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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/457 20210101AFI20221209BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20221209BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20221209BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20221209BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20221209BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20221209BHJP
【FI】
H01M50/457
H01M50/451
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/46
H01M50/489
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019544456
(86)(22)【出願日】2018-08-30
(86)【国際出願番号】 JP2018032047
(87)【国際公開番号】W WO2019065062
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2017189630
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 泰憲
(72)【発明者】
【氏名】杉森 仁徳
(72)【発明者】
【氏名】柳田 勝功
(72)【発明者】
【氏名】平野 暢宏
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-072120(JP,A)
【文献】国際公開第2017/034353(WO,A1)
【文献】特開2016-038967(JP,A)
【文献】特表2015-524991(JP,A)
【文献】特開2016-181324(JP,A)
【文献】特開2015-015096(JP,A)
【文献】特開2014-149935(JP,A)
【文献】特開2017-174662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/409-50/46
H01M 50/489
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、セパレータとを備えた非水電解質二次電池において、
前記セパレータは、基材と、リン酸塩粒子を含む第1フィラー層と、前記基材と前記第1フィラー層との間に介在し、前記リン酸塩粒子より融点の高い無機物粒子を含む第2フィラー層とを有し、前記第1及び前記第2フィラー層が前記正極側に向いた状態で前記正極と前記負極との間に配置され、
前記正極と前記第1フィラー層との間に、樹脂層が設けられ、
前記樹脂層は、前記第1フィラー層の表面に形成されて前記正極に当接し、ガラス転移温度が130℃以下の樹脂で構成されている、非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記樹脂層の厚みは、5μm以下である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記リン酸塩粒子は、リン酸リチウム、リン酸水素二リチウム、及びリン酸二水素リチウムから選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記リン酸塩粒子のBET比表面積は、5m/g以上100m/g以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記樹脂層は、樹脂のみで構成されている、請求項1~のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池等の非水電解質二次電池は、過充電、内部短絡、外部短絡、大電流に起因する過度の抵抗加熱等により、発熱する可能性がある。従来、非水電解質二次電池の発熱を抑制する技術の1つとして、セパレータのシャットダウン機能が知られている。シャットダウン機能は、電池の異常発熱によりセパレータが溶融してセパレータ自身の空孔を塞ぐことで、正負極間のイオン伝導を遮断し、電池の更なる発熱を抑制するものである。
【0003】
非水電解質二次電池用のセパレータとしては、シャットダウン機能を有する基材の表面に、酸化アルミニウム、ベーマイト等の無機物粒子を含む層が形成されたセパレータが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、所定の構造を満たすセパレータを用いることで、電池の内部抵抗の増大を抑制でき、高容量化及び高出力化を両立できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-63041号公報
