(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイおよびヘッドアップディスプレイを搭載した移動体
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20221209BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20221209BHJP
G02B 17/08 20060101ALI20221209BHJP
G02B 17/00 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
G02B17/08 A
G02B17/00 A
(21)【出願番号】P 2020527196
(86)(22)【出願日】2019-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2019007250
(87)【国際公開番号】W WO2020003611
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2018122314
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】葛原 聡
(72)【発明者】
【氏名】岡山 裕昭
【審査官】外山 未琴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/066062(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を虚像として観察者に表示するヘッドアップディスプレイであって、
前記ヘッドアップディスプレイは、前記画像を表示する表示デバイスと、前記画像を拡大して投影する投射光学系と、を有し、
前記投射光学系は、前記画像からの光路の順に、第1光学素子、および第2光学素子を有し、
前記第1光学素子は、垂直方向よりも水平方向の発散作用が大きく、
前記第2光学素子は、垂直方向よりも水平方向の収束作用が大きく、
前記第1光学素子と前記第2光学素子の合成パワーは、水平方向よりも垂直方向の方が大きく、
前記虚像は、下端が前記観察者に近く、上端が前記観察者に遠くなるように、前記観察者の視線に対して45度以上傾斜している、
ヘッドアップディスプレイ。
【請求項2】
前記虚像の水平視野角をXF、前記虚像の垂直視野角をYF、前記画像の横表示サイズをXI、および前記画像の縦表示サイズをYIとする時、以下の条件式(3)、
0.62<(XI×YF)/(YI×XF)<0.90・・・(3)
を満足する、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項3】
前記表示デバイスは、前記虚像の下端を表示する下端側が前記投
射光学系に近づくように、前記投射光学系の基準光線に対して所定の角度で傾斜している、
請求項1または請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項4】
前記第1光学素子の水平方向のパワーをP1X、前記第1光学素子の垂直方向のパワーをP1Yとするとき、以下の条件式(1)、
1.0<P1X/P1Y<1.5・・・(1)
を満足する、
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項5】
前記第2光学素子の水平方向のパワーをP2X、前記第2光学素子の垂直方向のパワーをP2Yとするとき、以下の条件式(2)、
1.0<P2X/P2Y<2.0・・・(2)
を満足する、
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項6】
前記第1光学素子は自由曲面レンズである、
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項7】
前記第1光学素子は自由曲面ミラーである、
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項8】
前記第1光学素子は発散作用を有する、
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項9】
