(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】剥線機、カッタ及び剥線方法
(51)【国際特許分類】
H02G 1/12 20060101AFI20221209BHJP
B26D 3/00 20060101ALI20221209BHJP
B26D 7/26 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
H02G1/12 060
B26D3/00 603Z
B26D7/26
(21)【出願番号】P 2022131144
(22)【出願日】2022-08-19
【審査請求日】2022-09-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522331574
【氏名又は名称】株式会社アールエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】入江 亮
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】実開平4-47322(JP,U)
【文献】特開平3-61907(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/167719(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/12
B26D 3/00
B26D 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線又はケーブルの導体を覆う被覆材を剥離する剥線機であって、
前記被覆材に当接する少なくとも一つのカッタと、
一対の上ロール及び下ロールの間に前記電線又は前記ケーブルを挟んで前記少なくとも一つのカッタに向かって送り出すローラと、を備え、
前記少なくとも一つのカッタは、
前記電線又は前記ケーブルの送出方向に沿って延在する胴部と、
前記胴部における前記ローラに面した側の端部に設けられた刃部と、を有し、
前記刃部は、前記送出方向の上流側に向かうに従って第1側面と第2側面との間隔が狭くなるくさび状に形成され、かつ、前記第1側面と前記第2側面とが一致する稜線に形成された切れ刃を有している、
剥線機。
【請求項2】
前記切れ刃の刃長は、前記切れ刃によって切断する前記被覆材の厚さよりも大きい、
請求項1に記載の剥線機。
【請求項3】
前記電線又は前記ケーブルは、第1の仕上外径を有する第1の電線又はケーブルと、前記第1の仕上外径よりも大きい第2の仕上外径を有する第2の電線又はケーブルと、を含み、
前記剥線機は、前記第1の電線又はケーブルに対応した第1の投入口と、前記第2の電線又はケーブルに対応した第2の投入口と、を備え、
前記少なくとも一つのカッタは、前記第1の投入口から投入された前記第1の電線又はケーブルに当接する第1のカッタと、前記第2の投入口から投入された前記第2の電線又はケーブルに当接する第2のカッタと、を含み、
前記下ロールの回転中心から前記第2のカッタの前記切れ刃までの水平距離は、前記下ロールの回転中心から前記第1のカッタの前記切れ刃までの水平距離よりも大きい、
請求項1に記載の剥線機。
【請求項4】
前記下ロールの回転中心から前記カッタの前記切れ刃までの水平距離は、前記電線又は前記ケーブルの仕上外径の0.8倍以上かつ1.4倍以下である、
請求項1に記載の剥線機。
【請求項5】
前記電線又は前記ケーブルの仕上外径が、38mm以上かつ47mm以下であるとき、前記下ロールの回転中心から前記カッタの前記切れ刃までの水平距離は、40mm以上かつ50mm以下である、
請求項1に記載の剥線機。
【請求項6】
前記胴部の延在方向は、水平方向であるか、又は、前記送出方向の下流側に向かうに従って重力方向上方に向かうように傾斜した方向である、
請求項1に記載の剥線機。
【請求項7】
前記刃部は、前記切れ刃に臨む部位に形成され、前記送出方向の下流側に向かうに従って重力方向下方に向かうように傾斜した傾斜面を有している、
請求項1から6のいずれか一項に記載の剥線機。
【請求項8】
電線又はケーブルの導体を覆う被覆材を剥離する剥線機を構成する交換可能なカッタであって、
前記剥線機は、一対の上ロール及び下ロールの間に前記電線又は前記ケーブルを挟んで前記カッタに向かって送り出すローラを備え、
前記カッタは、前記電線又は前記ケーブルの送出方向に沿って延在する胴部と、
