可能なCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサに利用できる。
【符号の説明】
【0127】
1 第1のトレンチ
2 第2のトレンチ
3、3a、3b、3c、3d コンタクト領域
4a 画素領域(第1の画素領域)
4b 画素領域(第2の画素領域)
4c 画素領域(第3の画素領域)
4d 画素領域(第4の画素領域)
5 Psub基板(シリコン基板)
6 BOX層(絶縁層)
7 P型高濃度エピ層(高濃度不純物拡散層)
8 P型低濃度エピ層(低濃度不純物拡散層)
9a P型拡散層(第2の半導体層)
9b1、9c1、9c2、9d1、9d2、9d3 P型拡散層
9b P型拡散層(第4の半導体層)
9c P型拡散層(第6の半導体層)
9d P型拡散層(第8の半導体層)
10a~10d P型高濃度拡散層(高濃度不純物拡散層)
11a N型低濃度拡散層(第1の半導体層)
11b N型低濃度拡散層(第3の半導体層)
11c N型低濃度拡散層(第5の半導体層)
11d N型低濃度拡散層(第7の半導体層)
15a 光電変換領域(第1の光電変換領域)
15b 光電変換領域(第2の光電変換領域)
15c 光電変換領域(第3の光電変換領域)
15d 光電変換領域(第4の光電変換領域)
100 固体撮像素子
101、101a、101b、101c、101d、101e、101f、101g、101h SOI基板
102 絶縁領域
103 トレンチ部
104 半導体層
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