前記虚像は、前方の路面に沿って表示される、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイを搭載した移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドアップディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ヘッドアップディスプレイにおいて、立体的に配置された第1および第2の虚像がそれぞれ独立していることを運転者に正しく認識させるため、第1の虚像を第2の虚像に比べて大きく傾ける技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように、ヘッドアップディスプレイにおいて虚像を傾けると、画像を表示する表示デバイスの縦方向の使用領域が広がってしまい、表示デバイスのサイズが大きくなってしまうという問題があった。また、表示デバイスの縦方向のサイズを単に短くするだけでは、光学の収差特性的に限界があり、良質な画質の虚像を提示することができない。そこで、本開示は、小型でありながら、良好な画質の虚像を提示することができるヘッドアップディスプレイを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のヘッドアップディスプレイは、
画像を虚像として観察者に表示するヘッドアップディスプレイであって、
前記ヘッドアップディスプレイは、前記画像を表示する表示デバイスと、前記画像を拡大して投影する投射光学系と、を有し、
前記投射光学系は、前記画像からの光路の順に、第1光学素子、および第2光学素子を有し、
前記第1光学素子は、垂直方向よりも水平方向の発散作用が大きく、
前記第2光学素子は、垂直方向よりも水平方向の収束作用が大きい。
【発明の効果】
【0006】
本開示におけるヘッドアップディスプレイは、表示デバイスの画像サイズは、焦点距離が短い垂直方向において小さく、焦点距離が長い水平方向において大きくすることができる。したがって、虚像を観察者の視線に対して傾けた場合でも、表示デバイスの垂直方向のサイズを大きくすることを防止し、表示デバイスの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態1におけるヘッドアップディスプレイを搭載した車両の断面を示す図
【
図2】実施の形態1におけるヘッドアップディスプレイの構成を示す模式図
【
図3】(A)は実施の形態1におけるヘッドアップディスプレイの投射光学系を説明するための模式図、(B)は実施の形態1における表示デバイスの画像サイズを説明するための模式図である。
【
図4】実施の形態2におけるヘッドアップディスプレイの表示デバイスおよび投射光学系の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、発明者(ら)は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0009】
(実施の形態1)
以下、
図1~3を用いて、実施の形態1を説明する。
[1-1.構成]
[1-1-1. ヘッドアップディスプレイの全体構成]
本開示のヘッドアップディスプレイ100の具体的な実施の形態及び実施例を、図面を参照して、以下、説明する。
図1は、本開示に係るヘッドアップディスプレイ100を搭載した車両200の断面を示す図である。
図1に示すように、ヘッドアップディスプレイ100は、車両200のウインドシールド220下部のダッシュボード210内部に配置される。観察者Dは、ヘッドアップディスプレイ100から投射される画像を虚像Iとして認識する。
【0010】
本実施の形態においては、虚像Iは、路面Rに沿って表示させる。このように、虚像Iを路面Rに沿って表示させることにより、奥行き感のある自然なAR(Augmented Reality)表示を実現させることができ、ドライバーの認識力をアップさせることができる。
【0011】
図2は、本実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ100の構成を示す模式図である。
図3(A)は、本実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ100の投射光学系を説明するための模式図、
図3(B)は、表示デバイス110のサイズを説明するための模式図である。
【0012】
図2に示すように、ヘッドアップディスプレイ100は、表示デバイス110と、投射光学系140と、を備える。ヘッドアップディスプレイ100は、表示デバイス110が拡散特性を有する光学部材となっており、表示デバイス110に表示する画像を投射光学系140を介してウインドシールド220に投射する。投射された光は、ウインドシールド220において反射され、観察者Dの視点領域300に導かれる。これにより、ヘッドアップディスプレイ100は、観察者Dに虚像Iを視認させる。ここで、視点とは、観察者Dの目をレンズと考えた場合の主点であり、視点領域300とは、虚像Iを欠けることなく視認できる、観察者Dの視点の位置する領域である。
【0013】