【発明の概要】
【0005】
上述の通り、電池が異常発熱したときに、正負極間のイオン伝導を遮断して、電池の発熱を抑制することは重要な課題である。しかし、特許文献1の技術を含む従来の技術では、正負極間のイオン伝導を十分に遮断できない場合がある。本開示の目的は、電池が異常発熱したときに、正負極間のイオン伝導を十分に遮断して、電池の更なる発熱を抑制することである。
【0006】
本開示の一態様である非水電解質二次電池は、正極と、負極と、セパレータとを備え、前記セパレータは、基材と、リン酸塩粒子を含む第1フィラー層と、前記基材と前記第1フィラー層との間に介在し、前記リン酸塩粒子より融点の高い無機物粒子を含む第2フィラー層とを有し、前記第1及び前記第2フィラー層が前記正極側に向いた状態で前記正極と前記負極との間に配置され、前記正極と前記第1フィラー層との間に、樹脂層が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本開示の一態様である非水電解質二次電池によれば、電池が異常発熱したときに、正負極間のイオン伝導を十分に遮断でき、電池の更なる発熱を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の一例である非水電解質二次電池の断面図である。
図2】実施形態の一例である電極体の断面図である。
図3】実施形態の一例であるセパレータの機能を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上述のように、多孔性の樹脂基材上に、無機物粒子を含むフィラー層が形成されたセパレータが知られている。一般的に、多孔性の樹脂基材はシャットダウン機能を有する。したがって、電池が異常発熱した際には、樹脂基材のシャットダウン機能により、正負極間のイオン伝導等が遮断され、電池の更なる発熱が抑制される。しかし、電池の高容量化、高エネルギー密度化に伴い、異常発生時に電池内の温度が非常に高温(例えば、200℃以上)になり、樹脂基材の一部が消失してしまう場合がある。そして、上記フィラー層には樹脂基材のようなシャットダウン機能がないため、樹脂基材が消失した箇所にフィラー層が存在しても、正負極間のイオン伝導等を十分に遮断することができず、電池の発熱を十分に抑制できない場合がある。
【0010】
かかる状況に鑑みて、本発明者らが鋭意検討した結果、セパレータの基材と正極との間に、正極側から、樹脂層、リン酸塩粒子を含む第1フィラー層、及びリン酸塩粒子より融点の高い無機物粒子を含む第2フィラー層をこの順で設けることによって、電池が異常発熱したときに、正負極間のイオン伝導を十分に遮断できることを見出した。本開示に係る非水電解質二次電池によれば、電池が異常発熱したときに、電池の更なる発熱を抑制することが可能である。
【0011】
本開示に係る非水電解質二次電池では、充電状態の電池が異常発熱した際に、第1フィラー層に含まれるリン酸塩粒子が、正極の電位及び熱をきっかけとして溶融して第2フィラー層の空孔に充填され、第2フィラー層内でリン酸塩が重縮合することにより、第2フィラー層の空孔が塞がれると考えられる。即ち、2つのフィラー層によってシャットダウン機能が発現されることで、正負極間のイオン伝導が遮断され、電池の更なる発熱が抑制される。このため、樹脂基材が消失した場合でも、正負極間のイオン伝導を十分に遮断することが可能である。
【0012】
電池の内部短絡による異常発生時には、温度が高温になる短絡箇所において正極が変形する。正極と第1フィラー層との間に樹脂層が介在しない場合、正極の変形によって正極と第1フィラー層の接触状態が確保できなくなり、正極と第1フィラー層との接触面積が小さくなることで、リン酸塩の反応が不均一となって、上記第1及び第2フィラー層によるシャットダウン機能が十分に発現しないことが懸念される。本開示に係る非水電解質二次電池によれば、正極と第1フィラー層との間に樹脂層を介在させることで、正極に変形が生じた場合でも、樹脂層によって正極と第1フィラー層との良好な接触状態が確保され、これにより第1フィラー層に含まれるリン酸塩の溶融及び重縮合反応が均一に起こり、第2フィラー層の空孔を十分に塞ぐことができる。
【0013】
一方、上記第2フィラー層が存在しない場合は、電池の内部短絡による異常発生時に、温度が高温になる短絡箇所において、第1フィラー層に含まれるリン酸塩が反応しても、樹脂基材が溶解することにより正極と負極の接触面積がさらに増大し、電池が熱暴走するおそれがある。つまり、セパレータの基材と正極との間において、正極側から順に、樹脂層、第1フィラー層、及び第2フィラー層が介在する場合に、正負極間のイオン伝導を十分に遮断でき、電池の更なる発熱を抑制することが可能となる。
【0014】
なお、電池の内部短絡による電池内の温度上昇によって、例えば一方の電極から可燃性、支燃性のあるガス(酸素、水素等)が発生し、そのガスが他方の電極に移動して反応することによっても、電池の発熱が加速され、熱暴走に至る。本開示に係る非水電解質二次電池によれば、当該ガスの移動も十分に遮断することができる。
