(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】投写画像調整システム及び方法
(51)【国際特許分類】
G03B 21/00 20060101AFI20221209BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20221209BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20221209BHJP
G09G 5/02 20060101ALI20221209BHJP
G09G 5/10 20060101ALI20221209BHJP
G09G 5/377 20060101ALI20221209BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
G03B21/00 D
G03B21/14 Z
G09G5/00 X
G09G5/00 550C
G09G5/02 Z
G09G5/10 Z
G09G5/36 520L
H04N5/74 D
(21)【出願番号】P 2019061669
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 義直
【審査官】川俣 郁子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-101968(JP,A)
【文献】特開2011-050053(JP,A)
【文献】特開2013-065277(JP,A)
【文献】特開2012-022246(JP,A)
【文献】特開2018-207373(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102749794(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B21/00-21/10
21/12-21/13
21/134-21/30
33/00-33/16
G09G5/00-5/36
5/377-5/42
H04N5/66-5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投写テストパターンを用いて投写型表示装置の投写画像が歪まないように調整するための投写画像調整システムであって、
前記投写テストパターンは、二値表現される複数の第1属性の組み合わせにより表現される第2属性をそれぞれ有する複数の領域に分割され、前記複数の領域のうち3つ以上が点隣接する複数の特徴点を含む画像であり、
前記投写画像調整システムは、
前記投写テストパターンを、前記第1属性ごとの二値テストパターンに分解するパターン生成部と、
前記複数の二値テストパターンをそれぞれ投写する投写型表示装置と、
前記表示された複数の二値テストパターンをそれぞれ撮像し、当該各撮像画像を二値化した各二値撮像画像から合成撮像画像を合成するパターン合成部と、
前記合成撮像画像における前記投写テストパターンの前記特徴点に対応する座標と前記投写テストパターンにおける前記特徴点の位置との対応関係を特定する特定部と、
前記
対応関係を用いて前記投写画像を変形させる
ための変形データを算出する算出部とを備える、
投写画像調整システム。
【請求項2】
前記第1属性は複数の色チャネルの値であり、
前記第2属性は前記複数の色チャネルの値の組み合わせにより表現される色である、
請求項1に記載の投写画像調整システム。
【請求項3】
前記複数の色チャネルは、赤色、緑色、及び青色に対応する3つの色チャネルである、
請求項2に記載の投写画像調整システム。
【請求項4】
前記第1属性は複数の輝度チャネルの値であり、
前記第2属性は前記複数の輝度チャネルの値の組み合わせにより表現される輝度である、
請求項1に記載の投写画像調整システム。
【請求項5】
前記特徴点の各々で点隣接する前記領域の数は、すべての前記特徴点で同じ所定の数である、
請求項1~4のいずれか1つに記載の投写画像調整システム。
【請求項6】
投写テストパターンを用いて投写型表示装置の投写画像が歪まないように調整するための投写画像調整方法であって、
前記投写テストパターンは、二値表現される複数の第1属性の組み合わせにより表現される第2属性をそれぞれ有する複数の領域に分割され、前記複数の領域のうち3つ以上が点隣接する複数の特徴点を含む画像であり、
前記投写画像調整方法は、
前記投写テストパターンを、前記第1属性ごとの二値テストパターンに分解するステップと、
