IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エイセル インダストリーズ リミテッドの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】硬化済み熱硬化性樹脂を成形する方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 35/08 20060101AFI20221209BHJP
【FI】
B29C35/08
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020501855
(86)(22)【出願日】2018-03-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 GB2018050790
(87)【国際公開番号】W WO2018172799
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-03-24
(31)【優先権主張番号】1704750.7
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519345232
【氏名又は名称】エイセル インダストリーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ACELL INDUSTRIES LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【弁理士】
【氏名又は名称】松橋 泰典
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】アルベリテッリ アルディノ
(72)【発明者】
【氏名】ゼッダ ロベルト
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-144327(JP,A)
【文献】特開平07-124950(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0224683(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104827687(CN,A)
【文献】特開2015-036394(JP,A)
【文献】特開2001-342290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 35/00-35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i. 硬化済み熱硬化性樹脂基材を用意するステップ;
ii. 閉鎖温度制御環境を用意するステップであって、選択された前記閉鎖温度制御環境は、前記硬化済み熱硬化性樹脂基材と化学的に反応しないステップ;
iii. 前記硬化済み熱硬化性樹脂基材を前記閉鎖温度制御環境内に入れるステップ;
iv. 電磁放射線の供給源を用意するステップ;
v. 前記閉鎖温度制御環境内の前記硬化済み熱硬化性樹脂基材を前記電磁放射線の供給源により照射するステップ;及び
vi. 前記照射された熱硬化性樹脂基材を成形するステップ
を含む、硬化済み熱硬化性樹脂基材を成形する方法。
【請求項2】
温度制御環境が、気体、蒸気、液体、若しくはゲル、又はそれらの組み合わせの形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
液体が、エチレングリコール、ブタノール、トルエン、デカン、及び水、並びにそれらの組み合わせから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
液体が、照射中に20~95℃の温度に加熱される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
硬化済み熱硬化性樹脂が、閉鎖温度制御環境内に少なくとも実質的に浸漬されている、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
硬化済み熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂、ビニルエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、及びシート状成形材料から選択される、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
硬化済み熱硬化性樹脂が、1又は2以上の充填剤をさらに含む、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
硬化済み熱硬化性樹脂が発泡済みである、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
硬化済み熱硬化性樹脂の利用可能な細孔容積の少なくとも50%が温度制御環境で満たされる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
電磁放射線が、マイクロ波、RF、超音波、及び赤外線から選択される、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
マイクロ波放射線が1mm~1mの波長、及び/又は
マイクロ波放射線が300GHz~300MHzの周波数、及び/又は
マイクロ波放射線が500W~120kWの電力を伝送する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
硬化済み熱硬化性樹脂が、30分間未満照射される、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
硬化済み熱硬化性樹脂基材が、照射される前に事前処理される、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
硬化済み熱硬化性樹脂基材が予備成形され、前記予備成形された形状を成形中に変化させることを含む、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
以下のステップを含む、硬化済み熱硬化性樹脂基材を、成形する方法。
i. 硬化済み熱硬化性樹脂基材を用意するステップ;
ii. 温度制御環境として流体を用意するステップであって、選択された前記温度制御環境は、前記硬化済み熱硬化性樹脂基材と化学的に反応しないステップ;
iii. 前記硬化済み熱硬化性樹脂基材を前記流体中に少なくとも部分的に浸漬させるステップ;
iv. 電磁放射線の供給源を用意するステップ;
v. 前記少なくとも部分的に浸漬されている硬化済み熱硬化性樹脂基材を照射するステップ;及び
vi. 前記照射された熱硬化性樹脂基材を成形するステップ;
【請求項16】
i. 予備成形された硬化済み熱硬化性樹脂基材を用意するステップ;
ii. 閉鎖温度制御環境を用意するステップであって、選択された前記閉鎖温度制御環境は、前記予備成形された硬化済み熱硬化性樹脂基材と化学的に反応しないステップ;
iii. 前記予備成形された硬化済み熱硬化性樹脂基材を前記閉鎖温度制御環境内に入れ
るステップ;
iv. 電磁放射線の供給源を用意するステップ;
v. 前記閉鎖温度制御環境内の前記予備成形された硬化済み熱硬化性樹脂基材を照射するステップ;及び
vi. 前記照射された熱硬化性樹脂基材を再成形するステップ
を含む、予備成形された硬化済み熱硬化性樹脂基材をリサイクルする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化済み熱硬化性樹脂基材を成形する方法、より詳細には、電磁放射線を使用して硬化済み熱硬化性樹脂を成形する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性ポリマーは、消費財、機械部品、医療機器、並びに包装及び保管材料を含む種々の用途に汎用されている。特に、熱硬化性ポリマーの使用は、例えば、サンドイッチパネル、床材及び屋根材、断熱材、コーティング、配管、並びに橋梁構造物の形成における使用など、建設業界においてますます一般的になりつつある。
【0003】
これらの製品を形成する間に、熱硬化性樹脂は、架橋プロセス(硬化)を経て、典型的には優れた寸法安定性、高温での機械的耐性、耐熱性、及び耐環境性を有する製品を形成する。
【0004】
架橋プロセスは、典型的には熱加工によって開始され、それは、対流、伝導、及び/又は放射による熱源から熱硬化性樹脂への熱エネルギーの移動を含む。架橋反応自体が発熱性であるために、熱硬化性樹脂中でのこの追加的な熱エネルギーの放出によって、架橋反応が行われる速さ及び得られる硬化済み樹脂中の架橋の度合いが増加する。
【0005】
最近になって、そのような加熱方法は、材料全体にわたって不均一な加熱をもたらしやすく、そのために架橋が不均一になり、ランニングコストが高くなることが見出されている。
【0006】
検討されている一つの選択肢は、熱硬化性樹脂を硬化するための実現可能な代替方法としてマイクロ波を使用することである。熱エネルギーを伝達させる従来の熱加工技法とは異なり、マイクロ波エネルギーは、材料に特異的に向けられる。双極性分子は、自然に外部磁場によって整列するので、マイクロ波放射線によって生成する振動電磁場を印加すると、試料中の双極性分子は、交番磁場と整列するために絶えず回転するようになる。このように分子が絶えず回転すると、分子摩擦を通して熱が生じる。
【0007】
マイクロ波加熱を使用する利点として、加工時間の短縮、エネルギー利用の向上、及び加工温度の低下が挙げられる(例えば、"Reactive Polymers Fundamentals and Applications: A Concise Guide to Industrial Polymers", by Johannes Karl Fink, second edition, 2013, page 124を参照されたい)。これらの利点のために、熱硬化性樹脂を硬化する(したがって堅くする)ためのマイクロ波の使用は、ますます普及しつつある(例えば、"Radiation Curing", by R. S. Davidson, Volume 12, Number 4, page 20も参照されたい)。
【0008】
