(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】多色表示装置、多色表示装置の階調値の設定方法、および多色表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20221209BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20221209BHJP
G02B 6/00 20060101ALI20221209BHJP
G09F 13/18 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
F21S2/00 435
F21S2/00 439
F21V23/00 140
G02B6/00 301
G09F13/18 N
(21)【出願番号】P 2020099735
(22)【出願日】2020-06-09
(62)【分割の表示】P 2016118417の分割
【原出願日】2016-06-15
【審査請求日】2020-06-09
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上水 和平
(72)【発明者】
【氏名】高田 和政
(72)【発明者】
【氏名】高本 健治
【合議体】
【審判長】藤本 義仁
【審判官】小林 謙仁
【審判官】松田 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-275921(JP,A)
【文献】特開2016-53605(JP,A)
【文献】特開2016-14727(JP,A)
【文献】特開2013-231819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F13/18
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が入射する側面を有し、微細形状のプリズムの集合体により絵柄パターンが形成された導光体を設け、
赤,緑,青,白の
各光を
前記導光体の内部に入射させる光源を
それぞれ設け、
前記導光体は、前記側面ごとに前記光源の光が色別に入射するものであり、
前記導光体に入射して導光された前記光を前記微細形状のプリズムの集合体により反射して、前記導光体の光出射面より出射させて前記絵柄パターンを表示する多色表示装置であって、
前記導光体の絵柄パターンの特定色を赤,緑,青,白の光で表示する個所の各色の階調値をI(r),I(g),I(b),I(w)、
白を消灯して、赤,緑,青だけで前記特定色に近い表示をさせる場合の各色の階調値をIr,Ig,Ibとした場合に、
赤,緑,青,白の各色の前記微細形状のプリズムは、
最大階調値を100%とし、
前記Ir,Ig,Ibのすべてが20%の設定階調値以上の場合に、A/100を“0.3以上0.7以下”とし、
I(w)= min(Ir,Ig,Ib)× A/ 100
I(r)= Ir-I(w)
I(g)= Ig-I(w)
I(b)= Ib-I(w)
の階調値となる高さまたはピッチであり、
さらに、前記Ir,Ig,Ibの階調差が5%以下の場合には、
I(w)= max(Ir,Ig,Ib)
I(r)= 0
I(g)= 0
I(b)= 0
の階調値となる高さまたはピッチである、
多色表示装置。
【請求項2】
光が入射する側面を有し、微細形状のプリズムの集合体により絵柄パターンが形成された導光体を設け、
赤,緑,青,白の
各光を
前記導光体の内部に入射させる光源を
それぞれ設け、
前記導光体は、前記側面ごとに前記光源の光が色別に入射するものであり、
前記導光体に入射して導光された前記光を前記微細形状のプリズムの集合体により反射して、前記導光体の光出射面より出射させて前記絵柄パターンを特定色にする前記微細形状のプリズムを設定するに際し、
前記導光体の内部に赤,緑,青の光だけで前記特定色に近い表示色を表示させる場合の各色の階調値をIr,Ig,Ib、
前記導光体の内部に赤,緑,青,白の光で前記特定色を表示させる場合の各色の階調値をI(r),I(g),I(b),I(w)
とし、前記I(r),I(g),I(b),I(w)の最大階調値を100%とし、
前記Ir,Ig,Ibのすべてが20%の設定階調値以上の場合に、A/100を“0.3以上0.7以下”とするとともに、
I(w) = min(Ir,Ig,Ib) × A / 100
