IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アクア・ラボの特許一覧

特許7190705人工透析装置の廃液中和システム、人工透析装置の廃液中和方法
<>
  • 特許-人工透析装置の廃液中和システム、人工透析装置の廃液中和方法 図1
  • 特許-人工透析装置の廃液中和システム、人工透析装置の廃液中和方法 図2
  • 特許-人工透析装置の廃液中和システム、人工透析装置の廃液中和方法 図3
  • 特許-人工透析装置の廃液中和システム、人工透析装置の廃液中和方法 図4
  • 特許-人工透析装置の廃液中和システム、人工透析装置の廃液中和方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】人工透析装置の廃液中和システム、人工透析装置の廃液中和方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/66 20060101AFI20221209BHJP
【FI】
C02F1/66 530P
C02F1/66 510R
C02F1/66 510L
C02F1/66 530B
C02F1/66 530K
C02F1/66 530L
C02F1/66 521X
C02F1/66 522R
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019160431
(22)【出願日】2019-09-03
(65)【公開番号】P2021037467
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】517415849
【氏名又は名称】株式会社アクア・ラボ
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 康治
(72)【発明者】
【氏名】下田 徹郎
(72)【発明者】
【氏名】島田 勝久
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-245516(JP,A)
【文献】特開2000-210682(JP,A)
【文献】特開2010-088759(JP,A)
【文献】特開2005-211825(JP,A)
【文献】特開2021-003262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/66- 1/68
A61M 1/00- 1/38
A61M 60/00-60/90
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
C02F 9/00- 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄廃液または洗浄廃液と消毒廃液、水洗用RO水排水、透析廃液を排出し、透析廃液排出中は透析廃液排出中を示す信号を出力する人工透析装置の廃液中和システムであって、
人工透析装置から排出される洗浄廃液または洗浄廃液と消毒廃液、水洗用RO水排水、透析廃液を貯液する廃液受槽と、
廃液受槽の液体のpHを計測する第1のpH計測手段と、廃液受槽から送液された液体の中和を行うための中和槽と、
廃液受槽と中和槽の間に装備されて、第1のpH計測手段で計測されたpHが下水排出基準範囲に入っていない場合と、人工透析装置から透析廃液排出中を示す信号が出力されている場合に、廃液受槽の液体を中和槽へ流出させ、第1のpH計測手段で計測されたpHが下水排出基準範囲に入っており、かつ、人工透析装置から透析廃液排出中を示す信号が出力されていない場合に、廃液受槽の液体を配管を介して下水管側へ送出させる第1の送液手段と、
中和槽の液体のpHを計測する第2のpH計測手段と、
中和槽と下水管の間に装備されて、第2のpH計測手段で計測されたpHが下水へ排出可能な中和域に入っている場合、中和槽の液体を配管を介して下水管側へ送出させる第2の送液手段と、
を備えたことを特徴とする人工透析装置の廃液中和システム。
【請求項2】
第2の送液手段は、
中和槽から液体を流出させる配管と中和槽に戻す戻し配管を含み、
第2のpH計測手段で計測されたpHが下水へ排出可能な中和域に入っていないときに、中和槽から流出した液体を戻し配管を介して中和槽に戻し、循環させるようにしたこと、
