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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】歩行車
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/04 20060101AFI20221209BHJP
【FI】
A61H3/04
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022124974
(22)【出願日】2022-08-04
(62)【分割の表示】P 2018072696の分割
【原出願日】2018-04-04
(65)【公開番号】P2022163133
(43)【公開日】2022-10-25
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2017151696
(32)【優先日】2017-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598087841
【氏名又は名称】株式会社幸和製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 健一
(72)【発明者】
【氏名】峯垣 淳平
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-158918(JP,A)
【文献】特開2002-85498(JP,A)
【文献】特開2015-130933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのアームレストと、
前記少なくとも1つのアームレストの上方に配置され、使用者の上半身を左右方向から支持するための左右の支持部材と、
旋回可能な左右の前輪と、
旋回可能な左右の後輪と、
旋回不能な左右の中央輪と、を備え、
左の中央輪は、左の前輪および左の後輪よりも左側に配置され、
右の中央輪は、右の前輪および右の後輪よりも右側に配置され、
前記左右の中央輪の間の距離が、右の前輪と左の後輪とを結ぶ回転直径よりも短く構成され、
前記左右の中央輪のそれぞれは、前記左右の支持部材のそれぞれと、前後方向の位置が重複するように取り付けられ、
平面視において、前記回転直径によって描かれる円の外側から中心に向けて、前記中央輪、前記アームレスト、前記支持部材の順に配置される、歩行車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自力での歩行が困難なユーザの歩行を補助するための歩行車に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、病人、身体障害者、あるいは高齢者などの、足腰が弱く自力での歩行が困難なユーザの歩行を補助するための歩行車が知られている。たとえば、特開2016-68784号公報(特許文献1)には、ブレーキ機構およびそれを用いた歩行車が開示されている。特許文献1によると、ブレーキ機構を構成する第1ブレーキバーは、第1上支点および第1下支点を有する第1本体部と、第1突設部と、第1握り部とを有する。第2ブレーキバーは、第2上支点および第2下支点を有する第2本体部と、第2突設部と、第2握り部とを有している。第1突設部と第2突設部とは互いに軸着されている。ブレーキワイヤは、第1上下支点および第2上下支点がそれぞれケース内に当接するように第1ブレーキバーまたは第2ブレーキバーを付勢している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-68784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、自力での歩行が困難なユーザの自立した歩行を可能にする歩行車を提供することにある。特に、意図しない旋回を引き起こす可能性を低減したり、転倒の可能性を低減したりすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある局面に従うと、少なくとも1つのアームレストと、少なくとも1つのアームレストの上方に配置され、使用者の上半身を左右方向から支持するための左右の支持部材と、を備える歩行車が提供される。左右の支持部材の各々は、前部と後部とが中央部よりも高く形成される。
【0006】
好ましくは、左右の支持部材の各々は、前部が後部よりも高く形成される。
【0007】
好ましくは、左右の支持部材は、前後方向の位置が調整可能に構成される。
【0008】