I(r) =Ir - I(w)
I(g) =Ig - I(w)
I(b) =Ib - I(w)
とし、
さらに、前記Ir,Ig,Ibの階調差が5%以下の場合には、
I(w)= max(Ir,Ig,Ib)
I(r)= 0
I(g)= 0
I(b)= 0
とすることによって階調値I(r),I(g),I(b),I(w)に変換し、この階調値を、夫々前記微細形状のプリズムの高さあるいはピッチに変換する、
多色表示装置の階調値の設定方法。
【請求項3】
光が入射する側面を有し、微細形状のプリズムの集合体により絵柄パターンが形成された導光体を設け、
赤,緑,青,白の
各光を
前記導光体の内部に入射させる光源を
それぞれ設け、
前記導光体は、前記側面ごとに前記光源の光が色別に入射するものであり、
前記導光体に入射して導光された前記光を前記微細形状のプリズムの集合体により反射して、前記導光体の光出射面より出射させて前記絵柄パターンを特定色にする前記微細形状のプリズムを設定するに際し、
前記導光体の内部に赤,緑,青の光だけで前記特定色に近い表示色を表示させる場合の各色の階調値をIr,Ig,Ib、
前記導光体の内部に赤,緑,青,白の光で前記特定色を表示させる場合の各色の階調値をI(r),I(g),I(b),I(w)
とし、前記I(r),I(g),I(b),I(w)の最大階調値を100%とし、
前記Ir,Ig,Ibのすべてが20%の設定階調値以上の場合に、A/100を“0.3以上0.7以下”とするとともに、
I(w) = min(Ir,Ig,Ib) × A / 100
I(r) =Ir - I(w)
I(g) =Ig - I(w)
I(b) =Ib - I(w)
とし、
さらに、前記Ir,Ig,Ibの階調差が5%以下の場合には、
I(w)= max(Ir,Ig,Ib)
I(r)= 0
I(g)= 0
I(b)= 0
とすることによって階調値I(r),I(g),I(b),I(w)に変換し、
この階調値を、夫々前記微細形状のプリズムの高さあるいはピッチに変換し、前記絵柄パターンを形成する、
多色表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数色の光を導光体に入光してカラー絵柄を表示させる多色表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多色表示装置としては、特許文献1に記載されたものがある。
これは
図16に示すように、導光体10の各稜線側面に、色の異なるランプ11A~11Fを配置し、これらランプ11A~11Fを、点灯回路12A~12Fと制御回路13を介して電源14により適宜に点灯駆動することによって、導光体10にカラーの光が入光され、絵柄パターンとして導光体10に配置された表示体15が、多色でカラー表示される。
【0003】
導光体10の各稜線側面とランプ11A~11Fの発光色の関係は、導光体10の各稜線の対向側に同色系統のランプが配置されている。例えば、ランプ11A,11Dは発光色が赤、ランプ11B,11Eは発光色が青、ランプ11C,11Fは発光色が緑のものが使用されている。
【0004】
このように従来では、色の異なる複数のランプ11A~11Fからの赤,緑,青の光を導光体10に入光することで混色させて、多色のカラー表示をしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
表示体15を表示したい色の空(そら)色にて表現する場合は、光の3原色である赤,緑,青のうちの緑と青を混色させることにより表現できる。表示体15を白にて表現する場合は、赤,緑,青を混色させることにより表現できる。
【0007】
しかし、白を表現する場合には、入光する各色の強度に差があると、異なった色として認識されやすい。赤が他の緑や青に比べて光強度が大きい場合には、表示体15が白ではなくピンク色に表示される。
【0008】
空色を表現する場合には、緑と青の強度差があっても、その色の違いは白の場合より目立たない。
多色表現する場合には色の綺麗さ、換言すると、高い色再現性が必要である。そこで、白色が他の色に見えてしまい美しい白色にならない。