ここで、本開示において、前方とは、観察者Dから見て車両200のウインドシールド220のある方向である。後方とは、前方の反対の方向である。また、下方とは車両200が走行する路面Rの方向である。上方とは、下方の反対の方向である。内側とは、運転席の観察者Dから見て助手席側である。外側とは、内側の反対方向である。
【0014】
図2に示すように、表示デバイス110から出射し、視点領域300の中心に到達する光線のうち、虚像Iの上端I_uに相当する光線を上光線Luとし、虚像Iの上端I_lに相当する光線を下光線Llとする。また、表示デバイス110から出射する光線のうち、虚像Iの中心部を通り、視点領域300の中心に到達する光線を基準光線Lcとする。すなわち、観察者Dから見た場合、基準光線Lcは、虚像Iの中心から観察者Dの視点までの光路に相当する。観察者Dが視認する基準光線Lcは、実際には表示デバイス110から光学系を経て観察者Dに到達したものである。そのため、虚像Iの中心から出射する基準光線Lcに対応する、表示デバイス110から観察者Dに到達するまでの光線も基準光線Lcと表現される。また、これらの光線に対応する光路も同様に基準光線Lcと表現される。ただし、観察者Dの視点が視点領域300の中心にあるものとする。
【0015】
表示デバイス110は、図示しないCPU等の制御部による制御に基づき、表示画像を表示する。表示デバイス110には、例えば、バックライト付きの液晶表示装置(Liquid Crystal Display)や有機発光ダイオード(Organic Light-Emitting Diode)、プラズマディスプレイなどを用いることができる。また、表示デバイス110として、光を拡散または反射するスクリーンと、プロジェクタや走査型レーザを用いて画像を生成してもよい。表示デバイス110は、道路進行案内表示や、前方車両までの距離、車のバッテリー残量、現在の車速など、各種の情報を表示することができる。また、表示デバイス110は、投射光学系140やウインドシールド220で発生する歪みや、図示を省略するカメラで取得する観察者Dの位置に応じて、あらかじめ画像を電子的に歪ませておくことで、観察者Dに良好な虚像Iを視認させることができる。また、表示デバイス110は、投射光学系140で発生する色収差に応じて、あらかじめ複数波長の表示画素を表示位置毎にずらして表示することで、観察者Dに良好な虚像Iを視認させることができる。
【0016】
投射光学系140は、負のパワーを有する第1光学素子としての自由曲面レンズ123と、正のパワーを有する第2光学素子としての自由曲面ミラー125とを備える。ここで、負のパワーとは発散作用を意味し、正のパワーとは収束作用を意味する。投射光学系140は、自由曲面レンズ123によって拡大された画像を、自由曲面ミラー125を介して反射することにより、ウインドシールド220に投射する。
【0017】
本実施の形態においては、虚像Iは、観察者Dの視線に対して傾斜しており、路面Rに沿って表示される。このように虚像Iを傾斜して表示するため、表示デバイス110は、
図2に示すように、基準光線Lcに対して反時計回り方向に角度|θ
1|傾けて配置されている。
【0018】
[1-1-2.投射光学系の構成]
投射光学系140は、表示デバイス110からの光路の順に、負のパワーを有する自由曲面レンズ123と、正のパワーを有する自由曲面ミラー125とが配置されている。投射光学系140は、自由曲面レンズ123と自由曲面ミラー125とにより、テレフォト型と呼ばれる光学系になっている。
【0019】
本実施形態においては、自由曲面レンズ123は、
図3(A)に点線で示す垂直方向よりも、二点鎖線で示す水平方向の発散作用が大きくなるように設計されている。また、自由曲面ミラー125は、
図3(A)に点線で示す垂直方向よりも、二点鎖線で示す水平方向の収束作用が大きくなるように設計されている。
【0020】
このように構成することにより、垂直方向においては、自由曲面レンズ123と自由曲面ミラー125とによるテレフォト作用が小さくなり、短焦点となるので、合成パワーを大きくすることができる。そのため、倍率が上がり、表示デバイス110に表示される画像の垂直方向のサイズを小さくすることができる。また、水平方向においては、自由曲面レンズ123と自由曲面ミラー125とによるテレフォト作用が大きくなり、長焦点となるので、合成パワーを小さくすることができる。そのため、倍率が下がり、表示デバイス110に表示される画像の水平方向のサイズを大きくすることができる。
【0021】
自由曲面レンズ123の水平方向のパワーをP1X、自由曲面レンズ123の垂直方向のパワーをP1Yとするとき、自由曲面レンズ123は、以下の条件式(1)を満足するように設計されている。
【0022】
1.0<P1X/P1Y<1.5・・・(1)
