(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】静電チャックおよび基板保持方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20221209BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
(21)【出願番号】P 2017027333
(22)【出願日】2017-02-16
【審査請求日】2019-11-08
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅木 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】土田 淳
(72)【発明者】
【氏名】徳正 典昭
(72)【発明者】
【氏名】北林 徹夫
【合議体】
【審判長】瀧内 健夫
【審判官】河本 充雄
【審判官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-021961(JP,A)
【文献】特開平9-162272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/683
H02N13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が載置される基板載置面を有する
セラミックス焼結体からなるセラミック基体と、
前記セラミック基体内に設けられ、第1の電極及び前記第1の電極に電気的に接続されかつ前記セラミック基体から露出してい
る1つの第1の給電部分を含む第1の電極構造と、
前記セラミック基体内に設けられ、前記第1の電極と対向す
る第2の電極及び前記第2の電極に電気的に接続されかつ前記セラミック基体から露出してい
る1つの第2の給電部分を含む第2の電極構造と、を有し、
前記第1の電極は
それぞれが前記基板載置面に沿った方向において延在する略半円状の第1の吸着電極および第1のキャパシタ電極を有し、前記第2の電極は
それぞれが前記基板載置面に沿った方向において延在する略半円状の第2の吸着電極および第2のキャパシタ電極を有し
、
前記第1の吸着電極および前記第1のキャパシタ電極は前記セラミック基体内で
接続導体を介して互いに電気的に接続されており、前記第2の吸着電極および前記第2のキャパシタ電極は前記セラミック基体内で
接続導体を介して互いに電気的に接続され、
前記基板載置面は、第1の領域及び前記第1の領域と重ならない第2の領域を有し、前記基板載置面と垂直な方向において前記第1の領域と重なって位置する前記セラミック基体内の第1の内部領域と前記基板載置面と垂直な方向において前記第2の領域と重なって位置する前記セラミック基体内の第2の内部領域と
が存在し、
前記第1の内部領域内には前記第1の吸着電極および前記第2のキャパシタ電極が存在し、かつ、前記第1の吸着電極が前記第2のキャパシタ電極よりも前記基板載置面側に位置し、前記第2の内部領域内には前記第2の吸着電極および前記第1のキャパシタ電極が存在し、かつ、前記第2の吸着電極が前記第1のキャパシタ電極よりも前記基板載置面側に位置することを特徴とする静電チャック。
【請求項2】
前記セラミック基体内の前記第1の電極と前記基板載置面と垂直な方向において前記第1の電極と対向する前記第2の電極との間の領域の誘電率は、他の領域の誘電率よりも高いことを特徴とする
請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記第1の給電部分に第1の極性の電圧を印加する第1の電源と、前記第2の給電部分に第1の極性と反対の第2の極性の電圧を印加する第2の電源と、を有することを特徴とする
請求項1又は2に記載の静電チャック。
【請求項4】
基板が載置される基板載置面を有する
セラミックス焼結体からなるセラミック基体と、
前記セラミック基体内に設けられ、第1の電極及び前記第1の電極に電気的に接続されかつ前記セラミック基体から露出してい
る1つの第1の給電部分を含む第1の電極構造と、
前記セラミック基体内に設けられ、前記第1の電極と対向す
る第2の電極及び前記第2の電極に電気的に接続されかつ前記セラミック基体から露出してい
る1つの第2の給電部分を含む第2の電極構造と、を有し、
前記第1の電極は
それぞれが前記基板載置面に沿った方向において延在する略半円状の第1の吸着電極および第1のキャパシタ電極を有し、前記第2の電極は
それぞれが前記基板載置面に沿った方向において延在する略半円状の第2の吸着電極および第2のキャパシタ電極を有し
、
前記第1の吸着電極および前記第1のキャパシタ電極は前記セラミック基体内で
接続導体を介して互いに電気的に接続されており、前記第2の吸着電極および前記第2のキャパシタ電極は前記セラミック基体内で
接続導体を介して互いに電気的に接続され、
前記基板載置面は、第1の領域及び前記第1の領域と重ならない第2の領域を有し、前記基板載置面と垂直な方向において前記第1の領域と重なって位置する前記セラミック基体内の第1の内部領域と前記基板載置面と垂直な方向において前記第2の領域と重なって位置する前記セラミック基体内の第2の内部領域と
が存在し、
前記第1の内部領域内には前記第1の吸着電極および前記第2のキャパシタ電極が存在し、かつ、前記第1の吸着電極が前記第2のキャパシタ電極よりも前記基板載置面側に位置し、前記第2の内部領域内には前記第2の吸着電極および前記第1のキャパシタ電極が存在し、かつ、前記第2の吸着電極が前記第1のキャパシタ電極よりも前記基板載置面側に位置することを特徴とする静電チャックを用いて基板を保持する方法であって、
前記基板載置面に前記基板を載置する載置ステップと、
前記第1の給電部分及び前記第2の給電部分の少なくとも一方を電源に電気的に接続して電圧を印加し、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電位差を生じさせる電位差発生ステップと、
前記電源が接続された前記第1の給電部分及び前記第2の給電部分の少なくとも一方と電源との電気的な接続を遮断して前記第1の給電部分及び前記第2の給電部分の少なくとも一方への電圧の印加を停止する印加停止ステップと、
前記電源を遮断して前記電圧の印加を停止した後に、前記基板載置面と前記基板との間の吸着力が維持されるステップと、
を含むことを特徴とする基板保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置向けのセラミック静電チャック等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、半導体ウェハ等の基板(以下、ウェハとも称する)を半導体製造装置内で保持するために、ウェハが載置される際にウェハと対向する位置に平面状の電極が設けられている静電チャックが使用されている。