を特徴とする請求項1記載の人工透析装置の廃液中和システム。
【請求項3】
洗浄廃液または洗浄廃液と消毒廃液、水洗用RO水排水、透析廃液を排出し、透析廃液排出中は透析廃液排出中を示す信号を出力する人工透析装置の廃液中和方法であって、
人工透析装置から排出される洗浄廃液または洗浄廃液と消毒廃液、水洗用RO水排水、透析廃液を廃液受槽に貯液し、
廃液受槽の液体のpHが下水排出基準範囲に入ってるか否か監視し、
廃液受槽の液体のpHが下水排出基準範囲に入っていない場合と、廃液受槽の液体のpHが下水排出基準範囲に入っており、かつ、人工透析装置から透析廃液排出中を示す信号が出力されているときは、廃液受槽の液体を中和槽へ送出し、
廃液受槽の液体のpHが下水排出基準範囲に入っており、かつ、人工透析装置から透析廃液排出中を示す信号が出力されていないときは、廃液受槽の液体を下水管側へ送出し、
中和槽の液体のpHが下水に排出可能な中和域に入っているか否か監視し、
中和槽の液体のpHが下水へ排出可能な中和域に入っているとき、中和槽の液体を下水管側へ送出するようにしたこと、
を特徴とする人工透析装置の廃液中和方法。
【請求項4】
中和槽の液体のpHが下水へ排出可能な中和域に入っていないときに、中和槽の液体を循環させて攪拌するようにしたこと、
を特徴とする請求項3記載の人工透析装置の廃液中和方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人工透析装置の廃液中和システム、人工透析装置の排液中和方法に係り、とくに透析廃液、洗浄廃液、消毒廃液、水洗用RO水排水が排出される人工透析装置の廃液中和システム、人工透析装置の排液中和方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工透析装置では、菌・ウィルスなどの感染を防止するため定期的に洗浄、消毒、水洗を行う必要がある。洗浄廃液はpHが2~3程度の強酸性、消毒廃液はpHが10~11程度の強アルカリ性であり、そのまま下水管に排液すると環境汚染となってしまうため、pH=9乃至5程度の下水排出基準範囲内に入るように中和処理したのち、排液する必要がある。
従来は、硫酸、苛性ソーダなどの中和剤を混合して中和処理を行っていたが、これらは危険な劇薬であり、保管や取り扱いが難しい問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたもので、中和剤を用いることなく、洗浄廃液または洗浄廃液と消毒廃液の中和処理を可能とする人工透析装置の廃液中和システム、人工透析装置の廃液中和方法を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の発明では、
洗浄廃液または洗浄廃液と消毒廃液、水洗用RO水排水、透析廃液を排出し、透析廃液排出中は透析廃液排出中を示す信号を出力する人工透析装置の廃液中和システムであって、
人工透析装置から排出される洗浄廃液または洗浄廃液と消毒廃液、水洗用RO水排水、透析廃液を貯液する廃液受槽と、
廃液受槽の液体のpHを計測する第1のpH計測手段と、廃液受槽から送液された液体の中和を行うための中和槽と、
廃液受槽と中和槽の間に装備されて、第1のpH計測手段で計測されたpHが下水排出基準範囲に入っていない場合と、人工透析装置から透析廃液排出中を示す信号が出力されている場合に、廃液受槽の液体を中和槽へ流出させ、第1のpH計測手段で計測されたpHが下水排出基準範囲に入っており、かつ、人工透析装置から透析廃液排出中を示す信号が出力されていない場合に、廃液受槽の液体を配管を介して下水管側へ送出させる第1の送液手段と、
中和槽の液体のpHを計測する第2のpH計測手段と、
中和槽と下水管の間に装備されて、第2のpH計測手段で計測されたpHが下水管へ排出可能な中和域に入っている場合、中和槽の液体を配管を介して下水管側へ送出させる第2の送液手段と、
を備えたことを特徴としている。
請求項2記載の発明では、
第2の送液手段は、
中和槽から液体を流出させる配管と中和槽に戻す戻し配管を含み、
第2のpH計測手段で計測されたpHが下水管へ排出可能な中和域に入っていないときに、中和槽から流出した液体を戻し管を介して中和槽に戻し、循環させるようにしたこと、
を特徴としている。
請求項3記載の発明では、
