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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】シリコーンゴムロールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 13/00 20060101AFI20221209BHJP
   B29C 41/02 20060101ALI20221209BHJP
   B29D 23/00 20060101ALI20221209BHJP
   B65H 29/20 20060101ALI20221209BHJP
   B65H 27/00 20060101ALI20221209BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
F16C13/00 B
B29C41/02
B29D23/00
B65H29/20
B65H27/00 Z
B65H5/06 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019058040
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020159420
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000181136
【氏名又は名称】持田商工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078776
【弁理士】
【氏名又は名称】安形 雄三
(74)【代理人】
【識別番号】100121887
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 好章
(74)【代理人】
【識別番号】100200333
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 真二
(72)【発明者】
【氏名】石川 泰平
(72)【発明者】
【氏名】久保田 賢司
(72)【発明者】
【氏名】日高 啓明
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 瞳
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-126081(JP,A)
【文献】特開平07-195564(JP,A)
【文献】特開平9-239037(JP,A)
【文献】特許第4317827(JP,B2)
【文献】特開2003-25350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 13/00
B29C 41/00-63/00
B29D 23/00
B65H 5/00,27/00-29/00
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写マンドレルにシリコーンゴムをコーティングする工程、
前記シリコーンゴムの表面を研磨する工程、
前記シリコーンゴムを前記転写マンドレルから取り外して、シリコーンチューブを得る工程、
前記シリコーンゴムチューブを裏返す工程、並びに
裏返した前記シリコーンゴムチューブを、装着用ロールに装着及び接着する工程を具備し、
前記転写マンドレルの表面が、ブラスト加工により、調整されることを特徴とするシリコーンゴムロールの製造方法。
【請求項2】
更に、前記転写マンドレルの表面が、メッキ加工により、調整される請求項1に記載のシリコーンゴムロールの製造方法。
【請求項3】
前記転写マンドレルは、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、フッ素樹脂若しくはポリエチルエーテルケトンのいずれかである熱可塑性樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、エンジニアプラスチック、スーパーエンジニアプラスチック、又は繊維強化プラスチックのいずれかから選択される請求項1に記載のシリコーンゴムロールの製造方法。
【請求項4】
前記転写マンドレルは、金属製であり、並びに該金属は、鉄、アルミニウム、銅、又はステンレス鋼のいずれかから選択される請求項1又は2に記載のシリコーンゴムロールの製造方法。
【請求項5】
前記金属に施すメッキは、銀、金、銅、すず、クロム(三価)、ニッケル、亜鉛、又は金属及び樹脂を主成分とする複合メッキのいずれかから選択され、並びに前記メッキは、電解、無電解、又は溶融メッキのいずれかから選択される湿式メッキである請求項に記載のシリコーンゴムロールの製造方法。
【請求項6】
前記シリコーンゴムの厚さは、1~20mmである請求項1乃至のいずれか1項に記載のシリコーンゴムロールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばポリマーフィルムの圧延の用途で使用する、シリコーンゴムロールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープやポリマーフィルムといった、高分子成型品は商業用、事務用、家庭用等にわたって広範囲の分野で様々な用途で使用されている。そして、粘着テープやポリマーフィルムを製造の際、ゴムロールが用いられる。中でも、離型性、耐摩耗性、機械的強度、耐熱性などのバランスが取れているシリコーンゴムロールがよく用いられる。
【0003】