【0015】
以下、実施形態の一例について詳細に説明する。以下では、巻回型の電極体14が円筒形の電池ケースに収容された円筒形電池を例示するが、電極体は、巻回型に限定されず、複数の正極と複数の負極がセパレータを介して交互に積層されてなる積層型であってもよい。また、電池ケースは円筒形に限定されず、角形(角形電池)、コイン形(コイン形電池)等の金属製ケース、樹脂フィルムによって構成される樹脂製ケース(ラミネート電池)などであってもよい。
【0016】
図1は、実施形態の一例である非水電解質二次電池10の断面図である。図1に例示するように、非水電解質二次電池10は、電極体14と、非水電解質(図示せず)と、電極体14及び非水電解質を収容する電池ケース15とを備える。電極体14は、正極11と、負極12と、セパレータ13とを備え、正極11と負極12がセパレータ13を介して巻回された巻回構造を有する。電池ケース15は、有底円筒形状の外装缶16と、外装缶16の開口部を塞ぐ封口体17とで構成されている。
【0017】
非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類、及びこれらの2種以上の混合溶媒等を用いてもよい。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。なお、非水電解質は液体電解質に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。電解質塩には、例えばLiPF6等のリチウム塩が使用される。
【0018】
非水電解質二次電池10は、電極体14の上下にそれぞれ配置された絶縁板18,19を備える。図1に示す例では、正極11に取り付けられた正極リード20が絶縁板18の貫通孔を通って封口体17側に延び、負極12に取り付けられた負極リード21が絶縁板19の外側を通って外装缶16の底部側に延びている。正極リード20は封口体17の底板であるフィルタ23の下面に溶接等で接続され、フィルタ23と電気的に接続された封口体17の天板であるキャップ27が正極端子となる。負極リード21は外装缶16の底部内面に溶接等で接続され、外装缶16が負極端子となる。
【0019】
外装缶16は、例えば有底円筒形状の金属製容器である。外装缶16と封口体17との間にはガスケット28が設けられ、電池内部の密閉性が確保される。外装缶16は、例えば側面部の一部が内側に張り出した、封口体17を支持する張り出し部22を有する。張り出し部22は、外装缶16の周方向に沿って環状に形成されることが好ましく、その上面で封口体17を支持する。
【0020】
封口体17は、電極体14側から順に、フィルタ23、下弁体24、絶縁部材25、上弁体26、及びキャップ27が積層された構造を有する。封口体17を構成する各部材は、例えば円板形状又はリング形状を有し、絶縁部材25を除く各部材は互いに電気的に接続されている。下弁体24と上弁体26は各々の中央部で互いに接続され、各々の周縁部の間には絶縁部材25が介在している。異常発熱で電池の内圧が上昇すると、下弁体24が上弁体26をキャップ27側に押し上げるように変形して破断し、下弁体24と上弁体26の間の電流経路が遮断される。さらに内圧が上昇すると、上弁体26が破断し、キャップ27の開口部からガスが排出される。
【0021】
以下、図2及び図3を適宜参照しながら、電極体14について、特にセパレータ13について詳説する。図2は、電極体14の断面図であって、特にセパレータ13の断面の一部を拡大して示す。
【0022】
[正極]
正極11は、正極集電体と、当該集電体上に形成された正極合材層とを備える。正極集電体には、アルミニウムなどの正極11の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極合材層は、正極活物質、導電材、及び結着材を含み、正極集電体の両面に形成されることが好ましい。正極11は、正極集電体上に正極活物質、導電材、結着材等を含む正極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧延して正極合材層を正極集電体の両面に形成することにより作製できる。
【0023】
正極活物質としては、Co、Mn、Ni等の金属元素を含有するリチウム遷移金属複合酸化物が例示できる。リチウム遷移金属複合酸化物としては、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoyNi1-y2、LixCoy1-yz、LixNi1-yyz、LixMn24、LixMn2-yy4、LiMPO4、Li2MPO4F(M;Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bのうち少なくとも1種、0.95≦x≦1.2、0.8<y≦0.95、2.0≦z≦2.3)等が例示できる。
【0024】
