(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】冷却装置、プロジェクタ、および、受熱ユニット
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20221209BHJP
【FI】
F28D15/02 102A
F28D15/02 101L
(21)【出願番号】P 2018177740
(22)【出願日】2018-09-21
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】伊豫田 真
(72)【発明者】
【氏名】宮本 康広
(72)【発明者】
【氏名】鹿野 一郎
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/203847(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0359133(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/00-15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体から熱を受け取る受熱ユニットと、前記受熱ユニットが受け取った熱を輸送する作動流体と、前記受熱ユニットからの作動流体を冷却する放熱器と、前記放熱器から放出された前記作動流体を、前記受熱ユニットへ送るためのポンプとを備える冷却装置であって、
前記受熱ユニットは、
発熱体から熱を受け、前記作動流体を気化させる有底筒状の第一部材と、
前記第一部材との間に所定の隙間を設けて前記第一部材の内方に配置され、
前記第一部材の内周面に対向する周部、および底部に複数の貫通孔が形成される
前記第一部材の内部形状に沿った有底筒状の第二部材と、
前記第一部材と前記第二部材との間に形成される気化空間に前記作動流体を導入するための流入口と、
前記貫通孔を通過して前記第二部材内方に流入した前記作動流体を排出するための流出口と、
導電材料からなる前記第一部材、および導電材料からなる前記第二部材に対して電圧を印加する印加部と
を備える冷却装置。
【請求項2】
前記気化空間は、
毛細管現象により前記作動流体を流入させることができる幅である
請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
レーザー光を放射するレーザー光源と、
前記レーザー光に基づき像を投射する投射部と、
前記レーザー光源を冷却する冷却部と、
を備えるプロジェクタであって、
前記冷却部は、
前記レーザー光源から熱を受け取る受熱ユニットと、
前記受熱ユニットが受け取った熱を輸送する作動流体と、
前記受熱ユニットからの作動流体を冷却する放熱器と、
前記放熱器から放出された前記作動流体を、前記受熱ユニットへ送るためのポンプと、
を備える冷却装置であって、
前記受熱ユニットは、
発熱体から熱を受け、前記作動流体を気化させる有底筒状の第一部材と、
前記第一部材との間に所定の隙間を設けて前記第一部材の内方に配置され、
前記第一部材の内周面に対向する周部、および底部に複数の貫通孔が形成される
前記第一部材の内部形状に沿った有底筒状の第二部材と、
前記第一部材と前記第二部材との間に形成される気化空間に前記作動流体を導入するための流入口と、
前記貫通孔を通過して前記第二部材内方に流入した前記作動流体を排出するための流出口と、
導電材料からなる前記第一部材、および導電材料からなる前記第二部材に対して電圧を印加する印加部と
を備えるプロジェクタ。
【請求項4】
前記気化空間は、
毛細管現象により前記作動流体を流入させることができる幅である
請求項3に記載のプロジェクタ。
【請求項5】
ポンプに接続され作動流体を用いて発熱体を冷却する受熱ユニットであって、
発熱体から熱を受け、前記作動流体を気化させる有底筒状の導電部材からなる第一部材と、
前記第一部材との間に所定の隙間を設けて前記第一部材の内方に配置され、
前記第一部材の内周面に対向する周部、および底部に複数の貫通孔が形成される
前記第一部材の内部形状に沿った有底筒状の導電部材からなる第二部材と、
前記第一部材と前記第二部材との間に形成される気化空間に前記作動流体を導入するための流入口と、
前記貫通孔を通過して前記第二部材内方に流入した前記作動流体を排出するための流出口と
を備える受熱ユニット。
【請求項6】
前記気化空間は、
毛細管現象により前記作動流体を流入させることができる幅である
