(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】関節構造および関節駆動装置ならびに二足歩行ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 17/00 20060101AFI20221209BHJP
B25J 5/00 20060101ALI20221209BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20221209BHJP
F16H 1/32 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
B25J17/00 E
B25J5/00 F
B25J13/08 Z
F16H1/32 B
(21)【出願番号】P 2018138677
(22)【出願日】2018-07-24
【審査請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】514074382
【氏名又は名称】カワダロボティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 健二
(72)【発明者】
【氏名】川崎 俊和
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-000664(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108032328(CN,A)
【文献】特開2015-003357(JP,A)
【文献】特開2014-000615(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0100872(KR,A)
【文献】国際公開第2004/069493(WO,A1)
【文献】特開2005-014102(JP,A)
【文献】特開2009-184049(JP,A)
【文献】特開2004-174704(JP,A)
【文献】特開2014-083613(JP,A)
【文献】国際公開第2007/037131(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
F16H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1関節軸を中心に相対回転する各種要素から構成される第1波動歯車装置と、第2関節軸を中心に相対回転する各種要素から構成される第2波動歯車装置とを備えて本体装置に搭載される関節構造であって、
前記第1波動歯車装置は前記第1関節軸周りの回転駆動力を第1モータから伝達入力される第1入力要素を具備し、前記第2波動歯車装置は前記第2関節軸周りの回転駆動力を第2モータから伝達入力される第2入力要素を具備し、
前記第1関節軸および前記第2関節軸が同一平面内に、あるいは、当該第1波動歯車装置または当該第2波動歯車装置の上下方向の厚さ未満の範囲内に位置して交差するように配置されて、
前記第1波動歯車装置は、第1固定要素が第1相対不動部材に固定されるとともに第1出力要素が第1相対駆動中間部材に固定され、
前記第2波動歯車装置は、第2固定要素が第2相対不動中間部材に固定されるとともに第2出力要素が第2相対駆動部材に固定され、
前記第1相対駆動中間部材と前記第2相対不動中間部材とは相対位置および相対姿勢が変化しないように構成されており、
前記第1波動歯車装置は、前記第2関節軸の軸線上に配置され、
前記第1波動歯車装置の前記第1入力要素に回転動力を伝達入力する前記第1モータは、前記第1相対不動部材に配置さ
れ、
前記第2波動歯車装置の前記第2入力要素に回転動力を伝達入力する前記第2モータは、前記第1相対駆動中間部材および前記第2相対不動中間部材の一方に、または双方に跨るように配置されていることを特徴とする関節構造。
【請求項2】
前記第2モータは、前記第1関節軸および前記第2関節軸の交差する交点を通過して当該第1関節軸および当該第2関節軸の双方に直交する直線上に配置されていることを特徴とする
請求項1に記載の関節構造。
【請求項3】
前記第1波動歯車装置および前記第2波動歯車装置は、前記第1入力要素および前記第2入力要素としてそれぞれ波動発生器を、前記第1固定要素および前記第2固定要素としてそれぞれ可撓性外歯歯車を、前記第1出力要素および前記第2出力要素としてそれぞれ剛性内歯歯車を、備えることを特徴とする請求項1
または請求項2に記載の関節構造。
【請求項4】
前記第1モータは、前記第1関節軸と平行な回転駆動軸を有して前記第1波動歯車装置の前記第1入力要素に回転駆動力を伝達入力することを特徴とする請求項1から
請求項3のいずれか1項に記載の関節構造。
【請求項5】
前記第2モータは、前記第2関節軸と平行な回転駆動軸を有して前記第2波動歯車装置の前記第2入力要素に回転駆動力を伝達入力することを特徴とする請求項1から
請求項3のいずれか1項に記載の関節構造。
【請求項6】
前記第1関節軸の通過する経路に形成されている第1配線通路孔と、前記第2関節軸の通過する経路に形成されている第2配線通路孔と、前記第1配線通路孔および前記第2配線通路孔を連通させるように介在する部材に形成されている連通配線通路孔と、を備えることを特徴とする請求項1から
請求項5のいずれか1項に記載の関節構造。
【請求項7】
前記第1関節軸を軸心として前記第2相対不動中間部材および前記第1相対駆動中間部材と共に相対回転する構成要素の全体または一部を覆うカバーを有して、
前記カバーは前記第1関節軸を軸心とする湾曲面を有して、前記第1相対不動部材は前記カバーの湾曲面に近接対面する相似形状の凹面形状を有していることを特徴とする請求項1から
請求項6のいずれか1項に記載の関節構造。
【請求項8】
上記の請求項1から
請求項7までのいずれか1項に記載の関節構造を備える関節駆動装置であって、
前記第1モータと、
前記第2モータと、
前記第1モータの回転駆動軸の駆動回転角を検出する第1駆動回転角センサと、
前記第2モータの回転駆動軸の駆動回転角を検出する第2駆動回転角センサと、
前記第1波動歯車装置の第1固定要素と第1出力要素との相対回転角度を検出する第1相対回転角センサと、
前記第2波動歯車装置の第2出力要素と第2固定要素との相対回転角度を検出する第2相対回転角センサと、
を備えて、
前記第1駆動回転角センサの検出値に、前記第1モータの回転駆動軸から前記第1波動歯車装置の第1入力要素に回転駆動力を伝達する減速比と当該第1波動歯車装置の第1入力要素から第1出力要素への減速比とを積算した積算値から前記第1相対回転角センサの検出値を減算した第1減算値を算出し、
前記第2駆動回転角センサの検出値に、前記第2モータの回転駆動軸から前記第2波動歯車装置の第2入力要素に回転駆動力を伝達する減速比と当該第2波動歯車装置の第2入力要素から第2出力要素への減速比とを積算した積算値から前記第2相対回転角センサの検出値を減算した第2減算値を算出し、
前記第1減算値と前記第2減算値のいずれか一方、もしくは当該第1減算値および当該第2減算値の双方に基づいて前記関節構造の異常を検出する検出手段を備えることを特徴とする関節駆動装置。
【請求項9】
上記の請求項1から
請求項7までのいずれか1項に記載の関節構造を、下腿部および足部を連結する足首におけるピッチング動作とローリング動作とを行う足首関節として備えることを特徴とする二足歩行ロボット。
【請求項10】
上記の
請求項8に記載の関節駆動装置を備えることを特徴とする二足歩行ロボット。
【請求項11】
上記の請求項1から
請求項7までのいずれか1項に記載の関節構造を、下腿部および足部を連結する足首におけるピッチング動作とローリング動作とを行う足首関節として備え、かつ、上記の
請求項8に記載の関節駆動装置を備えることを特徴とする二足歩行ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差する回転方向への相対回転を許容する関節構造および関節駆動装置ならびに二足歩行ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
