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特許7190721非水電解液電池用ガスケットおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】非水電解液電池用ガスケットおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/193 20210101AFI20221209BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20221209BHJP
【FI】
H01M50/193
H01M50/184 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022049306
(22)【出願日】2022-03-25
(65)【公開番号】P2022159068
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2021060621
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021061011
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591252622
【氏名又は名称】新生化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】宮田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】久保 直人
(72)【発明者】
【氏名】岡部 麻記
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 与一
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 賢一
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-198292(JP,A)
【文献】特開2001-202935(JP,A)
【文献】国際公開第2014/103813(WO,A1)
【文献】特開2008-269954(JP,A)
【文献】特開2000-195475(JP,A)
【文献】特開2021-163578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形により形成される非水電解液電池用ガスケットにおいて、
ポリプロピレンおよびポリフェニレンエーテルをアロイ化した樹脂を主成分に含み、
前記主成分であるポリプロプレン対ポリフェニレンエーテルの質量比が25対75~80対20であることを特徴とする、非水電解液電池用ガスケット。
【請求項2】
前記主成分である、前記ポリプロピレンと前記ポリフェニレンエーテルの合計100質量部に対して、ブロック共重合体を5.0~30.0質量部を含み、
前記ブロック共重合体は、ビニル芳香族化合物ブロックとイソプレン重合体ブロックとを含む水素添加物であり、
前記ブロック共重合体中のビニル芳香族化合物単位の含有量が50質量%以上80質量%未満であることを特徴とする、請求項1に記載の非水電解液電池用ガスケット。
【請求項3】
あらかじめポリプロピレン、ポリフェニレンエーテル、および成形助剤を含む材料を二軸混練押し出し機によって混練し、二軸混練押し出し機から吐出された樹脂組成物を冷却固化させたものを用いて、射出成形によって製造する方法であって、
前記材料は、ポリプロプレン対ポリフェニレンエーテルの質量比が25対75~80対20であり、
前記ポリプロピレンと前記ポリフェニレンエーテルの合計100質量部に対して、ブロック共重合体を5.0~30.0質量部を含み、
前記ブロック共重合体は、ビニル芳香族化合物ブロックとイソプレン重合体ブロックとを含む水素添加物であり、
前記ブロック共重合体中のビニル芳香族化合物単位の含有量が50質量%以上80質量%未満であることを特徴とする、ポリプロピレンおよびポリフェニレンエーテルをアロイ化した樹脂を主成分に含む非水電解液電池用ガスケットの製造方法。
【請求項4】
前記射出成形の際の金型温度を50~120℃にすることを含む、請求項3に記載の非水電解液電池用ガスケットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液電池に用いられる樹脂製の非水電解液電池用ガスケットおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解液電池(以下、代表してリチウム電池と呼ぶ。)とは、電解液が有機溶剤である電池の総称であり、充電が可能なリチウムイオン電池、および充電ができないリチウム電池などが該当する。リチウム電池はバックアップ用電源や移動可能な電子機器の電源として活用されている。近年自動車へ電子機器が多く使われており、事故や故障などでバッテリーや回生電源が失われた場合でもSOS信号を発信するためにリチウム電池の使用が検討されている。
【0003】
リチウム電池の正極と負極との絶縁を目的にガスケットが使用されている。ガスケットに使用される素材は絶縁性があり、かつ、電解液などに侵されない樹脂素材が使用されている。リチウム電池用ガスケットに使用されている具体的な樹脂材料としては、ポリプロピレン、もしくはPPS樹脂(ポリフェニレンサルファイド)が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-156210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、リチウム電池用ガスケットに使用されているポリプロピレンは成形加工性が良く廉価であり、民生用リチウム電池として広く使用されている。しかしながら、ポリプロピレンは耐熱性が低いために自動車の室内に常時保管するためには安全性に課題があった。他方のPPS樹脂は耐熱性が高いことにより、自動車の内装やエンジンまわり、火災報知器の電源など特に使用環境温度が高くなることを有する場合に使用されている。しかしながら、PPS樹脂は高価であり、かつウエルド強度が低い素材であるために特殊な成形加工法を使用しないとガスケットが製造できない課題があった。
【0006】
本発明は、ポリプロピレンより耐熱性が高く、かつPPS樹脂より廉価でかつ成形性が良い樹脂材料で作成した非水電解液電池用ガスケット、およびその製造方法を確立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが本課題に対して鋭意検討したところ、ポリプロピレンへポリフェニレンエーテルを添加して、アロイ化した樹脂組成物を材料として非水電解液電池用ガスケットへ使用することにより、ポリプロピレンより耐熱温度が高く、PPS樹脂よりも廉価で、かつ、成形性が良好である事を見出し、本発明を完成させた。
【0008】
また、ポリプロピレン対ポリフェニレンエーテルとの質量比率が25対75~80対20の範囲である材料を使って射出成形によって作り出した前記ガスケットは、ポリプロピレンで作られたガスケットの使用環境温度以上でも長期にわたって使用可能で有ることを見出して本発明を完成させた。