【0003】
特許文献1には、静電チャックにおいてに、電源と接続され、各々が互いに逆電荷を保持するように構成された2つの平面状の電極、及び当該2つの電極と電気回路的に並列に接続されたコンデンサを有するセラミック静電チャックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の静電チャックでは、電極との接続が遮断されても、コンデンサからの放電によりしばらくの間、ウェハに対する静電チャックの吸着力が維持される。しかし、特許文献1に開示の構成においては、ウェハ吸着用の電極とは別にコンデンサ用の電極が設けられているため、静電チャック内にコンデンサを内蔵させる場合に、静電チャックが大型化してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、以上の従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、電源から切り離された場合でも基板に対する吸着力を維持可能であり、かつコンパクトな構成を有する静電チャック等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の静電チャックは、基板が載置される基板載置面を有するセラミックス焼結体からなるセラミック基体と、前記セラミック基体内に設けられ、第1の電極及び前記第1の電極に電気的に接続されかつ前記セラミック基体から露出している1つの第1の給電部分を含む第1の電極構造と、前記セラミック基体内に設けられ、前記第1の電極と対向する第2の電極及び前記第2の電極に電気的に接続されかつ前記セラミック基体から露出している1つの第2の給電部分を含む第2の電極構造と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の静電チャックによれば、第1の電極及び第2の電極を基体内で対向して配置することにより、電源から遮断された状態でもウェハ等の被吸着物(基板)に対する吸着力を維持可能であり、且つコンパクトな静電チャックをもたらすことが可能である。
【0009】
前記本発明の静電チャックにおいて、前記第1の電極はそれぞれが前記基板載置面に沿った方向において延在する略半円状の第1の吸着電極および第1のキャパシタ電極を有し、前記第2の電極はそれぞれが前記基板載置面に沿った方向において延在する略半円状の第2の吸着電極および第2のキャパシタ電極を有している。
【0010】
上記本発明によれば、電源から遮断された後に、被吸着物に対する吸着力を長時間かつ強力に維持することが可能である。
【0011】
前記本発明の静電チャックにおいて、前記基板載置面は、第1の領域及び前記第1の領域と重ならない第2の領域を有し、前記基板載置面と垂直な方向において前記第1の領域と重なって位置する前記セラミック基体内の第1の内部領域と前記基板載置面と垂直な方向において前記第2の領域と重なって位置する前記セラミック基体内の第2の内部領域とが存在し、前記第1の内部領域内には前記第1の吸着電極および前記第2のキャパシタ電極が存在し、かつ、前記第1の吸着電極が前記第2のキャパシタ電極よりも前記基板載置面側に位置し、前記第2の内部領域内には前記第2の吸着電極および前記第1のキャパシタ電極が存在し、かつ、前記第2の吸着電極が前記第1のキャパシタ電極よりも前記基板載置面側に位置する。
【0012】
上記本発明によれば、被吸着物を接地する必要がない。
【0013】
前記本発明の静電チャックにおいて、前記第1の吸着電極および前記第1のキャパシタ電極は前記セラミック基体内で接続導体を介して互いに電気的に接続されており、前記第2の吸着電極および前記第2のキャパシタ電極は前記セラミック基体内で接続導体を介して互いに電気的に接続されている。
【0014】
上記本発明によれば、複数の第1の電極と複数の第2の電極とに対する電源供給を各々1のスイッチで行うことが可能であり、静電チャックの回路構成及び制御を単純にすることが可能である。
【0018】
前記本発明の静電チャックにおいて、前記セラミック基体内の前記第1の電極と前記基板載置面と垂直な方向において前記第1の電極と対向する前記第2の電極との間の領域の誘電率は、他の領域の誘電率よりも高いことが好ましい。
【0019】
上記本発明によれば、電源から遮断された後に、被吸着物に対する吸着力を長時間かつ強力に維持することが可能である。
【0020】
前記本発明の静電チャックにおいて、前記第1の給電部分に第1の極性の電圧を印加する第1の電源と、前記第2の給電部分に第1の極性と反対の第2の極性の電圧を印加する第2の電源と、を有することが好ましい。
【0021】
本発明の基板保持方法は、基板が載置される基板載置面を有するセラミックス焼結体からなるセラミック基体と、前記セラミック基体内に設けられ、第1の電極及び前記第1の電極に電気的に接続されかつ前記セラミック基体から露出している1つの第1の給電部分を含む第1の電極構造と、前記セラミック基体内に設けられ、前記第1の電極と対向する第2の電極及び前記第2の電極に電気的に接続されかつ前記セラミック基体から露出している1つの第2の給電部分を含む第2の電極構造と、を有し、前記第1の電極はそれぞれが前記基板載置面に沿った方向において延在する略半円状の第1の吸着電極および第1のキャパシタ電極を有し、前記第2の電極はそれぞれが前記基板載置面に沿った方向において延在する略半円状の第2の吸着電極および第2のキャパシタ電極を有し、前記第1の吸着電極および前記第1のキャパシタ電極は前記セラミック基体内で接続導体を介して互いに電気的に接続されており、前記第2の吸着電極および前記第2のキャパシタ電極は前記セラミック基体内で接続導体を介して互いに電気的に接続され、前記基板載置面は、第1の領域及び前記第1の領域と重ならない第2の領域を有し、前記基板載置面と垂直な方向において前記第1の領域と重なって位置する前記セラミック基体内の第1の内部領域と前記基板載置面と垂直な方向において前記第2の領域と重なって位置する前記セラミック基体内の第2の内部領域とが存在し、前記第1の内部領域内には前記第1の吸着電極および前記第2のキャパシタ電極が存在し、かつ、前記第1の吸着電極が前記第2のキャパシタ電極よりも前記基板載置面側に位置し、前記第2の内部領域内には前記第2の吸着電極および前記第1のキャパシタ電極が存在し、かつ、前記第2の吸着電極が前記第1のキャパシタ電極よりも前記基板載置面側に位置することを特徴とする静電チャックを用いて基板を保持する方法であって、前記基板載置面に前記基板を載置する載置ステップと、前記第1の給電部分及び前記第2の給電部分の少なくとも一方を電源に電気的に接続して電圧を印加し、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電位差を生じさせる電位差発生ステップと、前記電源が接続された前記第1の給電部分及び前記第2の給電部分の少なくとも一方と電源との電気的な接続を遮断して前記第1の給電部分及び前記第2の給電部分の少なくとも一方への電圧の印加を停止する印加停止ステップと、前記電源を遮断して前記電圧の印加を停止した後に、前記基板載置面と前記基板との間の吸着力が維持されるステップと、を含むことを特徴とする基板保持方法。