離型性に重点を置いたシリコーンゴムロール及びその製造方法について、例えば本件出願人が、特許第4317827号公報(特許文献1)に開示している。特許文献1に記載のシリコーンゴムロールは、金属性のロール芯上に、プライマーやシランカップリング剤等を介して第1シリコーンゴム層、粒子層及び第2シリコーンゴム層の三層構造にすると共に、粒子層に用いるガラスビーズ等を粒径が500~4000μmにすることによって、高離型性を有するというものである。
【0004】
ここで一般的に、ポリマーフィルムを製造の際、具体的には圧延の際に、ゴムロールの表面がフィルムに転写されるため、ゴムロールの表面状態が重要な点となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4317827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のシリコーンゴムロールについては、粘着テープ製造の際の離型性を念頭に置いたものであるため、表面状態に係る耐摩耗性については検討がなされていない。言い換えると、上述のポリマーフィルムの製造の際における、ゴムロール表面のフィルムへの転写を念頭に置いているものではない。また、特許文献1には特に記載はないが、一般的に、当該ゴムロールは砥石で研磨することが多いため、研磨によるスクラッチ傷や模様がつくことが欠点である。
【0007】
本発明は、上述したような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、スクラッチ傷や研磨模様の発生しない、即ち砥石研磨に依存しないシリコーンゴムロール及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシリコーンゴムロールの製造方法の上記目的は、転写マンドレルにシリコーンゴムをコーティングする工程、前記シリコーンゴムの表面を研磨する工程、前記シリコーンゴムを前記転写マンドレルから取り外して、シリコーンチューブを得る工程、前記シリコーンゴムチューブを裏返す工程、並びに裏返した前記シリコーンゴムチューブを、装着用ロールに装着及び接着する工程を具備し、前記転写マンドレルの表面が、ブラスト加工により、調整されることにより達成される。
【0009】
更に本発明に係るシリコーンゴムロールの製造方法の上記目的は、更に、前記転写マンドレルの表面が、メッキ加工により、調整されることにより、或いは前記転写マンドレルは、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、フッ素樹脂若しくはポリエチルエーテルケトンのいずれかである熱可塑性樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、エンジニアプラスチック、スーパーエンジニアプラスチック、又は繊維強化プラスチックのいずれかから選択されることにより、或いは前記転写マンドレルは、金属製であり、並びに該金属は、鉄、アルミニウム、銅、又はステンレス鋼のいずれかから選択されることにより、或いは前記金属に施すメッキは、銀、金、銅、すず、クロム(三価)、ニッケル、亜鉛、又は金属及び樹脂を主成分とする複合メッキのいずれかから選択され、並びに前記メッキは、電解、無電解、又は溶融メッキのいずれかから選択されることにより、或いは前記シリコーンゴムの厚さは、1~20mmであることにより、より効果的に達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るシリコーンゴムロール及びその製造方法によれば、スクラッチ傷や研磨模様などの欠点を回避したシリコーンゴムロールを提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るシリコーンゴムロールの製造方法を示すフローチャートである。
図2】転写マンドレルにシリコーンゴムをコーティングした様子を示す概略図である。
図3】転写マンドレルからシリコーンゴムチューブを取り出した様子を示す概略図である。
図4図3で取り出したシリコーンゴムチューブを裏返す様子を示す概略図である。
図5】裏返したシリコーンゴムチューブチューブを装着用ロールに装着及び接着してシリコーンゴムロールに成る様子を示す概略図である。
図6】本実施例における表面粗さ測定のデータである。
図7】比較用ゴムロール(比較対象用)の表面画像である。
図8】本件ゴムチューブ(本願に係るシリコーンゴムロールのシリコーンゴム層に相当)の表面画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るシリコーンゴムロールの製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本発明に係るシリコーンゴムロールの製造方法を示すフローチャートである。また、図2(A)は、転写マンドレル10にシリコーンゴム11をコーティングした様子を示す長手断面の概略図であり、図2(B)は、転写マンドレル10の円断面において、シリコーンゴム11がコーティングされた様子を示す概略図である。先ず、転写マンドレル10にシリコーンゴム11をコーティングする(ステップS1)。ここでいう転写マンドレルとは、シリコーンゴムチューブを製造する際の円筒状の型をいう。
【0016】