前記ポリプロピレンと前記ポリフェニレンエーテルの合計100質量部に対して、ブロック共重合体を5.0~30.0質量部を含み、前記ブロック共重合体は、ビニル芳香族化合物ブロックとイソプレン重合体ブロックとを含む水素添加物であり、前記ブロック共重合体中のビニル芳香族化合物単位の含有量が50質量%以上80質量%未満とした樹脂組成物をアロイ化したものを材料として射出成形法によって作成したガスケットは、耐熱温度が高く、カシメ圧縮に対する耐性が良好であることを見出して本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明の非水電解液電池用ガスケットはポリプロピレンとポリフェニレンエーテルとを混合したアロイ材を主成分としたことにより、ポリプロピレンより耐熱温度が高く、PPS樹脂よりも成形性が良く且つ廉価であるという特長を持たせることができる。さらに本発明の非水電解液電池用ガスケットは成形加工性も良好でありながら非水電解液電池として例えばリチウム電池に求められている機械物性や耐薬品性も備えたものになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態にかかるガスケットを使用する扁平状密閉電池の概略構成を示す断面図である。
図2図2(a)は、プレス成形によって作製された封口板を示す断面図であり、図2(b)は、プレス成形によって作製された外装缶を示す断面図である。
図3図3は、外装缶の内側面にガスケットをインサート成形で一体成形したものを示す断面図である。
図4図4は、封口板(負極缶)に外装缶(正極缶)を嵌合して外装缶の側壁をかしめる前の状態を示す断面図である。
図5図5は、封口板(負極缶)に外装缶(正極缶)を嵌合して外装缶の側壁をかしめる状態を示す部分拡大断面図である。
図6図6は、実施例で用いたダンベル試験片の形状および寸法を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態を詳しく説明する。なお、各図に於いて同一または同等部分については同一の符号を付している。
【0012】
本発明の非水電解液電池用ガスケットを適用した扁平状の密閉電池の一実施形態としてコイン型リチウム電池を示す。なお、本発明は、リチウム電池に限らず、各種の非水電解液電池のガスケットに適用することができる。
図1に示すように、コイン型電池1は、側壁21を有する有底円筒状の正極缶となる外装缶2と、該外装缶2の開口を覆い、外装缶2の内方に配置される負極缶となる逆皿状の封口板3と、外装缶2の側壁21と封口板3の筒部31との間に配置されるガスケット4と、外装缶2及び封口板3の間に形成される空間内に収納される発電要素5とを備えている。コイン型電池1は、外装缶2と封口板3とを嵌め合わすことによって、全体が扁平なコイン状に形成される。コイン型電池1の外装缶2と封口板3との間に形成される空間内には、発電要素5以外に、非水電解液(図示省略)も封入されている。
【0013】
外装缶2は、ステンレスなどの金属材料からなり、プレス成形によって有底円筒状に形成されている。外装缶2は、円形状の底面部22と、その外周に該底面部22と連続して形成される円筒状の側壁21とを備えている。側壁21は、図4に示すように、封口板3に向けてかしめる前の状態では、縦断面視で、底面部22に対して外側に広がるテーパー状に形成される。外装缶2は、封口板3との間にガスケット4を挟んだ状態で、側壁21の開口端側が内側に曲げられて、該封口板3の外周部に対してかしめられることにより、側壁21の根元部分が略垂直になる。
【0014】
封口板3も、外装缶2と同様、ステンレスなどの金属材料からなり、プレス成形によって有底円筒状に形成されている。封口板3は、円形状の平面部32と、その外周に該平面部32と連続して形成される円筒状の筒部31とを備えている。この筒部31は、平面部32の縁部から拡径する基端部31aと、基端部31aからさらに拡径する段部31bと、段部31bから下方に向けてほぼ垂直に延びる開放部31cとを備える。図1に示すように、この段部31bに対して、外装缶2の側壁21の開口端部が折り曲げられてかしめられる。
【0015】
ガスケット4は、外装缶2の側壁21の内側の開口端から底面部22上面の縁部に亘ってインサート成形によりリング状に形成されている。例えば、プレス成形によって外装缶2及び封口板3をそれぞれ形成し(図2(a)、図2(b)参照)、次いで外装缶2の側壁21の内面側にガスケット4を射出成形により一体成形する(図3参照)。なお、ガスケット4は、封口板3とインサート成形してもよいし、また、単独に成形されて外装缶2と封口板3との間に組み付けるようにしてもよい。ガスケット4は、図5に示すように、外装缶2の側壁21における内側の開口端から底面部22近くまで至る外側シール壁部41と、外側シール壁部41に連続し外装缶2の底面部22上面の縁部に配置される底部シール部42と、この底部シール部42に形成され、封口板3の筒部31先端部が嵌合する環状凹部43と、環状凹部43の一部を形成し、外装缶2の側壁21開口部に向けて突出する環状リブ44とが形成されている。
【0016】
ガスケット4の外側シール壁部41は、図3及び図4に示すように、外装缶2の側壁21の内面全面に密着させて根元部分を除き均一の厚みで形成されて、略円筒状に形成されている。また、外側シール壁部41は、外装缶2の側壁21のテーパーに沿って射出成形されているので、開口端側へ向かうほど、内径が大きくなるように、全体としてテーパー状に形成されている。
【0017】
外側シール壁部41は、外装缶2の側壁21をかしめることにより、封口板3の筒部31の開放部31c及び段部31bを覆うとともに、基端部31aの段部31b側に押し付けられる。外側シール壁部41のうち、封口板3に対して外装缶2がかしめられた際に筒部31の段部31bに対向する部分は、図1及び図5に示すように、外装缶2の側壁21の開口端部と筒部31の段部31bによって圧縮される。これにより、外側シール壁部41によって、外装缶2と封口板3との間がシールされる。
【0018】
ガスケット4の底部シール部42には、環状凹部43と環状リブ44が形成されており、環状凹部43は、封口板3における筒部31の開放部31cの厚みとほぼ同じ溝幅に形成されている。なお、環状凹部43の溝幅は、筒部31の開放部31cの厚みよりも大きくしてもよいし、やや狭くしてもよい。環状リブ44は、その高さがガスケット4の全体高さの0%超80%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは、環状リブ44の高さはガスケット4の全体高さの10%以上50%以下とすることが好ましい。このように環状リブ44の高さを設定することにより、ガスケット4を形成する樹脂量の無駄をできるだけ少なくして、シール効果を上げることができる。
【0019】
この環状凹部43に封口板3における筒部31の開放部31cの先端部を圧入状態で嵌め込むことにより、外装缶2に対する封口板3の位置決めを容易に行えるし、環状凹部43に筒部31先端部を圧入するので、外装缶2と封口板3との間が確実にシールされる。また、環状リブ44によりガスケット4の強度も向上される。
【0020】
発電要素5は、正極活物質等を円盤状に成形した正極材51(電極材)と、負極活物質の金属リチウムまたはリチウム合金を円盤状に形成した負極材52と、不織布製のセパレータ53とを備えている。図1に示すように、外装缶2の内方に正極材51が位置付けられ、封口板3の内方に負極材52が位置付けられている。正極材51と負極材52との間にセパレータ53が配置されている。
【0021】
正極材51は、正極活物質として二酸化マンガンを含有している。この正極材51は、二酸化マンガンに、黒鉛、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びヒドロキシプロピルセルロースを混合して調整された正極合剤を円盤状に形成したものであり、所定の剛性及び導電性を有するステンレス鋼等によって構成された正極リング54で保持されている。
