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特許7190735グラフェンおよび酸化グラフェンを炭素リッチ天然材料を用いて量産するための低コストかつ迅速な方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】グラフェンおよび酸化グラフェンを炭素リッチ天然材料を用いて量産するための低コストかつ迅速な方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/19 20170101AFI20221209BHJP
   C01B 32/198 20170101ALI20221209BHJP
   D01F 9/10 20060101ALN20221209BHJP
【FI】
C01B32/19
C01B32/198
D01F9/10
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018554043
(86)(22)【出願日】2017-04-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-05-30
(86)【国際出願番号】 US2017027445
(87)【国際公開番号】W WO2017180890
(87)【国際公開日】2017-10-19
【審査請求日】2020-04-13
(31)【優先権主張番号】62/322,084
(32)【優先日】2016-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518300227
【氏名又は名称】グリーン ナノテク ラブズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ゼン,ティンギン
(72)【発明者】
【氏名】キ,ケヴィン
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103935997(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0015719(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第102167308(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0266501(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0004344(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0104327(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1466310(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第102464315(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
B82Y 30/00,40/00
D01F 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェンおよび酸化グラフェンの少なくとも1つを製造する方法であって:
固体状態の炭素リッチ材料を得る工程と;
前記炭素リッチ材料を塩基材料、溶媒、界面活性剤、および添加剤と混合して混合物を形成する工程と;
前記混合物をマイクロ波反応器に導く工程であって、前記マイクロ波反応器が前記混合物にマイクロ波放射を提供するように構成されている、工程と;
前記マイクロ波反応器中の前記混合物にマイクロ波放射を向け、グラフェンおよび酸化グラフェンの少なくとも1つを形成する工程と;
前記形成されたグラフェンおよび酸化グラフェンを溶媒から分離する工程と、を含み、
前記マイクロ波放射が、150W~3000Wの強度を有し、
前記混合物に前記マイクロ波放射を向けることが、約1秒間~60分間の間行われ、
前記炭素リッチ材料が、グラファイト、石炭スラグ、およびアスファルトの少なくとも1つである、
方法。
【請求項2】
前記塩基材料が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、重曹、重炭酸ナトリウム、尿素、水酸化アンモニウム、および6よりも高いpH値を維持しながら水に溶解することができる塩の少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記界面活性剤が、第4級アンモニウム塩、臭化セトリモニウム、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)(PDDA)のような多原子カチオン、有機アンモニウムカチオン、イミニウム塩、およびポリスチレンスルホネートの少なくとも1つである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶媒が、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム(BMIM)系イオン性液体、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(EMIM)系イオン性液体、水、アルコール、アセトン、ケトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、エチレングリコール(EG)、DMSO、ならびにそれらの共溶媒の少なくとも1つである、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記添加剤が、アゾジカルボンアミド、低分子アミン、水酸化アンモニウム、尿素、金属酸化物、金属ナノ粒子、KMnO4、鉄酸カリウム、鉄酸ナトリウム、および過酸化物の少なくとも1つである、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記混合工程が磨鉱-粉砕を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記混合工程が、超音波混合装置を用いて混合することを含み、前記超音波混合装置が、実質的に均一な懸濁液を有する混合物を生成する工程を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記混合工程の前に前記炭素リッチ材料を磨鉱する工程をさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記分離したグラフェンおよび酸化グラフェンを用いて炭素繊維を形成する工程をさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記マイクロ波放射が、約1500Wの強度を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記混合物に前記マイクロ波放射を向けることが、約30分間の間行われる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記形成されたグラフェンおよび酸化グラフェンを前記溶媒から分離する前記工程が、前記マイクロ波反応器から前記形成されたグラフェンおよび酸化グラフェンを水に排出することであって、前記水は前記形成されたグラフェンおよび酸化グラフェンが前記溶媒から分離することを可能にする、ことを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記混合物を形成する工程が、前記炭素リッチ材料を塩基材料、溶媒、界面活性剤、添加剤、ならびに水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、リン酸、およびリン酸塩の少なくとも1つと混合して混合物を形成する工程である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記添加剤が、MgO、ZnO、Fe、Co、NiO、ZrO、MoO、WS、およびAlの少なくとも1つである、請求項1~及び6~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記添加剤が、Niナノ粒子、Feナノ粒子、Coナノ粒子、Mgナノ粒子、Alナノ粒子、鋼合金ナノ粉末、およびPdナノ粒子の少なくとも1つである、請求項1~及び6~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記グラフェンおよび酸化グラフェンの少なくとも1つが、導電性フィルム、グラフェンベースの炭素繊維、および電池電極の少なくとも1つに使用されるグラフェンおよび酸化グラフェンの少なくとも1つである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、様々な用途のために以前に報告された方法から大量のグラフェン層および酸化グラフェン層を製造する革新的な技術に関する。また、社会のための高度なグラフェンナノ材料のために、石炭スラグおよびアスファルトなどの炭素リッチ固形廃棄物の新しい劇的な用途を提供する。
【背景技術】
【0002】
グラフェンの分野全体では、伝統的で有名なHummers法は、グラフェン層と酸化グラフェンを合成するために、研究所や、商業化のために多くの産業会社で非常に広く使用されてきた。しかし、硝酸、硫酸、およびKMnO、P、Kなどの強酸化剤などの強酸の使用により、大量の熱やガスの放出によるリアクター爆発を引き起こしてきた。生成物の精製には、通常、遠心分離機を使用する必要があり、またグラフェン生成物から強酸を洗い流すために大量の水を使用する必要がある。このように、強酸はこのプロセスにおける産業廃棄物である。さらに、反応時間は少なくとも1日以上必要である。それは多くの時間を消費し、かつ高いエネルギーを要求する方法であり、我々はそれを克服する必要がある。電気化学的な剥離、硫酸中での一段酸化のために鉄酸カリウムでKMnOを代替する、イオン性液体中のマイクロ波放射アシスタントなど、様々な研究グループからHummers法に代わる他の多くの方法が報告されている。それらは依然として、商業化に向けた時間消費、廃酸生成の問題、遠心分離浄化設備の高いコスト、またはイオン性液体材料の高価な原材料(参考:現在、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート:Sigma-Aldrichから50グラム961ドル)のボトルネック問題を抱えている。
【0003】