好ましくは、少なくとも1つのアームレストは、左右のアームレストを含む。左右のアームレストの各々は、前部の左右方向の幅よりも後部の左右方向の幅が広く形成される。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、自力での歩行が困難なユーザの自立した歩行を可能にする歩行車が提供される。特に、意図しない旋回を引き起こす可能性を低減したり、転倒の可能性を低減したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施の形態にかかる歩行車100の全体構成を示す正面側からの斜視図である。
図2】第1の実施の形態にかかる歩行車100の全体構成を示す背面側からの斜視図である。
図3】第1の実施の形態にかかる歩行車100の全体構成を示す側面図である。
図4】第1の実施の形態にかかる歩行車100の全体構成を示す平面図である。
図5】第1の実施の形態にかかる当接支持部材131L,131Rを下げた状態を示す歩行車100の全体構成を示す正面側からの斜視図である。
図6】第1の実施の形態にかかる縦メインフレーム110L,110Rを下げた状態を示す歩行車100の全体構成を示す正面側からの斜視図である。
図7】第1の実施の形態にかかる当接支持部材131L,131Rを寄せた状態を示す歩行車100の全体構成を示す正面側からの平面図である。
図8】第1の実施の形態にかかる当接支持部材131L,131Rを離した状態を示す歩行車100の全体構成を示す正面側からの平面図である。
図9】第1の実施の形態にかかる当接支持部材131L,131Rを前方へ移動させた状態を示す歩行車100の全体構成を示す側面図である。
図10】第2の実施の形態にかかる第1の当接支持部材132Lとアームレスト120Lとを示す側面図である。
図11】第2の実施の形態にかかる第2の当接支持部材133Lとアームレスト120Lとを示す側面図である。
図12】第3の実施の形態にかかる膝当て150使用時の歩行車100の全体構成を示す背面側からの斜視図である。
図13】第3の実施の形態にかかる膝当て150の斜視図である。
図14】第3の実施の形態にかかる膝当て150未使用時の歩行車100の全体構成を示す背面側からの斜視図である。
図15】第4の実施の形態にかかる歩行車100の全体構成を示す背面側からの斜視図である。
図16】第4の実施の形態にかかる膝当て160の斜視図である。
図17】第5の実施の形態にかかる歩行車100の全体構成を示す背面側からの斜視図である。
図18】第5の実施の形態にかかる膝当て170の斜視図である。
図19】第7の実施の形態にかかる歩行車200の全体構成を示す正面側からの斜視図である。
図20】第7の実施の形態にかかる歩行車200の全体構成を示す背面側からの斜視図である。
図21】第7の実施の形態にかかる歩行車200の全体構成を示す正面図である。
図22】第7の実施の形態にかかる歩行車200の全体構成を示す背面図である。
図23】第7の実施の形態にかかる歩行車200の全体構成を示す左側面図である。
図24】第7の実施の形態にかかる歩行車200の全体構成を示す右側面図である。
図25】第7の実施の形態にかかる歩行車200の全体構成を示す平面図である。
図26】第7の実施の形態にかかる歩行車200の全体構成を示す底面図である。
図27】第7の実施の形態にかかる歩行車200の車輪202L,202Rとアームレスト220L,220Rと上半身支持フレーム230L,230Rとの位置関係を示す底面図である。
図28】第7の実施の形態にかかる上半身支持フレーム230L,230Rを回動させている状態を示す左側面図である。
図29】第7の実施の形態にかかる上半身支持フレーム230L,230Rを収納した状態を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。また説明のために、歩行車の左側の部材には符号に「L」が付され、右側の部材には符号に「R」が付されているが、左右共通の部材を総称して「R」と「L」とを付さずに説明する場合もある。
[第1の実施の形態]
【0012】
まず、本実施の形態にかかる歩行車100の全体構成について説明する。図1は、本実施の形態にかかる歩行車100の使用時における全体構成を示す正面側からの斜視図である。図2は、本実施の形態にかかる歩行車100の使用時における全体構成を示す背面側からの斜視図からの斜視図である。図3は、本実施の形態にかかる歩行車100の使用時における全体構成を示す側面図である。図4は、本実施の形態にかかる歩行車100の使用時における全体構成を示す平面図である。
【0013】
図1から図4を参照して、本実施の形態にかかる歩行車100は、走行部として、左右の前輪101L,101Rと、左右の後輪102L,102Rと、当該前輪101L,101Rのそれぞれを枢支する前脚フレーム103L,103Rと、当該後輪102L,102Rのそれぞれを枢支する後脚フレーム104L,104Rとを含む。そして、左の前脚フレーム103Lと左の後脚フレーム104Lとは、両者の上部が所定の角度で左の連結部材105Lに取り付けられている。同様に、右の前脚フレーム103Rと右の後脚フレーム104Rとは、両者の上部が所定の角度で右の連結部材105Rに取り付けられている。