【0022】
本発明の基板保持方法によれば、基板を一端保持した後、第1の給電部分及び第2の給電部分を介した第1の電極及び第2の電極への給電を遮断しても、基板への吸着力が維持され基板を保持し続けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2A】
図1の2A-2A線に沿った断面図である。
【
図2B】
図1の2B-2B線に沿った断面図である。
【
図3】実施例1の静電チャックの電極構成の概略図である。
【
図4】実施例1の静電チャックの電極構成の等価回路図である。
【
図5】実施例1の変形例の静電チャックの電極構成の概略図である。
【
図8】実施例2の静電チャックの電極構成の概略図である。
【
図9】実施例2の静電チャックの電極構成の等価回路図である。
【
図10】実施例2の変形例の静電チャックの電極構成の概略図である。
【
図11】実施例3の静電チャックの電極構成の概略図である。
【
図12】実施例3の静電チャックの電極構成の等価回路図である。
【
図13】実施例4の静電チャックの電極構成の概略図である。
【
図14】実施例4の静電チャックの電極構成の等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の静電チャックについて、図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、同様な構成は同一の参照符号を用いて説明する。
【実施例1】
【0025】
[静電チャックの構成]
図1は、実施例1の静電チャック10の平面図である。
図2Aは、
図1の2A-2A線に沿った断面図である。
図2Bは、
図1の2B-2B線に沿った断面図である。
【0026】
実施例1の静電チャック10は、一方の面に半導体ウェハ(以下、単にウェハともいう)等のウェハWを支持するための基板載置面11Sを有する円板状の基体11を有している。なお、基体11の基板載置面11Sと反対側にある面を裏面11Rとして説明する。
【0027】
図2A及び
図2Bに示すように、基体11は、基板載置面11Sと垂直な方向に、基板載置面11Sからみて第1の層11A、第2の層11B及び第3の層11Cの3層構造を有している。
【0028】
第1の層11A、第2の層11B及び第3の層11Cは、それぞれ、例えば、Y2O3を3%含むAINのセラミックス焼結体からなっている。なお、第2の層11Bは、静電容量を大きくすべく、第1の層よりも誘電率の高い材料、例えば、酸化チタン、アルミナまたはチタン酸バリウムの焼結体によって形成されていてもよい。
【0029】
吸着電極13は、基体11内に埋設され、基体11の第1の層11Aと第2の層11Bとの境界面において基板載置面11Sに沿った方向に延在している薄膜状の金属電極である。吸着電極13は、基板載置面11Sに沿った方向において並置され、互いに電気的に絶縁された略半円状の第1の吸着電極13A及び第2の吸着電極13Bを有している。吸着電極13は、例えば、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)等で形成されている。なお、基板載置面11Sと垂直な方向において、第1の吸着電極13Aと重なっている基板載置面11Sの領域を第1の領域と称する。また、基板載置面11Sと垂直な方向において、第2の吸着電極13Bと重なっている基板載置面11Sの領域を第2の領域と称する。
【0030】
第1の吸着電極13A及び第2の吸着電極13Bは、基体11の基板載置面11Sと垂直な方向に見た際の中央部において、互いに対して突出している突出部PPを有している。すなわち、突出部PPは、第1の吸着電極13A及び第2の吸着電極13Bが形作る半円の直径となる線分の中央部分に形成されている。また、第1の吸着電極13A及び第2の吸着電極13Bは、当該突出部PPと対応した形状を有する凹状部RPを有している。なお、突出部PPの形状としては、第1の吸着電極13Aと第2の吸着電極13Bとが電気的に接続されない範囲で種々の形状を採用することができる。
【0031】
キャパシタ電極15は、基体11内に埋設され、基体11の第2の層11Bと第3の層11Cとの境界面において基板載置面11Sに沿った方向に延在している薄膜状の金属電極である。キャパシタ電極15は、吸着電極13からみて、基板載置面11Sと反対側に配され、吸着電極33と対向して設けられている。なお、第1の層11Aと第2の層11Bとの境界面と第2の層11Bと第3の層11Cとの境界面は平行であり、キャパシタ電極15は吸着電極13と平行に形成されている。
【0032】
キャパシタ電極15は、互いに電気的に絶縁された半円状の第1のキャパシタ電極15A及び第2のキャパシタ電極15Bを有している。キャパシタ電極15は、図中二点鎖線で示している。第1のキャパシタ電極15Aは、第2の吸着電極13Bと対向して配されており、第2のキャパシタ電極15Bは、第1の吸着電極13Aと対向して配されている。
【0033】
キャパシタ電極15は、基板載置面11Sと垂直な方向から見て、第1のキャパシタ電極15Aが第1の吸着電極13Aの突出部PPと、第2のキャパシタ電極15Bが第2の吸着電極13Bの突出部PPと重なる部分を有するように形成されている。キャパシタ電極15は、例えば、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)等で形成されている。
【0034】
なお、
図1において、図を明確にするためにキャパシタ電極15は吸着電極13よりも小さく示されているが、吸着電極13と同様の大きさであっても良いし、吸着電極よりも大きくてもよい。
【0035】