本発明は、美しい白色を実現しつつ、加工誤差の影響を受けにくく色再現性が高い、美しいと感じられる多色表示、カラー表示を実現できる多色表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の多色表示装置は、微細形状の集合体により絵柄パターンが形成された導光体を設け、前記導光体の内部に赤,緑,青,白の光を入射させる光源を設け、前記導光体に入射して導光された前記光を前記微細形状の集合体により反射して、前記導光体の光出射面より出射させて前記絵柄パターンを表示する多色表示装置であって、前記導光体の絵柄パターンの特定色を赤,緑,青,白の光で表示する個所の各色の階調値をI(r),I(g),I(b),I(w)、白を消灯して、赤,緑,青だけで前記特定色に近い表示をさせる場合の各色の階調値をIr,Ig,Ibとした場合に、赤,緑,青,白の各色の前記微細形状は、
I(w)= min(Ir,Ig,Ib)× A / 100
I(r)= Ir-I(w)
I(g)= Ig-I(w)
I(b)= Ib-I(w)
の階調値となる高さまたはピッチである、ことを特徴とする。但し、A/100:最大階調値を100%とした場合にIr,Ig,Ibのすべてが20%付近の設定階調値以上の場合に1未満である。
【0010】
また、本発明の多色表示装置の階調値の設定方法は、微細形状の集合体により絵柄パターンが形成された導光体を設け、前記導光体の内部に赤,緑,青,白の光を入射させる光
源を設け、前記導光体に入射して導光された前記光を前記微細形状の集合体により反射して、前記導光体の光出射面より出射させて前記絵柄パターンを特定色にする前記微細形状を設定するに際し、前記導光体の内部に赤,緑,青の光だけで前記特定色に近い表示色を表示させる場合の各色の階調値をIr,Ig,Ib、
前記導光体の内部に赤,緑,青,白の光で前記特定色を表示させる場合の各色の階調値をI(r),I(g),I(b),I(w)とした場合に、
I(w) = min(Ir,Ig,Ib)× A / 100
I(r) =Ir - I(w)
I(g) =Ig - I(w)
I(b) =Ib - I(w)
によって階調値I(r),I(g),I(b),I(w)に変換し、この階調値を、夫々前記微細形状の高さあるいはピッチに変換し、前記絵柄パターンを形成する、ことを特徴とする。但し、A/100:最大階調値を100%とした場合にIr,Ig,Ibのすべてが20%付近の設定階調値以上の場合に1未満である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、I(w)=min(Ir,Ig,Ib)× A/100で、I(r)= Ir -I(w),I(g) =Ig -I(w),I(b)= Ib -I(w)の各色の階調値となる高さあるいはピッチに変換した前記微細形状を導光体に形成したため、赤,緑,青,白によって導光体の絵柄パターンを表示する場合に、I(w)= min(Ir,Ig,Ib)、I(r) =Ir - I(w),I(g)= Ig -I(w),I(b) =Ib - I(w)によって前記微細形状を導光体に形成した基本的な変換のものに比べて、美しい白色を実現しつつ、加工誤差の影響を受けにくく色再現性が高く、美しいと感じられるカラー表示を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態1における多色表示装置の斜視図
【
図3】(a)R,G,B階調値の表示色と(b)比較例のR,G,B,W階調値の説明図
【
図4】(a)R,G,B階調値の表示色とR,G,B,W階調値に変換した比較例の説明図と、(b)R,G,B階調値の表示色の場合に導光体に設けられる微小形状の高さの説明図と比較例の導光体に設けられるR,G,B,W階調値に変換した微小形状の高さの説明図
【
図5】(a)何れの階調値も最大階調値255における設定階調値50以上の場合の表示色の階調値Ir,Ig,Ibと(b)R,G,B階調値からR,G,B,W階調値I(r),I(g),I(b),I(w)への変換を説明する図
【
図6】
図5の具体例で、(a)表示色が肌色の場合の表示色の階調値Ir,Ig,Ibと(b)R,G,B,W階調値I(r),I(g),I(b),I(w)への変換を説明する図
【
図7】同実施の形態における絵柄パターンの例を示す図
【
図8】同実施の形態における(a)絵柄パターンの緑色の配色に必要な光の入光方向を示す平面図と(b)導光体に形成される微細形状を示す拡大断面図
【
図9】同実施の形態における(a)絵柄パターンの青色の配色に必要な光の入光方向を示す平面図と(b)導光体に形成される微細形状を示す拡大断面図
【