【0014】
左右の連結部材105L,105R同士は、左右メインフレーム107やサブ左右フレーム109などによって、所定の間隔をあけて互いに連結される。なお、左右の前脚フレーム103L,103R同士や、左右の後脚フレーム104L,104L同士も、各種のフレームによって所定の間隔をあけて互いに連結されることが好ましい。
【0015】
左右の前脚フレーム103L,103Rのそれぞれの下部と、左右の後脚フレーム104L,104Rのそれぞれの下部とは、左右の折り畳みリンク106L,106Rによって連結される。歩行車100が前後方向に折り畳まれる際には、左右の折り畳みリンク106L,106Rが折れ曲がることによって、左右の前脚フレーム103L,103Rのそれぞれと左右の後脚フレーム104L,104Rのそれぞれとが連結部材105L,105Rを中心にして前後方向に折り畳まれる。
【0016】
左右の連結部材105L,105Rのそれぞれには、左右の縦メインフレーム110L,110Rが挿通される。後述するように、左右の縦メインフレーム110L,110Rのそれぞれは、左右の連結部材105L,105Rのそれぞれに対する高さが調整可能である。
【0017】
左右の縦メインフレーム110L,110Rのそれぞれの上端部には、後方に向けて、左右のアームレスト120L,120Rのそれぞれが取り付けられる。また、左右の縦メインフレーム110L,110Rのそれぞれの上端部には、前方に向けて、ハンドル112とブレーキレバー114とが取り付けられる。
【0018】
ハンドル112とブレーキレバー114とは、平面視においてU字状に形成されている。ハンドル112とブレーキレバー114とは、側面視において、前部が上方に曲げられている。これによって、歩行車100の使用車は、アームレスト120L,120Rに肘を置きながら、ハンドル112やブレーキレバー114を握りやすく構成されている。本実施の形態においては、ブレーキレバー114が上方へ回動されることによって、左右の後輪102L,102Rにブレーキがかかるように構成されている。
【0019】
左右の縦メインフレーム110L,110Rのそれぞれの上端部には、調整部材115L,115Rを介して、さらに上方に向けて左右の上半身支持フレーム130L,130Rが取り付けられる。後述するように、左右の上半身支持フレーム130L,130Rのそれぞれは、左右の縦メインフレーム110L,110Rに対して、あるいは調整部材115L,115Rに対して、上下方向の高さと左右方向に幅が調節可能に形成される。
【0020】
左右の上半身支持フレーム130L,130Rは、側面視逆L字状に形成されている。そして、左右の上半身支持フレーム130L,130Rのそれぞれの上部の水平フレーム130Xには、当接支持部材131L,131Rが取り付けられる。より詳細には、当接支持部材131L,131Rの各々の下部に取り付けフレーム136Lが固設される。そして、取り付けフレーム136Lが、前後方向に調整可能に、上半身支持フレーム130L,130Rの上部の水平フレーム130Xに取り付けられる。
【0021】
当接支持部材131L,131Rの各々は、その左右両側面が、図4の平面視において凹形状に形成されている。これによって、使用者の上半身の側面が、当接支持部材131L,131Rの側面によって安定的に支持されやすくなる。
【0022】
また、当接支持部材131L,131Rの各々は、その上面が、図3の側面視において凹形状に形成されている。これによって、使用者の脇が当接支持部材131L,131Rの上面によって安定的に支持されやすくなる。
【0023】
図5を参照して、本実施の形態にかかる歩行車100は、上述したように、左右の上半身支持フレーム130L,130Rのそれぞれは、左右の縦メインフレーム110L,110Rに対して、あるいは調整部材115L,115Rに対して、上下方向の高さと左右方向に幅を調節することが可能である。
【0024】
より詳細には、図1図4図5を参照して、左右の縦メインフレーム110L,110Rの上端に取り付けられた調整部材115L,115Rが上半身支持フレーム130L,130Rの下部の垂直フレーム130Yを固定する。そして、締結ボルト117L,117Rをきつく締めることによって、調整部材115L,115Rによって上半身支持フレーム130L,130Rの垂直フレーム130Yを締め付けて、左右の上半身支持フレーム130L,130Rを左右の縦メインフレーム110L,110Rに対して固定する。逆に、締結ボルト117L,117Rを緩めることによって、調整部材115L,115Rによる上半身支持フレーム130L,130Rの垂直フレーム130Yの締め付けを緩めて、左右の上半身支持フレーム130L,130Rを左右の縦メインフレーム110L,110Rに対して上下左右方向に移動可能する。
【0025】