前記複数の二値テストパターンをそれぞれ投写するステップと、
前記表示された複数の二値テストパターンをそれぞれ撮像し、当該各撮像画像を二値化した各二値撮像画像から合成撮像画像を合成するステップと、
前記合成撮像画像における前記投写テストパターンの前記特徴点に対応する座標と前記投写テストパターンにおける前記特徴点の位置との対応関係を特定するステップと、
前記
対応関係を用いて前記投写画像を変形させる
ための変形データを算出するステップとを含む、
投写画像調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、投写型表示装置の投写画像を調整するための投写画像調整システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、テストパターン画像の全体を撮像装置によって撮像することができず、特徴点の数が多いようなケースであっても、各特徴点を簡易に検出することを可能とする投写型映像表示装置を開示している。このテストパターンでは、特徴点を少なくとも3つの領域が互いに隣接する点とし、隣接領域の配置の組み合わせによって特徴点を特定している。
【0003】
また、グレイコードパターンに代表される、白黒のストライプパターンを複数枚投影及び撮像し、白と黒の出現順により特徴点を特定する方法も広く知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で開示されるテストパターンにおいて、隣接する複数の領域は、輝度、彩度又は色相等の特徴を有しているが、投写面の模様や色、外光の影響等の条件によっては、撮像画像から隣接領域間の輝度、彩度、又は色相の差を得ることが困難となり、特徴点を正しく特定できない可能性がある。
【0006】
一方、グレイコードパターンでは、撮像した画像から精度の高い二値判定を行うことが可能であるが、多数の特徴点を取得するためには、特許文献1の方法よりも多数の投写テストパターン画像を用意する必要がある。テストパターン画像を表示及び撮像するためには時間を要するため、必要な投写テストパターンの枚数はなるべく少ないことが望ましい。
【0007】
本開示は以上の課題を鑑みて、投写面の模様及び色、並びに外光の影響等によらず、かつ従来技術と比較して少ない枚数のテストパターン画像により、投写型表示装置の映像が歪まないように調整する投写画像調整システム及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る投写画像調整システムは、投写テストパターンを用いて投写型表示装置の投写画像が歪まないように調整するための投写画像調整システムであって、投写テストパターンは、二値表現される複数の第1属性の組み合わせにより表現される第2属性をそれぞれ有する複数の領域に分割され、複数の領域のうち3つ以上が点隣接する複数の特徴点を含む画像であり、投写画像調整システムは、投写テストパターンを、第1属性ごとの二値テストパターンに分解するパターン生成部と、複数の二値テストパターンをそれぞれ投写する投写型表示装置と、表示された複数の二値テストパターンをそれぞれ撮像し、各撮像画像を二値化した各二値撮像画像から合成撮像画像を合成するパターン合成部と、投写画像の特徴点の位置と投写テストパターンにおける特徴点の位置との関係を用いて投写画像を変形させる算出部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る投写画像調整システムによれば、投写面の模様及び色、並びに外光の影響等によらず、かつ従来技術と比較して少ない枚数のテストパターン画像により、投写型表示装置の映像が歪まないように調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る投写画像調整システム1の外観例を示す模式図
【
図2】
図1の制御装置200の詳細構成例を示すブロック図
【
図3】
図1の投写画像調整システム1における投写テストパターン500の例を示す正面図
【
図4】
図2の記憶部201に格納された色チャネルデータベース600のデータ構成例を示す表
【
図5】
図1の投写画像調整システム1における二値テストパターン生成処理の動作例を示す正面図
【
図6】
図1の投写画像調整システム1における撮像画像合成処理の動作例を示す正面図
【
図7】実施の形態2に係る投写画像調整システム1Aにおける色チャネルデータベース600Aのデータ構成例を示す表
【
図8】
