(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】路側装置、通信システム、異常検知方法および異常通知方法
(51)【国際特許分類】
G08B 21/02 20060101AFI20221209BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
G08B21/02
G08B25/04 K
(21)【出願番号】P 2017171080
(22)【出願日】2017-09-06
【審査請求日】2020-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 剛
(72)【発明者】
【氏名】須藤 浩章
(72)【発明者】
【氏名】大久保 義行
(72)【発明者】
【氏名】石田 淳
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-039998(JP,A)
【文献】特開2009-014440(JP,A)
【文献】特開2008-193408(JP,A)
【文献】特開2009-282930(JP,A)
【文献】特開2017-068335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C21/26
G08B19/00-31/00
G08G1/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に設置され、車載装置との間で位置情報を含むメッセージを交換して危険判定を行う歩行者装置と路歩間通信を行う路側装置であって、
前記歩行者装置と路歩間通信を行う通信部と、
前記歩行者装置から送信される前記メッセージを前記通信部で受信すると、受信した前記メッセージに含まれる歩行者情報を通行履歴情報として蓄積する記憶部と、
前記通行履歴情報に基づいて、前記歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを検知する制御部と、
を備えることを特徴とする路側装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生した旨の情報を含むメッセージを、前記通信部から周辺の歩行者装置に送信することを特徴とする請求項1に記載の路側装置。
【請求項3】
さらに、保護者が所持する保護者装置と通信を行うネットワーク通信部を備え、
前記制御部は、前記歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生した旨の通知を、前記ネットワーク通信部から前記保護者装置に送信することを特徴とする請求項1に記載の路側装置。
【請求項4】
前記通信部は、前記歩行者装置に設けられた検出部で検出された加速度、方位、衝撃、音声の少なくともいずれかに関する検出情報を含む前記メッセージを受信し、
前記制御部は、前記検出情報に基づいて、前記歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを検知することを特徴とする請求項1に記載の路側装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記通行履歴情報に基づいて、過去の所定期間内に通行履歴がない人物が、他の人物と同行している状態である場合に、前記異常事態として連れ去りが発生したものと判定することを特徴とする請求項1に記載の路側装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記通行履歴情報に基づいて、過去の所定期間内に同行履歴がある複数の人物が同行している状態から、同行していない状態に変化した場合に、前記異常事態として置き去りが発生したものと判定することを特徴とする請求項1に記載の路側装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記通行履歴情報に基づいて、過去の所定期間内に位置情報の変化がない人物が存在する場合に、前記異常事態として監禁が発生したものと判定することを特徴とする請求項1に記載の路側装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記通行履歴情報に基づいて、過去の所定期間内に通行履歴がない人物が、他の人物に追随するように移動する状態である場合、または、その人物が他の人物の移動経路上で静止したまま移動しない状態である場合に、前記異常事態としてストーキングが発生したものと判定することを特徴とする請求項1に記載の路側装置。
【請求項9】
前記通信部は、前記歩行者装置を所持する人物に対する暴行暴言が行われた場合に、暴行暴言検知情報を含むメッセージを前記歩行者装置から受信し、
前記制御部は、前記通行履歴情報に基づいて、過去の所定期間内に同行履歴がある複数の人物が同行している状態で、前記暴行暴言検知情報を含むメッセージを受信した場合に、前記異常事態としていじめが発生したものと判定することを特徴とする請求項1に記載の路側装置。
【請求項10】
前記通信部は、歩行者端末1において危険判定により車両が歩行者に衝突する危険性が高いと判定された後に衝撃が検知された場合に、衝突検知情報を含むメッセージを前記歩行者装置から受信し、また、前記車載装置から送信されるメッセージを受信し、
前記制御部は、前記衝突検知情報を含むメッセージを受信した後に、前記車載装置から送信されるメッセージに含まれる車両の位置情報に基づいて、車両が衝突地点から走り去ったことを検知した場合に、前記異常事態としてひき逃げが発生したものと判定することを特徴とする請求項1に記載の路側装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記通行履歴情報に基づいて、人物が通行予定時間帯に通行していない場合に、前記異常事態が発生したものと判定することを特徴とする請求項1に記載の路側装置。
【請求項12】
車載装置との間で位置情報を含むメッセージを交換して危険判定を行う歩行者装置と、道路に設置された路側装置とが路歩間通信を行う通信システムであって、
前記路側装置は、
前記歩行者装置と路歩間通信を行う通信部と、
前記歩行者装置から送信される前記メッセージを前記通信部で受信すると、受信した前記メッセージに含まれる歩行者情報を通行履歴情報として蓄積する記憶部と、
前記通行履歴情報に基づいて、前記歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを検知する制御部と、
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項13】
さらに、前記路側装置で検知した異常事態を管理する管理装置を備え、
前記管理装置は、
前記路側装置と通信を行う通信部と、
前記路側装置から送信される前記通行履歴情報を前記通信部で受信すると、受信した前記通行履歴情報を蓄積する記憶部と、
前記通行履歴情報に基づいて、過去の異常発生時の状況を再現する画面を表示装置に表示する制御部と、
を備えることを特徴とする
請求項12に記載の通信システム。
【請求項14】
さらに、前記路側装置で検知した異常事態を管理する管理装置を備え、
前記管理装置は、
前記路側装置と通信を行う通信部と、
前記路側装置から送信される前記通行履歴情報を前記通信部で受信すると、受信した前記通行履歴情報を蓄積する記憶部と、
前記通行履歴情報に基づいて、異常事態が発生するまでの当事者の行動の特徴に関する行動パターン情報を生成し、この行動パターン情報と、前記歩行者装置から取得した直近の歩行者情報とに基づいて、異常事態の発生を予測して、異常予測通知を前記路側装置に送信する制御部と、
を備えることを特徴とする
請求項12に記載の通信システム。
【請求項15】
前記歩行者装置の制御部は、異常通知サービスにおいて情報提供を行うことに関するサービス選択情報を前記路側装置の前記通信部に送信し、
前記路側装置の制御部は、前記通信部で受信した前記サービス選択情報に基づいて、前記歩行者装置を所持する人物への情報提供料の支払いに関する情報を生成することを特徴とする
請求項12に記載の通信システム。
【請求項16】
前記歩行者装置の制御部は、異常通知サービスを利用することに関するサービス選択情報を前記路側装置の前記通信部に送信し、
前記路側装置の制御部は、前記通信部で受信した前記サービス選択情報に基づいて、異常通知サービスの利用者からのサービス利用料の徴収に関する情報を生成することを特徴とする
請求項12に記載の通信システム。
【請求項17】
前記路側装置は、ネットワーク通信部を備え、
前記路側装置の制御部は、前記通行履歴情報に基づいて、人物ごとに異常事態が発生した頻度を取得して、その頻度に応じて当該人物が加入する保険の保険料を軽減する情報を生成し、前記ネットワーク通信部から外部に送信することを特徴とする
請求項12に記載の通信システム。
【請求項18】
道路に設置され、車載装置との間で位置情報を含むメッセージを交換して危険判定を行う歩行者装置と路歩間通信を行う路側装置の異常検知方法であって、
前記路歩間通信により、前記歩行者装置から送信される前記メッセージを受信し、
受信した前記メッセージに含まれる歩行者情報を通行履歴情報として蓄積し、
前記通行履歴情報に基づいて、前記歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを検知することを特徴とする異常検知方法。
【請求項19】
歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを路側装置から周辺の歩行者装置に通知する異常通知方法であって、
前記歩行者装置は、
歩行者情報を含むメッセージを前記路側装置に送信し、
前記路側装置は、
前記歩行者装置から送信される前記メッセージを受信すると、
前記メッセージに含まれる歩行者情報を通行履歴情報として蓄積し、
前記通行履歴情報に基づいて、前記歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを検知し、
前記歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生した旨の情報を含むメッセージを、周辺の前記歩行者装置に送信することを特徴とする異常通知方法。
【請求項20】
歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを路側装置から保護者装置に通知する異常通知方法であって、
前記歩行者装置は、
歩行者情報を含むメッセージを前記路側装置に送信し、
前記路側装置は、
前記歩行者装置から送信される前記メッセージを受信すると、
前記メッセージに含まれる歩行者情報を通行履歴情報として蓄積し、
前記通行履歴情報に基づいて、前記歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを検知し、
前記歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生した旨の通知を前記保護者装置に送信することを特徴とする異常通知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に設置され、車載装置との間で位置情報を含むメッセージを交換して危険判定を行う歩行者装置と路歩間通信を行う路側装置、歩行者装置、歩行者装置と路側装置とが路歩間通信を行う通信システム、歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを検知する異常検知方法、歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを路側装置から通知する異常通知方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ITS(Intelligent Transport System:高度道路交通システム)を利用した安全運転支援無線システムの実用化および普及に向けた検討が進められている。この安全運転支援無線システムでは、車両に搭載された車載端末同士で通信を行う車車間通信や、道路上に設置された路側機と車載端末との間で通信を行う路車間通信により、車両の位置情報などを含むメッセージをやり取りして、車両の運転者に事故回避のための注意喚起を行うようにしている。
【0003】
また、近年、歩行者の事故を防止するため、歩行者に所持させた歩行者端末と車載端末との間で通信を行う歩車間通信が提案されている。この歩車間通信では、歩行者端末と車載端末とが、位置情報などを含むメッセージを直接やり取りして、歩行者の存在を車載端末に通知するとともに車両の存在を歩行者端末に通知することで、歩行者と車両の運転者との双方に対して適切なタイミングで注意喚起を行うことができることから、歩行者の事故を防止する上で大きな効果が期待される。
【0004】
さらに、犯罪などの異常事態が発生した場合に、その異常事態を早期に検知して、救護などの対応が可能な人物に、異常事態が発生したことを通知することが望ましい。
【0005】
このような異常通知に関連する技術として、従来、移動体の位置情報を移動履歴情報として蓄積して、その移動履歴情報を解析することで、移動体の進路などに関する種々の情報を取得して、その情報を利用者に提供し、また、種々の異常事態を検知すると、予め登録された端末に通報する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の技術では、移動履歴情報に基づいて種々の情報を利用者に提供したり、種々の異常事態の発生を通報したりすることができるが、人物に異常事態が発生したことを検知するために、専用の端末を人物に所持させる必要があるため、コストが嵩むという問題があった。一方、前記のように、安全運転支援無線システムでは、歩行者端末を歩行者に所持させることから、この歩行者端末を利用して、人物に異常事態が発生したことを検知することが考えられ、これによりコストの大幅な削減が期待される。