接続導体17は、基体11の第2の層11Bに設けられており、第2の層Bを基板載置面11Sと垂直な方向に貫通している2つの金属導体である。接続導体17の各々は、それぞれ第1の吸着電極13A及び第2の吸着電極13Bの突出部PPから下方に伸長している。上述のように、基板載置面11Sと垂直な方向から見て、突出部PPの各々は、第1のキャパシタ電極15A及び第2のキャパシタ電極15Bの各々と重なっている。従って、接続導体17の一方は、第1の吸着電極13Aと第1のキャパシタ電極15Aとを電気的に接続し(
図2A参照)、接続導体17の他方は、第2の吸着電極13Bと第2のキャパシタ電極15Bとを電気的に接続している(
図2B参照)。
【0036】
給電部分としての給電端子19は、基体11の第3の層11Cに設けられており、第3の層11Cを基板載置面11Sと垂直な方向に貫通している金属端子である。給電端子19は、第1のキャパシタ電極15Aに接している第1の給電端子19A及び第2のキャパシタ電極15Bに接している第2の給電端子19Bからなっている。すなわち、第1の給電端子19A及び第2の給電端子19Bは、一方の端がキャパシタ電極15に電気的に接続されており、他方の端が基体11の裏面11Rにおいて露出している。
【0037】
給電端子19は、基体11から露出している端において電源に接続可能になっている。すなわち、給電端子19を介して吸着電極13及びキャパシタ電極15に電圧を印加することが可能となっている。
【0038】
上述のように、第1の吸着電極13A及び第1のキャパシタ電極15Aは、接続導体17によって電気的に接続されており、かつ第1の給電端子19Aに接続されている。また、第2の吸着電極13B及び第2のキャパシタ電極15Bは、接続導体17によって電気的に接続されており、かつ第2の給電端子19Bに接続されている。よって、静電チャック10においては、互いに異なる給電端子19に接続されて、互いに異なる電圧が印加可能な電極が互い違いに配されている構造になっている。
【0039】
図3に、給電端子19に電源PSを接続した際の静電チャック10の電極構成の概略図を示す。静電チャック10においては、第1の給電端子19Aには負の電圧が印加されるように構成され、第2の給電端子19Bには正の電圧が印加されるように構成されている。従って、静電チャック10は、第1の吸着電極13Aと第2の吸着電極13Bとに、互いに正負逆の電圧が印加される、いわゆる双極型の静電チャックである。
【0040】
図3に示すように、基板載置面11SとウェハWの下面との間において、第1の吸着電極13A上の領域にキャパシタC1が形成され、第2の吸着電極13B上の領域にキャパシタC2が形成される。また、基板載置面11Sと第1の吸着電極13A及び第2の吸着電極13Bの各々との間にキャパシタC3及びC4が形成される。さらに、第1の吸着電極13Aと第2のキャパシタ電極15Bとの間にキャパシタC5が形成され、第2の吸着電極13Bと第1のキャパシタ電極15Aとの間にキャパシタC6が形成される。
【0041】
給電端子19を介して電圧が印加されると、キャパシタC3、C4に電荷が蓄積され、さらにキャパシタC1、C2に電荷が蓄積される。そして、吸着電極13とウェハWとの間にクーロン力が働き、ウェハWが基板載置面11Sに吸着される。
【0042】
また、互いに正負逆の電位になっている第1の吸着電極13Aと第2のキャパシタ電極15Bとの間のキャパシタC5、及び第2の吸着電極13Bと第2のキャパシタ電極15Bとの間のキャパシタC6にもそれぞれ電荷が蓄積される。
【0043】
図4に静電チャック10の電極構成の等価回路図を示す。このように、静電チャック10においては、キャパシタC1とC3とが直列に接続され、キャパシタC2とC4とが直列に接続されている。このキャパシタC1-C4を含む回路部分がウェハWの吸着に寄与する回路部分である吸着回路部分SPである。また、キャパシタC5及びC6が並列に接続されており、キャパシタC5及びC6を含む回路部分がキャパシタ回路部分CPとなっている。キャパシタ回路部分CPは、キャパシタC1-C4と直列に接続されている。
【0044】
上述のように、給電端子19に電源PSを接続して電圧を負荷すると、キャパシタC1-C6のそれぞれに電荷が蓄積される。その後、電源を遮断すると、キャパシタC1-C4に蓄積された電荷は時間の経過に従って減衰する。その際、キャパシタC5及びC6に蓄積された電荷が、キャパシタC1-C4に移動する。
【0045】
これにより、キャパシタC1-C4の電荷の減衰が緩やかになる。すなわち、キャパシタC1及びC2における電荷の減衰が緩やかになり、基板載置面11SとウェハWとの間のクーロン力の減少が緩やかになり、電源の遮断後も基板載置面11SとウェハWとの間の吸着力が長時間維持されることになる。
【0046】
本実施例の静電チャック10においては、電源遮断後に基板載置面11SとウェハWとの間に形成されるキャパシタC1及びC2に電荷を供給するキャパシタ部分を、ウェハの吸着に寄与する吸着電極13と吸着電極13と対向して形成されているキャパシタ電極15とによって形成している。すなわち、吸着電極13がウェハ吸着用の電極として機能し、かつキャパシタの電極板の一方として機能する。そのため、電源遮断後の吸着力を長時間維持可能な静電チャック10を、静電チャック10の厚みを大きくすることなく実現することが可能である。
【0047】
[静電チャックの製造方法]
第1の層11A、第2の層11B及び第3の層11Cのそれぞれを構成する複数のセラミックグリーンシートを作製する。セラミックグリーンシートは、例えば、AlN(窒化アルミニウム)セラミックグリーンシートである。第2の層11Bを形成するセラミックグリーンシートの一方の面には、吸着電極13をスクリーン印刷等で形成する。また、第3の層11Cを形成するセラミックグリーンシートの一方の面には、キャパシタ電極15をスクリーン印刷等で形成する。
【0048】
第2の層11Bを形成するセラミックグリーンシートには、当該シートを貫通するビアホールを形成し当該ビアホール内に金属層を形成して接続導体17を形成する。第3の層11Cを形成するセラミックグリーンシートには、当該シートを貫通するビアホールを形成し、当該ビアホール内に金属材料を充填して給電端子19を形成する。給電端子19は、例えば、ろう付け、はんだ付け等で形成してもよい。
【0049】
これらの3枚のグリーンシートを含む複数のセラミックグリーンシートを積層して一体焼成することで静電チャック10が完成する。
【0050】
なお、静電チャック10は、焼結体プレートを接合することによって形成してもよい。その場合は、第1の層11A、第2の層11B及び第3の層11Cのそれぞれを構成する3枚のセラミックス焼結体を形成する。この焼結体は、例えば、AlNにY2O3を3%添加したセラミックス焼結体である。
【0051】
