IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人東北大学の特許一覧

<>
  • 特許-表面循環装置 図1
  • 特許-表面循環装置 図2
  • 特許-表面循環装置 図3
  • 特許-表面循環装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】表面循環装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 57/02 20060101AFI20221209BHJP
【FI】
B62D57/02 N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019094030
(22)【出願日】2019-05-17
(65)【公開番号】P2020189499
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-01-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・集 会 名:計測自動制御学会 東北支部 第315回研究集会 開 催 日:2018年(平成30年)5月21日 ・発行者名 :一般社団法人 日本機械学会 刊行物名 :日本機械学会誌 第122巻 第1205号 発行年月日:2019年(平成31年)4月5日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代人工知能・ロボット中核技術開発/革新的ロボット要素技術分野/全方向駆動機構を核とした革新的アクチュエーション技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100143834
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 修二
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 将広
(72)【発明者】
【氏名】林 聡輔
(72)【発明者】
【氏名】多田隈 建二郎
(72)【発明者】
【氏名】昆陽 雅司
(72)【発明者】
【氏名】田所 諭
【審査官】谷川 啓亮
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0070775(US,A1)
【文献】米国特許第6178872(US,B1)
【文献】特開昭59-134687(JP,A)
【文献】国際公開第2010/109534(WO,A1)
【文献】特開平7-156843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 57/00 ー 57/04
B62D 55/00 ー 55/32
B25J 1/00 ー 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トーラスを中心軸に沿って細長くした形状を成し、内部に収納空間を有する袋状体と、
前記袋状体の外側面の全体または前記中心軸に沿った一部区間が、円筒を蛇腹折りして前記中心軸に沿って所定の長さまで短くしたときの形状を成すよう、前記蛇腹折りの山部に対応する複数の支持位置で前記袋状体を支持可能、かつ、各支持位置が前記中心軸方向で隣り合う支持位置との間隔を変更可能に、前記収納空間に設けられた支持手段と、
前記袋状体の外側面および内側面を、前記中心軸方向に沿って互いに反対方向に移動させると共に、前記袋状体の両端部でそれぞれ、前記袋状体の外側面を内側面に、または、前記袋状体の内側面を外側面に移動させるよう、前記収納空間に設けられた駆動手段と、
前記中心軸方向で隣り合う支持位置同士の間隔を変更することにより、前記蛇腹折りの区間を前記中心軸に対していずれかの方向に湾曲させるよう、前記収納空間に設けられた湾曲操作手段とを、
有していることを特徴とする表面循環装置。
【請求項2】
前記蛇腹折りの区間は、前記中心軸方向からの正面視で、外側の形状が略2×n角形(ただし、nは3以上の整数)であることを特徴とする請求項1記載の表面循環装置。
【請求項3】
前記袋状体は、非伸縮性または難伸縮性の柔軟な素材から成ることを特徴とする請求項1または2記載の表面循環装置。
【請求項4】