【0008】
そこで、本発明は、歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを検知することができる路側装置、歩行者装置、通信システム、異常検知方法および異常通知方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の路側装置は、道路に設置され、車載装置との間で位置情報を含むメッセージを交換して危険判定を行う歩行者装置と路歩間通信を行う路側装置であって、前記歩行者装置と路歩間通信を行う通信部と、前記歩行者装置から送信される前記メッセージを前記通信部で受信すると、受信した前記メッセージに含まれる歩行者情報を通行履歴情報として蓄積する記憶部と、前記通行履歴情報に基づいて、前記歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを検知する制御部と、を備える構成とする。
【0010】
また、本発明の通信システムは、車載装置との間で位置情報を含むメッセージを交換して危険判定を行う歩行者装置と、道路に設置された路側装置とが路歩間通信を行う通信システムであって、前記路側装置は、前記歩行者装置と路歩間通信を行う通信部と、前記歩行者装置から送信される前記メッセージを前記通信部で受信すると、受信した前記メッセージに含まれる歩行者情報を通行履歴情報として蓄積する記憶部と、前記通行履歴情報に基づいて、前記歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを検知する制御部と、を備える構成とする。
【0011】
また、本発明の異常検知方法は、道路に設置され、車載装置との間で位置情報を含むメッセージを交換して危険判定を行う歩行者装置と路歩間通信を行う路側装置の異常検知方法であって、前記路歩間通信により、前記歩行者装置から送信される前記メッセージを受信し、受信した前記メッセージに含まれる歩行者情報を通行履歴情報として蓄積し、前記通行履歴情報に基づいて、前記歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを検知する構成とする。
【0012】
また、本発明の異常通知方法は、歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを路側装置から周辺の歩行者装置に通知する異常通知方法であって、前記歩行者装置は、歩行者情報を含むメッセージを前記路側装置に送信し、前記路側装置は、前記歩行者装置から送信される前記メッセージを受信すると、前記メッセージに含まれる歩行者情報を通行履歴情報として蓄積し、前記通行履歴情報に基づいて、前記歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを検知し、前記歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生した旨の情報を含むメッセージを、周辺の前記歩行者装置に送信する構成とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係る通信システムの全体構成図
【
図2】第1実施形態に係る路側機5で行われる異常事態検知の概要を示す説明図
【
図3】第1実施形態に係る路側機5で行われる異常事態検知の概要を示す説明図
【
図4】第1実施形態に係る歩行者端末1および路側機5の概略構成を示すブロック図
【
図5】第1実施形態に係る歩行者端末1および路側機5における連れ去りに関する動作手順を示すフロー図
【
図6】第1実施形態に係るメッセージに含まれる歩行者情報、路側機5に蓄積される通行履歴情報、およびメッセージに含まれる路側機情報の一例を示す説明図
【
図7】第1実施形態に係る歩行者端末1および路側機5における置き去りに関する動作手順を示すフロー図
【
図8】メッセージに含まれる歩行者情報、および通行履歴情報として蓄積される歩行者情報の一例を示す説明図
【
図9】第1実施形態に係る歩行者端末1および路側機5における監禁に関する動作手順を示すフロー図
【
図10】メッセージに含まれる歩行者情報、および通行履歴情報として蓄積される歩行者情報の一例を示す説明図
【
図11】第1実施形態に係る歩行者端末1および路側機5におけるストーキングに関する動作手順を示すフロー図
【
図12】メッセージに含まれる歩行者情報、および通行履歴情報として蓄積される歩行者情報の一例を示す説明図
【
図13】第1実施形態に係る歩行者端末1および路側機5におけるいじめに関する動作手順を示すフロー図
【
図14】メッセージに含まれる歩行者情報、および通行履歴情報として蓄積される歩行者情報の一例を示す説明図
【
図15】第1実施形態に係る歩行者端末1におけるひき逃げに関する動作手順を示すフロー図
【
図16】第1実施形態に係る歩行者端末1および路側機5におけるひき逃げに関する動作手順を示すフロー図
【
図17】第2実施形態に係る通信システムの全体構成図
【
図18】第2実施形態に係る管理サーバ7に表示される異常再現画面を示す説明図
【
図19】第2実施形態に係る路側機5および管理サーバ7の概略構成を示すブロック図
【
図20】第2実施形態に係る路側機5および管理サーバ7の動作手順を示すフロー図
【
図21】第2実施形態に係る管理サーバ7に蓄積される通行履歴情報の一例を示す説明図
【
図22】第3実施形態に係る路側機5および管理サーバ7の概略構成を示すブロック図
【
図23】第3実施形態に係る路側機5、管理サーバ7および歩行者端末1の動作手順を示すフロー図
【
図24】第3実施形態に係る路側機5、管理サーバ7および歩行者端末1の動作手順を示すフロー図
【
図25】第3実施形態に係る管理サーバ7に蓄積される通行履歴情報、およびメッセージに含まれる路側機情報の一例を示す説明図
【
図26】第4実施形態に係る通信システムの全体構成図
【
図27】第4実施形態に係る歩行者端末1および路側機5の概略構成を示すブロック図
【
図28】第4実施形態に係る歩行者端末1および路側機5の動作手順を示すフロー図
【
図29】第4実施形態に係るメッセージに含まれる情報の一例を示す説明図
【
図30】第5実施形態に係る歩行者端末1および路側機5の概略構成を示すブロック図
【
図31】第5実施形態に係る歩行者端末1および路側機5の動作手順を示すフロー図
【
図32】第5実施形態に係る歩行者端末1および路側機5の動作手順を示すフロー図
【
図33】メッセージに含まれる歩行者情報、路側機5に蓄積される通行履歴情報、およびメッセージに含まれる路側機情報の一例を示す説明図
【
図34】第6実施形態に係る通信システムの概要を示す説明図
【
図35】第6実施形態に係る歩行者端末1および路側機5の概略構成を示すブロック図
【
図36】第6実施形態に係る歩行者端末1および路側機5の動作手順を示すフロー図
【
図37】第6実施形態に係るメッセージに含まれる歩行者情報の一例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、道路に設置され、車載装置との間で位置情報を含むメッセージを交換して危険判定を行う歩行者装置と路歩間通信を行う路側装置であって、前記歩行者装置と路歩間通信を行う通信部と、前記歩行者装置から送信される前記メッセージを前記通信部で受信すると、受信した前記メッセージに含まれる歩行者情報を通行履歴情報として蓄積する記憶部と、前記通行履歴情報に基づいて、前記歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを検知する制御部と、を備える構成とする。
【0016】
これによると、歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを検知することができる。
【0017】
また、第2の発明は、前記制御部は、前記歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生した旨の情報を含むメッセージを、前記通信部から周辺の歩行者装置に送信する構成とする。
【0018】
これによると、人物に異常事態が発生したことを、周辺の歩行者に通知することができる。
【0019】
また、第3の発明は、さらに、保護者が所持する保護者装置と通信を行うネットワーク通信部を備え、前記制御部は、前記歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生した旨の通知を、前記ネットワーク通信部から前記保護者装置に送信する構成とする。
【0020】
これによると、人物に異常事態が発生したことを、遠隔地にいる保護者に通知することができる。
【0021】
また、第4の発明は、前記通信部は、前記歩行者装置に設けられた検出部で検出された加速度、方位、衝撃、音声の少なくともいずれかに関する検出情報を含む前記メッセージを受信し、前記制御部は、前記検出情報に基づいて、前記歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを検知する構成とする。
【0022】
これによると、歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを精度よく検知することができる。
【0023】
また、第5の発明は、前記制御部は、前記通行履歴情報に基づいて、過去の所定期間内に通行履歴がない人物が、他の人物と同行している状態である場合に、前記異常事態として連れ去りが発生したものと判定する構成とする。
【0024】
これによると、異常事態として連れ去りが発生したことを検知することができる。
【0025】
また、第6の発明は、前記制御部は、前記通行履歴情報に基づいて、過去の所定期間内に同行履歴がある複数の人物が同行している状態から、同行していない状態に変化した場合に、前記異常事態として置き去りが発生したものと判定する構成とする。
【0026】
これによると、異常事態として置き去りが発生したことを検知することができる。
【0027】
また、第7の発明は、前記制御部は、前記通行履歴情報に基づいて、過去の所定期間内に位置情報の変化がない人物が存在する場合に、前記異常事態として監禁が発生したものと判定する構成とする。
【0028】
これによると、異常事態として監禁が発生したことを検知することができる。
【0029】
また、第8の発明は、前記制御部は、前記通行履歴情報に基づいて、過去の所定期間内に通行履歴がない人物が、他の人物に追随するように移動する状態である場合、または、その人物が他の人物の移動経路上で静止したまま移動しない状態である場合に、前記異常事態としてストーキングが発生したものと判定する構成とする。
【0030】
これによると、異常事態としてストーキングが発生したことを検知することができる。
【0031】
また、第9の発明は、前記通信部は、前記歩行者装置を所持する人物に対する暴行暴言が行われた場合に、暴行暴言検知情報を含むメッセージを前記歩行者装置から受信し、前記制御部は、前記通行履歴情報に基づいて、過去の所定期間内に同行履歴がある複数の人物が同行している状態で、前記暴行暴言検知情報を含むメッセージを受信した場合に、前記異常事態としていじめが発生したものと判定する構成とする。
【0032】
これによると、異常事態としていじめが発生したことを検知することができる。
【0033】
また、第10の発明は、前記通信部は、歩行者端末1において危険判定により車両が歩行者に衝突する危険性が高いと判定された後に衝撃が検知された場合に、衝突検知情報を含むメッセージを前記歩行者装置から受信し、また、前記車載装置から送信されるメッセージを受信し、前記制御部は、前記衝突検知情報を含むメッセージを受信した後に、前記車載装置から送信されるメッセージに含まれる車両の位置情報に基づいて、車両が衝突地点から走り去ったことを検知した場合に、前記異常事態としてひき逃げが発生したものと判定する構成とする。
【0034】
これによると、異常事態としてひき逃げが発生したことを検知することができる。
【0035】
また、第11の発明は、前記制御部は、前記通行履歴情報に基づいて、人物が通行予定時間帯に通行していない場合に、前記異常事態が発生したものと判定する構成とする。
【0036】
これによると、見守りの対象者がいつも通行する時間に通行していないことを保護者に通知することができる。
【0037】
また、第12の発明は、車載装置との間で位置情報を含むメッセージを交換して危険判定を行う歩行者装置と、道路に設置された路側装置とが路歩間通信を行う通信システムであって、前記路側装置は、前記歩行者装置と路歩間通信を行う通信部と、前記歩行者装置から送信される前記メッセージを前記通信部で受信すると、受信した前記メッセージに含まれる歩行者情報を通行履歴情報として蓄積する記憶部と、前記通行履歴情報に基づいて、前記歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを検知する制御部と、を備える構成とする。
【0038】
これによると、第1の発明と同様に、歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを検知することができる。
【0039】