関節を介して連結されている2部位をその関節を中心にして相対的に回転させることを実現する関節構造が知られている。この種の関節構造としては、例えば、二足歩行ロボットにおける足首のように、ピッチ方向とロール方向へ相対回転自在に下腿に足を連結する関節構造が各種開発されている。
【0003】
近年、二足歩行ロボットには、平地のみならず、凹凸のある不整地や急な傾斜地でも安定して足裏を接地させて信頼性高く歩行することが求められている。このため、二足歩行ロボットとしては、足首の高さを低くしつつ、その関節周りにおける可動範囲を広くするとともに、周囲環境からの干渉を受けることをなくすことによって、支障なく動作可能でコンパクトな構造にするのが好適である。
【0004】
このことから、特許文献1には、直交するピッチ軸およびロール軸を足首に備える歩行ロボットが開示されている。この歩行ロボットの足首の関節構造では、ピッチ軸およびロール軸のそれぞれに波動歯車装置が配置されており、そのピッチ軸の波動歯車装置に駆動力を入力する第1モータが下腿に配置され、また、ロール軸に波動歯車装置と共に第2モータが配置されている。
【0005】
しかしながら、この特許文献1に記載の関節構造では、ピッチ軸の波動歯車装置が下腿の側面に配置されていることから、ロール軸を中心にする可動範囲が狭くなって、さらに、床面に接触干渉し易い構造になっている。これらを回避しようとすると、足首周りの部品のレイアウトに制限が掛かるとともに、足首が床面から離隔されるために高くなってしまう。
【0006】
また、特許文献2には、直交するピッチ軸およびロール軸を足首に備える歩行ロボットが開示されている。この歩行ロボットの足首の関節構造では、ロール軸を挟む両側にアクチュエータとリンク部材をそれぞれ配置するとともにリンク間には球面軸受けを設け、ピッチ軸を挟んでその反対側にピッチ軸のみの寄与するアクチュエータとリンク部材を配置し、3つのアクチュエータの回転角度を制御することにより、ピッチ方向への回転とロール方向への回転の両回転が実現されている。
【0007】
しかしながら、この特許文献2に記載の関節構造では、リンク部材を介してアクチュエータの駆動力を伝達して足首を中心に足側を回転させるとともに、球面軸受を用いた3次元的に動くリンク機構が用いていることから、その足首の関節による可動範囲を大きく確保することが難しく、また、アクチュエータをそれぞれ独立して駆動させることができないことから制御処理が煩雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平3-184782号公報
【文献】特開2013-248699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、単方向の可動範囲を広くすることは言うまでもなく、交差する2回転方向が複合可動(ピッチ方向にも可動するとともに、ロール方向にも可動する)する場合においても両方向の可動範囲を広く確保し、加えて足首高さの低いコンパクトな構造の関節構造を実現して、それを備える関節駆動装置ならびに二足歩行ロボットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する関節構造の発明の第1の態様は、第1関節軸を中心に相対回転する各種要素から構成される第1波動歯車装置と、第2関節軸を中心に相対回転する各種要素から構成される第2波動歯車装置とを備えて本体装置に搭載される関節構造であって、前記第1波動歯車装置は前記第1関節軸周りの回転駆動力を第1モータから伝達入力される入力要素を具備し、前記第2波動歯車装置は前記第2関節軸周りの回転駆動力を第2モータから伝達入力される入力要素を具備し、前記第1波動歯車装置および前記第2波動歯車装置は、前記第1関節軸および前記第2関節軸が同一平面内に、あるいは、当該第1波動歯車装置または当該第2波動歯車装置の上下方向の厚さ未満の範囲内に位置して交差するように配置されて、前記第1波動歯車装置および前記第2波動歯車装置は、固定要素が相対不動部材に連結され、出力要素が相対駆動部材に連結されていることを特徴とするものである。
【0011】
この関節構造の発明の第1の態様では、第1波動歯車装置および第2波動歯車装置が第1関節軸および第2関節軸を同一平面内に、あるいは、これら歯車装置の厚さ未満の範囲内で交差させて配置されているので、軸周りの構造をできるだけ少なくしてコンパクトにすることができ、それぞれ深く相対回転させ、また、足首の高さを抑えて本体装置に搭載することができる。
【0012】
上記課題を解決する関節構造の発明の第2の態様は、上記の第1の態様に加えて、前記第1波動歯車装置および前記第2波動歯車装置の一方は、他方の前記第1関節軸または前記第2関節軸の軸線上に、あるいは、当該他方の前記第1関節軸または前記第2関節軸に近接する位置に配置されていることを特徴とするものである。
【0013】
この関節構造の発明の第2の態様では、第1波動歯車装置および第2波動歯車装置の一方を他方の第1関節軸または第2関節軸の軸線上や近接位置に配置するので、一方を他方の軸線周りで回転させることができ、その回転に必要な空間を不必要に大きく準備する必要なく、コンパクトな回転構造を実現することができる。この第1波動歯車装置および第2波動歯車装置の一方は、必要な部品をその他方の軸線周りにレイアウトして、その外周側に他方を配置することにより、全体的にコンパクトな回転構造を実現することができ、好適である。
【0014】
上記課題を解決する関節構造の発明の第3の態様は、上記の第1または第2の態様に加えて、前記第1波動歯車装置および前記第2波動歯車装置は、前記入力要素としての波動発生器と、前記固定要素としての可撓性外歯歯車と、前記出力要素としての剛性内歯歯車と、を備えることを特徴とするものである。
【0015】
この関節構造の発明の第3の態様では、関節軸を共通の軸心として、入力要素の波動発生器と、固定要素の可撓性外歯歯車と、出力要素の剛性内歯歯車とを軸心側から順次に配置されることにより、その関節軸周りに回転運動する相対回転部材と波動歯車装置の干渉がより起き難くなり、関節軸周りの関節可動範囲をより広く確保しつつ、相対回転部材との連結に必要な間隔を小さく抑えることが可能になる。
【0016】
上記課題を解決する関節構造の発明の第4の態様は、上記の第1から第3のいずれか1つの態様に加えて、前記第1モータおよび前記第2モータの一方または双方は、前記第1関節軸または前記第2関節軸と平行な回転駆動軸を有して前記第1波動歯車装置または前記第2波動歯車装置の前記入力要素に回転駆動力を伝達入力することを特徴とするものである。
【0017】
この関節構造の発明の第4の態様では、第1波動歯車装置および第2波動歯車装置の一方または双方において、入力要素と回転駆動軸の軸心を平行にして、それぞれの径方向を共通にして、コンパクトに配置することができる。
【0018】
上記課題を解決する関節構造の発明の第5の態様は、上記の第1から第4のいずれか1つの態様に加えて、前記第1モータおよび前記第2モータは、前記相対不動部材に配置されていることを特徴とするものである。
【0019】
この関節構造の発明の第5の態様では、相対不動部材にモータを配置して駆動させることができ、それぞれ第1、第2関節軸の軸周りの構造をコンパクトにして相対回転させることができる。
【0020】
上記課題を解決する関節構造の発明の第6の態様は、上記の第1から第5のいずれか1つの態様に加えて、前記相対不動部材および前記相対駆動部材を構成要素として含み、前記相対不動部材の内外を連通させるように前記第1関節軸の通過する経路に形成されている第1配線通路孔と、前記相対駆動部材の内外を連通させるように前記第2関節軸の通過する経路に形成されている第2配線通路孔と、前記第1配線通路孔および前記第2配線通路孔を連通させるように介在する部材に形成されている連通配線通路孔と、を備えることを特徴とするものである。
【0021】