【0023】
また、自由曲面ミラー125の水平方向のパワーをP2X、自由曲面ミラー125の垂直方向のパワーをP2Yとするとき、自由曲面ミラー125は、以下の条件式(2)を満足するように設計されている。
【0024】
1.0<P2X/P2Y<2.0・・・(2)
【0025】
以上のような投射光学系140を用いることにより、
図3(B)に示すように、表示デバイス110の画像サイズは、焦点距離が短い垂直方向において小さく、焦点距離が長い水平方向において大きくすることができる。したがって、虚像Iを観察者Dの視線に対して傾けた場合でも、表示デバイス110の垂直方向のサイズを大きくすることを防止し、表示デバイス110の小型化を図ることができる。ここで、虚像Iを観察者Dの視線に対して傾けた状態とは、
図2に示すように表示デバイス110を基準光線Lcに対して反時計回り方向に角度|θ
1|だけ傾けた状態である。
【0026】
本実施の形態においては、表示デバイス110により表示される画像のサイズと、視野角との関係は、以下のように設定されている。
【0027】
本実施の形態における虚像Iの水平視野角をXF、虚像の垂直視野角をYF、表示デバイス110における画像の横表示サイズをXI、および表示デバイス110における画像の縦表示サイズをYIとする時、以下の条件式(3)を満足する。
【0028】
0.62<(XI×YF)/(YI×XF)<0.90・・・(3)
【0029】
視野角が持つアスペクト比を、XF/YFで表し、表示画像のアスペクト比を、XI/YIで表した時、上記条件式(3)は、視野角が持つアスペクト比に対する表示画像のアスペクト比の比として表される。以降、「アスペクト比の比」と表現する。
【0030】
上述したように、本実施の形態の投射光学系140では、垂直方向と水平方向とで焦点距離の差が出る。アスペクト比の比における上限は、1にすることは望ましいが、アスペクト比の比を1に近づける程、垂直方向と水平方向との焦点距離の差が大きくなり、収差特性的な限界に達する。具体的には、アスペクト比の比が大きくなると、偏心非点収差の影響が大きくなる。そこで、本実施の形態においては、上記比の上限を0.90に設定し、良好な画質の虚像を提示することを可能としている。
【0031】
また、アスペクト比の比が小さくなると、表示デバイス110が大型化する。そこで、本実施の形態においては、アスペクト比の比の下限を0.62に設定し、表示デバイス110が大型化の抑制を可能としている。
【0032】
このように、本実施の形態における投射光学系140は、自由曲面レンズ123は、垂直方向よりも水平方向の発散作用が大きく、自由曲面ミラー125は、垂直方向よりも水平方向の収束作用が大きくなるように構成した。その結果、表示デバイス110を基準光線Lcに対して傾斜角|θ1|で傾斜させた場合でも、小型でありながら、良好な画質の虚像Iを提示することができるヘッドアップディスプレイ100を提供することが可能となる。
【0033】
[1-2.効果等]
実施の形態1に係るヘッドアップディスプレイの一例としてのヘッドアップディスプレイ100は、画像を虚像Iとして観察者Dに表示する。ヘッドアップディスプレイ100は、画像を表示する表示デバイス110と、画像を拡大して投影する投射光学系140とを有する。投射光学系140は、画像からの光路の順に、自由曲面レンズ123、および自由曲面ミラー125を有し、自由曲面レンズ123は、垂直方向よりも水平方向の発散作用が大きく、自由曲面ミラー125は、垂直方向よりも水平方向の収束作用が大きい。
【0034】
実施の形態1に係るヘッドアップディスプレイ100によれば、表示デバイス110の画像サイズは、焦点距離が短い垂直方向において小さく、焦点距離が長い水平方向において大きくすることができる。したがって、虚像Iを観察者Dの視線に対して傾けた場合でも、表示デバイス110の垂直方向のサイズを大きくすることを防止し、表示デバイス110の小型化を図ることができる。
【0035】
(実施の形態2)
次に、
図4を用いて、実施の形態2を説明する。
[2-1.構成]
図4は、実施の形態2に係るヘッドアップディスプレイ100における表示デバイス110および投射光学系140の構成を示す図である。
図4に示すように、本実施の形態のヘッドアップディスプレイ100においては、第1光学素子として、自由曲面レンズ123の代わりに、自由曲面ミラー124を備える。
【0036】
本実施の形態においても、自由曲面ミラー124は、垂直方向よりも水平方向の発散作用が大きくなるように設計されている。また、自由曲面ミラー125は、実施の形態1と同様に、垂直方向よりも、二点鎖線で示す水平方向の収束作用が大きくなるように設計されている。
【0037】