洗浄廃液または洗浄廃液と消毒廃液、水洗用RO水排水、透析廃液を排出し、透析廃液排出中は透析廃液排出中を示す信号を出力する人工透析装置の廃液中和方法であって、
人工透析装置から排出される洗浄廃液または洗浄廃液と消毒廃液、水洗用RO水排水、透析廃液を廃液受槽に貯液し、
廃液受槽の液体のpHが下水排出基準範囲に入ってるか否か監視し、
廃液受槽の液体のpHが下水排出基準範囲に入っていない場合と、廃液受槽の液体のpHが下水排出基準範囲に入っており、かつ、人工透析装置から透析廃液排出中を示す信号が出力されているときは、廃液受槽の液体を中和槽へ送出し、
廃液受槽の液体のpHが下水排出基準範囲に入っており、かつ、人工透析装置から透析廃液排出中を示す信号が出力されていないときは、廃液受槽の液体を下水管側へ送出し、
中和槽の液体のpHが下水管へ排出可能な中和域に入っているか否か監視し、
中和槽の液体のpHが下水管へ排出可能な中和域に入っているとき、中和槽の液体を下水管側へ送出するようにしたこと、
を特徴としている。
請求項4記載の発明では、
中和槽の液体のpHが下水管へ排出可能な中和域に入っていないときに、中和槽の液体を循環させて攪拌するようにしたこと、
を特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、強酸性の洗浄廃液または強酸性の洗浄廃液と強アルカリ性の消毒廃液を、pHがほぼ中性の透析廃液を用いて中和処理できるので、保管や取り扱いが難しい中和剤が不要となる。
また、pHが7より小さい水洗用RO水排水を用いて強酸性の洗浄廃液を中和処理しようとすると多量が必要となり、必然的に中和槽の容量が大きくなってしまうが、本発明では水洗用RO水排水は下水管側に排出されるようにしたので、中和槽の容量が小型で済む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は本発明に係る人工透析装置の廃液中和方法を具現した人工透析装置の廃液中和システムを示す構成図である。
図2図1中の第1の制御装置の制御処理を示すフローチャートである。
図3図1中の第2の制御装置の制御処理を示すフローチャートである。
図4図1の人工透析装置の廃液中和システムによる洗浄廃液の中和処理動作を示すタイムチャートである。
図5図1の人工透析装置の廃液中和システムによる消毒廃液の中和処理動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の最良の形態を実施例に基づき説明する。
【実施例1】
【0008】
図1乃至図5を参照して本発明に係る人工透析装置の廃液中和方法を具現した人工透析装置の廃液中和システムを示す構成図、図2図1中の第1の制御装置の動作を示すフローチャート、図3図1中の第2の制御装置の動作を示すフローチャート、図4図5は各々、廃液中和システムの各部の動作を説明するタイムチャートである。
図1において、1は病院、診療所等に設置された人工透析装置であり、人工透析した透析廃液のほか、洗浄剤により洗浄したあとの強酸性の洗浄廃液、消毒剤により消毒したあとの消毒廃液、RO水により水洗したあとの水洗用RO水排水を排出する。人工透析装置1は、透析廃液を排出している間、透析廃液排出中を示す信号Sを出力する機能を有している。2は人工透析装置1から自由落下で排出されたこれらの廃液、排水を貯液する廃液受槽、3は廃液受槽2の液面レベルを計測する第1の液面計、4は廃液受槽2の液体のpHを計測する第1のpH計、5は廃液受槽2から配管6を介して送液された液体の中和を行うための中和槽、7は中和槽5の液面レベルを計測する第2の液面計、8は中和槽5の液体のpHを計測する第2のpH計である。
【0009】
9はpHが下水排出基準範囲(ここではpHが5~9の範囲とする)内の廃液を排水する下水管、10と11は廃液受槽2と中和槽5を接続する配管6の途中に装備された第1のポンプ(P1)と第1の切り替え弁(V1)である。第1のポンプ10が廃液受槽2寄り、第1の切り替え弁11が中和槽5寄りである。第1の切り替え弁11は配管6の廃液受槽2の側を、配管6の中和槽5の側または下水管9と接続された配管12の側に切り替える。13と14は中和槽5と下水管9を接続する配管15の途中に装備された第2のポンプ(P2)と第2の切り替え弁(V2)である。第2のポンプ13が中和槽5寄り、第2の切り替え弁14が下水管9寄りである。第2の切り替え弁14は配管15の中和槽5の側を、配管15の下水管9の側または中和槽5と接続された戻し管16の側に切り替える。