この関節構造の発明の第6の態様では、内部構造に接続する必要のある配線を第1関節軸や第2関節軸を通過させて相対不動部材や相対駆動部材の外部に引き出すことができ、関節軸を中心に回転させて配線に与える回転負荷をできるだけ抑制することができ、また、周囲との接触による損傷を発生し難くすることができる。
【0022】
上記課題を解決する関節構造の発明の第7の態様は、上記の第1から第6のいずれか1つの態様に加えて、前記相対不動部材および前記相対駆動部材を構成要素として含み、前記第1関節軸を軸心として前記相対駆動部材と共に相対回転する構成要素の全体または一部を覆うカバーを有して、前記カバーは前記第1関節軸を軸心とする湾曲面を有して、前記相対不動部材は前記カバーの湾曲面に近接対面する相似形状の凹面形状を有していることを特徴とするものである。
【0023】
この関節構造の発明の第7の態様では、第1関節軸周りで異物を挟み込んでしまうことを回避しつつ相対不動部材を相対駆動部材に対して相対回転させることができる。
【0024】
上記課題を解決する関節駆動装置の発明の第1の態様は、上記の関節構造の発明の第1から第7のいずれか1つの態様を備える関節駆動装置であって、前記第1モータと、前記第2モータと、前記第1モータの回転駆動軸の駆動回転角を検出する第1駆動回転角センサと、前記第2モータの回転駆動軸の駆動回転角を検出する第2駆動回転角センサと、前記第1波動歯車装置の固定要素と出力要素との相対回転角度を検出する第1相対回転角センサと、前記第2波動歯車装置の出力要素と固定要素との相対回転角度を検出する第2相対回転角センサと、を備えて、前記第1駆動回転角センサの検出値に、前記第1モータの回転駆動軸から前記第1波動歯車装置の入力要素に回転駆動力を伝達する減速比と当該第1波動歯車装置の入力要素から出力要素への減速比とを積算した積算値から前記第1相対回転角センサの検出値を減算した第1減算値を算出し、前記第2駆動回転角センサの検出値に、前記第2モータの回転駆動軸から前記第2波動歯車装置の入力要素に回転駆動力を伝達する減速比と当該第2波動歯車装置の入力要素から出力要素への減速比とを積算した積算値から前記第2相対回転角センサの検出値を減算した第2減算値を算出し、前記第1減算値と前記第2減算値のいずれか一方、もしくは当該第1減算値および当該第2減算値の双方に基づいて前記関節構造の異常を検出する検出手段を備えることを特徴とするものである。
【0025】
この関節駆動装置の発明の第1の態様では、第1、第2減算値から構成部材の異常、例えば、ネジ締結の緩みや波動歯車装置内のラチェッティング等の異常発生を検出ことが可能になる。
【0026】
上記課題を解決する二足歩行ロボットの発明の第1の態様は、上記の関節構造の発明の第1から第7のいずれか1つの態様を、下腿部および足部を連結する足首におけるピッチング動作とローリング動作とを行う足首関節として備えるものである。
【0027】
この二足歩行ロボットの発明の第1の態様では、上記の関節構造の発明の第1から第7のいずれか1つの態様を足首関節として備えることができ、例えば、低い位置でコンパクトな足首により足部を深く相対回転させることができる。
【0028】
上記課題を解決する二足歩行ロボットの発明の第2の態様は、上記の関節駆動装置の発明の第1の態様を備えるものである。
【0029】
この二足歩行ロボットの発明の第2の態様では、上記の関節駆動装置の発明の第1の態様を備えることができ、例えば、関節構造におけるネジ締結の緩みや波動歯車装置内のラチェッティング等の異常発生を検出ことが可能になる。
【発明の効果】
【0030】
このように本発明の一態様によれば、第1波動歯車装置および第2波動歯車装置が関節軸を同一平面内などの近接する範囲で交差させてコンパクトな構造にされている。これら第1波動歯車装置および第2波動歯車装置は、関節軸と平行な回転駆動軸の第1モータおよび第2モータの回転駆動力をそれぞれの入力要素に伝達されることから、その回転駆動力の伝達機構を簡素な構造にして備えることができ、それぞれ別個に簡易に駆動制御することができる。
【0031】
したがって、可動範囲が広く高さを必要としないコンパクトな構造で、関節周りのレイアウトの自由度を向上させるとともに、低い位置に配置可能な関節構造を実現することができる。
【0032】
この結果、例えば、二足歩行ロボット(本体装置)の足首として第1波動歯車装置および第2波動歯車装置を備える関節構造を低い位置に配置して、下腿を相対不動部材として固定要素を連結するとともに、足を相対駆動部材として出力要素を連結することにより、凹凸のある不整地などでも快適に歩行動作をさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る関節構造および関節駆動装置を搭載する二足歩行ロボットの一例を示す図であり、その外観を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、その足首の内部構造を示す
図2におけるIII-III断面矢視図である。
【
図4】
図4は、その足首の内部構造を示す
図2におけるIV-IV断面矢視図である。
【
図5】
図5は、その足首関節の動力源を説明する要部部品の斜視図である。
【
図6】
図6は、その足首関節の動力源とロール方向への回転機構を説明する要部部品の斜視図である。
【
図7】
図7は、その足首関節による下腿部に対する足部のピッチ方向への回転状態を示す側面図である。
【
図8】
図8は、その足首関節による下腿部に対する足部の
図7の逆ピッチ方向への回転状態を示す側面図である。
【
図9】
図9は、その足首関節による下腿部に対する足部のロール方向への回転状態を示す側面図である。
【
図10】
図10は、その足首関節による下腿部に対する足部の
図9の逆ロール方向への回転状態を示す側面図である。
【
図11】
図11は、その足首関節による下腿部に対する足部の
図7と同じピッチ方向および
図10と同じロール方向(
図9の逆ロール方向)への回転状態を示す側面図である。
【
図12】
図12は、その足首関節による下腿部に対する足部の
図8と同じピッチ方向(
図7の逆ピッチ方向)および
図9と同じロール方向への回転状態を示す側面図である。
【
図13】
図13は、その足首関節のカバーの取付状態を示す正面図である。
【
図14】
図14は、その足首関節のカバーの取付状態を示す背面図である。
【
図15】
図15は、その足首関節のカバーの取付状態を示す側面図である。
【
図16】
図16は、その足首関節のカバーの下腿部内における位置関係を示す一部省略側面図である。
【
図17】
図17は、その足首関節の駆動を制御する制御部を説明する概念構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1~
図17は本発明の一実施形態に係る関節構造および関節駆動装置を搭載する二足歩行ロボットの一例を示す図である。
【0035】
図1において、二足歩行ロボット10は、腰部11と、左右の脚部12と、左右の足部15と、胸部16と、左右の腕部17と、頭部18とを備える左右対称構造の人型に構築されている。脚部12は、大腿部13と下腿部14とに分けられて、大腿部13は腰部11に股関節21を介して連結され、その大腿部13には下腿部14が膝関節22を介して連結され、さらにその下腿部14には足部15が足首関節23を介して連結されている。ここで、二足歩行ロボット10は、左右対称構造に構築されていることから、本実施形態の右側構造を図示して、左右の区別を特にすることなく説明し、必要に応じて右下腿部14の内側などとして説明する。
【0036】
二足歩行ロボット(本体装置)10は、
図2に示すように、下腿部14と足部15の間を、直交(交差)する
図3に図示するピッチ軸線24sおよび
図2に図示するロール軸線25sのそれぞれを回転軸として相対回転自在に連結する足首関節23が配置されている。この足首関節23は、ピッチ関節構造41およびロール関節構造61を備えて下腿部14および足部15のそれぞれに相対回転自在に連結している。ここで、ピッチ関節構造41およびロール関節構造61では、下腿部14に対して足部15をピッチ方向やロール方向に相対回転させる動力源として後述のモータが設置されて相対回転不能な固定側を固定部材と称し、相対回転可能な回転側を回転部材と称して、各部の構成を説明する。