図10】同実施の形態における(a)絵柄パターンの赤色と緑色の配色に必要な光の入光方向を示す平面図と(b)導光体に形成される微細形状を示す拡大断面図
【
図11】同実施の形態における(a)絵柄パターンの緑色の配色に必要な光の入光方向を示す平面図と(b)導光体に形成される微細形状を示す拡大断面図
【
図12】同実施の形態における絵柄パターンの赤色の配色と緑色の配色に必要な光の入光方向を示す平面図
【
図13】同実施の形態における絵柄パターンの緑色の配色と青色の配色に必要な光の入光方向を示す平面図
【
図14】本発明の実施の形態2における(a)茶色のR,G,B階調値から(b)R,G,B,W階調値への変換を説明する図
【
図15】本発明の実施の形態3における(a)R,G,B階調差が5%以下のR,G,B階調値から(b)R,G,B,W階調値への変換を説明する図
【
図16】特許文献1に記載された多色表示装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の各実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における多色表示装置を示している。
【0014】
この多色表示装置は、導光体1と、発光色が異なる光を出射する光源2A,2B,2C,2Dとを有している。
導光体1は、光源2Aからの光が入射する側面1aと、光源2Bからの光が入射する側面1bと、光源2Cからの光が入射する側面1cと、光源2Dからの光が入射する側面1dと、光が出射する光出射面1eと、光出射面1eと対向した後壁面1fとで形成されている。
【0015】
光源2A,2B,2Cは、光源2Aから出射する光3aが赤、光源2Bから出射する光3bが緑、光源2Cから出射する光3cが青である。光源2Dは、出射する光の色が光源2A,2B,2Cとは異なる白の光3dである。
【0016】
図2は導光体1の拡大断面図を示す。
導光体1の後壁面1fには、絵柄パターン4に応じて微細形状5の集合体が形成されている。この微細形状5は、導光体1の内部に入光した光を、表示しようとする目的の絵柄パターン4に応じて、光出射面1eへ光を反射するように形成されている。この微細形状5の形状は、光出射面1eに垂直な断面形状が非対称の略三角形であって、特定の方向からの光を光出射面1eに向かって反射する。ここでの絵柄パターン4は、家の絵と、木の絵と、空に浮かんだ太陽の絵からなる風景である。
【0017】
なお、この実施の形態の光源は発光色が異なる4個を使用しているため、微細形状5は後述のように、絵柄パターン4の配色に応じて各光源の発光色ごとに設けられている。そして各光源の光がそれぞれの微細形状5によって反射して導光体1の光出射面1eから出射した光強度が、それぞれの発光色の表示の階調となる。
【0018】
カラー表示しようとしている目的の絵柄パターン4のある点における、表示したい色である特定色を、赤,緑,青,白の光源を使用して表示するためには、導光体1の各色の微細形状5を、光の3原色である赤,緑,青の光源で表示させる場合とは異なるため、赤,緑,青で表示させる場合の各色の階調値を、赤,緑,青,白で表示させる場合の各色の適正な階調値に変換することが必要である。
【0019】
- 比較例 -
白を消灯して、赤、緑、青だけで前記特定色に近い表示色を表示させる場合の赤,緑,青の各階調値を、それぞれ
図3(a)に示すIr,Ig,Ibとする。Ir,Ig,Ibの中で最も小さな階調値を min(Ir,Ig,Ib)と表記する。この
図3(a)の場合、min(Ir,Ig,Ib)=Igである。
【0020】
これらを赤,緑,青,白の各階調値に変換するには、白の階調値I(w)を、この比較例では、
図3(b)に示すようにmin(Ir,Ig,Ib)とする。赤の階調値I(r)は、赤の階調値IrからI(w)を差し引いたIr-I(w)に設定する。緑の階調値I(g)は、緑の階調値IgからI(w)を差し引いたIg-I(w)に設定する。この
図3(b)の場合には、緑I(g)の階調値はゼロになる。青の階調値I(b)は、青の階調値IbからI(w)を差し引いたIb-I(w)に設定する。
【0021】
このように、階調値Ir,Ig,Ibから、白の階調値I(w)を差し引いたI(r),I(g),I(b)とし、この階調値を赤,緑,青,白の各成分に分けた微細形状の高さまたはピッチに変換し、絵柄パターン4を導光体1に形作る。
【0022】