また、第13の発明は、さらに、前記路側装置で検知した異常事態を管理する管理装置を備え、前記管理装置は、前記路側装置と通信を行う通信部と、前記路側装置から送信される前記通行履歴情報を前記通信部で受信すると、受信した前記通行履歴情報を蓄積する記憶部と、前記通行履歴情報に基づいて、過去の異常発生時の状況を再現する画面を表示装置に表示する制御部と、を備える構成とする。
【0040】
これによると、過去の異常発生時の状況を管理者が事後に確認することができる。
【0041】
また、第14の発明は、さらに、前記路側装置で検知した異常事態を管理する管理装置を備え、前記管理装置は、前記路側装置と通信を行う通信部と、前記路側装置から送信される前記通行履歴情報を前記通信部で受信すると、受信した前記通行履歴情報を蓄積する記憶部と、前記通行履歴情報に基づいて、異常事態が発生するまでの当事者の行動の特徴に関する行動パターン情報を生成し、この行動パターン情報と、前記歩行者装置から取得した直近の歩行者情報とに基づいて、異常事態の発生を予測して、異常予測通知を前記路側装置に送信する制御部と、を備える構成とする。
【0042】
これによると、異常事態が発生することを、周辺の歩行者や遠隔地にいる保護者に事前に通知することができるため、異常事態を未然に防止することができる。
【0043】
また、第15の発明は、前記歩行者装置の制御部は、異常通知サービスにおいて情報提供を行うことに関するサービス選択情報を前記路側装置の前記通信部に送信し、前記路側装置の制御部は、前記通信部で受信した前記サービス選択情報に基づいて、前記歩行者装置を所持する人物への情報提供料の支払いに関する情報を生成する構成とする。
【0044】
これによると、異常通知サービスに情報提供で協力する人物に情報提供料を支払うことができる。
【0045】
また、第16の発明は、前記歩行者装置の制御部は、異常通知サービスを利用することに関するサービス選択情報を前記路側装置の前記通信部に送信し、前記路側装置の制御部は、前記通信部で受信した前記サービス選択情報に基づいて、異常通知サービスの利用者からのサービス利用料の徴収に関する情報を生成する構成とする。
【0046】
これによると、異常通知サービスを利用する利用者からサービス利用料を徴収することができる。
【0047】
また、第17の発明は、前記路側装置は、ネットワーク通信部を備え、前記路側装置の制御部は、前記通行履歴情報に基づいて、人物ごとに異常事態が発生した頻度を取得して、その頻度に応じて当該人物が加入する保険の保険料を軽減する情報を生成し、前記ネットワーク通信部から外部に送信する構成とする。
【0048】
これによると、異常事態が発生した頻度に応じて保険料を軽減することができる。
【0049】
また、第18の発明は、道路に設置され、車載装置との間で位置情報を含むメッセージを交換して危険判定を行う歩行者装置と路歩間通信を行う路側装置の異常検知方法であって、前記路歩間通信により、前記歩行者装置から送信される前記メッセージを受信し、受信した前記メッセージに含まれる歩行者情報を通行履歴情報として蓄積し、前記通行履歴情報に基づいて、前記歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを検知する構成とする。
【0050】
これによると、第1の発明と同様に、歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを検知することができる。
【0051】
また、第19の発明は、歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを路側装置から周辺の歩行者装置に通知する異常通知方法であって、前記歩行者装置は、歩行者情報を含むメッセージを前記路側装置に送信し、前記路側装置は、前記歩行者装置から送信される前記メッセージを受信すると、前記メッセージに含まれる歩行者情報を通行履歴情報として蓄積し、前記通行履歴情報に基づいて、前記歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを検知し、前記歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生した旨の情報を含むメッセージを、周辺の前記歩行者装置に送信する構成とする。
【0052】
これによると、第2の発明と同様に、人物に異常事態が発生したことを、周辺の歩行者に通知することができる。
【0053】
また、第20の発明は、歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを路側装置から保護者装置に通知する異常通知方法であって、前記歩行者装置は、歩行者情報を含むメッセージを前記路側装置に送信し、前記路側装置は、前記歩行者装置から送信される前記メッセージを受信すると、前記メッセージに含まれる歩行者情報を通行履歴情報として蓄積し、前記通行履歴情報に基づいて、前記歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを検知し、前記歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生した旨の通知を前記保護者装置に送信する構成とする。
【0054】
これによると、第3の発明と同様に、人物に異常事態が発生したことを、遠隔地にいる保護者に通知することができる。
【0055】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0056】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る通信システムの全体構成図である。
【0057】
この通信システムは、歩行者が携帯する歩行者端末1(歩行者装置)および携帯情報端末2と、車両(移動体)に搭載される車載端末3(車載装置)およびカーナビゲーション装置4と、路側機5(路側装置)と、保護者が携帯する保護者端末6と、を備えており、歩行者端末1と車載端末3との間で歩車間通信が行われ、歩行者端末1と路側機5との間で路歩間通信が行われる。
【0058】
歩車間通信では、位置情報などの所要の情報を含むメッセージを、歩行者端末1と車載端末3との間で送受信する。この歩車間通信では、ITS無線通信、すなわち、ITS(Intelligent Transport System:高度道路交通システム)を利用した安全運転支援無線システムで採用されている周波数帯(例えば700MHz帯や5.8GHz帯)を利用した無線通信によりメッセージを送受信する。
【0059】
なお、本実施形態では、歩車間通信の他に、路側機5と歩行者端末1との間でメッセージを送受信する路歩間通信や、路側機5と車載端末3との間でメッセージを送受信する路車間通信が行われるが、この路歩間通信や路車間通信は、歩車間通信と同様のITS無線通信であり、歩車間通信、路歩間通信および路車間通信で送受信されるメッセージは、共通の仕様(データ構成)に基づくものである。
【0060】
歩行者端末1は、携帯情報端末2と接続されている。この携帯情報端末2は、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、ウェアラブル端末などである。歩行者端末1では、車載端末3との間でメッセージを送受信することで、注意喚起が必要と判定すると、携帯情報端末2に注意喚起の指示を出力し、携帯情報端末2では、歩行者端末1からの指示に応じて、歩行者に対する注意喚起の出力動作(例えば音声出力や振動など)を行う。
【0061】
車載端末3は、カーナビゲーション装置4と接続されている。このカーナビゲーション装置4は、運転者に対して経路案内を行うものである。車載端末3では、歩行者端末1との間でメッセージを送受信することで、注意喚起が必要と判定すると、カーナビゲーション装置4に注意喚起の指示を出力し、カーナビゲーション装置4では、車載端末3からの指示に応じて、運転者に対する注意喚起の出力動作(例えば音声出力や画面表示など)を行う。
【0062】
なお、歩行者端末1は、携帯情報端末2に内蔵されたものとしてもよく、車載端末3は、カーナビゲーション装置4に内蔵されたものとしてもよい。
【0063】
また、歩行者端末1自身が注意喚起の出力動作を行うものとしてもよい。また、車載端末3自身が注意喚起の出力動作を行うものとしてもよい。また、車載端末3が、運転者が所持する携帯情報端末2と通信を行い、運転者に対する注意喚起の出力動作を携帯情報端末2に行わせるようにしてもよい。
【0064】
次に、第1実施形態に係る路側機5で行われる異常事態検知の概要について説明する。
図2、
図3は、路側機5で行われる異常事態検知の概要を示す説明図である。
【0065】
本実施形態では、路側機5において、自装置の周辺を通過する歩行者端末1からメッセージを受信して、そのメッセージに含まれる位置情報などの歩行者情報に基づいて、歩行者の異常事態を検知して、周辺にいる別の歩行者や、遠隔地にいる保護者に通報する。特に本実施形態では、異常事態として、連れ去り、置き去り、監禁、ストーキング、いじめ、ひき逃げを検知する。
【0066】
連れ去りは、
図2(A)に示すように、犯行時の状況として、加害者が被害者と同行している、すなわち、加害者が被害者と一緒に同一方向に移動する。そこで、本実施形態では、複数の人物が同行していることを、連れ去りの条件とする。
【0067】
ここで、本実施形態では、人物の周囲に、人物の位置を中心にして所定の大きさ(例えば半径10m)の周囲円(円形のエリア)を設定して、2人の周囲円の重複で、2人の人物が同行している状態を検知する。このとき、周囲円が重なり合う状態が所定時間継続したことを条件に加えるとよい。
【0068】
また、連れ去りは、その場所をあまり通らない人物により行われる場合が多い。そこで、本実施形態では、人物に関する条件として、過去の所定期間(例えば1週間)内に通行履歴がない人物、すなわち、路側機5の通信エリアを通行していない人物に注目する。
【0069】
また、児童の誘拐の場合のように、加害者と被害者とが互いに面識がない、すなわち、以前に会ったことがない人物である場合が多い。そこで、人物に関する条件として、過去の所定期間(例えば1週間)内に同行履歴がない人物、すなわち、路側機5の通信エリアを一緒に歩いたことがない人物であることを連れ去りの条件に加えるとよい。
【0070】
また、連れ去りは、子供を対象とする場合が多い。そこで、歩行者が子供であることを、連れ去りの条件に加えるとよい。この場合、歩行者端末1から、年齢に関する属性情報を歩行者情報としてメッセージに付加して送信して、路側機5が歩行者の属性情報を取得するようにするとよい。
【0071】
また、連れ去りの場合、抵抗する被害者を拘束する行為により、被害者に急激な動きが発生する。そこで、加速度センサにより急加速を検出し、また、方位センサにより急転回(急な向き変化)を検出したことを、連れ去りの条件に加えるとよい。
【0072】
また、車両で連れ去られる場合がある。そこで、急激な動きの後に、測位衛星の電波強度が低下して歩行者端末1が車両内に入ったことを、連れ去りの条件に加えるとよい。また、連れ去りの際に、歩行者端末1を道路に放棄される場合がある。そこで、急激な動きの後に、歩行者端末1が静止したままで位置が変化しないことを、連れ去りの条件に加えるとよい。また、連れ去りの際に、歩行者端末1が破損する場合がある。そこで、急激な動きの後に、測位衛星の電波を受信できなくなったことを、連れ去りの条件に加えるとよい。
【0073】
置き去りは、
図2(B)に示すように、一方の人物が他方の人物をある場所に放置したまま、立ち去る行為である。そこで、本実施形態では、複数の人物が同行している状態から、同行していない状態に変化する、すなわち、複数の人物が一緒に移動した後に離ればなれになることを、置き去りの条件とする。このとき、同行していない状態が所定時間以上継続することを条件に加えるとよい。なお、置き去りには、迷子など人物がはぐれた場合も含むものとする。
【0074】
また、置き去りは、2人の人物が親子などのような知り合いの関係となる。そこで、人物に関する条件として、同行履歴がある、すなわち、路側機5の通信エリアを過去に一緒に通行したことを条件に加えるとよい。
【0075】
また、置き去りは、普段から通行する場所ではなく、よく知らない場所で発生する。そこで、場所に関する条件として、過去の所定期間内に通行履歴がない人物、すなわち、過去に通ったことがない人物であることを条件に加えるとよい。
【0076】
また、置き去りは、子供を対象とする場合が多い。そこで、置き去られて位置情報に変化がない人物が所定年齢以下の子供であることを、置き去りの条件に加えるとよい。また、置き去り検知の対象は、人間だけでなく、犬等のペットも対象に加えてもよい。
【0077】
監禁は、人物を拘束して一定の場所に閉じ込める行為であり、監禁されている人物は特定の場所から動かない。そこで、本実施形態では、人物の位置情報に基づいて、人物が所定期間移動しないことを、監禁の条件とする。
【0078】
また、路側機5の通信エリア外で人物が監禁された場合、路側機5の通信エリアを通行しなくなる。そこで、通行履歴のある人物が、通行しない状態が所定期間継続することを、監禁の条件に加えるとよい。
【0079】
また、監禁の際には、抵抗する被害者を拘束する行為により、被害者に急激な動きが発生する。そこで、加速度センサにより急加速を検出し、また、方位センサにより急転回(急な向き変化)を検出したことを、監禁の条件に加えるとよい。
【0080】
ストーキングには、尾行と待ち伏せとがある。
図3(A)に示すように、尾行の場合には、加害者が、被害者の後を所定の距離をおいて追うように移動する。そこで、歩行者の位置情報に基づいて、人物が他の人物に追随するように移動する場合に、尾行と判定する。一方、待ち伏せの場合には、加害者が、被害者の進行方向の前方で立ち止まった状態となる。そこで、人物が他の人物の移動経路上で静止したまま移動しない状態である場合に、待ち伏せと判定する。