【0037】
足首関節23のピッチ関節構造41は、
図2および
図3に示すように、ピッチ固定部材41bおよびピッチ回転部材41rにより構成されており、これらのピッチ固定部材41bおよびピッチ回転部材41rがピッチ軸線24sを中心に相対回転自在に構築されて下腿部14と足部15との間を連結支持している。
【0038】
ピッチ関節構造41のピッチ固定部材41bは、短尺な概略円筒形状に形成されて下腿部14の下腿フレーム31に相対回転不能に連結されている。このピッチ固定部材41bは、概略円筒形状の軸心に一致するピッチ軸線24s上に動力供給用のピッチ軸シャフト(第1関節軸)24を収納して軸線方向に離隔するベアリング58、59を介して相対回転自在に支持している。
【0039】
また、ピッチ関節構造41のピッチ回転部材41rは、ピッチ固定部材41bと同様に、短尺な概略円筒形状に形成されて外周側に外装されている。このピッチ回転部材41rは、軸線方向に離隔する位置に配置されているベアリング(軸受)55、56を介してピッチ軸線24sを共通にして相対回転自在に下腿フレーム31と一体のピッチ固定部材41bに支持されている。このピッチ回転部材41rは、後述するように、ピッチ軸シャフト24から回転動力を受けてピッチ固定部材41b(下腿フレーム31)に対して相対回転するように組み付けられて足部15に連結されている。
【0040】
すなわち、足首関節23のピッチ関節構造41は、ピッチ軸線24sを共通の軸心として、下腿フレーム31と一体に連結固定されているピッチ固定部材41bの内部に相対回転自在に内装されているピッチ軸シャフト24を介して、そのピッチ固定部材41bの外部に外装されて足部15に連結されているピッチ回転部材41rを相対回転させるようになっている。このことから、下腿部14に対して足部15を相対回転(相対駆動)させる構造において、ピッチ固定部材41bは、下腿フレーム31と共に、第1相対不動部材を構成し、ピッチ回転部材41rは、そのピッチ固定部材41bに対して相対回転(相対駆動)可能な第1相対駆動中間部材を構成している。
【0041】
一方、足首関節23のロール関節構造61は、
図2~
図4に示すように、ロール固定部材61bおよびロール回転部材61rにより構成されており、これらロール固定部材61bおよびロール回転部材61rがピッチ関節構造41のピッチ軸線24sに直交するロール軸線25sを中心に相対回転自在に構築されて下腿部14と足部15との間を連結支持している。
【0042】
ロール関節構造61のロール固定部材61bは、ピッチ関節構造41のピッチ固定部材41bと同様に、短尺な概略円筒形状に形成されて、足部15に連結されているピッチ回転部材41rに相対回転不能に連結されている。このロール固定部材61bは、概略円筒形状の軸心に一致する動力供給用のロール軸シャフト(第2関節軸)25を収納して軸線方向に離隔するベアリング78、79を介して相対回転自在に支持している。
【0043】
また、ロール関節構造61のロール回転部材61rは、基底部61r1、対面板部61r2および対面収容部61r3を備えて構築されており、基底部61r1が足部15の上面と平行姿勢で一体に連結固定されて、その基底部61r1の踵15b側に対面収容部61r3が一体に連結固定されているとともに、その基底部61r1の爪先15f側に対面板部61r2が一体に連結固定されて設置されている。要するに、ロール関節構造61のロール回転部材61rは、ロール軸線25s方向に対面板部61r2および対面収容部61r3が対面離隔するように配置されて基底部61r1に連結固定されている。なお、本実施形態では、基底部61r1が足部15の上面に平行姿勢になるように設置する場合を一例として説明するが、これに限るものではなく、足部15に対して相対的な位置関係が固定されている状態に設置すればよいことは言うまでもない。
【0044】
そのうちの対面板部61r2は、対面収容部61r3にロール軸線25s方向に対面する位置に設置されており、後述するように、相対回転自在に収容するロール固定部材61bと一体のピッチ回転部材41rを間に挟み込むように介在させてその対面収容部61r3に対面している。
【0045】
また、その対面収容部61r3は、ロール固定部材61bと同様に、短尺な概略円筒形状に形成されて、そのピッチ回転部材41rと一体のロール固定部材61bの外周側に外装されている。この対面収容部61r3は、対面板部61r2と共に、軸線方向に離隔する位置に配置されているベアリング(軸受)74、75を介して、ロール軸線25sを共通にして相対回転自在に一体のロール固定部材61bおよびピッチ回転部材41rに支持されている。この対面収容部61r3は、後述するように、ロール軸シャフト25から回転動力を受けてロール固定部材61bおよびピッチ回転部材41rに対して対面板部61r2と共に相対回転するように組み付けられている。
【0046】
すなわち、足首関節23のロール関節構造61は、ロール軸線25sを共通の軸心として、足部15に連結されているピッチ回転部材41rと一体のロール固定部材61bの内部に相対回転自在に内装されているロール軸シャフト25を介して、そのロール固定部材61bの外部に外装されている足部15と一体のロール回転部材61rの対面収容部61r3を対面板部61r2と共に相対回転させるようになっている。このことから、下腿部14に対して足部15を相対回転(相対駆動)させる構造において、ロール固定部材61bは、ピッチ回転部材41rと一体になって相対位置および相対姿勢が変化しないように構成されているとともに、第2相対不動中間部材を構成し、ロール回転部材61rは、足部15と共に、そのロール固定部材61bに対して相対回転(相対駆動)可能な第2相対駆動部材を構成している。
【0047】
このため、足首関節23のピッチ関節構造41とロール関節構造61は、ピッチ回転部材41rがピッチ軸線24s周りに、また、ロール回転部材61rがロール軸線25s周りに、それぞれ下腿部14に対して相対回転可能に、すなわち、足部15を相対回転させるように設置されており、そのピッチ軸線24sとロール軸線25sとが直交(交差)する関節原点(直交点)27oをロール固定部材61bと一体のピッチ回転部材41r内に位置するように構築されている。
【0048】
これにより、足首関節23は、ピッチ軸線24sとロール軸線25sとが直交して、ピッチ方向とロール方向のそれぞれの回転軸を同一レベル(同一平面内あるいは後述する波動歯車減速装置42、62の直径程度の範囲内)に設置することができ、下腿部14の下部近傍の接近位置に足部15(ロール関節構造61の基底部61r1)をピッチング動作やローリング動作させる際のピッチ方向とロール方向とのそれぞれに回転可能に設置することを可能にしている。
【0049】
そして、この二足歩行ロボット10は、足首関節23のピッチ関節構造41およびロール関節構造61のそれぞれの動力源としてピッチモータ46(
図5を参照)およびロールモータ66(
図5、
図6を参照)を備えている。ピッチモータ46は、ピッチ固定部材41bである下腿部14の上部で膝関節22に近く、ロールモータ66から離隔する位置に配置されている。ロールモータ66は、ロール固定部材61bと一体回転するように連結されたピッチ回転部材41rの上部でロール軸シャフト25に近い位置に配置されている。
【0050】
これにより、足首関節23は、ロール関節構造61のロールモータ66の上部に空間を確保する位置にピッチ関節構造41のピッチモータ46を配置することによって、後述するように、ピッチング動作を足部15にさせる際に、ピッチング方向に一体回転するロールモータ66がピッチモータ46の下部に入り込むことを許容することができ、ピッチング方向の回転範囲を大きく確保することができている。
【0051】
これらピッチ関節構造41とロール関節構造61は、
図2~