硬化に使用される技法とは無関係に、一旦硬化したら架橋プロセスは不可逆的であり、よって硬化済み熱硬化性樹脂は再成型又は再成形することができないと一般に理解されている(例えば、"Green and Sustainable Manufacturing of Advanced Material", 2016 edited by M. Singh, T. Ohji, and R. Asthana, page 584を参照されたい)。
【0009】
さらに、熱硬化性ポリマーは、加熱時に溶融するのではなく熱分解するので、これらの材料は、熱可塑性材料に関連する従来の方法を使用して再加工することができないことも、当技術分野において一般に周知されている。
【0010】
よって、今までのところ、熱硬化性ポリマーに関するリサイクル技法は、硬化済みポリマーを機械的に粉砕して細粒にして、充填剤の材料として使用することに限られている。
【0011】
したがって、熱硬化性樹脂に関する特定の課題は、完全に硬化するとこれらの材料は再成形して使用できないことであることが周知されている。加えて、欠陥を含む熱硬化性樹脂から生成された製品は、軽微な欠陥であっても硬化後に修復することができないために、販売することができず、単に廃棄物として分類されるだけである。そのような廃棄物によって、これらの材料を用いる作業の費用効率が低減し、それらの潜在用途も制限される。
【0012】
上記を鑑みると、硬化済み熱硬化性材料を、例えば、再成形、再使用、リサイクル、及び/又は修復できるように(単に他の製品の充填剤の材料として使用されるのではなく)成形する方法を生み出すことが産業的及び科学的に大いに所望されていると思われる。
【0013】
さらに、硬化済み熱硬化性ポリマー材料は、対応するそれらの未硬化状態と比較して堅くて強固であるために、それらの方が、包装、輸送、保管、及び取扱いが容易である。したがって、単に予備硬化済み熱硬化性樹脂シートを販売し、これらの材料を、後日、必要に応じて成形する方法を使用することが有利であり、商業的であろう。
【0014】
Jeannette M. Garcia et al.("Recyclable, Strong Thermosets and Organogels via Paraformaldehyde Condensations with Diamines", Science, volume 344, pages 732 to 735を参照されたい)は、「すべての公知の熱硬化性ポリマーは、一旦硬化すると再成型することができず、高温に加熱すると熱分解するために、リサイクルするのが難しい。」ことを認めていた。しかし、この課題に対処しようとして、Garcia et al.は、ある特定の条件下で解重合可能な2つの新しい部類の窒素含有熱硬化ポリマーを形成する方法を開発した。第1の部類であるヘミアミナール動的共有結合ネットワーク(HDCN,hemiaminal dynamic covalent network)は、2つの-NH単位を含有するモノマー、例えば、4,4’-オキシジアニリン(ODA,4,4'-oxydianiline)又はジアミン末端ポリ(エチレングリコール)(PEG,poly(ethylene glycol))を、パラホルムアルデヒドと50℃前後の温度で重合することによって形成される。HDCNsは、重合中に使用されるジアミンモノマーに応じて汎用性の高い特性を呈し、その特性は、高強度で化学的に強固な材料から、生理的pHの状況での化学的可逆性を呈する自己回復性オルガノゲルまで及んでいたことが述べられている。第2の部類の材料は、ODAから調製されたHDCNsを200℃前後の温度に加熱することによって、これらの材料を化学的に再配列することによって形成される。形成された材料、ポリ(1,3,5-ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン)(PHT,poly(1,3,5-hexahydro-1,3,5-triazine))は、高度に架橋されたポリマーネットワークを含有していた。
【0015】
Garcia et al.は、形成されたHDCNとODA PHTは両方とも、強酸性溶液(pH2未満)の存在下で完全に解重合されることを述べている。
【0016】
この解重合法は、これらの熱硬化ポリマーをそれらの元々の成分に分解することができるが、開示されるポリマーに高度に特異的である。開示される方法が、他の熱硬化性樹脂、例えば、業界で汎用されるものにも拡張することができるという提言もなければ、これらの新たな材料の費用が、それらの専門的な性質を考慮しても商業的に実現可能であるという提言もない。さらに、最も高弾性の材料は化学的に不活性であるために、そのような材料の解重合に強酸を使用しても影響を与えそうもないことが、この分野では周知されている。
【0017】
さらに、Garcia et al.によって開示される方法は強酸の使用が必要とされるが、これは、購入するのに高価であるだけでなく、必要な強化機器が要求されるために高価になり得る。加えて、強酸は有害であり、特に大規模では、例えばこの方法の商業化に必要とされる規模ではそうである。
【0018】
よって、公知の熱硬化ポリマーに適用可能な、硬化済み熱硬化材料を成形する方法を有することが有利であろう。さらに、硬化済み熱硬化樹脂を成形する、以前の公知の方法と比較して費用効率が高く、健康上のリスクが低減した方法も望ましいであろう。
【0019】
本発明を用いると、驚くべきことに、当技術分野における現在の理解とは全く対照的に、ある特定の条件下で電磁放射線を使用して、予備硬化済み熱硬化性樹脂を成形することができることを本発明者らは見出した。本発明の方法によって、比較的単純で費用対効果が高い方法を使用して公知の硬化済み熱硬化樹脂を再成形することが可能になる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【文献】"Reactive Polymers Fundamentals and Applications: A Concise Guide to Industrial Polymers", by Johannes Karl Fink, second edition, 2013, page 124
【文献】"Radiation Curing", by R. S. Davidson, Volume 12, Number 4, page 20
【文献】"Green and Sustainable Manufacturing of Advanced Material", 2016 edited by M. Singh, T. Ohji, and R. Asthana, page 584
【文献】Jeannette M. Garcia et al. "Recyclable, Strong Thermosets and Organogels via Paraformaldehyde Condensations with Diamines", Science, volume 344, pages 732 to 735
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の態様によれば、
i. 硬化済み熱硬化性樹脂基材を用意するステップ;
ii. 閉鎖温度制御環境(confined temperature controlling environment)を用意するステップ;
iii. 硬化済み熱硬化性樹脂基材を閉鎖温度制御環境内に入れるステップ;
iv. 電磁放射線の供給源を用意するステップ;
v. 閉鎖温度制御環境内の硬化済み熱硬化性樹脂基材を照射するステップ;及び
vi. 照射された熱硬化性樹脂基材を成形するステップ
を含む、硬化済み熱硬化性樹脂基材を成形する方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、電磁放射線は、潜在的に分子レベルと原子レベルの両方で樹脂の内部振動を相当に増大させるように硬化済み熱硬化性樹脂基材にエネルギーをもたらすことができると考えられる。この方法の副生成物は、硬化済み熱硬化性樹脂内の熱の形成であり、これは、標準条件下で、硬化済み樹脂基材の熱的劣化をもたらすことになるか、又は硬化済み熱硬化性樹脂基材内でさらなる架橋を開始する/反応平衡を架橋に向けて押し進めることになる。温度制御環境が存在すると、熱的劣化及び/又は架橋に関する作用が軽減され、それによって硬化済み熱硬化性樹脂の分子振動及び原子振動が支配的になることが潜在的に可能となると考えられる。これによって、硬化済み熱硬化性樹脂の成形が可能になると考えられる。
【0023】
本発明によれば、閉鎖温度制御環境は、硬化済み熱硬化性樹脂基材から熱エネルギーを吸収できる物質を含む、任意の閉鎖環境を含むと見なされる。使用において、意図される閉鎖温度制御環境の目的は、硬化済み熱硬化性樹脂基材が熱的劣化及び/又はさらなる架橋が支配的特性となると見込まれる温度に加熱されないようにすることである。
【0024】
例として、多くの熱硬化性樹脂基材では、バルク樹脂基材が、150℃を上回る、例えば120℃を上回る温度に加熱されないようにすることが必要である。幾つかの実施形態では、基材が、110℃を上回る、例えば100℃を上回る温度に達しないようにすることが好ましい。
【0025】
特に、閉鎖温度制御環境は、好ましくは、硬化済み熱硬化性樹脂基材のものと比較して高い質量熱容量を有する物質であってもよい。上記を考慮すると、やはりいかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、温度制御環境は、ヒートシンクとして機能し、硬化済み熱硬化性基材が照射されるときに、それから熱エネルギーを吸収することができると考えられる。この結果、幾つかの実施形態では、硬化済み熱硬化性樹脂と温度制御環境の間に温度差が見られる。
【0026】
好ましくは、閉鎖温度制御環境の物質は、硬化済み熱硬化性樹脂基材と化学的に反応しない。
【0027】
閉鎖温度制御環境の物質は、気体、蒸気、液体、若しくはゲル、又はそれらの組み合わせの形態であってもよい。好ましい実施形態では、閉鎖温度制御環境の物質は液体である。
【0028】
温度制御環境の物質が液体である場合、それは、80℃以上、例えば、100℃以上の沸点を有していることが好ましい。使用される液体物質に応じて、そのような物質が120℃以上より高い、及び150℃以上という高さの沸点を有することさえあり得ることが想定できる。上記の理論に基づいて、硬化済み樹脂基材に供給されるエネルギーの量、硬化済み樹脂基材が熱的劣化を開始する温度、及び温度制御環境が吸収することが必要な熱エネルギーの量の間に取るべきバランスが存在することが理解されよう。