前記支持手段は、前記中心軸方向に沿った前記袋状体の外側面の移動により回転するよう、前記中心軸方向に沿って回転可能かつ前記袋状体を支持可能に各支持位置に設けられた回転ローラを有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の表面循環装置。
【請求項5】
前記湾曲操作手段は、前記蛇腹折りの区間を湾曲させるとき、その湾曲の内側になる範囲で、前記中心軸方向で隣り合う支持位置同士の間隔を狭める構成、および/または、前記湾曲の外側になる範囲で、前記中心軸方向で隣り合う支持位置同士の間隔を拡げる構成を有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の表面循環装置。
【請求項6】
前記支持手段は、前記袋状体の前記蛇腹折りの区間の複数の内側位置で前記袋状体を支持可能、かつ、各内側位置が前記中心軸方向で隣り合う内側位置との間隔を変更可能であり、前記中心軸方向に沿った前記袋状体の内側面の移動により回転するよう、前記中心軸方向に沿って回転可能かつ前記袋状体を支持可能に各内側位置に設けられた内側ローラを有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の表面循環装置。
【請求項7】
前記湾曲操作手段は、前記蛇腹折りの区間を湾曲させるとき、その湾曲の内側になる範囲で、前記中心軸方向で隣り合う支持位置同士および内側位置同士の間隔を狭める構成、ならびに/または、前記湾曲の外側になる範囲で、前記中心軸方向で隣り合う支持位置同士および内側位置同士の間隔を拡げる構成を有していることを特徴とする請求項6記載の表面循環装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面循環装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本発明者等により、トーラスを中心軸に沿って細長くした形状を有し、トーラスの外側面および内側面の表面が循環する袋状の移動体が開発されているが(例えば、非特許文献1参照)、このような移動体では、中心軸方向への直進しかできないため、その進行方向を変えるために、先端や胴体を能動的に湾曲させる機構の開発が行われている。その湾曲機構として、例えば、移動体の中心軸に対して片側の空気圧を高めることにより湾曲させるもの(例えば、非特許文献2または3参照)や、移動体の中心軸を中心として所定の角度間隔で、長さ方向に伸びるよう取り付けられた複数のワイヤのうち、所望のワイヤを引くことにより湾曲させるもの(例えば、非特許文献4または5参照)が提案されている。
【0003】
なお、従来、円筒体を蛇腹折りすることにより、円筒体を折り畳んで縮めたり、円筒状に展開したりすることができる構造が提案されている(例えば、特許文献1乃至3参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】K. Tadakuma, H. Ogata, R. Tadakuma, J. Berengueres, “Torus omnidirectional driving unit mechanism realized by curved crawler belts”, 2014 IEEE International Conference on Robotics and Automation (ICRA), May 2014, p.2567
【文献】H. Tsukagoshi, N. Arai, I. Kiryu, A. Kitagawa, “Tip Growing Actuator with the Hose-shaped Structure Aiming for Inspection on Narrow Terrain”, International Journal of Automation Technology, 2011, Vol.5, No.4, p.516-522
【文献】中村知行、塚越秀行、「人体荷重下を無摺動で滑り込むSlip-in マニピュレータの提案」、日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会2016、2016年、2A1-04a6