請求項5に記載の受熱ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザー発振している半導体などの発熱体を冷却するのに用いられる冷却装置、および、前記冷却装置を備えたプロジェクタ、当該冷却装置に用いられる受熱ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器などにおいては、CPUなどの発熱体にヒートシンクを取り付け、ファンによって発生する空気をヒートシンクに当てることによって発熱体を冷却する空冷方式の冷却装置がある。また、発熱体の熱を受熱して温度が上昇した作動流体を放熱器により冷却し、冷却された作動流体を再び受熱する部分に戻す水冷方式の冷却装置が存在している。
【0003】
また、高機能化や高出力化等が図られた電子機器が備える高発熱量の発熱体に対しては空冷方式や単純な水冷方式では能力不足の場合があるため、特許文献1に記載の冷却装置のように、作動流体が液相から気相に変化する気化潜熱を利用して発熱体を高い効率で冷却することができる気化潜熱を利用した冷却装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、複数のレーザー光を同時に放射することのできるレーザー光源を用い、高輝度の光によっていろいろな方向に像を投射するプロジェクションマッピングに用いられるプロジェクタなどにおいては、どのような姿勢にプロジェクタを配置しても高い冷却効率を維持することができる冷却装置が望まれている。
【0006】
以下、姿勢によらず高い冷却効率を発揮することができる冷却装置、当該冷却装置に用いられる受熱ユニット、および、前記冷却装置を備えたプロジェクタを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる冷却装置は、発熱体から熱を受け取る受熱ユニットと、前記受熱ユニットが受け取った熱を輸送する作動流体と、前記受熱ユニットからの作動流体を冷却する放熱器と、前記放熱器から放出された前記作動流体を、前記受熱ユニットへ送るためのポンプとを備える冷却装置であって、前記受熱ユニットは、発熱体から熱を受け、前記作動流体を気化させる有底筒状の第一部材と、前記第一部材との間に所定の隙間を設けて前記第一部材の内方に配置され、底部に複数の貫通孔が形成される有底筒状の第二部材と、前記第一部材と前記第二部材との間に形成される気化空間に前記作動流体を導入するための流入口と、前記貫通孔を通過して前記第二部材内方に流入した前記作動流体を排出するための流出口と、導電材料からなる前記第一部材、および導電材料からなる前記第二部材に対して電圧を印加する印加部とを備える。
【0008】
また、本開示に係るプロジェクタは、レーザー光を放射するレーザー光源と、前記レーザー光に基づき像を投射する投射部と、前記レーザー光源を冷却する冷却部とを備えるプロジェクタであって、前記冷却部は、前記レーザー光源から熱を受け取る受熱ユニットと、前記受熱ユニットが受け取った熱を輸送する作動流体と、前記受熱ユニットからの作動流体を冷却する放熱器と、前記放熱器から放出された前記作動流体を、前記受熱ユニットへ送るためのポンプと、を備える冷却装置であって、前記受熱ユニットは、発熱体から熱を受け、前記作動流体を気化させる有底筒状の第一部材と、前記第一部材との間に所定の隙間を設けて前記第一部材の内方に配置され、底部に複数の貫通孔が形成される有底筒状の第二部材と、前記第一部材と前記第二部材との間に形成される気化空間に前記作動流体を導入するための流入口と、前記貫通孔を通過して前記第二部材内方に流入した前記作動流体を排出するための流出口と、導電材料からなる前記第一部材、および導電材料からなる前記第二部材に対して電圧を印加する印加部とを備えるプロジェクタ。
【0009】
また、本開示に係る受熱ユニットは、ポンプに接続され作動流体を用いて発熱体を冷却する受熱ユニットであって、発熱体から熱を受け、前記作動流体を気化させる有底筒状の導電部材からなる第一部材と、前記第一部材との間に所定の隙間を設けて前記第一部材の内方に配置され、底部に複数の貫通孔が形成される有底筒状の導電部材からなる第二部材と、前記第一部材と前記第二部材との間に形成される気化空間に前記作動流体を導入するための流入口と、前記貫通孔を通過して前記第二部材内方に流入した前記作動流体を排出するための流出口とを備える。