【0029】
閉鎖温度制御環境として使用するのに好ましい液体として、エチレングリコール、ブタノール、トルエン、デカン、及び水、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。より好ましくは、閉鎖温度制御環境は水である。
【0030】
水は安価であるだけでなく、その安全性リスクが最低限であるために、閉鎖温度制御環境としての水の使用は特に有利であると考えられる。
【0031】
好ましい実施形態では、硬化済み熱硬化性樹脂基材は、閉鎖温度制御環境内に少なくとも実質的に浸漬されていてもよい。実質的に浸漬されているとは、硬化済み樹脂基材の50%超が温度制御環境内にあることを意味する。原則として、使用中に、基材は、60%超、例えば70%超、例えば、80%、90%、及び95%程の多さの量で浸漬されていてもよい。
【0032】
好ましい実施形態では、硬化済み熱硬化性樹脂基材は、閉鎖温度制御環境内に完全に浸漬されていてもよい。
【0033】
硬化済み樹脂基材それ自体に関して、浸漬されているという用語は、液体又はゲルの形態の閉鎖温度制御環境が硬化済み樹脂基材上を表面被覆していること;及び硬化済み熱硬化性樹脂基材に直接隣接した領域が、蒸気又は気体の形態の温度制御された閉鎖環境を含むことを包含すると見なされるが、これらに限定されない。
【0034】
温度制御環境が液体又はゲルの形態である場合、それは、スプレーコーティング、液浸、はけ塗り、静電気的技法、又は他のそのようなプロセスを活用して、硬化済み熱硬化性樹脂基材に施されてもよい。そのようなプロセスの使用は、当業者の知識の範囲内であり、温度制御環境物質が分かれば必要に応じて適用することができる。
【0035】
或いは、単に硬化済み熱硬化性樹脂基材を、選択された温度制御環境の液体又はゲル物質を含有する容器内に入れるだけであってもよい。
【0036】
閉鎖温度制御環境が蒸気又は気体から選択される場合、硬化済み熱硬化性樹脂基材を、閉鎖温度制御環境の気体又は蒸気を含む容器内に入れてもよい。繰り返しになるが、蒸気又は気体は、当業者に公知の手段を使用して基材に供給されてもよい。
【0037】
他の実施形態では、閉鎖温度制御環境の気体又は蒸気は、成形しようとする硬化済み熱硬化性樹脂基材の表面に対して、表面に沿って、及び/又は表面の近傍に向かう連続流れの形態で提供されてもよい。
【0038】
本発明の方法は、熱硬化性樹脂全般、少なくとも商業的に使用されるすべての熱硬化性材料に適用可能であると考えられる。
【0039】
硬化済み熱硬化性樹脂基材は壊れやすい可能性があるが、成形ステップの間に加えられる圧力に実質的に耐えるのに十分な強度を有するものでなければならないことが理解され、そして実際に十分に当業者の知識の範囲内であると思われる。
【0040】
本発明に使用される硬化済み熱硬化性樹脂基材は、75~500kg/m、例えば、120~400kg/m、幾つかの実施形態では120~250kg/mの範囲内の密度を有してもよい。発泡材料の密度は、単純な実験、例えば、ASTM D792-13、ASTM D1505-10、及びASTM D1622によって容易に決定することができる。
【0041】
ある実施形態では、硬化済み熱硬化性樹脂基材は発泡済み材料である。硬化済み熱硬化性樹脂基材は、自立材料であってもよく、多くの用途において硬質の自立発泡材料である。
【0042】
そのような材料は、気泡構造を有することが知られている。気泡構造は、連続気泡型、独立気泡型、又はそれらの混合であってもよい。好ましい実施形態では、硬化済み熱硬化性樹脂基材は、実質的に連続気泡型構造を有する。
【0043】
硬化済み熱硬化性樹脂基材が連続気泡型発泡体である場合、連続気泡型構造の存在は幾つもの理由で有利であり得ると考えられる。第1に、発泡体内に気泡が存在するということは、硬化済み熱硬化性樹脂基材が、それ自体で、発泡していない基材よりも密度が低いことを意味している。密度が低減すると、基材内への電磁放射線の透過が向上することが示されている。
【0044】
第2に、連続気泡構造が存在するということは、基材の細孔が相互接続されていることを意味している。これらの相互接続された細孔によって、温度制御された閉鎖環境が(気体、蒸気、液体、又はゲルの形態にかかわらず)、硬化済み熱硬化性樹脂基材の構造全体に存在することが可能となる。上記の理論に基づくと、これによって結果的に照射中の硬化済み熱硬化性樹脂基材の厚さ全体の温度吸収をより有効に制御することができる。
【0045】
連続気泡型硬化済み熱硬化性樹脂基材が使用される場合、基材は、ミクロ孔、メソ孔、マクロ孔、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。本出願の目的のために、これらの用語は以下の意味を有する:ミクロ孔は直径2nm以下の細孔と見なされ、メソ孔は直径2nm~50nmの細孔と見なされ、マクロ孔は50nm以上の直径の細孔と見なされる。そのような孔径は、TAPPI T460及びISO 5636-5によって知られるガーレーヒル多孔性試験、並びにISO 5636-3によって知られるベントセン透気度試験などの従来の技法を使用して測定されてもよい。他のプロセスとして、硬質プラスチック材料中の連続気泡及び独立気泡の体積百分率を決定するISO 4590:2002が挙げられる。
【0046】
孔径が何であろうと、硬化済み熱硬化性樹脂基材の孔径は、閉鎖温度制御環境物質が連続気泡樹脂構造を透過できるのに十分な大きさのものであることが望ましいことが理解されよう。
【0047】
硬化済み熱硬化性樹脂基材が連続気泡構造を含む場合、利用可能な細孔容積の少なくとも50%が閉鎖温度制御環境の物質で満たされることが好ましい。より好ましくは、利用可能な細孔容積の少なくとも60%、さらにより好ましくは細孔容積の少なくとも70%が満たされる。より一層好ましくは、連続気泡型硬化済み熱硬化性樹脂基材の利用可能な細孔容積の少なくとも80%が、閉鎖温度制御環境で満たされる。幾つかの実施形態では、硬化済み熱硬化性樹脂基材の利用可能な細孔容積の少なくとも90%以上が閉鎖温度制御環境物質で満たされるというレベルに達することが可能であり得る。
【0048】
実施形態では、必要な場合、温度制御された環境が、硬化済み熱硬化性樹脂基材に圧力下で提供されることがあることが想定される。圧力の使用には、本発明に使用されるときに幾つもの有益性があり、それには、温度制御された環境物質が連続気泡型樹脂基材の気泡に確実に圧入されること、それによって細孔容積の充填が向上することが含まれる。例として、温度制御環境物質は、当業者に公知の圧力で提供されてもよく、それは、例えば120kPaであってもよいと思われる。
【0049】
硬化済み熱硬化性樹脂基材は、基材の表面積を増加させるための他の形成物、例えば、溝又は通路を含んでもよい。存在する場合、通路は、樹脂基材の少なくとも途中まで延びてもよく、幾つかの実施形態では、実質的に樹脂構造の厚さ全体を通して延びてもよい。そのような溝(grove)又は通路が存在すると、閉鎖温度制御環境と接触する硬化済み熱硬化性樹脂基材の表面積も増加する。本発明によって、硬化済み熱硬化性樹脂基材は、例えば溝又は通路を使用することによって、連続気泡型構造と追加的な特徴物を両方含んで、温度制御環境物質と接触する樹脂基材の表面積を増加させてもよいことも理解されよう。
【0050】
硬化済み熱硬化性樹脂基材は、樹脂基材の表面に穿孔も含んでもよい。一実施形態では、穿孔は、硬化済み熱硬化性樹脂基材の表面の少なくとも一部分に存在してもよい。或いは、穿孔は、熱硬化性樹脂基材の表面全体にわたって存在してもよい。穿孔が存在すると、閉鎖温度制御環境との接触に利用可能な樹脂基材の表面積が増加することが理解されよう。
【0051】
硬化済み熱硬化性樹脂基材は、フェノール樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂、ビニルエステル、ポリウレタン、及び/又はエポキシ樹脂から選択される1又は2以上の材料から形成されてもよい。
【0052】
好ましい実施形態では、熱硬化性樹脂はフェノール樹脂である。
【0053】
フェノール樹脂の好ましい例では、生成される基材は連続気泡型フェノール樹脂発泡体である。そのような材料は、
(a)少なくとも1の反応度数(reactivity number)(以下に定義する)を有する液体フェノールレゾールと;
(b)レゾール用の強酸硬化剤と
の間の硬化反応を、
(c)液体レゾールの少なくとも5重量%の量で存在し、レゾール及び硬化剤を含有する混合物全体に実質的に均一に分散した、不活性且つ不溶性の微粉化粒子状固体
の存在下で実行することによって生成されてもよく、
熱を加えられることに起因する、レゾール及び硬化剤を含有する混合物の温度は85℃を超えず、前記温度及び酸硬化剤の濃度は、硬化反応の副生成物として生じる化合物が混合物の固化前に混合物中で揮発し、それによって発泡済みフェノール樹脂生成物が生成されるような温度及び濃度である。
【0054】
フェノールレゾールとは、通常、水酸化ナトリウムなどのアルカリ触媒の存在下で少なくとも1種のフェノール化合物と少なくとも1種のアルデヒドとを周知の方式で縮合させることによって得られる酸硬化性プレポリマー組成物の適切な溶媒中の溶液を意味する。用いてもよいフェノール類の例として、フェノールそれ自体、及び通常はアルキル置換体であるそれらの置換体、誘導体が含まれるが、フェノールのヒドロキシル基に対するフェノールベンゼン環のオルト位及びパラ位の3つの位置が非置換であることを条件とする。そのようなフェノール類の混合物も使用されてもよい。レゾールの流動性を向上させることが必要とされる場合、そのようなフェノール類の1又は2以上とオルト又はパラ位の1つが置換されている置換フェノール類との混合物も用いられてもよいが、硬化済み生成物はあまり高度に架橋されないこととなる。しかし、一般に、フェノールは、経済的な理由から、主に又は完全にフェノールそれ自体で構成されるであろう。
【0055】
アルデヒドは一般にホルムアルデヒドであろう。しかし、より高い分子量のアルデヒドの使用も排除されない。
【0056】
レゾールのフェノール/アルデヒド縮合生成物成分は、フェノールを、フェノール1モル当たり少なくとも1モルのホルムアルデヒドと反応させることによって適切に形成され、ホルムアルデヒドは一般に、水中溶液として、例えばホルマリンとして用意される。少なくとも1.25対1というホルムアルデヒドのフェノールに対するモル比を使用することが好ましいが、2.5対1を上回る比は好ましくは回避される。最も好ましい範囲は、1.4~2.0対1である。
