IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-冷凍サイクルシステム 図1
  • 特許-冷凍サイクルシステム 図2
  • 特許-冷凍サイクルシステム 図3
  • 特許-冷凍サイクルシステム 図4
  • 特許-冷凍サイクルシステム 図5
  • 特許-冷凍サイクルシステム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20221209BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
F25B1/00 387L
F25B1/00 371M
F25B1/00 304H
F25B49/02 510H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021102563
(22)【出願日】2021-06-21
(62)【分割の表示】P 2017104497の分割
【原出願日】2017-05-26
(65)【公開番号】P2021183901
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿久戸 亮一
(72)【発明者】
【氏名】菅原 大誉
(72)【発明者】
【氏名】松元 雄一
(72)【発明者】
【氏名】岸野 正裕
(72)【発明者】
【氏名】大平 剛司
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-128517(JP,A)
【文献】特開2015-111028(JP,A)
【文献】特開平09-060991(JP,A)
【文献】特開昭61-059158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍サイクルシステムにおいて、
運転周波数に応じて能力が変わる能力可変型の圧縮機を搭載した室外ユニットと、
室内膨張弁と室内熱交換器とを有する室内ユニットと、
前記室外ユニットと前記室内ユニットを接続する冷媒配管と、
前記冷凍サイクルシステムを制御する制御ユニットと、を備え、
前記制御ユニットは、冷房運転時に低圧側にオイルが溜まる条件を満たしたと判断した場合、オイルの流出しやすさまたはオイルの戻りにくさに基づいて、前記圧縮機の運転周波数を低下させた後に前記圧縮機の運転周波数を高くするオイル回収制御を実施し、前記制御ユニットは、前記オイル回収制御を実行している間、前記室内熱交換器を通る冷媒の過熱度に基づき前記室内膨張弁の開度を制御し、
前記オイルの流出しやすさは、前記圧縮機の吐出過熱度および前記圧縮機の運転周波数に対する重み値に基づいて設定され、
前記オイルの戻りにくさは、前記圧縮機の吸込過熱度および前記室内膨張弁の最大開度に対する重み値に基づいて設定されることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【請求項2】
前記制御ユニットが行う前記オイル回収制御は、予め設定された第2の所定時間だけ前記圧縮機の運転周波数を低下させ、前記第2の所定時間が経過した後に予め設定された第3の所定時間だけ前記圧縮機の運転周波数を高くする制御であることを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクルシステム。
【請求項3】
前記圧縮機の吸込側の過熱度を検知する過熱度検知手段を備え、
前記制御ユニットは、前記過熱度検知手段によって検知された吸込側の過熱度が第1の所定値以上となった場合に、前記冷凍サイクルシステムの低圧側にオイルが溜まる条件を満たしたと判断して前記オイル回収制御を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷凍サイクルシステム。
【請求項4】
前記制御ユニットは、前記圧縮機の運転周波数が第2の所定値以上となった場合に、前記冷凍サイクルシステムの低圧側にオイルが溜まる条件を満たしたと判断してオイル回収制御を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷凍サイクルシステム。
【請求項5】
前記圧縮機の吸込側の過熱度を検知する過熱度検知手段を備え、
前記制御ユニットは、前記過熱度検知手段によって検知された吸込側の過熱度が第1の所定値以上となり、かつ前記圧縮機の運転周波数が第2の所定値以上となった場合に、前記冷凍サイクルシステムの低圧側にオイルが溜まる条件を満たしたと判断して前記オイル回収制御を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルシステムに係り、特に、冷凍サイクル内に溜まったオイルを回収できる冷凍サイクルシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、冷凍サイクルシステムとして、例えば、1台または複数台の室外ユニットに1台または複数台の室内ユニットを接続したマルチ型の空気調和装置が知られている。
このような空気調和装置においては、所定時間運転を行っていると、運転状況によっては室内ユニットおよび配管内にオイルが溜まり、圧縮機内のオイルが不足する事態が発生するため、室内ユニットおよび配管内に溜まっているオイルを回収する制御が行われている。
【0003】
このようなオイルの回収制御として、従来、例えば、能力可変型圧縮機、室外熱交換器を搭載した室外機に、室内熱交換器、室内膨張弁を搭載した室内ユニットを複数台接続したマルチ式空気調和機において、冷房運転時、吐出冷媒の圧力を検出する手段と、外気温を検出する手段と、能力可変型圧縮機の所定周波数以下での運転時間及び停止時間をカウントする手段とを備え、これら検出値に基づいて各室内ユニットの室内膨張弁の開度を調整してオイルの回収制御を行うオイル回収運転の周期を変更する手段を備えた技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平09-170828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の技術においては、圧縮機が所定の運転周波数以下または所定の冷媒吐出圧力以下で運転されている時間を連続または積算でカウントすることによって、停止機も含む各室内ユニットの室内膨張弁の開度を一斉に大きくすることで、室内ユニットおよび配管内に溜まったオイルを液冷媒とともに回収するものであるため、多量の液冷媒が低圧側に流入し、過度の液バックが発生するおそれがあった。
【0006】