第2の層11Bを形成するセラミックス焼結体の一方の面には、Ti(チタン)のスパッタリングにより吸着電極13を形成する。また、第3の層11Cを形成するセラミックス焼結体の一方の面には、Tiのスパッタリングによりキャパシタ電極15を形成する。第2の層11Bを形成するセラミックス焼結体には、当該焼結体を貫通するビアホールを形成し当該ビアホール内に金属層を形成して接続導体17を形成する。
【0052】
次に、第1の層11A、第2の層11B及び第3の層11Cのそれぞれを構成する3層のセラミックス焼結体を、ガラス接合または拡散接合等で接合する。
【0053】
その後に、第3の層11Cに、給電端子19を形成するための孔を形成し当該孔内に金属層を形成するか金属ロッドを挿入する等して給電端子19を形成することで静電チャック10が完成する。
【0054】
[基板保持方法]
実施例1の静電チャック10を用いた基板保持方法としては、以下の方法が一例として挙げられる。まず、基体11の基板載置面11SにウェハWを載置する。次に、給電端子19を電源PSに電気的に接続して電圧を印加して、吸着電極13とキャパシタ電極15との間に電位差を生じさせる。この状態で、基板載置面11SにウェハWが吸着されウェハWが保持される。次に、電源PSが接続された給電端子19と電源PSとの電気的な接続を遮断して給電端子19への電圧の印加を停止する。上述のように、実施例1の静電チャック10では、電源PSによる電圧の印加の停止後も、基板載置面11SとウェハWとのクーロン力が維持され、ウェハWが基板載置面11Sに吸着され続けるため、基板載置面11S上にウェハWを長時間保持可能である。
【0055】
[変形例]
図5に、実施例1の静電チャック10の変形例の電極構造の概略図を示す。
図5に示すように、キャパシタ電極15を多層に形成してもよい。キャパシタ電極15を多層にすると、多層に形成したキャパシタ電極15同士の間にも電荷が蓄積され、
図4に示すキャパシタ回路部分CPのキャパシタC5及びC6と並列にさらにキャパシタが接続される回路となる。
【0056】
すなわち、キャパシタ回路部分CPにおける静電容量がさらに大きくなることで、
図4に示す回路の吸着回路部分SPに移動可能な電荷が多くなり、さらに長い時間吸着力を維持することが可能となる。
【0057】
なお、このようにキャパシタ電極15を多層に形成する場合は、例えば、
図1に示した吸着電極13と同様の電極パターンを有する第3のキャパシタ電極15C及び第4のキャパシタ電極15Dからなる第1の電極層と第1のキャパシタ電極15A及び第2のキャパシタ電極15Bと同様の電極パターンを有する第2の電極層とを交互に多層に形成すればよい。例えば、吸着電極13の電極パターンを印刷したセラミックグリーンシートまたはセラミックス焼結体とキャパシタ電極15の電極パターンを印刷したセラミックグリーンシートまたはセラミックス焼結体とを交互に積層することで、多層のキャパシタ電極15を有する静電チャックを形成可能である。
【0058】
なお、上記したように、実施例1の静電チャック10は双極型であるので、ウェハWを接地する必要はない。すなわち、静電チャック10の使用において、接地配線を設ける必要がないので構成の簡素化が可能である。
【実施例2】
【0059】
図6は、実施例2の静電チャック20の平面図である。
図7は、
図6の7-7線に沿った断面図である。実施例2の静電チャック20は、単極型の静電チャックであるということ以外は、実施例1の静電チャック10と同様の構成を有している。すなわち、静電チャック20は、静電チャック10と電極構成のみが異なっている。なお、静電チャック20を用いた基板保持方法は、実施例1の静電チャック10を用いた基板保持方法と同様であるので、説明を省略する。
【0060】
実施例1の静電チャック10と同様に、実施例2の静電チャック20は、一方の面に半導体ウェハ等のウェハWを支持するための基板載置面11Sを有する円板状の基体11を有している。また、以下の説明において、基体11の基板載置面11Sと反対側にある面を裏面11Rとする。
【0061】
図7に示すように、基体11は、基板載置面11Sと垂直な方向に、基板載置面11Sからみて第1の層11A、第2の層11B及び第3の層11Cの3層構造を有している。
【0062】
第1の層11A、第2の層11B及び第3の層11Cは、それぞれ、例えば、Y2O3を3%含むAINのセラミックス焼結体からなっている。なお、第2の層11Bは、静電容量を大きくすべく、第1の層11Aよりも誘電率の高い材料、例えば、酸化チタン、アルミナまたはチタン酸バリウムの焼結体によって形成されていてもよい。
【0063】
吸着電極23は、基体11内に埋設され、基体11の第1の層11Aと第2の層11Bとの境界面において基板載置面11Sに沿った方向に延在している円形の平面形状を有する薄膜状の金属電極である。吸着電極23は、例えば、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)等で形成されている。
【0064】
キャパシタ電極25は、基体11内に埋設され、基体11の第2の層11Bと第3の層11Cとの境界面において基板載置面11Sに沿った方向に延在している円形の平面形状を有する薄膜状の金属電極である。キャパシタ電極25は、吸着電極23からみて、基板載置面11Sと反対側に設けられている。また、キャパシタ電極25には、円形の開口部25Hが設けられている。
【0065】
なお、第1の層11Aと第2の層11Bとの境界面と第2の層11Bと第3の層11Cとの境界面は平行であり、キャパシタ電極25は吸着電極23と平行に形成されている。キャパシタ電極25は、例えば、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)等で形成されている。
【0066】
なお、
図6において、図を明確にするためにキャパシタ電極25は吸着電極23よりも小さく示されているが、吸着電極23と同様の大きさであっても良いし、吸着電極23よりも大きくてもよい。
【0067】
給電部分としての給電端子29は、基体11の内において基板載置面11Sと垂直な方向に伸長し、一方の端部が基体11から露出している金属端子である。給電端子29は、一方の端が吸着電極23に接しており、他方の端が裏面11Rから露出している第1の給電端子29A及び一方の端がキャパシタ電極25に接しており、他方の端が裏面11Rから露出している第2の給電端子29Bからなっている。
【0068】
すなわち、第1の給電端子29Aは、キャパシタ電極25の開口部25Hを通り抜けて伸長しており、一方の端が吸着電極23に電気的に接続されており、他方の端が基体11から露出している。また、第2の給電端子29Bは、一方の端がキャパシタ電極25に電気的に接続されており、他方の端が基体11から露出している。