【0022】
正極リング54は、正極材51の側面に接する円筒部54aと、該円筒部54aの一端側から該円筒部54aの内方に向かって延びて正極材51の底面に接する円環状のフランジ部54bとが一体形成されたものである。このような構成の正極リング54によって、該正極リング54内の正極材51の径方向及び一端側への変形を規制することができる。そして、正極リング54の円筒部54aの他端側は開放された状態となっているので、正極材51が自由に膨張できるようになっている。よって、放電時に、負極材52の厚みが小さくなっても、正極材51は正極リング54に沿って負極材52側へ膨張するため、該正極材51と負極材52とが離間するのを防止できる。
【0023】
セパレータ53は、ポリブチレンテレフタレート製の繊維を素材とする不織布を用いて構成される。このセパレータ53は、コイン型電池1内で非水電解液によって含浸されている。
【0024】
非水電解液は、例えば、プロピレンカーボネイトと1,2-ジメトキシエタンとを混合した溶液にLiClOを溶解した溶液である。
【0025】
以上の構成において、図5に白抜きの矢印で示すように、封口板3の段部31bに対して外装缶2の側壁21の開口端部をかしめると、ガスケット4の外側シール壁部41は、外装缶2の側壁21の開口端部によって圧縮されるとともに、該筒部31側に押し付けられる。これにより、外側シール壁部41は、外装缶2の側壁21と封口板3の筒部31との間に挟みこまれてシールとして機能する。また、外装缶2の側壁21のかしめにより、封口板3の筒部31が下方に向けて押圧されて、筒部31が環状凹部43内で下方に押し付けられて、ガスケット4の底部シール部42により外装缶2の底面部22と封口板3の筒部31との間がシールされる。このように、外側シール壁部41の筒部31の段部31b上に位置する部分と、ガスケット4の底部シール部42とにより、封口板3と外装缶2との間に形成される空間を外部の空間に対してシールされて隔離状態が維持される。
【0026】
(本実施形態のガスケット)
本実施形態のガスケット4は、ポリプロピレン樹脂(PP)とポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)とをアロイ化した樹脂組成物を材料として用いて射出成形法で作成される。本実施形態に使用するポリプロピレンとポリフェニレンエーテルのアロイはポリプロピレン対ポリフェニレンエーテルの質量比が25対75から80対20の範囲であれば、耐熱性が高くかつ成形性が良好であるために好ましい。その際のアロイの状態はポリプロピレンの海にポリフェニレンエーテルの島が微細に分散されて本発明の目的のガスケットの性能が現れる。さらにポリプロピレン対ポリフェニレンエーテルの質量比が25対75から80対20の範囲であれば耐熱性、伸びが有ってシール性が良好でありさらに好ましい。ポリプロピレン対ポリフェニレンエーテルの質量比でポリフェニレンエーテル樹脂の比が20より低い場合、市場が要求する耐熱性に対して不足する虞があるために好ましくない。ポリプロピレン対ポリフェニレンエーテルの質量比でポリフェニレンエーテル樹脂の比が75より高い場合、耐熱性は良好であるがガスケットの柔らかさが無くなり、電池製造時にカシメる際に割れが発生する懸念が有るために好ましくない。さらに、ポリフェニレンエーテルの質量比が75より多くなると、成形性が著しく劣りガスケットが成形しにくくなる。なお、ポリプロピレン対ポリフェニレンエーテルの質量比において、ポリプロピレンが25質量部より多く、ポリフェニレンエーテルが75質量部より少ない質量比とするのが好ましく、この場合、ガスケット材料として引張伸び率が適切な範囲にあり且つ成形性も良好となる。
【0027】
また、本実施形態のガスケット4は、(a)ポリプロピレン樹脂と(b)ポリフェニレンエーテル樹脂の合計100質量部に対して、(c)ブロック共重合体を5.0~30.0質量部を含むものとすることができる。前記(c)成分のブロック共重合体は、ビニル芳香族化合物ブロック(c1)とイソプレン重合体ブロック(c2)とを含む水素添加物であり、(c)ブロック共重合体中のビニル芳香族化合物単位の含有量が50質量%以上80質量%未満とする。このような構成とすることにより、熱および荷重がかかっても、十分に高い靭性を有するガスケットが得られる。すなわち、(a)ポリプロピレン樹脂を主要成分として用いることにより、ガスケットの延性が向上し、引張り呼び歪を高くすることができると推測される。また、(b)ポリフェニレンエーテル樹脂を主要成分として用いることにより、ガスケットにおいて、(b)成分のポリフェニレンエーテル樹脂が本来的に有している高い耐熱性や機械的強度を効果的に発揮させることができると推測される。さらに、(c)ブロック共重合体によってガスケットの靭性と耐衝撃性を高くすることができると推測される。そして、(c)成分のブロック共重合体のビニル芳香族化合物ブロック(c1)部分が、(b)ポリフェニレンエーテル樹脂と相溶しやすいことから、(c)ブロック共重合体が(b)ポリフェニレンエーテル樹脂中に分散しやすくなり、剛直な(b)ポリフェニレンエーテル樹脂領域に靭性と耐衝撃性を付与することができると推測される。加えて、イソプレン重合体ブロック(c2)はエチレン-プロピレンの交互共重合構造をとるため、(a)ポリプロピレン樹脂に対する相溶性にも優れると共に、理想的なゴム的な性質を示すと推測される。特に、上記(a)~(c)成分の配合率と、(c)ブロック共重合体におけるビニル芳香族化合物単位の割合を精密に調整することにより、熱および荷重がかかっても、十分な靭性を有するガスケットが提供できたと推測される。よって、本実施形態によれば、成形加工性が良好でありながら、耐熱性、機械的特性に優れた非水電解液電池用ガスケットが得られる。非水電解液電池は、水溶液系二次電池以上に電池内への水分の侵入を厳密に防止する必要があるが、本実施形態によれば、シール性、防爆安全性にも優れた非水電解液電池用ガスケットが得られる。
【0028】
<(a)ポリプロピレン樹脂>
本実施形態のガスケットは、(a)ポリプロピレン樹脂を含む。ポリプロピレン樹脂を含むことにより、得られるガスケットの延性を向上させることができる。本実施形態で用いる(a)ポリプロピレン樹脂は、プロピレンホモポリマーであるか、プロピレンと他のα-オレフィン(例えば、エチレン、プテン-1、ヘキセン-1等)を共重合して得られる共重合体(ただし、プロピレンの割合が50質量%超であり、80質量%以上であることが好ましい。)であることが好ましく、プロピレンホモポリマーがより好ましい。
【0029】