図6に示すように、ピッチモータ(第1モータ)46とロールモータ(第2モータ)66から駆動力をピッチ平行軸型伝動機構47とロール平行軸型伝動機構67を介してそれぞれ受け取って足部15を下腿部14に対してピッチ方向やロール方向に相対回転させるピッチ波動歯車減速装置(第1波動歯車装置)42およびロール波動歯車減速(第2波動歯車装置)62が内蔵されている。
【0052】
具体的には、ピッチ波動歯車減速装置42は、歯数の異なる歯車を噛み合わせて入力される駆動力を減速して出力する、所謂、カップ型のハーモニックドライブ(登録商標)の構造を備えている。ピッチ波動歯車減速装置42は、外径が一番大きなピッチ剛性内歯歯車(出力要素)43と、このピッチ剛性内歯歯車43の内周側に歯数が異なるために部分的に噛み合うピッチ可撓性外歯歯車(固定要素)44と、このピッチ可撓性外歯歯車44の内周側に配置されてピッチ剛性内歯歯車43にピッチ可撓性外歯歯車44を噛み合わさせるピッチ波動発生器(入力要素)45とを備えて構築されている。このピッチ波動歯車減速装置42は、ピッチ軸線24sを共通の軸心として、ピッチ剛性内歯歯車43、ピッチ可撓性外歯歯車44、およびピッチ波動発生器45が径方向に連続して同心円状に併置されることによりピッチ関節構造41(ピッチ回転部材41r)内に組み込まれている。
【0053】
このうちのピッチ剛性内歯歯車43は、ピッチ関節構造41のピッチ回転部材41rにピッチ軸線24sを軸心として同軸回転するように連結固定されて、下腿部14に対して相対回転可能に設置されている。ピッチ可撓性外歯歯車44は、ピッチ関節構造41のピッチ固定部材41bに連結固定されて、下腿部14に対して相対回転不能に一体に設置されている。ピッチ波動発生器45は、ピッチ関節構造41のピッチ軸シャフト24に連結固定されて、後述するようにピッチ平行軸型伝動機構47を介して受け取るピッチモータ46の回転駆動力で回転される。
【0054】
この構造により、ピッチ波動歯車減速装置42は、ピッチ可撓性外歯歯車44がピッチ関節構造41のピッチ固定部材41bを介して下腿部14に連結固定されている状態で、ピッチ波動発生器45がピッチ関節構造41のピッチ軸シャフト24からピッチ平行軸型伝動機構47を介してピッチモータ46の回転駆動力を入力(供給)されて回転駆動されると、ピッチ可撓性外歯歯車44に噛み合うピッチ剛性内歯歯車43がその歯数差に応じて減速回転して回転駆動力を出力する。
【0055】
また、ピッチ平行軸型伝動機構47は、
図3~
図5に示すように、ピッチモータ46の回転駆動軸に設置されているモータプーリ48と、ピッチ軸シャフト24の端部に設置されているピッチプーリ49とが互いの軸心が平行になるように上下に配置されて、それぞれにタイミングベルト50が巻き掛けられている。
【0056】
この構造により、ピッチ平行軸型伝動機構47は、動力の伝達元と伝達先となるピッチモータ46の回転駆動軸とピッチ軸シャフト24のピッチ軸線24sが平行となる伝動構造に構築されており、タイミングベルト50を巻き掛けるピッチプーリ49等の簡易な構造(ギア列でもよい)をその軸線方向の片側に配置して、ピッチモータ46の回転駆動力を伝達することができる。このピッチ平行軸型伝動機構47は、
図5および
図6に示すように、ピッチモータ46の回転駆動力をピッチ軸シャフト24に伝達してピッチ波動歯車減速装置42のピッチ波動発生器45からピッチ剛性内歯歯車43を介してピッチ関節構造41のピッチ回転部材41r側(足部15)に伝達してピッチ方向に相対回転させることができる。
【0057】
また、このピッチ波動歯車減速装置42は、ピッチ剛性内歯歯車43を、ピッチ軸線24sとロール軸線25sが直交する点である関節原点27oの近傍に配置している。この配置の第一メリットとして、この配置により、外周面の歯面同士を噛み合わせる汎用のギア列の構造よりも、ピッチ軸線24sの径方向がコンパクトなピッチ固定部材41bを形成でき、その結果、足首関節23をコンパクトにすることができる。
【0058】
加えて、この配置の第二メリットとして、この配置により、関節原点27oを境にピッチ軸線24sのある一方向にピッチ波動歯車減速装置42のピッチ可撓性外歯歯車44とピッチ波動発生器45を配置することができ、その結果、そのピッチ軸線24sの反対側に後述するケーブル配線用の配線孔54を設けることができる。
【0059】
更に、この配置の第三メリットとして、ピッチ軸線24sの径方向がコンパクトなピッチ固定部材41bを形成でき、且つ、ロール軸線25sの径方向がコンパクトなピッチ関節構造41を形成でき、足部15をロール方向に回転させる時に、ピッチ関節構造41と足部15が干渉せずに動作できる範囲が広がるため、足首高さを低く抑えつつ、ロール方向への回転角度も大きくすることができる。
【0060】
また、同様に、
図2~
図4に示すように、ロール波動歯車減速装置62は、外径が一番大きなロール剛性内歯歯車(出力要素)63と、このロール剛性内歯歯車63の内周側に歯数が異なるために部分的に噛み合うロール可撓性外歯歯車(固定要素)64と、このロール可撓性外歯歯車64の内周側に配置されてロール剛性内歯歯車63にロール可撓性外歯歯車64を噛み合わさせるロール波動発生器(入力要素)65とを備えて、所謂、カップ型のハーモニックドライブ(登録商標)の構造に構築されている。このロール波動歯車減速装置62は、ロール軸線25sを共通の軸心として、ロール剛性内歯歯車63、ロール可撓性外歯歯車64、およびロール波動発生器65が径方向に連続して同心円状に併置されることによりロール関節構造61(対面収容部61r3)内に組み込まれている。
【0061】
このうちのロール剛性内歯歯車63は、ロール関節構造61のロール回転部材61rの対面収容部61r3にロール軸線25sを軸心として同軸回転するように連結固定されて、足部15に対して相対回転不能に一体に設置されている。ロール可撓性外歯歯車64は、ロール関節構造61のロール固定部材61bに連結固定されて、足部15に対して相対回転可能に設置されている。ロール波動発生器65は、ロール関節構造61のロール軸シャフト25に連結固定されて、後述するようにロール平行軸型伝動機構67を介して受け取るロールモータ66の回転駆動力で回転される。
【0062】
この構造により、ロール波動歯車減速装置62は、ロール可撓性外歯歯車64がロール関節構造61のロール固定部材61bと一体のピッチ回転部材41rに連結固定されている状態で、ロール波動発生器65がロール関節構造61のロール軸シャフト25からロール平行軸型伝動機構67を介してロールモータ66の回転駆動力を入力(供給)されて回転駆動されると、ロール可撓性外歯歯車64に噛み合うロール剛性内歯歯車63がその歯数差に応じて減速回転して回転駆動力を出力する。
【0063】
また、ロール平行軸型伝動機構67は、
図4~
図6に示すように、ロールモータ66の回転駆動軸に設置されているモータプーリ68と、ロール軸シャフト25の端部に設置されているロールプーリ69とが互いの軸心が平行になるように上下に配置されて、それぞれにタイミングベルト70が巻き掛けられている。
【0064】
この構造により、ロール平行軸型伝動機構67は、動力の伝達元と伝達先となるロールモータ66の回転駆動軸とロール軸シャフト25のロール軸線25sが平行となる伝動構造に構築されており、タイミングベルト70を巻き掛けるロールプーリ69等の簡易な構造(ギア列でもよい)をその軸線方向の片側に配置して、ロールモータ66の回転駆動力をロール軸シャフト25に伝達することができる。このロール平行軸型伝動機構67は、
図7および
図8に示すように、ロールモータ66の回転駆動力をロール軸シャフト25に伝達してロール波動歯車減速装置62のロール波動発生器65からロール剛性内歯歯車63を介してロール関節構造61のロール回転部材61rの対面収容部61b3側(足部15)をロール方向に相対回転させることができる。
【0065】
また、ロール波動歯車減速装置62は、ピッチ回転部材41rの後方(足部15の踵15b側)で且つピッチ波動歯車減速装置42(ピッチ軸線24s)の側近に配置されている。そして、前述のように、ロールモータ66は、ピッチ回転部材41rの上部でロール軸シャフト25に近い位置に配置されており、これらの配置により、ピッチ軸シャフト24の径方向がコンパクトなピッチ関節構造41を備える足首関節23が実現できる。すなわち、ピッチ方向への回転角度も大きくすることができる。