入射して導光された光を微細形状の集合体により反射して、導光体の光出射面より出射させることで、絵柄パターンの配色の白色を従来よりも美しい白色として表示することができ、従来よりも色再現性が高く、美しいと感じられるカラー表示を実現できる。
【0023】
しかし、この比較例の色分解方法では、新たに設定された赤I(r)あるいは緑I(g)あるいは青I(b)の成分が小さくなる。これは
図4(a)(b)に示すような場合に、色味が変化してしまう課題が残る。
【0024】
絵柄パターン4の各色の階調値Ir,Ig,Ibの最大が256階調の場合に、
図4(a)に示すように、それぞれIr=230,Ig=210,Ib=190とすると、導光体1には、
図4(b)の左側に示した図のように、R,G,B階調値に応じた高さの微細形状5が導光体1に形成されるが、比較例のR,G,B,W階調値では、白の階調値I(w)=190,赤の階調値I(r)=40,緑の階調値I(g)=20,青の階調値I(b)=0となり、210mm×297mm×3mmの大きさの導光体1において、256階調の255が微細形状の高さ10μmに相当するとすれば、緑の階調値I(g)は256階調の20なので、
図4(b)の右側に示した図のように、微細形状の高さは10μm×20/256=0.78μmとなる。この0.78μmの高さの微細形状を加工するときの加工誤差は、高精度に加工しても防げない数ミクロンの加工誤差が生じる場合がある。このように微細形状5の高さを正確に導光体1に形成できないため、導光体1の階調値が低い個所に、所望の色味を表示できない可能性が非常に高い。
【0025】
そのため、結果として赤,緑,青の成分差が小さい場合には、微細形状5の加工誤差の影響を受け、白がきれいに表示されたとしても他の色、この例では緑の光が導光体1から出射されず、色味が変化してしまう課題が残る。
【0026】
- 実施例 -
そこで実施の形態1では、赤,緑,青の成分差が小さい個所を有している絵柄パターン4であっても、美しい白色を実現しつつ、加工誤差の影響を受けにくく色再現性が高い、美しいと感じられる多色表示、カラー表示を実現できるように、導光体1の微細形状5を次のように構成している。
【0027】
赤,緑,青,白の光で前記特定色を表示しようとするために必要な微細形状5は、白を消灯して赤,緑,青だけで前記特定色に近い表示色を表示させる場合の赤,緑,青の各階調値を、
図5(a)に示す、それぞれIr,Ig,Ibとする。Ir,Ig,Ibの中で最も小さな階調値を min(Ir,Ig,Ib)と表記する。この
図5では、min(Ir,Ig,Ib)はIbである。
【0028】
赤,緑,青,白の光で表示する場合の各色の階調値I(r),I(g),I(b),I(w)を、上記の基本的な色分解方法のように、Ib=I(w)としてしまうのではなく
て、この実施の形態1では、
図5(b)に示すように、
I(w)= min(Ir,Ig,Ib) ・A/100
=Ib・A/100
とする。AはIr,Ig,Ibの階調値の分布によって変わる100未満の数値である。A/100は1未満である。
【0029】
赤の階調値I(r)は、赤の階調値IrからI(w)を差し引いた
I(r)= Ir-I(w)
に設定する。緑の階調値I(g)は、緑の階調値IgからI(w)を差し引いた
I(g)= Ig-I(w)
に設定する。青の階調値I(b)は、緑の階調値IbからI(w)を差し引いた
I(b)= Ib-I(w)
に設定する。
【0030】
256階調(最大階調値255を100%)において、Ir,Ig,Ibの全てが設定した階調値50(19.6%≒20%)以上の場合について、複数人に加工誤差による色の見え具合の変化をテストしたところ、A/100=0.3未満、A/100=0.7より大きい値だと色味変化が顕著だという結果から、A/100は0.3以上0.7以下にする必要がある。
【0031】
Ir,Ig,Ibの全てが、最大階調値255における設定した階調値50以上の具体例を
図6(a)(b)に示す。
前記特定色に近い表示色が肌色の場合で、
図6(a)に示すようにR,G,B階調値ではIr=230、Ig=210、Ib=190程度である。これをR,G,B,W階調値に変換した例を示している。
図6(b)はA/100を0.3以上0.7以下の0.5としてR,G,B,W階調値に変換した例を示している。
【0032】
I(w)= min(230,210,190)×0.5 =95