転写マンドレル10については、円筒状の形状であればよい。そして、後述するシリコーンゴムチューブを離型可能にするために、当該マンドレルは表面が滑らかな方が良い。ここで、転写マンドレル10については、例えばプラスチック型ならば、熱可塑性樹脂(PP(ポリプロピレン)・PE(ポリエチレン)・ABS(アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体)・PMMA(ポリメタクリル酸メチル)・フッ素、PEEKなど)、ポリカーボネート、ポリエステル類、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチック、又は繊維強化プラスチック(FRP)などが望ましい。ちなみに、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックについては、熱可塑性のものであれば特に種類は問わない。また金属ならば鉄、アルミニウム、銅、ステンレス鋼などが望ましい。
【0017】
なお、転写マンドレル10として金属を用いる場合は、メッキ加工を施して使用することが望ましい。ちなみに、そのメッキについては、銀、金、銅、すず、クロム(三価)、ニッケル、亜鉛、又は金属及び樹脂を主成分とする複合メッキが好ましく、中でもクロム(三価)メッキが好ましい。メッキの量については、特に制限はない。また、メッキの方法については湿式メッキであれば、電解、無電解、又は溶融メッキのいずれかでも構わない。
【0018】
ここで、転写マンドレル10の表面が滑らかな方が良い、即ち平滑であるほど良いと上述したが、ゴムロールを使用するユーザーには必要とする表面粗さがあるため、マンドレルの表面は要望される表面粗さに適宜調整してもよい。その調整としては、ブラスト加工、或いはブラスト加工とメッキ加工の組み合わせ等でかまわず、これらの加工方法については公知技術で対応可能である。
【0019】
この転写マンドレル10にシリコーンゴムをコーティングした場合、基本的には、マンドレルの表面粗さ=シリコーンチューブの表面粗さとはならない。そのため、シリコーンゴムの転写率を見越して、転写マンドレル10の表面を決定するか、後述のシリコーンゴム配合にて微調整を行う。
【0020】
次にシリコーンゴム11については、重量、粘度、若しくはZといった平均分子量、重合度には特に制限はない。また、表面粗さ、弾性度、粘度や硬度についても、公知技術で所望の弾性度、粘度や硬度にコントロールすればよい。
【0021】
シリコーンゴム11のコーティング方法は、任意の手段でかまわない。なお、シリコーンゴム11の厚さd(図2(B)参照)については(後述するシリコーンゴムチューブの厚さと同一)、1~20mmが望ましい。1mm未満であると、ゴムロールとして成立しない。20mmより大きいと、後述するシリコーンチューブを裏返す工程にて、裏返しができにくくなる。また、シリコーンゴム11のコーティングについては、接着剤やプライマー等を用いずに直に転写マンドレル10にコーティングさせる。
【0022】
なお、硬化剤(例えばシリコーンゴム硬化時の白金錯体触媒)や用途に応じた添加剤(導電性若しくは半導電性フィラー等)若しくは添加物(例えば離型性を高めるためのシリコーンオイルやフッ素樹脂パウダー等)については、ステップS1の前に、シリコーンゴムと混合しておく。
【0023】
シリコーンゴム11をコーティングの後に、当該シリコーンゴム11の表面を研磨する(ステップS2)。この表面とは、後述するシリコーンゴムチューブにて内側になる面、即ち後述する装着用ロールと接着する面である。言い換えると、シリコーンゴム及び装着用ロールの間の接着を容易且つ厳密にするために研磨する。なお、研磨については任意の砥石が使用され、研磨方法の適宜任意の手段を選べばよい。
【0024】
ステップS2の後、転写マンドレル10から、シリコーンゴム11を取り外して、図3に示すようなシリコーンゴムチューブ12を得る(ステップS3)。ここで言うシリコーンゴムチューブ12は、転写マンドレルの形状(円筒状)に即して、円筒チューブ状になったものであり、実質的にはシリコーンゴム11と同一のものであるが、説明の都合上区別したまでである。
【0025】
次に、ステップS3にてシリコーンゴムチューブ12を取り出した後、図4に示すように該チューブ12を裏返しにする(ステップS4)。先に述べたように、この工程は、ステップS2にてシリコーンゴム11の表面研磨をした面が、後述する装着用ロールと接着する面になるようにすることである。
【0026】
ステップS4にて裏返しにしたシリコーンゴムチューブ12を、図5に示すように装着用ロール13に装着(嵌着)及び接着して、所望のシリコーンゴムロール1が完成する(ステップS5)。ちなみに、図5(A)は、装着用ロール13にシリコーンゴムチューブ12を装着(嵌着)及び接着した様子を示す長手断面の概略図であり、図5(B)は、装着用ロール13の円断面において、シリコーンゴムチューブ1が装着(嵌着)及び接着された様子を示す概略図である。このステップにおいて、装着用ロール13は、円筒状であれば、材質は金属製やプラスチック製の如何は問わず、転写マンドレル10と同じでも異なってもかまわない。またこのステップにおいて、接着は任意の接着剤やプライマー、シランカップリング剤等を用いればよい。
【0027】
次に、本発明に係るシリコーンゴムロールについて説明する。
【0028】
本発明に係るシリコーンゴムロールは、図5に示すように、円筒状の装着用ロール13にシリコーンゴムチューブ1が装着(嵌着)及び接着された格好になる。本発明に係るシリコーンゴムロールは、このような構成を採ることにより、スクラッチ傷や研磨模様がない表面を持つことができる。
【0029】
シリコーンゴムチューブ1の装着(嵌着)及び接着に用いる接着剤やプライマーは、任意のものでかまわない。
【0030】
シリコーンゴムの厚さ(図2(B)参照)については(後述するシリコーンゴムチューブの厚さと同一)、1~20mmが望ましい。1mm未満であると、ゴムロールとして成立しない。20mmより大きいと、シリコーンチューブを裏返す工程にて、裏返しができにくくなる。