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本開示の冷却装置、プロジェクタ、および、受熱ユニットは、姿勢によらず高い冷却効率を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態1にかかる冷却装置の回路構成を示す図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1にかかる受熱ユニットの外観を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1にかかる受熱ユニットの外観を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1にかかる受熱ユニットを分解して示す斜視図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1にかかる受熱ユニットを示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1にかかる姿勢が逆の受熱ユニットを示す断面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態2にかかるプロジェクタの内部を、一部を切り欠いて示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本開示に係る冷却装置、当該冷却装置に用いられる受熱ユニットの実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本開示に係る冷却装置、当該冷却装置に用いられる受熱ユニットの一例を示したものに過ぎない。従って本開示は、以下の実施の形態を参考に請求の範囲の文言によって範囲が画定されるものであり、以下の実施の形態のみに限定されるものではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。
【0013】
また、図面は、本開示を示すために適宜強調や省略、比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状や位置関係、比率とは異なる場合がある。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、冷却装置の回路構成を示す図である。
【0015】
同図に示すように、冷却装置100は、発熱体200から発せられる熱を所定の場所で放熱させることにより発熱体200を冷却するシステムであって、受熱ユニット101と、放熱器102と、ポンプ103と、作動流体を案内する管部材104とを備えている。
【0016】
ここで作動流体とは、熱を輸送するための流体であり、本明細書、および、特許請求の範囲において、液体、気体、および、液体と気体とが混ざった状態の流体も含むものとして用いている。
【0017】
放熱器102は、内部に流通する作動流体と外部に接触する流体との間で熱を交換する熱交換器である。また、放熱器102の内部では気化した作動流体が液化するため、放熱器102は、凝縮器としても機能している。
【0018】
本実施の形態の場合、放熱器102は、所定の間隔で配置される複数の細管(図示せず)と、細管の間に空気を流通させるファン121とを備えており、分岐して細管内部に流れる作動流体と空気との間で熱交換することにより、作動流体を冷却し気化した作動流体を液化する機能を備えている。なお、作動流体を分岐させずに熱交換してもよい。
【0019】
ポンプ103は、放熱器102から受熱ユニット101へ管部材104を介して作動流体を強制的に送る為の装置である。なお、ポンプ103は、管部材104に備えられており、
図1においては放熱器102から受熱ユニット101へ作動流体を送るための部分に備えているが、受熱ユニット101から放熱器102へ作動流体を戻すための部分に備えてもよい。ポンプ103の能力は、特に制限されるものではなく、発熱体200の発熱量や放熱器102の能力などに基づき決定される。一例を挙示すると、発熱体200が、プロジェクタに備えられるレーザー光源の場合、ポンプ103の能力は、例えば5ml/min以上、200ml/min以下の範囲から選定される。5ml/min未満では冷却能力が不足することになるためである。一方、200ml/minより早いと作動流体の気化を抑制することになり所望の冷却能力を得ることができないためである。
【0020】
図2は、受熱ユニットの外観をY軸負の方向から示す斜視図である。
図3は、受熱ユニットの外観を
図2の反対側から示す斜視図である。
図4は、受熱ユニットを分解して示す斜視図である。
図5は、第一姿勢の受熱ユニットの断面図である。
図6は、第二姿勢の受熱ユニットの断面図である。
【0021】
これらの図に示すように、受熱ユニット101は、発熱体200に直接、または、間接的に接触して発熱体200から放出される熱を作動流体に受け渡し、作動流体の気化を促進させることができる装置であり、第一部材111と、第二部材112と、維持部材113と、流入口114と、流出口116と、印加部117とを備えている。
【0022】