【0010】
20は第1の制御装置であり、第1の液面計3、第1のpH計4の出力及び人工透析装置1からの信号Sを入力し、第1のポンプ10の稼働制御と第1の切り替え弁11の切り替え制御を行い、廃液受槽2中の洗浄廃液や消毒廃液、透析廃液は中和槽5へ送液し、廃液受槽2中の水洗用RO排水は下水管9へ排液するように制御する。配管6、12、第1のポンプ10、第1の切り替え弁11、第1の制御装置20とにより第1の送液手段が構成されている。
【0011】
21は第2の制御装置であり、第2の液面計7、第2のpH計8の出力を入力し、第2のポンプ13の稼働制御と第2の切り替え弁14の切り替え制御を行い、中和槽5の中和後の廃液は下水管9へ排液し、中和前の廃液は循環させて攪拌する制御を行う。配管15、戻し管16、第2のポンプ13、第2の切り替え弁14、第2の制御装置21とにより第2の送液手段が構成されている。
【0012】
図2は第1の制御装置20による制御処理を示すフローチャート、図3は第2の制御装置21による制御処理を示すフローチャート、図4図5図1の人工透析装置の廃液中和システムの動作を示すタイムチャートであり、以下、これらの図を参照して上記した実施例の動作を説明する。
人工透析装置1は、人工透析による透析廃液、洗浄剤を用いた洗浄による洗浄廃液、消毒剤による消毒廃液、水洗用RO水による水洗後の水洗用RO水排水を排出する。この内、洗浄廃液はpHが2乃至3の強酸性であり、消毒廃液がpH10乃至12の強アルカル性であり、そのままでは下水管9への排出基準範囲(pHが約5~9)を満たさず、中和処理をする必要がある。水洗用RO水排水はpHが6.5前後、透析廃液はPHがほぼ7である。
【0013】
強アルカリ、強酸の中和剤を用いて中和処理するのは取り扱い、保管等の負担が大きい。この実施例では、pHがほぼ7の透析廃液を混液して中和処理することにより、中和剤を用いずに中和可能としている。
人工透析装置1から排出された透析廃液や洗浄廃液、消毒廃液、水洗用RO水排水は廃液受槽2に貯液される。人工透析装置1は透析廃液を排出している間、透析廃液排出中を示す信号Sを出力する。
【0014】
(1)洗浄廃液(消毒廃液)排出時(図4図5)参照)
第1の制御装置20は、第1の液面計3により計測された液面高さが、液の存在を判定するための或る一定の基準th1を超えていない間、第1のポンプ10を停止状態とし、第1の切り替え弁11を中立位置(閉塞位置)としている(図2のステップS1でNO、S2)。
人工透析装置1で洗浄(消毒)が行われて洗浄廃液(消毒廃液)が廃液受槽2に排出され、液面が一定の基準th1を超えると第1のポンプ10を稼働する(ステップS1でYES、S3)。続いて信号Sが「透析廃液排出中」を示しているか判定し(ステップS4)、ここではNOなので、第1のpH計4で計測されたpHが下水排出基準範囲(ここではpH=5~9とする)外か否か判定する(ステップS5)。廃液受槽2内が洗浄廃液(消毒廃液)であるとき、pHは2~3(11~12)でYESとなるので、第1の制御装置20は第1の切り替え弁11を中和槽5の側に切り替えて廃液受槽2の洗浄廃液(消毒廃液)を中和槽5へ送液させる(ステップS6)。
【0015】
第2の制御装置21は、第2の液面計7で計測された液面高さが、液の存在を判定するための或る一定の基準th2を超えているか否か判断しており(ステップS10)、超えていなければ第2のポンプ13を停止状態、第2の切り替え弁14を中立位置としている(図3のステップS10でNO、S11)。
洗浄廃液(消毒廃液)の流入により液面高さが一定の基準th2を超えたとき第2のポンプ13を稼働し(ステップS10でYES、S12)、第2のpH計8で計測されたpHが下水へ排出可能な中和域(ここではステップ5で判定する下水排出基準範囲と同じとする)に入っているか否か判定する(ステップS13)。中和槽5内が洗浄廃液(消毒廃液)であるとき、pHは2~3(11~12)でNOとなるので、第2の制御装置21は第2の切り替え弁14を戻し管16の側に切り替え中和槽5の洗浄廃液(消毒廃液)を攪拌させる(ステップS14)。
【0016】