【0057】
混合物は、硬化ステップ中にレゾールのフェノール/アルデヒド反応生成物と反応して架橋の密度を低減させることになる、2個の活性なH原子を有する化合物(二価の化合物)も含有してもよい。好ましい二価の化合物は、ジオールであり、とりわけ、アルキレンジオールであるか、又はOH基の間の原子鎖が、メチレン及び/又はアルキル置換メチレン基だけでなく、1又は2以上のヘテロ原子、とりわけ酸素原子を含有するジオールであり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、及びネオペンチルグリコールである。特に好ましいジオールは、ポリ-、とりわけジ-、(アルキレンエーテル)ジオール、例えば、ジエチレングリコール、とりわけジプロピレングリコールである。好ましくは、二価の化合物は、フェノール/アルデヒド縮合生成物の重量に基づいて、0~35重量%、より好ましくは0~25重量%の量で存在する。最も好ましくは、二価の化合物は、使用される場合、フェノール/アルデヒド縮合生成物の重量に基づいて5~15重量%の量で存在する。二価の化合物を含有するそのようなレゾールが本発明の方法に用いられるとき、物理的特性、とりわけ強度の特に良好な組み合わせを有する生成物を得ることができる。
【0058】
適切には、二価の化合物は、形成されたレゾールに添加され、好ましくは-OH基の間に2~6個の原子を有する。
【0059】
レゾールは、水中の、若しくは任意の他の適切な溶媒中の、又は溶媒の混合物(水を含んでも含んでいなくてもよい)中の、フェノール/アルデヒド反応生成物の溶液を含んでもよい。水が唯一の溶媒として使用される場合、レゾールの15~35重量%、好ましくは20~30%の量で存在することが好ましい。当然のことながら、共溶媒、例えば、アルコール、又は上述の二価の化合物の1種(それを使用する場合)と共に使用するならば、含水量は実質的に少なくなり得る。
【0060】
上に示したように、液体レゾール(すなわち、二価の化合物を含有していてもよいフェノール/アルデヒド生成物の溶液)は、少なくとも1の反応度数を有していなければならない。反応度数は10/xであり、ここで、xは、p-トルエンスルホン酸の66~67%水溶液の10重量%のレゾールを60℃で使用してレゾールを堅くするのに必要とされる時間(分)である。この試験は、試験管中で約5mlのレゾールを記載量のp-トルエンスルホン酸溶液と混合し、60℃に加熱した水浴中に試験管を浸漬し、混合物の手触りが固くなるのに要した時間を測定するものである。レゾールは、有用な発泡済み生成物を生成するには少なくとも1の反応度数を有するべきであり、好ましくは、レゾールは、少なくとも5、最も好ましくは少なくとも10の反応度数を有する。
【0061】
一般にアルカリ性であるレゾールのpHは、このプロセスに使用するのに必要ならば、適切には乳酸などの弱有機酸を添加することによって、好ましくは約7に調整される。
【0062】
強酸硬化剤の例は、塩酸、硫酸、及びリン酸などの無機酸、並びに芳香族スルホン酸、例えばトルエンスルホン酸、及びトリクロロ酢酸などの強有機酸である。酢酸及びプロピオン酸などの弱酸は一般に適切ではない。本発明の方法に好ましい硬化剤は、芳香族スルホン酸、とりわけトルエンスルホン酸である。
【0063】
酸は、水などの適切な溶媒中で溶液として使用されてもよい。
【0064】
レゾール、硬化剤、及び固体の混合物を、例えば金型に注入しようとするとき、並びにスラッシュ成形施工のとき、レゾール及び硬化剤に添加することができる不活性固体の量は、固体の非存在下でのレゾールと硬化剤との混合物の粘度によって決定される。これらの用途では、硬化剤は、所要量のレゾールと混合したときに、混合物を使用しようとする温度で約50ポアズを超えない見掛け粘度を有する液体を生じるような形態で、例えば溶液で提供されることが好ましく、好ましい範囲は5~20ポアズである。5ポアズを下回ると、存在する溶媒の量が硬化反応中に問題を呈しやすい。
【0065】
硬化反応は発熱性であり、したがってそれ自体でレゾール及び酸硬化剤を含有する混合物の温度を上昇させることとなる。混合物の温度は、加えられた熱によっても上昇し得るが、そのときに前記混合物が上昇し得る温度は(つまり、あらゆる発熱の作用を除外する)85℃を超えてはならない。
【0066】
硬化剤を添加する前に混合物の温度が85℃を超えると、初期に硬化するために、その後で混合物全体に硬化剤を適度に分散させるのは困難又は不可能である。反対に、硬化剤を添加した後に混合物を85℃より高く均一に加熱するのは、不可能ではないとしても困難である。
【0067】
温度を85℃に向けて上げると、発泡体の質感が粗くなり、不均一になりやすいが、これは、中温では、硬化剤の濃度を低減させることによって少なくともある程度相殺することができる。しかし、75℃をはるかに上回る温度だと、組成物を固化させるのに必要とされる最小量の硬化剤であっても、一般にこれらの不利点を回避するのに多すぎる。よって、75℃を上回る温度は好ましくは回避され、ほとんどの用途に好ましい温度は、周囲温度~約75℃である。好ましい温度範囲は、固体(c)の性質にある程度依存するように思われる。ほとんどの固体では、それは25~65℃であるが、ある固体、特に木粉及び穀粉では、好ましい範囲は25~75℃である。最も好ましい温度範囲は30~50℃である。周囲温度を下回る、例えば10℃に下げた温度を、所望であれば使用することができるが、それによって何も利点は得られない。一般に、75℃までの温度では、温度を上げると発泡体の密度が減少し、その逆も同様となる。
【0068】
存在する硬化剤の量は、生成物の性質及び硬化速度にも影響を与える。よって、硬化剤の量を増加させると、組成物を堅くするのに必要とされる時間を短縮する作用があるだけでなく、ある特定のレベルを上回ると、温度及びレゾールの性質に応じて、均一性が低下した気泡構造が生成されやすくもなる。硬化速度が増加するために、発泡体の密度が増加しやすくもなる。実際に、高すぎる濃度の硬化剤が使用されるならば、硬化速度が速すぎて発泡が全く起こらなくなることがあり、ある条件下では、堅くなった樹脂のシェルの内側に気体が蓄積するために反応が爆発性になる可能性がある。硬化剤の適正な量は、主に発熱性硬化反応の開始前のレゾールと硬化剤との混合物の温度及びレゾールの反応度数に依存することとなり、選択された温度及び反応度数に反比例して変化することとなる。硬化剤濃度の好ましい範囲は、レゾールが実質的に中性反応(すなわち約7のpH)を有すると仮定すると、レゾール中のフェノール/アルデヒド反応生成物100重量部当たり2~20重量部のp-トルエンスルホン酸と当量である。p-トルエンスルホン酸と当量であるとは、記載量のp-トルエンスルホン酸と実質的に同じ硬化時間を与えるのに必要とされる、選択された硬化剤の量を意味する。任意の所与の温度及びレゾールと微粉化固体との組み合わせに最も適切な量は、単純な実験によって容易に決定される。好ましい温度範囲が25~75℃であり、レゾールが少なくとも10の反応度数を有する場合、最良の結果は一般に、フェノール/アルデヒド反応生成物100重量部当たり3~10部のp-トルエンスルホン酸と当量の硬化剤を使用することで得られる。25℃を下回る温度又は10を下回る反応度数を有するレゾールで使用する場合、より多くの硬化剤を使用することが必要となり得る。
【0069】
金型の性質、とりわけ形状及び大きさに従って、硬化剤組成物を幾らか調整することが必要である場合があるが、これは実験によって確定することができる。
【0070】
温度及び硬化剤濃度の適切な制御によって、硬化剤をレゾールに添加してから組成物が堅くなるまでの経過時間(本明細書では硬化時間と呼ぶ)を、生成物の密度及び気泡構造に実質的に影響を与えることなく、数秒から1時間又はさらにそれ以上にまで思い通りに変化させることができる。
【0071】
必要とされる硬化剤の量を制御する別の要因は、不活性固体の性質であり得る。正確に中性であることは極めて稀であり、該固体がアルカリ性反応を有するならば、それが極めて軽微に過ぎないとしても、該充填剤がそれを中和する傾向があるために、より多くの硬化剤が必要となり得る。したがって、上に示した硬化剤濃度の好ましい値は、固体のそのような作用を何も考慮に入れていないことが理解されるべきである。固体の性質が原因で必要とされるいかなる調整も、使用される固体の量に依存することとなり、それは単純な実験によって決定することができる。
【0072】
レゾールと酸硬化剤との発熱性硬化反応によって、副生成物、特にアルデヒド及び水が形成され、これらは少なくとも一部分揮発する。
【0073】
硬化反応は、レゾールと硬化剤との混合物全体に実質的に均一に分散した不活性且つ不溶性の微粉化粒子状固体の存在下で実行される。不活性固体とは、それが使用される分量では、それが硬化反応を妨げないことを意味する。
【0074】
微粉化粒子状固体は、レゾール中に存在する及び/又は硬化作用によって生じる小分子、主にCHO及び/又はHOの揮発によって形成される気泡のための核をもたらし、また泡の形成が促進される場所をもたらし、それによって孔径が均一になるように助けると考えられる。微粉化固体が存在すると、個々の泡の安定化を促進することもでき、また泡が凝集する傾向及び最終的に硬化前に泡を崩壊させる可能性を低減することもできる。この現象は、冶金における低品位の鉱石の濃縮に用いられる浮選のものと同様であり得る。いずれにしても、固体の存在は生成物の形成に不可欠である。所望の効果を実現するために、固体は、レゾールの重量に基づいて5重量%以上の量で存在するべきである。
【0075】
反応混合物に不溶性であるいかなる微粉化粒子状固体も、不活性であれば適切である。該充填剤は、有機物であっても無機物(金属を含む)であってもよく、結晶性であっても非結晶性であってもよい。繊維状の固体であっても有効であることが見出されているが、好ましくはない。例として、粘土、粘土鉱物、タルク、バーミキュライト、金属酸化物、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、アルミナ、グラファイト、耐火物、中実又は中空のガラス微小球、飛散灰、炭塵、木粉、穀粉、堅果殻粉、シリカ、鉱物繊維(例えば、細かく刻んだガラス繊維及び微粉化アスベスト)、細断繊維、細かく刻んだ天然又は合成繊維、粉末又は繊維の形態の粉砕したプラスチック及び樹脂(例えば、再生した廃棄プラスチック及び樹脂、顔料、例えば、粉体塗料及びカーボンブラック)並びにデンプンが挙げられる。