本実施形態においては、(a)ポリプロピレン樹脂は、JISK7210に準じて測定した、荷重2.16kgおよび温度230℃におけるメルトフローレイト(MFR)が8.0g/10分以下のポリプロピレン樹脂と、前記MFRが10.0g/10分以上のポリプロピレン樹脂とを含むことが好ましい。前記MFRが8.0g/10分以下のポリプロピレン樹脂を配合することにより、樹脂組成物の流動性が改善し、成形性がより向上する傾向にあり、前記MFRが10.0g/10分以上のポリプロピレン樹脂を配合することにより、得られるガスケットの引張特性や曲げ特性といった機械物性向上する傾向にあり、特に、引張り呼び歪がより向上する傾向にある。前記MFRが8.0g/10分以下のポリプロピレン樹脂のMFRが2.0g/10分以上であることが好ましく、4.0g/10分以上であることがより好ましく、また、7.0g/10分以下であることが好ましく、6.5g/10分以下であることがより好ましい。また、前記MFRが10.0g/10分以上のポリプロピレン樹脂のMFRは、11.0g/10分以上であることが好ましく、11.5g/10分以上であることがより好ましく、また、22.0g/10分以下であることが好ましく、16.0g/10分以下であることがより好ましい。さらに、前記MFRが8.0g/10分以下のポリプロピレン樹脂と前記MFRが10.0g/10分以上のMFRの差は、2.0g/10分以上であることが好ましく、4.0g/10分以上であることがより好ましく、また、10.0g/10分以下であることが好ましく、8.0g/10分以下であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、成形性と引張呼び歪を共に高い水準で示す樹脂組成物となる傾向にある。前記MFRが8.0g/10分以下のポリプロピレン樹脂と前記MFRが10.0g/10分以上のポリプロピレン樹脂の質量比率は、1:1~5:1であることが好ましく、1.5:1~4:1であることがより好ましく、2:1~4:1であることがさらに好ましい。なお、本実施形態においては、ポリプロピレン樹脂が1種のみでもよく、ポリプロピレン樹脂が1種の場合、前記MFRが2.0~16.0g/10分以下のポリプロピレン樹脂を用いることが好ましい。
【0030】
<(b)ポリフェニレンエーテル樹脂>
本実施形態のガスケットは、(b)ポリフェニレンエーテル樹脂を含む。ポリフェニレンエーテル樹脂を含むことにより、ポリフェニレンエーテル樹脂が本来的に有する高い耐熱性や機械的強度を有するガスケットが得られる。本実施形態のガスケットに用いられる(b)ポリフェニレンエーテル樹脂は、公知のポリフェニレンエーテル樹脂を用いることができ、例えば、下記式(1)で表される構成単位を主鎖に有する重合体が例示される。(b)ポリフェニレンエーテル樹脂は、単独重合体または共重合体のいずれであってもよい。
【0031】
【化1】

(式(1)中、2つのRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、第1級もしくは第2級アルキル基、アリール基、アミノアルキル基、ハロゲン化アルキル基、炭化水素オキシ基、またはハロゲン化炭化水素オキシ基を表し、2つのRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、第1級もしくは第2級アルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、炭化水素オキシ基、またはハロゲン化炭化水素オキシ基を表す。ただし、2つのRがともに水素原子になることはない。)
【0032】
およびRとしては、それぞれ独立に、水素原子、第1級もしくは第2級アルキル基アリール基が好ましい。第1級アルキル基の好適な例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-アミル基、イソアミル基、2-メチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、2-、3-もしくは4-メチルペンチル基またはヘプチル基が挙げられる。第2級アルキル基の好適な例としては、例えば、イソプロピル基、sec-ブチル基または1-エチルプロピル基が挙げられる。特に、Rは第1級もしくは第2級の炭素数1~4のアルキル基またはフェニル基であることが好ましい。Rは水素原子であることが好ましい。
【0033】
好適な(b)ポリフェニレンエーテル樹脂の単独重合体としては、例えば、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジプロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-エチル-6-メチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-プロピル-1,4-フェニレンエーテル等の2,6-ジアルキルフェニレンエーテルの重合体が挙げられる。共重合体としては、2,6-ジメチルフェノール/2,3,6-トリメチルフェノール共重合体、2,6-ジメチルフェノール/2,3,6-トリエチルフェノール共重合体、2,6-ジエチルフェノール/2,3,6-トリメチルフェノール共重合体、2,6-ジプロピルフェノール/2,3,6-トリメチルフェノール共重合体等の2,6-ジアルキルフェノール/2,3,6-トリアルキルフェノール共重合体、ポリ(2,6-ジメチルー1,4-フェニレンエーテル)にスチレンをグラフト重合させたグラフト共重合体、2,6-ジメチルフェノール/2,3,6-トリメチルフェノール共重合体にスチレンをグラフト重合させたグラフト共重合体等が挙げられる。
【0034】
本実施形態における(b)ポリフェニレンエーテル樹脂としては、特に、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、2,6-ジメチルフェノール/2,3,6-トリメチルフェノールランダム共重合体が好ましい。
【0035】
(b)ポリフェニレンエーテル樹脂は、クロロホルム中で測定した30℃の固有粘度が0.2~0.8dL/gのものが好ましく、0.3~0.6dL/gのものがより好ましい。固有粘度を0.2dL/g以上とすることにより、樹脂組成物の機械的強度がより向上する傾向にあり、0.8dL/g以下とすることにより、流動性がより向上し、成形加工がより容易になる傾向にある。また、固有粘度の異なる2種以上の(b)ポリフェニレンエーテル樹脂を併用して、前記の固有粘度の範囲としてもよい。
【0036】
本実施形態に使用される(b)ポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法に従って、例えば、2,6-ジメチルフェノール等のモノマーをアミン銅触媒の存在下、酸化重合する方法を採用することができ、その際、反応条件を選択することにより、固有粘度を所望の範囲に制御することができる。固有粘度の制御は、重合温度、重合時間、触媒量等の条件を選択することにより達成できる。
【0037】
本実施形態のガスケットを形成する樹脂組成物は、(a)ポリプロピレン対(b)ポリフェニレンエーテルの質量比が25対75~80対20とし、(b)ポリフェニレンエーテル樹脂を樹脂組成物中に75質量部以下の割合で含み、60質量部以下の割合で含むことが好ましく、さらには37質量部以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより得られるガスケットの耐熱性(特に、荷重たわみ温度)や曲げ特性をより向上させることができる。下限については、例えば、20質量部以上の割合で含むことが好ましい。本実施形態において、(b)ポリフェニレンエーテル樹脂は1種を単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。耐熱性の指標となる荷重たわみ温度が60℃以上の前記樹脂組成物であれば、その樹脂組成物で作成した本実施形態のガスケットは、使用環境温度が高い状況で使用される非水電解液電池に適用することができる。好ましくは、荷重たわみ温度が100℃以上の前記樹脂組成物で作成した本実施形態のガスケットは、高温環境の中でも高い信頼性が要求される非水電解液電池に使用することができる。前記荷重たわみ温度の測定方法は、後述する実施例(評価1)が参照される。
【0038】