図7の投写画像調整システム1Aにおける二値テストパターン生成処理の動作例を示す図
【
図9】変形例に係る投写画像調整システムにおけるテストパターン900Aの、点隣接する領域Rの数が3個である領域分割の例を示す図
【
図10】変形例に係る投写画像調整システムにおけるテストパターン900Bの、点隣接する領域Rの数が4個である領域分割の例を示す図
【
図11】変形例に係る投写画像調整システムにおけるテストパターン900Cの、点隣接する領域Rの数が5個である領域分割の例を示す図
【
図12】変形例に係る投写画像調整システムにおけるテストパターン900Dの、点隣接する領域Rの数が6個である領域分割の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0012】
なお、発明者は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面及び以下の説明を提供するものであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0013】
(実施の形態1)
以下、
図1~
図6を用いて、実施の形態1を説明する。
【0014】
[1.構成]
図1は、本開示の実施の形態1に係る投写画像調整システム1の外観例を示す模式図である。
図1において、投写画像調整システム1は、投写型表示装置100と、制御装置200と、撮像装置300と、投写面400とを含む。
【0015】
図1において、投写型表示装置100は、制御装置200からの画像信号に従って、投写面400に投写映像401を投写する。投写面400は完全な平面ではなく、これにより投写映像401には歪みが生じる。撮像装置300は例えばカメラなどの撮像装置であり、制御装置200からの撮像信号に応答して、投写映像401を含む領域を撮像し、撮像画像信号を制御装置200に送信する。
【0016】
制御装置200は例えばPCなどの制御装置であり、投写型表示装置100及び撮像装置300と相互通信可能に接続される。投写画像調整システム1は、後述の動作により投写する映像を調整し、歪まないように調整された投写映像402を表示する。ここで「歪まない」とは、表示される元画像と表示された投写画像とが実質的に同一となることをいう。
【0017】
図2は、
図1の制御装置200の詳細構成例を示すブロック図である。
図2において、記憶部201は磁気ハードディスクドライブ等の記憶装置である。記憶部201は、投写テストパターン500及び、撮像装置300から取得部204を介して入力された撮像画像701~703等の、調整処理に必要なデータを格納する。
【0018】
図2において、パターン生成部202は、投写テストパターン500をRGBの各チャネルに分解して3枚の二値テストパターン501~503を生成し、映像送出部203を介して投写型表示装置100に出力して表示させる。
【0019】
取得部204は、映像送出部203の映像出力信号に応答して、投写面400を撮像するように指示する撮像指示信号を撮像装置300に送信する。撮像装置300は、撮像指示信号に応答して投写面400を撮像し、撮像画像701~703を、取得部204を介して記憶部201に格納させる。パターン合成部205は、記憶部201に格納された3枚の撮像画像をそれぞれ二値化し、それらをRGBの各チャネルの二値画像として合成して合成撮像画像700を得る。
【0020】
特定部206は、得られた合成撮像画像700において投写テストパターン500の各特徴点Pに対応する座標を特定し、投写テストパターン500の特徴点Pの位置と、合成撮像画像700における各特徴点の座標との関係を求める。算出部207はこの対応関係に基づいて、投写映像401を歪みのない形状の投写映像402へ変形させるための変形データを算出し、投写型表示装置100へ出力する。投写型表示装置100は当該変形データに基づいて投写する映像を調整し、歪まないように調整された投写映像402を表示する。
【0021】
図3は、
図1の投写画像調整システム1における投写テストパターン500の例を示す正面図である。
図3において投写テストパターン500は、各々が7色(赤、青、緑、シアン、マゼンタ、黄、白)のいずれかを有する複数の領域Rに分割された画像データである。投写テストパターン500において、2つの領域Rが辺隣接する線を境界線Lで表し、4つの領域Rが点隣接する点を特徴点Pで表す。ここで、「辺隣接」とは、2つの領域Rが同じ境界線Lを辺として共有していることをいい、「点隣接」とは、3つ以上の領域Rが同じ特徴点Pを頂点として共有していることをいう。