【0081】
また、ストーキングが行われる場所は、被害者がよく通る場所であるが、加害者があまり通らない場所である場合が多い。そこで、人物に関する条件として、過去の所定期間(例えば1週間)内に通行履歴がない人物であることを、ストーキングの条件に加えるとよい。
【0082】
また、ストーキングは、加害者と被害者とが異性である場合が多い。そこで、2人の人物が異性であることを、ストーキングの条件に加えるとよい。この場合、歩行者端末1から、性別に関する属性情報を歩行者情報としてメッセージに付加して送信して、路側機5が歩行者の属性情報を取得するようにするとよい。
【0083】
いじめは、加害者と被害者とがグループ行動をとり、頻繁に行動をともにする場合が多い。そこで、本実施形態では、同行履歴がある人物であることをいじめの条件とする。また、
図3(B)に示すように、犯行時の状況として、加害者が被害者と同行していることから、複数の人物が同行している状態であることをいじめの条件とする。
【0084】
また、いじめの際には、暴行や暴言がある場合が多い。そこで、歩行者端末1に設けられた加速度センサにより、暴行による衝撃を検出したことや、歩行者端末1に設けられたマイクにより、暴言による大音声を検出したことを、いじめの条件とする。また、大音声でなくても、恐喝に相当する所定の文言や助けを求める所定の文言を検出したことを、いじめの条件としてもよい。また、いじめは、加害者および被害者が子供である場合が多い。そこで、人物が子供であることを、いじめの条件に加えるとよい。
【0085】
また、暴行においては、被害者に急激な動きが発生する場合が多い。そこで、加速度センサにより急加速を検出し、また、方位センサにより急転回(急な向き変化)を検出したことを、いじめの条件に加えるとよい。また、暴行においては、被害者は特定場所から動かない場合が多い。そこで、被害者の位置情報に基づいて、被害者が所定期間移動しないことを、いじめの条件に加えるとよい。
【0086】
ひき逃げは、
図3(C)に示すように、車両が歩行者に衝突した後に運転者が救護を行わずに走り去る行為である。そこで、本実施形態では、まず、歩行者端末1に設けられた加速度センサなどセンサの検出結果に基づいて衝撃を検知したことで、車両が歩行者に衝突したことを検知する。また、歩行者端末1では、歩行者および車両の位置情報などに基づいて、車両が歩行者に衝突する危険性が高いか否かの危険判定を行うことから、この危険判定で、衝突の危険性が高いと判定された後に、衝撃を検知した場合に、車両が歩行者に衝突したものと判定する。また、衝突を検知した後に、歩行者に動き(位置情報の変化)がないことを判定条件に加え、さらに、衝突を検知した後に、車両が衝突地点から走り去ったことを判定条件に加える。なお、先に車両が走り去ったかどうかを検知するようにしてもよく、また、軽症の場合を考慮して歩行者に動きがないかどうかを判定条件に加えないようにしてもよい。また、ひき逃げの際に、歩行者端末1が破損する場合がある。そこで、急激な動きの後に、測位衛星の電波を受信できなくなったことを、ひき逃げの条件に加えるとよい。
【0087】
次に、第1実施形態に係る歩行者端末1および路側機5の概略構成について説明する。
図4は、歩行者端末1および路側機5の概略構成を示すブロック図である。
【0088】
歩行者端末1は、測位部11と、検出部12と、ITS通信部13と、入出力部14と、制御部15と、記憶部16と、を備えている。
【0089】
測位部11は、GPS(Global Positioning System)、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System)などの衛星測位システムにより自装置の位置を測定して、自装置の位置情報を取得する。なお、携帯情報端末2が有する測位機能を利用して、自装置の位置情報を取得するようにしてもよい。
【0090】
検出部12は、自歩行者(自装置を所持する歩行者)の状態を検出するものであり、加速度センサ21と、方位センサ22と、マイク23と、を備えている。なお、本実施形態では、加速度センサ21により検出された加速度により、暴行による衝撃を検知するが、加速度センサ21とは別に衝撃センサを設けるようにしてもよい。
【0091】
ITS通信部13は、路側機5との間でITS通信(路歩間通信)によりメッセージを送受信し、車載端末3との間でITS通信(歩車間通信)によりメッセージを送受信する。
【0092】
入出力部14は、携帯情報端末2との間で情報の入出力を行う。この入出力部14から出力される情報に基づいて、携帯情報端末2において、歩行者に対する注意喚起の動作が行われる。
【0093】
記憶部16は、地図情報や、制御部15を構成するプロセッサで実行されるプログラムなどを記憶する。なお、地図情報は携帯情報端末2から取得するようにしてもよい。
【0094】
制御部15は、メッセージ制御部31と、危険判定部32と、注意喚起制御部33と、保護者情報取得部34と、暴行暴言検知部35と、衝突検知部36と、を備えている。この制御部15は、プロセッサで構成され、制御部15の各部は、記憶部16に記憶されたプログラムをプロセッサで実行することで実現される。
【0095】
メッセージ制御部31は、端末IDや位置情報などの歩行者情報を含むメッセージの送信を制御する。
【0096】
危険判定部32は、測位部11で取得した自歩行者の位置情報と、車載端末3から受信したメッセージに含まれる車両の位置情報とに基づいて、自歩行者に車両が衝突する危険性があるか否かを判定する。
【0097】
注意喚起制御部33は、危険判定部32の判定結果に応じて、自歩行者に対する注意喚起を実施する。本実施形態では、入出力部14を介して、注意喚起の指示を携帯情報端末2に出力して、この指示に応じて携帯情報端末2において、歩行者に対する注意喚起の出力動作(例えば音声出力や振動など)が行われる。
【0098】
保護者情報取得部34は、保護者の宛先に関する保護者情報、具体的には、保護者端末6のアドレスを取得する。なお、携帯情報端末2をユーザが操作して保護者情報を入力するようにしてもよい。保護者情報取得部34において保護者情報を取得すると、適宜なタイミングで、メッセージ制御部31が、保護者情報を含むメッセージを路側機5に送信する。
【0099】
暴行暴言検知部35は、加速度センサ21で検出された加速度に基づいて、暴行(衝撃)を検知する。また、暴行暴言検知部35は、マイク23で検出された音声に基づいて、暴言を検知する。なお、音声認識を行って、発話の内容に基づいて、暴言を検知するようにしてもよい。
【0100】
衝突検知部36は、危険判定部32で自歩行者に車両が衝突する危険性があると判定された後に、加速度センサ21で検出された加速度に基づいて、衝撃を検知した場合に、自歩行者に車両が衝突したものと判定する。
【0101】
路側機5は、ITS通信部41と、ネットワーク通信部42と、制御部43と、記憶部44と、を備えている。
【0102】
ITS通信部41は、歩行者端末1との間でITS通信(路歩間通信)によりメッセージを送受信し、車載端末3との間でITS通信(路車間通信)によりメッセージを送受信する。
【0103】
ネットワーク通信部42は、セルラー通信、無線LAN通信、インターネットなどのネットワークを介して保護者端末6と通信を行う。
【0104】
記憶部44は、制御部43を構成するプロセッサで実行されるプログラムなどを記憶する。また、記憶部44は、自路側機の通信エリア内の歩行者端末1から受信したメッセージに含まれる歩行者情報を、通行履歴情報として記憶する。このとき、所定期間(例えば1週間、1ヶ月)の歩行者情報が通行履歴情報として蓄積され、所定期間を経過すると削除される。
【0105】
制御部43は、人物検知部51と、異常検知部52と、メッセージ制御部53と、保護者情報登録部54と、通報部55と、を備えている。この制御部43は、プロセッサで構成され、制御部43の各部は、記憶部44に記憶されたプログラムをプロセッサで実行することで実現される。
【0106】
保護者情報登録部54は、歩行者端末1から送信される保護者情報を含むメッセージをITS通信部41で受信すると、この保護者情報を登録する処理を行い、保護者情報を記憶部44に記憶する。
【0107】
人物検知部51は、記憶部44の通行履歴情報に基づいて、路側機5の通信エリアを通行する人物の中から、異常検知部52で人物の異常事態を検知する際に監視対象となる人物を検知する。
【0108】
本実施形態では、通信エリア内に存在する人物の中から、過去の所定期間内に通行履歴がない人物(不審者)、すなわち、通信エリア内を通行したことがない人物を検知する。また、本実施形態では、通信エリア内に存在する人物の中から、同行履歴がある人物、すなわち、以前に通信エリア内を他の人物と一緒に通行したことがある人物を検知する。
【0109】
異常検知部52は、人物検知部51で検知した人物を監視対象として、記憶部44の通行履歴情報に基づいて、歩行者端末1を所持する人物に異常事態が発生したことを検知する。本実施形態では、異常事態として、連れ去り、置き去り(迷子)、監禁、ストーキング、いじめ、ひき逃げを検知する。
【0110】
具体的には、通行履歴情報に基づいて、過去の所定期間内に通行履歴がない人物が、他の人物と同行している状態である場合に、異常事態として連れ去りが発生したものと判定する。
【0111】
また、通行履歴情報に基づいて、過去の所定期間内に同行履歴がある複数の人物が同行している状態から、同行していない状態に変化した場合に、異常事態として置き去りが発生したものと判定する。
【0112】
また、通行履歴情報に基づいて、過去の所定期間内に位置情報の変化がない人物が存在する場合に、異常事態として監禁が発生したものと判定する。
【0113】
また、通行履歴情報に基づいて、過去の所定期間内に通行履歴がない人物が、他の人物に追随するように移動する状態である場合、または、その人物が他の人物の移動経路上で静止したまま移動しない状態である場合に、異常事態としてストーキングが発生したものと判定する。
【0114】
また、通行履歴情報に基づいて、過去の所定期間内に同行履歴がある複数の人物が同行している状態で、暴行暴言検知情報を含むメッセージを受信した場合に、異常事態としていじめが発生したものと判定する。
【0115】
また、衝突検知情報を含むメッセージを歩行者端末1から受信した後に、通行履歴情報に基づいて、歩行者が動かない状態が所定時間継続するとともに、車載端末3から送信されるメッセージに含まれる車両の位置情報に基づいて、車両が衝突地点から走り去ったことを検知した場合に、異常事態としてひき逃げが発生したものと判定する。
【0116】
メッセージ制御部53は、歩行者端末1から送信されるメッセージをITS通信部41で受信すると、そのメッセージに含まれる歩行者情報を、通行履歴情報として記憶部44に記憶する。また、異常検知部52で異常が検知された場合に、異常検知情報を含むメッセージをITS通信部41から歩行者端末1に送信する。これにより、異常事態が発生していることを周辺の歩行者に通知することができる。
【0117】
通報部55は、異常検知部52で異常が検知された場合に、異常検知通知をネットワーク通信部42から保護者端末6に送信する。これにより、異常事態が発生していることを遠隔地の保護者に通知することができる。
【0118】
次に、第1実施形態に係る歩行者端末1および路側機5における連れ去りに関する動作手順について説明する。
図5は、歩行者端末1および路側機5の動作手順を示すフロー図である。
図6は、メッセージに含まれる歩行者情報、路側機5に蓄積される通行履歴情報、およびメッセージに含まれる路側機情報の一例を示す説明図である。
【0119】
図5(A)に示すように、歩行者端末1では、測位部11において、自歩行者の位置情報を取得する(ST101)。そして、メッセージ制御部31において、自歩行者の位置情報に基づいて、歩行者情報を送信する状況か否かを判定する(ST102)。ここで、歩行者情報を送信する状況(歩行者が歩道橋上や建物内、車内のような安全な場所にいる場合以外)であれば(ST102でYes)、次に、歩行者情報を含むメッセージをITS通信部13から路側機5に送信する(ST103)。
【0120】
このとき、
図6(A)に示すように、歩行者端末1から路側機5に送信されるメッセージには、歩行者情報として、時間、歩行者端末1の端末ID、歩行者端末1の位置(緯度および経度)、速度、および方位の各情報と、付随情報とが含まれる。なお、付随情報は、ITS通信のメッセージの拡張領域に格納される。
【0121】
図5(B)に示すように、路側機5では、歩行者端末1から送信されるメッセージをITS通信部41で受信すると(ST201でYes)、そのメッセージに含まれる歩行者情報を通行履歴情報として記憶部44に蓄積する(ST202)。このとき、
図6(B)に示すように、記憶部44に通行履歴情報として蓄積される歩行者情報には、時間、歩行者端末1の端末ID(歩行者ID)、歩行者端末1の位置(緯度および経度)、速度、および方位の各情報と、付随情報とが含まれる。
【0122】
次に、人物検知部51において、通行履歴情報内の各人物の歩行者情報に基づいて、路側機5の通信エリア内に、過去の所定期間(例えば1週間)内に通行履歴がない人物(不審者)が存在するか否かを判定する(ST203)。ここで、通行履歴がない人物が存在する場合には(ST203でYes)、記憶部44の通行履歴情報内の該当する人物の歩行者情報に付随情報として警戒フラグを設定する(ST204)。