従来のグラフェン製造方法におけるファクターである重大な汚染、高いエネルギー要求、および時間消費の問題を克服するために、我々の本発明は、強酸を必要とせず、遠心分離技術を必要とせず、また大量の水なしに、特定の低コスト添加剤と組み合わせた自然由来の炭素リッチ固体材料およびマイクロ波放射を用いて、様々な用途に対応した大量のグラフェン層と酸化グラフェンを素早く、グリーンケミカル的に製造する革新的な技術を提供する。処理時間は数秒から数分の範囲であり、これは製造コストを劇的に低下させる可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、グラファイト、石炭スラグ、アスファルト、および天然に存在する他の炭素リッチ固体材料を使用する。これは一般に、制御可能なマイクロ波放射を用いて、塩基、グラファイト、もしくは石炭スラグ、もしくはアスファルト、またはそれらの組み合せと、イオン性液体および界面活性剤、それに加えて環境に優しい酸化剤との混合物を加熱する。本発明は、グラフェン層および酸化グラフェンの前記生成物を、例えば約1秒~60分の短時間の範囲で生成することができる。それは、濃硫酸、硝酸のいずれも必要とせず、精製に必要な大量の水もまた必要としない。製造されたままのグラフェンベースの材料は、非限定的な例として、タッチスクリーン用の導電性フィルムの連続的な調製、コスト効率のよいグラフェン炭素繊維および三次元多孔性グラフェンナノ材料の製造、ならびに超軽量機械および車両用のグラフェンベースのインテリジェントナノ複合体の調製に使用できる。本発明により徐々に研究され得る潜在的な用途がはるかに多く存在する。
【0005】
本発明は、様々な用途のための先進グラフェンおよびそのベースのナノ材料、ならびに酸化グラフェンおよびそのベースのナノ材料のための、低コスト、省エネルギー、より環境に優しい化学プロセス製造を提供する機会を示す。これは、高品質のグラフェン層および酸化グラフェン層ならびにこれらの組み合わせを形成するための一工程によって実施される。
【0006】
本発明の目的は、1層~数層範囲の製造プロセスから、グラフェンおよび酸化グラフェン層を製造する方法を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、石炭スラグおよびアスファルトのための大量の廃棄物の使用法を提供することである。
【0008】
本発明の更なる目的は、現行の方法よりも廃棄物および汚染物質を環境にほとんど放出せずに、マイクロ波反応器のみを使用して、一工程でのグラフェンおよび酸化グラフェンの産業的製造を可能にすることである。
【0009】
本発明の別の目的は、デザインされた生成物を製造するために必要な製造時間を、大幅に短縮することである。
【0010】
本発明の更なる目的は、通常のグラファイトおよび膨張グラファイト、さらには不純物含有グラファイト、不純物含有石炭スラグまたは不純物含有アスファルトを含むあらゆる種類のグラファイトから、大量のグラフェンおよび酸化グラフェンを製造するための設備要件を低減することである。したがって、炭素リッチ固体原料を大幅に広げることができる。グラファイトおよび石炭またはアスファルトの純度が99.0%である必要はない。
【0011】
本発明の別の目的は、マイクロ波放射反応の間に、他のかかる元素および/または組成物などの添加によって直接機能化されることができ、窒素ドーピング、熱伝導率、および電気伝導率の管理および調整、耐腐食性、および電子機器、エネルギー効率、水素燃料のためのソーラー水分解、より良い電池電極材料デザイン、および高品質グラフェンベースの炭素繊維製造のためのポリアクリロニトリル(PAN)類似分子の形成などを強化するために使用できるであろう多くのその他の特性のような、広い範囲の特別および改善された機能的特性を有する生成物を作るのに使用可能なグラフェン層ならびに酸化グラフェン層を製造することである。
【0012】
本発明の更なる目的は、環境への影響を低減し、省エネルギーおよびグリーンケミカル製造を主とすることである。
【0013】
実用的な方法が、本明細書の発明を実施するための形態にて添付の図面を参照して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】グラファイト、石炭スラグ、およびアスファルトなどの炭素リッチ固体材料を用いたグラフェンおよび酸化グラフェンのマイクロ波放射を介する製造方法を示すフローチャートである。
図2】本発明の実施形態の写真を提供する。
図3-1】マイクロ波処理から得られたグラフェン層のEDAX分析である。
図3-2】マイクロ波処理から得られたグラフェン層のEDAX分析である。
図4-1】マイクロ波処理から直接製造された酸化グラフェンのラマン分光法による特性評価である。
図4-2】原子間力顕微鏡画像による特性評価および本発明で直接得られた2~5層からなる酸化グラフェンフレークを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上述の目的は、マグネトロンベースのマイクロ波装置などのマイクロ波反応器を用いてグラファイト、石炭スラグ、アスファルト、塩基、界面活性剤などの炭素リッチ固体原料および少量のイオン性液体溶媒、ならびに少量の任意の添加剤によって均一に形成された基材混合物へ制御可能な放射を提供する本発明によって達成される。マイクロ波は、約150~約3000Wの強度で放射されてもよい。マイクロ波の放射時間は、1秒~60分の分秒であり、様々な種類の炭素リッチ固体材料によって変化する。場合によっては、塩基、および界面活性剤、ならびにイオン性液体を有するグラファイトの磨鉱-粉砕など、混合物の均一を確実にするための前処理が必要である。調製されたままのグラフェン層または酸化グラフェン層への後処理は、一次生成物を水に添加し、混合物を超音波処理を用いて均一な懸濁液に分散させることによって容易に行われ、次いでグラフェン層または酸化グラフェン層の流選は、様々な垂直方向の高さレベルで懸濁液を流出させることによって行われる。