本発明は、前記した点に鑑みてなされたものであり、過度の液バックを発生させることなく、オイルの回収を行うことのできる冷凍サイクルシステムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の冷凍サイクルシステムは、冷凍サイクルシステムにおいて、運転周波数に応じて能力が変わる能力可変型の圧縮機を搭載した室外ユニットと、室内膨張弁と室内熱交換器とを有する室内ユニットと、前記室外ユニットと前記室内ユニットを接続する冷媒配管と、前記冷凍サイクルシステムを制御する制御ユニットと、を備え、前記制御ユニットは、冷房運転時に低圧側にオイルが溜まる条件を満たしたと判断した場合、オイルの流出しやすさまたはオイルの戻りにくさに基づいて、前記圧縮機の運転周波数を低下させた後に前記圧縮機の運転周波数を高くするオイル回収制御を実施し、前記制御ユニットは、前記オイル回収制御を実行している間、前記室内熱交換器を通る冷媒の過熱度に基づき前記室内膨張弁の開度を制御し、前記オイルの流出しやすさは、前記圧縮機の吐出過熱度および前記圧縮機の運転周波数に対する重み値に基づいて設定され、前記オイルの戻りにくさは、前記圧縮機の吸込過熱度および前記室内膨張弁の最大開度に対する重み値に基づいて設定されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、オイル回収制御時に、制御ユニットにより圧縮機の運転周波数を低下させることで、低圧側の冷媒配管の圧力が上がり、低圧側の室内ユニットおよび配管内のすべてで冷媒が液相状態となりやすくなるため、低圧側の室内ユニットおよび冷媒配管すべてにおいて滞留したオイルが液相状態の冷媒に溶け込んでオイルの流動性が良好となる。そのため、低圧側の冷媒配管および室内ユニットのすべてに滞留したオイルを液相状態の冷媒とともに回収することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、過度の液バックを発生させることなくオイルの回収を行うことのできる冷凍サイクルシステムを提供することができる。また、室内膨張弁の開度を制御することで、オイル回収制御時に、室内ユニットに滞留したオイルを液相状態の冷媒とともに効率よく回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1における冷凍サイクルシステムを示す構成図
図2】実施の形態1の制御構成を示すブロック図
図3】(a)は実施の形態1の室外ユニットにおける制御動作を示すタイミングチャート、(b)は冷房サーモON動作をしている室内ユニットにおける制御動作を示すタイミングチャート、(c)は冷房サーモOFF動作をしている室内ユニットにおける制御動作を示すタイミングチャート、(d)は送風動作している室内ユニットの制御動作を示すタイミングチャート、(e)は停止している室内ユニットの制御動作を示すタイミングチャート
図4】実施の形態1の動作を示すフローチャート
図5】実施の形態2における重み付け値の例を示す図
図6】実施の形態2の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、冷凍サイクルシステムにおいて、運転周波数に応じて能力が変わる能力可変型の圧縮機を搭載した室外ユニットと、室内膨張弁と室内熱交換器とを有する室内ユニットと、前記室外ユニットと前記室内ユニットを接続する冷媒配管と、前記冷凍サイクルシステムを制御する制御ユニットと、を備え、前記制御ユニットは、冷房運転時に低圧側にオイルが溜まる条件を満たしたと判断した場合、前記圧縮機の運転周波数を低下させた後に前記圧縮機の運転周波数を高くするオイル回収制御を実施し、前記制御ユニットは、前記オイル回収制御を実行している間、前記室内熱交換器を通る冷媒の過熱度に基づき前記室内膨張弁の開度を制御する。
これによれば、オイル回収制御時に、制御ユニットにより、圧縮機の運転周波数を低下させ、所定時間経過した後、圧縮機の運転周波数を高めるように制御するようにしているので、過度の液バックを発生させることなく、低圧側の冷媒配管や室内ユニットに滞留したオイルを液相状態の冷媒とともに回収することができ、これにより、オイルの回収量を増大させることができる。また、室内膨張弁の開度を制御することで、オイル回収制御時に、室内ユニット20に滞留したオイルを液相状態の冷媒とともに効率よく回収することができる。
【0012】
第2の発明は、前記制御ユニットが行う前記オイル回収制御は、予め設定された第2の所定時間だけ前記圧縮機の運転周波数を低下させ、前記第2の所定時間が経過した後に予め設定された第3の所定時間だけ前記圧縮機の運転周波数を高くする制御である。
これによれば、低圧側の冷媒配管および室内ユニット内のオイルの滞留状態を、圧縮機の吸込過熱度から判断してオイル回収制御を行うことで、不必要なオイル回収動作を抑制することができ、空調性の変動を抑制しつつ、常に圧縮機にオイルがある状態を保つことができる。
【0013】
第3の発明は、前記圧縮機の吸込側の過熱度を検知する過熱度検知手段を備え、前記制御ユニットは、前記過熱度検知手段によって検知された吸込側の過熱度が第1の所定値以上となった場合に、前記冷凍サイクルシステムの低圧側にオイルが溜まる条件を満たしたと判断して前記オイル回収制御を行う。
これによれば、低圧側の冷媒配管および室内ユニット内のオイルの滞留状態を、圧縮機の吸込過熱度から判断してオイル回収制御を行うようにしているので、不必要なオイル回収動作を抑制することができ、空調性の変動を抑制しつつ、常に圧縮機にオイルがある状態を保つことができる。
【0014】
第4の発明は、前記制御ユニットが、前記圧縮機の運転周波数が第2の所定値以上となった場合に、前記冷凍サイクルシステムの低圧側にオイルが溜まる条件を満たしたと判断してオイル回収制御を行う。
これによれば、低圧側の冷媒配管および室内ユニット内のオイルの滞留状態を、圧縮機の運転周波数から判断してオイル回収制御を行うようにしているので、不必要なオイル回収動作を抑制することができ、空調性の変動を抑制しつつ、常に圧縮機にオイルがある状態を保つことができる。
【0015】
第5の発明は、前記圧縮機の吸込側の過熱度を検知する過熱度検知手段を備え、前記制御ユニットは、前記過熱度検知手段によって検知された吸込側の過熱度が第1の所定値以上となり、かつ前記圧縮機の運転周波数が第2の所定値以上となった場合に、前記冷凍サイクルシステムの低圧側にオイルが溜まる条件を満たしたと判断して前記オイル回収制御を行う。
これによれば、低圧側の冷媒配管および室内ユニット内のオイルの滞留状態を、圧縮機の吸込過熱度および圧縮機の運転周波数から判断してオイル回収制御を行うようにしているので、不必要なオイル回収動作を抑制することができ、空調性の変動を抑制しつつ、常に圧縮機にオイルがある状態を保つことができる。
【0016】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の冷凍サイクルシステムを示す構成図である。
図1に示すように、本実施形態の冷凍サイクルシステム1は、室外ユニット10と、室外ユニット10に冷媒配管11を介して接続された複数台の室内ユニット20と、制御ユニット40(図2を参照)とを備えている。ただし、本実施形態においては、室内ユニット20を2台設置した場合の例を示しているが、これに限定されず、例えば、1台の室内ユニット20を設置しても、あるいは3台以上の室内ユニット20を設置するようにしてもよい。
【0017】
室外ユニット10は、インバータを用いて運転周波数を変化させることにより、能力が可変する、すなわち、運転周波数に応じて能力が変わる能力可変型の圧縮機12を備えている。圧縮機12の吐出側には、オイルセパレータ13が冷媒配管11を介して接続される。
オイルセパレータ13には、逆止弁14および四方弁15を介して室外熱交換器16が冷媒配管11を通じて接続されている。
室外熱交換器16には、室内ユニット20が冷媒配管11を介して接続されており、この室外熱交換器16と室内ユニット20との間の冷媒配管11の途中には、膨張弁17が設けられている。
【0018】