【0031】
以上、本発明に係るシリコーンゴムロール及びその製造方法について記したが、本明細書、特許請求の範囲又は図面に記載の事項を逸脱しなければ、上記実施形態の限りではないことは言うまでもない。
【実施例
【0032】
上記に述べた実施形態について、更に実施例を説明する。なお、必要に応じて図1に記載のフローチャートや図2乃至5を使用して説明することがある。また、後述の液状シリコーンゴムのコーティング方法や砥石研磨の方法については、当業者であればあらゆる方法でかまわないことを申し添える。また、本実施例は、あくまで一例である。
【0033】
[製造例1]比較対象用シリコーンゴムロールの作製
この製造例1では、本発明に係るシリコーンゴムロールの比較対象のためのシリコーンゴムロールの作製について説明する。
【0034】
先ず、鉄芯(サイズ:275φ(鉄芯の外径)×2000L(ロール面長)。ちなみに、φ、L共にmm単位であり、この場合275φ=275mmであり、2000L=2000mmである。)に液状シリコーンゴムをコーティングして、シリコーンゴム層を形成する。
【0035】
次に、コーティングしたシリコーンゴム層の表面に対して、砥石研磨にて研削し、300φ(シリコーンゴム層の外径)×2000L(ロール面長)のシリコーンゴムロールを作製した。このように作製されたシリコーンゴムロールを以下「比較用ゴムロール」と称する。
【0036】
[製造例2]本発明に係るシリコーンゴムチューブの作製
この製造例2では、本発明に係るシリコーンゴムロール(ゴムチューブ)の作製について説明する。
【0037】
先ず、図1のステップS1に則り、転写マンドレル用鉄芯(以下単に「転写マンドレル」と称する。サイズ:228φ(鉄芯の外径)×1800L(ロール面長)。転写マンドレル表面にはブラスト加工を施し、更にクロムメッキを施した。)に液状シリコーンゴムをコーティングした。次に、図1のステップS2に則り、砥石研磨にて研削し、232φ(シリコーンゴム層の外径)×1800L(ロール面長)のシリコーンゴムロールを作製した。
【0038】
そして、このシリコーンゴムロールから、図1のステップS3及びS4に則り、シリコーンゴム層部分を引き抜いて、更に裏返しにしてシリコーンゴムチューブを作製した(図4参照)。このように作製されたシリコーンゴムチューブを以下「本件ゴムチューブ」と称する。ちなみに、本発明に係るシリコーンゴムロールに関しては、本件ゴムチューブをプライマーや接着剤等で既知の方法を用いて装着用ロール(図5参照)に嵌着させればよいのでこれの製造については割愛する。即ち、後述する表面粗さ測定や表面画像については、「比較用ゴムロール」のシリコーンゴム層表面と「本件ゴムチューブ」の表面とを比較すればよいことは自ずと明らかである。
【0039】
[試験例1]表面粗さ測定
次に、製造例1及び2で作成した、比較用ゴムロール及び本件ゴムチューブについて、表面粗さを測定した。なお、それぞれの表面粗さ測定については、(株)東京精密のハンディサーフ E-35Bを用いた。
【0040】
図6に各表面粗さのデータを示す。ちなみに図6(A)は比較用ゴムロールの表面粗さデータであり、図6(B)は本件ゴムチューブの表面粗さデータである。
【0041】
図6において、(A)の比較用ゴムロール表面は、シリコーンゴムの配合調整と表面研磨により、Ra(算術平均粗さ)をコントロールしている。(B)の本件ゴムチューブは、Ra=1.3μmを目標として、シリコーンゴム配合とマンドレルの表面粗さを調整しており、データから表面粗さをコントロールできるという結果が得られた。
【0042】
[試験例2]表面画像撮影
次に、比較用ゴムロール及び本件ゴムチューブについて、電子顕微鏡((株)キーエンス社製マイクロスコープVHX‐5000)で表面画像を撮影した。比較用ゴムロールに係る表面画像については、図7(A)乃至(C)に示し、本件ゴムチューブに係る表面画像については、図8(A)乃至(C)に示す。
【0043】
先ず、比較用ゴムロールの表面においては、図7(A)及び(B)より、幅0.1mm、長さ2.34mmのスクラッチ傷の存在が分かった。図7(C)の3D画像においては、傷のついていない表面と、傷の部分との色の違いが明確となり、従来法ではスクラッチ傷が解消しにくいことが示唆される結果となった。
【0044】
一方、本件ゴムチューブにおいては、図8(A)の100倍画像、図8(B)の500倍画像共に、スクラッチ傷を示唆するものは存在しなかった。また、図8(C)においては、図8(B)の画像を別光源で撮影したものであるが、図8(B)同様にスクラッチ傷を示唆するものは存在せず、表層が転写マンドレルを転写した規則正しい面になっていることが確認できた。
【0045】
このことから、本件ゴムチューブ、即ち本発明に係るシリコーンゴムロールの基となるゴムチューブについては、本発明の製造方法で作成した場合、スクラッチ傷や研磨模様などの欠点を回避したシリコーンゴムロール及びその製造方法という目的を達成可能ということを示唆する結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係るシリコーンゴムロール及びその製造方法によれば、あらゆる形状や表面改質が可能なため、ポリマーフィルムの圧延の用途だけでなく、ポリマーフィルムにロールの凹凸を転写させるためのエンボスロールや搬送用途で使われるガイドロール、シワ取りロール等にも適応できる。
【符号の説明】
【0047】
1 シリコーンゴムロール
10 転写マンドレル
11 シリコーンゴム
12 シリコーンチューブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8