前記胴部における前記ローラに面した側の端部に設けられた刃部と、を有し、
前記刃部は、前記送出方向の上流側に向かうに従って第1側面と第2側面との間隔が狭くなるくさび状に形成され、かつ、前記第1側面と前記第2側面とが一致する稜線に形成された切れ刃を有している、
カッタ。
【請求項9】
電線又はケーブルの導体を覆う被覆材を剥離する剥線方法であって、
一対の上ロール及び下ロールの間に電線又はケーブルを挟んでカッタに向かって送り出すこと、
前記カッタに設けられたくさび状の刃部によって前記被覆材に切れ目を形成すること、並びに、
前記カッタに設けられ、かつ、前記電線又は前記ケーブルの送出方向に沿って延在する胴部によって、前記被覆材が前記カッタを通過している間は前記切れ目が閉じないように押し広げた状態を維持すること、を含む、
剥線方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線やケーブルから被覆材を剥離する剥線機に関する。
【背景技術】
【0002】
電線やケーブルの導体に用いられている銅やアルミニウムは有価物であり、被覆材に用いられているポリエチレン樹脂やビニル樹脂もマテリアルリサイクルあるいはサーマルリサイクルが可能であるため、産業廃棄物として回収された廃電線は、剥線機を用いて導体と被覆材とに分離して再資源化される。
【0003】
低圧電力用等のケーブルを処理する汎用剥線機は、例えば、ケーブルを上下から挟持して送り出す一対の送りロールを備えている。送りロールの周面には、リング状の切れ刃が形成されている。高圧電力用等の太いケーブルを処理する大型剥線機は、例えば、ケーブルを載置する水平な作業台と、作業台上のケーブルを左右から挟持して送り出す一対の送りロールと、ケーブルの挟持位置に向かって上方及び下方からそれぞれ突出した上下一対のカッタと、を備えている。
【0004】
特許文献1及び2には、前述した汎用剥線機と同様に、一対の上下ロールを用いてケーブルを送り込むように構成された多芯ケーブル用の剥線装置が開示されている。特許文献1の
図1(A)が参照されるように、剥線装置は、棒状に延在する第1及び第2のカッターを備え、第1のカッターは、ケーブルの上方から切断位置に向かって斜め下向きに突出し、第2のカッターは、ケーブルの下方から切断位置に向かって斜め上向きに突出している。第1及び第2のカッターは、刃先がケーブルの送出方向下流側を向くように配置され、送り込まれている多芯ケーブルの外皮を引き切りする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-82607号公報
【文献】特開2022-26367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、汎用剥線機では処理できない太さのケーブルを大型剥線機で処理する場合、ケーブルの太さに応じて複数の剥線機を使い分けなければならない。手順が煩雑であり、作業者の負担が大きい。太いケーブル用の大型剥線機は、重くて占有面積が大きいため、工場内の作業スペースが圧迫される。
【0007】
そこで、本発明は、種々の種類の電線又はケーブルを処理可能で占有面積がコンパクトな剥線機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る剥線機は、電線又はケーブルの導体を覆う被覆材を剥離する剥線機であって、被覆材に当接する少なくとも一つのカッタと、一対の上ロール及び下ロールの間に電線又はケーブルを挟んで少なくとも一つのカッタに向かって送り出すローラと、を備えている。少なくとも一つのカッタは、電線又はケーブルの送出方向に沿って延在する胴部と、胴部におけるローラに面した側の端部に設けられた刃部と、を有している。刃部は、送出方向の上流側に向かうに従って第1側面と第2側面との間隔が狭くなるくさび状に形成され、かつ、第1側面と第2側面とが一致する稜線に形成された切れ刃を有している。
【0009】
この態様によれば、送りロールが上下に並んでいるため、送りロールが左右に並んでいる構成と比べて、工場内の作業スペースの占有面積が小さいコンパクトな剥線機を提供できる。カッタの胴部がケーブル等の送出方向に沿って延在しているため、刃部が形成した被覆材の切れ目を刃部だけでなく胴部によって押し広げ、切れ目が閉じない状態を維持しながらケーブル等を送ることができる。被覆材に点接触する角錐状の切れ刃ではなく、被覆材に線接触する稜線に形成された切れ刃であるため、カッタの胴部がケーブル等の送出方向に沿っていても被覆材を切断できる。ケーブル等が太くなったり、劣化した被覆材が導体に固着したりしていても、導体と被覆材との分離を失敗しにくい。胴部が斜めに延在していた従来技術の剥線機と比べて種々の種類のケーブル等を処理できる。