室内ユニット20は、室内熱交換器21と室内膨張弁22とを備えている。室内ユニット20には、冷媒配管11を介して四方弁15が接続されており、四方弁15は、アキュムレータ18を介して圧縮機12の吸込側に接続されている。
アキュムレータ18の内部には、U字状の冷媒配管11が収容されており、この冷媒配管11の下部には、オイル戻し穴19が設けられている。
【0019】
また、オイルセパレータ13には、他端が圧縮機12の吸込側の冷媒配管11に接続されるオイル配管25が接続されている。オイル配管25には、オイル戻し用のキャピラリチューブ26が設けられている。また、オイル配管25には、キャピラリチューブ26に並列に接続された開閉弁27が設けられている。
【0020】
圧縮機12の吐出側には、圧縮機12から吐出された冷媒の温度を検出する吐出温度センサ30が設けられている。オイルセパレータ13と逆止弁14との間には、圧縮機12から吐出された冷媒の圧力を検出する高圧センサ31および高圧スイッチ32がそれぞれ設けられている。ここで、高圧スイッチ32は、吐出冷媒の圧力が所定の最大圧力に達した場合に、システムの動作を停止するためのスイッチである。
【0021】
また、室外熱交換器16の一方の側(冷房運転時における冷媒流入側)には、室外熱交換器16のガス冷媒の温度を検出する熱交ガス温度センサ33が設けられており、室外熱交換器16の他方の側(冷房運転時における冷媒流出側)には、室外熱交換器16の液冷媒の温度を検出する熱交液温度センサ34が設けられている。さらに、室外熱交換器16には、外気温を検出する外気温センサ35が設けられている。
【0022】
圧縮機12の吸入側の冷媒配管11には、圧縮機12に吸い込まれる冷媒の温度を検出する吸込温度センサ36および圧縮機12に吸い込まれる冷媒の圧力を検出する低圧センサ37がそれぞれ設けられている。本実施形態においては、吸込温度センサ36および低圧センサ37により、過熱度検知手段が構成される。
また、室内熱交換器21の一方の側(冷房運転時における冷媒流入側)には、室内熱交換器21の液冷媒の温度を検出する室内液温度センサ38が設けられており、室内熱交換器21の他方の側(冷房運転時における冷媒流出側)には、室内熱交換器21のガス冷媒の温度を検出する室内ガス温度センサ39が設けられている。
【0023】
制御ユニット40は、室外ユニット10の内部に設けられて、制御対象の部品や装置と電気的に接続されている。ただし、制御ユニット40が必ずしも室外ユニット10の内部に設けられている必要はなく、適宜配置場所を変更しても良い。
なお、図1においては図の見やすさを考慮し、制御ユニット40の結線を省略している。制御ユニット40は、以下に説明するように電気的に各センサなどの電子部品と接続されて適宜必要な命令(コマンド)の送信や情報の相互通信を行っている。
ただし、電気的に接続とは、電線やケーブルによる接続以外に無線通信などが用いられる接続形態でも良い。
【0024】
次に、本実施形態の制御構成について説明する。
図2は、制御構成を示すブロック図である。冷凍サイクルシステム1は、冷凍サイクルシステム1の制御を行う制御ユニット40を備えている。制御ユニット40は、冷凍サイクルシステム1の各部を統括的に制御するものであり、図2に示すように、演算実行部としてのCPU、このCPUによって実行可能な基本制御プログラムや所定のデータ等を不揮発的に記憶するROM、データ等を揮発的に記憶するRAMなどのメモリ、その他の周辺回路などを備えている。制御ユニット40は、カウント手段として、冷房運転中の任意の時間をカウントして積算する積算タイマ41を備えている。
【0025】
また、制御ユニット40は、吐出温度センサ30、高圧センサ31、熱交ガス温度センサ33、熱交液温度センサ34、外気温センサ35、低圧センサ37、吸込温度センサ36、室内液温度センサ38および室内ガス温度センサ39による検出値が入力される。そして、制御ユニット40は、これらの検出値に基づいて、圧縮機12の運転周波数、室外熱交換器16の室外ファン42、室内熱交換器21の室内ファン43の駆動制御や、室内膨張弁22等の開度制御を行うように構成されている。
【0026】
また、本実施形態においては、制御ユニット40は、冷房運転時において所定の条件に達した際にオイル回収制御を行う。
本実施形態においてオイル回収制御とは、運転中または停止中の室内ユニット20や冷凍サイクルの冷媒配管に溜まったオイルを回収するための制御をいう。具体的には、制御ユニット40によるオイル回収制御は、圧縮機12の運転周波数を所定時間td低下させた後、圧縮機12の運転周波数を所定時間tu高くすることにより行う。
【0027】
圧縮機12の運転周波数を低下させると、低圧側の冷媒配管11および室内ユニット20の圧力が上がり、これにより、冷媒配管11および室内ユニット20の冷媒は、その乾き度が低下して液相状態となる。冷媒の乾き度が低下して液相状態になると、低圧側の冷媒配管11および室内ユニット20に滞留したオイルが液相状態の冷媒に溶け込み、オイルの流動性が良好となる。
そのため、制御ユニット40は、圧縮機12の運転周波数を所定時間td低下させてオイルの流動性を高めた後、圧縮機12の運転周波数を所定時間tu高くするように制御することで、管内流速を上昇させることにより、低圧側の冷媒配管11および室内ユニット20に滞留したオイルを液相状態の冷媒とともに回収することが可能となる。
【0028】
本実施形態においては、所定の条件に達した後におけるオイル回収制御が、圧縮機12の吸込過熱度および圧縮機12の運転周波数に基づいて行われる。
具体的には、圧縮機12の吸込過熱度が所定値Sa以上、かつ、圧縮機12の運転周波数が所定値fa以上の条件を満たす状態で、圧縮機12の運転が行われた時間を積算タイマ41が積算し続け、この積算時間があらかじめ設定された第1の所定時間としての、所定時間ta以上となったときにオイル回収制御が開始される。
吸込過熱度が所定値Sa以上の場合には、冷媒配管11および室内ユニット20を流れる冷媒がガス化してオイルの粘度が高く、流動性が悪い状態となっている。また、圧縮機12の運転周波数が所定値fa以上の場合は、圧縮機12から吐出されるオイル量が増加するため、室内ユニット20側や圧縮機12の吸込側等、圧縮機12の低圧側にオイルが溜まりやすい状態となっている。
【0029】
そのため、制御ユニット40は、吸込過熱度が所定値Sa以上で、かつ、圧縮機12の運転周波数が所定値fa以上で運転された積算時間が、所定時間ta以上となった場合には、圧縮機12の内部におけるオイル量が減少し、室内ユニット20側や圧縮機12の吸込側等、圧縮機12の低圧側にオイルが溜まる条件を満たしたと判断してオイル回収制御を行う。
【0030】
オイル回収制御を行うにあたって、制御ユニット40は、低圧センサ37により検出される吸込側の冷媒圧力に基づいて冷媒の低圧飽和温度を算出し、この低圧飽和温度と吸込温度センサ36により検出される吸込冷媒の温度との差により、吸込過熱度を算出する。
そして、制御ユニット40は、積算タイマ41により、吸込過熱度が所定値Sa以上で、かつ、圧縮機12の運転周波数が所定値fa以上となる状態の圧縮機12の運転時間を積算する。そして、制御ユニット40は、吸込過熱度が所定値Sa以上で、かつ、圧縮機12の運転周波数が所定値fa以上となった状態において圧縮機12が運転された積算時間が所定時間ta以上になったと判断した場合、オイル回収制御を行う。