【0022】
以下、特徴点Pで点隣接する4つの領域Rについて「色の組み合わせ」といった場合、2個の特徴点Pにおいて同じ4色の領域Rが点隣接していても、その順列が異なっているか、又は回転されているならば別の組み合わせとして扱う。例えば、
図3において符号を付した2個の特徴点Pで点隣接する2組の4領域Rの色の組み合わせは、いずれも時計回りに青、マゼンタ、黄、赤の順だが、互いに180度回転した関係にあるため別の組み合わせである。
【0023】
すべての特徴点Pで隣接する4領域Rは、互いに異なる色の組み合わせを有する。従って、ある特徴点Pで4領域Rが点隣接していた場合、特徴点Pがすべての特徴点Pのうちのいずれであるかは一意に決定できる。各特徴点Pと色の組み合わせ及び座標との対応関係は、記憶部201にデータベースとして格納される。
【0024】
図4は、
図2の記憶部201に格納された色チャネルデータベース600を示すテーブル図である。
図4において、色チャネルデータベース600は、例えば記憶部201に格納されている。色チャネルデータベース600は、投写テストパターン500における領域Rの色と、RGBの各チャネルにおけるオンオフとの対応関係を示すデータベースである。
図4において、色チャネルデータベース600は、ある画素の色に対して、RGBの各チャネルがオン(1)であるか、オフ(0)であるかの対応関係を示す。例えば、色チャネルデータベース600は、マゼンタの色と、Rチャネル及びBチャネルが1であり、Gチャネルが0である状態とが対応することを示している。
【0025】
[2.動作]
以上のように構成された投写画像調整システム1の動作を以下に説明する。
【0026】
はじめに、パターン生成部202は、記憶部201に格納された投写テストパターンを、RGBの各チャネルに分解し、実際に投写型表示装置で投写する3枚の二値テストパターン501~503を生成する。この二値テストパターン生成処理の詳細な動作を以下説明する。
【0027】
図5は、
図1の投写画像調整システム1における二値テストパターン生成処理の動作例を示す正面図である。
図5において、パターン生成部202は投写テストパターン500及び色チャネルデータベース600に基づいて、3枚の二値テストパターン501~503を生成する。具体的には、投写テストパターン500の各画素をその画素のRチャネルの値(0又は1)に変換した二値画像であるRチャネルの二値テストパターン501を生成する。すなわち、Rチャネルの二値テストパターン501は、投写テストパターン500において赤、黄、マゼンタ又は白の色を有する画素が白(1)、他の画素がすべて黒(0)であるような二値画像である。同様に、Gチャネル及びBチャネルの二値テストパターン502,503も生成する。
【0028】
図5において、パターン生成部202は、生成した二値テストパターン501~503を映像送出部203に出力する。映像送出部203は二値テストパターン501~503の入力に応答して、二値テストパターン501~503を示す信号を、順次投写型表示装置100に出力する。これにより、投写面400には3つの二値テストパターンが順次投写される。また、映像送出部203は、Rチャネルの二値テストパターン501を出力すると同時に、Rチャネルの二値テストパターン501を出力していることを示す赤色映像出力信号を取得部204に送信する。Gチャネル及びBチャネルの二値テストパターン502,503に対しても同様に、それぞれ緑色映像出力信号及び青色映像出力信号を送信する。
【0029】
取得部204は、映像送出部203からの赤色映像出力信号に応答して、撮像装置300に対し、撮像指示信号を送信する。撮像装置300は撮像指示信号に応答して、Rチャネルの二値テストパターン501が投写された投写面400を撮像する。記憶部201は取得部204を介してRチャネルの撮像画像701を格納する。制御装置200は、緑色映像出力信号、青色映像出力信号についても同様の処理を繰り返すことで、記憶部201に3枚の撮像画像701~703を格納する。
【0030】
図6は、
図1の投写画像調整システム1における撮像画像合成処理の動作例を示す図である。
図6において、パターン合成部205は、記憶部201に格納された3枚の撮像画像701~703を二値化した後、色チャネルデータベース600に基づいて、得られた3枚の二値撮像画像を合成撮像画像700に合成して特定部206に出力する。合成撮像画像700は、各画素の色に対応する各チャネルの値が、3枚の二値撮像画像の対応する画素の値であるような画像である。例えば、Rチャネル及びBチャネルの二値撮像画像における対応する画素の値が1、Gチャネルの二値撮像画像における対応する画素の値が0であるような画素は、マゼンタの色の画素とする。