また、図5および図6を参照して、本実施の形態にかかる歩行車100は、上述したように、左右の縦メインフレーム110L,110Rのそれぞれが左右の連結部材105L,105Rに対して上下方向に高さ調節することが可能である。本実施の形態においては、左右の連結部材105L,105Rを連結する左右メインフレーム107に取り付けられた調整レバー111,111を互いに中央に寄せることによって、左右の縦メインフレーム110L,110Rの左右の連結部材105L,105Rに対する高さを変更することができる。
【0026】
このように、本実施の形態にかかる歩行車100においては、左右の縦メインフレーム110L,110Rのそれぞれを左右の連結部材105L,105Rに対して上下方向に高さ調節しつつ、さらに、左右の上半身支持フレーム130L,130Rのそれぞれを左右の縦メインフレーム110L,110Rに対して上下方向に高さ調節することが可能である。
【0027】
さらに、図4図7図8を参照して、本実施の形態にかかる歩行車100は、当接支持部材131L,131R同士の間隔を調整可能である。より詳細には、左右の上半身支持フレーム130L,130Rのそれぞれが左右の縦メインフレーム110L,110Rに対して水平方向に回動することが可能である。
【0028】
より詳細には、締結ボルト117L,117Rを緩めることによって、調整部材115L,115Rによる上半身支持フレーム130L,130Rの垂直フレーム130Yの締め付けを緩めて、左右の上半身支持フレーム130L,130Rを左右の縦メインフレーム110L,110Rに対して水平方向に回動可能にする。たとえば、図7に示すように当接支持部材131L,131Rおよび水平フレーム130Xの後部同士を互いに寄せたり、図8に示すように当接支持部材131L,131Rおよび水平フレーム130Xの後部同士を互いに離したりすることができる。逆に、締結ボルト117L,117Rをきつく締めることによって、調整部材115L,115Rで左右の上半身支持フレーム130L,130Rの垂直フレーム130Yを締め付けて、左右の上半身支持フレーム130L,130Rを所望の角度で左右の縦メインフレーム110L,110Rに対して固定する。
【0029】
さらに、図3および図9を参照して、当接支持部材131L,131Rの上半身支持フレーム130L,130Rに対する前後方向に関する固定位置は調整可能である。より詳細には、調節ボルト137を取り外して、当接支持部材131L,131Rの下部に取り付けられた取り付けフレーム136Lの、上半身支持フレーム130L,130Rの水平フレーム130Xに対する取り付け位置を変更する。そして、調節ボルト137によって取り付けフレーム136Lを上半身支持フレーム130L,130Rの水平フレーム130Xに固定することによって、当接支持部材131L,131Rの前後方向の位置を所望の位置に固定する。
【0030】
また、本実施の形態においては、図1図4に示すように、左右のアームレスト120L,120Rに関しては、前部の左右方向の幅よりも、後部の左右方向の幅の方が広く構成される。これによって、大きい体格の使用者と、小さい体格の使用者とが、アームレスト120L,120Rが共用しやすくなる。この構成は、特に、左右のアームレスト120L,120Rの高さや左右方向の位置や前後方向の位置などが調整できない歩行車100には便利である。
【0031】
なお、本実施の形態においては、歩行車100が、左右のアームレスト120L,120Rを搭載するものであるが、平面視U字状あるいは平面視く字状の1つのアームレストを搭載するものであってもよい。
【0032】
このように、本実施の形態にかかる歩行車100は、アームレスト120L,120Rの上方に、当接支持部材131L,131Rが設けられるため、歩行車100の使用中に使用者の上半身を左右方向から支持したり、歩行車100の使用中に使用者の上半身が左右に傾いても左右方向から支持したりすることができる。
[第2の実施の形態]
【0033】
第1の実施の形態の歩行車100に関しては、図3に示した通り、当接支持部材131L,131Rの各々の上面が側面視において凹形状に形成され、当接支持部材131L,131Rの各々の前部と後部の高さが同様に構成されるものであった。
【0034】
しかしながら、図10に示すように、当接支持部材131L,131Rの各々の前部1321が後部1323よりも高くなるように構成されることが好ましい。これによって、使用者による歩行車100の使用の開始時に使用者の上半身や脇を容易に当接支持部材131L,131Rの後部1323を乗り越えやすくしつつ、歩行車100の使用中に使用者の上半身や脇を当接支持部材131L,131Rの前部1321に安定してもたれさせることができる。
【0035】
なお、図10に示すように当接支持部材131L,131Rの各々の前部1321が後部1323よりも25mm程度高く形成してもよいし、図11に示すように当接支持部材131L,131Rの各々の前部1321が後部1323よりも50mm程度高く形成してもよい。
[第3の実施の形態]
【0036】