【0031】
オイル回収制御が開始された後、制御ユニット40が圧縮機12の運転周波数を低下させ、この運転が所定時間tdが経過すれば、低圧側の冷媒配管11および室内ユニット20に滞留したオイルが液相状態の冷媒に溶け込み、オイルの流動性が良好となったとみなされる。そのため、制御ユニット40は、圧縮機12の運転周波数を低下させた運転を所定時間td行った後、圧縮機12の運転周波数を高くする(周波数を上げる)ように制御する。
これにより、低圧側の冷媒配管11および室内ユニット20に滞留したオイルが液相状態の冷媒とともに、アキュムレータ18に送られる。アキュムレータ18に送られた冷媒は、ガス冷媒と液冷媒とに分離されるとともに、液冷媒に溶け込んだオイルは冷媒と分離される。
アキュムレータ18で分離されたガス冷媒は、冷媒配管11を介して圧縮機12に送られる。一方、アキュムレータ18の下方に溜まったオイルは、オイル戻し穴19を介して圧縮機12に送られる。
【0032】
圧縮機12の運転周波数に対するオイル吐出率は、圧縮機12の運転周波数が高くなるにつれて、オイル吐出率が増加していく傾向にある。そのため、圧縮機12の運転周波数は、所定値fa以上になると、オイル吐出率が高くなりすぎ、圧縮機12が必要とするオイル量を下回るおそれがある。
本実施形態においては、圧縮機12の運転周波数が所定値fa以上になった場合には、圧縮機12の内部におけるオイル量が減少していると判断する。
例えば、本実施形態においては、この運転周波数の所定値faを70Hzに設定している。
【0033】
また、吸込過熱度の所定値Saは、吸込側の低圧の冷媒配管11および室内ユニット20の内部における冷媒密度が低下してオイル戻りが悪化するおそれがある過熱度に設定されるものであり、例えば、本実施形態においては、この吸込過熱度の所定値Saを10Kと設定している。
さらに、吸込過熱度が所定値Sa以上であって、かつ、圧縮機12の運転周波数が所定値fa以上で運転されている状態が、所定時間ta以上となった場合に、オイル回収制御を行うものであるが、本実施形態においては、この所定時間taは、圧縮機12の内部のオイルが一定の必要量以下となる時間として、例えば、150分に設定している。
ただし、これら圧縮機12の運転周波数の所定値fa、吸込過熱度の所定値Saおよび運転積算時間の所定時間taについては、これらの値に限定されるものではなく、冷凍サイクルシステム1の能力、圧縮機12の出力、室内ユニット20の接続台数等により適宜設定されるものである。
【0034】
次に、本実施の形態における、オイル回収制御を含む制御動作について具体的に説明する。
図3は本実施の形態における制御動作を示すタイミングチャートであり、図3(a)は、室外ユニットにおける制御動作を示している。図3(b)は、冷房サーモON動作をしている室内ユニットにおける制御動作を示し、図3(c)は、冷房サーモOFF動作をしている室内ユニットにおける制御動作を示している。図3(d)は、送風動作している室内ユニットの制御動作を示し、図3(e)は、停止している室内ユニットの制御動作を示している。
【0035】
図3(a)において、波形Aは圧縮機12の周波数の時間的変化を示す。吸込過熱度が所定値Sa以上で、かつ、圧縮機12の運転周波数が所定値fa以上で運転されている積算時間が所定時間ta以上になる時刻を図3における時刻t1とすると、図3(a)において、時刻t1から時刻t2までの間(すなわち第2の所定時間としての、時間td+第3の所定時間としての、時間tu)に行われる制御が本実施の形態におけるオイル回収制御である。
【0036】
図3(a)に示すように、オイル回収制御の前後(時刻t<時刻t1あるいは時刻t>時刻t2)における通常の運転制御時には、制御ユニット40は、圧縮機12を室内熱交換器21における冷媒の蒸発温度に基づいて運転周波数を制御している。
そして、制御ユニット40は、吸込過熱度が第1の所定値としての、所定値Sa以上で、かつ、圧縮機12の運転周波数が第2の所定値としての、所定値fa以上で運転されている積算時間が、所定時間ta以上となったと判断した時刻t1にオイル回収制御を開始する。
【0037】
オイル回収制御は、まず、制御ユニット40が室外ユニット10における圧縮機12の運転周波数を低下させる。この際、目標周波数をf1として時刻t1に圧縮機12の運転周波数を下げ始める。時間td内に目標周波数f1に達した場合は時間tdが経過するまで運転周波数をf1にした状態で動作を維持する。図3(a)に示す例では、目標周波数f1を15Hzとしている。目標周波数f1は、圧縮機12の最低周波数または、冷凍サイクルシステム1において低圧になる配管部分や室内ユニット20の圧力を上昇させるのに十分と思われる周波数である。このときに、室外ファン42は、通常の制御を行いON状態で駆動されている。
【0038】
そして、制御ユニット40は、圧縮機12の運転周波数を低下させ始めてから所定時間tdが経過した後、圧縮機12の運転周波数を高くする。この際、目標周波数をf2として時刻t1から時間td経過後に圧縮機12の運転周波数を上げ始める。図3(a)に示す例では、目標周波数f2を60Hzとしている。目標周波数f2は、室内ユニット20や冷媒配管11などに溜まったオイルを室外ユニット10にて回収するために必要な管内流速とすることが可能な運転周波数である。
【0039】
時間tuの間、制御ユニット40は、圧縮機12の運転周波数を目標周波数f2に向けて高く(上昇)させて所定時間tuが経過するまで高めるように制御する。時間tu内に目標周波数f2に達した場合は時間tuが経過するまで運転周波数をf2にした状態で動作を維持する。
このように、圧縮機12の運転周波数を上昇させることにより、低圧側の冷媒配管11および室内ユニット20に滞留したオイルを液相状態の冷媒とともに回収する。
【0040】
また、図3(b)に示す波形Bは、本実施の形態のオイル回収制御が実施される状況において、室外ユニット10に接続されている室内ユニット20が冷房サーモONの状態にある場合の室内ユニット20の室内膨張弁22の開度の時間変化を示す。
室外ユニット10に接続されている室内ユニット20が冷房サーモONの状態にある場合は、その室内ユニット20の室内膨張弁22は、室内熱交換器21を通る冷媒の過熱度にしたがって開度が制御される。このとき、室内ファン43は通常制御により駆動される。
ここで、室内ファン43の通常制御とは、ユーザがリモコンなどを用いて設定した風量あるいは風速に基づいて行われる制御であり、以下の説明においても同様である。
【0041】
図3(c)に示す波形Cは、本実施の形態のオイル回収制御が実施される状況において、室外ユニット10に接続されている室内ユニット20が冷房サーモOFFの状態にある場合の室内ユニット20の室内膨張弁22の開度の時間変化を示す。
室内ユニット20が冷房サーモOFFの状態にある場合、その室内ユニット20の室内膨張弁22が、オイル回収制御の前後(時刻t<時刻t1あるいは時刻t>時刻t2)の通常の運転制御時には閉じられているが、オイル回収制御時(時刻t1≦時刻t≦t2)には所定の設定開度に開くように制御される。このとき、室内ファン43は通常制御により駆動される。
【0042】