人工透析装置1からの洗浄廃液(消毒廃液)の排出が終わり、廃液受槽2の液面高さがth1を下回ると、第1の制御装置20は第1のポンプ10を停止し、第1の切り替え弁11を中立位置に切り替える(ステップS1でYES、S2)。第2の制御装置20は先に第2のポンプ13を稼働させたあと、第2の液面計7で計測された液面高さが基準th2以下となったか判別しており(ステップS10)、NOであれば、第2のポンプ13の稼働を継続する(ステップS12)。
この結果、人工透析装置1から排出された洗浄廃液(消毒廃液)は中和槽5に貯液される。
【0017】
(2)水洗用RO水排水の排出時
その後、人工透析装置1で水洗用RO水を用いた水洗が行われて水洗用RO水排水が廃液受槽2に排出されると、液面が基準th1を超えたところで第1の制御装置20は第1のポンプ10を稼働する(ステップS1でYES、S3)。続いて信号Sが「透析廃液排出中」を示しているか判定し(ステップS4)、ここではNOなので、第1のpH計4で計測されたpHが下水排出基準範囲外か否か判定する(ステップS5)。廃液受槽2内に水洗用RO水排水が排出されると、最初、pHはまだ2~3(11~12)近くなので、第1の制御装置20は第1の切り替え弁11を中和槽5の側に切り替えるが(ステップS5でYES、S6)、すぐにpHが6.5前後になるのでステップS5でNOと判断し、第1の切り替え弁11を下水管側に切り替え、水洗用RO水排水を下水管9に排出させる(ステップS7)。
【0018】
第2の制御装置21は、第2の液面計7で計測された液面高さが或る一定の基準を超えているか否か判別し(ステップS10)、YESなので第2のポンプ13を稼働し(ステップS12)、第2のpH計8で計測されたpHが中和域(ここでは下水排出基準範囲)に入っているか否か判定する(ステップS13)。中和槽5内は洗浄廃液(消毒廃液)でありpHは2~3(11~12)なので、第2の切り替え弁14を戻し管16の側に切り替え中和槽5の洗浄廃液(消毒廃液)を攪拌させる(ステップS14)。
【0019】
人工透析装置1からの水洗用RO水排水の排出が終わり、廃液受槽2の液面高さがth1を下回ると、第1の制御装置20は第1のポンプ10を停止し、第1の切り替え弁11を中立位置に切り替える(ステップS1でNO、S2)。第2の制御装置21は第2のポンプ13の稼働を継続する(ステップS10でYES、S12)。
この結果、人工透析装置1から排出された水洗用RO水排水の大部分は下水管9へ排出される。
【0020】
ここで水洗用RO水排水はpHが6.5前後なので、洗浄廃液が中和槽5に貯液されている場合に、水洗用RO水排水を中和槽5へ送液して洗浄廃液と混合して強酸性の洗浄廃液を下水排出基準範囲内に入るように中和することができる。けれども、例えばpHがほぼ7の透析廃液に比べると、何十倍もの量が必要となり、中和槽5を大容量なタイプにする必要がある。この発明では、洗浄廃液の中和に水洗用RO水排水を用いないことにより、中和槽5を小容量のタイプで済むようにしている。
【0021】
(3)透析廃液排出時
その後、人工透析装置1で人工透析が行われて透析廃液が廃液受槽2に排出されると、人工透析装置1は「透析廃液排出中」を示す信号Sを出力する。第1の制御装置20は液面が基準th1を超えたところで第1のポンプ10を稼働する(ステップS1でYES、S3)。続いて信号Sが「透析廃液排出中」を示しているか判定し(ステップS4)、ここではYESなので、第1の切り替え弁11を中和槽5の側に切り替える(ステップS8)。これにより、透析廃液は中和槽5へ送液される。第1の制御装置20は人工透析装置1から透析廃液が排出されている間、中和槽5への送液を継続する。
【0022】
第2の制御装置21は、第2の液面計7で計測された液面高さが或る一定の基準th2を超えており、第2のポンプ13を稼働している間、第2のpH計8で計測されたpHが中和域内か否か判定している(ステップS13)。透析廃液の排出が開始してから最初の内は、pHは2~3(11~12)近くのままなので、第2の制御装置21は第2の切り替え弁14を戻し管16の側に切り替えたままとする(ステップS13でNO、S14)。この結果、中和槽5の液体が配管15と戻し管16を経由して元の中和槽5へ循環し、中和槽5の中の強酸性の洗浄廃液(強アルカリ性の消毒廃液)と廃液受槽2から送液されたpHがほぼ7の透析廃液とが攪拌されて一様に混合されながら、pHが2~3から徐々に高く(11~12から徐々に低く)なって行くことになる。