このように構成することにより、垂直方向においては、自由曲面ミラー124と自由曲面ミラー125とによるテレフォト作用が小さくなり、短焦点となるので、合成パワーを大きくすることができる。そのため、倍率が上がり、表示デバイス110に表示される画像の垂直方向のサイズを小さくすることができる。また、水平方向においては、自由曲面ミラー124と自由曲面ミラー125とによるテレフォト作用が大きくなり、長焦点となるので、合成パワーを小さくすることができる。そのため、倍率が下がり、表示デバイス110に表示される画像の水平方向のサイズを大きくすることができる。
【0038】
本実施の形態においても、自由曲面ミラー124の水平方向のパワーをP1X’、自由曲面ミラー124の垂直方向のパワーをP1Y’とするとき、自由曲面ミラー124は、以下の条件式(1)’を満足するように設計されている。
【0039】
1.0<P1X’/P1Y’<1.5・・・(1)’
【0040】
また、自由曲面ミラー125の水平方向のパワーをP2X、自由曲面ミラー125の垂直方向のパワーをP2Yとするとき、自由曲面ミラー125は、以下の条件式(2)を満足するように設計されている。
【0041】
1.0<P2X/P2Y<2.0・・・(2)
【0042】
以上のような投射光学系140を用いることにより、表示デバイス110の画像サイズは、焦点距離が短い垂直方向において小さく、焦点距離が長い水平方向において大きくすることができる。したがって、虚像Iを観察者Dの視線に対して傾けた場合でも、表示デバイス110の垂直方向のサイズを大きくすることを防止し、表示デバイス110の小型化を図ることができる。
【0043】
また、本実施の形態においても、表示デバイス110により表示される画像のサイズと、視野角との関係は、以下のように設定されている。
【0044】
本実施の形態における虚像の水平視野角をXF、虚像の垂直視野角をYF、表示デバイス110における画像の横表示サイズをXI、および表示デバイス110における画像の縦表示サイズをYIとする時、以下の条件式(3)を満足する。
【0045】
0.62<(XI×YF)/(YI×XF)<0.90・・・(3)
【0046】
視野角が持つアスペクト比を、XF/YFで表し、表示画像のアスペクト比を、XI/YIで表した時、上記条件式は、視野角が持つアスペクト比に対する表示画像のアスペクト比の比として表される。以降、「アスペクト比の比」と表現する。
【0047】
上述したように、本実施の形態の投射光学系140では、垂直方向と水平方向とで焦点距離の差が出る。アスペクト比の比における上限は、1にすることは望ましいが、アスペクト比の比を1に近づける程、垂直方向と水平方向との焦点距離の差が大きくなり、収差特性的な限界に達する。具体的には、アスペクト比の比が大きくなると、偏心非点収差の影響が大きくなる。そこで、本実施の形態においては、上記比の上限を0.90に設定し、良好な画質の虚像を提示することを可能としている。
【0048】
また、アスペクト比の比が小さくなると、表示デバイス110が大型化する。そこで、本実施の形態においては、アスペクト比の比の下限を0.62に設定し、表示デバイス110が大型化の抑制を可能としている。
【0049】
このように、本実施の形態における投射光学系140は、自由曲面ミラー124は、垂直方向よりも水平方向の発散作用が大きく、自由曲面ミラー125は、垂直方向よりも水平方向の収束作用が大きくなるように構成した。その結果、虚像Iを観察者Dの視線に対して傾斜させた場合でも、小型でありながら、良好な画質の虚像を提示することができるヘッドアップディスプレイ100を提供することが可能となる。
【0050】
[2-2. 効果等]
実施の形態2に係るヘッドアップディスプレイの一例としてのヘッドアップディスプレイ100は、画像を虚像Iとして観察者Dに表示する。ヘッドアップディスプレイ100は、画像を表示する表示デバイス110と、画像を拡大して投影する投射光学系140とを有する。投射光学系140は、画像からの光路の順に、自由曲面ミラー124、および自由曲面ミラー125を有し、自由曲面ミラー124は、垂直方向よりも水平方向の発散作用が大きく、自由曲面ミラー125は、垂直方向よりも水平方向の収束作用が大きい。
【0051】
実施の形態2に係るヘッドアップディスプレイ100によれば、表示デバイス110の画像サイズは、焦点距離が短い垂直方向において小さく、焦点距離が長い水平方向において大きくすることができる。したがって虚像Iを観察者Dの視線に対して傾けた場合でも、表示デバイス110の垂直方向のサイズを大きくすることを防止し、表示デバイス110の小型化を図ることができる。
【0052】
実施の形態1、2では、虚像Iは路面Rに沿って表示させているが、観察者Dの視線に対して45度以上傾けることでも奥行き感を表現することができる。