ここで、所定の設定開度とは、冷媒を流すために必要充分な開度であり、例えば、冷凍サイクルシステム1の起動時に開く程度の開度でよい。室内膨張弁22を所定の設定開度に開くことによって、冷房サーモONの状態にある室内ユニット20以外の室内ユニット20に溜まっているオイルも回収することができる。所定の設定開度については、以下の説明においても同様である。
【0043】
図3(d)に示す波形Dは、本実施の形態のオイル回収制御が実施される状況において、室外ユニット10に接続されている室内ユニット20が送風動作の状態にある場合の室内ユニット20の室内膨張弁22の開度の時間変化を示す。
室内ユニット20が送風動作の状態にある場合は、オイル回収制御の前後(時刻t<時刻t1あるいは時刻t>時刻t2)はその室内ユニット20の室内膨張弁22が通常の運転制御時には閉じられているが、オイル回収制御時(時刻t1≦時刻t≦時刻t2)には所定の設定開度に開くように制御される。このとき、室内ファン43は通常制御により運転される。
【0044】
図3(e)に示す波形Eは、本実施の形態のオイル回収制御が実施される状況において、室内ユニット20が停止の状態にある場合の室内ユニット20の室内膨張弁22の開度の時間変化を示す。
室内ユニット20が停止の状態にある場合は、オイル回収制御の前後(時刻t<時刻t1あるいは時刻t>時刻t2)はその室内ユニット20の室内膨張弁22が、通常の運転制御時には閉じられているが、オイル回収制御時(時刻t1≦時刻t≦t2)には所定の設定開度に開くように制御される。このとき、ファンは停止制御される。
このようにオイル回収制御を行う際に、室内膨張弁22を開くことによって室内熱交換器21に滞留しているオイルを低圧側の冷媒配管11に流すことができる。
【0045】
次に、実施の形態1の作用について説明する。
冷房運転時には、四方弁15を図1に実線で示す接続状態に切り替わる。そして、圧縮機12が駆動することにより、圧縮機12からの高温高圧冷媒が図示の実線矢印 で示す方向に流れる。
圧縮機12から吐出された高温高圧冷媒は、オイルセパレータ13、逆止弁14および四方弁15を介して室外熱交換器16に流れ、室外熱交換器16において、外気と熱交換して凝縮された冷媒は、冷媒配管11を介して室内ユニット20に送られる。
【0046】
室内膨張弁22で減圧した後、室内熱交換器21に送られた冷媒は、室内空気と熱交換して蒸発し、その蒸発冷媒が冷媒配管11を介して四方弁15に流れ、アキュムレータ18を介して圧縮機12の吸引側に戻される。これにより、冷却された室内空気により室内を冷房する。
【0047】
また、暖房運転時には、四方弁15を図1に破線で示す接続状態に切り替わる。そして、圧縮機12が駆動することにより、圧縮機12からの高温高圧冷媒は図示の破線矢印で示すように流れる。
圧縮機12から吐出された高温高圧冷媒は、オイルセパレータ13、逆止弁14および四方弁15を介して室内熱交換器21に流れ、室内熱交換器21において室内空気と熱交換して凝縮される。凝縮された冷媒は、室内膨張弁22で流量を調整されて冷媒配管11を介して室外膨張弁17で減圧した後、室外熱交換器16に送られる。室外熱交換器16に送られた冷媒は、外気と熱交換されて蒸発し、四方弁15およびアキュムレータ18を介して圧縮機12に戻される。これにより、加熱された室内空気により室内を暖房する。
【0048】
次に、実施の形態1の制御動作について説明する。
図4は、制御ユニット40が実行する制御処理を示すフローチャートである。ただし、図4に示すフローの開始時を冷房運転の開始時として良い。
また、以下の説明において、説明の便宜上、積算タイマ41を3つの積算タイマ41a、41b、41cに分けて説明する。
【0049】
積算タイマ41aは所定時間taをカウント(計時)するタイマ、タイマ41bは、オイル回収制御時に圧縮機12の運転周波数を下げる時間 をカウントするタイマ、タイマ41cは、オイル回収制御時に圧縮器12の周波数を上昇させる時間 をカウントするタイマである。ただし実現手段としては、1つの積算タイマを用いてもよいし、複数の積算タイマを適宜用いてもよい。
本実施の形態において積算タイマ41は、圧縮機12の運転周波数が所定値fa以上、かつ、吸込過熱度が所定値Sa以上の状態にあると制御ユニット40が判断している時間を積算するという動作を行う。
【0050】
図4に示すように、まず、冷凍サイクルシステム1の冷房運転時において、制御ユニット40は、自身が制御している圧縮機12の運転周波数は所定値fa以上である か否かの判断を行う(ST1)。
制御ユニット40は、圧縮機12の運転周波数が所定値fa以上であると判断した場合は(ST1:YES)、吸込過熱度が所定値Sa以上か否かを判断する(ST2)。
ステップST2において、吸込過熱度が所定の値Sa以上であったと判断した場合(ST2:YES)は、積算タイマ41aが計時動作が行われる(ST3)。積算タイマ41aが計時動作を開始すると、圧縮機12の運転周波数が所定値fa以上かつ吸込過熱度が所定値Sa以上の状態が続く間は積算タイマ41aが計時(カウントアップ)し続ける。
【0051】
一方、圧縮機12の運転周波数が所定値fa以上でないと判断した場合(ST1:NO)、または吸込過熱度が所定の値Sa以上でないと判断した場合は(ST2:NO)、ステップST1へ戻り圧縮機12の運転周波数および吸込過熱度の判断処理(ST1,ST2)を逐次繰り返す。
【0052】
ステップST3における計時動作行われている間、制御ユニット40は、積算タイマ41aがカウントした、圧縮機12の運転周波数が所定値fa以上かつ吸込過熱度が所定の値Sa以上での運転時間が、所定時間ta以上経過したかを判断する(ST4)。
ステップST4において、積算タイマ41aがカウントした、圧縮機12の運転周波数が所定値fa以上かつ吸込過熱度が所定の値Sa以上での運転時間が、所定時間ta以上経過していない(ST4:NO)と判断した場合は、ステップST1に処理を戻し、ステップST1からステップST4までの処理を繰り返す。
【0053】
制御ユニット40は、ステップST4において、積算タイマ41aがカウントした、圧縮機12の運転周波数が所定値fa以上かつ吸込過熱度が所定の値Sa以上での運転時間が、所定時間ta以上経過した(ST4:YES)と判断した場合は、オイル回収制御を開始するとともに、積算タイマ41aの積算時間をリセットする(ST5)。
ステップST5の後、オイル回収制御が開始されると、制御ユニット40は、積算タイマ41bの計時動作を実行させる(ST6)とともに、圧縮器12の運転周波数を目標周波数のf1まで低下させる(ST7)。
圧縮機12の運転周波数を低下させると、低圧側の冷媒配管11および室内ユニット20の内部圧力が上がり、これにより、冷媒配管11および室内ユニット20の冷媒が液相状態となり、低圧側の冷媒配管11および室内ユニット20に滞留したオイルが液相状態の冷媒に溶け込み、オイルの流動性が良好となる。
【0054】
そして、制御ユニット40は、タイマ41bが積算した時間を判定する。すなわち圧縮機12の運転周波数を低下させた運転が所定時間td経過したか否かを判断する(ST8)。
ステップST8において制御ユニット40は、圧縮機12の運転周波数を低下させた運転が所定時間td経過したと判断した場合は(ST8:YES)、タイマ41bをリセットし(ST9)、タイマ41cの計時動作を開始させる(ST10)。ステップST10の後、圧縮機12の運転周波数を目標周波数のf2まで上昇させる(ST11)。