導電材としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン等の炭素材料が例示できる。結着材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等の含フッ素樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリオレフィン等が例示できる。また、これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩、ポリエチレンオキシド(PEO)等が併用されてもよい。
【0025】
[負極]
負極12は、負極集電体と、当該集電体上に形成された負極合材層とを備える。負極集電体には、銅などの負極12の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極合材層は、負極活物質、及び結着材を含み、負極集電体の両面に形成されることが好ましい。負極12は、負極集電体上に負極活物質、結着材等を含む負極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧延して負極合材層を負極集電体の両面に形成することにより作製できる。
【0026】
負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出できるものであれば特に限定されず、例えば天然黒鉛、人造黒鉛等の炭素材料、ケイ素(Si)、錫(Sn)等のLiと合金化する金属、又はSi、Sn等の金属元素を含む酸化物などを用いることができる。また、負極合材層は、リチウムチタン複合酸化物を含んでいてもよい。リチウムチタン複合酸化物は、負極活物質として機能する。リチウムチタン複合酸化物を用いる場合、負極合材層にはカーボンブラック等の導電材を添加することが好ましい。
【0027】
負極合材層に含まれる結着材には、正極20の場合と同様に、PTFE、PVdF等の含フッ素樹脂、PAN、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリオレフィン等を用いることができる。また、水系溶媒を用いて負極合材スラリーを調製する場合、結着材として、CMC又はその塩、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩、ポリビニルアルコール(PVA)等を用いることができる。
【0028】
[セパレータ]
図2に示すように、セパレータ13は、基材30と、リン酸塩粒子34を含む第1フィラー層31と、基材30と第1フィラー層31との間に介在し、リン酸塩粒子34より融点の高い無機物粒子35を含む第2フィラー層32とを有する。電極体14において、セパレータ13は、各フィラー層が正極11側に向いた状態で配置される。また、電極体14には、正極11と第1フィラー層31との間に樹脂層33が設けられている。樹脂層33は、正極11と第1フィラー層31との間に存在すればよいが、好ましくはセパレータ13の構成要素として第1フィラー層31の表面に形成される。以下では、樹脂層33が第1フィラー層31の表面に形成され、正極11に当接しているものとして説明する。即ち、セパレータ13は、基材30/第2フィラー層32/第1フィラー層31/樹脂層33の層構造を有する。
【0029】
非水電解質二次電池10では、樹脂層33を正極11側に向けた状態で正極11と負極12との間にセパレータ13を配置することにより、基材30が消失する温度まで電池内部の温度が上昇した場合であっても、正負極間のイオン伝導を十分に遮断できる。ゆえに、電池の更なる発熱を抑制できる。詳しくは後述するが、かかる効果を発現するためには、第1フィラー層31、第2フィラー層32、樹脂層33の配置が重要となる。
【0030】
基材30は、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シート、例えば微多孔薄膜、織布、不織布等で構成される。基材30を構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとαオレフィンとの共重合体等のポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、セルロースなどが例示できる。基材30は、単層構造であってもよく、積層構造を有していてもよい。基材30の厚みは、特に制限されないが、例えば、3μm以上20μm以下が好ましい。
【0031】
基材30の空孔率は、電池の充放電時におけるイオン導電性を確保する点で、例えば、30%以上70%以下であることが好ましい。基材30の空孔率は、下記の方法で測定される。
(1)基材30の10箇所を直径2cmの円形に打ち抜き、打ち抜いた基材30の小片の中心部の厚みh、質量wをそれぞれ測定する。
(2)厚みh、質量wから、10枚分の小片の体積V、質量Wを求め、以下の式から空孔率εを算出する。
【0032】
空孔率ε(%)=((ρV-W)/(ρV))×100
ρ:基材を構成する材料の密度
第1フィラー層31は、リン酸塩粒子34を含む多孔質層であって、リン酸塩粒子34同士の間隙にリチウムイオンが通過する空孔が形成される。第1フィラー層31は、充電状態の電池が異常発熱した際に、正極の電位及び熱をきっかけとして溶融して第2フィラー層の空孔に充填され、第2フィラー層内でリン酸塩が重縮合することにより第2フィラー層32の空孔を埋めて正負極間のイオン伝導を遮断する役割を果たす。