また、本実施形態のガスケットを形成する樹脂組成物の他の形態として、(a)ポリプロピレン樹脂20.0~50.0質量%、(b)ポリフェニレンエーテル樹脂50.0~80.0質量%の割合で含むものとすることができる。また、ポリフェニレンエーテル樹脂を樹脂組成物中に38.0質量%以上の割合で含むことが好ましく、40.0質量%以上の割合で含むことがより好ましく、さらには42.0質量%以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形体の耐熱性(特に、荷重たわみ温度)や曲げ特性をより向上させることができる。上限については、例えば、76.0質量%以下の割合で含むことが好ましく、70.0質量%以下の割合で含むことがより好ましく、65.0質量%以下の割合で含むことがさらに好ましく、60.0質量%以下の割合で含むことが一層好ましく、55.0質量%以下の割合で含むことがより一層好ましく、50.0質量%以下の割合で含むことがさらに一層好ましい。
本実施形態において、ポリフェニレンエーテル樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0039】
<(c)ブロック共重合体>
本実施形態のガスケットは、(c)ブロック共重合体を(a)ポリプロピレン樹脂と(b)ポリフェニレンエーテル樹脂の合計100質量部に対して、5.0~30.0質量部の割合で含む。(c)ブロック共重合体は、ビニル芳香族化合物ブロック(c1)とイソプレン重合体ブロック(c2)とを含む水素添加物であり、(c)成分のブロック共重合体中のビニル芳香族化合物単位の含有量が50質量%以上80質量%未満である。このような構成とすることにより、得られるガスケットが高温下に晒されても、引張り呼び歪を高くすることができる。(c)成分のブロック共重合体は、ビニル芳香族化合物ブロック(c1)を含む。ビニル芳香族化合物ブロック(c1)は、(b)ポリフェニレンエーテル樹脂との相溶性に優れるため、(c)ブロック共重合体の(b)ポリフェニレンエーテル樹脂中への分散性を向上させることができ、得られるガスケットの靭性と耐衝撃性を向上させることができる。また、樹脂組成物にエラストマー成分を配合すると、耐熱性が低下する傾向にあるが、本実施形態で用いる(c)成分のブロック共重合体は、ビニル芳香族化合物ブロック(c1)を主成分とするため、樹脂組成物から得られるガスケットの耐熱性の低下を効果的に抑制できる。
【0040】
ビニル芳香族化合物ブロック(c1)は、ビニル芳香族化合物単位(好ましくはスチレン単位)を主成分とするものであり、ビニル芳香族化合物ブロック(c1)の好ましくは90質量%以上が、より好ましくは95質量%以上が、さらに好ましくは98質量%以上がビニル芳香族化合物単位である。ビニル芳香族化合物としては、ビニル基と芳香環基を有する化合物であり、CH =CH-L-Arで表される化合物であることが好ましい。ここで、Lは単結合または2価の連結基であり、単結合または式量14~100の2価の連結基であることが好ましく、単結合または式量14~50の2個の連結基であることがより好ましく、単結合であることがさらに好ましい。Lが2価の連結基の場合、脂肪族炭化水素基または、脂肪族炭化水素基と-O-との組み合わせからなる基であることが好ましい。ここで、式量とは、芳香族ビニル化合物のLに相当する部分の1モル当たりの質量(g)を意味する。Arは芳香環基であり、置換または無置換の、ベンゼン環基またはナフタレン環(好ましくはベンゼン環)であることが好ましく、無置換のベンゼン環基であることがさらに好ましい。
【0041】
芳香族ビニル化合物は、分子量104~600の化合物であることが好ましく、分子量104~400の化合物であることがより好ましい。芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン、トリブロモスチレン等に由来するスチレン系モノマー(スチレン誘導体)が挙げられ、特にスチレンが好ましい。
【0042】
また、(c)成分のプロック共重合体は、イソプレン重合体ブロック(c2)を含む。イソプレン重合体ブロック(c2)は、水添によってエチレンとプロピレンの交互共重合構造となり、柔らかく伸びるため、引張り呼び歪を効果的に向上させることができる。イソプレン重合体ブロック(c2)は、イソプレン単位を主成分とするものであり、イソプレン重合体ブロック(c2)の好ましくは90質量%以上が、より好ましくは95質量%以上が、さらに好ましくは98質量%以上が、イソプレン単位である。
【0043】
本実施形態では、(c)成分のブロック共重合体中のビニル芳香族化合物単位の含有量が50質量%以上であり、55質量%であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、耐熱性を低下させることなく、得られるガスケットの靭性と耐衝撃性を効果的に向上させることができる。また、(c)成分のブロック共重合体中のビニル芳香族化合物単位の含有量は、80質量%未満であり、75質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、66質量%以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、得られるガスケットの高温下における引張り呼び歪がより向上する傾向にある。ここで、ビニル芳香族化合物単位とは、ビニル芳香族化合物ブロック(c1)に含まれるビニル芳香族化合物単位に限られず、(c)プロック共重合体のいずれかの位置に含まれるビニル芳香族化合物単位を含む趣旨である。
【0044】
本実施形態で用いる(c)成分のブロック共重合体は、好ましくは分子の少なくとも一方の末端に、より好ましくは分子の両末端に、ビニル芳香族化合物ブロック(c1)を有することが好ましい。本実施形態で用いる(c)成分のブロック共重合体は、ビニル芳香族化合物ブロック(c1)とイソプレン重合体ブロック(c2)以外の他の領域を含んでいてもよいが、前記他の領域の割合は、(c)ブロック共重合体の5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。(c)ブロック共重合体の具体例としては、スチレン/イソプレン共重合体水素添加物(SEP)、スチレン/イソプレン/スチレン共重合体水素添加物(SEPS)、スチレン/イソプレン/ブチレン/スチレン共重合体水素添加物(SEEPS)が好ましく、スチレン/イソプレン/スチレン共重合体水素添加物(SEPS)がより好ましい。より具体的には、(c)ブロック共重合体は、下記式(2)で表される構造を含むことが好ましく、下記式(2)で表される構造が全体の95質量%以上を占めることがより好ましく、下記式(2)で表される構造が全体の99質量%以上を占めることがさらに好ましい。
【化2】

(式(2)中、lとmとnは、それぞれ、正の数であり、lで表される単位とnで表される単位の合計は、スチレン単位の質量割合が50質量%以上80質量%未満となる値である。)
【0045】
本実施形態においては、(c)成分のブロック共重合体は、JISK7210に準じた荷重2.16kgおよび温度230℃において測定した際に流動することが好ましい。具体的には、メルトフローレイト(MFR)が0.1g/10分以上であることが好ましく、0.15g/10分以上であることがさらに好ましく、0.3g/10分以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物の流動性が改善し、成形性がより向上する傾向にある。また、前記MFRは、7.0g/10分以下であることが好ましく、5.0g/10分以下であることがより好ましく、3.0g/10分以下であることがさらに好ましく、2.0g/10分以下であることが一層好ましく、1.0g/10分以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物全体の靭性と耐衝撃性がより向上する傾向にある。