第1の実施の形態の歩行車100に関しては、アームレスト120L,120Rの上方に、当接支持部材131L,131Rが設けられるため、歩行車100の使用中に使用者の上半身を左右方向から支持したり、歩行車100の使用中に使用者の上半身が左右に傾いても左右方向から支持したりすることができるものであった。本実施の形態においては、さらに、歩行車100の行く手に障害物があって使用者がそれをよけられずに立ち止まってしまった場合や、歩行車100のユーザが歩行に疲れて立ち止まる場合などに、従来よりも楽に歩行車100の使用者が立ち止まった状態を維持しやすくするための構成が実現される。
【0037】
図12は、本実施の形態にかかる歩行車100の使用時における全体構成を示す背面側からの斜視図である。図13は、本実施の形態にかかる膝当て150を示す斜視図である。図12および図13を参照して、本実施の形態においては、左右メインフレーム107(図2を参照)に、膝当て150が取り付けられる。膝当て150は、使用時において、ユーザの左右の膝の前方または前下方のエリアに配置され、ユーザの膝が少し曲げられた状態において、当該ユーザの膝を前下方から後上方へ向けて支持するものである。
【0038】
これによって、膝を曲げて、すなわち膝を前方に出した状態で立ち止まっている使用者の上半身や脇を当接支持部材131L,131Rによって上方へ支持しつつ、使用者の膝を膝当て150によって前下方から後上方へ支持することができる。換言すれば、立ち止まっている使用者は、膝を曲げて、すなわち膝を前方に出した状態で、上半身や脇を当接支持部材131L,131Rによって下方から支持されつつ、両膝を前下方から支持される。つまり、本実施の形態にかかる歩行車100は、立ち止まっている使用者の疲れを低減することができる。特に、膝を伸ばしきることが困難な高齢者の脇と膝とを効率的に支えることができる。
【0039】
なお、上述したように、膝当て150は、使用者の両膝を前下方から後上方に向けて支持してもよいし、単に前方から後方へ支持するものであってもよい。
【0040】
また、膝当て150は、歩行中には別の位置へ待避できることが好ましい。たとえば、図14に示すように、膝当て150が、左右メインフレーム107を軸に、上方へ回動可能に構成されてもよい。これによって、膝当て150が歩行の邪魔になりにくくすることができる。
[第4の実施の形態]
【0041】
なお、図15および図16に示すように、膝当て160は、左右の端部に上下方向の盛り上がり部160L,160Rが形成されていることが好ましい。これによって、使用者が膝を曲げた状態で立ち止まっている場合に、膝が膝当て160の左右からはみ出てしまう可能性を低減することができる。
[第5の実施の形態]
【0042】
さらには、図17および図18に示すように、膝当て170は、左右の端部に上下方向の盛り上がり部170L,170Rが形成されつつ、左右の中央部にも上下方向の盛り上がり部170Mが形成されていることが好ましい。これによって、使用者が膝を曲げた状態で立ち止まっている場合に、左の膝が膝当て170の左端の盛り上がり部170Lと中央の盛り上がり部170Mとの間の当接部171Lからはみ出てしまう可能性を低減し、右の膝が膝当て170の右端の盛り上がり部170Rと中央の盛り上がり部170Mとの間の当接部171Rからはみ出てしまう可能性を低減することができる。つまり、使用者は、より安定して、より楽に、立ち止まった状態を維持することができる。
[第6の実施の形態]
【0043】
なお、上記第3および第4の実施の形態のように、1つの膝当て150,160,170によって、使用者の左右の膝を支持する構成であってもよいが、歩行車100は、左の膝を支持するための左の膝当てと、右の膝を支持するための右の膝当てと、を別々に搭載してもよい。
【0044】
また、膝当ては、左右メインフレーム107とは別の部材によって支持されてもよい。たとえば、膝当ては、連結部材105L,105Rや縦メインフレーム110L,110Rによって支持されてもよい。
[第7の実施の形態]
【0045】
上記の実施の形態においては、左右方向に旋回可能な前輪101L,101Rと左右方向に旋回不能な後輪102L,102Rとを有するものであったが、このような形態には限られない。本実施の形態においては、図19図26に示すように、歩行車200は、旋回可能な前輪201L,201Rと、旋回可能な後輪203L,203Rと、旋回不能な中央輪202L,202Rとを有するものである。
【0046】
本実施の形態にかかる歩行車200は、走行部として、左右の前輪201L,201Rと、左右の中央輪202L,202Rと、左右の後輪203L,203Rと、それらの車輪を枢支する脚部フレーム204とを含む。より詳細には、脚部フレーム204は、平面視U字状の流線型に形成されており、脚部フレーム204の前部の左右に前輪201L,201Rが旋回可能に取り付けられ、脚部フレーム204の中央部の左右に中央輪202L,202Rが旋回不能に取り付けられ、脚部フレーム204の後部の左右に後輪203L,203Rが旋回可能に取り付けられる。