【0066】
加えて、一般的に、二足歩行ロボットにおいては、本実施形態のように、例えば、足底15sの寸法が、前後に長く、左右に短い略長方形の形状にすることが多用されていることから、ロール軸線25s周りのロールトルクはピッチ軸線24s周りのピッチトルクよりも小さく、その結果、ロール波動歯車減速装置62はピッチ波動歯車減速装置42に比べて低出力(小型)な減速装置を用いることができ、径方向(外径)が小さいロール波動歯車減速装置62を採用することができる。そのため、ロール波動歯車減速装置62のケーシング部材であるロール回転部材61rの対面収容部61r3の径も小さくすることが可能になり、足首関節23におけるレイアウトの自由度を向上させることができるとともに、ロール方向への回転角度も大きくすることができる。
【0067】
したがって、足首関節23では、ベアリング74を介してピッチ回転部材41rと一体回転するロール固定部材61bを相対回転自在に支持する対面板部61r2の外形をコンパクトにすることができ、ベアリング75を介して相対回転自在に支持される反対側の対面収容部61r3の外径も小さくして、さらには、ベアリング55、56を介して相対回転自在に支持するピッチ回転部材41rのピッチ軸線24sの軸方向の厚みを小さく(薄く)して、コンパクトな構造にすることができる。そのため、ピッチ軸線24sとロール軸線25sの両軸を中心に2方向に回転(可動)する状況においても、下腿部14と足部15の干渉が発生し難く(一方の軸を中心にする単軸可動では実現できていた可動範囲を狭めることなく)、2方向の可動範囲を広く保った関節を実現できる。
【0068】
加えて、ロール固定部材61bは、ロール可撓性外歯歯車64とねじ止め固定されてロール回転部材61rの対面収容部61r3内に内装されている。その結果、そのロール回転部材61rの対面収容部61r3およびロール固定部材61bのロール軸線25s方向の端部をピッチ軸シャフト24側に接近する位置に配置することができ、後述する力センサ81を介して足部15に連結支持されて床面から着地衝撃力を受けるロール回転部材61rの剛性を高めることができる。
【0069】
この結果、この足首関節23では、ピッチ波動歯車減速装置42およびロール波動歯車減速装置62のピッチ軸線24sとロール軸線25sの交差する関節原点27oが同一水平面内に、あるいは少なくともその外径(上下方向の厚さ未満)の範囲内に位置して、さらに、そのピッチ波動歯車減速装置42のピッチ軸線24sの側近にロール波動歯車減速装置62を内装するロール回転部材61rの対面収容部61r3が配置されている。このため、足首関節23は、ピッチ軸線24sとロール軸線25sの軸周りの構造をコンパクトにすることができ、足首の高さを抑えつつ回転可能な角度範囲を大きく確保することができる。
【0070】
そして、二足歩行ロボット10の足首関節23では、
図5および
図6に示すように、ピッチモータ46やロールモータ66がピッチ軸線24sとロール軸線25sの直交点である関節原点27oの上方で、同様に回転駆動軸が上下に位置して直交するように下腿部14内に配置されている。足首関節23は、それらモータ46、66の回転駆動力がプーリ49、69にタイミングベルト50、70をそれぞれ巻き掛ける簡易なピッチ平行軸型伝動機構47やロール平行軸型伝動機構67を介してピッチ軸シャフト24やロール軸シャフト25に伝達される。この足首関節23では、そのピッチ軸シャフト24やロール軸シャフト25を中心(軸心)にして、構成要素が概略円筒形状のピッチ波動歯車減速装置42やロール波動歯車減速装置62が配置されることにより、伝達される回転駆動力を入出力して足部15をピッチ方向やロール方向に相対回転させる。
【0071】
この構造により、二足歩行ロボット10では、足首関節23のピッチ軸線24sやロール軸線25s周りがコンパクトにされて、膝関節22(大腿部13)側に剛性を備える構造の下腿部14を備えている。このため、二足歩行ロボット10は、ロール軸線25s等の近傍にロール関節構造61の基底部61r1を設置して足首関節23の足部15からの高さを低くすることができ、その足部15がピッチ軸線24sやロール軸線25sを中心にピッチ方向やロール方向に深く相対回転する空間が下腿部14側に確保されている。具体的には、足首関節23は、
図7に示すように、ロール関節構造61の対面収容部61r3が下腿部14に突き当たるまで大きくピッチ方向に足部15を回転させることができ、また、
図8に示すように、その足部15が下腿部14と平行になるまで反対方向に回転させることができ、さらに、
図9および
図10に示すように、その足部15を下腿部14に対してロール軸線25sを中心にロール方向に大きく回転させることができ、これらを合わせて、
図11および
図12に示すように、そのまま足部15が下腿部14周りを回転するようにピッチ方向およびロール方向に大きく回転させることができる。
【0072】
この二足歩行ロボット10は、
図2~
図6に示すように、足首関節23の各種情報を取得するセンサ、例えば、モータ軸角度センサ(第1、第2駆動回転角センサ)51、71と、出力軸角度センサ(第1、第2相対回転角センサ)52、72と、力センサ81とがそれぞれ各所に設置されている。これらを含む各種センサは、胸部16内に設置されている後述の検出手段を構成する制御部100(
図17を参照)に、下腿部14内を通る信号線を介してそれぞれの検出情報を取得可能にケーブル接続されている。なお、本実施形態では、二足歩行ロボット10が胸部16の制御部100により集中管理制御される場合を一例として説明するが、これに限るものではなく、機能や部位毎などに適宜に区分して、それぞれに設置する制御部が分散管理制御するようにしてもよい。
【0073】
具体的には、モータ軸角度センサ51、71は、ピッチモータ46およびロールモータ66の回転駆動軸の回転角を検出するように、それぞれのモータプーリ48、68の反対側に設置されてセンサケーブル51c、71cがそれぞれ接続されている。出力軸角度センサ52、72は、ピッチ軸線24sやロール軸線25sの周りのそれぞれで一体回転するように連結されているピッチ関節構造41のピッチ回転部材41rやロール関節構造61のロール回転部材61rに対する下腿フレーム31やロール関節構造61のロール固定部材61bの相対回転角度をそれぞれ検出するように、設置されてセンサケーブル52c、72cがそれぞれ接続されている。力センサ81は、足部15に作用する力の分布を検出するように、ロール関節構造61の基底部61r1と足部15との間に設置されて、センサケーブル81cが接続されている。また、ピッチモータ46およびロールモータ66は、それぞれ回転駆動する際に電流を流す電源ケーブル46c、66cがそれぞれ接続されている。ここで、力センサ81は、足部15の足底15sに作用する力だけでなく、例えば、躓いた際に発生(作用)する力も検出し、足部15に設置するカバーに作用する力も検出することになる。
【0074】
これらのケーブルレイアウトとして、二足歩行ロボット10の足首関節23には、
図3および
図4に示すように、センサケーブル52c、71c、72c、81cと電源ケーブル66cを通す配線孔32、53a、53b、54、73が設置されている。
【0075】
配線孔(第1配線通路孔)32は、ピッチ軸シャフト24を間に挟んでピッチプーリ49の反対側に位置する下腿フレーム31に形成されて開口されている。この下腿フレーム31は、ピッチ関節構造41のピッチ固定部材41bと同様に、ベアリング55を介してピッチ軸線24sを中心に相対回転自在にピッチ回転部材41rを支持しており、配線孔32は、その下腿フレーム31内で、そのピッチ軸線24sを中心にする円形の開口形状に形成されている。
【0076】