I(r)= 230-95= 135
I(g)= 210-95= 115
I(b)= 190-95= 95
としている。
【0033】
このように、赤,緑,青の階調値Ir,Ig,Ibから、白の階調値を差し引いた値を、赤,緑,青の階調値I(r),I(g),I(b)として変換する。赤,緑,青,白の各成分に分けた絵柄パターン4を、微細形状5の集合体で形作る。
【0034】
絵柄パターンの作り方を
図7~
図13を用いて詳しく説明する。
図7は、
図1で示した絵柄パターン4の一部である。
図8(a)は、導光体1に向かって右側から緑色(G)を入光する場合に、この光に対応した絵柄パターンを形成する方法を示している。
図8(b)は、
図8(a)の一部分8の断面図で、光を反射する微細形状5の集合体を拡大して示している。このように、緑の光3bを反射する微細形状5は、入光する光3bの入射方向に対し、略垂直な方向に稜線を持つような、断面が三角の線状プリズムになっている。
図8(b)の微細形状5で反射した緑の光3bは、光出射面1eから出射する。階調値は、微細形状5の高さh、あるいは微細形状5のピッチpで制御する。
【0035】
図9(a)は、導光体1の上方から青(B)を入光する場合に、この光に対応した絵柄パターンを形成する方法を示している。
図9(b)は、
図9(a)の一部分8の断面図で、光を反射する微細形状5の集合体を拡大して示している。このように、青の光3cを反
射する微細形状5は、入光する光3cの入射方向に対し、略垂直な方向に稜線を持つような、断面が三角の線状プリズムになっている。
図9(b)の微細形状5で反射した青の光3cは、光出射面1eから出射する。階調値は、微細形状5の高さh、あるいは微細形状5のピッチpで制御する。
【0036】
図10(a)は、導光体1に向かって右側から緑(G)を入光し、導光体1に向かって左側から赤(R)を入光する場合に、この光に対応した絵柄パターンを形成する方法を示している。
図10(b)は、
図10(a)の一部分8の断面図で、光を反射する微細形状5の集合体を拡大して示している。
【0037】
緑の光3bを反射する微細形状5の形状は、入光する光3bの入射方向に対し、略垂直な方向に稜線を持つような、断面が三角の線状プリズムになっている。
図10(b)の微細形状5で反射した緑の光3bは、光出射面1eから出射する。赤の光3aを反射する微細形状5の形状は、入光する光3aの入射方向に対し、略垂直な方向に稜線を持つような、断面が三角の線状プリズムになっている。
図10(b)の微細形状5で反射した赤の光3aは、光出射面1eから出射する。階調値は、微細形状5の高さh、あるいは微細形状5のピッチpで制御する。
【0038】
このように、緑の光3bを反射する微細形状5と、赤の光3aを反射する微細形状5が入り混じって配置されている。
図11(a)は、緑(G)を、導光体1に向かって右側から入光する場合に、この光に対応した絵柄パターンを形成する他の方法を示している。
図5~
図10では、光を反射する微細形状5として断面が三角の線状プリズムで、長手方向に短いプリズムで構成したが、この
図11(a)では、断面が三角で長さJの短いプリズム形状をした微細形状5によって絵柄パターン4を形成した場合を示している。
図11(b)は、
図11(a)の一部分8の断面図で、緑の光3bは、微細形状5で反射されて光出射面1eから出射する。階調値は、微細形状5の高さh、あるいは微細形状5のピッチpで制御する。
【0039】
図12は、断面が三角の短いプリズムで絵柄パターンを作成する場合に、対向する2方向から異なる光を入光する一例を示したものである。入射光を反射させる反射面を、入射する光3a,3bそれぞれを反射させるように、それぞれの微細形状5を入り混じって配置させた。
【0040】
図13は、断面が三角の短いプリズムで絵柄パターンを作成する場合に、直交する2方向から異なる光を入光する一例を示したものである。入射光を反射させる反射面を、緑の光3b,青の光3cを反射させるように、それぞれの複数の微細形状5を入り混じって配置させた。
【0041】
なお、
図7~
図13で説明した絵柄パターンの作成方法は、一方向あるいは二方向から光を入射して絵柄パターンを作成する方法を記載したが、これらを組み合わせて三方向、四方向から異なる色を入射して絵柄パターン4を作成できる。
【0042】
