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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】バタフライバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/226 20060101AFI20221209BHJP
   F16K 1/22 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
F16K1/226 J
F16K1/22 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021133130
(22)【出願日】2021-08-18
【審査請求日】2022-07-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年6月7日に、新倉工業株式会社が、株式会社三保造船所に対し、バタフライバルブの試作品を配布。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592001230
【氏名又は名称】新倉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】新倉 太
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-002464(JP,U)
【文献】特公平08-001267(JP,B2)
【文献】実開平06-071971(JP,U)
【文献】実公平01-028389(JP,Y2)
【文献】特開2003-185033(JP,A)
【文献】特開平09-014464(JP,A)
【文献】特公昭49-14821(JP,B1)
【文献】実開平4-129972(JP,U)
【文献】米国特許第3511474(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00-1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体の回転によって弁の開閉操作を行うバタフライバルブであって、
弁体と、弁胴と、弾性体から形成されたシート部材と、を備え、
記弁体と前記弁胴との間に取り付けられる前記シート部材は、その外周面に嵌合隆起を有し、
前記シート部材の外周面と当接する前記弁胴の内周面には、前記嵌合隆起が嵌合する嵌合溝が設けられ、
前記嵌合溝の内部には、前記シート部材の変形を逃がすための逃がし溝が更に設けられている、バタフライバルブ。
【請求項2】
前記シート部材の内周面には、密接隆起が設けられ、
前記逃がし溝は、前記密接隆起の裏側に対向する位置に設けられている、請求項1に記載のバタフライバルブ。
【請求項3】
前記逃がし溝は、前記弁胴の内周面に沿って設けられている、請求項1又は2に記載のバタフライバルブ。
【請求項4】
前記逃がし溝は、前記弁胴の内周面中央に形成されている、請求項1~3の何れかに記載のバタフライバルブ。
【請求項5】
前記逃がし溝は、略環状に形成されている、請求項1~4の何れかに記載のバタフライバルブ。
【請求項6】
前記逃がし溝は、略帯状に形成されている、請求項1~5の何れかに記載のバタフライバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性体から形成されたシート部材を備える、バタフライバルブに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な弁が、流体の流量制御に用いられてきた。
【0003】
特に、バタフライバルブは、開弁時の流体抵抗が少ない、開閉操作が容易である、等の利点から幅広く使用されている。
【0004】
バタフライバルブは、円盤状の弁体と、円筒形状の弁胴を備え、弁胴内部に設置された弁体を回転させることで開閉を行う仕組みの弁である。
【0005】
そして、バタフライバルブの設計において、閉弁時の密閉性を高めるために、弾性体から形成されたシート部材を、弁体と弁胴との間に設けることは、今や公知の技術である。
【0006】
例えば、特許文献1には、弾性体から形成された環状シート部材が、弁体の外周面に装着される構成のバタフライバルブが記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、弾性体から形成された環状シート部材が、弁胴の内周面に装着される構成のバタフライバルブが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特公昭62-46751号
【文献】特公平8-1267号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、弾性体から形成されたシート部材は、閉弁時の密閉性を高める一方で、弁の開閉トルクを増大させる、という課題があった。
【0010】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、弾性体から形成されたシート部材を備えるバタフライバルブにおいて、弁の開閉トルクを軽減し、利便性を向上させたバタフライバルブを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、弁体の回転により弁の開閉操作を行うバタフライバルブであって、
弁体と、弁胴と、弾性体から形成されたシート部材と、を備え、
前記シート部材は、前記弁体と前記弁胴との間に取り付けられ、
前記弁胴の内周面には、前記シート部材と当接する面に、シート部材の変形を逃がすための逃がし溝が設けられている。