【0076】
軽度を超えるアルカリ性反応を有する固体、例えば、アルカリ金属のシリケート及びカーボネートは、酸硬化剤と反応する傾向があるために好ましくは回避される。しかし、時としてマグネサイトなどのより強いアルカリ性材料が混入しているために極めて弱いアルカリ性反応を有するタルクなどの固体は、許容可能である。
【0077】
ある材料、とりわけ木粉などの繊維性材料は吸収性であり得るので、価値ある発泡済み生成物を実現するためには、一般に、非繊維性材料より多い量のこれらの材料を使用することが必要であり得る。
【0078】
そのような充填剤の材料は、本発明による他の熱硬化性材料での使用にも適切であり、それらの使用が単にフェノール発泡樹脂だけに限らないことが理解されよう。
【0079】
固体は、好ましくは0.5~800ミクロンの範囲内の粒径を有する。粒径が大きすぎると、発泡体の気泡構造が粗くなりやすく、望ましくない。一方、粒径が極めて小さいと、得られる発泡体はやや密度が高くなりやすい。好ましい範囲は、1~100ミクロン、最も好ましくは2~40ミクロンである。気泡構造の均一性は、粒径の均一性によって促進されるように思われる。所望であれば、固体の混合物が使用されてもよい。
【0080】
所望であれば、該方法の間に生じる気体又は蒸気の体積に寄与する、微粉化金属粉末などの固体を含んでもよい。しかし、単独で使用されるならば、分解又は化学反応による気体の後にそれらが残す残留物が、本発明の方法によって必要とされる不活性且つ不溶性の微粉化粒子状固体という要件を満たすことが理解される。
【0081】
好ましくは、混合後に微粉化固体が混合物の底部に向かって蓄積しやすくなる可能性を低減させるように、微粉化固体はレゾールの密度と大きく異ならない密度を有する。
【0082】
1つの好ましい部類の固体は水硬性セメントであり、例えば、石膏及び漆喰であるが、ポルトランドセメントではない。何故ならそれはアルカリ性であるからである。これらの固体は、反応混合物中に存在する水と反応して、硬化済み樹脂生成物中に堅くなった骨格構造を生成しやすいであろう。さらに、水との反応は発熱性でもあり、発泡及び硬化反応を支援する。これらの材料を使用して得られる発泡済み生成物は、特に価値のある物理的特性を有する。さらに、火炎(flame)に曝されると、それが長時間であっても、それらは炭化して、依然として強く、荷重を支持する能力があるレンガ様の堅さになりやすい。生成物には、優れた断熱性及びエネルギー吸収性もある。不活性粒子状固体の好ましい量は、レゾール100重量部当たり20~200重量部である。
【0083】
使用すると水硬性セメントを使用して得られるものと同様の特性を有する生成物が得られることから好ましい別の部類の固体には、タルク及び飛散灰が含まれる(これらの材料は、本発明の他の熱硬化性樹脂にも使用されてもよい)。これらの固体の好ましい量も、レゾール100重量部当たり20~200重量部である。
【0084】
上の部類の固体の場合、最も好ましい範囲は、レゾール100部当たり50~150部である。
【0085】
Aerosil(微粉化シリカ)などの極めて細かい微粉化固体が含まれるならば、チキソトロピー性発泡体を形成する混合物を得ることができる。
【0086】
幾つかの実施形態では、微粉化金属粉末が含まれてもよい。そのような金属粉末は、硬化済み熱硬化性樹脂によって吸収される電磁放射線を増大させるのを助けるマイクロ波感受体として機能することができる。他の実施形態と同様に、そのような金属粉末は、本発明(repent invention)による他の熱硬化性樹脂と共に使用されてもよい。存在する場合、金属粉末は、好ましくはレゾール100重量部当たり50~250部の量で使用される。
【0087】
一般に、用いることができる固体の最大量は、それを混合物中に組み込み、混合物を取り扱うという物理的問題によってのみ制御される。一般に、混合物が注入可能であることが所望されるが、固体の濃度が極めて高く、混合物が生地又はペースト様であり、注入できないときであっても、価値のある特性を有する発泡済み生成物を得ることができる。
【0088】
一般に、繊維性固体は、非繊維性固体と共にしか使用しないことが好ましい。何故なら、そうしないと発泡体の質感が不十分になりやすいからである。
【0089】
他の添加剤が、発泡体形成混合物中に含まれてもよく、これらは例えば、界面活性剤、例えば、アニオン性材料(例えば、長鎖アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩)、非イオン性材料(ポリ(エチレンオキシド)又はそのコポリマーをベースとするものなど)、及びカチオン性材料(例えば、長鎖第四級アンモニウム化合物、又はポリアクリルアミドをベースとするもの);粘度調整剤(アルキルセルロース、とりわけメチルセルロースなど)、並びに着色剤、例えば染料又は顔料である。フェノール樹脂用の可塑剤も含まれてもよいが、それによって硬化及び発泡反応が抑制されないことを条件とする。硬化中に行われる架橋反応に関与する、上で言及した二価の化合物以外の多官能性化合物が含まれてもよく、これらは例えば、ジ-又はポリ-アミン、ジ-又はポリ-イソシアネート、ジ-又はポリ-カルボン酸、及びアミノアルコールである。
【0090】
硬化作用の間に活性化される重合可能な不飽和化合物も、おそらく遊離基重合開始剤と共に含まれてもよく、これらは例えば、アクリルモノマー、いわゆるウレタンアクリレート、スチレン、マレイン酸、及びそれらの誘導体、並びにそれらの混合物である。
【0091】
他の樹脂が、例えば、発泡及び硬化反応中に硬化するプレポリマーとして、又は粉末、乳濁液、若しくは分散体として含まれてもよい。例は、ポリビニルアセタールなどのポリアセタール、ビニルポリマー、オレフィンポリマー、ポリエステル、アクリルポリマー及びスチレンポリマー、ポリウレタン及びそのプレポリマー、並びにポリエステルプレポリマー、並びにメラミン樹脂、フェノールノボラック樹脂などである。
【0092】
発泡反応を強化するために従来の発泡剤も含まれてもよく、これらは例えば、低沸点有機化合物、又は分解若しくは反応して気体を生成する化合物である。
【0093】
発泡体形成組成物は、所望であれば脱水剤も含有してもよい。
【0094】
発泡体形成組成物を形成する好ましい方法は、最初にレゾールと不活性充填剤とを混合して、実質的に均一な充填剤のレゾール中分散体を得ること、及びその後で硬化剤を添加することを含む。組成物全体に充填剤と硬化剤の両方が均一に分布することは、均一な質感の発泡生成物の生成に不可欠であり、したがって徹底的な混合が必要とされる。
【0095】
発熱反応が開始される前に組成物が高温であることが所望されるならば、これは、レゾールを加熱するか、又は最初にレゾールと固体とを混合し、次いで混合物を加熱することによって実現することができる。好ましくは、固体は、硬化剤の添加の直前にレゾールに添加される。或いは、レゾール、固体、及び硬化剤の混合物を調製し、次いで混合物全体を、例えば短波の照射によって、好ましくはそれを金型に装入した後に加熱してもよい。所望であれば従来の放射加熱オーブンも使用してもよいが、この手段によって混合物の均一な加熱を実現するのは困難である。
【0096】
好ましくは、発泡体は、75~500kg/m、より好ましくは100~400kg/m、最も好ましくは100~250kg/mの範囲内の密度を有してもよい。発泡体の気泡の大きさも重要である。何故なら、所与の密度に対して限界まで気泡の大きさが大きいほど、壁が厚くなり、よって発泡体の物理的強度が大きくなる。しかし、気泡の大きさが大きすぎると、強度が悪化し始める。好ましくは、気泡の大きさは1~3mmの範囲内であり得る。
【0097】
別の好ましい実施形態では、本発明に使用される熱硬化性樹脂はポリウレタンである。
【0098】
本発明の幾つかの実施形態では、適切なポリウレタンポリマー母材は、少なくとも1種のイソシアネートと少なくとも1種のポリオールとを反応させることによって形成され、反応は、20~150℃、好ましくは100~150℃の温度で行われる。好ましい実施形態では、反応混合物は、塩基性触媒、例えば、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、又はアミン触媒をさらに含み、好ましくは、該触媒は三級アミンから選択される。
【0099】
ポリウレタン母材を生成するために使用される少なくとも1種のポリオールは、ポリエーテル、ポリエステル、又は炭化水素骨格を含む化合物、例えばヒマシ油から選択されてもよい。特に、本発明のポリオールは、ポリ(オキシプロピレングリコール)、ポリ(オキシテトラメチレングリコール)、ポリ(エチレンアジペート)、及び脂肪族炭化水素から選択される。
【0100】
ポリウレタン母材を生成するために使用される少なくとも1種のイソシアネートは、ジイソシアネート、オリゴマーイソシアネート、又はポリイソシアネートから選択されてもよい。特に好ましいジイソシアネートは、メチレンビスジフェニルイソシアネート(MDI,methylene bis diphenylisocyanate)である。特に好ましいポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diiscocyanate)及び水添MDI(HMDI,hydrogenated MDI)である。
【0101】
本発明の好ましい実施形態では、選択されたイソシアネート(isocyanoate)(複数可)の1又は2以上は、アミン官能基をさらに含んでもよく、該アミン官能基は、アルカノールアミン(alkanoamine)、アルコキシル化アミン、マンニッヒポリマー、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0102】
本発明のさらに好ましい実施形態では、ポリマー母材はシート状材料を含む。
【0103】
本発明の好ましい代替では、熱硬化性樹脂基材は、シート成形化合物(SMC,sheet moulding compound)から選択されてもよい。
【0104】
シート成形化合物(SMC)は、熱硬化性樹脂、例えば、ポリエステル樹脂、ビニルエステル又はエポキシ樹脂を、強化用繊維、例えばガラス繊維と共に含む。シート成形化合物のなおさらなる好ましい実施形態では、熱硬化性樹脂はフェノール樹脂であってもよい。
【0105】