【0033】
第1フィラー層31の空孔率は、電池の充放電時において、良好なイオン導電性を確保する点、物理的な強度を確保する点等から、例えば30%以上70%以下が好ましい。第1フィラー層31の空孔率は、下記の式で算出される(第2フィラー層32についても同様)。
【0034】
第1フィラー層の空孔率(%)=100-[[W÷(d×ρ)]×100]
W:第1フィラー層の目付量(g/cm2
d:第1フィラー層の厚み(cm)
ρ:第1フィラー層の平均密度(g/cm3
リン酸塩粒子34としては、Li3PO4、LiPON、Li2HPO4、LiH2PO4、Na3PO4、Na2HPO4、NaH2PO4、Zr3(PO44、Zr(HPO42、HZr2(PO43、K3PO4、K2HPO4、KH2PO4、Ca3(PO42、CaHPO4、Mg3(PO42、MgHPO4等が例示できる。中でも、副反応抑制の等観点から、リン酸リチウム(Li3PO4)、リン酸水素二リチウム(Li2HPO4)、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0035】
一般的に、電池製造時にかかる温度、通常使用時における電池内温度、及び異常時における電池内温度を考慮すれば、リン酸塩粒子34は、140℃~190℃程度の温度で溶融することが好ましい。
【0036】
リン酸塩粒子34のBET比表面積は、5m2/g以上100m2/g以下が好ましく、20m2/g以上100m2/g以下がより好ましい。BET比表面積は、JIS R1626のBET法(窒素吸着法)に従って測定される。上記範囲のBET比表面積を有するリン酸塩粒子34は140℃~190℃程度の温度で溶融し易いため、当該粒子を用いることで、電池の異常発熱時に第2フィラー層32の空孔を迅速に塞ぐことができる。
【0037】
リン酸塩粒子34の平均粒径は、例えば、0.05μm以上2μm以下である。リン酸塩粒子34の平均粒径が上記範囲を満たさない場合、上記範囲を満たす場合と比較して、電池の異常発生時における発熱量が多くなる場合がある。ここで、平均粒径とは、レーザ回折法によって測定される体積平均粒径であって、粒子径分布において体積積算値が50%となるメジアン径を意味する。平均粒径は、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製)を用いて測定される。
【0038】
第1フィラー層31は、リン酸塩粒子34同士を結着する結着材を含む。結着材としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとαオレフィンとの共重合体等のポリオレフィン、PVdF、PTFE、ポリフッ化ビニル(PVF)等の含フッ素樹脂、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等の含フッ素ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体及びその水素化物、メタクリル酸エステル-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル-アクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリN-ビニルアセトアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、セルロース、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリビニルアルコール、CMC、アクリルアミド、PVA、メチルセルロース、グアーガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム及びこれらの塩などが挙げられる。
【0039】
リン酸塩粒子34の含有量は、第2フィラー層32の空孔を塞ぐのに十分な量であることが好ましく、第1フィラー層31の総質量に対して、90質量%以上が好ましく、92質量%以上98質量%以下がより好ましい。第1フィラー層31における結着材の含有量は、例えば2質量%以上8質量%以下である。
【0040】
第1フィラー層31の厚みは、特に制限されないが、1μm以上10μm以下が好ましく、1μm以上5μm以下がより好ましく、2μm以上4μm以下が特に好ましい。電池の発熱量抑制の観点からは、第1フィラー層31の厚みを、リン酸塩粒子34の平均粒径の2倍以上40倍以下とすることが好ましく、3倍以上20倍以下とすることがより好ましい。
【0041】
第1フィラー層31は、さらに、ヘテロポリ酸を含んでいてもよい。ヘテロポリ酸を添加することで、溶融したリン酸塩の重縮合が促進されると考えられる。ヘテロポリ酸としては、リンモリブデン酸、リンタングステン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、リンタングストバナジン酸、ケイタングステン酸、ケイモリブデン酸、ケイモリブドタングステン酸、ケイモリブドタングステントバナジン酸等が例示できる。