【文献】Kim, Y., Cheng, S., Kim, S., Iagnemma, K., “Design of a Tubular Snake-like Manipulator with Stiffening Capability by Layer Jamming”, Proceedings of the IEEE International Conference on Robots and Systems, 2012
【文献】Laura H. Blumenschein, Lucia T. Gan, Jonathan A. Fan, Allison M. Okamura, Elliot W. Hawkes, “A Tip-Extending Soft Robot Enables Reconfigurable and Deployable Antennas”, IEEE Robotics and Automation Letters, April 2018, Vol. 3, No. 2, p.949-956
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-223299号公報
【文献】特開2003-128041号公報
【文献】特開2015-033772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献2または3に記載の空気圧を利用する湾曲機構では、移動体内部の空気圧の差が大きくなると前進しにくくなるため、大きい曲率で湾曲させるのは困難であるという課題があった。また、移動体のあらかじめ決めた領域でしか空気圧の増減を行うことができないため、湾曲方向が限定されてしまい、それ以外の所望の方向に湾曲させることはできないという課題があった。非特許文献4または5に記載のワイヤの牽引による湾曲機構では、所望の方向に湾曲させることはできるが、移動体の側面の伸縮には限界があるため、やはり大きい曲率で湾曲させるのは困難であるという課題があった。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、大きい曲率でも湾曲可能で、所望の方向に湾曲させることができる表面循環装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る表面循環装置は、トーラスを中心軸に沿って細長くした形状を成し、内部に収納空間を有する袋状体と、前記袋状体の外側面の全体または前記中心軸に沿った一部区間が、円筒を蛇腹折りして前記中心軸に沿って所定の長さまで短くしたときの形状を成すよう、前記蛇腹折りの山部に対応する複数の支持位置で前記袋状体を支持可能、かつ、各支持位置が前記中心軸方向で隣り合う支持位置との間隔を変更可能に、前記収納空間に設けられた支持手段と、前記袋状体の外側面および内側面を、前記中心軸方向に沿って互いに反対方向に移動させると共に、前記袋状体の両端部でそれぞれ、前記袋状体の外側面を内側面に、または、前記袋状体の内側面を外側面に移動させるよう、前記収納空間に設けられた駆動手段と、前記中心軸方向で隣り合う支持位置同士の間隔を変更することにより、前記蛇腹折りの区間を前記中心軸に対していずれかの方向に湾曲させるよう、前記収納空間に設けられた湾曲操作手段とを、有していることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る表面循環装置は、駆動手段で、袋状体の外側面および内側面を、中心軸方向に沿って互いに反対方向に移動させると共に、袋状体の両端部でそれぞれ、袋状体の外側面を内側面に、または、袋状体の内側面を外側面に移動させることにより、袋状体の表面、すなわち袋状体の外側面および内側面を循環させることができる。これにより、本発明に係る表面循環装置は、移動体として使用するとき、袋状体の外側面が接する設置面に対して、袋状体の外側面の移動方向とは反対側に向かって移動することができる。また、本発明に係る表面循環装置は、湾曲操作手段により、袋状体の蛇腹折りの区間を所望の方向に湾曲させることができるため、移動体として使用するときには、所望の方向に進行方向を変えることができる。また、湾曲させる区間が蛇腹折り構造であるため、大きい曲率でも湾曲させることができる。
【0010】