【0012】
本発明によれば、弁体の回転に伴って弾性体のシート部材に生じる変形を、逃がし溝に逃がしてやることができ、弁の開閉トルクを軽減することができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記弁胴は、前記シート部材が嵌合するための嵌合溝を有し、
前記嵌合溝は、内部に前記逃がし溝を含む。
【0014】
このような構成とすることで、シート部材に生じる変形を、嵌合溝を介して逃がし溝へと向かわせることができ、開閉トルクの軽減効果をさらに高める。
また、嵌合溝によって、簡易な構成の下、弁胴にシート部材を着脱可能に取り付けることができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記逃がし溝は、前記弁胴の内周面に沿って設けられている。
【0016】
このような構成とすることで、逃がし溝は、弁体の外周に沿う形状となり、弁体の回転に伴うシート部材の変形を効率よく逃がすことができ、開閉トルクの軽減効果をさらに高める。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記逃がし溝は、前記弁体の内周面中央に形成されている。
【0018】
このような構成とすることで、弁の開閉トルクが最大となる、弁胴の内周面中央部に逃がし溝が位置し、開閉トルクの軽減効果をさらに高める。
【0019】
また、本発明の好ましい形態では、前記逃がし溝は、略環状に形成されている。
【0020】
このような構成とすることで、逃がし溝は弁体の外周に沿う形状となり、弁の開閉操作時に生じるシート部材の変形の大部分を、逃がし溝に逃がすことができ、開閉トルクの軽減効果をさらに高める。
【0021】
また、本発明の好ましい形態では、前記逃がし溝は、略帯状に形成されている。
【0022】
このような構成とすることで、弁の開閉操作時に生じるシート部材の変形をより多く逃がし溝に逃がすことができ、開閉トルクの軽減効果をさらに高める。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、弾性体から形成されたシート部材を備えるバタフライバルブにおいて、弁の開閉トルクを軽減し、利便性を向上させたバタフライバルブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係るバタフライバルブの概略斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るバタフライバルブの分解図であって、弁胴の(A)概略斜視図、(B)P-P´断面図である。
図3】本発明の実施形態に係るバタフライバルブの分解図であって、シート部材の(A)概略斜視図、(B)Q-Q´断面図である。
図4】本発明の実施形態に係るバタフライバルブの分解図であって、シート部材取付後の弁胴の(A)概略斜視図、(B)R-R´断面図である。
図5】本発明の実施形態に係るバタフライバルブの、(A)分解図(弁体)、(B)概略斜視図、(C)S-S´断面図である。
図6】本発明の効果を説明するための、S-S´断面における(A)開弁時の図、(B)部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1図6を用いて、本発明の実施形態に係るバタフライバルブについて説明する。
なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、これらの図において、符号Xは、本実施形態に係るバタフライバルブを示す。
また、以下で「中央」は、弁胴またはシート部材において、流体通路に略直交する一方の面と他方の面の、中間にあたる部分のことを指す。
【0026】
図1に示すように、バタフライバルブXは、弁胴1と、弾性体から形成されたシート部材2と、弁体3と、を備えている。
なお、内部に挿通されている、上部弁軸Us及び下部弁軸Lsを、破線で示している。
【0027】
図2に示すように、略円筒形状の弁胴1は、内周面中央に設けられた略環状の嵌合溝11と、流体通路に略直交する一方の面と他方の面に一対設けられた略環状の副嵌合溝12と、上下に一対設けられた挿軸孔13と、を有している。
そして、嵌合溝11は、その内部中央に、略環状に形成された逃がし溝11aを含む。
【0028】
また、弁胴1は、上部フランジUf、側部フランジSf、弁軸筒ss、肉抜き部r、をそれぞれ有しているが、これらについては、適宜増減した設計としてもよい。
【0029】
図3に示すように、略円筒形状のシート部材2は、外周面中央に設けられた略環状の嵌合隆起21と、流体通路に略直交する一方の面と他方の面に一対設けられた略環状の外縁部22と、上下に一対設けられた挿軸孔23と、内周面中央に設けられた略環状の密接隆起24と、を有している。
そして、一対の外縁部22には、略環状のシール凹凸部22aと、略環状の副嵌合隆起22bと、がそれぞれ設けられている。
【0030】
シール凹凸部22aは、略環状の凹凸が複数設けられていることで、弁とパイプライン等との接合部から流体を漏れにくくする効果を持つ。
【0031】
図4に示すように、弁胴1と、シート部材2は、嵌合溝11と嵌合隆起21とが、また、副嵌合溝12と副嵌合隆起22bとが、それぞれ嵌合することで、互いに取り付けられる。
このとき、逃がし溝11aが形成されていることで、嵌合溝11と嵌合隆起21との間に、シート部材2の変形を逃がすための空間を作ることができる。
【0032】
図5に示すように、弁体3は、上部弁軸Usと、下部弁軸Lsを介して、シート部材2が取り付けられた弁胴1に組み込まれる。