【0042】
第2フィラー層32は、融点(耐熱性)の高い無機物粒子35を含む多孔質層であって、無機物粒子35同士の間隙にリチウムイオンが通過する空孔が形成される。第2フィラー層32の空孔率は、第1フィラー層31と同様に、30%以上70%以下が好ましい。第2フィラー層32は、電池の異常発熱により基材30が消失した場合でも層形状を維持する。そして、溶融したリン酸塩粒子34が空孔に充填されることで、正負極間のイオン伝導が遮断される。
【0043】
無機物粒子35は、第1フィラー層31に含まれるリン酸塩粒子34より融点、熱分解温度等が高い粒子であればよいが、好ましくは電池の異常発熱時に溶融、分解しない、絶縁性の無機化合物で構成される。無機物粒子35の一例は、金属酸化物、金属酸化物水和物、金属水酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の粒子である。無機物粒子35の平均粒径は、例えば0.2μm以上2μm以下であることが好ましい。平均粒径が当該範囲を満たさない場合、上記範囲を満たす場合と比較して、異常発熱時における発熱量が多くなる場合がある。
【0044】
金属酸化物、金属酸化物水和物の例としては、酸化アルミニウム、ベーマイト(Al232O又はAlOOH)、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化イットリウム、酸化亜鉛等が挙げられる。金属窒化物の例としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン等が挙げられる。金属炭化物の例としては、炭化ケイ素、炭化ホウ素等が挙げられる。金属硫化物の例としては、硫酸バリウム等が挙げられる。金属水酸化物の例としては、水酸化アルミニウム等が挙げられる。なお、本発明においては、例えばベーマイトのようにアルミナに変性後溶融するような物質の融点は、変性後の物質の融点とする。
【0045】
また、無機物粒子35は、ゼオライト(M2/nO・Al23・xSiO2・yH2O、Mは金属元素、x≧2、y≧0)等の多孔質アルミノケイ酸塩、タルク(Mg3Si410(OH)2)等の層状ケイ酸塩、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)等の粒子であってもよい。中でも、絶縁性、耐熱性等の観点から、酸化アルミニウム、ベーマイト、タルク、酸化チタン、酸化マグネシウムから選択される少なくとも1種が好適である。
【0046】
第2フィラー層32は、無機物粒子35同士を結着する結着材を含む。結着材には、第1フィラー層31と同様の樹脂を用いることができる。無機物粒子35の含有量は、第2フィラー層32の総質量に対して、90質量%以上が好ましく、92質量%以上98質量%以下がより好ましい。第1フィラー層32における結着材の含有量は、例えば2質量%以上8質量%以下である。第2フィラー層32の厚みは、特に制限されないが、1μm以上5μm以下が好ましく、2μm以上4μm以下が特に好ましい。
【0047】
樹脂層33は、第1フィラー層31の表面に形成され、正極11の表面に当接している。樹脂層33は、電池が異常発熱したときに、第1フィラー層31と正極11との密着性を確保する機能を有する。樹脂層33を設けることで、例えば電池の内部短絡による電池内の温度上昇で正極11が変形した場合でも、正極11とセパレータ13との良好な接触状態が確保される。これにより、リン酸塩粒子34の溶融及び重縮合反応が均一に起こり、第2フィラー層32の空孔を十分に塞ぐことができる。
【0048】
樹脂層33は、電極体の加熱プレス成型時、及び/又は充電状態の電池の異常発熱時に溶融又は軟化する樹脂で構成される。樹脂層33は、無機化合物等のフィラーを含有していてもよいが、好ましくは樹脂のみで構成される。樹脂層33は、電極体作製時の加熱プレス成型によって、正極11の表面に接着してもよい。樹脂層33は、電池の通常の使用状態において、正極11の表面に対する接着性を有さず、異常発熱時に当該接着性が発現されてもよい。樹脂層33は、ガラス転移温度が130℃以下の樹脂で構成されることが好適である。樹脂層33には、例えば電極の合材層に用いられる結着材用の樹脂を適用できる。好適な樹脂の例としては、PTFE、PVdF等の含フッ素樹脂、PAN、アクリル樹脂、ポリオレフィン等が挙げられる。
【0049】
樹脂層33の厚みは、特に制限されないが、5μm以下が好ましく、0.5μm以上5μm以下がより好ましく、1μm以上3μm以下が特に好ましい。樹脂層33の厚みが当該範囲内であれば、電池の充放電特性、電池容量等に影響を与えることがなく、また異常発生時に正極11が変形しても、正極11とセパレータ13との良好な接触状態を確保し易くなる。
【0050】