【0010】
上記態様において、切れ刃の刃長は、切れ刃によって切断する被覆材の厚さよりも大きいことが好ましい。
【0011】
この態様によれば、例えば、カッタの胴部がケーブル等の送出方向と略平行になっていても、被覆材の厚さよりも大きい刃長の切れ刃によって被覆材を確実に切断できる。
【0012】
上記態様において、電線又はケーブルは、第1の仕上外径を有する第1の電線又はケーブルと、第1の仕上外径よりも大きい第2の仕上外径を有する第2の電線又はケーブルと、を含んでいてもよい。剥線機は、第1の電線又はケーブルに対応した第1の投入口と、第2の電線又はケーブルに対応した第2の投入口と、を備えていてもよい。少なくとも一つのカッタは、第1の投入口から投入された第1の電線又はケーブルに当接する第1のカッタと、第2の投入口から投入された第2の電線又はケーブルに当接する第2のカッタと、を含んでいてもよい。下ロールの回転中心から第2のカッタの切れ刃までの水平距離は、下ロールの回転中心から第1のカッタの切れ刃までの水平距離よりも大きいことが好ましい。
【0013】
この態様では、ケーブル等の仕上外径に応じて下ロールと切れ刃との距離を変化させるため、種々の種類のケーブル等をより好適に処理できる。仕上外径が小さく剛性が小さいケーブル等は、下ロールにより近い位置の第1のカッタに切断されるため、ケーブル等の先端が垂れ下がってカッタとの位置がずれる前に細いケーブル等を処理できる。仕上外径が大きく剛性が大きいケーブル等は、下ロールからより遠い位置の第2のカッタに切断されるため、導体と被覆材とが勢いよく分離されても排出口から外れた位置に飛散しにくい。剥線機の内部を汚すことなく太いケーブル等を処理できる。
【0014】
上記態様において、下ロールの回転中心からカッタの切れ刃までの水平距離は、電線又はケーブルの仕上外径の1.0倍以上かつ1.4倍以下であることが好ましい。また、電線又はケーブルの仕上外径が、35mm以上かつ40mm以下であるとき、下ロールの回転中心からカッタの切れ刃までの水平距離は、40mm以上かつ50mm以下であることが好ましい。
【0015】
これらの態様によれば、例えば、325sqの6600Vといった高圧電力用ケーブル、400sqの600V用電力ケーブルのような仕上外径の大きいケーブル等を好適に処理できる。
【0016】
上記態様において、胴部の延在方向は、水平方向であるか、送出方向の下流側に向かうに従って重力方向上方に向かうように傾斜した方向であることが好ましい。
【0017】
この態様によれば、ローラに押し出されて水平方向か、水平方向よりも僅かに上方へ浮き上がりやすいケーブル等とカッタの胴部とを略平行に配置できる。被覆材がカッタを通過している間は切れ目が閉じないように押し広げた状態を維持できるため、ケーブル等が太くなったり、劣化した被覆材が導体に固着したりしている厳しい条件でも、導体と被覆材とをより確実に分離できる。
【0018】
上記態様において、刃部は、切れ刃に臨む部位に形成され、送出方向の下流側に向かうに従って重力方向下方に向かうように傾斜した傾斜面を有していてもよい。
【0019】
この態様によれば、切れ刃に臨む部位に傾斜面が形成されているため、下ロールとの干渉を避けて切れ刃を下ロールにより近づけることができる。仕上外径がより小さいケーブル等を処理できるようになる。
【0020】
本発明の一態様に係るカッタは、電線又はケーブルの導体を覆う被覆材を剥離する剥線機を構成する交換可能なカッタであって、剥線機は、一対の上ロール及び下ロールの間に電線又はケーブルを挟んでカッタに向かって送り出すローラを備えている。カッタは、電線又はケーブルの送出方向に沿って延在する胴部と、胴部におけるローラに面した側の端部に設けられた刃部と、を有している。刃部は、送出方向の上流側に向かうに従って第1側面と第2側面との間隔が狭くなるくさび状に形成され、かつ、第1側面と第2側面とが一致する稜線に形成された切れ刃を有している。
【0021】
この態様によれば、前述した優れた効果を奏する剥線機を構成することができる。
【0022】