例えば、導光体1に向かって右側から緑色を入光し、導光体1の上側から青を入光し、導光体1に向かって左側から赤を入光し、白を導光体1の下側から入光することで、赤、緑、青、白の異なる4色を入射することで絵柄パターン4を作成できる。
【0043】
また、絵柄パターンの一部を
図8(a)記載の断面が三角の線状プリズムを配置し、それ以外の部分を
図11(a)記載の断面が三角の短いプリズム形状を組み合わせて配置することもできる。
【0044】
階調値は、微細形状5の高さh、あるいは微細形状5の隣り合うプリズムの断面が三角形状の頂点間の距離であるピッチpに変換して制御する。例えば、階調値が大きい点は、高さhを大きくするか、あるいはピッチpを小さくする。微細形状5の反射面に対応するように赤,緑,青,白の各色を、導光体1の側面の各辺から入光することにより、色再現性が高い美しいカラー画像、多色画像を表現することができる。
【0045】
なお、上記の説明では、光を反射する微細形状5として断面が三角形のものを記載したが、台形形状であっても同様の効果が得られる。
また、絵柄パターンの光源から遠い場所ほど、変換した白,赤,緑,青の階調値I(w),I(r),I(g),I(b)より算出した微細形状の高さより、反射体である微細形状5の高さhを高くする、あるいは、変換した白,赤,緑,青の階調値I(w),I(r),I(g),I(b)より算出した微細形状のピッチpより、微細形状5のピッチpを小さくすることにより、光強度の面内ムラを抑制でき、結果として色ムラを小さくすることができる。
【0046】
白を反射する微細形状5は、
図9(b)の上下を反転させたものと同じである。階調値は、微細形状5の高さh、あるいは微細形状5のピッチpに変換して制御する。
また、赤,緑,青の光源の他に、白の光源を用いたことで、白色が他の色に見えることのない美しい白色を表示することができる。
【0047】
さらに
図1の説明では、導光体1の上方から青、導光体1に向かって右方向から緑、左方向から赤、導光体1の下方向から白としたが、各色の光の入光方向は限定されない。
つまり、絵柄パターン4の配色に応じて次のように決めることが好ましい。
【0048】
導光体1の各側面とそこに入光する光の色の関係は、絵柄パターン4におけるカラー表示の配色の中で、赤,青,緑,白のどれかの成分が多い部分に、その部分に近い側面から、前記成分の色を入光することが好ましい。具体的には、
図1に示したような風景絵柄パターンの場合のように、導光体1の上寄りに空の青色が多く、右寄りに木の緑色が多く、左寄りに太陽の赤色が多い場合は、これに合わせて、導光体1の上方の側面1cから青の光を入射させ、右側の側面1bから緑の光を入射させ、左側の側面1aから赤の光を入射することにより、美しいカラー表示が得られる。
【0049】
さらに、この実施の形態1の色分解方法に基づいて計算した階調値I(r),I(g),I(b),I(w)になるように各色の微細形状を構成した場合には、光源2Dに障害が発生して白の光3dが導光体1に入射しなくなった場合でも、表示させたい色よりは暗い色になってしまうが、I(r),I(g),I(b)の割合が変化しないので前記特定色の色味の変化を無くせる。
【0050】
(実施の形態2)
実施の形態1では表示させたい色の赤,緑,青の階調値Ir,Ig,Ibの全てが最大階調値255における階調値50以上の場合を説明したが、
図14(a)に示すようにIr,Ig,Ibの少なくともいずれかが最大階調値255における階調値50未満の場合には、導光体1に
図14(b)に示す階調値I(r),I(g),I(b),I(w)になるように各色の微細形状を構成することが好ましい。
【0051】
図14(a)は、最大階調値255において少なくともいずれかが最大階調値255における階調値50未満の場合で、この例では、Ig,Ibが50階調値未満である。このような場合には、A/100=0とし、
I(w)= min(Ir,Ig,Ib) ・A/100
=Ib・A/100
=0
Ir,Ig,IbをそのままI(r),I(g),I(b)に採用し、
I(r)=Ir
I(g)=Ig
I(b)=Ib
とすることで色味変化を小さくできた。
【0052】
例えば、最大階調値255における階調値50未満の色において、最大階調値を得るための微細形状5の高さが10μmに相当するとすれば、max(Ir,Ig,Ib)=50であっても、微細形状の高さとして10μm×50/256=1.95μmとなる。加工誤差は、高精度に加工しても防げない誤差として、数ミクロン生じる場合があるため、高さ1.95μmの微細形状は加工誤差により溝が正確に形成されないことが生じる。そのため、導光板の該当個所に所望の色味を表示できない場合がある。