なお、内部に挿通されている、上部弁軸Us及び下部弁軸Lsを、破線で示している。
【0033】
図5(C)に示すように、弁体3は、その外周面で密接隆起24に密接することが可能であり、閉弁時の密閉性を高めることができる。
また、略環状に形成されている逃がし溝11aは、閉弁時の弁体3の外周面に沿った空間を、密接隆起24の裏側に形成することができる。
【0034】
図6(A)は開弁操作時の本バタフライバルブXの、S-S´断面図であり、図6(B)では、(A)における網掛け部分の拡大図を示した。以下、これらの図を用いて、本発明の効果を詳述する。
【0035】
まず、弁体3が方向d1に回転し始めると、弁体3は密接隆起24と接触し、シート部材2へと力が伝わり、これを変形させる。
【0036】
このとき、シート部材2に生じた変形は、逃がし溝11aの存在によって、方向d2へと逃がされる。
【0037】
そして、シート部材2の変形が方向d2へと逃がされることで、弁体3がシート部材2から受ける力が一時的に弱まり、弁体3の回転トルクが減少する。
【0038】
これは方向d1が逆向きとなる、閉弁操作時であっても、同様に弁体3の回転トルクが減少する。
【0039】
したがって、逃がし溝11aによって、特に、開閉トルクが最大となる、弁胴中央部において、弁体3の開閉トルクが軽減される。
【0040】
また、シート部材2において、逃がし溝11aへと逃げた変形が生じる復元力によって、弁体3とシート部材2のシール性を保つことができる。
【0041】
また、弁体3の開閉に伴うシート部材2の変形が、逃がし溝11aに逃がされることで、シート部材2の摩耗を半分以下に低減し、シート部材2の耐久性を高めることができる。
【0042】
本実施形態によれば、弾性体のシート部材2が当接する、弁胴1の内周面に、逃がし溝11aが設けられていることで、弁の開閉操作時に生じるシート部材2の変形を、逃がし溝11aへ逃がすことができ、弁の開閉トルクを軽減することが可能となる。
【0043】
また、弁胴1が、シート部材2が嵌合するための嵌合溝11を有し、嵌合溝11が内部に逃がし溝11aを含むことで、シート部材2に生じる変形を、嵌合溝11を介して逃がし溝11aへと向かわせることができ、開閉トルクの軽減効果をさらに高める。
【0044】
また、逃がし溝11aが、弁胴1の内周面に沿って設けられていることで、逃がし溝11aが弁体3の外周に沿う形状となり、弁体3の回転に伴うシート部材2の変形を効率よく逃がすことができ、開閉トルクの軽減効果をさらに高める。
【0045】
また、逃がし溝11aが、弁胴1の内周面中央に形成されていることで、弁の開閉トルクが最大となる、弁胴1の内周面中央部に逃がし溝11aが位置し、開閉トルクの軽減効果をさらに高める。
【0046】
また、逃がし溝11aが、略環状に形成されていることで、弁の開閉操作時に生じるシート部材2の変形の大部分を、逃がし溝11aに逃がすことができ、開閉トルクの軽減効果をさらに高める。
【0047】
また、逃がし溝11aが略帯状に形成されていることで、弁の開閉操作時に生じるシート部材2の変形を、より多く逃がし溝11aに逃がすことができ、開閉トルクの軽減効果をさらに高める。
【0048】
なお、上述の実施形態において示した各構成部材の諸形状や寸法等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0049】
例えば、逃がし溝11aは、嵌合溝11の内部にではなく、弁胴1の内周面に独立して設けられる構成としてもよい。
このようにすると、嵌合溝11と逃がし溝11aの形状は互いに制限されることなく、所望の仕様に合わせて自由に設計することができる。
【0050】
また、逃がし溝11aは、内周面中央に沿っていなくともよい。
例えば、偏心構造のバタフライ弁等を想定すると、弁の開閉トルクが最大となるのは、弁胴1の内周面中央部ではない場合があり得るため、これに合わせた設計が考えられ得る。
【0051】
また、逃がし溝11aは、略環状または略帯状でなくともよい。
例えば、弁体3が、上述の実施形態に示したような略円盤状でなく、特殊な形状である場合、その形状に合わせて、シート部材2の変形をより効率よく逃がすことが可能な、逃がし溝11aの形状が考えられ得る。
【0052】
また、逃がし溝11aは、その幅や深さを調節することで、所望の密閉性や開閉トルクの軽減効果等を得ることができ、様々な仕様に対応可能である。
【0053】
本発明は、弾性体から形成されたシート部材を備える、バタフライバルブに係るものであるから、バタフライバルブが用いられる多くの場面において、好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0054】
X バタフライバルブ
弁胴
11 嵌合溝
11a 逃がし溝
12 副嵌合溝
13 挿通孔
2 シート部材
21 嵌合隆起
22 外縁部
22a シール凹凸部
22b 副嵌合隆起
23 挿通孔
24 密接隆起
3 弁体
Us 上部弁軸
Ls 下部弁軸
Uf 上部フランジ
Sf 側部フランジ
ss 弁軸筒
r 肉抜き部
【要約】
【課題】弾性体から形成されたシート部材を備えるバタフライバルブにおいて、弁の開閉トルクを軽減し、利便性を向上させたバタフライバルブを提供する。
【解決手段】弁体の回転によって弁の開閉操作を行うバタフライバルブであって、
弁体3と、弁銅1と、弾性体から形成されたシート部材2と、を備え、
シート部材2は、弁体3と弁銅1との間に取り付けられ、
弁銅1の内周面には、シート部材2と当接する面に、シート部材2の変形を逃がすための逃がし溝11aが設けられている、バタフライバルブ。
【選択図】図2

図1
図2
図3
図4
図5
図6