本発明に係る表面循環装置は、湾曲させる区間が円筒を蛇腹折りした形状を成しているため、円筒形状を成し、駆動手段で移動する袋状体の外側面を、容易に蛇腹折り形状に変形することができる。円筒を蛇腹折りした形状は、例えば、特許文献1乃至3に記載の形状など、いかなる形状であってもよいが、中心軸周りの回転を伴わずに、中心軸方向に沿って伸縮する形状であることが好ましい。本発明に係る表面循環装置は、袋状体の外側面および内側面の表面の循環を利用して、移動体や搬送装置などとして利用することができる。
【0011】
本発明に係る表面循環装置で、前記蛇腹折りの区間は、前記中心軸方向からの正面視で、外側の形状が略2×n角形(ただし、nは3以上の整数)であることが好ましく、特に略八角形であることが好ましい。この場合、支持手段などの構造を、比較的簡単に構成することができる。
【0012】
本発明に係る表面循環装置で、前記袋状体は、非伸縮性または難伸縮性の柔軟な素材から成ることが好ましい。この場合、柔軟な素材から成るため、蛇腹折り形状への変形や、外側面から内側面への移動時および内側面から外側面への移動時の変形、外部環境との接触時の変形が、容易かつスムーズである。また、非伸縮性または難伸縮性であるため、支持手段や接触時の外部環境に余分な力がかかりにくい。袋状体は、例えば、ウレタン製のシートで形成されている。
【0013】
本発明に係る表面循環装置で、前記支持手段は、前記中心軸方向に沿った前記袋状体の外側面の移動により回転するよう、前記中心軸方向に沿って回転可能かつ前記袋状体を支持可能に各支持位置に設けられた回転ローラを有していることが好ましい。この場合、回転ローラの回転により、袋状体の外側面をスムーズに移動させることができる。
【0014】
本発明に係る表面循環装置で、前記湾曲操作手段は、前記蛇腹折りの区間を湾曲させるとき、その湾曲の内側になる範囲で、前記中心軸方向で隣り合う支持位置同士の間隔を狭める構成、および/または、前記湾曲の外側になる範囲で、前記中心軸方向で隣り合う支持位置同士の間隔を拡げる構成を有していることが好ましい。この場合、蛇腹折りの区間を容易に湾曲させることができる。湾曲操作手段は、いかなる構成で支持位置同士の間隔を変更してもよく、例えば、ワイヤを引くことにより、支持位置同士の間隔を狭めるよう構成されていてもよい。
【0015】
本発明に係る表面循環装置で、前記支持手段は、前記袋状体の前記蛇腹折りの区間の複数の内側位置で前記袋状体を支持可能、かつ、各内側位置が前記中心軸方向で隣り合う内側位置との間隔を変更可能であり、前記中心軸方向に沿った前記袋状体の内側面の移動により回転するよう、前記中心軸方向に沿って回転可能かつ前記袋状体を支持可能に各内側位置に設けられた内側ローラを有していてもよい。この場合、内側ローラの回転により、袋状体の内側面をスムーズに移動させることができる。内側ローラと回転ローラとを組み合わせることにより、袋状体をよりスムーズに移動させることができる。
【0016】
また、この場合、前記湾曲操作手段は、前記蛇腹折りの区間を湾曲させるとき、その湾曲の内側になる範囲で、前記中心軸方向で隣り合う支持位置同士および内側位置同士の間隔を狭める構成、ならびに/または、前記湾曲の外側になる範囲で、前記中心軸方向で隣り合う支持位置同士および内側位置同士の間隔を拡げる構成を有していることが好ましい。この場合、蛇腹折りの区間を容易に湾曲させることができる。湾曲操作手段は、いかなる構成で支持位置同士および内側位置同士の間隔を変更してもよく、例えば、ワイヤを引くことにより、支持位置同士および内側位置同士の間隔を狭めるよう構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、大きい曲率でも湾曲可能で、所望の方向に湾曲させることができる表面循環装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態の表面循環装置の、袋状体の内部を透視した(a)平面図、(b)側面図、(c)正面図である。
図2】本発明の実施の形態の表面循環装置の、袋状体を取り除いた状態の(a)平面図、(b)側面図、(c)正面図である。
図3】本発明の実施の形態の表面循環装置の、袋状体を取り除いた状態の斜視図である。
図4】本発明の実施の形態の表面循環装置の、蛇腹折りの区間を湾曲させた使用状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図4は、本発明の実施の形態の表面循環装置を示している。