【0055】
圧縮機12の運転周波数を上昇させることにより、低圧側の冷媒配管11および室内ユニット20に滞留したオイルを液相状態の冷媒とともに回収することができ、オイルの回収量を増大させることができる。
その後、制御ユニット40は、タイマ41cが積算した時間を判定する。すなわち圧縮機12の運転周波数を高めた運転が所定時間tu経過したか否かを判断する(ST12)。
ステップST12において、制御ユニット40は圧縮機12の運転周波数を上昇させた運転が所定時間tu経過したと判断した場合は(ST12:YES)、積算タイマ41cをクリアする(ST13)とともに、圧縮機12の動作制御を通常制御(蒸発温度制御)運転に移行する。
積算タイマ41cをクリアしたあとは、冷房運転時であれば、図4に示す処理フローの開始に戻って上述の処理を繰り返しても良い。
なお、冷凍サイクルシステム1の低圧側にオイルが溜まる条件を満たしたと判断するための処理であるステップST1またはステップST2の判定処理は、これらのいずれか一方のみを行うものとしても良い。
【0056】
本実施の形態によれば、各室内ユニット20および冷媒配管11内のオイルの滞留状態を、圧縮機12の吸込過熱度および運転周波数から判断してオイル回収制御を行うようにしているので、不必要なオイル回収動作を抑制することができ、空調性の変動を抑制しつつ、常に圧縮機12にオイルがある状態を保つことができる。
このとき、オイル回収制御の際にも、冷房サーモON機の室内膨張弁22を通常の過熱度制御動作が継続されることにより、冷凍サイクルの変動による空調性の変動を抑えることができ、また、冷媒の液相状態化による低圧側への多量の液バックを抑制することができる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態においては、冷房運転の運転時間を積算する積算タイマ41(カウント手段)を備えた制御ユニット40を備え、制御ユニット40は、積算タイマ41により、圧縮機12の低圧側にオイルが溜まる条件を満たした状態での運転時間の積算時間が所定時間ta以上となった場合に、圧縮機12の運転周波数を低下させ、運転周波数を低下させてから所定時間td経過した後に圧縮機12の運転周波数を所定時間tu高めるオイル回収制御を実施し、制御ユニット40は、オイル回収制御を実行している間、室内熱交換器21を通る冷媒の過熱度に基づき室内膨張弁22の開度を制御する。
これにより、オイル回収制御時に、制御ユニット40により、圧縮機12の運転周波数を低下させ、所定時間td経過した後、圧縮機12の運転周波数を高めるように制御するようにしているので、過度の液バックを発生させることなく、低圧側の冷媒配管11および室内ユニット20に滞留したオイルを液相状態の冷媒とともに回収することができ、これにより、オイルの回収量を増大させることができる。
なお、圧縮機12の低圧側にオイルが溜まる条件として、圧縮機12の吸込過熱度および運転周波数から判断したが、吸込過熱度および運転周波数のいずれか一方のみを用いて判断することとしても良い。
【0058】
また、本実施形態においては、圧縮機12の吸込側の過熱度を検知する吸込温度センサ36および低圧センサ37(過熱度検知手段)を備え、制御ユニット40は、吸込温度センサ36および低圧センサ37により検知される吸込側の過熱度が所定値Sa以上となった場合に、圧縮機12の低圧側にオイルが溜まる条件を満たしたと判断してオイル回収制御を行う。
これにより、低圧側の冷媒配管11および室内ユニット20内のオイルの滞留状態を、圧縮機12の吸込過熱度から判断してオイル回収制御を行うようにしているので、不必要なオイル回収動作を抑制することができ、空調性の変動を抑制しつつ、常に圧縮機12にオイルがある状態を保つことができる。
【0059】
また、本実施形態においては、制御ユニット40は、圧縮機12の運転周波数が所定値fa以上となった場合に、冷凍サイクルシステム1の低圧側にオイルが溜まる条件を満たしたと判断してオイル回収制御を行う。
これにより、低圧側の冷媒配管11および室内ユニット20内のオイルの滞留状態を、圧縮機12の運転周波数から判断してオイル回収制御を行うようにしているので、不必要なオイル回収動作を抑制することができ、空調性の変動を抑制しつつ、常に圧縮機12にオイルがある状態を保つことができる。
【0060】
また、本実施形態においては、室内ユニット20は、室内膨張弁22を備え、制御ユニット40がオイル回収制御を行う際に、冷凍サイクルシステム1に接続されている室内ユニット20が冷房サーモONの状態にある(冷房サーモON機である)場合、その冷房サーモON機の室内膨張弁22を、通常運転時と同様の過熱度制御で動作させる。
これにより、オイル回収時における冷凍サイクルの変動を抑えることができ、また、冷媒の液相状態化による低圧側への多量の液バックを抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態においては、室内ユニット20は、室内膨張弁22を備え、制御ユニット40は、オイル回収制御を行う際に、冷凍サイクルシステム1に接続されている室内ユニット20が冷房サーモOFFの状態にある(冷房サーモOFF機である)、送風運転の状態にある(送風機である)、停止状態にある(停止機である)場合、それぞれの室内膨張弁22を所定開度に開くように制御する。
これにより、オイル回収制御時に、室内ユニット20に滞留したオイルを液相状態の冷媒とともに効率よく回収することができる。
【0062】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
実施の形態2における冷凍サイクルシステムの構成は、実施の形態1において、図1および図2を参照して説明した構成と同様であり、その詳細についての説明を省略する。
実施の形態1においては、吸込過熱度の値、圧縮機12の運転周波数の値、積算時間taに応じてオイル回収制御に移行(オイル回収制御を開始)していたが、実施の形態2においては、制御ユニット40が、圧縮機12からのオイルの流出しやすさおよび圧縮機12へのオイルの戻りにくさを判断し、この判断に基づいて、オイル回収制御を行う。これにより、オイル回収制御をより適正なタイミングで行うことができる。
【0063】
冷凍サイクルシステム1において、オイルの流出しやすさは、圧縮機12の吐出過熱度Soと運転周波数fとから判断できる。圧縮機12の吐出過熱度Soが低くなるにつれてオイルが流出しやすくなり、圧縮機12の運転周波数fが高くなるにつれてオイルが流出しやすくなる。また、オイルの戻りにくさは、圧縮機12の吸込過熱度Siと室内膨張弁22の最大開度Oとから判断できる。圧縮機12の吸込過熱度Siが高くなるにつれてオイルが戻りにくくなり、室内ユニット20の室内膨張弁22の最大開度Oが大きくなるにつれてオイルが戻りにくくなる。
そこで、本実施形態においては、オイルの流出しやすさについて、あらかじめ圧縮機12の吐出過熱度および圧縮機12の運転周波数に対する重み付けの値(重み値)を設定しておく。また、オイルの戻りにくさについて、あらかじめ圧縮機12の吸込過熱度および室内膨張弁22の最大開度に対する重み付けの値(重み値)を設定しておく。設定されたそれぞれの重み付けの値(重み値)は、例えばデータテーブルとして制御ユニット40に予め記憶される。