本発明の一実施形態に係る剥線方法は、電線又はケーブルの導体を覆う被覆材を剥離する剥線方法であって、一対の上ロール及び下ロールの間に電線又はケーブルを挟んでカッタに向かって送り出すこと、カッタに設けられたくさび状の刃部によって被覆材に切れ目を形成すること、並びに、カッタに設けられ、かつ、電線又はケーブルの送出方向に沿って延在する胴部によって、被覆材がカッタを通過している間は切れ目が閉じないように押し広げた状態を維持すること、を含んでいる。
【0023】
この態様によれば、上下に並んだ送りロールを用いてケーブル等を送り出すため、左右に並んだ送りロールを用いる方法と比べて、工場内の作業スペースの占有面積が小さい。ケーブル等の送出方向に沿って延在する胴部によって、被覆材がカッタを通過している間は切れ目が閉じないように押し広げた状態を維持するため、ケーブル等が太くなったり、劣化した被覆材が導体に固着したりしていても、導体と被覆材との分離を失敗しにくい。胴部が斜めに延在していた従来技術の剥線機を用いる方法と比べて種々の種類のケーブル等を処理できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、種々の種類の電線又はケーブルを処理可能で占有面積がコンパクトな剥線機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態の剥線機を右方から見た側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された剥線機をケーブル等が投入される正面側から見た正面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示された剥線機をケーブル等が排出される背面側から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3に示されたカッタの一例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図3に示されたカッタの一例を上方から見た平面図である。
【
図6】
図6は、
図3に示されたカッタの一例を右方から見た側面図である。
【
図7】
図7は、
図3に示されたカッタの他の一例を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、
図3に示された剥線機を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。本発明の一実施形態の剥線機1は、例えば、電線やケーブルの廃電線Wを処理して導体と被覆材とを分離する剥線機として用いられる。
【0027】
電線は、銅やアルミニウム等の導体、導体を被覆する架橋ポリエチレン樹脂やビニル樹脂等の絶縁体等で構成されている。ケーブルは、少なくとも一本の電線を含み、かつ、電線を保護するシースを更に含む多層構造で構成されている。剥線機1で処理されるケーブルは、好ましくは、一本の電線を含む単心ケーブルである。二本以上の電線を含む多芯ケーブルであってもよい。
【0028】
ケーブル等は、任意の構成として、絶縁体に施された半導体層、絶縁体に巻回された軟銅テープ等の遮へい、電線とシースとの隙間を埋める介在物等を更に含んでいてもよい。なお、本明細書において、電線とケーブルとをまとめてケーブル等と呼び、導体を被覆する内部半導体層、絶縁体、外部半導体層、遮へい、介在物、シース等をまとめて被覆材と呼んでいる。
【0029】
剥線機1は、種々の種類のケーブル等Wを処理できる。剥線機1で処理されるケーブル等には、例えば、15.5mm前後の仕上外径を有する公称断面積60sqの公称電圧600Vの低圧電力用のケーブル、47mm前後の仕上外径を有する公称断面積600sqの公称電圧6600Vの高圧電力用ケーブルが含まれる。
【0030】
仕上外径8mm前後のケーブルは、第1の電線又はケーブルの一例であり、仕上外径38mm前後のケーブルは、第1の電線又はケーブルよりも仕上外径が大きい第2の電線又はケーブルの一例である。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態の剥線機1を右方から見た側面図である。
図1に示すように、剥線機1は、ケーブル等の被覆材に当接する少なくとも一つのカッタ10と、一対の上ロール5A及び下ロール5Bの間にケーブル等を挟んでカッタ10に向かって送り出すローラ5と、を備えている。
【0032】