【0023】
第2の制御装置21は第2のpH計8で計測されたpHを監視し、pH=5~9の中和域内に達するのを待つ(ステップS13)。廃液受槽2からの透析廃液の流入により、中和槽5の中の洗浄廃液(消毒廃液)の中和が進み、pHが5を超えると(9を下回ると)、第2の制御装置21はステップS13でYESと判断し、第2の切り替え弁14を下水管9の側に切り替え、以降、中和槽5の中和廃液を下水に排出させる(ステップS15)。
これにより、中和槽5にとくに強酸性の洗浄廃液が貯液されているとき、この洗浄廃液は、中和剤を用いずに、pHが水洗用RO水排水より高い透析廃液により中和処理されながら下水に排出されて行く。同じpH、同じ量の洗浄廃液を中和する場合、pHの低い水洗用RO水排水を用いるよりも、pHの高い透析廃液を用いる方が、遙かに量が少なくて済み、中和槽5を大型にしなくて済む。中和槽5に強アルカリ性の消毒廃液が貯液されているときも、中和剤を用いずに、pHがほぼ7の透析廃液により中和処理されながら下水に排出されて行く。
【0024】
その後、人工透析装置1からの透析廃液の排出が終わると、人工透析装置1からの「透析廃液排出中」を示す信号Sの出力が止まる。すると、第1の制御装置20はステップS9でNOと判断し、ステップS5へ進み、第1のpH計4で計測されたpHが下水排出基準外か判定する。廃液受槽2の中は透析廃液(消毒廃液)であり、NOとなるので、第2の切り替え弁11を下水管9の側に切り替える(ステップS7)。その後、第1の液面計3で計測された液面高さがth1を下回ると、第1の制御装置20はステップS1でYESと判断し、第1のポンプ10を停止し、第2の切り替え弁11を中立位置とする(ステップS2)。
第2の制御装置21は第2の液面計7で計測された液面高さがth2を超えている間、第2のポンプ13を稼働して中和槽5の中和廃液を下水に排出させる(ステップS10でYES、S12、S13、S15)。そして、中和槽5の液面高さがth2を下回ると第2のポンプ13を停止し、第2の切り替え弁14を中立位置とする(ステップS10でNO、S11)。
このようにして、人工透析装置1から排出された強酸性の洗浄廃液(強アルカリ性の消毒廃液)は、透析廃液により中和処理されて下水に排出される。
【0025】
この実施例によれば、強酸性の洗浄廃液や強アルカリ性の消毒廃液を、pHがほぼ中性の透析廃液を用いて中和処理できるので、保管や取り扱いが難しい中和剤が不要となる。
また、pHが7より小さい水洗用RO水排水を用いて強酸性の洗浄廃液を中和処理しようとすると多量が必要となり、必然的に中和槽5の容量が大きくなってしまうが、この実施例では、水洗用RO水排水は下水管側に排出されるようにしたので、中和槽5の容量が小型で済む。
【0026】
なお、上記した実施例では、人工透析装置から自由落下で廃液、排水が廃液受槽に排出される場合を例に挙げて説明したが、図1の破線に示す如く、人工透析装置1と廃液受槽を配管22で接続し、配管22の途中に設けたポンプ23を駆動して廃液・排水を廃液受槽2へ送液するようにしても良い。
また、人工透析装置から洗浄廃液(消毒廃液)、水洗用RO水排水、透析廃液の順に排出される場合を例に挙げて説明したが、本発明は何らこれに限定されず、洗浄廃液、水洗用RO水排水、消毒廃液、水洗用RO水排水、透析廃液の順や、消毒廃液、水洗用RO水排水、洗浄廃液、水洗用RO水排水、透析廃液の順に排出される場合にも、同様に適用することができる。
また、図3のステップS13で判定する中和域は図2のステップS5で判定する下水排出基準範囲と同一としても良く、この下水排出基準範囲より狭くしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、病院・診療所等の人工透析設備に適用できる。
【符号の説明】
【0028】
1 人工透析装置
2 廃液受槽
3 第1のpH計
4 第1の液面計
5 中和槽
6、12、15 配管
7 第2のpH計
8 第2の液面計
9 下水管
10 第1のポンプ
11 第1の切り替え弁
13 第2のポンプ
14 第2の切り替え弁
16 戻し管
20 第1の制御装置
21 第2の制御装置
図1
図2
図3
図4
図5