図1乃至図3に示すように、表面循環装置10は、細長く、長さ方向に沿った中心軸に対して垂直な上下方向および左右方向で対称な形状を成している。表面循環装置10は、袋状体11と支持手段12と駆動手段13と湾曲操作手段14とを有している。
【0020】
図1に示すように、袋状体11は、非伸縮性または難伸縮性の柔軟な素材から成るシートを、トーラスを中心軸に沿って細長くした形状に形成して成り、内部に収納空間11aを有している。具体的な一例では、袋状体11は、ウレタン製のシートで形成されている。
【0021】
図1乃至図3に示すように、支持手段12は、複数の矩形枠体21と、複数の回転ローラ22と、複数の内側ローラ23と、中央支持体24と、1対の端部支持体25とを有している。支持手段12は、表面循環装置10の両端部に各端部支持体25が配置され、表面循環装置10の中央部に、各端部支持体25との間に間隔をあけて中央支持体24が配置され、中央支持体24と各端部支持体25との間に、それぞれ複数の矩形枠体21が配置されている。
【0022】
各矩形枠体21は、細長い矩形状の枠体であり、中央支持体24と各端部支持体25との間でそれぞれ、矩形枠を含む面が表面循環装置10の中心軸に対して垂直になるよう、所定の間隔をあけて配置されている。また、各矩形枠体21は、表面循環装置10の中心軸が矩形枠の中心を通るよう配置されている。各矩形枠体21は、各長辺および各短辺が表面循環装置10の上下方向または左右方向に平行になると共に、各長辺の伸長方向が、隣り合う矩形枠体21の各短辺の伸長方向と平行を成すよう、隣り合う矩形枠体21が表面循環装置10の中心軸を中心として90度ずれた状態で配置されている。各矩形枠体21は、隣り合う矩形枠体21との間隔を一定に保つよう、一定の長さの4つのコイルバネ26により隣り合う矩形枠体21と連結されている。各コイルバネ26は、表面循環装置10の中心軸方向から各矩形枠体21を正面視したときに、各矩形枠体21の内側に形成される正方形の4つの角に対応する位置に取り付けられている。なお、具体的な一例では、矩形枠体21は、中央支持体24と各端部支持体25との間に、それぞれ6つずつ配置されている。
【0023】
各回転ローラ22は、各矩形枠体21の1対の短辺の外側に、その短辺に沿った軸を中心として回転するよう設けられている。これにより、各回転ローラ22は、表面循環装置10の中心軸方向に沿って回転可能になっている。各内側ローラ23は、各矩形枠体21の1対の長辺の中心部に、その長辺を中心として回転するよう設けられている。これにより、各内側ローラ23は、表面循環装置10の中心軸方向に沿って回転可能になっている。
【0024】
中央支持体24は、表面循環装置10の両端側に配置された各矩形枠体21のうち、最も表面循環装置10の中央部側に配置された矩形枠体21同士を連結するよう設けられている。中央支持体24は、枠状を成し、連結した各矩形枠体21の外形を結んで形成される立体の内側に配置されている。中央支持体24は、表面循環装置10の中心軸から所定の距離の範囲が中空となるよう設けられている。
【0025】
各端部支持体25は、表面循環装置10の両端側に配置された各矩形枠体21のうち、最も表面循環装置10の端部側に配置された矩形枠体21から、表面循環装置10の両端に向かってさらに伸びるよう設けられている。各端部支持体25は、枠状を成し、最も表面循環装置10の端部側に配置された矩形枠体21の外形を表面循環装置10の両端に向かって延長した立体の内側に配置されている。各端部支持体25は、表面循環装置10の各端部の上部および下部に設けられたカバー25aを有している。各端部支持体25は、表面循環装置10の中心軸から所定の距離の範囲が中空となるよう設けられている。
【0026】
駆動手段13は、1対から成り、各端部支持体25の上部および下部のカバー25aの間にそれぞれ取り付けられている。各駆動手段13は、1対の円柱ローラ31と1対の駆動モータ32と1対の駆動用回転伝達部33とを有している。1対の円柱ローラ31は、表面循環装置10の先端に、表面循環装置10の上下方向の軸を中心として回転可能に、表面循環装置10の左右方向に間隔を開けて並んで配置されている。1対の駆動モータ32は、各円柱ローラ31に対応して設けられ、表面循環装置10の中央部寄りに、表面循環装置10の左右方向に並んで配置されている。
【0027】