強化用繊維は、短繊維であっても長繊維であってもよい。繊維はほぐれていてもよく、例えば、繊維は、単方向又は多方向であるように配列されていてもよい。繊維は網目の一部分であってもよく、例えば任意の適正な方式で一緒に織られていても編まれていてもよい。繊維の配列は不規則的でも規則的であってもよく、布地、マット、フェルト、若しくは織物、又は他の配列を含んでもよい。該材料は、短繊維を含んでもよい。繊維は、連続的なフィラメントワインディングを提供してもよい。さらに、2以上の繊維の層が提供されてもよい。
【0106】
繊維は、1又は2以上の材料を含んでもよい。例えば、繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、及び/又はポリエチレン繊維の1又は2以上を含んでもよい。Kevlar(RTM)繊維も使用されてもよい。好ましくは、強化用繊維はガラス繊維である。
【0107】
好ましい実施形態では、硬化済み熱硬化性樹脂は、添加剤、例えば、鉱物、不活性充填剤、顔料、安定剤、阻害剤、剥離剤、触媒、増粘剤、水和用添加剤(hydrating additive)及び/又は他の適切な材料をさらに含んでもよい。適切な添加剤の例として、発泡済みフェノール樹脂材料に関して上に記載したものが挙げられる。
【0108】
しかし、いかなる誤解も避けるために、不活性充填剤は、有機物であっても無機物(金属を含む)であってもよく、結晶性であっても非結晶性であってもよい。繊維状の固体であっても有効であることが見出されているが、好ましくはない。適切な充填剤の材料として、粘土、粘土鉱物、タルク、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、アルミナ、グラファイト、バーミキュライト、金属酸化物、耐火物、中実又は中空のガラス微小球、飛散灰、炭塵、木粉、穀粉、堅果殻粉、シリカ、鉱物繊維(例えば、細かく刻んだガラス繊維及び微粉化アスベスト)、細断繊維、細かく刻んだ天然又は合成繊維、粉末又は繊維の形態の粉砕したプラスチック及び樹脂(例えば、再生した廃棄プラスチック及び樹脂、顔料、例えば、粉体塗料及びカーボンブラック)、並びにデンプンが挙げられる。
【0109】
本発明によれば、「電磁放射線」という用語は、荷電粒子によって放出及び吸収されるエネルギーの形態に関すると見なされ、電磁放射線の波長は1×10-11m~1×10mの範囲内である。特に、「電磁放射線」という用語は、ガンマ線、X線、紫外線、可視光、赤外線、マイクロ波、電波、及び長波電波、並びにそれらの組み合わせの1又は2以上を包含すると見なされる。
好ましくは、電磁放射線は、マイクロ波放射線、電波(RF,radio wave)、超音波、及び赤外線、並びにそれらの組み合わせから選択される。
【0110】
好ましい実施形態では、硬化済み熱硬化性樹脂基材は、マイクロ波を使用して照射される。
【0111】
本発明の一実施形態では、硬化済み熱硬化性樹脂基材の実質的にすべてが、例えばマイクロ波放射線を使用して照射され、必要に応じて成形される。
【0112】
代替実施形態では、照射は、例えば集束された電磁波(例えばマイクロ波放射線)の使用を通して、硬化済み熱硬化性樹脂基材の一部分のみに限定されてもよい。このプロセスは、例えば、基材のある特定の領域が数多くの特定の成形プロセスを必要とする場合、同じ領域に関して複数回繰り返されてもよいことが理解されよう。或いは、このプロセスは、基材の離れた別々の領域を形成することが好ましい場合、これらの異なる領域に関して繰り返されてもよい。本発明に使用される電磁放射線は、1mm~1mの波長を有していてもよく、好ましくは10cm~50cmの波長を有する。
【0113】
マイクロ波電磁放射線が本発明によって使用される場合、マイクロ波は、好ましくは300GHz~300MHzの周波数を有する。より好ましくは、マイクロ波は25GHz~450MHzの周波数を有する。
【0114】
マイクロ波電磁放射線の供給源は、500W~120kWの電力を伝送してもよく、より好ましくはマイクロ波放射線の供給源は、750W~100kW、例えば950W~75kWの電力を伝送する。
【0115】
マイクロ波電磁放射線が使用される場合、この放射線は、家庭用又は業務用電子レンジのいずれかを使用して発生させてもよい。本出願の目的のために、「家庭用電子レンジ」という用語は、700~900ワットの電力出力を提供する電子レンジであって、マイクロ波放射線がパルス/変調マイクロ波周波数のサイクルで提供される電子レンジを包含すると見なされる。本出願の目的のために、「業務用電子レンジ」という用語は、連続マイクロ波を1,000~1,900ワットの電力出力で提供する電子レンジを包含すると見なされる。
【0116】
照射中に硬化済み熱硬化性樹脂に伝送されるエネルギーの量は、とりわけ、硬化済み熱硬化性樹脂基材に提供される電磁放射線のタイプ;照射されている硬化済み熱硬化性樹脂基材の大きさ及び厚さ;並びに硬化済み熱硬化性樹脂基材が照射される全体的な時間に依存することが理解されよう。
【0117】
特に、当業者であれば分かると思われるが、マイクロ波放射線が試料に透過することができる深さは、基材の誘電性と選択されたマイクロ波の周波数の両方に依存する("Handbook of Food Science, Technology, and Engineering" edited by Yiu H. Hui, Volume 3, page 113-4を参照されたい)。当業者であれば、いかなる過度の実験も行うことなく、十分なマイクロ波放射線を熱硬化樹脂基材に確実に提供する加工パラメータを選択することができる。
【0118】
本発明の幾つかの実施形態では、基材は20mmまで、例えば10mmまでの厚さを有してもよい。他の実施形態では、基材は、少なくとも0.5mm、例えば1、2、3、4、又は5mmの厚さを有してもよい。熱硬化性樹脂材料それ自体に加えて、基材は、本明細書に記載される通りの他の材料、例えば、充填剤及び/又は繊維を含有してもよいことが理解されよう。
【0119】
したがって、硬化済み熱硬化性樹脂基材の厚さを部分的に低減させる、通路、溝、及び穿孔などの物理的特徴物の組み込みを使用して、マイクロ波放射線が樹脂基材の中心に向かってさらに透過できるようにしてもよいことが理解されよう。これによって結果的に、照射される硬化済み熱硬化性樹脂基材の成形性を増大させ、それによって樹脂基材を成形/再成形し得る程度を増大させることができる。
【0120】
好ましい実施形態では、硬化済み熱硬化性樹脂基材は、30分間未満、より好ましくは15分間未満照射される。商業用途の場合、その時間は、5分間未満、及び1分間未満程の短さであることが好ましいと見込まれることが理解されよう。
【0121】
一般に、硬化済み熱硬化性樹脂基材は、少なくとも5秒間、好ましくは少なくとも15秒間照射され、最も好ましくは、熱硬化性樹脂基材は、少なくとも30秒間照射される。
【0122】
閉鎖温度制御環境が液体から選択される実施形態では、当業者であれば分かると思われるが、液体の閉鎖温度制御環境の使用には、電磁放射線の適用時に実質的に蒸発及び/又は沸騰しないと見込まれる液体を選択することが必要とされる。しかし、当業者であれば、いかなる過度の実験も行うことなく、適切な液体、特にそれらの物理的特性が当技術分野でほとんど容易に入手可能であるような(例えば、CRC Handbook of Chemistry and Physicsから)適切な液体を選択することができる。
【0123】
加えて、当業者であれば、適用される電磁放射線のパラメータ(波長の周波数、パルス幅変調、及び全体の照射時間など)と硬化済み熱硬化性樹脂基材に移動し得るエネルギーとの間には、ある関係があることが容易に理解されるであろう。よって、当業者であれば、照射された硬化済み熱硬化性基材によって生成される可能性のある熱エネルギー、よって閉鎖温度制御環境が機能しなければならない温度を考慮に入れることができる。好ましい一例では、本発明の方法において電磁放射線を使用すると、照射ステップ中に液体の温度制御環境物質が20~95℃、例えば60~90℃の温度に加熱される。そのような好ましい例では、電磁放射線はマイクロ波放射線である。加えて、そのような好ましい実施形態では、熱硬化性樹脂材料は、フェノール、ポリウレタン、及びポリエステル樹脂から選択される。なおさらに、そのような好ましい実施形態では、温度制御環境の液体は水である。
【0124】
本発明の一実施形態では、硬化済み熱硬化性樹脂基材は最初に照射され、次いでその後に成形される。照射された硬化済み熱硬化樹脂基材を成形するステップは、照射が完了してから10分以内、好ましくは5分以内、より好ましくは1分以内、最も好ましくは30秒以内に行われてもよい。
【0125】
本発明の別の実施形態では、硬化済み熱硬化性樹脂基材を照射するステップと照射された硬化済み熱硬化性樹脂基材を成形するステップとは同時に行われてもよい。
【0126】
本発明のさらなる実施形態では、硬化済み熱硬化性樹脂基材を照射するステップと、照射された硬化済み熱硬化性樹脂基材を成形するステップとは交互に行われてもよい。すなわち、硬化済み熱硬化性樹脂基材が最初に照射だけされ、設定された時間の後、照射を継続しながら硬化済み熱硬化性樹脂基材が成形される。
【0127】
成形加工は、幾つもの段階で実施されてもよいことが理解されよう。例として、照射するプロセス及び成形するプロセスは、所望の形状が得られるまで何回も繰り返すことができる。そのようなプロセスは、2、3、4回、又は5回以上でも繰り返してもよい。
【0128】
成形するプロセスは、上記のような照射ステップと成形ステップとの組み合わせを使用してもよいことも理解されよう。例として、最初のプロセスは、照射と成形とを同時に使用して、成形の第一段階を得てもよい。さらに、最初に照射し、続いてより精密な所望の形状を得ることができるように成形するプロセスによって、より精密な成形を行うことができると思われる。
【0129】
なおさらに、上述の成形段階のそれぞれは、異なるプロセス条件及び/又はプロセス条件の組み合わせを利用してもよいことが理解されよう。そのような異なる条件は、異なる温度制御環境、異なる電磁放射線、電磁放射線についての異なるパラメータ、及び/又は異なる成形プロセスの1又は2以上を含んでもよい。
【0130】
本発明によれば、照射された硬化済み熱硬化性樹脂基材を成形するステップは、照射された樹脂を金型に施すステップを含んでもよい。
【0131】
照射された樹脂を成形するステップは、圧力を加えることも含んでもよい。幾つかの実施形態では、成形ステップ中に硬化済み熱硬化性樹脂基材に加えられる圧力は、20MPa未満、及び0.5MPa程の低さであることが見出された。1MPa~15MPa、及び5MPa~10MPaの圧力も使用されてもよい。これは、照射された基材を成形するステップが、手によって行うことができることを意味していることを理解されたい。