図6(B)に示す例では、ID1の人物に警戒フラグが設定されている。
【0123】
次に、異常検知部52において、警戒フラグが設定された人物を監視して、その監視対象となる人物が、他の人物と同行している状態であるか否かを判定する(ST205)。
【0124】
ここで、監視対象となる人物が、他の人物と同行している状態である場合には(ST205でYes)、連れ去りが発生したものと判定して、記憶部44の通行履歴情報における該当する人物の歩行者情報に、異常事態として連れ去りを検知したことを表す異常検知情報を追加する(ST206)。
図6(B)に示す例では、警戒フラグが設定されたID1の人物(監視対象)が、ID2の人物と移動経路が一致するため、連れ去りが発生したものと判定することができる。連れ去りの判定後は、
図6(B)のID1の人物の付随情報に、警戒フラグに代えて連れ去りであることを表す異常検知情報が設定されることになる。
【0125】
次に、メッセージ制御部53において、異常事態として連れ去りを検知したことを表す異常検知情報を含むメッセージを生成して、そのメッセージをITS通信部41から周辺の歩行者端末1に送信する(ST207)。
【0126】
このとき、
図6(C)に示すように、路側機5から歩行者端末1に送信されるメッセージには、路側機情報として、時間、自装置の路側機ID、連れ去りの加害者の歩行者端末1の端末ID、連れ去りの被害者の歩行者端末1の端末ID、連れ去りの被害者の歩行者端末1の位置(緯度および経度)の各情報と、異常事態が連れ去りであることを表す異常検知情報とが含まれる。
【0127】
なお、通行履歴がない人物が存在しない場合や(ST203でNo)、監視対象となる人物が他の人物と同行している状態でない場合には(ST205でNo)、特に処理を行わずに終了する。
【0128】
図5(C)に示すように、周辺に存在する他の歩行者端末1では、路側機5から送信されるメッセージをITS通信部13で受信すると(ST301でYes)、注意喚起制御部33において、自歩行者に対する注意喚起が必要か否かを判定する(ST302)。ここで、自歩行者に対する注意喚起が必要である場合には(ST302でYes)、自歩行者に対して、自分の周囲にいる歩行者に異常事態が発生している旨の注意喚起を実施する(ST303)。
【0129】
なお、路側機5から歩行者端末1にメッセージを送信する際に、同時に、見守りの対象者の異常事態を検知したことを表す異常検知通知をネットワーク通信部42から保護者端末6に送信する。保護者端末6では、路側機5から送信される異常検知通知を受信すると、見守りの対象者に異常事態が発生している旨の注意喚起を実施する。
【0130】
次に、第1実施形態に係る歩行者端末1および路側機5における置き去りに関する動作手順について説明する。
図7は、歩行者端末1および路側機5の動作手順を示すフロー図である。
図8は、メッセージに含まれる歩行者情報、および通行履歴情報として蓄積される歩行者情報の一例を示す説明図である。
【0131】
図7(A)に示すように、歩行者端末1の動作手順は、連れ去りの場合(
図5(A)参照)と同様である。また、
図8(A)に示すように、歩行者端末1から路側機5に送信されるメッセージの内容も、連れ去りの場合(
図6(A)参照)と同様である。
【0132】
図7(B)に示すように、路側機5では、歩行者端末1から送信されるメッセージをITS通信部41で受信すると(ST201でYes)、そのメッセージに含まれる歩行者情報を通行履歴情報として記憶部44に蓄積する(ST202)。このとき、
図8(B-1),
図8(B-2)に示すように、記憶部44に通行履歴情報として蓄積される歩行者情報には、時間、歩行者端末1の端末ID(歩行者ID)、歩行者端末1の位置(緯度および経度)、速度、および方位の各情報と、付随情報とが含まれる。
【0133】
次に、人物検知部51において、通行履歴情報内の各人物の歩行者情報に基づいて、路側機5の通信エリア内に、過去の所定期間(例えば1週間)内に同行履歴がある人物(知り合いの関係となる人物)が存在するか否かを判定する(ST211)。ここで、同行履歴がある人物が存在する場合には(ST211でYes)、記憶部44の通行履歴情報内の該当する人物の歩行者情報に付随情報として知り合いフラグを設定する(ST212)。
図8(B-1)に示す例は、過去の通行履歴情報であり、ID1の人物とID2の人物とが同行(同じ位置で推移)しており、2人の人物に知り合いフラグが設定されている。
【0134】
次に、異常検知部52において、知り合いフラグが設定された複数の人物を監視して、その監視対象となる複数の人物が、途中から同行しない状態に変化したか否かを判定する(ST213)。このとき、同行しない状態とは、一方が移動したのに他方が静止したままの状態である場合である。
図8(B-2)に示す例は、直近の通行履歴情報であり、ID1の人物が移動しているのに対して、ID2の人物は移動しておらず、置き去りが発生したものと判定することができる。
【0135】
ここで、監視対象となる複数の人物が、途中から同行しない状態に変化した場合には(ST213でYes)、置き去りが発生したものと判定して、記憶部44の通行履歴情報における該当する人物の歩行者情報に、異常事態として置き去りを検知したことを表す異常検知情報を追加する(ST206)。
【0136】
次に、メッセージ制御部53において、異常事態として置き去りを検知したことを表す異常検知情報を含むメッセージを生成して、そのメッセージをITS通信部41から周辺の歩行者端末1に送信する(ST207)。
【0137】
このとき、
図8(C)に示すように、路側機5から歩行者端末1に送信されるメッセージには、時間、自装置の路側機ID、置き去りの加害者の歩行者端末1の端末ID、置き去りの被害者の歩行者端末1の端末ID、置き去りの被害者の歩行者端末1の位置(緯度および経度)の各情報と、付随情報として異常事態が置き去りであることを表す異常検知情報とが含まれる。
【0138】
なお、同行履歴がある人物が存在しない場合や(ST211でNo)、監視対象となる複数の人物が途中から同行しない状態に変化しない場合には(ST213でNo)、特に処理を行わずに終了する。
【0139】
図7(C)に示すように、周辺に存在する他の歩行者端末1の動作手順は、連れ去りの場合(
図5(C)参照)と同様である。また、保護者端末6も連れ去りの場合と同様である。
【0140】
次に、第1実施形態に係る歩行者端末1および路側機5における監禁に関する動作手順について説明する。
図9は、歩行者端末1および路側機5の動作手順を示すフロー図である。
図10は、メッセージに含まれる歩行者情報、および通行履歴情報として蓄積される歩行者情報の一例を示す説明図である。
【0141】
図9(A)に示すように、歩行者端末1の動作手順は、連れ去りの場合(
図5(A)参照)と同様である。また、
図10(A)に示すように、歩行者端末1から路側機5に送信されるメッセージの内容も、連れ去りの場合(
図6(A)参照)と同様である。
【0142】
図9(B)に示すように、路側機5では、歩行者端末1から送信されるメッセージをITS通信部41で受信すると(ST201でYes)、そのメッセージに含まれる歩行者情報を通行履歴情報として記憶部44に蓄積する(ST202)。このとき、
図10(B)に示すように、記憶部44に通行履歴情報として蓄積される歩行者情報には、時間、歩行者端末1の端末ID(歩行者ID)、歩行者端末1の位置(緯度および経度)、速度、および方位の各情報と、付随情報とが含まれる。
【0143】
次に、異常検知部52において、通行履歴情報内の各人物の歩行者情報に基づいて、所定期間継続して動きがない人物が存在するか否かを判定する(ST221)。
【0144】
ここで、建物内に監禁された等で所定期間継続して動きがない人物が存在する場合には(ST221でYes)、監禁が発生したものと判定して、記憶部44の通行履歴情報における該当する人物の歩行者情報に、異常事態として監禁を検知したことを表す異常検知情報を追加する(ST206)。
図10(B)に示す例では、ID1の人物が一定の位置に留まったままであり、また、ID1の人物が1週間出現していないことから、監禁が発生しているものと判定することができる。
【0145】
次に、メッセージ制御部53において、異常事態として監禁を検知したことを表す異常検知情報を含むメッセージを生成して、そのメッセージをITS通信部41から周辺の歩行者端末1に送信する(ST207)。
【0146】
このとき、
図10(C)に示すように、路側機5から歩行者端末1に送信されるメッセージには、時間、自装置の路側機ID、監禁の被害者の歩行者端末1の端末ID、監禁の被害者の歩行者端末1の位置(緯度および経度)の各情報と、異常事態が監禁であることを表す異常検知情報が含まれる。
【0147】
なお、動きがない人物が存在しない場合には(ST221でNo)、特に処理を行わずに終了する。
【0148】
図9(C)に示すように、周辺に存在する他の歩行者端末1の動作手順は、連れ去りの場合(
図5(C)参照)と同様である。また、保護者端末6も連れ去りの場合と同様である。
【0149】
次に、第1実施形態に係る歩行者端末1および路側機5におけるストーキングに関する動作手順について説明する。
図11は、歩行者端末1および路側機5の動作手順を示すフロー図である。
図12は、メッセージに含まれる歩行者情報、および通行履歴情報として蓄積される歩行者情報の一例を示す説明図である。
【0150】
図11(A)に示すように、歩行者端末1の動作手順は、連れ去りの場合(
図5(A)参照)と同様である。また、
図12(A)に示すように、歩行者端末1から路側機5に送信されるメッセージの内容も、連れ去りの場合(
図6(A)参照)と同様である。
【0151】
図11(B)に示すように、路側機5では、歩行者端末1から送信されるメッセージをITS通信部41で受信すると(ST201でYes)、そのメッセージに含まれる歩行者情報を通行履歴情報として記憶部44に蓄積する(ST202)。このとき、
図12(B-1),(B-2)に示すように、記憶部44に通行履歴情報として蓄積される歩行者情報には、時間、歩行者端末1の端末ID(歩行者ID)、歩行者端末1の位置(緯度および経度)、速度、および方位の各情報と、付随情報とが含まれる。
【0152】
次に、人物検知部51において、通行履歴情報内の各人物の歩行者情報に基づいて、路側機5の通信エリア内に、過去の所定期間(例えば1週間)内に通行履歴がない人物(不審者)が存在するか否かを判定する(ST203)。ここで、通行履歴がない人物が存在する場合には(ST203でYes)、記憶部44の通行履歴情報内の該当する人物の歩行者情報に付随情報として警戒フラグを設定する(ST204)。
【0153】
次に、異常検知部52において、警戒フラグが設定された人物を監視して、その監視対象となる人物が、他の人物を尾行している状態、すなわち、他の人物に追随するように移動する状態であるか否かを判定する(ST231)。
【0154】
ここで、監視対象となる人物が他の人物を尾行している状態である場合には(ST231でYes)、ストーキングが発生したものと判定して、ST206に進む。一方、監視対象となる人物が他の人物を尾行している状態でない場合には(ST231でNo)、次に、監視対象となる人物が他の人物を待ち伏せしている状態、すなわち、他の人物の移動経路上で静止したまま移動しない状態であるか否かを判定する(ST232)。ここで、監視対象となる人物が他の人物を待ち伏せしている状態である場合には(ST232でYes)、ストーキングが発生したものと判定して、ST206に進む。
【0155】
ST206では、記憶部44の通行履歴情報における該当する人物の歩行者情報に、異常事態としてストーキングを検知したことを表す異常検知情報を追加する(ST206)。
図12(B-1)に示す例は、尾行が検知された場合であり、ID1の人物が一定距離を保ったままID2の人物の後を追いかけるように移動している。また、
図12(B-2)に示す例は、待ち伏せが検知された場合であり、ID1の人物がID2の人物の進路上で静止し、ID2の人物が通り過ぎた後も静止したままである。
【0156】
次に、メッセージ制御部53において、異常事態としてストーキングを検知したことを表す異常検知情報を含むメッセージを生成して、そのメッセージをITS通信部41から周辺の歩行者端末1に送信する(ST207)。
【0157】
このとき、
図12(C)に示すように、路側機5から歩行者端末1に送信されるメッセージには、時間、自装置の路側機ID、ストーキングの加害者の歩行者端末1の端末ID、ストーキングの被害者の歩行者端末1の端末ID、ストーキングの被害者の歩行者端末1の位置(緯度および経度)の各情報と、異常事態がストーキングであることを表す異常検知情報とが含まれる。
【0158】
なお、通行履歴がない人物が存在しない場合や(ST203でNo)、監視対象となる人物が他の人物を尾行している状態でも、他の人物を待ち伏せしている状態でもない場合には(ST232でNo)、特に処理を行わずに終了する。
【0159】
図11(C)に示すように、周辺に存在する他の歩行者端末1の動作手順は、連れ去りの場合(
図5(A)参照)と同様である。また、保護者端末6も連れ去りの場合と同様である。
【0160】
次に、第1実施形態に係る歩行者端末1および路側機5におけるいじめ(暴行暴言)に関する動作手順について説明する。
図13は、歩行者端末1および路側機5の動作手順を示すフロー図である。
図14は、メッセージに含まれる歩行者情報、および通行履歴情報として蓄積される歩行者情報の一例を示す説明図である。
【0161】