第一部材111は、発熱体200に直接、または、間接的に接続され、発熱体200から内部を流通する作動流体に熱を受け渡すとともに、第二部材112との間において電界を発生させる導電性を備えた部材である。また、第一部材111は導電性材料で形成され、電極として機能する。第一部材111の形状は、有底筒形状であって、作動流体を収容できる容器状であれば特に限定されるものではない。本実施の形態の場合、第一部材111の形状は、直方体のブロックに円柱状の空間が設けられ、外周と内周の形状が異なるものとなっている。また、第一部材111を構成する材料は、電気伝導率、および、熱伝導率の高い材料が好ましい。具体的に例えば、第一部材111の材料として銅やアルミニウムなどの金属や合金を例示することができる。本実施形態の場合、第一部材111の材料として銅が用いられている。
【0023】
本実施形態の場合、第一部材111の内周面、および内底面を含む内面、つまり第一部材111の第二部材112に対向する面の表面は、微小な凹凸で覆われたいわゆる荒れた表面となっている。これにより、作動流体から気泡が発生しやすくなり作動流体の気化を促進させることが可能となる。また、第一部材111の表面を荒らす方法としては、特に限定されるものではないが、ショットピーニングなどにより第一部材111の表面を加工する方法を例示でき、また、熱伝導率の高いダイヤモンドなどの粉末をコーティング(接着、圧着、焼結、電着)させることにより表面を荒らす方法を例示できる。
【0024】
第一部材111の外底面110は、発熱体200と接触する面である。なお、第一部材111の外底面110と発熱体200とは、熱伝導性が高く形状が柔軟に変化するペーストやシートを介して接続される。
【0025】
なお、第一部材111は、作動流体と接触する内面に導電性の層を設け、他の部分は導電性の層と異なる材料で形成されるような、複数種類の材料から形成されても構わない。
【0026】
第二部材112は、第一部材111との間に所定の隙間を設けて第一部材111の内方に配置されることにより気化空間190を形成する第一部材111の内部形状に沿った有底筒状の部材である。第一部材111の底面に対向する第二部材112の底部には、複数の貫通孔191が形成されている。本実施の形態の場合、第一部材111の内周面は円筒形状であるため、第二部材112の外周面の形状も円筒形状であり、同芯上に配置されている。第二部材112、および第一部材111は、底部同士の隙間と周部同士の隙間がほぼ同間隔で配置されている。また、第二部材112は、第一部材111の内周面に対向する周部にも貫通孔191が設けられている。第二部材112の周部に設けられる貫通孔191は、周方向に並んで複数個配置され、径方向にも並んで配置されている。なお貫通孔191の周方向の間隔、および径方向の間隔は特に限定されるものではない。また、
図4において周方向に並ぶ貫通孔191の図示は省略されている。
【0027】
第二部材112を構成する材料は、電気伝導率の高い材料が好ましい。具体的に例えば、第二部材112の材料として銅やアルミニウムなどの金属や合金を例示することができる。本実施形態の場合、第二部材112の材料としてアルミニウムを主成分とした合金が用いられている。
【0028】
貫通孔191の断面形状は、特に限定されるものではなく、矩形、円形など任意の形状を採用することができる。また、複数の貫通孔191の大きさは統一されていてもよく、バラバラでも構わない。また、領域毎に異なってもよく、周期的に変化するなどしてもよい。例えば、第二部材112の底部に設けた貫通孔191と、周部に設けた貫通孔191の形状、大きさは、一致させてもよく、異なるものとしても構わない。
【0029】
貫通孔191は、第一部材111側の開口面積が第二部材112の内方側の開口面積より大きくても構わない。つまり貫通孔191の内周面の形状は、テーパ状や、階段状でも構わない。
【0030】
本実施の形態の場合、貫通孔191の断面形状は円形であり、径は、第一部材111と第二部材112との間隔よりも小さく設定されている。第一部材111と第二部材112との具体的な間隔は、電極間に印加される電圧や作動流体の流速によって異なるため特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、間隔は、0.5mm以上、1.5mmの範囲から選定されている。
【0031】
本実施形態の場合、貫通孔191は、第一部材111に向かうに従い径が徐々に広がるテーパ部(図示省略)が設けられている。このとき、第一部材111と第二部材112との間に電圧を印加することによって貫通孔191がない部分は電位差が高く、テーパ部は徐々に電位差が低くなり、貫通している部分は最も電位差が低くなる。この電位差によって作動流体に圧力差が生じる。そのため、作動流体内に発生した気泡を圧力の低い貫通孔191側に誘導することができる。