【0132】
より一般には、硬化済み熱硬化性樹脂基材を成形するのに必要とされる圧力は、基材の厚さ及び/又は密度が増加するにつれて増加し得ることを理解されたい。しかし、当業者であれば、いかなる過度の実験も行うことなく、硬化済み熱硬化性樹脂基材を成形するのに必要とされる圧力を、樹脂基材の組成物及び寸法に基づいて決定することができる。
【0133】
照射された硬化済み熱硬化性樹脂基材は、表面パターンを有する金型表面に施されてもよい。表面パターンは金型上に設けられて、樹脂基材の表面上に表面パターン又は質感をもたらすことができる。
【0134】
例として、照射された硬化済み熱硬化性樹脂基材の表面に木目に似たパターンを形成するように、木目のパターンに関するパターンを金型の表面に設けてもよい。他のパターンを設けて、代替の仕上げをしてもよいであろう。
【0135】
成型するプロセスは、プレス及び/又は真空の使用も含んでもよい。そのようなプロセスは、1又は2つの金型を含んでもよい。プレスが2つの金型を含む場合、2つの金型の表面は、異なる輪郭を有していてもよく、又は、例えばドアの反対側を生成するように、一致する輪郭を有していてもよい。
【0136】
照射された硬化済み熱硬化性樹脂基材を成形するステップは、圧縮成形を含んでもよい。
【0137】
或いは、照射された硬化済み熱硬化性樹脂基材を成形するステップは、照射された硬化済み熱硬化性樹脂基材を熱成形することを含む。
【0138】
さらなる代替では、照射された硬化済み熱硬化性樹脂基材を成形するステップは、照射された樹脂を、1又は2以上の機械的ローラーを通して及び/又はそれらの中を通して送り込むステップを含んでもよい。一対のローラーを使用すると、硬化済み熱硬化性樹脂基材の平坦なシートを生成することが可能になる。
【0139】
幾つかの実施形態では、硬化済み熱硬化性樹脂基材は、閉鎖温度制御環境内での照射前に実質的に平坦であってもよい。そのような実施形態によって、輸送及び保管がより容易な樹脂材料の予備硬化済みシートを、所望されるように及び所望されるときに成形することが可能になる。そのような実施形態によって、個々のシートをそれぞれ必要に応じて成形することも可能になり、したがって、1枚の平坦な予備硬化済みシートを使用して後日に複数の異なる形状に形成することができるということが意味される。個々のシートを特有に成形することによって、予備硬化済み熱硬化性樹脂の費用対効果が大きいカスタマイズも可能になる。
【0140】
或いは、硬化済み熱硬化性樹脂基材は、本発明による加工前に予備成形されてもよく、照射に続いて又は照射中に、硬化済み熱硬化性樹脂は、再成形及び/又は再成型される。そのようなプロセスによって、その意図される目的により良く適合するように形状を変化させることが可能になると共に、以前に形成された熱硬化樹脂材料を再成形することによって新たな目的のためにリサイクルする可能性がもたらされることが理解されよう。該プロセスが、予備成形された熱硬化樹脂基材を取得すること、及びシートを形成するようにそれを平坦にすることを含んでもよく、そのシートを後の時点で使用又は再成形できることも想定される。
【0141】
本発明に使用される硬化済み熱硬化性樹脂基材は、1又は2以上の追加層を含んでもよいことが想定される。そのような追加層は、熱硬化樹脂(上記のものが含まれるが、これらに限定されない)、熱可塑性樹脂、及び/又は弾性材料から形成されてもよい。
【0142】
例として、硬化済み熱硬化性樹脂基材は、硬化済み熱硬化性樹脂材料から形成された複数の層を追加的に含んでもよい。そのような実施形態では、基材の成形が可能になるように、電磁放射線を使用して層のすべてを照射する。
【0143】
さらなる例として、硬化済み熱硬化性樹脂基材は、熱可塑性材料の1又は2以上の層を追加的に含んでもよい。そのような実施形態では、熱硬化性材料の照射中に生じた熱によって熱可塑性材料が軟化し、全体としての基材の成形が可能になる。
【0144】
なおさらなる例として、基材は、弾性材料の1又は2以上の層を追加的に含んでもよい。そのような実施形態では、弾性層は、それらに固有の弾性のために、硬化済み熱硬化性樹脂基材の成形中に曲げることができる。
【0145】
当然のことながら、そのような多層の基材は、硬化済み熱硬化性樹脂材料に加えて、上記の追加層の1又は2以上の異なる組み合わせを含んでもよいことが理解されよう。
【0146】
上で言及された1又は2以上の追加層は、発泡済みであっても、又は未発泡であってもよい。
【0147】
例として、成形しようとする硬化済み熱硬化性樹脂基材は、未発泡硬化済み熱硬化性樹脂層に結合した硬化済み発泡済み熱硬化性樹脂層を含むことができるであろう。発泡済み層は、連続気泡発泡体であってもよい。
【0148】
未発泡硬化済み熱硬化性樹脂層に結合した硬化済み連続気泡型熱硬化性樹脂層からなるそのような基材は、プレスプロセスを使用して生成することができ、それによって、元々の製造プロセス中には未発泡材料の少なくとも一部が連続気泡型材料中に流入している。そのようなプロセスは、国際公開第2009/044169号パンフレット、国際公開第2010/046699号パンフレット、及び/又は国際公開第2010/046698号パンフレット(それぞれの内容は、参照により本明細書に組み込まれる)の1又は2以上に定義される通りであってもよい。
【0149】
好ましい実施形態では、該プロセスは複合生成物を形成するステップを含み、該方法は、
- シート状成形材料(sheet-form moulding material)を含む層を用意するステップ;
- 硬化済み連続気泡フェノール樹脂基材を用意するステップ;
- シート状材料の層を、硬化済み連続気泡フェノール樹脂基材の表面上に施すステップ;及びシート状材料を基材にプレスするステップ,
を含み、基材は、基材の一部分を通してプレスされる部位から気体及び/又は蒸気が排出されることが可能であるように実質的に連続気泡型の構造を有し、シート状材料の一部は、プレスステップ中に基材の表面に流入する。
【0150】
本発明の方法によって、そのような複合生成物が硬化した後でも、それを再成形することが可能になることが理解されよう。
【0151】
本発明の好ましい態様によれば、
i. (上記のような)硬化済み熱硬化性樹脂基材を用意するステップ;
ii. (上記のような)温度制御環境として流体を用意するステップ;
iii. (上記のように)硬化済み熱硬化性樹脂基材を流体中に少なくとも部分的に浸漬させるステップ;
iv. (上記のような)電磁放射線の供給源を用意するステップ;
v. (上記のように)少なくとも部分的に浸漬されている硬化済み熱硬化性樹脂基材を照射するステップ;及び
vi. (上記のように)照射された熱硬化性樹脂基材を成形するステップ
を含む、硬化済み熱硬化性樹脂基材を成形する方法が提供される。
【0152】
いかなる誤解も避けるために、「流体」という用語は、本明細書で使用される場合、流動することができる又は加えられたせん断応力下で絶えず変形することができる任意の物質を包含すると見なされる。
【0153】
本発明のさらに別の好ましい態様によれば、
i. 硬化済み熱硬化性連続気泡発泡樹脂基材を用意するステップ;
ii. 温度制御環境として液体を用意するステップ;
iii. 硬化済み熱硬化性発泡樹脂基材の連続気泡を、液体で少なくとも部分的に飽和させるステップ;
iv. 電磁放射線の供給源を用意するステップ;
v. 少なくとも部分的に飽和した硬化済み連続気泡熱硬化性発泡樹脂基材を照射するステップ;及び
vi. 照射された連続気泡熱硬化性発泡樹脂基材を成形するステップ
を含む、硬化済み連続気泡熱硬化性発泡樹脂基材を成形する方法が提供される。
【0154】
この実施形態で言及される用語は、上文に定義される同様の用語と同じ意味を有し、上の開示の1又は2以上と組み合わせてもよい。
【0155】
本発明の別の態様によれば、
i. 予備成形された硬化済み熱硬化性樹脂基材を用意するステップ;
ii. 閉鎖温度制御環境を用意するステップ;
iii. 予備成形された硬化済み熱硬化性樹脂基材を閉鎖温度制御環境内に入れるステップ;
iv. 電磁放射線の供給源を用意するステップ;
v. 閉鎖温度制御環境内の予備成形された硬化済み熱硬化性樹脂基材を照射するステップ;及び
vi. 照射された熱硬化性樹脂基材を再成形するステップ
を含む、予備成形された硬化済み熱硬化性樹脂基材をリサイクルする方法が提供される。
【0156】
繰り返しになるが、この実施形態で言及される用語は、上文に定義される同様の用語と同じ意味を有し、上の開示の1又は2以上と組み合わせてもよい。
【0157】
本発明はまた、本明細書に記載される通りの方法によって成形された硬化済み熱硬化性樹脂基材を対象とする。
【0158】
加えて、本発明は、本明細書に記載される通りの方法によって再成形された、リサイクルされた硬化済み熱硬化樹脂を包含する。
【0159】
好ましい実施形態では、硬化済み熱硬化性樹脂基材は、フェノール樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂、ビニルエステル、ポリウレタン、又はエポキシ樹脂から選択される。或いは、硬化済み熱硬化性樹脂基材は、シート成形化合物(SMC)から選択されてもよい。
【0160】
本発明の本発明者らは、驚くべきことに、選択された反応条件下での電磁放射線を使用すると、既に硬化された熱硬化性樹脂基材を成形することが可能になることを見出した。そのような電磁放射線の使用は、樹脂の硬化を明確に目的とする公知の使用に反するものである。したがって、本発明の態様は、硬化済み熱硬化性樹脂基材を成形するための電磁放射線の使用を対象とする。そのような使用は、上記の方法のいずれかによって定義することができる。
【0161】
本発明のなおさらなる態様は、予備成形された硬化済み熱硬化性樹脂基材をリサイクルするための電磁放射線の使用を対象とする。そのようなリサイクルは、予備成形された硬化済み熱硬化性樹脂基材を再成形することを含んでもよい。繰り返すが、そのような使用は、上記の方法のいずれかによって定義することができる。
【0162】
好ましくは、使用中、電磁放射線は、硬化済み熱硬化性樹脂基材が閉鎖温度制御環境内に少なくとも実質的に浸漬されている間に該基材に提供される。より好ましくは、硬化済み熱硬化性樹脂基材は、閉鎖温度制御環境内に完全に浸漬されている。好ましくは、温度制御された環境は、液体、例えば水から選択される。
【0163】