1対の駆動用回転伝達部33は、対応する各円柱ローラ31と各駆動モータ32との間にそれぞれ配置され、各駆動モータ32の回転を、対応する各円柱ローラ31に伝達して、各円柱ローラ31を回転するよう設けられている。具体的な一例では、各駆動用回転伝達部33は、かさ歯車を利用して回転を伝達するよう構成されている。各駆動手段13は、各円柱ローラ31が互いに反対方向に回転するよう構成されている。
【0028】
湾曲操作手段14は、8組から成り、中央支持体24に取り付けられている。各湾曲操作手段14は、ワイヤ41とリール42と巻取モータ43と巻取用回転伝達部44とを有している。各湾曲操作手段14のワイヤ41は、中央支持体24から各端部支持体25に向かって4本ずつ設けられている。各ワイヤ41は、隣り合う各矩形枠体21を連結する各コイルバネ26の中を通って、それぞれ中央支持体24から各端部支持体25に向かって伸びるよう設けられている。各ワイヤ41は、各端部支持体25の側の先端が、最も表面循環装置10の端部側に配置された矩形枠体21に固定されている。
【0029】
各リール42は、各ワイヤ41に対応して設けられ、各ワイヤ41の中央支持体24の側の端部が巻き付けられている。各巻取モータ43は、各リール42に対応して設けられ、中央支持体24の中央部に配置されている。各巻取用回転伝達部44は、対応する各リール42と各巻取モータ43との間にそれぞれ配置され、各巻取モータ43の回転を、対応する各リール42に伝達して、各ワイヤ41を巻き取ったり繰り出したりするよう設けられている。具体的な一例では、各巻取用回転伝達部44は、かさ歯車および平歯車を利用して回転を伝達するよう構成されている。これにより、各湾曲操作手段14は、中央支持体24から各端部支持体25の間のそれぞれ4つの位置で、互いに独立して、各矩形枠体21の間隔を狭めたり拡げたりするよう構成されている。
【0030】
図1に示すように、表面循環装置10は、袋状体11の内部の収納空間11aに、支持手段12、駆動手段13および湾曲操作手段14が配置されている。袋状体11は、中央支持体24から各矩形枠体21および一方の端部支持体25の外側を覆い、一方の端部支持体25の側の1対の円柱ローラ31の間を通って、一方の端部支持体25の中空部、各矩形枠体21の内側、中央支持体24の中空部、各矩形枠体21の内側および他方の端部支持体25の中空部を通り、さらに、他方の端部支持体25の側の1対の円柱ローラ31の間を通って、他方の端部支持体25、各矩形枠体21および中央支持体24の外側を覆うよう設けられている。袋状体11は、表面循環装置10の長さ方向およびその垂直方向でシートが余らない大きさを有し、ほぼ支持手段12の外形に沿って設けられている。
【0031】
これにより、表面循環装置10は、中央支持体24から各端部支持体25の間の区間の袋状体11が、円筒を蛇腹折りして表面循環装置10の中心軸に沿って所定の長さまで短くしたときの形状を成すよう構成されている。具体的な一例では、図1(c)に示すように、蛇腹折りの区間は、表面循環装置10の中心軸方向からの正面視で、外側の形状が略八角形となっているが、略2×n角形(ただし、nは3以上の整数)となるよう構成されていてもよい。
【0032】
支持手段12は、蛇腹折りの山部に対応する複数の支持位置、および、複数の内側位置で、袋状体11を支持している。各支持位置は、各矩形枠体21の1対の短辺に対応しており、各回転ローラ22が設けられている。各内側位置は、各矩形枠体21の1対の長辺の中央部に対応しており、各内側ローラ23が設けられている。表面循環装置10は、支持手段12の各回転ローラ22を袋状体11に押し付けることにより、蛇腹折りの区間が形成されている。
【0033】
各駆動手段13は、各駆動モータ32により各円柱ローラ31を回転させることにより、袋状体11の外側面および内側面を、表面循環装置10の中心軸方向に沿って互いに反対方向に移動させると共に、袋状体11の両端部でそれぞれ、袋状体11の外側面を内側面に、または、袋状体11の内側面を外側面に移動させるよう構成されている。このとき、支持手段12は、袋状体11の外側面の移動により各回転ローラ22が回転し、袋状体11の内側面の移動により各内側ローラ23が回転するよう構成されている。
【0034】