配線孔73(第2配線通路孔)は、ロール関節構造61の対面板部61r2にベアリング74を介してロール軸線25sを中心に相対回転自在に支持されているピッチ関節構造41のピッチ回転部材41rに形成されて開口している。配線孔73は、そのピッチ関節構造41のピッチ回転部材41r内で、そのロール軸線25sを中心にする円形の開口形状に形成されている。
【0077】
そして、配線孔(連通配線通路孔)54は、配線孔32の内側に位置するピッチ関節構造41のピッチ回転部材41r内に、ピッチ軸線24sと同軸の概略円盤形状の空間として形成されている。また、配線孔(連通配線通路孔)53aは、そのピッチ関節構造41のピッチ回転部材41r一端部の配線孔73を、隣接する位置で概略円盤形状の配線孔54に連通させる空間である。要するに、これら配線孔53a、54は、配線孔32、73の開口の間にケーブルを通すことができるように連通されている。さらに、
図12に示すように配線孔53bは、ピッチ関節構造41のピッチ回転部材41rの上部のロールモータ66側の天井面の一部を切り欠いて外部に露出させる開口内にケーブルを通すことができるように形成されている。ここで、配線孔54として形成される空間は、円盤形状に限るものではなく、ケーブル配線可能な空間が確保されていればよいことは言うまでもない。
【0078】
これらの構造により、ピッチモータ46の電源ケーブル46cやモータ軸角度センサ51のセンサケーブル51cは、そのピッチモータ46が足首関節23の上部に位置して下腿フレーム31内で不動であるため、そのまま胸部16側に向かうように通して設置することができる。このため、電源ケーブル46cおよびセンサケーブル51cは、足部15の動きによって断線してしまうことがなく、また、その足部15の動きを制限してしまうこともない。
【0079】
ロールモータ66の電源ケーブル66cやモータ軸角度センサ71のセンサケーブル71cは、そのロールモータ66からピッチ回転部材41rの配線孔53bより内部に差し込んで、配線孔54から配線孔32に通して引き出した後に、下腿部14内から胸部16側に向かうように通して設置することができる。このロールモータ66は、ロール固定部材61bが連結固定されるピッチ回転部材41rに取り付けられて一体回転するため、そのピッチ回転部材41rの外面に開口する配線孔53bの開口に対する位置関係が足部15の動作で変化してしまうことがない。また、その配線孔53bに連続する配線孔54、32を経由するルートの長さが足部15の動作で変化することもない。さらに、配線孔32の開口は、下腿フレーム31に対して相対回転自在に支持されるピッチ回転部材41rの回転中心のピッチ軸線24s上に開口して、その下腿フレーム31に対する位置関係が足部15の動作で変化してしまうこともない。このため、電源ケーブル66cおよびセンサケーブル71cは、足部15の動きによって弛んだり、引っ張られることに起因する断線の恐れがなく、また、足首関節23内を通すことによって外部との接触を未然に回避するとともに、その足部15の動きを制限してしまうこともない。
【0080】
出力軸角度センサ52は、ピッチ関節構造41のピッチ軸線24sに対する直交面を挟むピッチ固定部材41bとピッチ回転部材41rのそれぞれに対面するように配置される読取リング52rと読取ヘッド52hにより構成されている。出力軸角度センサ52の読取リング52rは、そのピッチ軸線24s周りに位置するようにリング形状に形成されてピッチ固定部材41bに設置される。一方、読取ヘッド52hは、ピッチ回転部材41rの上部に位置してその読取リング52rの回転位置を検出するように配置されている。この出力軸角度センサ52は、ピッチ回転部材41rのロールモータ66近傍の上部に位置する読取ヘッド52hにセンサケーブル52cが接続されており、そのセンサケーブル52cは、そのロールモータ66の電源ケーブル66cなどと同様に、ピッチ回転部材41rの配線孔53b、54、32を通して下腿部14内から胸部16の制御部100に接続される。このセンサケーブル52cでも、下腿フレーム31に対する位置関係が足部15の動作で変化してしまうことがないことから、断線の恐れなく、また、足首関節23内を通して外部との接触を未然に回避するとともに、その足部15の動きを制限してしまうこともない。
【0081】
出力軸角度センサ72は、出力軸角度センサ52と同様に、ロール関節構造61のロール軸線25sに対する直交面を挟むロール固定部材61bとロール回転部材61rの対面収容部61r3のそれぞれに対面するように配置される読取リング72rと読取ヘッド72hにより構成されている。出力軸角度センサ72の読取リング72rは、そのロール軸線25s周りに位置するようにリング形状に形成されてロール固定部材61bに設置される。一方、読取ヘッド72hは、ロール回転部材61rの対面収容部61r3の側部に位置してその読取リング72rの回転位置を検出するように配置されている。この出力軸角度センサ72は、ロール回転部材61rの対面収容部61r3の側部に位置する読取ヘッド72hにセンサケーブル72cが接続されており、そのセンサケーブル72cは、ロール回転部材61rの基底部61r1の足部15側に取り回して、ピッチ回転部材41rの配線孔73より配線孔53a、54、32を通して下腿部14内から胸部16の制御部100に接続される。ところで、ロール回転部材61rは、足部15側に固定されて相対的な姿勢が不動であるため、出力軸角度センサ72のセンサケーブル72cの配線孔73までの経路がその足部15の動作で変化することはなく、また、その配線孔73から配線孔53a、54、32を経由するルートの長さが足部15の動作で変化することもないことから、その配線孔32の開口の下腿フレーム31に対する位置関係が足部15の動作で変化してしまうこともない。このため、センサケーブル72cでも、下腿フレーム31に対する位置関係が足部15の動作で変化してしまうことがないことから、断線の恐れなく、また、足首関節23内を通して外部との接触を未然に回避するとともに、その足部15の動きを制限してしまうこともない。
【0082】
また、力センサ81のセンサケーブル81cは、出力軸角度センサ72のセンサケーブル72cと同様に、足部15との間のロール関節構造61の基底部61r1の下側からピッチ回転部材41rの配線孔73、53a、54、32を通して下腿部14内から胸部16の制御部100に接続される。この力センサ81のセンサケーブル81cでも、ロール固定部材61bと共に足部15側に固定されて相対的な姿勢が不動で、経路やその長さや配線孔73の位置が足部15の動作で変化してしまうこともないことから、断線の恐れなく、また、足首関節23内を通して外部との接触を未然に回避するとともに、その足部15の動きを制限してしまうこともない。
【0083】
そして、二足歩行ロボット10の足首関節23は、
図13~
図17に示すように、下腿フレーム31の下部がロール軸線25s方向から見て逆U字形状に窪む空間内に、ピッチ関節構造41がピッチ軸シャフト24により回転自在に支持されている。この足首関節23は、そのピッチ関節構造41の上部側に、一体回転する足首カバー84が取り付けられて、ロールモータ66と共に収容されている。
【0084】
具体的には、足首カバー84は、ピッチ関節構造41と共通の軸心のピッチ軸線24sを中心とする円形の足首外周面(湾曲面)84aと、ピッチ軸シャフト24の両端側の下腿フレーム31の内面に対面する両側面84sとを有している。この足首カバー84は、ピッチ軸シャフト24よりも上部側のピッチ関節構造41やロールモータ66などを内部に収容しつつ下腿フレーム31の下部空間内で回転可能な半円の厚さを有する概略円盤形状に作製されて、そのピッチ回転部材41rにネジNによりネジ止め固定されている。これにより、足首カバー84は、足首関節23のピッチ関節構造41やロールモータ66などと共に、各種ケーブル52c、66c、71cが外部に露出して引っ掛からないように上部側を覆って足部15がロール方向に相対回転するのを許容しつつ、ピッチ軸線24sを軸心にしてピッチ方向に一体回転可能に設置されている。
【0085】