基材30/第2フィラー層32/第1フィラー層31/樹脂層33の層構造を有するセパレータ13は、例えば、多孔質の樹脂基材30の片面に、各フィラー層及び樹脂層33を順に形成して製造される。第2フィラー層32は、無機物粒子35、結着材、及び分散媒を含むスラリー状組成物を準備し、当該組成物を基材30の片面に塗布し、塗膜を乾燥させることで形成できる。第1フィラー層31は、リン酸塩粒子34、結着材、及び分散媒を含むスラリー状組成物を準備し、当該組成物を第2フィラー層32の表面に塗布し、塗膜を乾燥させることで形成できる。また、樹脂層33は、樹脂溶液を第1フィラー層31の表面に塗布し、塗膜を乾燥させることで形成できる。
【0051】
セパレータ13は、上述のように、基材30、第2フィラー層32、第1フィラー層31、及び樹脂層33が、この順に積層された構造を有し、樹脂層33を正極11側に向けた状態で正極11と負極12との間に配置される。各フィラー層及び樹脂層33は、基材30の両面に形成されてもよいが、高容量化等の観点から、好ましくは基材30の正極11側に向いた面のみに形成される。なお、第1フィラー層31に含まれるリン酸塩粒子34の溶融及び重縮合は、電池の異常発生時における熱だけでなく、正極11の電位によっても引き起こされる。このため、各フィラー層が正極11側に配置され、かつ第2フィラー層32よりも第1フィラー層31が正極11の近傍に位置することが好ましい。
【0052】
図3は、セパレータ13の機能を説明するための図である。図3(a)は通常の使用状態におけるセパレータ13等を示し(図2と同じ図)、図3(b)及び(c)は電池が異常発熱したときの状態を示す。
【0053】
図3(a)に示すように、通常の使用状態では正極11は平坦であるが、図3(b)に示すように、電池の内部短絡による異常発生時には正極11が変形する。上記構成を備えたセパレータ13によれば、正極11が変形した場合でも、樹脂層33の機能によって正極11とセパレータ13との良好な接触状態が確保され、これにより第1フィラー層31に含まれるリン酸塩粒子34の溶融及び重縮合反応が均一に起こり易くなる。そして、図3(c)に示すように、溶融したリン酸塩粒子34によって第2フィラー層32の空孔が十分に塞がれ、基材30が消失した場合であっても、十分なシャットダウン機能を維持することができる。セパレータ13によれば、正負極間のイオン伝導を十分に遮断でき、電池の更なる発熱を抑制することが可能となる。
【実施例
【0054】
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
<実験例1>
[セパレータの作製]
下記の手順で、ポリエチレン製の多孔質基材/ベーマイト粒子を含む第2フィラー層/リン酸塩粒子を含む第1フィラー層/樹脂層の層構造を有するセパレータを作製した。
(1)ベーマイト粒子と、ポリN-ビニルアセトアミドとを、100:6.5の質量比で混合し、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を加えて、固形分濃度が15質量%の第1のスラリー状組成物(第2フィラー層形成用)を調製した。
(2)リン酸リチウム粒子(Li3PO4)と、ポリN-ビニルアセトアミドとを、100:6.5の質量比で混合し、NMPを加えて、固形分濃度が15質量%の第2のスラリー状組成物(第1フィラー層形成用)を調製した。
(3)ポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、NMPとを、5:95の質量比で混合して、樹脂溶液(樹脂層形成用)を調製した。
(4)厚み12μmの単層のポリエチレン製多孔質基材片面に、乾燥後の層厚みが2μmとなるようにグラビアコート方式で第1のスラリー状組成物を塗布し、塗膜を乾燥させることで、第2フィラー層を形成した。
(5)第2フィラー層上に、乾燥後の層厚みが2μmとなるようにグラビアコート方式で第2のスラリー状組成物を塗布し、塗膜を乾燥させることで、第1フィラー層を形成した。
(6)第1フィラー層上に、乾燥後の層厚みが5μmとなるようにグラビアコート方式で上記樹脂溶液を塗布し、塗膜を乾燥させることで、樹脂層を形成した。
【0056】
[正極の作製]
平均二次粒子径が約15μmのLi1.05Ni0.82Co0.15Al0.032で表されるリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の粒子を正極活物質粒子として用いた。当該正極活物質と、カーボンブラックと、PVdFとを、100:1:1の質量比で混合し、これにN-メチル-2-ピロリドンを加えて、正極合材スラリーを調製した。次に、正極合材スラリーをアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧延ローラーにより圧延した。こうして、正極集電体の両面に正極合材層が形成された正極を作製した。正極合材層の充填密度は、3.70g/cm3であった。なお、正極の一部に正極合材層が形成されず正極集電体の表面が露出した露出部を設け、当該露出部にアルミニウム製の正極リードを溶接した。
【0057】
[負極の作製]