【0064】
図5は各重み値の一例を示した図である。
本実施の形態においては、「オイルの流出しやすさ」の指標となる圧縮機12の吐出過熱度So(単位:K)および圧縮機12の運転周波数f(単位:Hz)と、「オイルの戻りにくさ」の指標となる、圧縮機の吸込過熱度Si(単位:K)および室内ユニット20の室内膨張弁22の最大開度O(単位:パルス)とのそれぞれの数値が取り得る範囲を複数の範囲に区分して、それぞれ対応した重み値C1~C4を設定している。
図5に示すように、本実施の形態においては重み付けのための区分を一例として3つまたは4つとしているが、区分数は複数あればよく、3あるいは4に限定されない。
【0065】
図5に示すように、圧縮機12の吐出過熱度Soの重み値C1は、吐出過熱度Soが0≦So<5Kの範囲ではC1=7.2に、5K≦So<10Kの範囲ではC1=3.0に、10K≦Soの範囲ではC1=0.2に、それぞれ設定される。すなわち、圧縮機12の吐出過熱度Soが低いほどオイルが流出しやすくなるため、吐出過熱度Soが低いほど、オイルの流出しやすさの重み値が大きくなるように設定される。
【0066】
同様に圧縮機12の運転周波数fの重み値C2は、運転周波数fが0≦f<46Hzの範囲ではC2=0.5に、46Hz≦f<65Hzの範囲ではC2=0.6に、65Hz≦f<80Hzの範囲ではC2=0.8に、80Hz≦fの範囲ではC2=1.8に、それぞれ設定される。すなわち、圧縮機12の運転周波数fが高いほどオイルが流出しやすくなるため、運転周波数fが高いほど、オイルの流出しやすさの重み値が大きくなるように設定される。
なお、重み値C1も重み値C2も、オイルの流出しやすさを示す大小関係にあれば、具体的な数値が任意に変更されてもよい。
【0067】
圧縮機12の吸込過熱度Siの重み値C3は、吸込過熱度Siが0≦Si<5Kの範囲ではC3=0.6に、5K≦Si<10Kの範囲ではC3=0.7に、10≦Siの範囲ではC3=0.8に、それぞれ設定される。すなわち、圧縮機12の吸込過熱度Siが高いほどオイルが戻りにくくなるため、吸込過熱度Siが高いほどオイルの戻りにくさの重み値が大きくなるように設定される。
【0068】
室内ユニット20における室内膨張弁22の最大開度Oの重み値C4は、最大開度Oが、O<200パルスの範囲ではC4=0.6に、200パルス≦O<340パルスの範囲ではC4=0.7に、340パルス≦O≦480の範囲ではC4=0.8に、それぞれ設定される。すなわち、室内膨張弁22の最大開度Oが大きいほどオイルが戻りにくくなるため、最大開度Oが高いほどオイルの戻りにくさの重み値が大きくなるように設定される。
また、室内ユニット20が複数接続されている場合は、接続されている全ての室内ユニット20の開度を検出し、検出した複数の開度のうち最大のものを最大開度Oとして採用し、重み付けを行う。
【0069】
なお、重み値C3もC4も、オイルの戻りにくさを示す大小関係にあれば、具体的な数値が任意に変更されてもよい。また、各重み値やそれぞれの検出値(So、f、Si、O)が取り得る範囲の区分は、図5に示す値に限定されるものではなく、冷凍サイクルシステム1の規模や圧縮機12の能力、室内ユニット20の性能など、必要に応じて任意の値や範囲に調整されてよい。
【0070】
また、本実施形態において制御ユニット40は、吐出温度センサ30および高圧センサ31が検出する圧縮機12の吐出冷媒の温度および圧力の検出値に基づいて圧縮機12の吐出過熱度Soを算出する。制御ユニット40は、自身が制御している圧縮機12の運転周波数fを取得する。
また、制御ユニット40は、吸込温度センサ36および低圧センサ37が検出する圧縮機12の吸込冷媒の温度および圧力の検出値に基づいて圧縮機12の吸込過熱度Siを算出する。制御ユニット40は、自身が制御している室内膨張弁22の最大開度Oを取得する。
【0071】
制御ユニット40は、算出した圧縮機12の吐出過熱度Soおよび取得した圧縮機12の運転周波数fに基づいて、圧縮機12の吐出過熱度の重み値C1および圧縮機12の運転周波数の重み値C2を設定する。
同様に、制御ユニット40は、算出した圧縮機12の吸込過熱度Siおよび取得した室内膨張弁22の最大開度Oに基づいて、圧縮機12の吸込過熱度の重み値C3および室内膨張弁22の最大開度の重み値C4を設定する。
【0072】
さらに、制御ユニット40は、各重み付け値に基づいて、以下の式により、重み付け値の判定カウント値C5を求める。
判定カウント値C5=(吐出過熱度の重み値C1×運転周波数の重み値C2)+(吸込過熱度の重み値C3×室内膨張弁最大開度の重み値C4)
制御ユニット40は、任意の間隔時間ごと(例えば一分ごと)に判定カウント値C5を算出してこの算出結果を積算し、積算した値は積算カウント値C5Σとして記憶する。
【0073】
また、圧縮機12の吐出過熱度の重み値C1、圧縮機12の運転周波数の重み値C2、圧縮機12の吸込過熱度の重み値C3および室内膨張弁最大開度の重み値C4の取得、およびこれらの取得値に基づく重み付け値の決定についても所定間隔時間ti(任意の間隔時間)ごとに行われる。この場合の所定時間は、積算タイマ41により計測する。
そして本実施の形態において制御ユニット40は、積算カウント値C5Σが所定のカウント値Ctを超えたか否かを判断し、所定のカウント値Ctを超えたと判断した場合は、オイル回収制御を行う。本実施形態においては、所定のカウント値Ctを、例えば、150カウントに設定している。
【0074】
次に、実施の形態2の動作について説明する。
ただし、以下の説明において、説明の便宜上、積算タイマ41を3つの積算タイマ41i、41b、41cに分けて説明する。
積算タイマ41iは所定間隔時間tiをカウント(計時)するタイマ、タイマ41b、41cは、実施の形態1と同様であり、オイル回収制御時に圧縮機12の運転周波数を下げる時間をカウントするタイマをタイマ41bとし、タイマ41cを、オイル回収制御時に圧縮器12の周波数を上昇させる時間をカウントするタイマとする。また、実現手段としては、1つの積算タイマを用いてもよいし、複数の積算タイマを適宜用いてもよい。
【0075】
図6は、制御ユニット40が実行する制御処理を示すフローチャートである。
冷凍サイクルシステム1の運転状態が冷房運転である場合(ST21:YES)、制御ユニット40は、積算タイマ41iのカウント(計時)動作を開始する(ST22)。
その後、所定間隔時間tiが経過すると(ST23:YES)、圧縮機12の吐出過熱度Soの算出および圧縮機12の運転周波数f取得が行われる。そして、圧縮機12の吐出過熱度Soおよび圧縮機12の運転周波数fに基づいて、それぞれの重み付け値C1およびC2を決定する(ST24)。
続いて、制御ユニット40は、算出した圧縮機12の吸込過熱度Siおよび室内膨張弁22の最大開度Oを取得し、圧縮機12の吸込過熱度Siおよび室内膨張弁22の最大開度Oに基づいて、それぞれの重み値C3およびC4を決定する(ST25)。
【0076】
制御ユニット40は、ステップST24およびステップST25にて決定した各重み値および上述した式を用いて、重み値の判定カウント値C5を演算する(ST26)。ステップST26にて算出した今回の判定カウント値C5は、前回までに積算した積算カウント値C5(初期状態ではC5=0)に積算されて今回の積算カウント値ΣC5が算出される(ST27)。算出された今回の積算カウント値ΣC5が制御ユニット40のRAMなどに記憶される。