図4に示すように、各湾曲操作手段14は、1または複数のワイヤ41を巻き取り、表面循環装置10の中心軸方向で隣り合う各矩形枠体21同士の間隔、すなわち、表面循環装置10の中心軸方向で隣り合う支持位置同士および内側位置同士の間隔を狭めることにより、蛇腹折りの区間を表面循環装置10の中心軸に対して所望の方向に湾曲させるよう構成されている。各湾曲操作手段14は、蛇腹折りの区間を湾曲させるとき、その湾曲の内側になる範囲で、表面循環装置10の中心軸方向で隣り合う各矩形枠体21同士の間隔を狭めるよう構成されている。なお、各湾曲操作手段14は、湾曲の外側になる範囲では、ワイヤ41の長さを維持するよう構成されている。また、各湾曲操作手段14は、巻き取ったワイヤ41を繰り出すことにより、コイルバネ26の復元力で各矩形枠体21同士の間隔が拡がり、湾曲が元に戻るよう構成されている。
【0035】
なお、表面循環装置10は、2つの蛇腹折りの区間をそれぞれ独立に所望の方向に湾曲可能であり、図4に示すように、全体がS字形の形状を成すよう2つの蛇腹折りの区間を逆方向に湾曲させるだけでなく、2つの蛇腹折りの区間を同じ方向に湾曲させたり、いずれか一方の蛇腹折りの区間のみを湾曲させたりすることもできるよう構成されている。また、図4に示すように、表面循環装置10は、背中合わせに配置された各巻取モータ43を、互いの間隔を広げて配置し、中央支持体24で支持する中央部の長さをより長く構成してもよい。
【0036】
次に、作用について説明する。
表面循環装置10は、各駆動手段13で、袋状体11の外側面および内側面を、中心軸方向に沿って互いに反対方向に移動させると共に、袋状体11の両端部でそれぞれ、袋状体11の外側面を内側面に、または、袋状体11の内側面を外側面に移動させることにより、袋状体11の表面、すなわち袋状体11の外側面および内側面を循環させることができる。これにより、表面循環装置10は、移動体として使用するとき、袋状体11の外側面が接する設置面に対して、袋状体11の外側面の移動方向とは反対側に向かって移動することができる。また、表面循環装置10は、各湾曲操作手段14により、袋状体11の蛇腹折りの区間を所望の方向に湾曲させることができるため、移動体として使用するときには、所望の方向に進行方向を変えることができる。また、湾曲させる区間が蛇腹折り構造であるため、大きい曲率でも湾曲させることができる。
【0037】
表面循環装置10は、湾曲させる区間が円筒を蛇腹折りした形状を成しているため、円筒形状を成し、各駆動手段13で移動する袋状体11の外側面を、容易に蛇腹折り形状に変形することができる。表面循環装置10は、袋状体11が柔軟な素材から成るため、蛇腹折り形状への変形や、外側面から内側面への移動時および内側面から外側面への移動時の変形、外部環境との接触時の変形が、容易かつスムーズである。また、袋状体11が非伸縮性または難伸縮性であるため、支持手段12や接触時の外部環境に余分な力がかかりにくい。
【0038】
表面循環装置10は、各回転ローラ22および各内側ローラ23の回転により、袋状体11の外側面および内側面をスムーズに移動させることができる。また、表面循環装置10は、蛇腹折りの区間を湾曲したときでも、蛇腹折りの区間の袋状体11が各回転ローラ22および各内側ローラ23のみに接触している。このため、湾曲するときの各矩形枠体21の移動をスムーズに行うことができる。また、湾曲した状態での袋状体11の外側面および内側面の移動もスムーズに行うことができる。表面循環装置10は、袋状体11の外側面および内側面の表面の循環を利用して、移動体や搬送装置などとして利用することができる。
【0039】
なお、各回転ローラ22は、各矩形枠体21の1対の短辺の外側に、各矩形枠体21の各長辺の伸長方向に沿って所定の範囲で往復移動可能、かつ、その範囲内で各矩形枠体21の遠方側に付勢された状態で設けられていてもよい。この場合、蛇腹折りの山部が外部環境と接触した時の衝撃を、各回転ローラ22の往復移動により吸収することができ、表面循環装置10が破損するのを防ぐと共に、外部環境への影響を抑えることもできる。
【符号の説明】
【0040】
10 表面循環装置
11 袋状体
11a 収納空間
12 支持手段
21 矩形枠体
22 回転ローラ
23 内側ローラ
24 中央支持体
25 端部支持体
25a カバー
26 コイルバネ
13 駆動手段
31 円柱ローラ
32 駆動モータ
33 駆動用回転伝達部
14 湾曲操作手段
41 ワイヤ
42 リール
43 巻取モータ
44 巻取用回転伝達部


図1
図2
図3
図4