【0047】
特に、本実施の形態においては、図27に示すように、旋回不能な左右の中央輪202L,202Rが、右の前輪201Rと左の後輪203Lとを結ぶ回転直径Xによって描かれる円Yの内側に位置するように構成されている。なお、本実施の形態においては、左右の中央輪202L,202Rは、左右の前輪201L,201Rよりも歩行車200の左右方向の外側に、かつ左右の後輪203L,203Rよりも歩行車200の左右方向の外側に配置される。
【0048】
このように中央輪202L, 202Rを位置させることにより、平面視において、前輪201L, 201R、中央輪202L, 202R、および後輪203L, 203Rのそれぞれ車輪の接地点を隣接同士で結び形成される閉領域(いわゆる支持基底面)の大きさを優位に確保することができる。これによって、左右の上半身支持フレーム230L, 230Rに支持される使用者は、より重心位置を安定して歩行車200を使用することが可能となる。
【0049】
図19図26に戻って、脚部フレーム204のうちの、前輪201L,201Rと中央輪202L,202Rとの間には、左右に凸部204Yが形成される。凸部204Y,204Yには、左右の縦メインフレーム210L,210Rが挿通される。左右の縦メインフレーム210L,210Rのそれぞれは、脚部フレーム204に対する差し込み量が調節可能であって、これによって後述するアームレストやハンドルの高さが調節可能に構成されている。
【0050】
左右の縦メインフレーム210L,210Rのそれぞれの上端部には、上部フレーム205が取り付けられる。上部フレーム205も、平面視、略U字状の流線型に形成される。上部フレーム205の左右の後部には、左右のアームレスト220L,220Rが設けられる。また、左右のアームレスト220L,220Rの前部には、前方に向けて、ハンドル212が取り付けられる。なお上部フレーム205に対する、左右の縦メインフレーム210L,210Rの差し込み量が調節可能に構成されることによって、後述するアームレストやハンドルの高さが調節可能に構成されてもよい。
【0051】
左右のアームレスト220L,220Rには、それぞれ、左右の上半身支持フレーム230L,230Rが取り付けられる。本実施の形態にかかる左右の上半身支持フレーム230L,230Rは、側面視において、前後方向に長い略矩形状に形成されている。このように本実施形態においては、上半身支持フレームは当接支持部材を兼ねる部材とされている。
【0052】
図23および図24に示すように、本実施の形態においても、左右の上半身支持フレーム230L,230Rの各々は、使用時における上面が、側面視において凹形状に形成されている。これによって、使用者の脇が左右の上半身支持フレーム230L,230Rの上面によって安定的に支持されやすくなる。
【0053】
このように、本実施の形態にかかる歩行車200においても、アームレスト220L,220Rの上方に、支持フレーム230L,230Rが設けられるため、歩行車200の使用中に使用者の上半身を左右方向から支持したり、歩行車200の使用中に使用者の上半身が左右に傾いても左右方向から支持したりすることができる。
【0054】
また、図27を参照して、旋回不能な左右の中央輪202L,202Rのそれぞれは、前後方向において、左右の上半身支持フレーム230L,230Rのそれぞれと重複する位置に配置される。より詳細には、旋回不能な左右の中央輪202L,202Rの後端または接地位置は、前後方向において、左右の上半身支持フレーム230L,230Rのそれぞれの後端よりも前方に位置する。より好ましくは、旋回不能な左右の中央輪202L,202Rの前端または接地位置は、前後方向において、左右の上半身支持フレーム230L,230Rのそれぞれの前端よりも後方に位置し、かつ、旋回不能な左右の中央輪202L,202Rの後端または接地位置は、前後方向において、左右の上半身支持フレーム230L,230Rのそれぞれの後端よりも前方に位置する。これによって、歩行車200の左右方向の安定性が向上する。
【0055】
また、左右の上半身支持フレーム230L, 230Rにより左右方向に移動規制される使用者においては、意図しない旋回を引き起こす危険が低減され、ひいては、転倒の危険が低減される。言い換えれば、歩行車200が旋回する際、平面視において中央輪202L, 202Rを結ぶ軸線上に左右の上半身支持フレーム230L, 230Rが位置するため、この軸線が旋回軸となり使用者を軸として安定的に駒回りできる。この点、図3を参照すれば、歩行車100も同様に、旋回不能な後輪102L, 102Rのそれぞれは、前後方向において、左右の当接支持部材131L, 131Rのそれぞれと重複する位置に配置されている。これによって歩行車100の左右方向の安定性が向上する構成とされる。また、左右の当接支持部材131L, 131Rにより左右方向に移動規制される使用者においては、意図しない旋回を引き起こす危険が低減され、ひいては、転倒の危険が同様に低減されている。