【0031】
ここで、投写型表示装置100により表示され、撮像装置300により撮像される投写映像401は、白(1)と黒(0)の二値画像である。従って、投写面400の模様及び色、並びに外光の影響等によらず、正確な合成撮像画像700を得ることができる。
【0032】
特定部206は、入力された合成撮像画像700から、4つの異なる色の領域Rが隣接するすべての点の位置と、各点が投写テストパターン500のどの特徴点Pに対応するかを特定する。これにより、投写映像401の画素座標と、合成撮像画像700の画素座標との関係を求めることができる。算出部207は、この画素座標の関係に基づいて、投写型表示装置100から投写される投写映像401を歪みのない形状の投写映像402に変形させるためのパラメータである変形データを算出し、投写型表示装置100に出力する。この変形は例えば、投写映像402の各領域Rを、それぞれ投写テストパターン500の対応する領域Rと実質的に同一の形状で表示されるようにメッシュ変形することで行う。
【0033】
特徴点の位置を特定するために表示及び撮像させるテストパターン画像の枚数について、従来技術のグレイコードパターンを用いる場合と比較しながら、以下説明する。
【0034】
投写画像調整システム1では、7種類の色のうち4つの色の領域Rが隣接する点を特徴点とする。従って、互いに区別が可能な特徴点は最大で7P4=840個作ることができる。この840個の特徴点の位置を特定するために表示及び撮像されるテストパターン画像は、各チャネルに対する二値テストパターン501~503の枚数であり、3枚である。
【0035】
これに対して、従来技術のグレイコードパターンを用いる投写画像調整システムでは、同じ840個の特徴点の位置を特定するために、少なくともceil(log(840))=10枚の二値テストパターンを表示及び撮像させる必要がある。ここでlogは2を底とする対数関数であり、ceil(x)は実数x以上で最小の整数を返す天井関数である。このように、本開示に係る投写画像調整システム1は、グレイコードパターンを用いる場合よりも少ない枚数のテストパターン画像で、投写画像調整処理を行うことができる。
【0036】
[3.効果等]
以上のように、実施の形態1に係る投写画像調整システム1は、パターン生成部202と、投写型表示装置100と、パターン合成部205と、算出部207を備える。パターン生成部は、投写テストパターン500を第1属性ごとの二値テストパターン501~503に分解する。投写型表示装置100は、複数の二値テストパターンをそれぞれ投写面400に投写する。パターン合成部205は、表示された複数の二値テストパターン501~503をそれぞれ撮像し、各撮像画像を二値化した各二値撮像画像から合成撮像画像を合成する。算出部207は、投写画像の特徴点の位置が投写テストパターンにおける特徴点の位置と一致するように投写画像を変形させる。
【0037】
これにより投写画像調整システム1は、投写面400の模様及び色、並びに外光の影響等によらず、かつ従来技術と比較して少ない枚数のテストパターン画像により、投写型表示装置100の映像が歪まないように調整することができる。
【0038】
なお、実施の形態1では撮像装置300は投写型表示装置100と併設されているが、撮像装置300は投写型表示装置100に内蔵された装置であってもよい。また、投写型表示装置100、制御装置200及び撮像装置300が互いに通信可能に接続される接続は、有線であっても無線であってもよい。さらに、実施の形態1では投写テストパターン500の領域Rの色には黒(全チャネルが0)を含めなかったが、領域Rの色に黒を含めてもよい。
【0039】
(実施の形態2)
以下、
図7及び
図8を用いて、実施の形態2を説明する。
【0040】
図7は、実施の形態2に係る投写画像調整システム1Aの、色チャネルデータベース600Aを示すテーブル図である。実施の形態1ではRGBの3つのチャネルにより、黒を除く7種類の色を領域Rが有する属性とした。これに対して実施の形態2では、4以上の自然数nに対して、チャネルC1~チャネルCnのn個の色チャネルを用いる。この場合、1つの領域Rが有し得る色は
図7に示すように、黒を除いた2
n-1種類の色となる。