【0046】
<(a)~(c)成分のブレンド比率>
本実施形態のガスケットは、(a)ポリプロピレン樹脂25~80質量部と(b)ポリフェニレンエーテル樹脂75~20質量部の合計100質量部に対して、(c)ブロック共重合体を5.0~30.0質量部を含む。
【0047】
(a)ポリプロピレン樹脂と(b)ポリフェニレンエーテル樹脂の質量比率((a):(b))は、25~80質量部:75~20質量部であればよく、29~80質量部:71~20質量部であることが好ましく、40~80質量部:60~20質量部であることがより好ましく、63~80質量部:37~20質量部であることがさらに好ましい。上記比率とすることにより、得られるガスケットにおいて、(b)成分のポリフェニレンエーテル樹脂が有する耐熱性を効果的に維持しつつ、(a)成分のポリプロピレン樹脂が有する延性を効果的に発揮させることができる。
【0048】
また、本実施形態で用いる樹脂組成物の他の形態として、(b)ポリフェニレンエーテル樹脂50.0~80.0質量部と(a)ポリプロピレン樹脂50.0~20.0質量部の合計100質量部に対して、(c)ブロック共重合体を5.0~30.0質量部を含むことが好ましい。
前記他の形態において、(b)ポリフェニレンエーテル樹脂と(a)ポリプロピレン樹脂の質量比率((b):(a))は、50.0~70.0質量部:50.0~30.0質量部であることが好ましく、50.0~65.0質量部:50.0~35.0質量部であることがより好ましく、50.1~61.0質量部:49.9~39.0質量部であることがさらに好ましく、50.1~59.9質量部:49.9~40.1質量部であることが一層好ましい。上記比率とすることにより、得られる成形体において、(b)ポリフェニレンエーテル樹脂が有する耐熱性を効果的に維持しつつ、(a)ポリプロピレン樹脂が有する延性を効果的に発揮させることができる。
【0049】
本実施形態のガスケットにおける(c)プロック共重合体の含有量は、(a)ポリプロピレン樹脂と(b)ポリフェニレンエーテル樹脂の合計100質量部に対して、5.0質量部以上であり、6.0質量部以上であることが好ましく、7.0質量部以上であることがより好ましく、8.0質量部以上であることがさらに好ましく、9.0質量部以上であることが一層好ましく、10.0質量部以上であってもよく、11.0質量部以上であってもよく、12.0質量部以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、ガスケットへより優れた靭性と耐衝撃性を付与することができる。また、本実施形態のガスケットにおける(c)成分のブロック共重合体の含有量は、(a)成分のポリプロピレン樹脂と(b)成分のポリフェニレンエーテル樹脂の合計100質量部に対して、30.0質量部以下であり、28.0質量部以下であることが好ましく、27.0質量部以下であることがより好ましく、25.0質量部以下であってもよく、23.0質量部以下であってもよく、20.0質量部以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、耐熱性を低下させることなく、得られるガスケットの靭性と耐衝撃性をより向上させることができる。
【0050】
本実施形態では、(a)ポリプロピレン樹脂と(c)ブロック共重合体の質量比率((a)/(c))が1.0以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましく、2.5以上であることがさらに好ましく、3.0以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、得られるガスケットの高温下における引張り呼び歪と耐衝撃性がより向上する傾向にある。また、前記(a)/(c)は、5.0以下であることが好ましく、4.7以下であることがより好ましく、4.3以下であってもよく、さらには3.8以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、耐熱性を低下させることなく、得られるガスケットの靭性と耐衝撃性がより向上する傾向にある。本実施形態のガスケットは、(a)ポリプロピレン樹脂、(b)ポリフェニレンエーテル樹脂、および、(c)ブロック共重合体を、それぞれ、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0051】
本実施形態に使用されるポリプロピレンとポリフェニレンエーテルとのアロイ材は、酸化防止剤、離型剤、滑材といった成形加工を容易にするための成形助剤がポリプロピレンとポリフェニレンエーテルとのアロイ材の物性および化学的特性に影響を与えない範囲で添加しても良い。また、リチウム電池用ガスケットの特性を向上するために、ガラス、滑石、カオリン、窒化ホウ素などの成分をパウダーもしくはフィラーとして添加しても良い。
【0052】
本実施形態のガスケットに使用するポリプロピレンとポリフェニレンエーテルのアロイの作り方について、ポリプロピレンと十分に乾燥させたポリフェニレンエーテルをあらかじめ前段で規定した比率でドライブレンドを行い、二軸混練押し出し機でブレンドすることによって目的のポリプロピレンとポリフェニレンエーテルとのアロイを作ることができる。また、本実施形態では、(a)ポリプロピレンと、(b)ポリフェニレンエーテルと、ビニル芳香族化合物ブロック(c1)およびイソプレン重合体ブロック(c2)を含む水素添加物としての(c)ブロック共重合体とをあらかじめ前段で規定した比率でドライブレンドを行い、二軸混練押し出し機でブレンドすることによって目的のポリプロピレンとポリフェニレンエーテルとのアロイを作ることができる。ドライブレンドを行う際に、離型剤、酸化防止剤、等の射出成形助剤を添加することにより、射出成形工程でのガスケットの生産性が向上する。さらにポリプロピレン、およびポリフェニレンエーテル双方に活性を持たせる相溶化剤を添加することにより、安定したアロイ材が得られる。なお、相溶化剤として、ポリプロピレン及び/又はポリフェニレンエーテルに相溶するか親和性の高い部分を持つ化合物などを使用でき、例えば、PP-PPEブロックコポリマー、PP-PPEグラフト共重合体、酸・エポキシ基・水酸基・オキサゾリン基などの官能基を持つポリマー、無水マレイン酸などの二重結合と酸の2つの反応部位を持つ化合物などを使用してもよい。また、二軸混練押し出し機のノズルから吐出されたアロイ材を冷却水もしくは空冷ファンを用いて冷却した後にペレタイザーによって長さが2から4ミリメートルの長さに切ることによって、射出成形に使用可能なペレットが作られる。ここで使用される二軸押し出し機はABS樹脂など一般的なアロイ材料の製造に使用される二軸混練押し出し機であれば本実施形態のガスケット用材料として利用可能な材料が得られる。なお、二軸混練押し出し機でのせん断力を多く繰り返すようにしたり、動的架橋(溶融混練と同時にせん断下で架橋反応させる)する等のように、リアクティブプロセッシングによりポリプロピレンとポリフェニレンエーテルとをアロイ化することで、ポリプロピレン樹脂連続相中における分散相となるポリフェニレンエーテルの分散粒子径を小さくしポリフェニレンエーテル樹脂相の分散性及び密度を高めることができ、このアロイ材料によればガスケット製品として引張伸びや衝撃吸収性が高く割れにくいものが得られると考えられる。