作業者から見て、ケーブル等が投入される剥線機1の正面側がケーブル等の送出方向Xの上流側であり、導体と被覆材とが分離されたケーブル等が排出される剥線機1の背面側がケーブル等の送出方向Xの下流側である。剥線機1は、ローラ5を構成する一対の送りロール(上下ロール5A,5B)が上下に並んでいるため、一対の送りロールが左右に並んでいる剥線機と比べて、工場内の作業スペースの占有面積が小さい。
【0033】
上下ロール5A,5Bの周面には、リング状の切れ刃が形成されていてもよい。その場合、本発明の特徴部分であるカッタ10は、上下ロール5A,5Bの切れ刃によって切断された被覆材の切れ目に当接し、切れ目を押し広げて被覆材の切断をより確実にする多段カッタとして機能する。
【0034】
図2は、
図1に示された剥線機1をケーブル等が投入される正面側から見た正面図である。図示した例では、剥線機1が、前述したカッタ10及びローラ5に加え、床面等の水平面に設置される筐体2、モータ等の駆動源3、駆動源3で生じた駆動力をローラ5に伝達する動力伝達機構4、上ロール5Aと下ロール5Bとの間隔を変更可能な高さ調整機構6、ケーブル等が投入される少なくとも一つの投入口7等を更に備えている。
【0035】
図示した例では、投入口7が、第1の投入口7A及び第2の投入口7Bを含んでいる。第1の投入口7Aは、前述した第1の電線又はケーブルに対応し、当該ケーブルが有する第1の仕上外径よりも一回り大きい開口が形成されている。第2の投入口7Bは、前述した第2の電線又はケーブルに対応して第2の仕上外径よりも一回り大きい開口が形成されている。
【0036】
図3は、
図1に示された剥線機1をケーブル等が排出される背面側から見た斜視図である。
図3に示すように、カッタ10は、筐体2の一部を構成する刃物台9にボルト等で取り付けられており、刃物台9から取り外して交換可能に構成されている。なお、カッタ10の数量は図示した例に限定されないし、カッタ10の刃物台9への固定方法は図示した例に限定されない。
【0037】
図4は、
図3に示されたカッタの一例を示す斜視図である。
図4及び
図3に示すように、カッタ10は、ケーブル等の送出方向Xの下流側からローラ5に対向する刃部11と、刃部11よりも下流側に位置し、かつ、ケーブル等の送出方向Xに沿って延在する胴部12と、刃物台9に固定される脚部13と、を有している。
【0038】
胴部12は、上面25、上面25とは反対側の下面26、上面25と下面26との間を繋ぐ第3側面23及び第4側面24を有する略四角柱の棒状に形成されている。図示した例では、第3側面23と第4側面24とが互いに平行に形成されている。
【0039】
胴部12は、ケーブル等の被覆材の移動軌跡に重なるように配置される。ローラ5により送り出されたケーブル等について、被覆材の移動軌跡を
図1中に参照符号Rで示し、導体の移動軌跡を
図1中にCuで示す。切断中のケーブル等は、おおむね水平方向に押し出され、水平方向よりも僅かに上方へ浮き上がりやすい。
【0040】
ケーブル等の被覆材の移動軌跡に合わせて、胴部12の延在方向は、水平方向であるか、又は、送出方向Xの下流側に向かうに従って重力方向Zの上方に向かうように僅かに傾斜していることが好ましい。胴部12の延在方向と
図6中に一点鎖線で示した水平面とがなす角度θは、例えば0度から10度、好ましくは0度から5度、より好ましくは0度から2度である。
【0041】
刃部11は、棒状の胴部12におけるローラ5に面した側の端部に設けられている。脚部13は、胴部12における刃部11とは反対側の端部に設けられている。図示した例では、脚部13が、上下方向Zに沿って延びる略四角柱の棒状に形成され、ボルト等を挿通可能な複数の長孔が設けられている。
【0042】
刃部11は、胴部12と上面25を共有し、第1側面21、第2側面22、傾斜面27を更に有している。
図5は、
図3に示されたカッタの一例を上方から見た平面図である。
図5に示すように、刃部11は、送出方向Xの上流側に向かうに従って第1側面21と第2側面22との間隔が狭くなるくさび状に形成され、かつ、第1側面21と第2側面22とが一致する稜線に形成された切れ刃20を有している。
【0043】
図6は、
図3に示されたカッタ10の一例を右方から見た側面図である。切れ刃20は、
図6に示された刃長Bが切れ刃20によって切断する被覆材の厚さよりも大きくなるように形成されている。