【0032】
筒形状の第二部材112の内方の空間は、貫通孔191をそれぞれ通過してきた作動流体を一旦貯留しておく空間である。なお、気化した作動流体が入ってくるため、気化空間190の容量より内方の空間の容量は大きくなるように設定されている。
【0033】
維持部材113は、第二部材112と第一部材111とを所定の間隔で維持し、第二部材112と第一部材111との間に気化空間190を形成する部材である。本実施形態の場合、維持部材113は、第二部材112と一体に形成された立方体の部材である。維持部材113は、第一部材111との絶縁状態を維持すると共に第一部材111との間を密閉して作動流体の漏れを防止するスペーサ131を挟んで第一部材111と接続されている。
【0034】
本実施の形態の場合、維持部材113は、一方の側面に流入口114が設けられており、他方の側面に流出口116が設けられている。また、維持部材113の内部には流入口114から気化空間190にまで繋がる流入通路115、および貫通孔191から流出口116にまで繋がる流出通路118が設けられている。
【0035】
流入口114は、管状の流入通路115を介して気化空間190と連通する開口であり、作動流体を気化空間190内に導入するための孔である。流入口114が設けられる位置は、特に限定されるものではないが、筒形状の気化空間190の軸方向において、底部と反対側の周部の端部に作動流体が流入する位置に流入口114および流入通路115が設けられることが好ましい。また、流入口114には、管部材104が取り付けられるものとなっている。
【0036】
流出口116は、第二部材112の内方の空間と流出通路118を介して連通する開口であり、作動流体を第二部材112の内方から流出させるための孔である。流出口116が設けられる位置は特に限定されるものではないが、本実施形態の場合、維持部材113に設けられている。また、流出口116には、管部材104が取り付けられるものとなっている。
【0037】
印加部117は、第一部材111と第二部材112との間に所定の電圧を印加するための装置である。本実施の形態の場合、印加部117は、商用電力に基づき第一部材111と第二部材112との間に300v以上、10kv以下から選定される直流電圧を印加することができる性能を備えている。なお、印加部117は、第一部材111と第二部材112との間に電位差を生じさせればよく、両電極に正の電圧、両電極に負の電圧、どちらかがグランドに接続されていてもよい。なお、本実施形態では、第一部材をグランド(GND)、第二部材に負の電圧を印加している。
【0038】
作動流体は、第一部材111を介して発熱体200から受け取った熱を放熱器102まで輸送して放熱することができる流体であれば特に限定されるものではない。例えば作動流体の特性としては、発熱体200の許容温度の上限未満で沸騰するものが好ましい。例えば、発熱体200を60℃以下に維持したい場合、沸点が60℃未満の作動流体を採用することが好ましい。また、安全性を考慮すれば、引火性のない、または、低い作動流体が好ましく、毒性の低いものが好ましい。
【0039】
具体的に例えば、作動流体としては、HFC(Hydrofluorocarbon)系の溶剤や、HFE(Hydrofluoroether)系の溶剤を挙示することができる。
【0040】
次に、冷却装置100の動作を説明する。
【0041】
ポンプ103によって作動流体を冷却装置100内に強制的に循環させ、ファン121を回転させて放熱器102に空気を流通させ、印加部117により、第一部材111と第二部材112との間に電圧を印加する。
【0042】
図5に示す受熱ユニット101の第一姿勢においては、流入口114から流入した作動流体は、流入通路115を介して円筒状の気化空間190の端部から落下するように気化空間190に流入する。発熱体200が放出した熱は、第一部材111を介して気化空間190内の作動流体に伝わり、作動流体は気化空間190内で沸騰する。沸騰により発生する気泡は、表面張力により第一部材111と第二部材112との間に止まろうとするが、第一部材111と第二部材112の間に発生する電界の貫通孔191の周囲の勾配により、作動流体の蒸気と液体との気液界面、即ち気泡の表面に貫通孔191の内方に向かうような静電圧力が発生する。さらに、ポンプ103による圧力により、作動流体の気泡は、気化空間190から貫通孔191を通過して第二部材112の内方空間に液状の作動流体と共に運ばれる。以上により第一部材111の第二部材112に対向する面(沸騰面)上には液体状の作動流体が常に供給され、沸騰が促進されることで熱伝達率を向上させることが可能となる。