【0069】
給電端子29は、基体11から露出している端において電源に接続可能になっている。すなわち、給電端子29を介して吸着電極23及びキャパシタ電極25に電圧を印加することが可能となっている。
【0070】
上述のように、吸着電極23は第1の給電端子29Aに電気的に接続されており、また、キャパシタ電極25は第2の給電端子29Bに接続されている。よって、静電チャック20においては、互いに異なる給電端子29に接続されて、互いに異なる電圧が印加可能な電極が対向して配されている構造になっている。
【0071】
図8に、給電端子29に電源PSを接続した際の静電チャック20の電極構成の概略図を示す。静電チャック20においては、第1の給電端子29Aには負の電圧が印加されるように構成され、第2の給電端子29Bには正の電圧が印加されるように構成されている。従って、静電チャック20は、吸着電極23に負の電圧が印加される、いわゆる単極型の静電チャックである。なお、
図8においては、静電チャックを対向電極OTを有するプラズマ装置内に設けた場合を例に示している。
【0072】
図8に示すように、基板載置面11SとウェハWの下面との間において、キャパシタC1が形成される。また、基板載置面11Sと吸着電極23との間にキャパシタC2が形成される。さらに、吸着電極23とキャパシタ電極25との間にキャパシタC3が形成される。
【0073】
給電端子29を介して電圧が印加されると、キャパシタC2に電荷が蓄積され、さらにキャパシタC1に電荷が蓄積される。そして、吸着電極23とウェハWとの間にクーロン力が働き、ウェハWが基板載置面11Sに吸着される。また、互いに正負逆の電位になっている吸着電極23とキャパシタ電極25との間のキャパシタC3にも電荷が蓄積される。
【0074】
図9に静電チャック20の電極構成の等価回路図を示す。このように、静電チャック20においては、キャパシタC1及びC2が直列に接続されている。このキャパシタC1及びC2を含む回路部分がウェハWの吸着に寄与する回路部分である吸着回路部分SPである。また、キャパシタC3が2つの電源PSの間に接続されており、キャパシタC3を含む回路部分がキャパシタ回路部分CPとなっている。キャパシタ回路部分CPは、キャパシタC1及びC2と直列に接続されている。
【0075】
なお、ウェハWと対向電極OTとの間に存在するプラズマインピーダンスは小さいため、
図9の等価回路図では省略している。
【0076】
上述のように、給電端子29に電源PSを接続して電圧を負荷すると、キャパシタC1-C3のそれぞれに電荷が蓄積される。その後、電源を遮断すると、キャパシタC1及びC2に蓄積された電荷は時間の経過に従って減衰する。その際、キャパシタC3に蓄積された電荷が、キャパシタC1及びC2に移動する。
【0077】
これにより、キャパシタC1及びC2の電荷の減衰が緩やかになる。すなわち、キャパシタC1における電荷の減衰が緩やかになり、基板載置面11SとウェハWとの間のクーロン力の減少が緩やかになり、電源の遮断後も基板載置面11SとウェハWとの間の吸着力が長時間維持されることになる。
【0078】
本実施例の静電チャック20においては、電源遮断後に基板載置面11SとウェハWとの間に形成されるキャパシタC1に電荷を供給するキャパシタ部分を、吸着電極23と吸着電極に対向して形成されているキャパシタ電極25によって形成している。そのため、電源遮断後の吸着力を長時間維持可能な静電チャック20を、静電チャック20の厚みを大きくすることなく実現することが可能である。
【0079】
[静電チャックの製造方法]
第1の層11A、第2の層11B及び第3の層11Cのそれぞれを構成する複数のセラミックグリーンシートを作製する。セラミックグリーンシートは、例えば、AlNセラミックグリーンシートである。第2の層11Bを形成するセラミックグリーンシートの一方の面には、吸着電極23をスクリーン印刷等で形成する。また、第3の層11Cを形成するセラミックグリーンシートの一方の面には、キャパシタ電極25をスクリーン印刷等で形成する。キャパシタ電極25の形成の際に、開口部25Hを形成しておく。
【0080】
第3の層11Cを形成するセラミックグリーンシートには、当該シートを貫通するビアホールを形成し、当該ビアホール内に金属材料を充填して給電端子29Bを形成する。また、第3の層11Cを形成するセラミックグリーンシート及び第2の層11Bを形成するセラミックグリーンシートに、当該2つのシートを貫通しかつ開口部25H内を通過するビアホールを形成し、当該ビアホール内に金属材料を充填して給電端子29Aを形成する。
【0081】
給電端子29は、例えば、ろう付け、はんだ付け等で形成してもよい。なお、開口部25H周縁部において、給電端子29Aとキャパシタ電極25を離間させる等、給電端子29Aとキャパシタ電極25が電気的に接続されてないようにする。
【0082】
これらの3枚のグリーンシートを含む複数のセラミックグリーンシートを積層して一体焼成することで静電チャック10が完成する。
【0083】
なお、静電チャック10は、焼結体プレートを接合することによって形成してもよい。その場合は、第1の層11A、第2の層11B及び第3の層11Cのそれぞれを構成する3枚のセラミックス焼結体を形成する。この焼結体は、例えば、AlNにY2O3を3%添加したセラミックス焼結体である。
【0084】
第2の層11Bを形成するセラミックス焼結体の一方の面には、Tiのスパッタリングにより吸着電極23を形成する。また、第3の層11Cを形成するセラミックス焼結体の一方の面には、Tiのスパッタリングによりキャパシタ電極25を形成する。
【0085】
次に、第1の層11A、第2の層11B及び第3の層11Cのそれぞれを構成する3層のセラミックス焼結体をガラス接合または拡散接合等で接合する。
【0086】
その後に、第2の層11B及び第3の層11Cに、給電端子29を形成するための孔を形成し当該孔内に金属層を形成して給電端子29を形成することで静電チャック10が完成する。
【0087】
[変形例]
図10に、実施例2の静電チャック20の変形例の電極構造の概略図を示す。
図10に示すように、キャパシタ電極25を多層に形成してもよい。キャパシタ電極25を多層にすると、多層に形成したキャパシタ電極25同士の間にも電荷が蓄積され、
図9に示すキャパシタ回路部分CPのキャパシタC3と並列にさらにキャパシタが接続される回路となる。
【0088】
すなわち、キャパシタ回路部分CPにおける静電容量がさらに大きくなることで、図に示す回路の吸着回路部分SPに移動可能な電荷が多くなり、さらに長い時間吸着力を維持することが可能となる。