図6に示すように、傾斜面27は、切れ刃20に臨む部位に形成され、送出方向Xの下流側に向かうに従って重力方向Zの下方に向かうように傾斜している。なお、傾斜面27は、カッタ10において必須の構成ではなく、次に説明する
図7が参照されるように省略してもよい。
【0044】
図7は、
図3に示されたカッタ10の他の一例を示す斜視図である。図示した例では、カッタ10が、胴部12と一体構造物であり、胴部12に沿って延びる底部14を更に有している。底部14は、胴部12よりも重力方向Zの下方に位置し、左右方向Yにおいて胴部12よりも幅広に形成されている。底部14によって胴部12の剛性が補強されるため、仕上外径が小さいケーブル等に合わせて胴部12を幅狭に形成できる。
【0045】
図8は、
図3に示された剥線機1を模式的に示す平面図である。
図8に示すように、
カッタ10は、前述した第1の投入口7Aから投入された第1の電線又はケーブルに当接する第1のカッタ10Aと、前述した第2の投入口7Bから投入された第2の電線又はケーブルに当接する第2のカッタ10Bと、を含んでいる。
【0046】
剥線機1は、下ロール5Bの回転中心Oから第2のカッタ10Bの切れ刃20までの水平距離H2が、下ロール5Bの回転中心Oから第1のカッタ10Aの切れ刃20までの水平距離H1よりも大きくなるように構成されている。剥線機1によれば、複数の剥線機を使い分けることなく一台の剥線機1で仕上外径が大きい第2の電線又はケーブルと仕上り外径が小さい第1の電線又はケーブルとを処理することができる。
【0047】
水平距離H2は、ケーブル等の仕上外径の1.0倍以上かつ1.4倍以下であることが好ましい。また、ケーブル等の仕上外径が、35mm以上かつ40mm以下であるとき、水平距離H2は、例えば、40mm以上かつ50mm以下であることが好ましい。
【0048】
以上のように構成された本実施形態の剥線機1を用いる剥線方法は、一対の上下ロール5A,5Bの間にケーブル等を挟んでカッタ10に向かって送り出すこと、カッタ10に設けられたくさび状の刃部11によって被覆材に切れ目を形成すること、並びに、カッタ10に設けられ、かつ、ケーブル等の送出方向Xに沿って延在する胴部12によって、被覆材がカッタ10を通過している間は切れ目が閉じないように押し広げた状態を維持すること、を含んでいる。
【0049】
このような剥線機1及び該剥線機1を用いる剥線方法によれば、上下ロール5A,5Bの切れ刃や刃部11の切れ刃20が形成した被覆材の切れ目を胴部12によって閉じないように維持できるため、ケーブル等が太くなったり、劣化した被覆材が導体に固着したりしていても、導体と被覆材との分離を失敗しにくい。従来技術の剥線機では分離しにくかった劣化した被覆材が導体に溶着した廃電線であっても高い歩留まりで導体と被覆材とを分離できるため、種々の種類の電線又はケーブルを処理できる。
【0050】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1…剥線機、2…筐体、3…駆動源、4…動力伝達機構、5…ローラ、5A…上ロール、5B…下ロール、6…高さ調整機構、7…投入口、7A…第1の投入口、7B…第2の投入口、9…刃物台、10…カッタ、10A…第1のカッタ、10B…第2のカッタ、11…刃部、12…胴部、13…脚部、14…底部、20…切れ刃、21…第1側面、22…第2側面、23…第3側面、24…第4側面、25…上面、26…下面、27…傾斜面、B…刃長、Cu…導体の移動軌跡、H1…回転中心から第1のカッタまでの水平距離、H2…回転中心から第2のカッタまでの水平距離、O…下カッタの回転中心、R…被覆材の移動軌跡、X…送出方向、Y…左右方向、Z…重力方向、θ…胴部の傾斜角。
【要約】
【課題】種々の種類の電線又はケーブルを処理可能で占有面積がコンパクトな剥線機を提供する。
【解決手段】剥線機1は、被覆材に当接する少なくとも一つのカッタ10と、一対の上ロール5A及び下ロール5Bの間にケーブル等を挟んで少なくとも一つのカッタ10に向かって送り出すローラ5と、を備えている。少なくとも一つのカッタ10は、ケーブル等の送出方向Xに沿って延在する胴部12と、胴部12におけるローラ5に面した側の端部に設けられた刃部11と、を有している。刃部11は、送出方向Xの上流側X1に向かうに従って第1側面21と第2側面22との間隔が狭くなるくさび状に形成され、かつ、第1側面21と第2側面22とが一致する稜線に形成された切れ刃20を有している。
【選択図】
図3