【0056】
加えて、本実施の形態においては、旋回不能な左右の中央輪202L,202Rのそれぞれは、前後方向において、左右のアームレスト220L,220Rのそれぞれの前端よりも後方の位置に配置される。これによって、使用者はハンドル112を把持しながら又は把持せずに、左右のアームレスト220L, 220Rに加重をかけながら歩行車200に対して中央輪202L, 202Rを結ぶ軸線を旋回軸として容易にその旋回力を付加できる。
【0057】
加えて、本実施の形態においては、左右のアームレスト220L, 220Rのそれぞれの前端は、上半身支持フレーム230L、202Rのそれぞれの前端よりも前方に位置する。これによって、使用者は前方方向に自重を預けて安定的に歩行することが可能となる。
【0058】
また、本実施の形態においては、左右の上半身支持フレーム230L,230Rのそれぞれは、その前部が、左右のアームレスト220L,220Rに枢支されている。そして、左右の上半身支持フレーム230L,230Rのそれぞれは、使用時には、図23に示すように、その後部が上方へ回動した位置に固定される。一方、たとえば、使用者が歩行車200の使用を止めて椅子やベッドに座る場合や、使用者が立ち上がって歩行車200の使用を開始する場合は、図27に示すように左右の上半身支持フレーム230L,230Rのそれぞれの後部を下方へ回動させる。そして、図28に示すように、最終的に、左右の上半身支持フレーム230L,230Rが左右のアームレスト220L,220Rの上方へ飛び出さない位置まで下降した位置に固定される。
【0059】
これによって、例えば、使用者が歩行車200に移乗する際には、左右のアームレスト220L, 220Rを低位置まで下降させるとともに使用者が左右のアームレスト220L, 220Rに対して上半身支持フレーム230L, 230Rに阻害されることなく安定して寄りかかりことが可能となり、その後、アームレスト220L, 220Rを上昇させて歩行姿勢に位置させることができる。また、アームレスト220L, 220Rを上昇させて歩行姿勢に位置させる際には、アームレスト220L, 220Rの上昇に合わせて上半身支持フレーム230L, 230Rを上方に移動させて上半身(例えば脇下領域)を持ち上げることで、使用者をより簡便に歩行姿勢に位置させることが可能となる。他の使用構成としては、歩行車200を昇降させる際、上半身支持フレーム230L, 230Rで使用者を支持することで、歩行車200の昇降に起因して使用者が倒れることを防止するために介助者が支持することなく、使用者を安全に移乗させる又は歩行姿勢に位置させることが可能となる。
【0060】
なお、歩行車200は、その周囲に人感センサを搭載することが好ましい。
【0061】
さらに、歩行車200は、誘導灯を備えることが好ましい。そして、人感センサによって、歩行車200の近傍に人を検知した際に、当該誘導灯を点灯させることが好ましい。これによって、部屋が暗い場合にも、使用者が歩行車200の位置を把握しやすい。
【0062】
また、歩行車200は、電動モータを搭載することが好ましい。そして、電動モータによって、旋回不能な後輪102L,102Rまたは中央輪202L,202Rが駆動されることが好ましい。この場合は、歩行車200は、カメラや通信機器を有することによって、自走走行機能を有することが好ましい。たとえば、歩行車200は、電池残量が少なくなった際に充電機まで自動で走行する機能を有することが好ましい。
【0063】
本発明によれば、左右のアームレスト220L, 220Rにより使用者の上半身を支持することにより、使用者を安定的な歩行姿勢に維持することが可能となる。この点、使用者は、左右方向への転倒が低減された状態で安定して歩行車200を使用して歩行できる。一方、使用者は、前方方向に歩行車を使用して移動する際、歩行姿勢は直立方向に矯正されることになるため、例えば、使用者の身体能力が年齢または疾病に起因して左右に差異が生じている場合、使用者が意図せずに歩行車200が斜行してしまうことがある。そこで、電動モータを搭載することにより、例えば、旋回不能な後輪102L,102Rまたは中央輪202L,202Rの回転数を左右独立して制御することが可能となり、当該斜行の発生を抑制して前方方向によりよく前進させることができる。
[まとめ]
【0064】
上記の実施の形態においては、少なくとも1つのアームレスト120L,120Rと、少なくとも1つのアームレスト120L,120Rの上方に配置され、使用者の上半身を左右方向から支持するための左右の支持部材131L,131R(130L,130R)と、を備える歩行車100が提供される。左右の支持部材131L,131Rの各々は、前部1311,1321,1331と後部1313,1323,1333とが中央部1312,1322,1332よりも高く形成される。