【0089】
なお、このようにキャパシタ電極25を多層に形成する場合は、例えば、
図6に示したキャパシタ電極25の電極パターンを多層に形成すればよい。例えば、キャパシタ電極25の電極パターンを印刷したセラミックグリーンシートまたはセラミックス焼結体を積層することで多層の電極を有する構成とすることができる。この際、基板載置面11Sと垂直な方向において、給電端子29Aに接続されたキャパシタ電極25と給電端子29Bに接続されたキャパシタ電極25が交互に配されるようにする。このようにすることで、多層のキャパシタ電極25を有する静電チャックを形成可能である。
【実施例3】
【0090】
以下に、実施例3の静電チャック30について説明する。静電チャック30は、3つの電源を使用する例である。静電チャック30は、実施例1の静電チャック10と電極構成のみが異なっている。具体的には、静電チャック30は、第1の吸着電極33Aと第1のキャパシタ電極35Aが、基体11内において電気的に絶縁されている点で実施例1の静電チャック10とは異なる。なお、静電チャック30を用いた基板保持方法は、実施例1の静電チャック10を用いた基板保持方法と同様であるので、説明を省略する。
【0091】
図11は、静電チャック30の電極構成の概略図である。吸着電極33は、基体11内に埋設され、基板載置面11Sに沿った方向に延在している薄膜状の金属電極である。吸着電極33は、基板載置面11Sに沿った方向において並置され、互いに電気的に絶縁された略半円状の第1の吸着電極33A及び第2の吸着電極33Bを有している。
【0092】
キャパシタ電極35は、基体11内に埋設され、基板載置面11Sに沿った方向に延在している薄膜状の金属電極である。キャパシタ電極35は、吸着電極33からみて、基板載置面11Sと反対側に配され、吸着電極33と対向して設けられている。
【0093】
キャパシタ電極35は、基板載置面11Sと平行な方向に並置され、互いに電気的に絶縁されたキャパシタ電極35A及び35Bを有している。第1のキャパシタ電極35Aは、第2の吸着電極33Bと対向して配されており、第2のキャパシタ電極35Bは、第1の吸着電極33Aと対向して配されている。
【0094】
なお、第2の吸着電極33Bと第2のキャパシタ電極35Bとは、実施例1の静電チャック30と同様に接続導体17によって接続されている。
【0095】
給電部分としての給電端子39は、基体11の内において基板載置面11Sと垂直な方向に伸長し、一方の端部が基体11から露出している金属端子である。給電端子39は、一方の端が吸着電極33Aに接しており、他方の端が裏面11Rから露出している第1の給電端子39Aを有している。また、給電端子39は、一方の端が第1のキャパシタ電極35Aに接しており、他方の端が裏面11Rから露出している第2の給電端子39Bを有している。また、給電端子39は、一方の端が第2のキャパシタ電極35Bに接しており、他方の端が裏面11Rから露出している第3の給電端子39Cを有している。
【0096】
給電端子39は、基体11から露出している端において電源に接続可能になっている。すなわち、給電端子39を介して吸着電極33及びキャパシタ電極35に電圧を印加することが可能となっている。
【0097】
上述のように、第1の吸着電極33Aは第1の給電端子39Aに電気的に接続されており、また、第1のキャパシタ電極35Aは、第2の給電端子39Bに接続されている。また、第2のキャパシタ電極35Bは、第3の給電端子39Cに接続されている。よって、静電チャック30においては、互いに異なる給電端子39に接続されて、互いに異なる電圧が印加可能な電極が対向して配されている構造になっている。
【0098】
図11に示すように、静電チャック30においては、第1の給電端子39A及び第2の給電端子39Bには負の電圧が印加されるように構成され、第3の給電端子39Cには正の電圧が印加されるように構成されている。従って、静電チャック30は、第1の吸着電極33Aと第2の吸着電極33Bとに、互いに正負逆の電圧が印加される、いわゆる双極型の静電チャックである。
【0099】
図11に示すように、基板載置面11SとウェハWの下面との間において、第1の吸着電極33A上の領域にキャパシタC1が第2の吸着電極33B上の領域にキャパシタC2が形成される。また、基板載置面11Sと第1の吸着電極33A及び第2の吸着電極33Bの各々との間にキャパシタC3及びC4が形成される。さらに、第1の吸着電極33Aと第2のキャパシタ電極35Bとの間にキャパシタC5が形成され、第2の吸着電極33Bと第1のキャパシタ電極35Aとの間にキャパシタC6が形成される。
【0100】
給電端子39を介して電圧が印加されると、キャパシタC3、C4に電荷が蓄積され、さらにキャパシタC1、C2に電荷が蓄積される。そして、吸着電極13とウェハWとの間にクーロン力が働き、ウェハWが基板載置面11Sに吸着される。
【0101】
また、互いに正負逆の電位になっている第1の吸着電極33Aと第2のキャパシタ電極35Bとの間のキャパシタC5、及び第2の吸着電極33Bと第2のキャパシタ電極35Bとの間のキャパシタC6にもそれぞれ電荷が蓄積される。
【0102】
図12に静電チャック30の電極構成の等価回路図を示す。このように、静電チャック10においては、キャパシタC1とC3とが直列に接続され、キャパシタC2とC4とが直列に接続されている。このキャパシタC1-C4を含む回路部分がウェハWの吸着に寄与する回路部分である吸着回路部分SPである。また、キャパシタC5及びC6が並列に接続されており、キャパシタC5及びC6を含む回路部分がキャパシタ回路部分CPとなっている。
【0103】
上述のように、給電端子39に電源PSを接続して電圧を負荷すると、キャパシタC1-C6のそれぞれに電荷が蓄積される。その後、電源を遮断すると、キャパシタC1-C4に蓄積された電荷は時間の経過に従って減衰する。その際、キャパシタC5及びC6に蓄積された電荷が、キャパシタC1-C4に移動する。
【0104】
これにより、キャパシタC1-C4の電荷の減衰が緩やかになる。すなわち、キャパシタC1及びC2における電荷の減衰が緩やかになり、基板載置面11SとウェハWとの間のクーロン力の減少が緩やかになり、電源の遮断後も基板載置面11SとウェハWとの間の吸着力が長時間維持されることになる。
【0105】
本実施例の静電チャック30においては、電源遮断後に基板載置面11SとウェハWとの間に形成されるキャパシタC1及びC2に電荷を供給するキャパシタ部分を、吸着電極33と吸着電極33と対向して形成されているキャパシタ電極35によって形成している。そのため、電源遮断後の吸着力を長時間維持可能な静電チャック30を、静電チャック30の厚みを大きくすることなく実現することが可能である。