【0053】
本実施形態に用いられる射出成形法は、図示しないが一般なプラスチック加工用の射出成形機が用いられる。例えば、材料の加熱溶融させる可塑化部と溶融した材料を金型へ流し込むために溜め込む計量部とが一体となったインラインスクリュー式の射出成形機を用いても良いし、可塑化部と計量部が連結されたプリプランジャー式の射出成形機を用いても構わない。射出成形機の型締めサイズについて、金型が閉じて計量部から注入された材料の圧力で金型が開かない圧力が確保できる型締め力が有る必要がある。型締め力が弱いと、金型が微小に開きバリと呼ばれる成形不良が発生する。バリが発生すると、電池のシール性が著しく低下するために好ましくない。
【0054】
ポリフェニレンエーテルとポリプロピレンのアロイ化した樹脂組成物を射出成形機へ投入するホッパー又はシリンダに設けるガス注入口から、スクリュを配置するシリンダ内へ二酸化炭素もしくは窒素ガスなどの不活性ガスを充填しておくと、樹脂が酸素と接触することが抑制されて、得られるガスケットは変色が低減される。このプロセスで得られたガスケットは、ガスケットの検査ラインや電池製造ラインでの異物検査装置の誤判断を予防できる。さらに、ポリフェニレンエーテルとポリプロピレンのアロイ化した樹脂組成物へ0.1~5.0MPaの圧力で二酸化炭素または窒素ガスといった不活性ガスを微量溶け込ませると、溶融樹脂の溶融粘度が低下することにより金型の形状転写性が向上して、得られたガスケットはより高いシール性が得られる。ポリフェニレンエーテルとポリプロピレンのアロイ化した樹脂組成物へ0.02~3.00質量部の二酸化炭素または窒素ガスといった不活性ガスを溶け込ませる方法は、あらかじめ高圧容器へポリフェニレンエーテルとポリプロピレンのアロイ化した樹脂組成物を投入し、高圧の不活性ガスを注入して樹脂組成物に含浸させたものを射出成形機へ投入しても良いし、射出成形機内で溶融状態となっている樹脂組成物へ高圧の不活性ガスを注入し溶け込ませても構わない。
【0055】
以上の不活性ガスを注入し、リアクティブプロセッシングにより射出成形を行うようにしてもよい。これにより、ポリプロピレンのマトリックス中にポリフェニレンエーテルの微粒子が一様に分散し、ポリフェニレンエーテルとポリプロピレンの特性を良好に発揮するガスケットが得やすくなると推測される。リアクティブプロセッシングで射出成形を行う際、スクリュの回転速度としては、例えば、10rpm以上とし、好ましくは50rpm以上、さらに好ましくは80rpm以上とする。スクリュ1rpmに対する樹脂組成物の可塑化量としては、例えば、シリンダ中での滞留時間が長くなりすぎて熱劣化の原因とならないようにするため、0.01kg/h以上とし、好ましくは0.1kg/h以上、さらに好ましくは0.2kg/h以上とすることができる。また、樹脂組成物のシリンダ中での滞留時間としては、例えば、1~20分程度とすることができる。前記滞留時間が短すぎてシリンダ内部での反応時間が短くならないようにし、また、前記滞留時間が長くなりすぎて樹脂の熱劣化が起こらないようにするためである。
【0056】
本実施形態のガスケットの射出成形に使用される金型は、図示しないが一般的に使用される金型構造から構成されるものから選ばれる。金型は固定側部と可動側部から構成される。固定側部には射出成形機の可塑化部から溶けた材料が金型に注入されるスプール、スプールと製品部までの流路であるランナー、ランナーと製品部との界面であるゲートが形成されている。可動側部は製品部と、溶けた材料が製品部で冷え固まった後に製品を取り出し易くするための突き出し部が形成されている。製品部は固定金型部と可動金型部が密着したときに、固定側製品部と可動側製品部がガスケットの形状になる様に加工されている。本実施形態のガスケットは、熱で溶かされた前記アロイ化した樹脂組成物材料がスプールから流れ込み製品部までいきわたった後に冷却固化されて、可動金型部が固定金型部から離れて、可動金型部にある突き出し部で金型から押し出されて作られる。本実施形態のガスケットを作るために、金型温度をリチウム電池の使用最高温度付近にまで上げておくと、ガスケットの収縮によりシール性が低下することが低減される。
【0057】
本実施形態のガスケットを射出成形で作成するためには金型温度が50℃以上120℃以下にすることが好ましい。金型温度が50℃より低い温度で成形した場合、電池に組み込んだガスケットが変形して液漏れを発生させる虞があり、ガスケット品質上好ましくない。金型温度を120℃より高く上げると、アロイ成分のポリプロピレンが軟化して目的のガスケット形状を得ることが困難になるばかりか、冷却時間が余剰にかかり生産性が著しく低下する。以上の現象を鑑みると、ガスケットを作成する際の金型温度は、50~120℃とし、60~120℃が好ましく、電池の長期信頼性の高いガスケットを得るためには金型温度は80~120℃が好ましく、高温環境下で高い信頼性が要求される場合、金型温度は100~120℃が好ましい。
【0058】
本実施形態のガスケット用金型のランナー部はガスケット冷却時に一緒に冷却して取り出すコールドランナー方式、スプールからゲート部まで溶融状態を維持するホットランナー方式、ランナーの一部までを溶融状態を維持するセミホットランナー方式から選ばれる。コールドランナー方式やセミホットランナー方式の金型を採用すると、不要なランナーが発生する。ランナーは粉砕機を用いてペレットと類似サイズまで粉砕すれば、ガスケットに必要な物性を維持できる範囲でペレットと混合して再利用しても構わない。ランナーを混合させる比率が樹脂材料全体中70質量部以下であれば、本実施形態のガスケットを作ることができる。70質量部を超えると、樹脂組成物の劣化により流動性が不安定になり、突発的に樹脂組成物が金型を構成する金型部品のすき間に入り込み、正常なガスケットが得られなくなる。50質量部以下であれば樹脂組成物の劣化による分解ガスによる金型汚染が低減されるために好ましい。
【0059】
本実施形態のガスケット用金型に用いられるゲートは可動金型部が開く際にゲートと製品部が自動的に切断されるピンゲートやサブマリンゲート、可動金型部が開いた際に製品部とランナー部とが一体にとり出されるサイドゲートといった一般に射出成形で使用されるゲート方式が用いられる。サイドゲート方式の場合、溶けた材料が製品部各所へ行き渡せるための伝達力が高い反面、製品部とランナーとを切り分ける工程が増えるために、ガスケットに超薄肉部が存在していたり、流動性が著しく低い材料の際に用いることが好ましい。ガスケットに超薄肉部が存在していたり、流動性が著しく低い材料を用いないと電池性能が発揮できない場合、ガスケット内径部全面がゲート部であるディスクゲートを選択すれば、本実施形態のガスケットを高精度に作ることができる。サイドゲートやディスクゲートを選択せざるをえない場合、可動金型部へ型内ゲートカット構造を付加することにより生産性を向上させることができる。本実施形態のガスケットを作成するためのゲート位置は電池のシール部である内径壁部、外径壁部および底面以外の場所に設けられる。
【0060】
本実施形態で用いるガスケット用金型は、製品部にあたる箇所の表面粗さを制御することが好ましい。特に、ガスケット外周シール部41の内外周面、および底部シール部42の外周面(図5参照)を形成する金型箇所(キャビティ面)は鏡面であることが好ましい。このキャビティ面は、JIS B0601で示すRzの数値(触針式表面粗さ測定機で金型面を測定したときの最大高さ)が0.05μm以上、1.2μm以下が好ましく、0.05μm以上、0.08μm以下がより好ましい。前記表面粗さが0.05μm未満である場合、射出成形で得られたガスケットは固定金型側に密着してガスケットが突き出しにより自動落下が出来なくなる虞があり、前記表面粗さが1.2μmより大きい場合、ガスケットのシール性能が落ちるおそれがあり、液漏れや外部からの異物侵入(水蒸気を含む)が起こるリスクが生じ得ることが懸念される。