制御ユニット40は、記憶された積算カウント値ΣC5と予め設定していた所定のカウント値Ctを比較し、積算カウント値ΣC5が所定のカウント値Ctを超えたか否かを判断する(ST29)。制御ユニット40は、ステップST29において積算カウント値ΣC5が所定のカウント値Ctを超えたと判断した場合は(ST29:YES)、オイル回収制御を開始する。
【0077】
一方、ステップST29にて、積算カウント値ΣC5が所定のカウント値Ctを超えないと判断した場合は(ST29:NO)、積算タイマ41iをリセット(積算タイマ41iの計時時間をゼロにする(ST30)。ステップST30にて積算タイマ41iを初期状態にした後は、ステップST21へ処理フローを戻す。
【0078】
ステップST29において積算カウント値ΣC5が所定のカウント値Ctを超えたと判断され、オイル回収制御が開始されると、制御ユニット40は実施の形態1と同様に、圧縮器12の運転周波数を目標周波数のf1まで低下させる(ST31)とともに、積算タイマ41bの計時動作を実行させる(ST32)。
そして、制御ユニット40は、タイマ41bが積算した時間を判定する。すなわち圧縮機12の運転周波数を低下させた運転が所定時間tdが経過したか否かを判断する(ST33)。
【0079】
ステップST33において、制御ユニット40は圧縮機12の運転周波数を低下させた運転が、所定時間tdが経過したと判断した場合は(ST33:YES)、タイマ41bをリセットする(ST34)とともに、圧縮機12の運転周波数を目標周波数のf2まで上昇させながら所定時間tu運転周波数fを高めるように制御する(ST35)。このとき積算タイマ41cの計時動作を開始する(ST36)。
【0080】
その後、制御ユニット40は、タイマ41cが積算した時間を判定する。すなわち圧縮機12の運転周波数を高めた運転が所定時間tuが経過したか否かを判断する(ST37)。
ステップST37において、制御ユニット40は圧縮機12の運転周波数を上昇させた運転が所定時間tu経過したと判断した場合は(ST37:YES)、積算タイマ41cをリセットし(ST38)、記憶保持していた積算カウント値ΣC5をリセット(ゼロあるいは初期値に変更)して、通常冷房運転の制御に戻る(ST40)。
通常冷房運転に戻した後は、ステップST21に処理を戻しても良いが、任意の時間が経過してからステップS21の処理を開始するようにしても良い。
【0081】
以上述べたように、本実施形態においては、制御ユニット40は、圧縮機12からのオイルの流出しやすさおよび圧縮機12へのオイルの戻りにくさを判定し、これらオイルの流出しやすさおよび戻りにくさに基づく重み付けを行い、この重み付けの積算値に基づいてオイル回収制御を行う。
これにより、圧縮機12の内部におけるオイル量を判定することができ、圧縮機12内部のオイル量に応じてオイル回収制御を行うので、不必要なオイル回収動作を抑制することができ、空調性の変動を抑制しつつ、常に圧縮機12に充分なオイルがある状態を保つことができる。
【0082】
また、本実施形態においては、室内ユニット20は、室内膨張弁22を備え、制御ユニット40は、オイルの流出しやすさは、圧縮機12からの吐出過熱度および圧縮機12の運転周波数に基づいて判断し、オイルの戻りにくさは、圧縮機12の吸込過熱度と室内膨張弁22の最大開度に基づいて判断する。
これにより、圧縮機12の内部におけるオイル量が適正か否かを判定することが可能となる。
なお、所定のカウント値Ctは、重み値の数値や冷凍サイクルシステム1の規模(接続される室外ユニット10や室内ユニット20の数や冷媒配管11の長さなど)や圧縮機12の能力など考慮して、適宜設定される値として良い。
【0083】
以上説明したとおり、本発明によれば従来の技術の課題が解決される。
すなわち、従来の技術では、冷媒を一定の流速以上にすることを目的とした圧縮機の運転周波数の上昇が、オイル回収動作に入ってすぐに実施されるために、オイル回収動作中の蒸発圧力は低下する方向となり、低圧配管部には液冷媒は存在しにくい状態となる。そのため、オイルを戻すためには多量の液冷媒を低圧側に流入させることになり、過度の液バックを発生し、圧縮機の信頼性を損なうおそれがあった。特に、長時間停止され室内熱交換器及び接続配管の温度が雰囲気温度まで上昇した停止機が存在する場合には、その部分には液冷媒が流れにくいために、オイル回収が不十分となるか或いはその部分のオイル回収を主眼とした動作にすれば、他の冷房運転中の室内機から多量の液バックを起こすことになる。
【0084】
これに対し、本発明の冷凍サイクルシステムは、運転周波数を変化させることで能力を可変できる圧縮機と室外熱交換器とを搭載した室外ユニットと、前記室外ユニットに接続された複数の室内ユニットとを備えた冷凍サイクル装置において、冷房運転の運転時間を積算するカウント手段を備えた制御ユニットを備え、前記制御ユニットは、前記カウント手段により、前記圧縮機の低圧側にオイルが溜まる条件を満たした状態での運転時間の積算時間が所定時間以上となった場合に、前記圧縮機の運転周波数を低下させ、所定時間経過後に前記圧縮機の運転周波数を高めるオイル回収制御を行う。
したがって、オイル回収制御時に、制御ユニットにより圧縮機の運転周波数を低下させることで、低圧側の冷媒配管の圧力が上がり、低圧配管部の全てで冷媒が液相状態となりやすくなるため、低圧側の冷媒配管全てにおいてに滞留したオイルが液相状態の冷媒に溶け込んでオイルの流動性が良好となる。そのため、低圧側の冷媒配管および室内ユニットの全てに滞留したオイルを液相状態の冷媒とともに回収することが可能となる。
【0085】
また、本発明によれば、低圧配管部の温度が雰囲気温度まで上昇するほど長時間にわたって、その動作が停止されていた室内ユニット(停止機)が存在している場合でも、その停止機の室内熱交換器及び接続配管に対しても、蒸発圧力を引き上げるため、容易にオイルが液相状態の冷媒に溶け込む状態とすることができ、これによって、従来のものよりもオイルの回収がより確実に容易に行うことができる。
さらに、本発明によれば、オイルの流動性を良くするための液相状態の冷媒を発生させることを、蒸発圧力を上昇させることで行っているために、通常の運転状態に戻る過程で蒸発圧力が低下し、液冷媒は蒸発するために過度の液バックを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、冷凍サイクルシステムにおいて、適正に配管内および室内ユニット内に溜まったオイルを回収することができるもので、冷凍機、空気調和装置、給湯空調複合装置などの用途に適用できる。
【符号の説明】
【0087】
1 冷凍サイクルシステム
10 室外ユニット
11 冷媒配管
12 圧縮機
13 オイルセパレータ
16 室外熱交換器
18 アキュムレータ
19 オイル戻し穴
20 室内ユニット
21 室内熱交換器
22 室内膨張弁
30 吐出温度センサ
31 高圧センサ
32 高圧スイッチ
33 熱交ガス温度センサ
34 熱交液温度センサ
35 外気温センサ
36 吸込温度センサ
37 低圧センサ
38 室内液温度センサ
39 室内ガス温度センサ
40 制御ユニット
41 積算タイマ
図1
図2
図3
図4
図5
図6