【0053】
実施の形態1に記載したように、I(r),I(g),I(b),I(w)に階調変換すると、微細形状の高さは1.95μmよりも小さくなり、加工誤差により溝が形成されないことが生じやすくなってしまう。したがって、少なくともいずれかが階調値50未満のような微細形状の高さが低い色は、赤,緑,青の階調値Ir,Ig,Ibをそのまま使用したほうが良い。
【0054】
図14(a)に示した具体例は、Ir,Ig,Ib階調値が
Ir=50
Ig=45
Ib=40
の茶色の場合で、このような場合には、
図14(b)に示すように、
I(w)=0
I(r)=50
I(g)=45
I(b)=40
となるように、微細形状5の高さh、あるいは微細形状5の隣り合うプリズムの断面が三角形状の頂点間の距離であるピッチpに変換して制御する
このように元の赤,緑,青の成分が低い場合、白の成分に分解しないことで、加工誤差の色味変化を受けにくく、美しいカラー表示が得られる。
【0055】
なお、茶色の例を説明したが、黒っぽい赤、黒っぽい緑、黒っぽい青にも有効であった。
(実施の形態3)
実施の形態1では表示させたい色の赤,緑,青の階調値Ir,Ig,Ibの全てが階調値50以上である階調変換の例を説明したが、階調の値では無くてIr,Ig,Ibの間の階調差が5%以下の色は白と看做し、
I(w)= max(Ir,Ig,Ib)
I(r)=0
I(g)=0
I(b)=0
と変換することで、綺麗な白色を確保できる。
【0056】
詳しくは、最大階調値255においてIr,Ig,Ibの階調値が0以上256以下の全ての色おいて、
{ max(Ir,Ig,Ib)- min(Ir,Ig,Ib)}/min(Ir,Ig,Ib)・100
が0以上5以下となるような、赤,緑,青の階調差が5%以下の色は、白と看做して変換する。
【0057】
複数人に赤,緑,青の階調値が等しい白色から、赤,緑,青のそれぞれの階調を変化させて色の見え具合の変化をテストしたところ、赤,緑,青の最大階調と最小階調の差が5%より大きくなると白色に見えなくなるという結果から、赤,緑,青の階調値Ir,Ig,Ibの階調差が0%以上5%以下の色は白色として扱えると判断できる。
【0058】
図15(a)では、僅かに青味がかった空色のIr=Ig=245,Ib=255を階調変換する例を示している。この赤,緑,青の全部の階調値が50以上の赤,緑,青の階調差は、
{ max(245,245,255)- min(245,245,255)}/ min(245,245,255)×100
={255-245}/245×100 =4%
なので、
図15(b)に示すように、白色に見える色の場合は、赤,緑,青の成分に分解せずに
I(w)= max(245,245,255)= 255
I(r)=0
I(g)=0
I(b)=0
となるように、各色の微細形状の微細形状5の高さh、あるいは微細形状5の隣り合うプリズムの断面が三角形状の頂点間の距離であるピッチpに変換して制御することによって、白色に色味がつくことなく、綺麗な白色を表示できた。
【0059】
また、赤,緑,青の全部の階調値が50以下の赤,緑,青の階調差が5%以下の色については灰色と看做して、(w)= max(Ir,Ig,Ib)、I(r)=0、I(g)=0,I(b)=0に変換することで、綺麗な灰色を確保できる。
【0060】
(実施の形態4)
実施の形態2,3は実施の形態1と同時に実施することで、より白色が綺麗で、白色以外も綺麗な絵柄を実現することができる。
【0061】
また、実施の形態1,2,3を同時に実施することで、より白色が綺麗で、白色以外も綺麗な絵柄を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、各種の電化製品の表示パネル、ゲーム装置の表示パネル、サイネージの表示パネル等に適用できる。
【符号の説明】
【0063】
1 導光体
1e 光出射面
1f 後壁面
2A,2B,2C,2D 光源
3a 導光体に入射する赤色の光
3b 導光体に入射する緑色の光
3c 導光体に入射する青色の光
3d 導光体に入射する白色の光
4 絵柄パターン
5 光を反射する微細形状
h 微細形状の高さ
p 微細形状のピッチ