【0061】
本実施形態で用いるガスケット用金型は固定金型製品部の抜き勾配は0.5度以上、4度以下で設計することができる。0.5度以上、2度未満である場合が好ましく、1度以上、2度未満であればさらに好ましい。抜き勾配が0.5度未満であると、金型から製品を取り出す際に傷が発生してシール性が著しく低下する虞がある。また、抜き勾配が4度以上ある場合は電池を組み込む際のカシメた際に、外周シール部の一部でしかシールされないことによりシール性が低下する虞がある。
【0062】
本実施形態はコイン型リチウム電池用ガスケットについて説明してきたが、本発明のガスケットは、円筒型のリチウム電池用ガスケットについても正極と負極とを絶縁し、電池内部の有機溶剤を主体とするリチウム電池にも活用が可能である。さらに、本発明のガスケットは充放電が可能なリチウム電池用ガスケットについても、ガスケットに求められる機能が類似であるために、コイン型など形状によらず他の形状の電池用ガスケットにも利用可能である。
【実施例
【0063】
以下に、本発明に係るリチウム電池用ガスケット(非水電解液電池用ガスケット)の具体的な内容について実施例を用いて説明する。
ガスケットの成形材料として射出成形用のポリプロピレン(ノバテックPPMH4 日本ポリプロ社製)とポリフェニレンエーテル(PX100F ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリキシレノールシンガポール社製)を表1に示す質量比でタンブラーを用いてブレンドを行い、二軸混練押し出し機を使って混練した後、水冷を行い、ペレタイザーを用いて射出成形用材料として射出成形によりサンプル1~7を用意した。また、ガスケットの成形材料として射出成形用のポリプロピレン(ノバテックPPMH4 日本ポリプロ社製)とポリフェニレンエーテル(PX100F ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリキシレノールシンガポール社製)とスチレン/イソプレン/スチレン共重合体水素添加物(SEPS)(セプトン2104 クラレ社製)を表2に示す割合でタンブラーを用いてブレンドを行い、二軸混練押し出し機を使って混練した後、水冷を行い、ペレタイザーを用いて射出成形用材料として射出成形によりサンプル8~16を用意した。尚、ドライブレンド時に射出成形助剤を適宜添加してある。
【0064】
・評価1
表1、表2に示すサンプル材料として、JISK7139に示すタイプA1のダンベル試験片(図6参照)を射出成形法によって作成した。それらのダンベル試験片を用いて、JISK7191に示す手法に準拠して荷重たわみ温度を測定した。すなわち、荷重たわみ温度試験測定機にて、ダンベル試験片に1.80MPaの荷重を加え、試験機内の液体を攪拌しながら加熱し、ダンベル試験片が0.5mmたわんだときの温度(荷重たわみ温度)を記録する。これらの結果において、荷重たわみ温度が60℃以上を○、それを下回った時を×とした。結果、サンプル1は29℃、サンプル2は54℃で不適となった。それ以外は目標値をクリアした。なお、サンプル5~16は、荷重たわみ温度が100℃以上有していた。
【0065】
・評価2
表1、表2に示すサンプル材料を用いて、平面形状がJISK7139に示すタイプA12のダンベル試験片(図6参照)の形状を有しており、評価部(平行部)の厚みが1mm、チャック部の厚みが2mmの試験片を射出成形法によって作成した。これらの試験片を使って120℃雰囲気で引っ張り速度50mm/分の条件で引張試験を行った。引張試験において、引っ張り伸び率が20%以上300%以下であれば○、20%を下回るもしくは300%を超える場合は×とした。サンプル1が450%、サンプル2が320%、サンプル7が16%で不適となった。それ以外は目標値をクリアしていた。
【0066】
・評価3
表1、表2に示すサンプル材料を用いて、CR2032サイズ(直径20mm、厚さ32mmの円筒形)のリチウム電池用ガスケット金型を使用して射出成形法によってガスケットサンプルを作製した。その時の金型温度は70℃、樹脂温度は270℃として、射出速度および保持圧力は材料の特性に合わせて適宜調整した。それぞれの材料で作製したガスケットサンプルを100個確認して、ウエルド、ショートショット、バリなどの成形不良が発生していなければ○、成形不良が発生していたものは×とした。結果、サンプル1はバリが発生した。また、サンプル7はショートショットが発生したため不適となった。それ以外のサンプルは良好に成形ができることがわかった。また、金型温度を100℃に変更した以外、前記同様の条件でガスケットサンプルを作製し、100個のサンプルで成形不良の有無を確認したところ、金型温度70℃のときと同じ結果であった。なお、ポリフェニレンサルファイド(PPS)を100質量部とする成形材料を用いて、前記と同条件で射出成形法によりガスケットサンプルを100個作製したところ、すべてウエルドが発生していた。そのため、電池製造時の外装缶をかしめる際にガスケットに割れ等が発生するおそれがある。
【0067】
・評価4
引張試験機試験部の上下にフックを取り付けて、前記ガスケットサンプル(金型温度70℃で射出成形したときのサンプル)をフックに引っ掛けて室温下で100mm/分の試験速度で引張試験を行った。引張荷重が100Nに達したときの移動量が25mm以上あったものを○、25mmを下回ったものを×とした。結果、サンプル7は20mmしか伸びずに変形した段階で破断したために不適とした。それ以外のサンプルは目的の値に達していた。また、金型温度100℃で射出成形したときの前記ガスケットサンプルについて、前記同様の引張試験を行った。このとき、引張荷重が150Nに達したときの移動量が15mm以上あったものを○、15mmを下回ったものを×とした。この結果、サンプル7は8mm しか伸びずに変形したため不適とした。それ以外のサンプルは目的の値に達していた。
【0068】
評価1から4までの評価結果を表1、表2にまとめた。サンプル3~6、8~16は良好な結果を示していることがわかった。なお、サンプル1、2は荷重たわみ温度が低く、耐熱性が不足していることがわかった。また、サンプル7は伸びが無く、ガスケットの仕様を満足できないことがわかった。また、サンプル1、2、7は引張り伸び率が適合せず、サンプル1、7は成形不良が発生しやすいことがわかった。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明における、ポリプロピレンとポリフェニレンエーテルとのアロイは、リチウム電池用ガスケットとして良好に活用できる。また、リチウム電池用ガスケットだけではなく、リチウムイオン電池用ガスケットにも、また、各種の非水電解液電池用ガスケットとして活用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 コイン型電池
2 外装缶
3 封口板
4 ガスケット
5 発電要素
21 側壁
22 底面部
31 筒部
31a 基端部
31b 段部
31c 開放部
32 平面部
41 外側シール部
42 底部シール部
43 環状凹部
44 環状リブ
51 正極材
52 負極材
53 セパレータ
54 正極リング
54a 円筒部
54b フランジ部

図1
図2
図3
図4
図5
図6