図13(A)に示すように、歩行者端末1では、測位部11において、自歩行者の位置情報を取得する(ST101)。そして、メッセージ制御部31において、自歩行者の位置情報に基づいて、歩行者情報を送信する状況か否かを判定する(ST102)。ここで、歩行者情報を送信する状況であれば(ST102でYes)、次に、暴行暴言検知部35において暴行あるいは暴言を検知したか否かを判定する(ST104)。
【0162】
ここで、暴行あるいは暴言を検知しない場合には(ST104でNo)、メッセージ制御部31において、通常の歩行者情報を含むメッセージをITS通信部13から路側機5に送信する(ST105)。このとき、
図14(A-1),(A-2)に示すように、歩行者端末1から路側機5に送信されるメッセージには、通常の歩行者情報として、時間、端末ID、歩行者端末1の位置(緯度および経度)、速度、方位の各情報が含まれる。
【0163】
一方、暴行あるいは暴言を検知した場合には(ST104でYes)、メッセージ制御部31において、通常の歩行者情報の他に、暴行暴言を検知したことを表す暴行暴言検知情報を含むメッセージをITS通信部13から路側機5に送信する(ST106)。このとき、
図14(A-3)に示すように、歩行者端末1から路側機5に送信されるメッセージには、通常の歩行者情報の他に、付随情報として、暴行暴言を検知したことを表す暴行暴言検知情報が含まれる。
【0164】
図13(B)に示すように、路側機5では、歩行者端末1から送信されるメッセージをITS通信部41で受信すると(ST201でYes)、そのメッセージに含まれる歩行者情報を通行履歴情報として記憶部44に蓄積する(ST202)。このとき、
図14(B-1),(B-2)に示すように、記憶部44に通行履歴情報として蓄積される歩行者情報には、時間、歩行者端末1の端末ID(歩行者ID)、歩行者端末1の位置(緯度および経度)、速度、および方位の各情報と、付随情報とが含まれる。
【0165】
次に、人物検知部51において、通行履歴情報内の各人物の歩行者情報に基づいて、路側機5の通信エリア内に、過去の所定期間(例えば1週間)内に同行履歴がある人物(知り合いの関係となる人物)が存在するか否かを判定する(ST211)。ここで、同行履歴がある人物が存在する場合には(ST211でYes)、記憶部44の通行履歴情報内の該当する人物の歩行者情報に付随情報として知り合いフラグを設定する(ST212)。
図14(B-1)に示す例は、過去の通行履歴情報であり、ID1の人物とID2の人物とが同行しており、2人の人物に知り合いフラグが設定されている。
【0166】
次に、異常検知部52において、知り合いフラグが設定された複数の人物を監視して、その監視対象となる複数の人物のいずれかの歩行者端末1で、暴行あるいは暴言が検知されている否かを判定する(ST241)。このとき、通行履歴情報内の監視対象となる複数の人物の歩行者情報に、暴行暴言検知情報があるか否かを判定する。
図14(B-2)に示す例は、直近の通行履歴情報であり、ID2の人物で暴行または暴言が検知されている。
【0167】
ここで、暴行あるいは暴言が検知されている場合には(ST241でYes)、いじめが発生したものと判定して、記憶部44の通行履歴情報における該当する人物の歩行者情報に、異常事態としていじめを検知したことを表す異常検知情報を追加する(ST206)。
【0168】
次に、メッセージ制御部53において、異常事態としていじめを検知したことを表す異常検知情報を含むメッセージを生成して、そのメッセージをITS通信部41から周辺の歩行者端末1に送信する(ST207)。
【0169】
このとき、
図14(C)に示すように、路側機5から歩行者端末1に送信されるメッセージには、時間、自装置の路側機ID、いじめの加害者の歩行者ID、いじめの被害者の歩行者ID、いじめの被害者の歩行者端末1の位置(緯度及び経度)の各情報と、付随情報として異常事態がいじめであることを表す異常検知情報とが含まれる。
【0170】
図13(C)に示すように、周辺に存在する他の歩行者端末1の動作手順は、連れ去りの場合(
図5(A)参照)と同様である。また、保護者端末6も連れ去りの場合と同様である。
【0171】
次に、第1実施形態に係る歩行者端末1および路側機5におけるひき逃げに関する動作手順について説明する。
図15、
図16は、歩行者端末1および路側機5の動作手順を示すフロー図である。
【0172】
図15に示すように、歩行者端末1では、測位部11において、自歩行者の位置情報を取得する(ST101)。そして、メッセージ制御部31において、自歩行者の位置情報に基づいて、歩行者情報を送信する状況か否かを判定する(ST102)。ここで、歩行者情報を送信する状況であれば(ST102でYes)、次に、衝突検知部36において衝突が検知されたか否かを判定する(ST107)。衝突検知部36は、危険判定部32で自歩行者に車両が衝突する危険性があると判定された後に、加速度センサ21で検出された加速度が所定以上である場合に衝突が検知されたと判定する。
【0173】
ここで、衝突が検知されない場合には(ST107でNo)、メッセージ制御部31において、通常の歩行者情報を含むメッセージをITS通信部13から路側機5に送信する(ST108)。
【0174】
一方、衝突が検知された場合には(ST107でYes)、メッセージ制御部31において、通常の歩行者情報の他に、衝突を検知したことを表す衝突検知情報を付随情報に含むメッセージをITS通信部13から路側機5に送信する(ST109)。
【0175】
図16(A)に示すように、路側機5では、歩行者端末1から送信されるメッセージをITS通信部41で受信すると(ST201でYes)、そのメッセージに含まれる歩行者情報を通行履歴情報として記憶部44に蓄積する(ST202)。
【0176】
次に、人物検知部51において、通行履歴情報内の各人物の歩行者情報に基づいて、車両に衝突された人物が存在するか否かを判定する(ST251)。ここで、車両に衝突された人物が存在する場合には(ST251でYes)、記憶部44の通行履歴情報内の該当する人物の歩行者情報に付随情報として警戒フラグを設定する(ST252)。
【0177】
次に、異常検知部52において、警戒フラグが設定された人物、すなわち、車両に衝突された人物を監視して、その監視対象となる人物が所定時間以上継続して動き(位置情報の変化)がないか否かを判定する(ST253)。
【0178】
ここで、監視対象となる人物が所定時間以上継続して動きがない場合には(ST253でYes)、次に、衝突事故を起こした車両が現場から走り去ったか否かを判定する(ST254)。この判定は、車載端末から受信したメッセージに含まれる位置情報に基づいて行う。
【0179】
ここで、衝突事故を起こした車両が現場から走り去っている場合には(ST254でYes)、ひき逃げが発生したものと判定して、記憶部44の通行履歴情報における該当する人物の歩行者情報に、異常事態としてひき逃げを検知したことを表す異常検知情報を追加する(ST206)。
【0180】
次に、メッセージ制御部53において、異常事態としてひき逃げを検知したことを表す異常検知情報を含むメッセージを生成して、そのメッセージをITS通信部41から周辺の歩行者端末1に送信する(ST207)。
【0181】
図16(B)に示すように、周辺に存在する他の歩行者端末1の動作手順は、連れ去りの場合(
図5(A)参照)と同様である。また、保護者端末6も連れ去りの場合と同様である。この他、ひき逃げを検知したことを、消防署や警察署に通知して、救急車や警察官を現場に派遣する要請を行うようにしてもよい。
【0182】
また、車両に衝突された人物が存在する場合(ST251でYes)に、記憶部44の通行履歴情報内の該当する人物の歩行者情報に付随情報として交通事故を検知したことを表す異常検知情報を追加して、交通事故を検知したことを表す異常検知情報を含むメッセージを周辺の歩行者端末1や保護者端末、消防署や警察署に通知するようにしてもよい。また、車両に衝突された人物に動きがないかどうかの判定(ST253)を省略して、人物の動きに関係なく車両が走り去った場合にひき逃げと検知するようにしてもよい。
【0183】
なお、本実施形態では、路側機5において異常検知を行うようにしたが、インターネットなどのネットワークを介して路側機5に接続された管理サーバを設けて、この管理サーバにおいて、複数の路側機5から情報を収集して、受信したメッセージに含まれる歩行者情報を蓄積して、異常検知を行うようにしてもよい。
【0184】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。
図17は、第2実施形態に係る通信システムの全体構成図である。
【0185】
本実施形態では、路側機5に蓄積された通行履歴情報に基づいて、過去の異常発生時の状況を再現する。これにより、過去の異常発生時の状況を管理者が事後に確認することができる。特に本実施形態では、路側機5で検知した異常事態を管理する管理サーバ7が設けられており、この管理サーバ7は、インターネットなどのネットワークを介して路側機5と接続され、複数の路側機5から通行履歴情報を収集して、過去の異常発生時の状況を再現する。
【0186】
次に、第2実施形態に係る管理サーバ7に表示される異常再現画面について説明する。
図18は、管理サーバ7に表示される異常再現画面を示す説明図である。
【0187】
この異常再現画面では、地図上に、各時刻の人物の位置を表す円形のマークを結ぶ矢印により、当日の移動軌跡と、過去の通常時の移動軌跡とが表示されている。
図18に示す例は、ID1の人物(加害者)がID2の人物(被害者)を連れ去る場合であり、ID2の人物が通常通りの経路で歩行している途中で、ID1の人物と同行する状態となっている。また、この異常再現画面には、連れ去りを検知したタイミング(連れ去りアラームの吹き出し)が表示される。この異常再現画面により、過去の異常発生時の状況を管理者が確認することができる。
【0188】
次に、第2実施形態に係る路側機5および管理サーバ7の概略構成について説明する。
図19は、路側機5および管理サーバ7の概略構成を示すブロック図である。
【0189】
路側機5の構成は、第1実施形態(
図4参照)と同様であるが、ネットワーク通信部42は、インターネットなどのネットワークを介して管理サーバ7と通信を行い、記憶部44の通行履歴情報を管理サーバ7に送信する。
【0190】
管理サーバ7は、ネットワーク通信部61と、制御部62と、記憶部63と、モニタ64(表示装置)と、を備えている。
【0191】
ネットワーク通信部61は、インターネットなどのネットワークを介して路側機5と通信を行い、路側機5から送信される通行履歴情報を受信する。
【0192】
記憶部63は、路側機5から受信した通行履歴情報や、制御部62を構成するプロセッサで実行されるプログラムなどを記憶する。
【0193】
制御部62は、異常再現部71を備えている。この制御部62は、プロセッサで構成され、異常再現部71は、記憶部63に記憶されたプログラムをプロセッサで実行することで実現される。
【0194】
異常再現部71は、記憶部63の通行履歴情報に基づいて、過去の異常発生時の状況を再現する異常再現画面の表示情報を生成して、その表示情報をモニタ64に出力することで、異常再現画面(
図18参照)をモニタ64に表示する。
【0195】
次に、第2実施形態に係る路側機5および管理サーバ7の動作手順について説明する。
図20は、路側機5および管理サーバ7の動作手順を示すフロー図である。
図21は、管理サーバ7に蓄積される通行履歴情報の一例を示す説明図である。
【0196】
図20(A)に示すように、路側機5では、歩行者端末1から送信されるメッセージをITS通信部41で受信すると(ST201でYes)、そのメッセージに含まれる歩行者情報を通行履歴情報として記憶部44に蓄積する(ST202)。そして、記憶部に蓄積された通行履歴情報を適宜なタイミングでネットワーク通信部42から管理サーバ7に送信する(ST261)。
【0197】
図20(B)に示すように、管理サーバ7では、少なくとも1台以上の路側機5から送信される通行履歴情報をネットワーク通信部61で受信すると(ST401でYes)、その通行履歴情報を記憶部63に蓄積する(ST402)。このとき、路側機5から受信した通行履歴情報には、
図21に示すように、歩行者端末1から受信した歩行者情報と、路側機5で生成した路側機情報とがある。
【0198】
次に、異常再現部71において、記憶部63の通行履歴情報の中に、異常事態が発生したことを表す異常検知情報を含む路側機情報があるか否かを判定する(ST403)。ここで、異常検知情報を含む路側機情報がある場合には(ST403でYes)、その路側機情報と、異常検知より過去の歩行者情報の中で、異常検知の当事者、すなわち、被害者および加害者の歩行者情報とを異常経緯情報として取得する(ST404)。
【0199】
図21に示す例は、ID2の人物がID1の人物を連れ去った場合であり、異常検知情報(連れ去り)を含む路側機情報から、異常検知の当事者(ID1の人物とID2の人物)を特定して、その当事者の歩行者情報を抽出する。
【0200】
なお、異常経緯情報のうち、歩行者情報には、時間、歩行者ID、歩行者の位置(緯度および経度)、速度、方位の各情報と、付随情報とが含まれ、付随情報には加害者(警戒フラグが設定された人物)の歩行者端末1の端末ID(警戒ID)が含まれる。一方、路側機情報には、時間、路側機5の端末ID、警戒ID、被害者の歩行者端末1の端末ID、被害者の歩行者端末1の位置(緯度および経度)の各情報と、付随情報とが含まれ、付随情報には異常検知情報(連れ去り)が含まれる。
【0201】