【0053】
(実施形態の概要)
(1)本開示のヘッドアップディスプレイは、画像を虚像として観察者に表示するヘッドアップディスプレイであって、前記ヘッドアップディスプレイは、前記画像を表示する表示デバイスと、前記画像を拡大して投影する投射光学系と、を有し、前記投射光学系は、前記画像からの光路の順に、第1光学素子、および第2光学素子を有し、前記第1光学素子は、垂直方向よりも水平方向の発散作用が大きく、前記第2光学素子は、垂直方向よりも水平方向の収束作用が大きい。
【0054】
本開示のヘッドアップディスプレイによれば、表示デバイスの画像サイズは、焦点距離が短い垂直方向において小さく、焦点距離が長い水平方向において大きくすることができる。したがって、虚像を観察者の視線に対して傾けた場合でも、表示デバイスの垂直方向のサイズを大きくすることを防止し、表示デバイスの小型化を図ることができる。
【0055】
(2)(1)のヘッドアップディスプレイにおいて、前記虚像の水平視野角をXF、前記虚像の垂直視野角をYF、前記画像の横表示サイズをXI、および前記画像の縦表示サイズをYIとする時、以下の条件式(3)、
0.62<(XI×YF)/(YI×XF)<0.90・・・(3)
を満足する。したがって、虚像を観察者の視線に対して傾斜させた場合でも、小型でありながら、良好な画質の虚像を提示することができるヘッドアップディスプレイを提供することが可能となる。
【0056】
(3)(1)または(2)のヘッドアップディスプレイにおいて、前記第1光学素子と前記第2光学素子の合成パワーは、水平方向よりも垂直方向の方が大きい。したがって、虚像を観察者の視線に対して傾斜させた場合でも、表示デバイスの垂直方向のサイズを大きくすることを防止し、表示デバイスの小型化を図ることができる。
【0057】
(4)(1)ないし(3)のいずれか一のヘッドアップディスプレイにおいて、前記第1光学素子の水平方向のパワーをP1X、前記第1光学素子の垂直方向のパワーをP1Yとするとき、以下の条件式(1)、
1.0<P1X/P1Y<1.5・・・(1)
を満足する。したがって、虚像を観察者の視線に対して傾斜させた場合でも、表示デバイスの垂直方向のサイズを大きくすることを防止し、表示デバイスの小型化を図ることができる。
【0058】
(5)(1)ないし(3)のヘッドアップディスプレイにおいて、前記第2光学素子の水平方向のパワーをP2X、前記第2光学素子の垂直方向のパワーをP2Yとするとき、以下の条件式(2)、
1.0<P2X/P2Y<2.0・・・(2)
を満足する。したがって、虚像を観察者の視線に対して傾斜させた場合でも、表示デバイスの垂直方向のサイズを大きくすることを防止し、表示デバイスの小型化を図ることができる。
【0059】
(6)(1)ないし(5)のヘッドアップディスプレイにおいて、前記第1光学素子は自由曲面レンズである。したがって、第1光学素子の発散作用を垂直方向よりも水平方向において大きくすることができ、虚像を観察者の視線に対して傾斜させた場合でも、表示デバイスの垂直方向のサイズを大きくすることを防止し、表示デバイスの小型化を図ることができる。
【0060】
(7)(1)ないし(5)のヘッドアップディスプレイにおいて、前記第1光学素子は自由曲面ミラーである。したがって、第1光学素子の発散作用を垂直方向よりも水平方向において大きくすることができ、表虚像を観察者の視線に対して傾斜させた場合でも、表示デバイスの垂直方向のサイズを大きくすることを防止し、表示デバイスの小型化を図ることができる。
【0061】
(8)(1)ないし(7)のヘッドアップディスプレイにおいて、前記第1光学素子は発散作用を有する。したがって、第1光学素子の発散作用を垂直方向よりも水平方向において大きくすることができ、虚像を観察者の視線に対して傾斜させた場合でも、表示デバイスの垂直方向のサイズを大きくすることを防止し、表示デバイスの小型化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本開示は、液晶ディスプレイ等の表示デバイス、および自由曲面レンズまたは自由曲面ミラー等の投射光学系を用いたヘッドアップディスプレイに適用可能である。具体的には、車両用などのヘッドアップディスプレイに、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
100 ヘッドアップディスプレイ
110 表示デバイス
111 表示画像
123 自由曲面レンズ
124 自由曲面ミラー
125 自由曲面ミラー
140 投射光学系
200 車両
210 ダッシュボード
220 ウインドシールド
300 視点領域
D 観察者
I 虚像
R 路面
Lc 基準光線
Lu 上光線
Ll 下光線