【0016】
炭素リッチ固体原料の例として、グラファイト、様々な供給業者からの酸処理膨張グラファイト、褐炭スラグなどのあらゆる種類の石炭スラグ、および再清澄油プラントからのアスファルトが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
塩基材料の例として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、重曹、重炭酸ナトリウム、尿素、水酸化アンモニウム、およびpH値を6超に維持しながら水に溶解することができるすべての塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
界面活性剤の例として、4級アンモニウム塩、臭化セトリモニウム、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)(PDDA)などの多原子カチオン、有機アンモニウムカチオン、イミニウム塩、ポリスチレンスルホネートなどの全てのカチオンおよびイオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
イオン性液体溶媒の例として、イオン性液体、例えば、イミダゾリウム、ピリジニウム塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートなどの1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム(BMIM)ベースおよび1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(EMIM)ベースイオン性液体のすべての塩が挙げられるがこれらに限定されず、しかし環境配慮のためには酢酸塩が好ましい。場合によっては、水、アルコール、アセトン、ケトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、エチレングリコール(EG)、DMSOおよびこれらの共溶媒であり、しかし一般的にはイオン性液体、水、およびアルコールがグリーンケミカル製造のために好ましい。
【0020】
追加の添加剤の例として、反応中のグラフェンおよび酸化グラフェンへの特別な機能化を確実にするために使用され得るアゾジカルボンアミド、低分子アミン、水酸化アンモニウム、尿素、金属酸化物(MgO、ZnO、Fe、Co、NiO、ZrO、もしくはMoS、WS、Al、またはこれらの組合せ)、および金属ナノ粒子(Ni、Fe、Co、Mg、Al、鋼合金ナノ粉末、Pdまたはこれらの組み合わせ)が挙げられるが、これらに限定されない。また、追加の添加剤は、いくつかの反応の場合、得られた酸化グラフェン層を実現するための酸化剤であってもよい。添加剤は、KMnO4、鉄酸カリウム、鉄酸ナトリウム、過酸化物であり得るが、これらに限定されない。安全性と環境配慮のために、いくつかの反応の場合には必要に応じて鉄酸カリウム、鉄酸ナトリウム、過酸化水素が好ましい。
【0021】
スラリー中の調製されたままのグラフェン層は、添加剤を用いてグラフェンベースの炭素繊維を量産するため、もしくはグラフェンベースのナノ複合体機能性フィルムを調製するため、もしくは様々な用途のための三次元多孔性グラフェンベースのナノ複合体を合成するため、または自動車ならびにロボット工学および航空機および船舶を含む装置用の部品もしくは物品のための3D追加印刷製造を行うために、直接導かれ得る。
【0022】
要約すれば、我々の本発明は、いかなる強酸および大量の水をも使用することなく、マイクロ波反応器中にて数分で、一工程の反応で多数のグラフェン層および酸化グラフェン層を製造することをもたらす。調製されたままの生成物は、強度などの優れた機械的特性、ならびに熱伝導率および電気伝導率、放射線遮蔽率、および電磁波、耐食性、およびその他などの調整可能な特性を備える。
【0023】
本発明によるグラフェンおよび酸化グラフェンの製造方法の動作フローチャートを示す図1を参照する。図1に示すように、本発明の方法は、概して、グラファイト、石炭スラグ、またはアスファルトを得る工程(S10)、前記溶媒、界面活性剤、磨鉱-粉砕下の酸化剤を含む添加剤とを混合する工程(S20)、ならびに混合した懸濁液を、150W~3000Wの強度および1秒~60分の間の時間(前処理されたグラファイトおよびアスファルトに対しては好ましくは500Wおよび10分未満であるが、石炭スラグに対しては500~1500Wおよび30分以内が好ましい)の放射を適用する、適切にデザインされたマイクロ波反応器中に導く工程(S30)を含む。適用する放射処理を変更することにより、得られたグラフェンおよび酸化グラフェンの品質を操作および改善することができる。最終的にグラフェンおよび酸化グラフェンスラリーは、調製されたままのグラフェン/酸化グラフェン層を単に溶媒で分離することによって調製される(S40)。