【0065】
好ましくは、左右の支持部材132L,132R,133L,133Rの各々は、前部1321,1331が後部1323,1333よりも高く形成される。
【0066】
好ましくは、左右の支持部材131L,131Rは、前後方向の位置が調整可能に構成される。
【0067】
好ましくは、少なくとも1つのアームレスト120L,120Rは、左右のアームレスト120L,120Rを含む。左右のアームレスト120L,120Rの各々は、前部の左右方向の幅よりも後部の左右方向の幅が広く形成される。
【0068】
また、上記の実施の形態においては、少なくとも1つのアームレストと、少なくとも1つのアームレストの上方に配置され、使用者の上半身を左右方向から支持するための左右の当接支持部材と、左右の固定輪と、固定輪よりも前側に位置する前側旋回輪と、固定輪よりも後側に位置する左右の後側旋回輪とを備える歩行車が提供される。平面視において、左右の固定輪の各々と、左右の当接支持部材の各々とは、少なくとも一部が重なる位置に配置される。
【0069】
好ましくは、固定輪と旋回輪が接地面に対して形成する支持基底面において、支持基底面内にアームレストが位置する。
【0070】
好ましくは、アームレストは、歩行車の前後方向において、固定輪の接地位置と旋回輪の接地位置の間に位置する。
【0071】
好ましくは、アームレストは、歩行車の左右方向において、固定輪の接地位置と旋回輪の接地位置の間に位置する。
【0072】
好ましくは、固定輪と旋回輪が接地面に対して形成する支持基底面において、支持基底面内に当接支持部材が位置する。
【0073】
好ましくは、当接支持部材は、歩行車の前後方向において、固定輪の接地位置と旋回輪の接地位置の間に位置する。
【0074】
好ましくは、当接支持部材は、歩行車の左右方向において、固定輪の接地位置と旋回輪の接地位置の間に位置する。
【0075】
好ましくは、歩行者は、右の前側旋回輪と左の前側旋回輪とを備え、左右の固定輪の車輪幅は、左右の前側旋回輪の車輪幅よりも長く、左右の後側旋回輪の車輪幅よりも長い。また、右の前側旋回輪と左の後側旋回輪との距離を旋回直径とする旋回円内に左右の固定輪が位置する。
【0076】
好ましくは、アームレストは高さ調節可能である。支持部材は、アームレストよりも下側に可動できるものとされる。
【0077】
好ましくは、歩行車は、人感センサを備え、人を検知した際に点灯する誘導灯を備える。
【0078】
好ましくは、固定輪は、電動モータの駆動力によって駆動される。
【0079】
好ましくは、歩行車は、自走走行機能を有する。
【0080】
好ましくは、歩行車は、電池残量が少なくなった際に充電機まで自動で走行する機能を有する。
【0081】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
100 :歩行車
101L,101R :前輪
102L,102R :後輪
103L,103R :前脚フレーム
104L,104R :後脚フレーム
105L,105R :連結部材
106L,106R :折り畳みリンク
107 :左右メインフレーム
110L,110R :縦メインフレーム
111 :調整レバー
112 :ハンドル
114 :ブレーキレバー
115L,115R :調整部材
117L,117R :締結ボルト
120L,120R :アームレスト
130L,130R :上半身支持フレーム
130X :水平フレーム
130Y :垂直フレーム
131L,131R :当接支持部材
132L,132R :当接支持部材
133L,133R :当接支持部材
136L :取り付けフレーム
150 :膝当て
160 :膝当て
160L,160R :盛り上がり部
170 :膝当て
170L,170M :盛り上がり部
171L,171R :当接部
1311 :前部
1312 :中央部
1313 :後部
1321 :前部
1322 :中央部
1323 :後部
1331 :前部
1332 :中央部
1333 :後部
200 :歩行車
201L :前輪
201R :前輪
202L :中央輪
202R :中央輪
203L :後輪
203R :後輪
204 :脚部フレーム
204Y :凸部
205 :上部フレーム
210L :縦メインフレーム
210R :縦メインフレーム
212 :ハンドル
220L :アームレスト
220R :アームレスト
230L :上半身支持フレーム(当接支持部材)
230R :上半身支持フレーム(当接支持部材)
X :回転直径
Y :円
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図18
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図26
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図29