これに対して、下腿フレーム31は、足首カバー84の足首外周面84aに小さな隙間を介して対面する下部天井面31uを有して、この下部天井面31uは、足首カバー84の足首外周面84aと同様に、ピッチ軸線24sを中心とする円形の湾曲形状に形成されている。これにより、下腿フレーム31および足首カバー84は、近接する狭い隙間を介して下部天井面31uと足首外周面84aとが相対回転可能に対面し、その隙間が大きいために部材等が挟まって動作不良の要因になってしまうことや、その内部の各種ケーブル66c等が外部に露出して引っ掛かってしまうことを未然に防止することができる。
【0086】
この二足歩行ロボット10は、胸部16の制御部100(
図17を参照)に接続されている各種ケーブル51c等を介して各種センサ51、52、71、72、81による検出情報を取得可能に構築されており、その制御部100は、メモリ101内に予め格納されている制御プログラムを実行して各種設定パラメータや各種センサ検出情報などに基づいて左右の脚部12を腕部17などと共に歩行動作させる。このとき、制御部100は、ピッチモータ46やロールモータ66を単独あるいは協働して正逆駆動させることにより、足部15を所望の相対回転角度に調整して足底15sを床面等に均等に密接させつつ安定姿勢を維持させる。なお、制御部100が利用するパラメータとしては、例えば、平行軸型伝達機構の減速比、波動歯車装置の減速比などが予め設定される。
【0087】
この制御部100は、例えば、ピッチモータ46のモータ軸角度センサ51のセンサ検出情報と、ピッチ波動歯車減速装置42の減速比と、ピッチ平行軸型伝動機構47の減速比と、を掛け合わせて、ピッチ軸線24s周りのピッチ固定部材41b(下腿フレーム31)とピッチ回転部材41rとの相対回転角度(等価ピッチ出力軸角度算出値)を算出する。同様に、制御部100は、例えば、ロールモータ66のモータ軸角度センサ71のセンサ検出情報と、ロール波動歯車減速装置62の減速比と、ロール平行軸型伝動機構67の減速比と、を掛け合わせて、ロール軸線25s周りのロール固定部材61b(ピッチ回転部材41r)とロール回転部材61r(足部15)との相対回転角度(等価ロール出力軸角度算出値)を算出する。
【0088】
また、制御部100は、例えば、上記の等価ピッチ出力軸角度算出値と、ピッチ出力軸角度センサ52のセンサ検出値との間の差分であるピッチ減算値を算出し、同様に、上記の等価ロール出力軸角度算出値と、ロール出力軸角度センサ72のセンサ検出値との間の差分であるロール減算値を算出する。
【0089】
ここで、二足歩行ロボット10は、足首関節23における各所のネジ締結の緩みや波動歯車減速装置42、62内のラチェッティング等の異常なく正常に稼働している場合、上記の等価ピッチ出力軸角度算出値と、ピッチ出力軸角度センサ52のセンサ検出値は一致し、また、上記の等価ロール出力軸角度算出値と、ロール出力軸角度センサ72のセンサ検出値も一致する。
【0090】
このことから、制御部100では、算出したピッチ減算値の絶対値が予め設定されている微小閾値(センサの分解能に依存するような微小な値)を超えるような場合に、下腿フレーム31やピッチ関節構造41の一方あるいは双方でネジ締結の緩みやピッチ波動歯車減速装置42内のラチェッティング等の異常発生を検知することができる。同様に、制御部100は、算出したロール減算値の絶対値が設定微小閾値を超えるような場合に、ピッチ関節構造41やロール関節構造61の一方あるいは双方でネジ締結の緩みやロール波動歯車減速装置62内のラチェッティング等の異常発生を検知することできる。
【0091】
この異常発生時には、制御部100は、二足歩行ロボット10を安全に停止させる制御処理を実行して、事故等が発生するのを未然に防止するようになっている。なお、その停止制御処理は、既存技術を実行すればよく、例えば、特開2007-30078号公報に記載されている。
【0092】
このように、本実施形態の二足歩行ロボット10の足首関節23においては、ベアリング55、56の間に配置して支持するピッチ波動歯車減速装置42を、ロール波動歯車減速装置62を支持するベアリング74、75の間に位置させて、それぞれのピッチ軸線24sとロール軸線25sを直交させているので、コンパクトな構造にしつつ、足部15からの高さの低い位置でピッチ方向とロール方向とに相対回転させることを実現することができる。また、これらピッチ波動歯車減速装置42およびロール波動歯車減速装置62は、それぞれピッチモータ46とロールモータ66の回転駆動力をそれぞれタイミングベルト50、70を巻き掛ける簡易なピッチ平行軸型伝動機構47とロール平行軸型伝動機構67で回転駆動力を伝達可能にしているので、個々に駆動制御するとともに、簡素な伝達機構でコンパクトに搭載することができる。
【0093】
したがって、二足歩行ロボット10は、足首関節23周りを簡素にしてレイアウトの自由度を向上させるとともに、その低い位置の足首関節23により深くピッチ方向やロール方向に足部15を簡易な制御で回転させることができ、凹凸のある不整地などでも快適に歩行動作をさせることができる。
【0094】
ここで、本実施形態では、上述するように、ピッチ波動歯車減速装置42と、ロール波動歯車減速装置62にハーモニックドライブ(商品名:登録商標)を用いており、ピッチ剛性内歯歯車43とロール剛性内歯歯車63とにハーモニックドライブにおけるサーキュラ・スプラインを用い、ピッチ可撓性外歯歯車44とロール可撓性外歯歯車64にハーモニックドライブにおけるフレクスプラインを用い、ピッチ波動発生器45とロール波動発生器65にハーモニックドライブにおけるウェーブ・ジェネレータを用いている。しかしながら、このハーモニックドライブに限る必要はなく、例えば、フレックスウェーブ減速機(商品名:登録商標)を用いても良い。より具体的には、ピッチ剛性内歯歯車43とロール剛性内歯歯車63にフレックスウェーブ減速機のインタナルギアを、ピッチ可撓性外歯歯車44とロール可撓性外歯歯車64にフレックスウェーブ減速機のフレックスギアを、ピッチ波動発生器45とロール波動発生器65にフレックスウェーブ減速機の弾性軸受とカムを用いてもよい。
【0095】
さらに、本実施形態では、ピッチ軸線24sとロール軸線25sとが直交する場合を一例として説明するが、これに限るものではなく、直角以外の角度で交差する形態にも適用することができることは言うまでもない。
【0096】
また、腕を模したマニピュレータの手首関節では、上記の足首関節と類して、「2軸が直交し」、「広い関節可動範囲を備え」、「手首からハンドまでの距離が短い」手首が望まれている。このことから、足首関節23をその手首関節に好適に適用することもできる。
【0097】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、各請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0098】
10……二足歩行ロボット
14……下腿部
15……足部
15s……足底
23……足首関節
24……ピッチ軸シャフト
24s……ピッチ軸線
25……ロール軸シャフト
25s……ロール軸線
27o……関節原点
31……下腿フレーム
31u……下部天井面
32、53、54、73……配線孔
41……ピッチ関節構造
41b……ピッチ固定部材
41r……ピッチ回転部材
42……ピッチ波動歯車減速装置
43……ピッチ剛性内歯歯車
44……ピッチ可撓性外歯歯車
45……ピッチ波動発生器
46……ピッチモータ
46c、66c……電源ケーブル
47……ピッチ平行軸型伝動機構
51、71……モータ軸角度センサ
51c、52c、71c、72c、81c……センサケーブル
52……ピッチ出力軸角度センサ
55、56、58、59、74、75、78、79……ベアリング
61……ロール関節構造
61b……ロール固定部材
61r……ロール回転部材
62……ロール波動歯車減速装置
63……ロール剛性内歯歯車
64……ロール可撓性外歯歯車
65……ロール波動発生器
66……ロールモータ
67……ロール平行軸型伝動機構
72……ロール出力軸角度センサ
81……力センサ
84……足首カバー
84a……足首外周面
100……制御部
101……メモリ