【0041】
図8は、
図7の投写画像調整システム1Aにおける二値テストパターン生成処理の動作例を示す図である。実施の形態2では、実施の形態1で投写テストパターン500を3つのチャネルの二値テストパターン501~503に分解したのと同様に、投写テストパターン800をチャネルC1~Cnの二値テストパターン801(1)~801(n)に分解する。その後同様に二値テストパターン801(1)~801(n)を表示及び撮像し、n枚の撮像画像を合成撮像画像に合成する。
【0042】
実施の形態1では3つのチャネルを用いていたのに対し、本実施の形態ではn個のチャネルを用いるため、領域Rが有し得る属性は2
n種類であり、従って互いに区別が可能な特徴点は最大で
【数1】
個作ることができる。例えばチャネルの数nが4であれば、最大で
16P
4=43680個の特徴点を作ることができる。グレイコードパターンを用いて43680個の特徴点を作るには少なくとも16枚のテストパターン画像が必要であるのに対し、本実施の形態で用いるテストパターン画像は4枚である。このように、領域Rの色を表現するチャネルの数を増やすことにより、さらに多くの特徴点を作ることができるようになる。
【0043】
(他の実施形態)
図9~
図12を用いて、他の実施形態を説明する。
図9~
図12は、投写テストパターン900A~900Dの領域分割の例を示す図である。
図9~
図12は、それぞれ投写テストパターン900A~900Dの一部を示す。実施の形態1及び2では、投写テストパターン500,800を、特徴点Pで点隣接する領域Rの数がすべて4個となるように分割する場合を説明した。しかしながらこのように投写テストパターン900Aを六角形の領域Rに分割すれば、特徴点Pで点隣接する領域Rの数がすべて3個であるようにも分割することができる。
【0044】
同様に、
図10では、投写テストパターン900Bを菱形の領域Rに分割することで、特徴点Pで点隣接する領域Rの数がすべて4個となるようにしている。
図11では、投写テストパターン900Cを菱形及び三角形の領域Rに分割することで、特徴点Pで点隣接する領域Rの数がすべて5個となるようにしている。
図12では、投写テストパターン900Dを三角形の領域Rに分割することで、特徴点Pで点隣接する領域Rの数がすべて6個となるようにしている。このように、投写テストパターンにおいて特徴点Pで点隣接する領域Rの数は4個に限らず、3個以上の任意の数であってよい。なお、すべての特徴点Pで点隣接する領域Rの数が同じ数でなくともよい。
【0045】
実施の形態1では、RGBの3つのチャネルにより最大で8種類の色を、投写テストパターン500の領域Rが有する属性として挙げた。また実施の形態2では、n個のチャネルによる最大で2n種類の色を属性として領域Rを区別した。しかしながら本開示はこれに限らず、例えば輝度を属性としてもよい。例えば実施の形態1について、8段階の輝度階調を有する投写テストパターン500の輝度値(0~7)を2進表示した値(000~111)の各桁を輝度チャネルとして用いることでも同様の効果が得られる。
【0046】
また、実施の形態1及び2では、1つの特徴点Pで点隣接する4つの領域Rはすべて異なる色である。しかしながら、辺隣接する2つの領域R同士が互いに異なる色を有する限り、点隣接する4つの領域Rで同じ色が複数回用いられていてもよい。例えば、それぞれが白、緑、白、青の順で色を有する4つの領域Rが点隣接する特徴点Pを作ることができる。これにより、同じ数の色でさらに多くの特徴点を作ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本開示は、投写型表示装置の投写画像の歪みを補正する技術として広く適用可能である。例えば本開示は、曲面に映像を投写するプロジェクションマッピング等の技術に適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1,1A 投写画像調整システム
100 投写型表示装置
200 制御装置
201 記憶部
202 パターン生成部
203 映像送出部
204 取得部
205 パターン合成部
206 特定部
207 算出部
300 撮像装置
400 投写面
401,402 投写映像
500,800,900A~900D 投写テストパターン
600 色チャネルデータベース
700 合成撮像画像
701~703 撮像画像
501~503,801(1)~801(2n-1) 二値テストパターン
R 領域
L 境界線
P 特徴点