次に、異常再現部71において、当事者(加害者および被害者)の歩行者情報に基づいて、当事者の軌跡と犯行地点とを地図上に表示する異常再現画面の表示情報を生成して、その表示情報をモニタ64に出力して、モニタ64に異常再現画面を表示する(ST405)。
【0202】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。
【0203】
本実施形態では、異常事態の発生を予測して、周囲にいる歩行者や遠隔地の保護者に、異常事態が予測されることを通知する。これにより、異常事態を未然に防止することができる。特に本実施形態では、第2実施形態と同様に、路側機5で検知した異常事態を管理する管理サーバ7を設けて、この管理サーバ7において、複数の路側機5から通行履歴情報を収集して、異常事態の発生を予測する。
【0204】
次に、第3実施形態に係る路側機5および管理サーバ7の概略構成について説明する。
図22は、路側機5および管理サーバ7の概略構成を示すブロック図である。
【0205】
路側機5の構成は、第2実施形態(
図19参照)と同様である。
【0206】
管理サーバ7の構成は、第2実施形態(
図19参照)と略同様であるが、記憶部63には、通行履歴情報の他に、異常事態の発生を予測するための行動パターン情報が記憶されている。
【0207】
また、制御部62は、異常再現部71の他に、異常確定部72と、行動パターン情報生成部73と、異常予測部74と、を備えている。
【0208】
異常確定部72は、異常再現部71により表示された異常再現画面(
図18参照)で異常事態が発生したことを確認した管理者が承認の操作を行うと、異常事態が発生したことを確定する。そして、異常事態が発生したタイミングから過去に遡った所定期間分の通行履歴情報(歩行者情報および路側機情報)を、異常発生時の状況を表す異常経緯情報として取得する。
【0209】
行動パターン情報生成部73は、異常経緯情報に含まれる当事者(加害者および被害者)の歩行者情報を類型化(パターン化)して、異常事態が発生するまでの当事者の行動の特徴に関する行動パターン情報を生成する。例えば、連れ去りであれば、加害者が犯行に着手する前に被害者を尾行することから、尾行時の歩行速度や加害者と被害者との間隔などを行動パターン情報として取得する。
【0210】
異常予測部74は、路側機5を介して歩行者端末1から取得した直近の歩行者情報と、行動パターン情報とに基づいて、路側機5の周辺を通行する歩行者の現在の状況を監視し、歩行者の現在の状況が行動パターンに該当する場合には、異常事態が発生する可能性が高いものと判定する。
【0211】
次に、第3実施形態に係る路側機5、管理サーバ7および歩行者端末1の動作手順について説明する。
図23、
図24は、路側機5、管理サーバ7および歩行者端末1の動作手順を示すフロー図である。
図25は、管理サーバ7に蓄積される通行履歴情報(異常経緯情報)、およびメッセージに含まれる路側機情報の一例を示す説明図である。
【0212】
図23(A)に示すように、路側機5の動作手順は、第2実施形態(
図20(A)参照)と同様である。
【0213】
図23(B)に示すように、管理サーバ7では、第2実施形態(
図20(B)参照)と同様に、ST401からST405までの各処理を行う。
【0214】
次に、異常確定部72において、異常再現画面(
図18参照)で異常事態が発生したことを確認した管理者が承認の操作を行うと、異常事態が発生したことを確定する(ST411)。そして、異常事態が発生したタイミングから過去に遡った所定期間分の通行履歴情報(歩行者情報および路側機情報)を異常経緯情報として取得する。このとき、
図25(A)に示すように、異常経緯情報には、第2実施形態(
図21参照)と同様に、歩行者情報と路側機情報とが含まれる。
【0215】
次に、行動パターン情報生成部73において、異常経緯情報に含まれる当事者(加害者および被害者)の歩行者情報を類型化(パターン化)して、異常事態が発生するまでの当事者の行動の特徴に関する行動パターン情報を生成する(ST412)。
【0216】
次に、
図24(A)に示すように、管理サーバ7では、路側機5から送信される最新の歩行者情報をネットワーク通信部61で受信すると(ST413でYes)、その歩行者情報を記憶部63に蓄積する(ST414)。
【0217】
次に、異常予測部74において、記憶部63の行動パターン情報と最新の歩行者情報とに基づいて、路側機5の周辺を通行する歩行者の現在の状況を監視し、歩行者の現在の状況が行動パターンに該当するか否かを判定する(ST415)。
【0218】
ここで、歩行者の現在の状況が行動パターンに該当する場合には(ST415でYes)、異常事態の発生が予測される旨の異常予測通知をネットワーク通信部61から路側機5に送信する。
【0219】
このとき、
図25(B)に示すように、路側機5から歩行者端末1に送信されるメッセージには、時間、路側機5の端末ID、加害者の歩行者端末1の端末ID(警戒ID)、被害者の歩行者端末1の端末ID、被害者の歩行者端末1の位置(緯度および経度)の各情報と、付随情報とが含まれ、付随情報には、異常予測情報が格納される。
【0220】
図24(B)に示すように、路側機5では、管理サーバから送信される異常予測通知をネットワーク通信部42で受信すると(ST262でYes)、異常予測通知に含まれる被害者の歩行者端末1の端末IDから、被害者の最新の位置情報(緯度および経度)を取得して、メッセージ制御部53において、異常予測情報を含むメッセージをITS通信部41から歩行者端末1に送信する(ST263)。
【0221】
図24(C)に示すように、周辺に存在する他の歩行者端末1では、路側機5から送信されるメッセージをITS通信部13で受信すると(ST301でYes)、注意喚起制御部33において、自歩行者に対する注意喚起が必要か否かを判定する(ST302)。ここで、自歩行者に対する注意喚起が必要である場合には(ST302でYes)、自歩行者に対して、自分あるいは自分の周囲にいる歩行者に危険が迫っている旨の注意喚起を実施する(ST303)。
【0222】
なお、路側機5から歩行者端末1にメッセージを送信する際に、同時に、異常事態の発生が予測される旨の異常予測通知を保護者端末6に送信する。保護者端末6では、路側機5から送信される異常予測通知を受信すると、見守りの対象者に危険が迫っている旨の注意喚起を実施する。
【0223】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。
図26は、第4実施形態に係る通信システムの全体構成図である。
【0224】
本実施形態では、異常通知サービスへの参加および異常通知サービスの利用に関して、歩行者端末1のユーザに登録の操作を行わせ、異常通知サービスに参加するユーザに報酬を支払い、異常通知サービスを利用するユーザから利用料を徴収する。
【0225】
具体的には、歩行者端末1から位置情報などの歩行者情報を提供して異常通知サービスに協力した人物に、情報提供料(例えば1ヶ月あたり10円)を支払う。また、異常事態が発生した被害者を支援するサポータに登録した人物に、サポータ登録料(例えば1ヶ月あたり10円)を支払う。また、実際に被害者を助ける行為(サポート)を実施した場合に、サポータにサポート実施料(例えば1回につき500円)を支払う。また、異常通知サービスを受ける利用者からサービス利用料(例えば1ヶ月あたり100円)を徴収する。
【0226】
路側機5は、インターネットなどのネットワークを介して、クレジット会社や銀行などの金融機関に設置された金融機関サーバ8と通信を行うことができ、金融機関サーバ8は、路側機5からの依頼に応じて、支払いのための送金(振り込み)および徴収のための送金(引き落とし)を行う。
【0227】
また、本実施形態では、異常事態が発生した頻度に応じて、各種の保険料を軽減(割引)する。異常事態の発生頻度が少ない程、保険料が軽減されるようにするとよい。路側機5は、インターネットなどのネットワークを介して、保険会社に設置された保険会社サーバ9と通信を行うことができ、保険会社サーバ9は、路側機5からの情報に応じて、保険料を軽減(割引)する処理を行う。
【0228】
次に、第4実施形態に係る歩行者端末1および路側機5の概略構成について説明する。
図27は、歩行者端末1および路側機5の概略構成を示すブロック図である。
【0229】
歩行者端末1の構成は、第1実施形態(
図4参照)と略同様であるが、制御部15が、サービス選択情報取得部37を備えている。このサービス選択情報取得部37は、異常通知サービスへの参加や異常通知サービスの利用に関する登録の操作をユーザに行わせて、異常通知サービスの参加および利用に関するサービス選択情報を取得する。このサービス選択情報は、メッセージに付加してITS通信部13から路側機5に送信される。なお、ユーザの選択操作は、携帯情報端末2で行うようにしてもよい。
【0230】
路側機5の構成は、第1実施形態(
図4参照)と略同様であるが、ネットワーク通信部42は、金融機関サーバ8および保険会社サーバ9と通信を行う。
【0231】
制御部43は、サービス登録受付部56と、報酬情報生成部57と、利用料情報生成部58と、保険料軽減情報生成部59と、を備えている。
【0232】
サービス登録受付部56は、歩行者端末1から受信したメッセージに含まれるサービス選択情報に基づいて、ユーザごとの異常通知サービスへの参加および異常通知サービスの利用に関する登録を受け付ける。
【0233】
報酬情報生成部57は、異常通知サービスへの参加(情報提供、サポータ)に対する報酬の支払いに関する報酬情報を生成する。利用料情報生成部58は、異常通知サービスの利用に対する利用料の徴収に関する利用料情報を生成する。報酬情報および利用料情報は、金融機関サーバ8に送信され、支払いのための送金(振り込み)および徴収のための送金(引き落とし)を金融機関サーバ8に依頼する。
【0234】
保険料軽減情報生成部59は、記憶部44の通行履歴情報に基づいて、異常事態が発生した頻度を取得して、その頻度に応じて保険料を軽減する保険料軽減情報を生成する。保険料軽減情報は、保険会社サーバ9に送信され、保険料の軽減を保険会社サーバに依頼する。
【0235】
次に、第4実施形態に係る歩行者端末1および路側機5の動作手順について説明する。
図28は、歩行者端末1および路側機5の動作手順を示すフロー図である。
図29は、メッセージに含まれる情報の一例を示す説明図である。
【0236】
図28(A)に示すように、歩行者端末1では、サービス選択情報取得部37において、異常通知サービスへの参加や異常通知サービスの利用に関する登録の操作をユーザに行わせて、異常通知サービスの参加および利用に関するサービス選択情報を取得する(ST111)。そして、メッセージ制御部31において、サービス選択情報を含むメッセージをITS通信部13から路側機5に送信する(ST112)。
【0237】
このとき、
図29に示すように、歩行者端末1から路側機5に送信されるメッセージには、時間、端末ID、各登録項目(情報提供、サービス利用、およびサポータ)のユーザ選択情報が含まれる。
【0238】
図28(B)に示すように、路側機5では、歩行者端末1から送信されるメッセージをITS通信部41で受信すると(ST271でYes)、サービス登録受付部56において、メッセージに含まれるサービス選択情報に基づいて、ユーザごとの異常通知サービスへの参加および異常通知サービスの利用に関する登録を受け付ける(ST272)。
【0239】
次に、報酬情報生成部57において、異常通知サービスの参加に対する報酬の支払いに関する報酬情報を生成する。また、利用料情報生成部58において、異常通知サービスの利用に対する利用料の徴収に関する利用料情報を生成する。また、保険料軽減情報生成部59において、記憶部44の通行履歴情報に基づいて、異常事態が発生した頻度を取得して、その頻度に応じて保険料を軽減する保険料軽減情報を生成する(ST273)。
【0240】
なお、本実施形態では、路側機5において異常通知サービスへの参加に対する報酬や異常通知サービスの利用料に関する情報を生成するようにしたが、管理サーバを設けて、この管理サーバにおいて、路側機5から情報を収集して、異常通知サービスへの参加に対する報酬や異常通知サービスの利用料に関する情報を生成するようにしてもよい。
【0241】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。
【0242】
第1実施形態では、路側機5において、歩行者端末1から取得した歩行者情報を蓄積して、異常検知を行うようにしたが、本実施形態では、歩行者端末1において、周辺に存在する歩行者端末1から取得した歩行者情報を蓄積して、その歩行者情報に基づいて、監視対象となる人物を検知する処理を行い、その人物検知の結果を路側機5に送信し、路側機5において、歩行者端末1での人物検知の結果に基づいて異常検知を行う。これにより、歩行者端末1が、路側機5の通信エリア外に位置する場合でも、周辺に存在する歩行者端末1から歩行者情報を取得して、その歩行者情報に基づいて人物検知を行うことができる。
【0243】
次に、第5実施形態に係る歩行者端末1および路側機5の概略構成について説明する。
図30は、歩行者端末1および路側機5の概略構成を示すブロック図である。
【0244】
歩行者端末1の構成は、第1実施形態(
図4参照)と略同様であるが、記憶部16は、周辺の歩行者端末1から受信したメッセージに含まれる歩行者情報を通行履歴情報として記憶する。
【0245】
制御部15は、人物検知部38を備えている。この人物検知部38は、記憶部16の通行履歴情報に基づいて、自装置の周辺を通行する人物の中から、路側機5の異常検知部52で人物の異常事態を検知する際に監視対象となる人物を検知する。