【実施例4】
【0106】
以下に、実施例4の静電チャック40について説明する。静電チャック40は、4つの電源を使用する例である。静電チャック40は、実施例1の静電チャック10と電極構成のみが異なっている。具体的には、静電チャック40は、第1の吸着電極43Aと第1のキャパシタ電極45Aとが基体11内において電気的に絶縁されており、かつ第2の吸着電極43Bと第2のキャパシタ電極45Bとが基体11内において電気的に絶縁されている点で実施例1の静電チャック10とは異なる。
【0107】
なお、静電チャック40を用いた基板保持方法は、実施例1の静電チャック10を用いた基板保持方法と同様であるので、説明を省略する。
【0108】
図13は、静電チャック40の電極構成の概略図である。吸着電極43は、基体11内に埋設され、基板載置面11Sに沿った方向に延在している薄膜状の金属電極である。吸着電極43は、基板載置面11Sに沿った方向において並置され、互いに電気的に絶縁された略半円状の第1の吸着電極43A及び第2の吸着電極43Bを有している。
【0109】
キャパシタ電極45は、基体11内に埋設され、基板載置面11Sに沿った方向に延在している薄膜状の金属電極である。キャパシタ電極45は、吸着電極43からみて、基板載置面11Sと反対側に配され、吸着電極43と対向して設けられている。
【0110】
キャパシタ電極45は、基板載置面11Sと平行な方向に並置され、互いに電気的に絶縁されたキャパシタ電極45A及び45Bを有している。第1のキャパシタ電極45Aは、第2の吸着電極43Bと対向して配されており、第2のキャパシタ電極45Bは、第1の吸着電極43Aと対向して配されている。
【0111】
給電部分としての給電端子49は、基体11の内において基板載置面11Sと垂直な方向に伸長し、一方の端部が基体11から露出している金属端子である。給電端子49は、一方の端が裏面11Rから露出しており、他方の端が第1の吸着電極43Aに接している第1の給電端子49Aを有している。給電端子49は、一方の端が裏面11Rから露出しており、他方の端が第2の吸着電極43Bに接している第2の給電端子49Bを有している。
【0112】
また、給電端子49は、一方の端が裏面11Rから露出しており、他方の端が第1のキャパシタ電極45Aに接している第3の給電端子49Cを有している。また、給電端子49は、一方の端が裏面11Rから露出しており、他方の端が第2のキャパシタ電極45Bに接している第4の給電端子49Dを有している。
【0113】
給電端子49は、基体11から露出している端において電源に接続可能になっている。すなわち、給電端子49を介して吸着電極43及びキャパシタ電極45に電圧を印加することが可能となっている。
【0114】
上述のように、第1の吸着電極43Aは第1の給電端子49Aに電気的に接続されており、第2の吸着電極43Bは第2の給電端子49Bに接続されている。また、第1のキャパシタ電極45Aは第3の給電端子49Cに電気的に接続されており、第2のキャパシタ電極45Bは第4の給電端子49Dに接続されている。よって、静電チャック40においては、互いに異なる給電端子49に接続されて、互いに異なる電圧が印加可能な電極が対向して配されている構造になっている。
【0115】
図13に示すように、静電チャック40においては、第1の給電端子49A及び第3の給電端子49Cには負の電圧が印加されるように構成され、第2の給電端子49B及びに第4の給電端子49Dには正の電圧が印加されるように構成されている。従って、静電チャック40は、第1の吸着電極43Aと第2の吸着電極43Bとに、互いに正負逆の電圧が印加される、いわゆる双極型の静電チャックである。
【0116】
図13に示すように、基板載置面11SとウェハWの下面との間において、第1の吸着電極43A上の領域にキャパシタC1が第2の吸着電極43B上の領域にキャパシタC2が形成される。また、基板載置面11Sと第1の吸着電極43A及び第2の吸着電極43Bの各々との間にキャパシタC3及びC4が形成される。さらに、第1の吸着電極43Aと第2のキャパシタ電極45Bとの間にキャパシタC5が形成され、第2の吸着電極43Bと第1のキャパシタ電極45Aとの間にキャパシタC6が形成される。
【0117】
給電端子49を介して電圧が印加されると、キャパシタC3、C4に電荷が蓄積され、さらにキャパシタC1、C2に電荷が蓄積される。そして、吸着電極43とウェハWとの間にクーロン力が働き、ウェハWが基板載置面11Sに吸着される。
【0118】
また、互いに正負逆の電位になっている第1の吸着電極43Aと第2のキャパシタ電極45Bとの間のキャパシタC5、及び第2の吸着電極43Bと第1のキャパシタ電極45Aとの間のキャパシタC6にもそれぞれ電荷が蓄積される。
【0119】
図14に、静電チャック10の電極構成の等価回路図を示す。このように、静電チャック40においては、キャパシタC1-C4が直列に接続されている。このキャパシタC1-C4を含む回路部分がウェハWの吸着に寄与する吸着回路部分SPである。また、キャパシタC5及びC6を含む回路部分がキャパシタ回路部分CPとなっている。
【0120】
上述のように、給電端子49に電源PSを接続して電圧を負荷すると、キャパシタC1-C6のそれぞれに電荷が蓄積される。その後、電源を遮断すると、キャパシタC1-C4に蓄積された電荷は時間の経過に従って減衰する。その際、キャパシタC5及びC6に蓄積された電荷が、キャパシタC1-C4に移動する。
【0121】
これにより、キャパシタC1-C4の電荷の減衰が緩やかになる。すなわち、キャパシタC1及びC2における電荷の減衰が緩やかになり、基板載置面11SとウェハWとの間のクーロン力の減少が緩やかになり、電源の遮断後も基板載置面11SとウェハWとの間の吸着力が長時間維持されることになる。
【0122】
本実施例の静電チャック40においては、電源遮断後に基板載置面11SとウェハWとの間に形成されるキャパシタC1及びC2に電荷を供給するキャパシタ部分を、吸着電極43と吸着電極と平行に形成されているキャパシタ電極45によって形成している。そのため、電源遮断後の吸着力を長時間維持可能な静電チャック40を、静電チャック40の厚みを大きくすることなく実現することが可能である。
【0123】
上記した各構成は一例であり、各構成は用途等によって変更され得る。
【符号の説明】
【0124】
10,20,30,40・・・静電チャック、11・・・基体、13,23,33,43・・・吸着電極、15,25,35,45・・・キャパシタ電極、17・・・接続導体、19,29,39,49・・・給電端子、PS・・・電源