【0024】
本発明の実施例を以下に示す。
【0025】
図2および図3に、マイクロ波放射および様々な用途のための浮選のために分散したグラフェンまたは酸化グラフェン懸濁液を表す本発明の写真を示す。図2はマイクロ波放射および様々な用途のための浮選のために分散したグラフェンまたは酸化グラフェン懸濁液を示す。
【0026】
酸化グラフェン層を得るための、酸化剤および対応する添加剤は、グラフェン層の剥離とは異なる。マイクロ波放射の前に前処理が必要である。
【0027】
1)グラフェン少数層生成物:
【0028】
グラフェン源としては、通常のグラファイトを用いることができる。図1において、磨鉱-粉砕プロセスの間、グラファイトに添加される添加剤のほとんどは、イオン性化合物、それに加えて界面活性剤および鉄またはコバルトもしくはニッケル塩である。マイクロ波放射は、酸化グラフェンの生成よりも短時間でなければならない。例えば、放射時間は1秒~3分の範囲が好ましい。安全なプロセスのため、オーバーヒートまたは火花によるアクシデントを回避するために、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、またはリン酸もしくはリン塩を混合物に0.01%~20%の濃度で、好ましくは約10%で添加することができる。マイクロ波放射混合物を直接分散させた後に懸濁液を得る。グラフェン層は水面に浮いている。浮遊グラフェンは、ろ過によって直接分離することができ、グラフェン複合体のための導電性フィルム、放射線吸収フィルム、またはグラフェン粉末の調製に、例えばナノファイバー用のポリマー-グラフェン化合物を調製するために使用される。図2の右側には、グラフェン少数層生成物に対する本発明の浮選の写真が示されている。この生成物は高い導電性を示し、導電性製品の製造のためにDMFまたは他の有機溶媒に容易に分散する。
【0029】
2)酸化グラフェン少数層生成物用
【0030】
市場の膨張黒鉛を、酸化グラフェン源として使用することができる。図1において、磨鉱-粉砕プロセスの間、グラファイトに添加される添加剤のほとんどは、イオン性化合物、それに加えて界面活性剤および酸化剤と鉄またはコバルトもしくはニッケル塩である。マイクロ波放射は、グラフェン層の生成よりも長い時間行うべきである。例えば、マイクロ波放射時間は、1分~30分の範囲が好ましい。安全なプロセスのため、オーバーヒートまたは火花によるアクシデントを回避するために、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、またはリン酸もしくはリン塩を混合物に0.01%~20%の濃度で、好ましくは約10%で添加することができる。マイクロ波放射混合物を水に直接分散させた後に懸濁液を得る。酸化グラフェン層は水面に浮遊しており、これはろ過によって直接分離することができ、グラフェンベースの炭素繊維製造、または3D印刷グラフェン機械物品に使用することができる。多孔質酸化グラフェン発泡体および放射線吸収フィルム、またはグラフェン粉末の調製には、上層部懸濁液よりも高い酸素対炭素比を有する、容器底部の懸濁液中の低層部酸化グラフェンを使用することができる。図2の左側は、本発明の酸化グラフェン層生成物の浮選の写真である。この生成物はある程度の導電性を示し、極性有機溶媒(メタノール、アルコール、イソプロピルアルコール、DMF、および水など)に容易に分散する。これは、グラフェン炭素繊維製造に直接使用することができ、エネルギー関連用途のための多機能グラフェンナノ材料を製造することができる。
【0031】
図3(1)は、懸濁液中の1~4層からなる、天然原料としてグラファイトを使用する本発明から得られたグラフェン生成物を示し、(2)はそのEDAX分析で示される炭素95wt%を超える高い純度品質を示す。ラマン分光法は、グラフェン層の高い品質を裏付ける。図4(1)は、マイクロ波処理から直接製造された酸化グラフェンのラマン分光特性評価である。
【0032】
図4(2)は、原子間力顕微鏡画像による特性評価および本発明で直接得られた2~5層からなる酸化グラフェンフレークであり、大量の酸化グラフェン生成物の製造が高い品質であることを示す。
【0033】
石炭スラグまたは石油アスファルトへの磨鉱-粉砕剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムおよびイオン性化合物に本発明の塩を加えたものなどの塩基である。石炭または石油アスファルトをベースにグラフェンを製造することは、グラファイト処理と同様に、前述の説明に示されるような放射時間およびマイクロ波出力の差異を伴う。
【0034】
さらに、石炭スラグおよび石油アスファルト炭素リッチ天然材料の場合、磨鉱-粉砕剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムおよびイオン性化合物のような塩基、およびイオン性化合物に加えて本発明のいくつかの塩である。石炭または石油アスファルトをベースにグラフェン少数層を製造することは、グラファイト処理と同様に、前述の説明に示されるような放射時間およびマイクロ波出力の差異を伴う。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】