【0043】
一方、第一姿勢とは受熱ユニット101の姿勢が逆になった
図6に示す第二姿勢においては、流入口114から流入した作動流体は、気化空間190の幅に対して比較的大径の流入通路115まではポンプ103の圧力により流入するが、気化空間190へは毛細管現象により流入する。ここで、本発明者は、気化空間190を形成する第一部材111と第二部材112に電圧を印加することにより毛細管現象を促進できることを見出した。つまり、有底筒状の気化空間190の底部(第二姿勢においては上部に位置する部分であるが便宜上「底部」と記載する。)が鉛直方向の上部に配置され、開口部が下部に配置される場合でも、気化空間190を形成する第一部材111と第二部材112との間に電圧が印加されると毛細管現象が促進され、発熱体200の近傍である底部にまで十分な量の作動流体を供給することができることを見出した。さらに、気化空間190の底部で発生する気泡は、第一部材111の底面に向かって上昇する力が働くが、貫通孔191近傍の電位勾配により気泡は第二部材112の内方空間に案内され、十分な冷却効果を発揮することが可能となることを見出した。具体的には、同一の条件で発熱する発熱体200に対し、第一姿勢で受熱ユニット101を接触させて冷却した場合と、第二姿勢で受熱ユニット101を接触させて冷却した場合の発熱体200の温度の差は摂氏2度程度であった。また、受熱ユニット101を横にした第三姿勢で同一条件の発熱体200を冷却した場合、流入口114の位置がいずれであっても発熱体200の温度は第一姿勢の場合と有意な差は見られなかった。
【0044】
流出通路118を介して流出口116から流出した作動流体は、気液混合状態で放熱器102に到達し大気と熱交換することで、液状の作動流体は冷却され、気体の作動流体は凝縮されて液状に戻される。液状になって冷却された作動流体は、再び受熱ユニット101の気化空間190に戻される。
【0045】
以上の様に、受熱ユニット101を備えた冷却装置100によれば、受熱ユニット101がいかなる姿勢であっても、第一部材111と第二部材112との間に印加した電界により作動流体を気化空間190の底部に高い効率で輸送することができ、沸騰した作動流体の気泡を貫通孔191を通して第二部材112の内方の空間に強制的に排出し続けることができる。従って、加熱された第一部材111の底部に作動流体が十分に供給されない状態を防止でき、また気泡が第一部材111の表面に付着して動かなくなるいわゆるドライアウトの発生を抑制し、第一部材111の表面に液状の作動流体が広く分布する状態を創出することができる。従って、受熱ユニット101がいかなる姿勢であっても広い面積で作動流体を気化させることができ、気化潜熱によって効果的に発熱体200を冷却することが可能となる。
【0046】
また、第二部材112の周部にも貫通孔191を設けることで、気化空間190の周部に発生した気泡も第二部材112の内方に案内することが可能となる。従って、瞬間的に高温になった発熱体200によって第一部材111が高温になった場合などでも、比較的広い面積で効果的に気泡を受熱ユニット101から排出させることができるため、瞬発的な温度変化に対しても効果的に対応することが可能となる。
【0047】
また、第一部材111と第二部材112との間に印加した電圧により毛細管現象が促進され、受熱ユニット101がいかなる姿勢でも作動流体の流れを維持することができるため、能力の低いポンプ103でも作動流体を循環させることができる。従って、ポンプ103を小型化することができ、冷却装置100の小型化を図ることができる。
【0048】
(実施の形態2)
続いて、冷却装置100を備えたプロジェクタの実施の形態について説明する。なお、前記実施の形態1と同様の作用や機能、同様の形状や機構や構造を有するもの(部分)には同じ符号を付して説明を省略する場合がある。また、以下では実施の形態1と異なる点を中心に説明し、同じ内容については説明を省略する場合がある。
【0049】
図7は、プロジェクタの内部を、一部を切り欠いて示す斜視図である。同図に示すように、プロジェクタ300は、入力された映像信号に基づいて映像をスクリーンや構造物などに投射する装置であり、レーザー光源301と、発光部302と、投射部303とを備えている。本実施形態の場合、プロジェクタ300は、プロジェクションマッピングなどに用いられる高輝度タイプの装置であり、上方に向かって映像を投射する姿勢で設置されている。
【0050】
レーザー光源301は、発光部302において白色光を発光させるための励起光となる青色や紫外光などのレーザー光を放射する半導体装置である。本実施形態の場合、高輝度の白色光を発光させるために、複数本のレーザー光を同時に発振させることができるものとなっている。