人造黒鉛と、炭素の被覆層を有するSiOx(x=1)と、CMC-Na(カルボキシメチルセルロースナトリウム)と、SBR(スチレン-ブタジエンゴム)とを、92:8:1:1の質量比で水中において混合し、負極合材スラリーを調製した。次に、負極合材スラリーを銅箔からなる負極集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧延ローラーにより圧延した。こうして、負極集電体の両面に負極合材層が形成された負極を作製した。負極合材層の充填密度は、1.70g/cm3であった。なお、負極の一部に負極合材層が形成されず負極集電体の表面が露出した露出部を設け、当該露出部にニッケル製の負極リードを溶接した。
【0058】
[非水電解質の作製]
エチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)と、ジメチルカーボネート(DMC)とを、3:3:4の体積比で混合した混合溶媒に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1.0モル/リットルの濃度になるように溶解した。さらに、ビニレンカーボネート(VC)を上記混合溶媒に対して1.0質量%の濃度で溶解させ、非水電解液を調製した。
【0059】
[電池の作製]
上記セパレータの樹脂層が正極に当接するように、セパレータを介して上記正極及び上記負極を渦巻き状に巻回した後、80℃で加熱プレス成形して扁平状の巻回型電極体を作製した。アルミラミネートシートで構成される電池外装体内に当該電極体を収容し、上記非水電解質を注入した後、外装体を封止して、650mAhの非水電解質二次電池を作製した。
【0060】
[釘刺し試験]
作製した電池を、25℃の環境下で、0.3Itの定電流で電池電圧が4.2Vになるまで充電を行い、その後、4.2Vの定電圧で電流値が0.05Itになるまで充電を行い、充電状態にした。25℃の環境下で上記充電状態にした電池の側面中央部に、3mmφの丸釘の先端を10mm/秒の速度で垂直に突き刺した。丸釘が完全に電池を貫通した時点で丸釘の突き刺しを停止させ、電池側面部の釘を刺した場所から5mm離れた電池側面部の最高到達温度を測定した。本釘刺し試験により、電池の内部短絡による異常発熱を模擬することができる。
【0061】
<実験例2>
セパレータの作製において、厚みが3μmとなるように樹脂層を形成したこと以外は、実験例1と同様にして電池を作製し、釘刺し試験を実施した。
【0062】
<実験例3>
セパレータの作製において、厚みが1μmとなるように樹脂層を形成したこと以外は、実験例1と同様にして電池を作製し、釘刺し試験を実施した。
【0063】
<実験例4>
セパレータの作製において、厚みが0.5μmとなるように樹脂層を形成したこと以外は、実験例1と同様にして電池を作製し、釘刺し試験を実施した。
【0064】
<実験例5>
セパレータの作製において、リン酸リチウム粒子の代わりに、Li2HPO4で表されるリン酸水素リチウム粒子を用いて第2のスラリー状組成物を調製したこと以外は、実験例3と同様にして電池を作製し、釘刺し試験を実施した。
【0065】
<実験例6>
セパレータの作製において、第2フィラー層を形成しなかったこと以外は、実験例3と同様にして電池を作製し、釘刺し試験を実施した。
【0066】
<実験例7>
セパレータの作製において、第1フィラー層を形成しなかったこと以外は、実験例3と同様にして電池を作製し、釘刺し試験を実施した。
【0067】
<実験例8>
セパレータの作製において、第1のスラリー状組成物と、第2のスラリー状組成物とを、50:50の質量比で混合したものを、乾燥後の層厚みが2μmとなるようにポリエチレン製多孔質基材片面に塗布し、リン酸リチウム粒子及びベーマイト粒子が同一層内に混在した層を形成したこと以外は、実験例3と同様にして電池を作製し、釘刺し試験を実施した。
【0068】
<実験例9>
セパレータの作製において、樹脂層を形成しなかったこと以外は、実験例1と同様にして電池を作製し、釘刺し試験を実施した。
【0069】
【表1】
【0070】
表1から、多孔質樹脂基材の正極側に向いた面に、第2フィラー層/第1フィラー層/樹脂層を有するセパレータを用いた実験例1~5の電池では、実験例6~9の電池と比べて、釘刺し試験における最高到達温度が大幅に低下していることが分かる。特に、樹脂層の厚みが1μm~3μmである場合(実験例2,3)に、発熱量の抑制効果が顕著である。また、第1フィラー層のリン酸塩粒子として、Li2HPO4を添加した場合(実験例5)、Li3PO4を添加した場合よりも発熱抑制効果が向上した。なお、実験例6,7,9の結果から分かるように、第1フィラー層、第2フィラー層、樹脂層のいずれか1つが存在しない場合、発熱抑制効果は得られず、また第2フィラー層/第1フィラー層の代わりに、Li3PO4とベーマイト粒子の混在層を形成しても発熱抑制効果は得られなかった(実験例8)。
【符号の説明】
【0071】
10 非水電解質二次電池
11 正極
12 負極
13 セパレータ
14 電極体
15 電池ケース
16 外装缶
17 封口体
18,19 絶縁板
20 正極リード
21 負極リード
22 張り出し部
23 フィルタ
24 下弁体
25 絶縁部材
26 上弁体
27 キャップ
28 ガスケット
30 基材
31 第1フィラー層
32 第2フィラー層
33 樹脂層
34 リン酸塩粒子
35 無機物粒子
図1
図2
図3