【0246】
路側機5の構成も、第1実施形態(
図4参照)と略同様であるが、制御部43では、第1実施形態で設けられていた人物検知部51が省略され、異常検知部52は、歩行者端末1から送信されるメッセージに含まれる人物検知情報に基づいて、異常検知を行う。
【0247】
次に、第5実施形態に係る歩行者端末1および路側機5の動作手順について説明する。
図31,
図32は、歩行者端末1および路側機5の動作手順を示すフロー図である。
図33は、メッセージに含まれる歩行者情報、路側機5に蓄積される通行履歴情報、およびメッセージに含まれる路側機情報の一例を示す説明図である。なお、ここでは連れ去りの例を示す。
【0248】
図31(A)に示すように、歩行者端末1では、測位部11において、自歩行者の位置情報を取得する(ST101)。そして、メッセージ制御部31において、自歩行者の位置情報に基づいて、歩行者情報を送信する状況か否かを判定する(ST102)。ここで、歩行者情報を送信する状況であれば(ST102でYes)、次に、歩行者情報を含むメッセージをITS通信部13から送信する。
【0249】
このとき、
図33(A)に示すように、歩行者端末1から送信されるメッセージには、歩行者情報として、時間、歩行者端末1の端末ID、歩行者端末1の位置(緯度および経度)、速度、および方位の各情報と、付随情報とが含まれる。
【0250】
図31(B)に示すように、別の歩行者端末1では、他の歩行者端末1から送信されるメッセージをITS通信部13で受信すると(ST501でYes)、そのメッセージに含まれる歩行者情報を通行履歴情報として記憶部16に蓄積する。
【0251】
次に、人物検知部38において、記憶部16の通行履歴情報における各人物の歩行者情報に基づいて、自分の周囲にいる不審者を探索する。すなわち、所定期間(例えば過去1週間)で通行履歴にない人物が、自歩行者の周囲の所定範囲(例えば半径10mの円)内に、所定時間継続して現れているか否かを判定する。
【0252】
ここで、自分の周囲に不審者を発見すると(ST503でYes)、記憶部16の通行履歴情報における該当する人物の歩行者情報に警戒フラグを設定する(ST504)。そして、メッセージ制御部31において、発見した不審者(監視対象となる人物)の歩行者情報を含むメッセージをITS通信部13から路側機5に送信する(ST505)。
【0253】
このとき、
図33(B)に示すように、歩行者端末1から路側機5に送信されるメッセージには、歩行者情報として、時間、送信者である歩行者端末1の端末ID、歩行者端末1の位置(緯度および経度)、速度、および方位の各情報と、付随情報とが含まれ、付随情報には、監視対象となる人物に関する情報、具体的には不審者として警戒フラグが設定された人物の歩行者端末1の端末ID(警戒ID)が格納される。
【0254】
図32(A)に示すように、路側機5では、歩行者端末1から送信されるメッセージをITS通信部41で受信すると(ST281でYes)、そのメッセージに含まれる歩行者情報を通行履歴情報として記憶部44に蓄積する(ST282)。
【0255】
このとき、
図33(C-1)に示すように、記憶部44に通行履歴情報として蓄積される歩行者情報には、時間、歩行者端末1の端末ID(歩行者ID)、歩行者端末1の位置(緯度および経度)、速度、および方位の各情報と、付随情報とが含まれる。
【0256】
次に、異常検知部52において、通行履歴情報に基づいて、不審者(監視対象となる人物)、すなわち、警戒フラグが設定された人物が存在するかを判定する(ST283)。ここで、不審者が存在する場合には(ST283でYes)、その不審者を監視して、異常事態が発生したか否かを判定する(ST284)。具体的には、不審者が、連れ去りの条件である他の人物と同行している状態であるか否かを判定する。
【0257】
ここで、異常事態(連れ去り)が発生したもの判定された場合には(ST284でYes)、異常事態を検知したことを表す異常検知情報を、通行履歴情報の該当する人物の歩行者情報に登録する(ST206)。このとき、
図33(C-2)に示すように、通行履歴情報の歩行者情報に、異常検知情報として、加害者(警戒フラグが設定された人物)の歩行者端末1の端末ID(警戒ID)が格納される。
【0258】
次に、メッセージ制御部53において、異常検知情報を含むメッセージを生成して、そのメッセージをITS通信部41からら周辺の歩行者端末1に送信する(ST207)。
【0259】
このとき、
図33(C-2)に示すように、路側機5から歩行者端末1に送信されるメッセージには、時間、自装置の路側機ID、加害者の歩行者端末1の端末ID(警戒ID)、被害者の歩行者端末1の端末ID、歩行者端末1の位置(緯度及び経度)の各情報と、異常検知情報(連れ去り)が含まれる。
【0260】
図32(B)に示すように、周辺に存在する他の歩行者端末1の動作手順は、第1実施形態(
図5(C)参照)と同様である。また、保護者端末6も第1実施形態と同様である。
【0261】
なお、本実施形態では、人物検知を歩行者端末1で行い、異常検知を路側機5で行うようにしたが、人物検知および異常検知の両方を歩行者端末1で行うようにしてもよい。本実施形態のように、人物検知および異常検知を歩行者端末1と路側機5とで分担すると、歩行者端末1の負荷を軽減することができる。ちなみに、第1実施形態のように、路側機5ですべて行う構成とすると、歩行者端末1で特別な処理が不要となるため、通常の機能を備えた歩行者端末1をそのまま使用することができる。
【0262】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。
図34は、第6実施形態に係る通信システムの概要を示す説明図である。
【0263】
高齢者は、買い物や散歩で出歩いたり、認知症の場合には徘徊したりする。このような高齢者の外出では、いつも決まった場所を決まった時間に通行する場合が多い。また、児童は、通学のためにいつも決まった場所(通学路)を決まった時間に通行する。このため、高齢者や児童が、決まった場所を決まった時間に通行しない場合には、高齢者や児童に異常事態が発生したことが予測される。
【0264】
そこで、本実施形態では、見守りの対象者(高齢者や児童)が所持する歩行者端末1から送信されるメッセージを路側機5で受信して、そのメッセージに含まれる歩行者情報を通行履歴情報として蓄積し、その通行履歴情報に基づいて、路側機5の地点を通行する通行予定時間帯を行動パターン情報として取得する。そして、路側機5の通信エリアを対象者が通行予定時間帯に通行した否かを判定して、見守りの対象者に異常事態が発生したことを検知する。そして、見守りの対象者がいつも通行する時間帯に通行しない旨を、路側機5の地点情報とともに保護者に通知する。
【0265】
なお、踏み切り等の危険と思われる場所に、見守りの対象者が近づいている場合は、他の場所にいる場合とは異なる通知方法で保護者への通知を行ってもよい。加えて、見守りの対象者の近くの踏み切りを電車が通過する予定時刻には、さらに異なる通知方法で保護者への通知を行ってもよい。
【0266】
これにより、保護者による児童や高齢者の見守りを支援することができる。すなわち、高齢者の安否を保護者が確認することができる。また、誘拐などの子供の異常事態を保護者が早期に把握することができる。また、高齢者の徘徊の状況を保護者が確認することができる。特に、路側機5の地点情報を保護者に通知することで、保護者が、対象者がどの場所を通行していないかを把握することができる。
【0267】
なお、本実施形態では、路側機5が保護者に通知するようにしたが、管理サーバを設けて、管理サーバが、路側機5から収集した歩行者情報に基づいて異常検知を行って、管理サーバから保護者に通知するようにしてもよい。
【0268】
次に、第6実施形態に係る歩行者端末1および路側機5の概略構成について説明する。
図35は、歩行者端末1および路側機5の概略構成を示すブロック図である。
【0269】
歩行者端末1の構成は、第1実施形態(
図4参照)と同様である。
【0270】
路側機5の構成も、第1実施形態(
図4参照)と略同様であるが、制御部43が、行動パターン情報取得部60を備えている。この行動パターン情報取得部60は、記憶部44の通行履歴情報に基づいて、対象者の行動パターン情報を取得する。具体的には、行動パターン情報として、通行予定時間帯、すなわち、対象者がいつも通行する時間帯を取得する。
【0271】
また、人物検知部51は、歩行者端末1から受信したメッセージに含まれる歩行者情報に基づいて、見守りの対象者を検知する。異常検知部52は、見守りの対象者が通行予定時間帯に通行したか否かを判定する。なお、対象者の通行予定時間帯が経過したタイミングで、対象者が通行予定時間帯に通行したか否かを判定すればよい。
【0272】
なお、本実施形態では、対象者の通行予定時間帯を設定して、その通行予定時間帯が経過したタイミングで、対象者が通行予定時間帯に通行したか否かを判定するようにしたが、行動パターン情報として、対象者ごとの通行予定時刻を設定して、時間帯ごとに設定された確認時刻になったタイミングで、その時間帯に通行予定時刻が含まれる対象者を一括して判定を行うようにしてもよい。
【0273】
次に、第6実施形態に係る歩行者端末1および路側機5の動作手順について説明する。
図36は、歩行者端末1および路側機5の動作手順を示すフロー図である。
図37は、メッセージに含まれる歩行者情報の一例を示す説明図である。
【0274】
図36(A)に示すように、測位部11において、自歩行者の位置情報を取得する(ST101)。そして、メッセージ制御部31において、自歩行者の位置情報に基づいて、歩行者情報を送信する状況か否かを判定する(ST102)。ここで、歩行者情報を送信する状況であれば(ST102でYes)、次に、歩行者情報を含むメッセージをITS通信部13から路側機5に送信する(ST103)。
【0275】
このとき、
図37に示すように、歩行者端末1から路側機5に送信されるメッセージには、歩行者情報として、時間、歩行者端末1の端末ID、歩行者端末1の位置(緯度および経度)、速度、および方位の各情報と、付随情報としての保護者の連絡先である保護者情報とが含まれる。
【0276】
図36(B)に示すように、路側機5では、歩行者端末1から送信されるメッセージをITS通信部41で受信すると(ST201でYes)、そのメッセージに含まれる歩行者情報を通行履歴情報として記憶部44に蓄積する(ST202)。
【0277】
次に、路側機5では、人物検知部51において、歩行者端末1から受信したメッセージに含まれる歩行者情報に基づいて、見守りの対象者を検知し、異常検知部52において、見守りの対象者が通行予定時間帯に通行したか否かを判定する(ST291)。
【0278】
ここで、見守りの対象者が通行予定時間帯に通行していない場合には(ST291でNo)、通報部55において、保護者の宛先に関する保護者情報を記憶部44から取得する(ST292)。そして、見守りの対象者が通行予定時間帯に通行していない旨の異常検知情報と路側機5の地点情報とを含む異常検知通知を、ネットワーク通信部42から保護者端末6に送信する(ST293)。
【0279】
一方、見守りの対象者が通行予定時間帯に通行している場合には(ST291でYes)、特に処理を行わずに終了する。
【0280】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用できる。また、上記の実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。
【0281】
例えば、前記の実施形態では、異常事態として、連れ去り、置き去り、監禁、ストーキング、いじめ、ひき逃げを検知するようにしたが、このような犯罪行為に限定されるものではなく、犯罪以外の行為、例えば、迷惑行為などを検知するようにしてもよい。
【0282】
また、置き去り対策を、迷子対策等に応用展開してもよい。レジャー施設やショッピングモール等のような特定場所において、混雑時に迷子になる場合が多い。そこで、特定場所にいること、混雑していることを条件に加えてもよい。混雑しているかどうかについては、カメラ画像等で判断可能である。特定場所にいて、混雑している場合のみ、保護者と子供が所定距離以上離れている状態が所定時間以上続いたら、保護者に連絡するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0283】
本発明に係る路側装置、歩行者装置、通信システム、異常検知方法および異常通知方法は、歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを検知することができる効果を有し、道路に設置され、車載装置との間で位置情報を含むメッセージを交換して危険判定を行う歩行者装置と路歩間通信を行う路側装置、歩行者装置、歩行者装置と路側装置とが路歩間通信を行う通信システム、歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを検知する異常検知方法、歩行者装置を所持する人物に異常事態が発生したことを路側装置から通知する異常通知方法などとして有用である。
【符号の説明】
【0284】
1 歩行者端末(歩行者装置)
2 携帯情報端末
3 車載端末(車載装置)
4 カーナビゲーション装置
5 路側機(路側装置)
6 保護者端末
7 管理サーバ(管理装置)
11 測位部
12 検出部
13 通信部
15 制御部
16 記憶部
41 通信部
42 ネットワーク通信部
43 制御部
44 記憶部
61 ネットワーク通信部
62 制御部
63 記憶部
64 モニタ(表示装置)