【0051】
発光部302は、レーザー光源301からのレーザー光に基づきレーザー光とは異なる波長の光を放出することができる装置である。本実施形態の場合、発光部302は、レーザー光源301から放出されるレーザー光を励起光として、レーザー光よりも長波長側の蛍光を発光することができる蛍光体を備えており、複数種類の蛍光体を組み合わせることで擬似的な白色光を発光するものとなっている。
【0052】
投射部303は、発光部302からの白色光に基づき、スクリーンや構造物などに象を投射する装置であり、入力された映像信号を映像化するための処理部や映像を投射するための光学系等を含んでいる。
【0053】
プロジェクタ300はさらに、発熱体200であるレーザー光源301を冷却するシステムであって、受熱ユニット101と、放熱器102と、ポンプ103とを有する冷却装置100を備えている。また、印加部117は、プロジェクタ300の電源装置(図示せず)に組み込まれており、プロジェクタ300の電源装置から第一部材111と第二部材112との間に印加する電圧が供給されるものとなっている。
【0054】
放熱器102は、プロジェクタ300の外殻として機能する矩形の筐体310の一側面のほぼ全体に広がって配置されており、筐体310の内側には、複数のファン121が取り付けられている。
【0055】
受熱ユニット101は、第一部材111の底部の外側の面が、レーザー光源301の一側面に接触した状態で取り付けられている。本実施の形態の場合、受熱ユニット101とレーザー光源301との間には、絶縁性を備え熱伝導率が高い熱伝導シート(図示せず)が配置されている。
【0056】
また、鉛直方向において第一部材111が上側、第二部材112が下側となる第二姿勢となっている。また、流出口は、維持部材113の下端部に設けられている。
【0057】
以上の様に、プロジェクションマッピングに用いられるプロジェクタ300の投射方向により、受熱ユニット101が第二姿勢など第一姿勢とは異なる姿勢になった場合でも、冷却効率がほとんど低下することなく、効果的にレーザー光源301を冷却することが可能となる。
【0058】
なお、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本開示の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本開示の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本開示に含まれる。
【0059】
例えば、第一部材111、および第二部材112の形状を有底円筒形状として説明したが、第一部材111の内周面の形状と、第一部材111の内周面に対向する第二部材112の外周面の形状が相似形状、またはほぼ相似形状であれば、その他の部分の形状は特に限定されるものではない。また、第一部材111の内周面の形状、および第二部材の外周面の形状は、有底円筒ばかりで無く、楕円形、トラック形状、隅部が丸められた矩形など任意の形状を採用することができる。
【0060】
また、貫通孔191のテーパ部を形成するために第二部材112の外周面側を面取りしてもよく、この面取りは、いわゆるC面取り、または曲面による面取り、いわゆるR面取りでも構わない。
【0061】
また、実施の形態2では、冷却装置100を備えてたプロジェクタ300を例示したが、冷却装置100の応用はプロジェクタ300に限定されるものではなく、モバイルコンピュータなどの複数の姿勢での使用が想定される電子機器などに応用しても構わない。
【0062】
また、冷却装置100は、複数の受熱ユニット101を備えても構わない。この場合、受熱ユニット101は、並列に接続されてもよく、直列に接続されても構わない。
【0063】
また、放熱器102は、空気(大気)と熱交換する場合を説明したが、水などの液状の流体と熱交換するものでも構わない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本開示の冷却装置によれば、いかなる姿勢で動作しても高い冷却効率を有するので、いろいろな姿勢での使用が想定される高発熱量の電子部品などの冷却に好適である。
【符号の説明】
【0065】
100 冷却装置
101 受熱ユニット
102 放熱器
103 ポンプ
104 管部材
110 外底面
111 第一部材
112 第二部材
113 維持部材
114 流入口
115 流入通路
116 流出口
117 印加部
118 流出通路
121 ファン
131 スペーサ
190 気化空間
191 貫通孔
200 発熱体
300 プロジェクタ
301 レーザー光源
302 発光部
303 投射部
310 筐体