上で論じたように、温度制御環境は、本発明の方法に重要な役割を果たすと考えられる。
【0164】
好ましくは、電磁放射線は、マイクロ波、電波(RF)、超音波、及び赤外線から選択される。より好ましくは、電磁放射線はマイクロ波放射線である。
【0165】
本発明のなおさらなる態様によれば、
(i) 硬化済み熱硬化性樹脂を受容するための容器;
(ii) 温度制御環境の供給源;及び
(iii) 制御可能な電磁放射線供給源
を含む、硬化済み熱硬化性樹脂の成形に使用するための装置が提供される。
【0166】
該装置は、成形装置をさらに含んでもよい。特に、成形装置は、金型表面、例えば、表面パターンを含む金型、又は1若しくは2以上の機械的ローラーから選択されてもよい。そのようなデバイスの例は、上に詳述されている。
【0167】
本発明の一態様の任意の特徴は、任意に適正に組み合わせて本発明の他の態様に適用されてもよい。特に、方法の態様は、装置の態様又は生成物の態様に適用されてもよく、その逆も同様である。
【0168】
本発明を以下に単なる例として説明する。
[実施例]
【実施例1】
【0169】
実施例1は、温度制御環境が存在しない場合の熱硬化性樹脂基材に及ぼすマイクロ波放射線単独の効果を例示する。
【0170】
この実施例では、上の開示によって生成され、Acell Holdings Limited社から入手可能な、25cm×25cm×2cmの寸法の硬化済み連続気泡型フェノール樹脂発泡体を、800Wの電力を提供する家庭用電子レンジ内に入れた。硬化済み連続気泡型フェノール樹脂発泡体を10分間照射した。熱電対を使用して測定すると基材の表面温度は90℃であり、水の温度は約85℃であった(参照用、同様の温度が実施例のすべてで見られた)。
【0171】
得られた硬化済みフェノール発泡体は、色が濃くなった。加えて、発泡体ブロックはさらに堅くなり、したがって、より脆性になった。したがって、照射されたフェノール発泡体は再成形することができなかった。
【実施例2】
【0172】
実施例2は、本発明の方法を例示する。
【0173】
この実施例では、実施例1で使用したのと同一の、同じ寸法を有する硬化済み連続気泡型フェノール樹脂の試料を用意した。硬化済み連続気泡型フェノール発泡体を、温度制御環境として機能する水に浸漬させた。硬化済み連続気泡型フェノール発泡体を、利用可能な細孔容積の80%が水で満たされるように水に浸漬させ、飽和させた。
【0174】
この飽和した硬化済み連続気泡型フェノール発泡体を、次いで800Wの電力を提供する家庭用電子レンジ内に入れ、10分間照射した。
【0175】
得られた照射された硬化済み連続気泡型フェノール発泡体を電子レンジから取り出し、水を排出させ、成形するためにパイプ上に置き、すべてを約30秒以内に行った。照射された硬化済み連続気泡型フェノール発泡体は、手によってパイプの直径に成形した。冷却すると、2分後に、硬化済み連続気泡型フェノール発泡体の新たな形状が固定した。
【0176】
この実施例から、温度制御環境の存在が該方法に不可欠であること、及び硬化済み熱硬化樹脂の成形が本発明の方法によって実現できることが明白に実証された。
【実施例3】
【0177】
実施例3も、本発明の方法を実証する。
【0178】
この実施例では、実施例1で使用したのと同一の、同じ寸法を有する硬化済み連続気泡型フェノール樹脂の試料を用意した。硬化済み連続気泡型フェノール発泡体を、温度制御環境として機能する水に浸漬させた。硬化済み連続気泡型フェノール発泡体を、硬化済み連続気泡型フェノール発泡体の利用可能な細孔容積の80%が水で満たされるように水に浸漬させ、飽和させた。
【0179】
飽和した硬化済み連続気泡型フェノール発泡体を、次いで800Wの電力を提供する家庭用電子レンジ内に入れ、10分間照射した。
【0180】
得られた照射された硬化済み連続気泡型フェノール発泡体を電子レンジから取り出し、水を排出させ、成形し、すべてを約30秒以内に行った。この実施例の場合、基材の角を手で反対方向にねじることによって基材を成形した。フェノール発泡体は、冷却したときに新たな形状を保持していた。
【0181】
この実施例からも、本発明の方法によって硬化済み熱硬化性樹脂基材の成形が可能になることが実証される。
【実施例4】
【0182】
実施例4は、温度制御環境の存在下であるが電磁放射線を使用せずに硬化済み熱硬化性樹脂を加熱する効果を例示する。
【0183】
この実施例では、実施例1で使用したのと同一の、同じ寸法を有する硬化済み連続気泡型フェノール樹脂の試料を用意した。硬化済み連続気泡型フェノール樹脂を沸騰水に入れ、この状態を10分間維持した。
【0184】
得られた硬化済み連続気泡型フェノール発泡体を沸騰水から取り出し、水を排出させ、成形を試み、すべてを約30秒以内に行った。しかし、硬化済み連続気泡型フェノール発泡体は、成形することができなかった。
【0185】
これによって、硬化済み熱硬化性樹脂を成形する効果は、単に熱の適用、及び単に温度制御環境の存在に起因し得るのではなく、本発明は電磁放射線を必要とすることが実証される。
【実施例5】
【0186】
この実施例は、熱硬化性樹脂基材が既に以前に成形されている場合での本発明の方法をさらに例示する。
【0187】
この実施例では、実施例2からの成形品を使用した。
【0188】
実施例2からの成形品を、温度制御環境として機能する水に浸漬させた。成形品を、利用可能な細孔容積の80%が水で満たされるように水に浸漬させ、飽和させた。
【0189】
飽和した成形品を、次いで800Wの電力を提供する家庭用電子レンジ内に入れ、10分間照射した。
【0190】
得られた照射された成形品を電子レンジから取り出し、水を排出させ、反対方向に再成形するためにパイプ上に置き、すべてを約30秒以内に行った。成形品は、手によってパイプの直径に再成形した。冷却すると、2分後に、実施例2からの生成物を新たに再成形した形状が固定した。
【0191】
この実施例から、基材が本発明による方法を使用して既に成形されている場合でも、硬化済み熱硬化性樹脂基材の再成形が可能であることが明白に実証される。
【実施例6】
【0192】
実施例6は、硬化済みSMC樹脂基材に及ぼす従来のマイクロ波放射線の効果を実証する。
【0193】
この実施例では、Menzolit(登録商標)SMC 0650(ポリエステル)として公知のシート成形化合物(SMC)の硬化済み試料を使用したことを除いて、実施例1の方法を進行させた。硬化済み試料の寸法は、およそ25cm×25cm×2mmであった。硬化済み試料を800Wの電力を提供する家庭用電子レンジ内に入れた。硬化済み試料を10分間照射した。
【0194】
照射した後、試料を成形するためにパイプ上に置いたが、成形できなかった。
【実施例7】
【0195】
実施例7は、硬化済みSMC樹脂に適用したときの本発明の方法を例示する。
【0196】
硬化済みSMC試料を、温度制御環境として機能する水に浸漬させた。浸漬させた硬化済みSMC樹脂試料を、次いで800Wの電力を提供する家庭用電子レンジ内に入れ、10分間照射した。
【0197】
得られた照射された硬化済みSMC樹脂試料を電子レンジから取り出し、照射の完了から30秒以内にパイプ上で成形した。硬化済みSMC樹脂試料は、手によってパイプの直径に成形した。硬化済みSMC試料は、冷却したときに新たな形状を保持していた。
【0198】
この実施例から、本発明の方法は、一般的に硬化済み熱硬化性樹脂基板に適用できることが実証される。
【実施例8】
【0199】
実施例8は、硬化済みSMC(ポリエステル)樹脂を使用したことを除いて、実施例3の方法を繰り返した。
【0200】
この実施例では、実施例6で使用した硬化済みSMC樹脂と同一の、同じ寸法を有する試料を用意し、実施例3の方法によって加工した。
【0201】
得られた照射された硬化済みSMC樹脂試料を電子レンジから取り出し、照射の完了から30秒以内に、照射された硬化済みSMC樹脂の角を手で反対方向にねじることによって試料を成形した。SMCは、冷却したときに新たな形状を保持していた。
【実施例9】
【0202】
実施例9は、硬化済みSMC(ポリエステル)樹脂を使用したことを除いて、実施例4の方法を繰り返した。
【0203】
この実施例では、実施例6で使用した硬化済みSMC樹脂と同一の、同じ寸法を有する試料を用意し、実施例4の方法によって加工した。
【0204】
得られた硬化済みSMC樹脂を沸騰水から取り出し、成形を試み、すべてを約30秒以内に行った。しかし、硬化済みSMC樹脂は成形することができなかった。
【0205】
これによって、硬化済み熱硬化性樹脂を成形する効果は、単に熱の適用、及び単に温度制御環境の存在に起因し得るのではなく、異なる熱硬化性樹脂が使用される場合であっても、本発明は電磁放射線を必要とすることが実証される。
【実施例10】
【0206】
実施例10は、硬化済みSMC(ポリエステル)樹脂を使用したことを除いて、実施例5の方法を繰り返した。
【0207】
この実施例では、実施例7の成形品を使用し、実施例5の方法によって加工した。
【0208】
得られた成形された硬化済みSMC樹脂試料を電子レンジから取り出し、反対方向に再成形するためにパイプ上に置き、すべてを約30秒以内に行った。成形品は、手によってパイプの直径に再成形された。冷却すると、2分後に、実施例7からの生成物の新たな再成形した形状が固定した。
【0209】
この実施例から、硬化済みポリエステル材料が本発明による方法を使用して既に成形されている場合でも、硬化済みポリエステル熱硬化性樹脂基材の再成形が可能であることが明白に実証される。
【実施例11】
【0210】
実施例11は、硬化済みポリウレタン樹脂に適用したときの本発明の方法を例示する。
【0211】
ガラス繊維マットを含有する硬化済みポリウレタンシートを、Axson PX 223/HTを使用して調製した。樹脂の繊維に対する比率は75:25であった。
【0212】
25cm×25cm×4mmの硬化済み試料を調製し、温度制御環境として機能する水に浸漬させた。浸漬させた硬化済みポリウレタン樹脂試料を、次いで800Wの電力を提供する家庭用電子レンジ内に入れ、10分間照射した。
【0213】
得られた照射された硬化済みポリウレタン樹脂試料を電子レンジから取り出し、照射の完了から30秒以内にパイプ上で成形した。硬化済みポリウレタン樹脂試料は、手によってパイプの直径に成形された。硬化済みポリウレタン試料は、冷却したときに新たな形状を保持していた。
【0214】
この実施例から、本発明の方法は、一般的に硬化済み熱硬化性樹脂基材に適用できることがやはり実証される。